JP4002169B2 - 静電チャック - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電チャックに関し、特に静電チャックの帯電除去方法およびその帯電除去方法に適した静電チャックに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、種々の半導体プロセスにおいて、ウエハの固定方法として静電チャックを使用した固定方法が採用されている。静電チャックの形態としては、例えばウエハの形状に応じた円盤状のセラミックス絶縁基材中に薄板状もしくは膜状の電極を埋設したものが知られている。
【0003】
静電チャックのウエハ固定原理としては、クーロン力を利用した方法(以下、「クーロンタイプ」と呼ぶ)と、ジョンソン・ラーベック力を利用した方法(以下、「ジョンソン・ラーベックタイプ」と呼ぶ)とがある。クーロンタイプでは、ウエハと埋設電極間に電圧が印加され、このときにウエハと電極との間に生じるクーロン力によりウエハが静電チャック表面に固定される。一方、ジョンソン・ラーベックタイプでは、体積抵抗率の低いセラミックス絶縁基材中に埋設された電極とウエハ間に電圧を印加し、電極とウエハ間に微小な電流を流すことにより、ウエハ表面とセラミックス絶縁基材表面に電荷が蓄積され、ウエハとセラミックス絶縁基材表面との微小空間で生じる強力なクーロン力により、ウエハが静電チャック表面に固定される。
【0004】
例えば、ウエハ上に形成された薄膜をプラズマエッチングする場合、プラズマエッチングチャンバ内に搬入されたウエハはまず静電チャック上に載置される。次に、静電チャック内の埋設電極に電圧が印加され、ウエハは静電チャック上に吸着固定され、この後に、プラズマエッチング処理が開始される。エッチング処理が終了すると、静電チャックの埋設電極への印加電圧が解除され、ウエハは、静電チャックから脱着され、プラズマエッチングチャンバから搬出される。半導体プロセスでは、このようなウエハのプラズマエッチング処理が繰り返され、それに伴いウエハと静電チャックとの吸着と脱着とが繰り返される。
【0005】
上述するように、ウエハを静電チャックから脱着させる際には、静電チャックの埋設電極への印加電圧が解除されるが、高電圧が印加された場合や、長時間電圧印加が行われた場合は、その間に生じた静電チャック表面の電荷が完全には除去されず、ウエハを脱着した後にも、静電チャック表面に残留しやすい。
【0006】
また、一回のプラズマ処理後に基板表面に残る電荷はそれほど多くなくても、プラズマ処理が繰り返され、ウエハと静電チャックとの吸着と脱着が繰り返されると、静電チャック表面上の残留電荷が次第に蓄積され、増大し、静電チャックとウエハとの吸着力に影響を与えるようになる。その結果、ウエハの脱着応答性が悪化し、電圧印加解除後、静電チャックから通常の方法でウエハを脱着することが困難になることがある。また、ウエハをリフトピン等で、下側から持ち上げようとする場合には、静電チャックに残存する吸着力のため、ウエハに過剰な力がかかり、ウエハの破損を招くおそれがある。あるいはウエハと静電チャックとの吸着力が場所により変化し、均一な密着性を維持できなくなり、静電チャックの下段にヒータや冷却板を設置し、ウエハ温度を管理するような場合には、ウエハの温度分布が不均一になるといった事態も発生する。このような静電チャック表面の残留電荷についての課題は、プラズマエッチング工程に限らず、他の半導体プロセスにおいても生じ得る。
【0007】
そこで、ウエハ脱着後の静電チャック表面に残る電荷を除去する方法、すなわち静電チャックの帯電除去方法がいくつか提案されている。例えば、ウエハを脱着する際に静電チャック内の埋設電極に逆電圧を印加させることで電荷を除去する方法がある(特許文献)。
【0008】
【特許文献】
特開平5−226291号公報、23段落。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、逆電圧を印加する方法では、複雑な付加回路が必要であるとともに、電圧の調整が個々の静電チャックの状態に合わせて必要であり、静電チャック上の残留電圧を十分除去しきれない場合がある。
【0010】
一方、最近、半導体エッチングプロセス等では、エッチング選択比とエッチング形状のアスペクト比をより改善するため、ウエハを冷却しながらエッチングを行う、いわゆる低温エッチング技術が提案されている。このような低温エッチングプロセスでは、ウエハのみならず、それを固定する静電チャックも低温で使用される。したがって、静電チャックの帯電除去工程においても、静電チャックを加熱することなくなされることが望まれる。
【0011】
また、いずれの半導体プロセスにおいても、スループットを上げるため、より短時間で静電チャックの帯電除去を行うことが望まれている。
【0012】
本発明は、上述する従来の課題に鑑みてなされたものであり、加熱を伴わずに、簡易にしかも短時間に、静電チャック表面の残留電荷を除去しうる帯電除去方法に適した静電チャックを提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の静電チャックは、静電チャック上に吸着固定されたウエハを脱着後、前記静電チャックの表面に、水銀ランプで提供される400nm以下の波長域に主発光波長を有する紫外線を10秒〜60秒間照射する紫外線照射帯電除去に適した静電チャックであって、400nm以下の波長域に主発光波長を有する紫外線に対し、厚み方向における透過率が5%以上10%以下であり、かつ前記紫外線に対し、光伝導効果を示す誘電体層と、絶縁性の基体と、前記誘電体層と前記基体との間に埋設された面状の電極とを有し、前記誘電体層は、0.5mm以上4mm以下の厚みを有し、かつ、窒化アルミニウムを主成分として有し、平均粒径が3μm〜10μmであることを特徴とする。
【0014】
上記本発明の静電チャックの特徴によれば、紫外線による光電効果により静電チャックの誘電体層に導電性を与え、静電チャック表面の残留電荷を誘電体層を介して埋設電極にリークさせることで、帯電除去を行うことができる。紫外線の有するフォトエネルギを直接利用するので、静電チャックの加熱を伴わず、しかも短時間に静電チャック表面の帯電除去を行うことができる。
【0015】
上記本発明の静電チャックにおいて、上記紫外線は、水銀ランプで提供されるものであってもよい。水銀ランプによれば、400nm以下の波長域に主発光波長ピークを有し、可視域や赤外域の発光量が極めて少ない紫外線を得ることができるので、静電チャックの加熱を伴わずに、静電チャックの誘電体層に、効率良く、光電効果を発生させることができる。また、紫外線の照射時間は10秒〜60秒程度でもよい。
【0017】
上記本発明の静電チャックの特徴によれば、誘電体層が紫外線に対し、厚み方向における透過率が5%以上なので、上記紫外線を照射した場合は、厚み方向全域に上記紫外線が到達するとともに、透過率が10%以下であるため、照射される紫外線を有効に吸収し、光電効果を示す。従って、本発明の静電チャックに紫外線を照射すれば、静電チャック表面に残留電荷が存在する場合は、導電化された誘電体層を介して、埋設された電極に残留電荷をリークさせることができるため、静電チャック表面の帯電を除去できる。
【0018】
なお、上記本発明の静電チャックの特徴において、上記誘電体層は、窒化アルミニウムを主成分として有する。また、平均粒径が3μm〜10μmであることが好ましい。粒径を3μm以上とすることにより、粒界の存在比率を低減し、粒界における紫外線の吸収ロスを避け、セラミックス基体の透過率を上げ、効率的に紫外線による光電効果を発現させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に係る静電チャックは、プラズマエッチング等の半導体プロセス終了後、静電チャックからウエハを脱着させた後、静電チャック表面に紫外線を照射することで、静電チャック表面に残った電荷を除去する。以下、図面を参照しながら、本実施の形態に係る静電チャックについて説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態で使用する代表的な静電チャックの構造を示す装置断面図である。静電チャック100は、固定するウエハの大きさ、形状にあわせて、例えばφ80〜φ300mmの円盤形状のセラミックス基体10と、このセラミックス基体10中に、埋設された面状の電極20およびその端子30とを有する。
【0021】
電極20は、例えばMoやW等の高融点金属が使用でき、その形態に特に限定はない。電極20としては、金網(メッシュ)等のバルク金属からなる電極のほか、ペースト状の金属を印刷し、乾燥、焼成により形成した膜状電極を使用することもできる。なお、埋設電極として金属バルク体電極を使用する場合は、電極20を高周波電極としても使用することができるため、プラズマエッチングや高周波スパッタおよびプラズマCVD等に使用する場合は、特に好ましい。
【0022】
なお、図1には、単極型の静電チャックの構造を示しているが、双極型静電チャックを使用してもよい。双極型静電チャックの場合は、埋設される面状の電極が、二分割され、それぞれの領域から端子が引き出される。また、ウエハ吸着原理としては、クーロンタイプのもの、ジョンソン・ラーベックタイプのものいずれを使用してもよい。さらに、静電チャック表面には、必要に応じ凹凸を形成したり、パージガスを流す溝を形成したりしてもよい。
【0023】
セラミックス基体10のうち、電極20より上層部分を誘電体層11、電極20より下層部分は基体12と呼ぶ。誘電体層11と基体12とは、同質のセラミックス材で形成されることが好ましいが、異なる材料とすることも可能である。誘電体層11の厚み(t)は、クーロンタイプの場合は、薄いほど吸着力を強化できるが、ジョンソン・ラーベックタイプの場合は、クーロンタイプ程薄くする必要はなく、むしろ製造を容易化し、使用時における漏れ電流の防止などのため、一定以上の厚みにすることが望ましい。このような観点から、誘電体層11の厚み(t)は、0.5mm〜4mmであることが好ましい。
【0024】
誘電体層11の電気的性質は、静電チャックの吸着力を左右するため重要である。本実施の形態における帯電除去に適した静電チャックのセラミックス基体10、特に誘電体層11の特性については後述するが、静電チャックとして十分な吸着力を発揮するためには、ウエハ吸着時、すなわち静電チャック使用時において、例えばクーロンタイプの場合は体積抵抗率が1015Ω・cm以上、ジョンソン・ラーベックタイプの静電チャックでは体積抵抗率が107Ω・cm〜1012Ω・cmであることが好ましい。
【0025】
図2(a)および図2(b)を参照し、本実施の形態に係る静電チャックによる帯電除去方法について、低温プラズマエッチングプロセスを例にとって説明する。
【0026】
図2(a)は、プラズマエッチング中のプラズマエッチング装置内の構成例を示す概略装置断面図である。
【0027】
チャンバ500内には、チラーに接続された冷却板400が備えられ、この冷却板400の上に静電チャック100が載置され、静電チャック100上には、被エッチング膜が形成されたウエハ200が吸着固定される。必要に応じ、ウエハ200の温度は、例えば−20℃〜80℃の低温に調整される。チャンバ500内には、静電チャック100内に埋設された電極と対向する上方に高周波電極510が備えられており、エッチング中は、ウエハ200と高周波電極510との間にプラズマが生成される。なお、静電チャック100の表面にはウエハを均熱化するため、パージガス用の溝が形成されており、パージガスとして例えばHeガスが供給される。
【0028】
このプラズマエッチング装置において特徴的なことは、静電チャックの帯電除去工程のために、チャンバ500内の上方に、紫外線ランプ300が備えられていることである。なお、紫外線ランプ300の数は、特に制限がなく、例えば均等に三台配置してもよい。紫外線ランプ300としては、400nm以下の発光波長域に、主発光波長を有するものであればよく、例えば、185nmと254nm付近に発振波長を有する低圧水銀ランプや、この低圧水銀ランプを応用したランプである、315nm〜400nmの波長域に主発光波長を有するブラックライト等を使用できる。図3は、波長360nm付近に主発光波長を有する、ブラックライトの分光分布例を示すものである。このように、使用する紫外線ランプは、主発光波長が400nm以下の波長域にあり、可視域および赤外域の発光がほとんどないものが望ましい。また、これらの水銀ランプであれば、広く市販されており、入手も容易である。
【0029】
なお、紫外線ランプは、水銀ランプに限らず、400nm以下、好ましくは200nm〜400nmの波長域に主発光波長を有するものであれば限定されない。例えば、XeCl、ArF、KrF等のエキシマレーザを使用することもできる。また、200nm〜400nmの波長域に発光分布を有する光源を使用する場合は、真空中、大気中のいずれでも使用することができるので、取り扱いが容易となる。
【0030】
なお、発光波長の一部に可視域の波長を含んでいてもよいが、ハロゲンランプのように、可視域から赤外域に主発光波長を有する光源は、加熱源としての側面が強く、本実施の形態に係る静電チャックによる帯電除去方法のように、低温での帯電除去方法には適さない。しかし、広範囲に発光分布を有するXeランプ等であれば、可視域または赤外域の波長をフィルター等でカットし、照射光の主発光波長が400nm以下の波長域になるよう調整して使用することも可能である。
【0031】
なお、図2(a)に示すように、プラズマエッチング進行中は、紫外線ランプ300の照射窓はシャッタ310で覆われている。
【0032】
プラズマエッチングが終了すると、図2(b)に示すように、静電チャック100の電極にかけられた印加電圧が解除され、チャンバ500内の反応ガスは、不活性ガスで置換され、大気圧に戻されたのち、静電チャック100からウエハ200が脱着される。なお、ウエハを脱着する際には、静電チャック100にあらかじめ備えた複数の貫通口から、リフトピンを静電チャック面より上方に突出させ、ウエハを持ち上げる等の方法を利用できる。
【0033】
こうして、ウエハ200をチャンバ500外に搬出した段階で、もしくは、少なくとも同じチャンバ500内において、静電チャック100から離れた位置に移動させた段階で、図2(b)に示す帯電除去処理を行う。すなわち、紫外線ランプ300の照射窓を覆っているシャッタ310を開き、紫外線ランプ300をオンにし、紫外線を静電チャック100表面に照射する。例えば、紫外線ランプとして、300W定格の主発光波長360nmのブラックライトを使用した場合、15秒程度で帯電除去が終了するので、帯電の状態にもよるが、照射時間は10秒〜60秒、好ましくは15秒〜30秒とする。なお、紫外線照射時において、静電チャックの温度は、室温、もしくは冷却状態を保ったままでよい。
【0034】
紫外線が照射された静電チャック100では、セラミックス基体10、特に電極20上層に在る誘電体層11に、光電効果が生じ、導電性が付与されるため、静電チャック100表面の残留電荷は、誘電体層11を介して、電極20に流れるリーク電流となり消滅する。静電チャック100に照射され、吸収された紫外線は、静電チャック100の誘電体層11を、直接光励起するため、加熱にはほとんど寄与しない。したがって、静電チャック100は低温のまま、表面の残留電荷を除去することができる。また、この方法では、紫外線照射とほぼ同時に、光電効果により誘電体層11全体を導電状態にできるため、数十秒以内の極めて短時間のうちに帯電除去を終了できる。なお、静電チャックの帯電除去処理は、プラズマエッチングが終了する度に行ってもよく、あるいは、複数回終了するごとに行ってもよい。
【0035】
図2(a)および図2(b)に示すプラズマエッチング装置では、チャンバ500内に紫外線ランプ300を備えているが、紫外線ランプ300の位置は、これに限定されない。紫外線ランプをチャンバ外に設置し、チャンバ500に予め設けた紫外線透過窓を介して紫外線を静電チャック100表面に照射してもよい。
【0036】
また、上述の本実施の形態では、静電チャックの埋設電極を高周波電極の対向電極として利用しているが、対向電極を別途装置に設けることは可能である。従って、高周波電極に使用できる金属バルク体電極を使用したものに限らず、スクリーン印刷等で作製した膜状電極を埋設した静電チャックにも応用することができることは言うまでもない。
【0037】
なお、低温プラズマエッチングプロセスを例にとって、本実施の形態の静電チャックによる帯電除去方法について説明したが、静電チャックを利用し、帯電除去を必要とする半導体プロセスであれば、どのようなプロセスにおいても適用可能である。例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)やスパッタ等の薄膜作製工程、酸化、窒化処理工程、露光、洗浄、ダイシング、およびウエハの搬送工程等における静電チャックの帯電除去方法に適用できる。
【0038】
また、上述のような低温エッチングプロセスでは、静電チャックを低温のまま帯電除去を行うことが好ましいが、特に低温化を必要としない工程やむしろ高温工程が必要な場合は、必要に応じて静電チャックを高温状態として帯電除去作業を行うことも可能である。このような場合においても、紫外線照射による光電効果を利用した本実施の形態に係る静電チャックによる帯電除去方法であれば、極めて短時間に処理を終了できるので、スループットが高いというメリットを享受できる。
【0039】
次に、上記帯電除去方法に適した静電チャック100の、特に誘電体層11の特徴について説明する。まず、上述する紫外線照射を用いた帯電除去方法を使用するためには、静電チャック100のセラミックス基体10、特に誘電体層11が、照射される紫外線に対し、光電効果を示すものでなくてはならない。誘電体層11は、半導体的性質を示し得る窒化アルミニウム(AlN)や炭化珪素(SiC)材料でできていることが望ましい。しかし、完全な結晶バルク体であるAlNのエネルギーギャップは、6.4eVであり、例えば照射される紫外線波長が360nmの場合、フォトンエネルギーは3.4eVと、それより小さいので、そのままでは光導電性効果を有効に発揮することはできない。従って、酸素等の不純物の添加により、照射される紫外線波長で励起できるに足るドナー準位を形成することが必要となる。例えば、AlNの場合、固溶した酸素は、AlN中の窒素と置換され、余剰電子、すなわちドナーを作り、ドナー準位を形成できる。
【0040】
さらに、上述する帯電除去方法では、静電チャック表面の残留電荷が誘電体層11中の電流パスを通り、電極20に流れることが望ましい。このためには、誘電体層11全体に導電性が付与されることが好ましい。したがって、ごく表面の誘電体層11のみならず、電極20の接する最も深い部分の誘電体層11全てが紫外線照射による光電効果により導電性を示す状態になることが望ましい。すなわち、照射された紫外線は、少なくとも誘電体層11の最も深い部分にも達することができる透過率を有し、かつ効率的に光電効果が発現されるよう、高い吸収率を示すことが好ましい。例えば、誘電体層11は、照射される紫外線に対し、その厚みにおいて、5%以上10%以下の透過率を示すことが望ましい。
【0041】
このような透過率の調整は、不純物量の他、結晶性、すなわち粒径等の影響を大きく受ける。同一の厚さの誘電体層11を透過する紫外線は、誘電体層11の粒径が小さいほど、粒界の影響を多く受けるため、粒界部分での、反射、散乱、吸収による透過率の低下が見られる。また、誘電体層11中に結晶助剤等を含む場合は、これらの結晶助剤等が粒界に偏析するため、粒界部の結晶助剤等による吸収は、光吸収ロスとなり光電効果に何ら寄与しない。したがって、粒界の影響をできるだけ少なくし、バランスのよい透過率と吸収率を達成するためには、例えば上記酸素濃度を満たすAlNにおいて、平均粒径が3μm以上、より好ましくは5μm以上とする。
【0042】
また、上述するような比較的大きな粒径のAlNは、主に焼成温度、焼成時間を調整することにより可能となる。AlNの製造方法は、特に限定されず、ホットプレス法や常圧焼結法等いずれの方法を使用することもできる。
【0043】
ホットプレスを使用する場合は、ホットプレス圧力は約200kg/cm2以上とし、焼成時の最高温度まで5℃/時間以上10℃/時間以下の昇温速度で温度を上昇させ、最高温度は、1850℃以上1900℃以下とすることが好ましい。また、保持時間は1時間以上2時間未満とすることが好ましい。
【0044】
以上に説明するように、上記本実施の形態に係る静電チャックによる帯電除去方法によれば、紫外線照射により静電チャック表面にダメージを与えることなく、低温で、静電チャック表面の残留電荷を除去できる。低温での帯電除去が可能なので、上述した低温エッチングプロセスのように、基板を室温以下にする必要がある場合は、帯電除去工程の後、次の処理を再開するために、素早く温度を所定温度に戻すことができる。その上、数十秒以内の極めて短時間に帯電処理を終了できるため、帯電処理プロセスそのものおよびその後の保守ステップをトータルで短時間化することができる。また、本実施の形態に係る静電チャックによれば、上記の帯電除去方法を効果的に提供できる。
【0045】
【実施例】
以下、本発明の実施例および参考例について説明する。
【0046】
(実施例1)
実施例1では、図4に示す静電チャック評価用装置を使用し、静電チャック表面の帯電除去を行った。同図に示すように、静電チャック評価用装置としては、密閉可能なチャンバ510内に、静電チャック110と、この静電チャック11上方に100W定格の紫外線ランプ310を3本備えたものを使用した。紫外線ランプ310としては、100W定格、360nmに発光ピークを有する市販のブラックライトを使用した。また、静電チャック110の表面には、表面電位計610と表面温度計620を備え、静電チャックの表面電位の経時変化および、温度変化を測定した。
【0047】
静電チャック110としては、双極型を使用した。この静電チャック110は、次の方法で作製した。すなわち、まず窒化アルミニウム粉末をコールドアイソスタティクプレス法により、円盤状成形体を2つ作製した。この2つの円盤状成形体の間に、二領域に分割されたメッシュ状のMo金属バルク体電極を挟み、この状態で2つの成形体と電極をホットプレスし、一体焼結品を作製した。なお、詳細な条件としては、ホットプレス圧力は200kg/cm2とし、焼成時の最高温度まで10℃/時間の昇温速度で温度を上昇させ、最高温度を1900℃とした。また、最高温度での保持時間は1時間とした。その後、最高温度から1400℃まで、300℃/時間の冷却速度で冷却させ、1400℃において電源を切り、自然放冷させた。こうして作製した静電チャックの誘電体層の厚み、すなわち静電チャック表面から埋設電極までの深さは、約1mmであった。
【0048】
まず、静電チャック110上にシリコン(Si)ウエハを載置させ、静電チャック110内の埋設電極に、1000Vの印加電圧をかけ、Siウエハを吸着固定させた。その後、静電チャック110内の埋設電極にかけた印加電圧を解除し、ウエハを静電チャック表面から脱着させた。印加電圧を解除してから60秒後、紫外線ランプ310をオンにし、静電チャック110の露出表面に紫外線を照射した。紫外線照射開始時からの静電チャック310の表面電位の変化、すなわち残留電位の変化を表面電位計を用いて測定した。結果を図5に示す。なお、同図中に比較例として、紫外線を照射しない場合の静電チャック表面の残留電位変化を合わせて示した。
【0049】
図5のグラフに示すように、紫外線照射を行わない場合は、経時的に残留電位が減少するものの、次第に減少度合いは鈍り、180秒後にも30V以上の残留電位が存在した。これに対し、紫外線を照射した場合は、紫外線照射により瞬時に残留電位が低下し、15秒後にはほぼ0Vに達し、帯電除去がこの時点で終了したことが確認できた。一方、紫外線照射による静電チャック表面の温度はほとんど変化していなかった。
【0050】
この結果より、紫外線照射を利用した帯電除去方法を使用すれば、極めて短時間に、しかも静電チャック表面を加熱することなく帯電除去が可能なことが確認できた。
【0051】
(参考例1)
参考例1では、紫外線照射による帯電除去方法に適した静電チャックの誘電体層の材質を確認する検討を行った。検討に使用したサンプルの形態を図6に示す。同図に示すように、サンプルとして、厚み1mm、矩形平面を持つ板状体を用意した。サンプルの一辺の端部およびこれに対向する辺の端部にAgペーストを塗り一対の対向電極を形成し、対向電極間を流れるリーク電流(漏れ電流)を測定した。なお、電極部を除くサンプルの平面の大きさは、幅W×長さLを50mm×50mmとした。表1に示すように、サンプルの材質としては、AlN、アルミナ(Al2O3)、およびSiCの3種類を用意した。さらに、AlNについては、製造条件の異なるものを3種類用意した。いずれのAlNサンプルも酸素含有量は0.5wt%以上とした。表1に各サンプルの材質および、AlNについてはホットプレス製造条件について示す。なお、サンプル1は、上述する実施例1で使用した静電チャックの誘電体層と同じ材質のものである。
【0052】
【表1】
【0053】
図7に、各サンプルにおける漏れ電流の経時的変化を示す。なお、各サンプルの横に書かれた「大気圧」もしくは「真空」の表示は、使用した測定装置のチャンバ内の雰囲気を示すものである。本参考例においてはチャンバ内の雰囲気が真空と大気圧とで顕著な差はなかった。
【0054】
図7の結果からわかるように、2.2〜2.9eVのバンドギャップを示すSiCを使用したサンプル5は、紫外線照射により、漏れ電流が上昇し、表面抵抗が急激に下がり、3.4eVに相当する360nmを主発光波長とする紫外線の照射により、光電効果を示すことが明らかであった。しかし、半導体性質を示さない高バンドギャップ材料であるAl2O3を使用したサンプル4は、紫外線照射によっても、漏れ電流値、表面抵抗に変化はなかった。一方、AlNを使用したサンプル1〜3については、その製造条件等により、紫外線照射による帯電除去効果は発揮するものとしないものが生じた。図7に示すように、サンプル1およびサンプル3では、SiCと同様に、紫外線照射により漏れ電流値は大幅に上昇し、表面抵抗は減少したが、サンプル2では、紫外線照射によって漏れ電流値および表面抵抗の顕著な変化は見られなかった。
【0055】
(参考例2)
参考例1で使用したAlNを使用したサンプル1〜3の厚み方向における各吸収率、透過率、および反射率の波長依存性を測定した。結果を図9に示す。
【0056】
参考例1の結果では、サンプル1と3が、紫外線照射により漏れ電流の増大を示し、サンプル2が紫外線照射によっても漏れ電流の変化を示さなかった。この結果と図9に示す透過率等の波長依存性との関連を考察した。
【0057】
照射された360nm付近の波長における各サンプルの光吸収率は、サンプル1は約75%、サンプル3は約80%であるのに対し、サンプル2は約88%と高い光吸収率を示した。また、同紫外線波長における各サンプルの透過率は、サンプル1は約7%、サンプル3は約5%であるのに対し、サンプル2は0%であった。反射率については、サンプル1は約18.5%、サンプル2は約12%、サンプル3は約15%であった。
【0058】
サンプル1およびサンプル3の場合は、0%より高い透過率を示しているので、照射された紫外線がサンプルの厚み全体に到達していると考えられる。一方、サンプル2の場合は、透過率が0%であることから、紫外線は1mm厚のサンプル全体に達しておらず、照射された紫外線がごく浅い表面層のみで吸収され、紫外線照射による光導効果が生じたとしても、一部での発生にとどまり、サンプル全体としての顕著な光電効果として現れなかったものと予想される。
【0059】
すなわち、これらの結果より、紫外線照射による帯電除去を効果的に行うには、セラミックス基体、特に静電チャックの表面から埋設電極に至る領域にある誘電体層の全域が、紫外線照射による光電効果により低抵抗化できるよう、誘電体層は紫外線に対し、適度な透過を示すことが好ましいと考えられる。特に、静電チャック製品の場合は、漏れ電流が誘電体層を介して埋設電極に流れるので、誘電体層の厚み方向に電流パスが形成されなくてはならないため、透過率の調整はなおさら重要であると考えられる。
【0060】
また、図9に示す分光特性と表1に示したAlNの製造条件とを比較するとわかるように、粒径が小さいものほど透過率が低いことが確認できる。同じ厚みのサンプルであれば、粒径の大きさが小さいほど、粒界の比率が高くなり、粒界の影響をより受けやすくなる。粒界では、粒界部における反射ロスの他、粒界部に析出する不純物による吸収等のように、光電変換には利用されない光の吸収ロスが発生する。したがって、粒界の存在比率が高まると透過率が減少し、他のAlN部分に光が達せず、効果的な光電効果を得ることことができないだけでなく、粒界による光の吸収ロスが増加し、効率的な光電効果を導くことができない。よって、粒界の存在比率を低減することが望ましく、結晶粒が少なくとも3μmより大きく、好ましくは5μm以上とすることが望ましいといえる。
【0061】
以上、実施の形態および実施例に沿って本発明の静電チャックについて説明したが、本発明は、これらの実施の形態および実施例の記載に限定されるものでないことは明らかである。種々の改良および変更が可能なことは当業者には明らかである。
【0062】
【発明の効果】
以上に説明するように、本発明の静電チャックによれば、簡易な構成で、短時間にしかも加熱を伴うことなく帯電除去を行うことができる。
【0063】
また、本発明の静電チャックによれば、上記の帯電除去に最適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の静電チャックの概略構造を示す装置断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の静電チャックの帯電除去方法に使用するプラズマエッチング装置の概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る静電チャックの帯電除去方法に使用する紫外線の分光特性の一例を示す分光分布図である。
【図4】本発明の実施例で、使用した静電チャック評価装置の構造を示す装置構成図である。
【図5】本発明の実施例において、行った紫外線照射による帯電除去効果を示す静電チャック表面の残留電位の経時変化を示すグラフである。
【図6】参考例1および2において使用したサンプルの形態を示す概略平面図である。
【図7】参考例1および2において得られた、紫外線照射による漏れ電流の経時的変化を示すグラフである。
【図8】参考例1において得られた、紫外線照射によるサンプルの表面抵抗の経時的変化を示すグラフである。
【図9】参考例2において得られた、AlNサンプルの透過率、吸収率および反射率の波長依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
10・・・セラミックス基体
11・・・誘電体層
12・・・基体
20・・・電極
30・・・端子
100・・・静電チャック
200・・・ウエハ
300・・・紫外線ランプ
400・・・冷却板
500・・・チャンバ
510・・・高周波電極
Claims (1)
- 静電チャック上に吸着固定されたウエハを脱着後、前記静電チャックの表面に、水銀ランプで提供される400nm以下の波長域に主発光波長を有する紫外線を10秒〜60秒間照射する紫外線照射帯電除去に適した静電チャックであって、
400nm以下の波長域に主発光波長を有する紫外線に対し、厚み方向における透過率が5%以上10%以下であり、かつ前記紫外線に対し、光伝導効果を示す誘電体層と、
絶縁性の基体と、
前記誘電体層と前記基体との間に埋設された面状の電極と
を有し、
前記誘電体層は、0.5mm以上4mm以下の厚みを有し、かつ、窒化アルミニウムを主成分として有し、平均粒径が3μm〜10μmであることを特徴とする静電チャック。
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