JP4002088B2 - ゴルフクラブヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性などを向上しうるゴルフクラブヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
例えば金属製のゴルフクラブヘッドにおいては、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はウレタン樹脂等をベースとした塗料が一般的に用いられる。とりわけ、塗膜の最外側に形成されるトップコート層には、ヘッドを保護し耐摩耗性を向上するために硬度が大のポリエステル樹脂をベースとした塗料が用いられる。
【0003】
ところが、トップコート層にポリエステル樹脂を用いたヘッドは、耐摩耗性には優れるものの、塗膜が硬いために耐衝撃性に劣り割れ等による剥離が生じやすいという問題がある。またポリエステル樹脂系の塗料は、他の樹脂塗料に比べると同種の樹脂塗料であっても層間密着性に劣り、多層構造の塗膜を形成するときには前記耐衝撃性の低さと相まってトップコート層に剥離が生じやすいという問題がある。
【0004】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、トップコート層に、アクリル樹脂固形分100重量部に対してポリエチレンワックスを1.0〜10.0重量部含有したアクリル樹脂塗料を用いることを基本として、耐摩耗性、耐衝撃性、層間密着性などをバランス良く向上し、トップコート層の剥離などを効果的に防止しヘッドの美観を長期に亘って維持するのに役立つゴルフクラブヘッドを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、ヘッド基体の表面に塗膜を形成したゴルフクラブヘッドであって、前記塗膜は、アクリル樹脂固形分100重量部に対してポリエチレンワックスを1.0〜10.0重量部含有したアクリル樹脂塗料からなるトップコート層を含むことを特徴としている。
【0006】
また請求項2記載の発明は、前記ポリエチレンワックスは、平均粒径が10〜25μmであることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッドである。
【0007】
また請求項3記載の発明は、前記ポリエチレンワックスの最大粒径が30μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッドである。
【0008】
また請求項4記載の発明は、前記トップコート層の厚さが15〜35μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0009】
また請求項5記載の発明は、前記塗膜は、透明な前記トップコート層の内側に偏光材料を含有したアクリル樹脂塗料からなる偏光層を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1には、本実施形態のゴルフクラブヘッドとして、ウッド型のゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある。)1を例示している。該ヘッド1は、図2に部分的に拡大して示す如く、本例では金属材料からなるヘッド基体2の表面に塗膜3を形成している。
【0011】
前記ヘッド基体2は、例えば比強度が大きいチタン合金を採用するのが好ましいが、これ以外にも種々の金属材料、非金属材料が採用できる。また本例のヘッド基体2は、例えば鋳造、鍛造又はプレス等の加工を経て準備された部品を一体に接合することにより形成されるとともに、ワイヤーブラシやサンドブラスト等で表面を予め研磨され物理的な下地処理ないし脱脂処理等が施されている。
【0012】
前記塗膜3は、本例では該ヘッド基体2の底面をなすソール部を除く外表面に形成されたものを例示している。ただし、塗膜3はこのような態様に限定されずヘッド基体2の少なくとも一部に形成されていれば良い。また本例の塗膜3は、複数層からなる。具体的には最もヘッド基体2側に形成された下地層3aと、その外側に形成された着色層3bと、その外側に形成された偏光層3cと、その外側に形成されヘッド外表面をなすトップコート層3dとで構成されたものを例示している。
【0013】
前記下地層3aは、仕上げ処理を行ったヘッド基体2に無色透明のプライマーを塗装することにより形成される。プライマーには、例えばポリエステル樹脂、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂等をベース樹脂とする熱硬化型の無色透明の塗料が好適に使用できる。本例ではチタン合金、ステンレスといった金属材料との接着性が良くかつ衝撃に強いため一液性熱硬化型ポリエステル系塗料のプライマーを用いたものを例示している。
【0014】
このプライマーは、ヘッド基体2に均一に塗装された後、例えば150℃で15〜20分間程度加熱することにより焼き付けされて硬化する。これにより、ヘッド基体2の表面に、プライマーが硬化した皮膜、すなわち前記下地層3aを定着させることができる。このような下地層3aは、後に塗布される塗料との層間密着性を向上しうる他、ヘッド製造時に生じたピンホールの発見に役立つ。なおピンホールが発見されれば、下地処理の段階でパテ材などを用いて修復される。下地層3aの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば5〜40μm、より好ましくは10〜25μmとすることが望ましい。下地層3aの厚さが5μmよりも小になると、ヘッド表面の凹凸を平滑化するのが困難となる傾向があり、逆に40μmよりも大になると密着性、耐衝撃性が低下する傾向があるため好ましくない。
【0015】
前記着色層3bは、下地層3aの外側に着色塗料を塗装することにより形成される。前記着色塗料としては、特に限定されるものではないが、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂等をベース樹脂としこれに顔料、溶剤を配合した種々の熱硬化型の塗料を用いることができる。本例の着色塗料は、ベース樹脂がアクリル樹脂からなり、これに顔料を配合した塗料を用いている。なお顔料に変えて染料を用いることもできる。そして、着色塗料を塗装した後、約150℃で15分間程度の焼き付け処理を行い該着色塗料を前記下地層3aの上に硬化させ着色層3bを形成している。なお着色層3bの厚さが薄すぎると塗装工程に熟練した技術を要する他、見た目に塗膜の厚さを感じ難くなる傾向があり、逆に厚すぎると、もろくなって耐衝撃性に劣る傾向がある。このような観点より、着色層3bの厚さは、好ましくは10〜50μm、より好ましくは20〜40μm程度とすることが望ましい。
【0016】
前記偏光層3cは、前記着色層3bの外側に偏光材料4を含む偏光塗料を塗装することにより形成される。偏光塗料は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂等をベース樹脂とする透明な熱硬化型の塗料に、偏光材料4が配合されたもので、本実施形態では着色顔料等の顕色剤は含まれていないものが用いられる。偏光材料4としては、例えば雲母薄、雲母の表面を酸化チタンなどでコーティングしたもの、さらには表面を樹脂加工した金属薄片や着色したアルミ薄片などを用いることができる。着色したアルミ薄片は、蒸着法によってアルミ薄片を着色したもので、他の偏光材料に比べて光色にムラが少なくより美観を向上しうる点で好ましい。また着色されたアルミ薄片は、一般にフレーク状をなし、その大きさが概ね10〜100μm程度に設定される。
【0017】
偏光材料の多くは、通常、薄片状をなしており、この大半が塗装面とほぼ平行に配向される。このため、塗装面をほぼ垂直に見たときにヘッドを特定の色、即ち前記着色層3bの基本色に見せるが、塗装面を傾斜させることにより、光の反射、屈折を生じさせ他の色に違えて見せる。これにより意外性を発揮しヘッドに高級感、美観を生じさ得る。またこのような色の変化は、周囲の光量によっても生じうる。
【0018】
前記偏光塗料4は、特に限定はされないがベース樹脂及び偏光材料の総和を100(溶剤成分を除く)とすると、偏光材料4の配合量を重量比で0.1〜7.5%程度、より好ましくは0.5〜5.5%程度とすることが望ましい。前記偏光材料4の配合量が多すぎると、偏光材料での反射光量がより多くなるため、クラブとして構えた際にまぶしく感じられる傾向があり、逆に少なすぎると偏光材料4を用いたことによる偏光作用を十分に具現化し得ずヘッドの意匠性を向上し得ない。
【0019】
本実施形態では、偏光塗料として、着色したアルミ薄片とアクリル樹脂からなるベース樹脂とを混合した熱硬化塗料を用いるとともに、これを前記着色層3bの外側に塗布し150℃で10〜20分間加熱して焼き付けを行った。偏光層3cの厚さは、特に限定はされないが、小さすぎると偏光作用が十分に得られない傾向があり、逆に大きすぎると耐衝撃性が低下するため10〜40μm、より好ましくは15〜35μmとするのが望ましい。偏光層3cのベース樹脂には、アクリル樹脂が好ましい。これは他の樹脂に比べて耐候性(耐変色性)に優れ、かつ塗膜厚さの制御が容易に行えるからである。ポリエステル樹脂を用いた場合、塗膜厚さが大となり易く厚さの制御が困難となり、またウレタン樹脂、エポキシ樹脂では変色し易く、偏光層3cとしての意匠性を損ね易くなる。
【0020】
前記トップコート層3dは、アクリル樹脂からなるベース樹脂にポリエチレンワックスを配合して形成され、本例では実質的に透明のものを用いている。ポリエチレンワックスは、低重合度のポリエチレンないしその酸化物を原料とした合成系ワックスの一種あって、重合体の分子量が100〜100000程度、より好ましくは1000〜10000のものが好適である。また軟化点としては80〜160℃程度、より好ましくは90〜140℃程度のものが好ましい。このようなポリエチレンワックスは常温では、粒子状をなし、市販されている該粒子粉末又は予め溶剤等に分散させたスラリー状のいずれをも用いることができる。
【0021】
従来、アクリル樹脂をベース樹脂とした塗料は、耐摩耗性が低く、例えば塗装工程における毛羽立ち、マスキング部の境界などの微細塗りムラといった不良の手直しも困難であるため、トップコート層には不向きと考えられていた。しかしながら、本発明者らの種々の実験の結果、上述のポリエチレンワックスをアクリル樹脂に配合することにより、図2に模式的に示す如く塗料の硬化反応時に硬質のポリエチレン粒子5がトップコート層3dの表面付近に多く分布することによって該トップコート層3d膜の表面硬度を向上させ、従来低いとされていた耐摩耗性が向上させ得ることが判明した。また、アクリル樹脂は、ポリエステル樹脂に比べて耐衝撃性に優れる他、同種の樹脂(即ちアクリル樹脂)との層間密着性も強いため層間剥離を防止できる。従って、このようなトップコート層3dは、アクリル樹脂の優れた特性を活かしつつ耐摩耗性を向上しうる結果、該トップコート層3dの剥離を防止しヘッドの美観を長期に亘って維持しうる。なおトップコート層3dの塗料のベース樹脂としてエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等も考えられるが耐候性が低く黄変するため好ましくない。またワックスとしてポリオレフィンを用いたものも市販されているが、このものは透明性が低いためトップコート層3dには適さない。
【0022】
ポリエチレンワックスの配合量は、上記アクリル樹脂の固形分100重量部に対して1.0〜10.0重量部、より好ましくは3.0〜5.0重量部であることが望ましい。前記ポリエチレンワックスの配合量が1.0重量部未満であると、該トップコート層3dの耐摩耗性を向上することが困難となり、逆に10.0重量部を超えると耐摩耗性の向上効果が頭打ちとなるばかりか、トップコート層3dが白濁化して透明度が低下し、その内側の着色層3bや偏光層3cの意匠性を損ねる傾向がある。なおトップコート層3dを形成する塗料は、アクリル樹脂、ポリエチレンワックス以外に溶剤を含み、液状組成物として形成されるとともに、刷毛、エアブラシ、スプレーガンなどで前記偏光層3cの外側に塗装される。
【0023】
また前記ポリエチレンワックスは、常温での平均粒径が10〜25μm、より好適には15〜25μmであることが望ましい。ポリエチレンワックスの平均粒径が10μm未満になると、粒子が小さすぎてトップコート層3dの表面硬度を高める効果が低下し耐摩耗性の向上が不足する傾向があり、逆に25μmを超えると、一般的なトップコート層3dの厚さよりも大となり、ポリエチレンワックスの粒子が塗膜表面から突出するなど、ヘッド1の表面の平滑さが損なわれる。より好ましくは、前記ポリエチレンワックスの最大粒径を30μm以下に限定する。
【0024】
またこのようなトップコート層3dの厚さは、特に限定はされないが、好適には15〜35μm、より好ましくは15〜30μmとするのが望ましい。該トップコート層3dの厚さが15μm未満になると、ポリエチレンワックスが表面から露出するおそれがあり、トップコート層3dの平滑さを損ねる傾向がある。逆に35μmを超えると、塗膜の剛性が大となり耐衝撃性が低下するという傾向があるため好ましくない。とりわけ前記塗膜3の全厚さtは、例えば100μm以下、より好ましくは25〜90μm、さらに好ましくは40〜80μmとすることが望ましい。前記塗膜3の全厚さtが100μmを超えると、もろくなるなど耐衝撃性が低下する他、塗膜3の厚さを大きく感じ易く、ヘッドを重く感じさせる傾向がある。
【0025】
以上、本発明の実施形態についてウッド型のゴルフクラブヘッドを例に挙げ説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、アイアン型やユーティリティ型、さらにはパター型などの各ヘッドについても適用することが可能である。また塗膜は、トップコート層3dを有していれば足り、偏光層3cなどを省略することきできる。
【0026】
【実施例】
表1に仕様に基づいてヘッド基体の表面の塗膜を形成して複数のゴルフクラブヘッドを試作し、塗膜の耐摩耗性、耐衝撃性、トップコートの密着性、外観についてテストを行った。なお塗膜はいずれも4層とし、その共通の仕様として、プライマーにはエポキシ樹脂系塗料を、着色層にはアクリル樹脂系塗料を、偏光層には、偏光材料としてアルミ薄片を配合したアクリル樹脂系塗料をそれぞれ使用した。各層の塗膜厚さは概ね15〜25μmとし、全体厚さを100μm以下に抑えた。また焼き付け条件は、150℃で20分とした。テスト方法は次の通りである。
【0027】
<耐摩耗性>
布バフにてヘッドの塗膜を研磨し、表面のくもり具合を目視により観察し、以下の基準にて評価を行った。
◎:くもり無し
○:くもりがあるが、偏光層、着色層の意匠は損ねていない
×:くもりがあり、偏光層、着色層の意匠も損ねている
【0028】
<耐衝撃性>
150mmの高さから500gの鉄棒をヘッドの塗膜に落下させ、衝突部での塗膜の剥離状況を目視により観察した。損傷の大きさ、深さを総合的に観察し5段階で評価した。数値が大きいほど良好である。
【0029】
<密着性>
室温50℃、湿度90%で240時間老化後、JIS−K5400に準拠してクロスハッチ評価(1mm角×100)を行い、以下の基準で評価した。
○:剥離が0〜10/100
×:剥離が11/100以上
【0030】
<外観>
トップコート層を形成後、その外観を目視により観察し、以下の基準で評価した。
◎:濁りがなく透明である
○:濁りがあるが、偏光層、着色層の意匠を損なっていない
×:濁りがあり、偏光層、着色層の意匠も損ねている
テストの結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
テストの結果、実施例のものは、比較例と比べても耐摩耗性、耐衝撃性、外観などバランス良く向上していることが確認できた。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、ヘッド基体の表面に形成された塗膜が、ポリエチレンワックスをアクリル樹脂固形分100重量部に対して1.0〜10.0重量部含有したアクリル樹脂塗料からなるトップコート層を含むことにより、アクリル樹脂塗料の優れた耐衝撃性を活かしつつ耐摩耗性を高めることができ、塗膜の剥離を効果的に防止しうる。またトップコート層の内層との層間密着性をも向上することが可能である。
【0034】
また請求項2ないし4記載の発明のように、ポリエチレンワックスの粒径やトップコート層の厚さなどを限定したときには、トップコート層の耐摩耗性、耐衝撃性などをよりバランス良く向上できる。
【0035】
また請求項5記載の発明のように、前記塗膜は、トップコート層の内側に偏光材料を含有したアクリル樹脂塗料からなる偏光層を含むときには、該偏光層の美観を透過させるとともに、偏光層との層間密着性を向上し、トップコート層の剥離がより効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【図2】その塗膜を例示する部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1 ゴルフクラブヘッド
2 ヘッド基体
3 塗膜
3a 下地層
3b 着色層
3c 偏光層
3d トップコート層
Claims (5)
- ヘッド基体の表面に塗膜を形成したゴルフクラブヘッドであって、
前記塗膜は、アクリル樹脂固形分100重量部に対してポリエチレンワックスを1.0〜10.0重量部含有したアクリル樹脂塗料からなるトップコート層を含むことを特徴とするゴルフクラブヘッド。 - 前記ポリエチレンワックスは、平均粒径が10〜25μmであることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
- 前記ポリエチレンワックスの最大粒径が30μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッド。
- 前記トップコート層の厚さが15〜35μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
- 前記塗膜は、透明な前記トップコート層の内側に偏光材料を含有したアクリル樹脂塗料からなる偏光層を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
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