JP4001649B2 - 半導体装置の作製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本明細書で開示する発明は、半導体装置の作製工程での不純物イオンの注入技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ガラス基板や石英基板上に薄膜トランジスタを作製する技術が知られている。図8に一般的な薄膜トランジスタの作製工程を示す。
【0003】
先ず図8(A)に示すようにガラス基板11上に下地膜として酸化珪素膜12を成膜する。さらに図示しない非晶質珪素膜をプラズマCVD法等でもって成膜する。さらに加熱処理を加えることにより、非晶質珪素膜を結晶化させ、結晶性珪素膜を得る。そしてこの結晶性珪素膜をパターニングすることにより、13で示す薄膜トランジスタの活性層を形成する。(図8(A))
【0004】
次に図8(B)に示すようにゲイト絶縁膜として機能する酸化珪素膜14を成膜する。さらにシリサイド材料やアルミニウム等の金属材料を用いてゲイト電極15を形成する。
【0005】
図8(B)の状態を得たら、不純物イオンの注入を行う。Nチャネル型の薄膜トランジスタを形成するのであれば、ここでリンイオンを注入する。(図8(C))
【0006】
この工程において、16と18の領域に不純物イオンが注入される。また17の領域にはゲイト電極15がマスクとなることによって不純物イオンの注入が行われない。
【0007】
この不純物イオンの注入工程によって、ソース領域16、チャネル形成領域17、ドレイン領域18が自己整合的に形成される。
【0008】
この後(D)に示すように層間絶縁膜19として酸化珪素膜等を成膜する。そして、コンタクトホールの形成を行い、ソース電極20とドレイン電極21を形成する。これらの電極は、アルミニウムや適当な金属シリサイドでもって構成する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような薄膜トランジスタの作製工程において、図8(C)に示す不純物イオンの注入工程が重要であることが判明している。即ち、図8(C)に示す不純物イオンの注入工程によって、得られる薄膜トランジスタの特性が大きな影響が受けることが判明している。
【0010】
本発明者らの実験によれば、不純物イオンの注入の際に予め試料を加熱しておくことが効果的であることが判明している。
【0011】
一般に不純物イオンの注入対象は、不純物イオンのエネルギーによって自然に加熱される。しかしここで重要なのは、不純物イオンの注入が行われる際に予め予備加熱をしておくことである。
【0012】
即ち、(C)に示すような不純物イオンの注入の先立って予め試料を加熱することが重要となる。具体的には、不純物イオンの注入プロセスを安定化させ、高い再現性を得ることができる。
【0013】
近年開発されつつある大面積を有するアクティブマトリクス型の液晶表示装置の作製工程等においては、試料の大きさ(基板の大きさ)は300mm×400mm以上というように大型化する傾向がある。
【0014】
このような大型化した試料の全体を均一性よく加熱することは一般には困難である。特殊な場合として、特殊な加熱手段を利用することにより、加熱の均一性を高めることが可能であるが、装置の複雑化を招き、コスト高の要因となる。
【0015】
まして、イオンの注入を行う装置の内部に大面積を有する試料全体を均一性良く加熱する手段を設けることは、コストやメンテネンスの問題から非常に困難である。具体的には、複雑な形状を有する抵抗加熱手段(ヒータ)とその制御システムが必要となる。そしてこのような構成を気密構造を有するイオンの注入を行う装置の内部に配置することは著しくメンテナンスを困難とする。
【0016】
上記の加熱の不均一性は、不純物イオンの注入効果の面内バラツキの原因となる。この不純物イオンの注入効果の面内バラツキは、アクティブマトリクス型の液晶表示装置であれば、表示のムラや表示の不鮮明さの原因となる。
【0017】
本明細書で開示する発明は、上記不純物イオンの注入に際して予め行われる加熱の不均一性の問題を解決することを課題とする。また、前記加熱の不均一性の問題を解決すると同時に、装置の複雑化や作製コストの上昇を招かない技術を提供することを課題とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本明細書で開示する発明は、不純物イオンの注入の前に水素イオンの注入を行い試料を予め加熱しておくことを特徴とする。この水素イオンの注入による加熱を行うことで、試料の全体を高い均一性でもって加熱することができる。
【0019】
さらに副次的な効果ではあるが、水素イオンの注入を行うことで、最終工程における水素化加熱処理において、注入された水素原子を水素化のための水素供給源とすることができ、効果的な水素化を行わすことができる。
【0020】
水素イオンを注入することにより、試料が加熱されることを示すデータを図2に示す。図2に示すのは、ソース及びドレイン領域を形成するために不純物イオンを注入する前の状態において、試料に対して水素イオンを注入した際の試料の温度である。
【0021】
図2を見れば明らかなように水素イオンを注入することにより、そのドーズ量に比例して試料の温度は上昇する。
【0022】
この方法を利用することにより、試料が大面積を有していてもその全面に対して高い均一性でもって加熱を行うことができる。
【0023】
この水素イオンの注入による加熱は、不純物イオンの注入の前に予め行っておくことが重要である。不純物イオンの注入の前に予め試料を加熱しておくことにより、不純物イオンの注入による効果やその再現性を高いものとすることができる。
【0024】
また、不純物イオンの注入後に必要とされる被注入領域のアニールと注入された不純物の活性化に必要とされるエネルギーを小さくすることができる。具体的には、不純物イオンの注入後に加熱処理を行うのであれば、その加熱温度を下げることができる。また、不純物イオンの注入後にレーザー光の照射によるアニールを行うのであれば、その照射エネルギー密度や照射回数を減少させることができる。
【0025】
このような効果は、工程の再現性を高め、また作製工程に用いられる装置(半導体装置の作製装置)に対する負担を軽減させ、さらにプロセス不良の発生を低減することに大きな寄与をする。
【0026】
水素イオンの他には、ヘリウム、アルゴン、ハロゲン元素から選ばれた元素のイオンを用いることができる。これらの加熱のための注入イオンとしては、半導体材料と結合し半導体特性を損なわないものを用いる必要がある。
【0027】
例えば、半導体材料として珪素を用いた場合には、加熱用の注入イオンとして窒素や酸素は利用できない。これは、窒化珪素や酸化珪素が形成されてしまうからである。
【0028】
本明細書で開示する発明の一つは、
半導体材料を変質させるための不純物イオンを注入する工程において、
当該不純物イオンの注入前に予め水素イオンの注入により半導体材料を加熱しておくことを特徴とする。
【0029】
不純物イオンの注入により、半導体材料を変質させる具体的な例としては、申請または実質的に真性な半導体材料にPまたはN型を付与する不純物を注入する例を挙げることができる。また、PまたはN型を有する半導体材料にNまたはP型を付与する不純物を注入し、その導電型を反転させる場合を挙げることができる。
【0030】
他の発明の構成は、
絶縁表面を有する基板上に形成された非単結晶珪素薄膜に対して一導電型を付与する不純物イオンを注入する方法であって、
当該不純物イオンの注入前に予め水素イオンの注入により非単結晶珪素薄膜を加熱しておくことを特徴とする。
【0031】
水素イオンの注入により、予め非単結晶珪素膜を加熱しておくことにより、後に注入される不純物イオンの活性化率を高いものとすることができる。また、不純物イオンの注入による効果を高い再現性でもって得ることができる。
【0032】
一般に非単結晶珪素膜の場合、膜中に欠陥に起因する多数の準位が形成されている。ここで、水素イオンを注入することで、後に水素による欠陥のアニールが行われる効果を得ることができる。
【0033】
非単結晶珪素薄膜としては、一般にスパッタ法や気相法で成膜された珪素膜を出発膜にして得られた結晶性珪素膜を挙げることができる。これらの結晶性珪素膜は、一般に微結晶珪素膜や多結晶珪素膜と称されている。
【0034】
水素イオンの注入による試料の加熱は、試料が250℃以上となるようにすることが好ましい。具体的な水素イオンのドーズ量としては、2×1016ions/cm2 以上とすることが好ましい。
【0035】
このドーズ量の限定範囲の基礎付けは、図3に示すデータにより得られる。図3には、水素イオンのドーズ量を3×1016ions/cm2 以上とした場合にOFF電流値が激減することが示されている。
【0036】
図3からは、水素イオンのドーズ量器2×1016ions/cm2 以上とすることにより、OFF電流値を低減できることが結論される。
【0037】
また、図2には2×1016ions/cm2 程度のドーズ量で水素イオンを注入した場合、試料が250℃程度に加熱されることが示されている。
【0038】
水素イオンのドーズ量の上限は、プロセス時間や装置の性能によって制限される。一般には、1×1018ions/cm2 程度が上限となる。一般には、試料が耐える温度を上限として水素イオンのドーズ量の上限を決めればよい。例えば、ゲイト電極としてアルミニウムを利用する場合には、耐熱温度の上限は450℃程度となる。この温度は、使用する基板の種類等によっても制限される。
【0039】
【実施例】
〔実施例1〕
本実施例では、本明細書で開示する発明を利用して薄膜トランジスタを作製する例を示す。
【0040】
図1には、1つの薄膜トランジスタを作製する例が示されているが、実際には数百×数百以上の数の薄膜トランジスタが数百mm×数百mmの大きさを有する同一基板上に同時に作製される。
【0041】
まず、図1(A)に示すようにガラス基板101上に下地膜102として、酸化珪素膜を3000Åの厚さに成膜する。この酸化珪素膜の成膜方法はスパッタ法を用いる。
【0042】
次に図示しない非晶質珪素膜をプラズマCVD法または減圧熱CVD法でもって1000Åの厚さに成膜する。図示しない非晶質珪素膜を成膜したら、加熱処理またはレーザー光の照射、または加熱処理とレーザー光の照射とを併用した方法を用いて、図示しない非晶質珪素膜を結晶化させる。こうして図示しない結晶性珪素膜を得る。
【0043】
次に図示しない結晶性珪素膜をパターニングすることにより、薄膜トランジスタの活性層103を形成する。こうして図1(A)に示す状態を得る。
【0044】
次にゲイト絶縁膜104として機能する酸化珪素膜を1000Åの厚さにプラズマCVD法でもって成膜する。
【0045】
さらに適当な金属材料またはシリサイド材料を用いて、ゲイト電極105を形成する。こうして図1(B)に示す状態を得る。
【0046】
図1(B)に示す状態を得たら、試料をドーピング装置内に配置する。ここでは、プラズマドーピング法でもって水素イオンの注入をまず行う。そして次にリンイオンの注入を行う。
【0047】
まず、ドーピング装置のチャンバー内に水素ガスを導入し、試料に対して水素イオンの注入を行う。水素イオンのドーズ量と試料の加熱温度とは図2に示すような関係にある。
【0048】
ここでは、図3に示すOFF電流特性の改善効果の兼ね合いから試料の加熱温度を約280℃とする。即ち、図3に示すように水素イオンのドーズ量を3×1016ions/cm2 とする。
【0049】
こうして水素イオンのドーピングを行うことによって、図1(C)の状態にある試料を加熱する。この加熱によって、試料全体は均一に加熱される。
【0050】
そしてドーピングガスをフォスフィン(PH3 )に切り換え、引き続いてPイオンの注入を行う。この際、注入されるリンイオンや、フォスフィンが分解されることによって生成される水素イオンの注入によって試料は自然に加熱される。
【0051】
本実施例で特徴とするのは、このリンイオンの注入の際に行われる加熱の前に予め水素イオンの注入による加熱を行っておくことである。
【0052】
リンのドーズ量に関しては、薄膜トランジスタの必要とする特性に鑑み決定すればよい。
【0053】
図1(D)に示すリンイオンのドーピングを行うことで、ソース領域108、チャネル形成領域109、ドレイン領域110が自己整合的に形成される。
【0054】
なお、Pチャネル型を作製するのであれば、上記の図1(D)に示す工程において、B(ボロン)イオンを注入すればよい。
【0055】
図1(D)に示す不純物イオンのドーピングが終了したら、レーザー光の照射を行う。このレーザー光の照射を行うことにより、不純物イオンの衝撃によって損傷した領域のアニールと注入された不純物イオンの活性化とを行う。レーザー光としては、波長248nmを有するKrFエキシマレーザーを用いればよい。
【0056】
このレーザー光の照射によるアニールは、従来行われたものに比較して、より低エネルギーで必要とする効果を上げることができる。これは、図1(C)の水素イオンの注入を行うことによって、図1(D)の不純物イオンの注入時において、不純物イオンの活性化率を高めることができ、また不純物イオンの衝撃による損傷(ソース/ドレイン領域の損傷)を低減できるからである。
【0057】
次に層間絶縁膜111をプラズマCVD法でもって成膜する。層間絶縁膜111としては、窒化珪素膜と酸化珪素膜との積層膜を用いることができる。また、窒化珪素膜または酸化珪素膜と樹脂膜との積層膜を用いることができる。
【0058】
層間絶縁膜111を成膜したら、コンタクトホールの形成を行い、ソース電極112とドレイン電極113の形成を行う。これらの電極は、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜との積層膜で構成する。
【0059】
こうして図1(E)に示す状態を得る。図1(E)に示す状態を得たら、350℃で5%の水素雰囲気中において、1時間の加熱処理を行う。この工程において、先の(C)に示す工程において注入された水素イオンが活性化され、活性層中に存在する欠陥のアニールに寄与することとなる。なお、水素は不活性気体(例えば窒素)で所定の濃度にまで希釈する。
【0060】
なお、従来においては、上記の水素熱処理は水素100%、あるいは50%以上の高い水素濃度の雰囲気で行われていた。これは、そのような高濃度にしなければ、水素熱処理の効果が得られなかったからである。
【0061】
しかし、本実施例の場合は図1(C)に示す工程において注入された水素イオンが上記水素化工程において利用される(水素供給源となる)ので、雰囲気の水素濃度を下げることができる。
【0062】
このことにより、水素を高濃度に含んだ雰囲気を350℃(あるいはそれ以上の温度)という高温にすることを避けることができる。これは、プロセスの安全性を向上させる上で非常に有用なこととなる。
【0063】
こうして薄膜トランジスタを完成させる。このようにして得られた薄膜トランジスタの特性は、図1(C)で行われる水素イオンの注入におけるドーズ量に大きく依存する。
【0064】
図3に水素イオンのドーズ量と完成した薄膜トランジスタのドレイン電流との関係を示す。
【0065】
図3を見れば明らかなようにOFF電流の値は、水素イオンのドーズ量を3×1016 cm −2 以上とした場合に大きく低下する。この際、ON電流値も減少するが、その割合はあまり小さい。
【0066】
図3からは、OFF電流値の低減には、水素イオンのドーズ量を2×1016 cm −2 以上とすることが効果的であることが分かる。よって、図2からOFF電流値の低減には、水素イオンの注入によって試料を250℃程度以上に加熱することが有効であることが結論される。
【0067】
本実施例に示す作製工程によって得られた薄膜トランジスタの特性を図9(B)及び図10(B)に示す。図9及び図10の水素ドーピングのあり/なし、というのは、図1(C)に示す水素イオンの注入を行ったか、行わなかったかということである。
【0068】
図9(A)と図9(B)とを比較すれば明らかなように、Nチャネル型の薄膜トランジスタの場合、図1(C)に示す水素イオンの注入を行うことにより、素子毎の特性のバラツキを抑制し、さらにOFF電流特性を改善できる。
【0069】
また、図10(A)と図10(B)とを比較すれば明らかなように、Pチャネル型の薄膜トランジスタの場合、図1(C)に示す水素イオンの注入を行うことにより、やはり素子毎の特性のバラツキを抑制し、さらにOFF電流特性を改善できる。
【0070】
〔実施例2〕
本実施例は、本明細書に開示する発明に利用されるイオン注入を行う装置に関する。図4にイオン注入を行う装置の概要を示す。この装置は、プラズマドーピング装置と称される形式を有している。
【0071】
図4に示すプラズマドーピング装置は、気密性を有する筐体215で構成されている。装置には、必要とする減圧状態を得るための排気系218が配置されている。
【0072】
ドーピングはドーピングガスを高周波エネルギーによってイオン化させ、このイオン化したイオンを電気的に加速し試料に注入することによって行われる。
【0073】
ガス導入系200から導入されるドーピングガスは、ガス放出口206から207の領域に均一性良く放出され、そこでイオン化される。
【0074】
207の領域では、一対の電極206と202との間で高周波放電が行われ、ドーピングガスが分解するとともにイオン化される。この高周波放電は、高周波電源211からインピーダンスマッチング装置210を介して供給される高周波電力によって行われる。
【0075】
イオン化されたドーパントイオンは、引出し電極202によって加速領域220に引き出される。そして引出し電極202によって加速領域220に引き出されたドーパントイオンは加速電極203によって加速される。また、減速電極208において必要とする注入エネルギー(加速電圧)に調整される。
【0076】
なお、各電極は209で示される電極を基準として電位が設定される。
【0077】
加速領域220で加速されたドーパントイオンは、試料216に所定の加速電圧でもって注入される。なお、注入の均一性を高めるために試料216を載せたステージ217は回転する機構を有している。
【0078】
219で示すのは、イオン電流を計測するための電流計である。この電流計219で計測されるイオン電流に基づいて試料216に注入されるイオンの量を計測することができる。
【0079】
図4に示す装置において、212で示されるのが引出し電圧を加えるための電源である。また、213で示されるのが減速電圧を加えるための電源である。また、214で示されるのが加速電圧を加えるための電源である。
【0080】
図4に示す装置を用いて、本明細書に開示する発明を実施するには、まずドーピングガスとして水素をガス導入系200から導入し、水素イオンの注入を試料216に対して行う。
【0081】
この水素イオンの注入によって、試料は所定の温度に予備加熱される。次にドーピングガスを所定のドーパント(リンやボロン)を含んだガスに切替え、所定のドーパントのドーピングを行う。
【0082】
なお、所定のドーパントを含んだガスは、必要とす濃度に水素ガスによって希釈されるのが普通である。
【0083】
なお、ステージ217内に加熱手段を配置し、水素イオンの注入による加熱を助長させる構成としてもよい。即ち、加熱の均一性を水素イオンの注入によって維持し、補助的にステージ217内の加熱手段を利用する構成としてもよい。
【0084】
〔実施例3〕
本実施例は、図1に示す薄膜トランジスタの作製工程において、(D)に示す不純物イオンの注入後のアニールを加熱処理によって行う例である。一般に不純物イオンの後のアニールを加熱処理によって行った場合、所定のアニール効果を得るためには、その加熱温度を800℃、あるいは900℃以上とすることが必要とされる。
【0085】
しかし、図1(C)に示すような水素イオンの注入による予備加熱を行う場合半導体層に注入される不純物イオンの活性化率が高く、また不純物イオンの注入による半導体層の損傷が軽減されるので、上記の不純物イオンの注入の後に必要とされるアニールの加熱温度を下げることができる。
【0086】
例えば、図1に示すような結晶性珪素膜を用いた薄膜トランジスタの作製工程の場合、図1(D)の後に行う加熱処理の温度を450℃〜600℃程度とすることができる。
【0087】
〔実施例4〕
本実施例は、本明細書に開示する発明を利用してPチャネル型とNチャネル型の薄膜トランジスタを同時に作製する工程について説明する。図5以下に本実施例の作製工程を示す。
【0088】
まず、図5(A)に示すように、ガラス基板501上に下地膜502として酸化珪化膜をスパッタ法によって3000Åの厚さに成膜する。次に図示しない非晶質珪素膜をプラズマCVD法または減圧熱CVD法でもって500Åの厚さに成膜する。
【0089】
そして加熱処理とレーザー光の照射を行うことにより、この非晶質珪素膜を結晶化させ、図示しない結晶性珪素膜を得る。さらにこの結晶性珪素膜をパターニングすることにより、Pチャネル型の薄膜トランジスタの活性層503とNチャネル型の薄膜トランジスタの活性層504を形成する。
【0090】
活性層を形成したら、それを覆うようにゲイト絶縁膜505を成膜する。ここでは、ゲイト絶縁膜505として、プラズマCVD法でもって酸化珪素膜を1000Åの厚さに成膜する。
【0091】
さらにゲイト電極を構成するために図示しないアルミニウム膜をスパッタ法でもって5000Åの厚さに成膜する。このアルミニウム膜中には、アルミニウムの異常成長を抑制するためにスカンジウムを0.1 重量%含有させる。そしてこの図示しないアルミニウム膜の表面に極薄い緻密な膜質を有する陽極酸化膜を形成する。(この陽極酸化膜は507と508で示される)
【0092】
この陽極酸化工程は、3%の酒石酸を含んだエチレングルコール溶液をアンモニア水で中和したものを電解溶液として用いて行われる。陽極酸化はこの電解中において、アルミウム膜を陽極とし、白金を陰極として行う。ここで形成される陽極酸化膜はその膜厚を印加電圧によって制御することができる。
【0093】
この陽極酸化膜は、後に形成されるレジストマスクの密着性を高めるために機能する。
【0094】
次にレジストマスク509と510を配置し、アルミニウムでなるパターン506と500を形成する。(図5(A))
【0095】
図5(A)において、507と508が先に形成された極薄い緻密な膜質を有する陽極酸化膜である。
【0096】
図5(A)に示す状態を得たら、再度の陽極酸化を行う。この工程では、電解溶液として3%のしゅう酸水溶液を用いる。この工程で形成される電解溶液は、多孔質状(ポーラス状)を有している。
【0097】
この多孔質状の陽極酸化膜は、緻密な陽極酸化膜507と508、さらにレジストマスク509と510とが存在するために511や512で示されるようにアルミニウムパターンの側面に形成される。
【0098】
結果としてアルミニウムパターン513の側面に多孔質状の陽極酸化膜511が形成される。またアルミニウムパターン514の側面に多孔質状の陽極酸化膜512が形成される。
【0099】
この多孔質状の陽極酸化膜511と512は、その厚さを5000Åとする。この多孔質状の陽極酸化膜の膜厚は、陽極酸化時間によって制御することができる。
【0100】
ここでアルミニウムパターン513がPチャネル型の薄膜トランジスタのゲイト電極となる。また、アルミニウムパターン514がNチャネル型の薄膜トランジスタのゲイト電極となる。
【0101】
こうして図5(B)に示す状態を得る。次に専用の剥離液でレジストマスク509と510を除去する。こうして図5(C)に示す状態を得る。
【0102】
次に緻密な膜質を有する陽極酸化膜を形成する条件で再度の陽極酸化膜の形成を行う。この工程においては、多孔質状の陽極酸化膜511と512の内部に電解溶液が侵入するので、図5(D)の515や516で示されるように緻密な膜質を有する陽極酸化膜が形成される。即ち、ゲイト電極513と514を覆うように緻密な陽極酸化膜505と516が形成される。
【0103】
この陽極酸化膜515と516は、最初の緻密な陽極酸化膜507や508と一体化してしまう。この陽極酸化膜515と516の膜厚は1000Åとする。この緻密な膜質を有する陽極酸化膜の膜厚の制御は陽極酸化時の印加電圧の制御で行うことができる。
【0104】
図5(D)に示す状態を得たら、全面にP(リン)イオンの注入を行う。この工程において、517と519と520と522で示される領域にPイオンが注入される。(図5(E))
【0105】
この工程においては、Pイオンの注入前に水素イオンの注入を行い、予め試料を加熱しておく。そして試料が加熱された状態においてドーピングガスの切り換えを行い、Pイオンの注入を行う。
【0106】
次に酢酸とリン酸とショウ酸とを混合した混酸を用いて多孔質状の陽極酸化膜511と512とを除去する。こうして図6(A)に示す状態を得る。
【0107】
次に図5(E)におけるドーピングよりもライトドーピングの条件で再度Pイオンの注入を行う。この工程においても予め水素イオンの注入による予備加熱を行う。(図6(B))
【0108】
このPイオンの注入工程によって、523と525、さらに526と528の領域がN- 型で表記される弱いN型領域(低濃度不純物領域)となる。また、524と527の領域がPイオンの注入されないI型の領域となる。なお、524の領域がPチャネル型の薄膜トランジスタのチャネル形成領域となる。また527の領域がNチャネル型の薄膜トランジスタのチャネル形成領域となる。(図6(B))
【0109】
次にNチャネル型の薄膜トランジスタとなる領域をレジストマスク529で覆う。そして、B(ボロン)イオンの注入を行う。この工程においては、先にPイオンが注入されることによってN型化した領域を反転させるドーズ量でもってBイオンの注入を行う。(図6(C))
【0110】
この工程においてもBイオンの注入前に予め水素イオンの注入による予備加熱を行う。水素イオンの注入による予備加熱の後、ガスをジボラン(B26 )に変更して、Bイオンの注入を行う。
【0111】
このBイオンの注入工程の結果、P型領域530、そして領域530よりもさらに強いP型を有する領域531と533、領域530と同程度のP型を有する領域534が自己整合的に形成される。また、チャネル形成領域となる532で示される領域が自己整合的に形成される。
【0112】
こうして左側のPチャネル型の薄膜トランジスタと右側のNチャネル型の薄膜トランジスタとの原型が形成される。
【0113】
図6(C)に示すBイオンの注入が終了したら、レジストマスク529を除去し、図7(A)に示す状態を得る。そしてレーザー光の照射を行い、不純物イオンの注入によって損傷した領域のアニールと注入された不純物イオンの活性化とを行う。
【0114】
次に層間絶縁膜535として、窒化珪素膜と酸化珪素膜との積層膜をプラズマCVD法でもって成膜する。こうして図7(B)に示す状態を得る。
【0115】
そしてコンタクトホールの形成を行い、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜との積層膜でもって、Pチャネル型の薄膜トランジスタのソース電極536とドレイン電極527とを形成する。また同時にNチャネル型の薄膜トランジスタのソース電極539とドレイン電極528とを形成する。(図7(C))
【0116】
ここで、Pチャネル型の薄膜トランジスタのドレイン電極537とNチャネル型の薄膜トランジスタのドレイン電極538とを接続すれば、相補型に構成されたCMOS回路が得られる。
【0117】
図7(C)に示す構成は、Nチャネル型の薄膜トランジスタのみに低濃度不純物領域526と528が形成されている。ここで、ドレイン領域520側の低濃度不純物領域526が一般にLDD(ライトドープドレイン)領域と称されている。
【0118】
このLDD領域を配置すると、OFF電流値の低減、ホットキャリアによる劣化の抑制、移動度の低下、といった作用が得られる。
【0119】
一般にNチャネル型の薄膜トランジスタとPチャネル型の薄膜トランジスタとでは、Nチャネル型の薄膜トランジスタの劣化は大きく、また移動度が大きい。
【0120】
本実施例に示すような構成を採用することで、Nチャネル型の薄膜トランジスタの劣化を抑制させ、さらにその移動度を小さくすることができる。一方、Pチャネル型の薄膜トランジスタは、低濃度不純物領域が配置されないので、移動度の低下は無い。従って、全体として、Pチャネル型とNチャネル型の薄膜トランジスタの特性のバラツキを是正することができる。
【0121】
【発明の効果】
本明細書に開示する発明を利用することにより、不純物イオンの注入時における加熱を大面積にわたり均一性よく行うことができる。また、この加熱は不純物イオンの注入時においてガスの切り換えを行うだけでよいので、装置の複雑化や工程の煩雑化を招くことがない。
【0122】
即ち、大面積に対して高い均一性でもって、また高い再現性でもって不純物イオンの注入をコストの上昇を抑制した上で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 薄膜トランジスタの作製工程を示す図。
【図2】 水素イオンのドーズ量と試料の加熱温度との関係を示す図。
【図3】 水素イオンのドーズ量とドレイン電流との関係を示す図。
【図4】 イオン注入を行う装置の概要を示す図。
【図5】 薄膜トランジスタの作製工程を示す図。
【図6】 薄膜トランジスタの作製工程を示す図。
【図7】 薄膜トランジスタの作製工程を示す図。
【図8】 従来における薄膜トランジスタの作製工程を示す図。
【図9】 薄膜トランジスタの特性を示す図。
【図10】薄膜トランジスタの特性を示す図。
【符号の説明】
101 ガラス基板
102 下地膜(酸化珪素膜)
103 活性層(結晶性珪素膜)
104 ゲイト絶縁膜(酸化珪素膜)
105 ゲイト電極
106、107 水素イオンの注入により加熱される領域
108 ドレイン領域
109 チャネル形成領域
110 ドレイン領域
111 層間絶縁膜
112 ソース電極
113 ドレイン電極
501 ガラス基板
502 下地膜(酸化珪素膜)
503 Pチャネル型の薄膜トランジスタの活性層(結晶性珪素膜)
504 Pチャネル型の薄膜トランジスタの活性層(結晶性珪素膜)
505 ゲイト絶縁膜
506、500 ゲイト電極を構成するアルミニウムパターン
507、508 緻密な膜質を有する陽極酸化膜
509、510 レジストマスク
511、512 多孔質状の陽極酸化膜
513 Pチャネル型の薄膜トランジスタのゲイト電極
514 Nチャネル型の薄膜トランジスタのゲイト電極
515、516 緻密な陽極酸化膜
517 N型不純物領域
518 Pイオンが注入されなかった領域
519 N型不純物領域
520 N型不純物領域(ドレイン領域)
521 Pイオンが注入されなかった領域
522 N型不純物領域(ソース領域)
523、525 低濃度不純物領域
526、528 低濃度不純物領域
524 Pチャネル型の薄膜トランジスタのチャンネル形成領域
527 Nチャネル型の薄膜トランジスタのチャンネル形成領域
529 レジストマスク
530、531 ソース領域
532 チャネル形成領域
533、534 ドレイン領域
535 レジストマスク
536 ソース電極
537 ドレイン電極
539 ソース電極
538 ドレイン電極

Claims (6)

  1. 半導体材料にヘリウム又はアルゴンイオンを注入することにより前記半導体材料を加熱した後、
    前記半導体材料にN型又はP型を付与する不純物イオンを注入することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  2. ガラス基板上に下地膜を形成し、
    前記下地膜上に非晶質珪素膜を形成し、
    前記非晶質珪素膜を結晶化させ、結晶性珪素膜とし、
    前記結晶性珪素膜上にゲイト絶縁膜を介してゲイト電極を形成し、
    前記結晶性珪素膜に前記ゲイト絶縁膜を介してヘリウム又はアルゴンイオンを注入することにより前記結晶性珪素膜を加熱した後、
    前記結晶性珪素膜にN型又はP型を付与する不純物イオンを注入することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  3. 請求項1又は2において、前記加熱は250℃以上であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一において、前記ヘリウム又はアルゴンイオンの注入をプラズマドーピング法により行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一において、前記不純物イオンを注入した後、レーザー光の照射を行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
  6. 請求項1乃至4のいずれか一において、前記不純物イオンを注入した後、450℃〜600℃の温度で加熱処理を行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
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