JP4000898B2 - 水素供給装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、改質反応により水素を生成し、水素消費装置に水素を供給する水素供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、燃料電池に水素を供給する装置として、炭化水素化合物を改質して水素リッチガスを生成する改質器が知られている。改質器では、高温での触媒反応(水蒸気改質反応)により炭化水素化合物を含む改質原料を改質して水素を発生させる。この水蒸気改質反応のためには、改質原料を効率よく気化・昇温させる必要がある。
【0003】
改質原料を効率よく気化・昇温させて改質させるために、本出願人は特願2000−343666において、回転蓄熱式熱交換器を有する水素供給装置を提案している。この回転蓄熱式熱交換器は、回転蓄熱体と回転蓄熱体の両側に配置された一対のシール部材とから構成されている。回転蓄熱体は、改質原料が通過する低温流体通路と燃焼ガスが通過する高温流体通路の双方を横切るように配置され、回転することで高温流体通路の熱を低温流体通路に移送するように構成されている。
【0004】
このような回転蓄熱式熱交換器を用いることで、単位面積当たりの伝熱量を大きくすることができ、熱交換効率を高めることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の回転蓄熱式熱交換器は熱交換効率の点で優れている一方、回転蓄熱体が熱移送する2つの流路の間での流体漏れが発生する。
【0006】
この回転式熱交換器に発生する流体漏れを図12に基づいて説明する。図12は回転式熱交換器J20の構成を示しており、図12(b)は熱交換器J20の拡大断面図であり、図12(a)(c)は流体の流れ方向からみたガスシールJ22、J23を示している。図12(b)に示すように、回転蓄熱体J21は多数の貫通孔J21aが形成され、改質原料が通過する低温流体通路Aと燃焼ガスが通過する高温流体通路Bの双方を横切るように配置されている。また、回転蓄熱体J21の貫通孔J21aが開口する両側の端面にはケーシングJ1に固定されたガスシールJ22、J23が配置されており、回転蓄熱体J21は図12(a)(c)の矢印L方向にガスシールJ22、J23の間を回転するように構成されている。
【0007】
回転式熱交換器J20で発生するガス漏れには、回転蓄熱体J21とガスシールJ22、J23との間からの直接的なシール漏れMと、回転蓄熱体J21にトラップされ移送されることに起因する移送漏れNとがある。すなわち、熱交換部J20におけるガス漏れは、低温流体通路Aと高温流体通路Bとの圧力差と回転蓄熱体J21とガスシールJ22、J23との当接面における隙間に比例する隙間漏れ量と、ガスシールJ22、J23のクロスアームJ22b、J23bと回転蓄熱体J21の貫通孔J21aによって形成される空間移動容積(回転蓄熱体の回転に伴う移動)による移送漏れ量(キャリーオーバーロス)との合計になる。
【0008】
低温流体通路Aと高温流体通路Bは燃料電池を介して連通しており、圧力損失により、通常、上流側の低温流体通路Aに比較して下流側の高温流体通路Bの方が低圧になっている。このため、熱交換部J20におけるシール漏れは低温流体通路A→高温流体通路Bの方向で発生する。
【0009】
以上のようなガス漏れにより、低温流体通路Aより未反応の燃料ガスや反応過程にあるガス(以下、燃料ガスという)が、シール部を介して高温流体通路Bに漏洩し、燃焼ガスと混合され外部に放出される。このため、燃料ガスが外部に排出されてしまうとともに改質原料の損失が発生するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記点に鑑み、回転蓄熱式熱交換器を備えた水素供給装置において、有害ガスの漏れを抑制することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、少なくとも水素化合物を含む第1改質原料と少なくとも水を含む第2改質原料とからなる改質原料を用いた改質反応により水素を生成し、この水素を水素消費装置(50)に供給する水素供給装置であって、
改質原料が通過する低温流体通路(A)と、燃焼ガスを発生させる燃焼ガス供給部(60)が設けられた高温流体通路(B)と、回転軸(26)を中心に回転駆動されることにより低温流体通路(A)と高温流体通路(B)とを交互に移動する回転蓄熱体(21)を有するとともに、燃焼ガスの燃焼熱を改質原料に伝える熱交換部(20)と、熱交換部(20)で加熱された前記改質原料を改質して水素を生成する改質部(30)とを備え、
回転蓄熱体(21)は、軸方向に多数の貫通孔(21a)が形成されるともに、その貫通孔(21a)の開放側の端面が2つの領域に区画されており、第1の領域は低温流体通路(A)に位置し、第2の領域は高温流体通路(B)に位置しており、第1の領域に形成されている貫通孔(21a)には改質原料が通過し、第2の領域に形成されている貫通孔(21a)には燃焼ガスが通過するように構成され、
第1の領域のうち回転蓄熱体(21)の改質原料が供給される端面には、第1改質原料が供給される第1改質原料供給領域(X)と、第2改質原料が供給される第2改質原料供給領域(Y)とが設定されており、第1改質原料供給領域(X)は、第1の領域の回転方向(L)上流側に設定されており、第1改質原料供給領域(X)に供給された第1改質原料が回転蓄熱体(21)を通過するのに要する通過時間が、第1改質原料供給領域(X)に供給された第1改質原料が回転蓄熱体(21)の回転により高温流体通路(B)に移送されるのに要する移送時間より短くなるように、第1改質原料供給領域(X)が設定されることを特徴としている。
【0012】
このような構成により、第1改質原料が回転蓄熱体(21)の回転によって低温流体通路(A)から高温流体通路(B)に移送される前に、第1改質原料供給領域(X)を通過する第1改質原料を回転蓄熱体(21)から流出させることができる。これにより、回転蓄熱体(21)の移送漏れにより有害ガスである第1改質原料が高温流体通路(B)に漏れることを防止できる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明では、第1改質原料供給領域(X)は、第1の領域における外周部から所定間隔を設けて設定されることを特徴としている。
【0015】
これにより、回転蓄熱体(21)の第1の領域における外周部位でシール漏れが発生したとしても、有害ガスである第1改質原料がシール漏れによって低温流体通路(A)から高温流体通路(B)に漏れることを防止できる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明では、第2改質原料は、第1の領域における第1改質原料供給領域(X)を除いた領域に設定されることを特徴としている。これにより、回転蓄熱体(21)にトラップされた第1改質原料を、第2改質原料によって回転蓄熱体(21)から排出し浄化することができる。
【0017】
また、改質燃料が回転蓄熱体(21)を通過し終える時間は、改質燃料の流速(供給量)から定まる。そこで、請求項4に記載の発明のように、第1改質原料が回転蓄熱体(21)を通過する速度を検出する改質原料通過速度検出手段(11)を備え、第1改質原料供給領域(X)は、改質原料通過速度検出手段(11)により検出した第1改質原料が回転蓄熱体(21)を通過する速度に基づいて設定することができる。
【0018】
また、第1改質原料供給領域(X)に供給された第1改質原料が高温流体通路(B)に移送されるまでに要する時間は、回転蓄熱体(21)の回転速度から定まる。そこで、請求項5に記載の発明の発明のように、回転蓄熱体(21)の回転速度を検出する回転速度検出手段(24)を備え、第1改質原料供給領域(X)は、回転速度検出手段(24)により検出した回転蓄熱体(21)の回転速度に基づいて設定することができる。
【0019】
また、請求項6に記載の発明では、少なくとも水素化合物を含む第1改質原料と少なくとも水を含む第2改質原料とからなる改質原料を用いた改質反応により水素を生成し、この水素を水素消費装置(50)に供給する水素供給装置であって、
改質原料が通過する低温流体通路(A)と、燃焼ガスを発生させる燃焼ガス供給部(60)が設けられた高温流体通路(B)と、回転軸(26)を中心に回転駆動されることにより低温流体通路(A)と高温流体通路(B)とを交互に移動する回転蓄熱体(21)を有するとともに、燃焼ガスの燃焼熱を改質原料に伝える熱交換部(20)と、前記熱交換部(20)で加熱された前記改質原料を改質して水素を生成する改質部(30)とを備え、
回転蓄熱体(21)は、軸方向に多数の貫通孔(21a)が形成されるとともに、その貫通孔(21a)の開放側の端面が2つの領域に区画されており、第1の領域は前記低温流体通路(A)に位置し、第2の領域は前記高温流体通路(B)に位置しており、第1の領域に形成されている貫通孔(21a)には改質原料が通過し、第2の領域に形成されている貫通孔(21a)には燃焼ガスが通過するように構成され、
回転蓄熱体(21)の回転が停止している場合に、低温流体通路(A)における回転蓄熱体(21)の上流側に第1改質原料を所定時間供給し、第1改質原料が回転蓄熱体(21)を通過した後に、回転蓄熱体(21)を半周だけ回転させることを繰り返すことを特徴としている。
【0020】
これにより、第1改質原料が回転蓄熱体(21)を通過し終えた後に回転蓄熱体(21)の回転が始動するので、回転蓄熱体(21)の回転に伴う移送漏れNの発生を防止できる。
【0021】
また、請求項7に記載の発明では、第1改質原料の供給停止後、回転蓄熱体(21)を半周回転させる前に、低温流体通路(A)における回転蓄熱体(21)の上流側に第2改質原料を供給すること特徴としている。
【0022】
このように第1改質原料の供給停止後に第2改質原料を供給することで、回転蓄熱体(21)にトラップされた第1改質原料を、第2改質原料によって回転蓄熱体(21)から効果的に排出し浄化することができる。
【0023】
また、回転蓄熱体(21)に供給された第1改質原料が回転蓄熱体(21)を通過し終えるまでに要する時間は、第1改質原料の流速により定まる。そこで、請求項8に記載の発明では、第1改質原料が回転蓄熱体(21)を通過する速度を検出する改質原料通過速度検出手段(11)を備え、回転蓄熱体(21)の停止時間は、改質原料通過速度検出手段(11)により検出した第1改質原料が回転蓄熱体(21)を通過する速度に基づいて設定されることを特徴としている。
【0024】
また、請求項9に記載の発明では、回転蓄熱体(21)は、軸方向に多数の貫通孔(21a)が形成されるともに、その貫通孔(21a)の開放側の端面が2つの領域に区画されており、第1の領域は低温流体通路(A)に位置し、第2の領域は高温流体通路(B)に位置しており、第1の領域に形成されている貫通孔(21a)には改質原料が通過し、第2の領域に形成されている貫通孔(21a)には燃焼ガスが通過するように構成され、回転蓄熱体(21)の改質原料が供給される端面における第1の領域には、第1改質原料が供給される第1改質原料供給領域(X)と、第2改質原料が供給される第2改質原料供給領域(Y)とが設定されており、第1改質原料供給領域(X)は、第1の領域における外周部から所定間隔を設けて設定されることを特徴としている。
【0025】
これにより、回転蓄熱体(21)の第1の領域における外周部位でシール漏れが発生したとしても、有害ガスである第1改質原料がシール漏れによって低温流体通路(A)から高温流体通路(B)に漏れることを防止できる。
【0026】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0027】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を適用した第1実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1は本第1実施形態の水素供給装置の概略構成を示すブロック図であり、図2は水素供給装置の各構成要素の配置関係を示す概念図である。本第1実施形態の水素供給装置は、水素消費装置としての燃料電池50に水素を供給するように構成されている。
【0028】
図1、図2に示すように、本第1実施形態の水素供給装置は、改質原料供給部10、熱交換部(蒸発部)20、改質部30、CO除去部42、44、燃焼ガス供給部(オフガス供給部)60等を備えている。また、水素供給装置には、ハウジング1によって、改質原料が通過する低温流体通路(改質原料通路)Aと、燃焼ガスが通過する高温流体通路(燃焼ガス通路)Bとが並行して形成されている。低温流体通路Aと高温流体通路Bはそれぞれ独立しており、熱交換部20を介して熱の授受が行われる。
【0029】
低温流体通路Aでは、改質原料供給部10で供給された改質原料(水、空気、改質燃料)が熱交換部20で加熱・気化(蒸発)される。気化された改質原料は、改質部30にてH2およびCOを含む改質ガスに改質され、CO除去部42、44にてCOが除去された後、水素リッチガスとして燃料電池50に供給される。
【0030】
燃料電池50には、水素とともに空気(酸素)が図示しない空気供給用ポンプにより供給されるように構成されており、水素と酸素との電気化学反応により発電する。燃料電池50では、発電に用いられなかった未反応水素を含んだオフガスが排出される。
【0031】
高温流体通路Bでは、オフガスがオフガス供給路51を介して燃焼ガス供給部60に供給され、燃焼して燃焼ガスとなる。この燃焼ガスの燃焼熱は、熱交換部20を介して高温流体通路Bから低温流体通路Aを流れる改質原料に伝えられる。なお、本実施形態では、改質原料に含まれる改質燃料としてガソリンや灯油といった液体石油系燃料を用いている。
【0032】
図2に示すように低温流体通路Aの最上流部には、改質原料(水、空気、改質燃料)を供給する改質原料供給部10が配置されている。改質原料供給部10には、燃料流量制御弁11、水流量制御弁12、空気流量制御弁13、噴霧ノズル14、15、混合室16が設けられている。
【0033】
第1改質燃料としての改質燃料は燃料流量制御弁11で流量制御され、第1の噴霧ノズル14にて熱交換部20の上流側に噴霧される。第2改質燃料としての水と空気は水流量制御弁12および空気流量制御弁13で流量制御され、第2の噴霧ノズル15にて熱交換部20の上流側に噴霧される。この結果、改質燃料は第1の噴霧ノズル14から、水と空気は第2の噴霧ノズル15から、それぞれ独立して熱交換部20に供給される。これらの改質燃料と水および空気とは、熱交換部20を通過した後に、熱交換部20と改質部30との間で混合される。
【0034】
なお、熱交換部20における改質燃料の供給領域と、改質燃料以外の改質原料(水、空気)の供給領域については後述する。また、燃料流量制御弁11は、第1改質原料が後述の回転蓄熱体21を通過する速度を検出する改質原料通過速度検出手段を構成している。すなわち、燃料流量制御弁11の開度から改質燃料の供給量を推定することができるので、改質燃料供給量から改質燃料の流速を算出し、改質燃料が回転蓄熱体21を通過する速度を算出することができる。
【0035】
低温流体通路Aにおける改質原料供給部10の下流側には、熱交換部(蒸発部)20が配置されている。本第1実施形態の熱交換部20は回転式熱交換器である。
【0036】
図3は熱交換部(蒸発部)20の分解斜視図である。図3に示すように、熱交換部20には、熱エネルギを蓄える回転蓄熱体(マトリクス)21と、マトリクス21と密着摺動してガス漏れを防止する一対の静止ガスシール22、23と、マトリクス21を回転駆動する駆動用モータ24が設けられている。なお、駆動用モータ24は、回転蓄熱体21の回転速度を検出する回転速度検出手段を構成している。すなわち、駆動用モータ24の回転数から回転蓄熱体21の回転速度を算出することができる。
【0037】
マトリクス21は、コージェライト等の耐熱性セラミックからなる円盤形状に形成されている。マトリクス21は、軸方向に多数の貫通孔(セル)21aが形成されたハニカム構造となっている。マトリクス21におけるガスシール22、23と接触する外周側面部21bは、セメントコーティングされるか、あるいはソリッド状のセラミックリングが固着されることによって、シール面が形成されている。
【0038】
図4は、回転蓄熱体21を構成するセル形状の例を示している。図4(a)は矩形形状セル、図4(b)は三角形状セルであり、それぞれの表面には酸化触媒(白金、パラジウム等の単体あるいは混合物)24が添着(坦持)されている。これにより、高温流体通路Bに供給される燃料電池50のオフガスを触媒燃焼させることができる。
【0039】
マトリクス21は、回転軸26とハウジング1側に設けられた軸受け27によって支持されている。回転軸26は、マトリクス21の中心部に設けられたソリッド状のハブ21dに固着されている。マトリクス21は電動モータ24により回転駆動される。マトリクス21の外周面にはリングギア21cが設けられている。電動モータ24からの回転力は、電動モータ24の回転軸に固定されたピニオン24aを介して、リングギア21cに伝えられる。摺動部位である軸受け27は高温雰囲気で用いられるため、高温無潤滑材料(硬質カーボン材等)によって形成されている。
【0040】
ガスシール22、23は、例えばステンレスのような耐熱性金属やセラミックから形成されている。低温流体通路Aの上流側であって高温流体通路Bの下流側に位置する第1のガスシール22は、半円筒状フランジ22aとその中心を径方向に通るクロスアーム22bとが一体化してD型に構成されている。一方、低温流体通路Aの下流側であって高温流体通路Bにおける上流側に位置する第2のガスシール23は、円筒状フランジ23aとその中心を径方向に通るクロスアーム23bとが一体化してΘ型に構成されている。
【0041】
クロスアーム22b、23bの摺動面と、マトリクス21の外周側面部21bと接触するガスシールのシール面22c、23cには、マトリクス21およびガスシール22、23の摩耗を少なくするため、摩擦係数の低い高温無潤滑材料層(図示せず)がコーティング等によって形成されている。
【0042】
低温流体通路Aを流れる高圧の改質原料が高温流体通路Bに漏れないように、マトリクス21とハウジング1との間にガスシール22、23を介在させることでシールしている。ガスシール22、23は、シール面22c、23cでマトリクス21を軸方向の両側から挟んだ状態でハウジング1に固定されている。マトリクス21は、ガスシール22、23のクロスアーム22b、23bにて2つの領域に区画される。
【0043】
図2に示すようにマトリクス21は、並行する低温流体通路Aと高温流体通路Bの双方を横断するように配置される。このとき、ガスシール22、23のクロスアーム22b、23bで区画された第1の領域は低温流体通路Aに位置し、第2の領域は高温流体通路Bに位置する。マトリクス21はガスシール22、23の間を摺動回転し、改質原料が通過する低温流体通路Aとオフガス(燃焼ガス)が通過する高温流体通路Bとを交互に移動する。マトリクス21は、高温流体通路Bにおいて貫通孔21aを通過する燃焼ガスから熱を受け取った後、低温流体通路Aに移動して貫通孔21aを通過する改質原料に熱を伝えて加熱・気化させる。
【0044】
このとき、マトリクス21の回転速度を制御することで、高温流体通路Bから低温流体通路Aへの伝熱速度を調整することができる。すなわち、マトリクス21の回転速度を上げることで伝熱速度を上げることができ、回転速度を下げることで伝熱速度を下げることができる。
【0045】
また、第1ガスシール22はD型に構成されているため、回転蓄熱体21の低温流体通路Aにおける上流側はシールされていない。このため、低温流体通路Aにおいて、加熱される前の低温の改質原料が、ケーシング1と回転蓄熱体21との間に形成された空間28に入り込むこととなる。これにより、高温となる回転蓄熱体21のリングギア21aや電動モータ24のピニオン24aを冷却することができる。
【0046】
第2ガスシール23はΘ型に構成されているため、回転蓄熱体21の低温流体通路Aにおける下流側はシールされている。これにより、低温流体通路Aにてケーシング1と回転蓄熱体21との間の空間28に入り込んだ改質ガスが回転蓄熱体21をショートパスすることを防止して、改質ガスを確実に回転蓄熱体21を通過させることができる。
【0047】
ここで、図5に基づいて熱交換部20における改質原料の供給領域と、熱交換部20で発生するガス漏れについて説明する。図5(a)は熱交換部20を低温流体通路Aの上流側からみた状態を示し、図5(b)は熱交換部20の断面構成を示している。回転蓄熱体21は矢印L方向に回転するものとする。
【0048】
図5(a)に示すように、回転蓄熱体21における改質原料が流入する端面には、改質原料が供給される第1改質原料供給領域Xと、水と空気が供給される第2改質原料供給領域Yとが設定されている。本第1実施形態の第1改質原料供給領域Xは、回転蓄熱体21における低温流体通路Aの回転始動側(回転方向の上流側)に偏った領域に設定されている。また、本第1実施形態の第2改質原料供給領域Yは、回転蓄熱体21における低温流体通路Aの全体領域に設定されており、従って領域Xと領域Yは一部重畳している。
【0049】
ここで、回転蓄熱体21の第1改質原料供給領域Xに供給された改質燃料は、回転蓄熱体21内部の貫流孔21aを流れ、改質燃料は回転蓄熱体21の回転により矢印L方向に移送される。従って、第1改質原料供給領域Xは、第1改質原料供給領域Xに供給された改質原料が、高温流体通路Bに移送される前に回転蓄熱体21から流出し終えるように設定すればよい。
【0050】
すなわち、改質燃料が回転蓄熱体21を通過するのに要する通過時間が、第1改質原料供給領域Xに供給された改質燃料が回転蓄熱体21の回転により高温流体通路Bに移送されるまでに要する移送時間より短くなるように、第1改質原料供給領域Xを設定すればよい。
【0051】
改質燃料が回転蓄熱体21を通過し終える時間は、改質燃料の流速(供給量)から定まり、第1改質原料供給領域Xに供給された改質燃料が高温流体通路Bに移送されるまでに要する時間は、回転蓄熱体21の回転速度から定まる。従って、第1改質原料供給領域Xは、改質燃料の流速と回転蓄熱体21の回転速度との関係で定まる。
【0052】
具体的には、改質燃料の流速が遅い場合には、改質原料が回転蓄熱体21を通過する前に高温流体通路Bに移送されやすいので、第1改質原料供給領域Xを回転蓄熱体21における低温流体通路Aの回転方向上流側により偏った領域に設定する必要がある。同様に、回転蓄熱体21の回転速度が速い場合にも、改質原料が回転蓄熱体21を通過する前に高温流体通路Bに移送されやすいので、第1改質原料供給領域Xを回転蓄熱体21における低温流体通路Aの回転方向上流側により偏った領域に設定する必要がある。
【0053】
これに対し、改質燃料の流速が早い場合には、改質原料が高温流体通路Bに移送される前に回転蓄熱体21を通過しやすいので、第1改質原料供給領域Xを回転蓄熱体21における低温流体通路Aの回転方向上流側から回転方向下流側により広がった領域に設定することができる。同様に、回転蓄熱体21の回転速度が遅い場合にも、改質原料が高温流体通路Bに移送される前に回転蓄熱体21を通過しやすいので、第1改質原料供給領域Xを回転蓄熱体21における低温流体通路Aの回転方向上流側から回転方向下流側により広がった領域に設定することができる。
【0054】
熱交換部20の下流側には改質部30が設けられている。本第1実施形態の改質部30では、部分酸化改質(発熱反応)と水蒸気改質(吸熱反応)とが併用される。改質部30には、改質触媒(酸化ニッケル、酸化銅、白金、パラジウム等の単体あるいは混合物)が添着されている。改質部30では、熱交換部20による加熱で気化した改質原料を改質し、H2とCOを含んだ改質ガスを生成する。また、改質部30には、改質触媒の温度を検出する温度センサ(温度検出手段)40が設けられている。
【0055】
改質部30の下流側には、改質ガスからCOを除去するCO除去部42、44が設けられている。CO除去部42、44は、COシフト部42およびCO浄化部44とから構成される。COシフト部42にはCOシフト反応(H2O+CO→CO2+H2+CO)のためのシフト触媒が設けられ、CO浄化部44にはCO浄化反応(CO+1/2O2→CO2)のための浄化触媒が設けられている。
【0056】
COシフト部42の上流側には改質ガス温度をCOシフト反応に必要な温度に冷却するための第1冷却部41が設けられ、CO除去部44の上流側には改質ガス温度をCO除去反応に必要な温度の冷却するための第2冷却部43が設けられている。
【0057】
CO除去部44の下流側は、水素消費装置としての燃料電池50に接続されており、水素を含んだ改質ガスが供給される。燃料電池50には、水素とともに空気(酸素)が供給され、水素と酸素との電気化学反応により発電する。燃料電池50では、発電に用いられなかった未反応水素を含んだオフガスが排出される。
【0058】
高温流体通路Bにおける熱交換部20の上流側には、熱交換部20を加熱するための燃焼ガス供給部(オフガス供給部)60が設けられている。燃焼ガス供給部60には、オフエア流量制御弁61、燃料流量制御弁(燃焼用燃料供給部)62、噴霧ノズル63、点火プラグ(着火手段)64、混合・燃焼室65が設けられている。
【0059】
燃焼ガス供給部60には、燃料電池50から排出される未反応の水素を含むオフガスがオフガス供給路51を介して供給される。さらに燃焼ガス供給部60には、燃料電池50から排出される未反応の酸素を含むオフエアが、オフエア供給路52を介して供給される。
【0060】
オフガスおよびオフエアは噴霧ノズル63から混合・燃焼室65に噴霧され、オフガス混合気となる。オフガス混合気は、熱交換部20に供給され、熱交換部20に設けられた酸化触媒にて触媒燃焼して燃焼ガスを生ずる。この燃焼ガスの燃焼熱で回転蓄熱体21が加熱される。回転蓄熱体21は高温流体通路Bで熱を受け取り、回転して低温流体通路Aにて改質原料を加熱する。
【0061】
水素供給装置の始動時には、オフガスに代えて、燃料流量制御弁にて流量制御された始動用燃料(燃焼用燃料)を燃焼室65に噴霧し、点火プラグ64にて着火して、火炎燃焼により燃焼ガスを生じさせるように構成されている。なお、本第1実施形態では、始動用燃料として改質燃料と同様の液体石油系燃料を用いている。
【0062】
図6は、本実施形態の水素供給装置の制御系を示している。図6に示すように、本第1実施形態の水素供給装置には、各種制御を行う制御部(ECU)70が設けられている。制御部70には、燃料流量制御弁11の開度信号、駆動用モータ24の回転数信号、温度センサ40にて検出した温度信号が入力され、各流量制御弁11、12、13、61、62、回転蓄熱体駆動用モータ24、点火プラグ64に制御信号を出力するように構成されている。
【0063】
以下、上記構成の水素供給装置の作動について説明する。まず、水素供給装置の始動時について説明する。改質部30において改質反応が開始するためには、改質部30に供給される改質原料が蒸発・気化しており、かつ改質部30の改質触媒が改質反応を開始可能な所定温度まで昇温している必要がある。
【0064】
そこで、まず燃焼ガス供給部60の燃焼室65にて始動用燃料と空気との混合気を生成し、点火プラグ64にて着火して火炎燃焼させる。この火炎燃焼により生成した燃焼ガスは、高温流体通路Bを流れて熱交換部20を貫流する。これにより、回転蓄熱体21のうち高温流体通路Bに位置する部位は燃焼ガスにより加熱される。
【0065】
回転蓄熱体21が回転することで、燃焼ガスにて加熱された部位が低温流体通路Aに移動し、低温流体通路Aを流れる空気が加熱される。この加熱空気が低温流体通路Aを流れることにより、熱交換部20の下流側の各構成要素が急速に暖気される。
【0066】
このとき、燃焼ガス供給部60で発生した燃焼ガスには不完全燃焼等により有害ガスが含まれるが、燃焼ガスは回転蓄熱体21を通過する際に、貫通孔21aの表面に添着された酸化触媒25により触媒燃焼(触媒酸化反応)する。従って、始動用燃料と空気との混合割合を適切に調整して火炎燃焼させ、さらに熱交換部20にて燃焼ガス中の有害成分を触媒燃焼させることによって、燃焼ガスを完全酸化反応(完全燃焼)させることができる。これにより、燃焼ガス中の有害ガスを十分に清浄化させた上で、外部に排出することができる。
【0067】
燃焼ガスの燃焼熱により、熱交換部20、改質部30、CO除去部(シフト部、浄化部)42、44といった改質システムの各構成要素が急速に暖気(予熱)される。そして、温度センサ40にて検出した改質部30の温度が所定改質反応開始温度に到達した場合に、改質触媒を含めた改質システムの構成要素が改質反応を開始することができる温度に到達したと判断して、燃焼ガス供給部60での始動用燃料の供給を中断して火炎燃焼を停止する。
【0068】
なお、所定改質反応開始温度は改質燃料の種類等に応じて任意に設定できるが、本第1実施形態のように改質燃料として石油系燃料を用いる場合には300℃〜400℃と設定することができる。
【0069】
各構成要素の暖気が完了すると、改質原料供給部10にて改質原料(水、空気、改質燃料)の供給が開始される。このとき、改質燃料は第1改質原料供給領域Xに供給され、水と空気は第2改質原料供給領域Yに供給される。第1改質原料供給領域Xは、燃料流量制御弁11により間接的に検出した改質燃料の流速と、回転蓄熱体駆動用モータ24により間接的に検出した回転蓄熱体21の回転速度に基づいて設定される。
【0070】
ところで、上記「発明が解決しようとする課題」の欄で述べたように、熱交換部20では、回転蓄熱体21とガスシール22、23との間からの直接的なシール漏れMと、回転蓄熱体21にトラップされ移送されることに起因する移送漏れNが発生する。
【0071】
これに対し、本第1実施形態では、上記図5(a)で示したように第1改質原料としての改質燃料を第1改質原料供給領域Xに供給することで、改質燃料は高温流体通路Bに移送される前に回転蓄熱体21から流出する。これにより、移送漏れNにより燃料ガスである改質燃料が高温流体通路Bに漏れることを防止できる。また、第2改質原料としての水と空気を第2改質原料供給領域Yに供給することで、回転蓄熱体21にトラップされた改質燃料を、水と空気によって回転蓄熱体21から排出し浄化することができる。
【0072】
第1改質原料および第2改質原料は、熱交換部20にて加熱・気化された後で混合され、改質燃料と水と空気を含む改質原料が生成される。気化された改質原料は、改質部30にてH2とCOを含む改質ガスに改質される。改質ガスは、CO除去部42、44にてCOが除去され、燃料電池50に供給される。
【0073】
燃料電池50では、水素と酸素との化学反応により発電するとともに、未反応水素を含むオフガスと未反応の酸素を含むオフエアが排出される。オフガスはオフガス導入経路51を介して、オフエアはオフエア供給路52を介して高温流体通路Bの燃焼ガス供給部60に導入され、オフガス混合気となる。オフガス混合気は、熱交換部20に供給され、回転蓄熱体21を通過する際に触媒燃焼を開始する。このオフガスの触媒燃焼によって発生した熱は回転蓄熱体21に蓄えられ、回転蓄熱体21が回転移動することにより、低温流体通路Aを通過する改質原料を加熱・気化する。
【0074】
このように、オフガスの触媒燃焼による熱により、改質原料を加熱して気化するとともに、加熱された改質原料を介して下流側の改質部30をも加熱することができる。これにより、熱交換部20、改質部30の加熱は、始動用燃料の火炎燃焼による加熱からオフガス燃焼による加熱に切り替わり、水素供給装置は自立運転を開始することができる。
【0075】
次に、燃料電池50における負荷が変動した場合には、燃料電池50での負荷変動に応じて改質原料の供給量を調整して、燃料電池50への水素供給量を調整する。
【0076】
水素供給装置において水素供給量を増加させた場合には、改質部30の改質反応に伴う吸熱量増加により改質部30の温度が低下するため、改質部30の加熱量を増加させる必要がある。ところが、水素供給装置の水素供給量増加に伴う燃料電池50のオフガス排出量増加には、タイムラグがある。このため、水素供給装置での水素供給量を急速に増加させた場合には、オフガス燃焼による燃焼熱が不足する場合がある。このような場合には、一時的に燃焼ガス供給部60にて始動用燃料を噴霧して点火プラグ64で着火することで、火炎燃焼による燃焼熱を利用して熱補給することができる。これにより、常に適温下で改質反応を促進することができる。
【0077】
また、改質原料中の空気の混合割合を増加させることで、改質部30における部分酸化反応(発熱反応)の割合を増加させ、改質部30での発熱量を増加させることができる。これによっても、オフガス燃焼の燃焼熱の不足を補うことができる。さらに、回転蓄熱体21の回転を速めることによっても、高温流体通路Bから低温流体通路Aへの伝熱速度を速くすることができる。これによっても、オフガス燃焼の燃焼熱の不足を補うことができる。
【0078】
なお、燃料電池50における負荷増加の伴う改質部30の温度低下は、温度センサ40にて直接的に検出することができる。あるいは燃料電池50が例えば車両走行用モータの駆動電源として用いられている場合には、アクセル開度に基づいて燃料電池50の負荷変動を予測し、改質部30の温度変化を予測するように構成してもよい。
【0079】
水素供給装置から燃料電池50への水素の供給を停止する場合には、改質燃料と水の供給を停止し、次に空気の供給を停止する。この間、低温流体通路A内に残存する可燃混合気は、高温流体通路Bにおいて熱交換部20内またはその表面部での触媒燃焼により燃焼完結するので、エミッションの排出を抑制することができる。
【0080】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図7に基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態に比較して、改質燃料以外の改質原料である水と空気の供給位置が異なるものである。
【0081】
図7は(a)は熱交換部20を低温流体通路Aの上流側からみた状態を示し、図7(b)は熱交換部20の断面構成を示している。回転蓄熱体21は矢印L方向に回転するものとする。
【0082】
図7(a)に示すように、本第2実施形態の第1改質原料供給領域Xは、上記第1実施形態と同様に回転蓄熱体21における低温流体通路Aの回転始動側(回転方向の上流側)に偏った領域に設定されている。また、本第2実施形態の第2改質原料供給領域Yは、回転蓄熱体21における低温流体通路Aの第1改質原料供給領域X以外の領域に設定されている。具体的には、第1改質原料供領域Xは回転蓄熱体21における低温流体通路Aの回転方向上流側に位置し、第2改質原料供領域Xは回転方向下流側に位置している。
【0083】
以上の構成によっても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本第2実施形態のように、水と空気(第2改質原料)を回転蓄熱体21における低温流体通路Aの第1改質原料供給領域Xを除いた領域Yに集中的に供給することにより、回転蓄熱体21にトラップされた改質燃料(第1改質原料)を、水と空気(第2改質原料)によって回転蓄熱体21からより効果的に排出し浄化することができる。
【0084】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図8に基づいて説明する。本第3実施形態は、上記第1実施形態に比較して、改質燃料の供給位置が異なるものである。
【0085】
図8は(a)は熱交換部20を低温流体通路Aの上流側からみた状態を示し、図8(b)は熱交換部20の断面構成を示している。回転蓄熱体21は矢印L方向に回転するものとする。
【0086】
図8(a)に示すように、本第3実施形態の第1改質原料供給領域Xは、回転蓄熱体21の低温流体通路Aの中心部に偏っており、回転蓄熱体21における低温流体通路Aの外周部から所定間隔を設けて設定されている。第1改質原料供給領域Xは、回転蓄熱体21における低温流体通路Aの外周部を構成する回転蓄熱体21の外周部およびクロスアーム部22bの双方から所定間隔を設けて設定されている。また、本第3実施形態の第2改質原料供給領域Yは、回転蓄熱体21における低温流体通路Aの全体領域に設定されている。
【0087】
以上の構成によっても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本第3実施形態のように、第1改質原料供給領域Xを回転蓄熱体21における低温流体通路Aの外周部から所定間隔を設けて設定することで、改質燃料(第1改質原料)は、ガスシール22、23から離れた位置で回転蓄熱体21を通過する。このため、回転蓄熱体21とガスシール22、23との間からのシール漏れMが発生したとしても、第1改質原料がシール漏れMにより低温流体通路Aから高温流体通路Bに漏れることを防止できる。
【0088】
さらに、回転蓄熱体21における低温流体通路Aの全体に設定された第2改質原料供給領域Yに水と空気(第2改質原料)を供給することで、回転蓄熱体21にトラップされた改質燃料(第1改質原料)を、水と空気(第2改質原料)によって回転蓄熱体21からより効果的に排出し浄化することができる。
【0089】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図9に基づいて説明する。本第4実施形態は、上記第3実施形態に比較して、改質燃料の供給位置が異なるものである。
【0090】
図9は(a)は熱交換部20を低温流体通路Aの上流側からみた状態を示し、図9(b)は熱交換部20の断面構成を示している。回転蓄熱体21は矢印L方向に回転するものとする。
【0091】
図9(a)に示すように、本第4実施形態の第1改質原料供給領域Xは、上記第3実施形態と同様に、回転蓄熱体21における低温流体通路Aの外周部から所定間隔を設けて設定されている。また、本第4実施形態の第2改質原料供給領域Yは、回転蓄熱体21における低温流体通路Aの第1改質原料供給領域X以外の領域に設定されている。具体的には、第2改質原料供給領域Yは、第1改質原料供給領域Xを囲むように設定されている。
【0092】
以上の構成によっても、上記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本第4実施形態のように、水と空気(第2改質原料)を回転蓄熱体21における低温流体通路Aの第1改質原料供給領域Xを除いた領域Yに集中的に供給することにより、回転蓄熱体21にトラップされた改質燃料(第1改質原料)を、水と空気(第2改質原料)によって回転蓄熱体21からより効果的に排出し浄化することができる。
【0093】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図10に基づいて説明する。本第4実施形態は、上記第1実施形態に比較して、回転蓄熱体21の作動および改質燃料の供給するタイミングが異なるものであり、また第1実施形態のごとき領域X、Yを有さない。
【0094】
図10は、本第5実施形態の水素供給装置における改質原料の供給タイミングと回転蓄熱体21の回転タイミングとの関係を示すタイミングチャートである。図10に示すように、本第5実施形態の回転蓄熱体21は、回転(ON)と停止(OFF)を繰り返し、回転時に半周回転する。改質原料の供給は、回転蓄熱体21の停止時に行われる。本第5実施形態では、第1改質原料としての改質燃料と第2改質原料としての水と空気の供給は同時に行われる。
【0095】
まず、回転蓄熱体21が停止すると改質燃料と水・空気の供給を開始する(t1)。改質燃料と水・空気を所定時間供給した後、改質燃料と水・空気の供給を停止する(t2)。
【0096】
次に、改質燃料と水・空気の供給停止から所定時間経過後、回転蓄熱体21を半周回転させる(t3、t4)。この改質原料供給停止から回転蓄熱体21を半周回転させるまでの所定時間は、供給された改質燃料が回転蓄熱体21を通過し終えるのに充分な時間であればよい。
【0097】
回転蓄熱体21に供給された改質燃料が回転蓄熱体21を通過し終えるまでに要する時間は、改質燃料の流速により定まる。そこで、回転蓄熱体21の停止時間(t1からt3)は、燃料制御弁11により間接的に検出した改質燃料の流速に基づいて設定する。
【0098】
具体的には、改質燃料の流速が遅い場合には、改質燃料が回転蓄熱体21を通過する速度が遅くなるので、回転蓄熱体21の停止時間を長く設定する必要がある。逆に、改質燃料の流速が速い場合には、改質燃料が回転蓄熱体21を通過する速度が速くなるので、回転蓄熱体21の停止時間を短く設定することができる。
【0099】
以上、本第5実施形態によれば、改質燃料(第1改質原料)が回転蓄熱体21を通過し終えた後に回転蓄熱体21の回転が始動するので、回転蓄熱体21の回転に伴う移送漏れNの発生を防止できる。
【0100】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図11に基づいて説明する。本第4実施形態は、上記第5実施形態に比較して、第2改質原料としての水と空気を供給するタイミングが異なるものである。
【0101】
図11は、本第6実施形態の水素供給装置における改質原料の供給タイミングと回転蓄熱体21の回転タイミングとの関係を示すタイミングチャートである。図11に示すように、本第6実施形態では、第1改質原料としての改質燃料と第2改質原料としての水と空気の供給は時間をずらして行われる。
【0102】
まず、回転蓄熱体21が停止すると改質燃料の供給を開始する(t1)。第1改質原料を所定量供給後、改質燃料の供給を停止し、水と空気の供給を開始する(t2)。そして、水と空気を所定量供給後、水と空気の供給を停止し、回転蓄熱体21を半周回転させる(t3、t4)。
【0103】
以上の本第6実施形態によっても、上記第5実施形態と同様に回転蓄熱体21の回転に伴う移送漏れNの発生を防止できる。また、本第6実施形態では、第1改質原料の供給停止後に第2改質原料を供給するので、回転蓄熱体21にトラップされた改質燃料(第1改質原料)を、水と空気(第2改質原料)によって回転蓄熱体21から効果的に排出し浄化することができる。
【0104】
(他の実施形態)
なお、上記第5、第6実施形態の構成においても、上記第3、第4実施形態のように、第1改質原料を供給する第1改質原料供給領域Xを、回転蓄熱体21における低温流体通路Aの外周部から所定間隔を設けて設定することができる。これにより、回転蓄熱体21とガスシール22、23との間からのシール漏れMが発生したとしても、第1改質原料がシール漏れMにより低温流体通路Aから高温流体通路Bに漏れることを防止できる。
【0105】
また、上記第6実施形態では、第2改質原料を回転蓄熱体21の停止中における第1改質原料供給停止後に供給するように構成したが、第2改質原料は少なくとも第1改質原料供給停止後から回転蓄熱体21の回転開始まで供給されていればよく、例えば第1改質原料供給中あるいは回転蓄熱体21の回転中に供給されていてもよい。
【0106】
また、上記各実施形態では、改質燃料としてガソリン、軽油等の液状石油系燃料を用いたが、これに限らず、改質燃料としてメタノール、天然ガス等の各種炭化水素化合物を用いることができ、さらに例えばアンモニアのような炭素を含まない水素化合物を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の水素供給装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1の水素供給装置の概念図である。
【図3】図1の水素供給装置の熱交換部の分解斜視図である。
【図4】図3の熱交換部の拡大断面図である。
【図5】第1実施形態の改質原料の供給領域を説明するための図であり、(a)は熱交換部を低温流体通路上流側からみた平面図であり、(b)は熱交換部の断面図である。
【図6】図1の水素供給装置の制御系の入出力を説明する図である。
【図7】第2実施形態の改質原料の供給領域を説明するための図であり、(a)は熱交換部を低温流体通路上流側からみた平面図であり、(b)は熱交換部の断面図である。
【図8】第3実施形態の改質原料の供給領域を説明するための図であり、(a)は熱交換部を低温流体通路上流側からみた平面図であり、(b)は熱交換部の断面図である。
【図9】第4実施形態の改質原料の供給領域を説明するための図であり、(a)は熱交換部を低温流体通路上流側からみた平面図であり、(b)は熱交換部の断面図である。
【図10】第5実施形態の改質原料の供給タイミングを示すタイミングチャートである。
【図11】第6実施形態の改質原料の供給タイミングを示すタイミングチャートである。
【図12】従来技術における、ガスシールによる回転蓄熱体のシール状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
10…改質原料供給部、20…熱交換部(蒸発部)、21…回転蓄熱体、22、23…ガスシール、30…改質部、50…燃料電池(水素消費装置)、60…燃焼ガス供給部、X…第1改質原料供給領域、Y…第2改質原料供給領域。
Claims (9)
- 少なくとも水素化合物を含む第1改質原料と少なくとも水を含む第2改質原料とからなる改質原料を用いた改質反応により水素を生成し、この水素を水素消費装置(50)に供給する水素供給装置であって、
前記改質原料が通過する低温流体通路(A)と、燃焼ガスを発生させる燃焼ガス供給部(60)が設けられた高温流体通路(B)と、回転軸(26)を中心に回転駆動されることにより前記低温流体通路(A)と前記高温流体通路(B)とを交互に移動する回転蓄熱体(21)を有するとともに、前記燃焼ガスの燃焼熱を前記改質原料に伝える熱交換部(20)と、前記熱交換部(20)で加熱された前記改質原料を改質して水素を生成する改質部(30)とを備え、
前記回転蓄熱体(21)は、軸方向に多数の貫通孔(21a)が形成されるとともに、その貫通孔(21a)の開放側の端面が2つの領域に区画されており、第1の領域は前記低温流体通路(A)に位置し、第2の領域は前記高温流体通路(B)に位置しており、前記第1の領域に形成されている前記貫通孔(21a)には前記改質原料が通過し、前記第2の領域に形成されている前記貫通孔(21a)には前記燃焼ガスが通過するように構成され、
前記回転蓄熱体(21)の前記改質原料が供給される端面における前記第1の領域には、前記第1改質原料が供給される第1改質原料供給領域(X)と、前記第2改質原料が供給される第2改質原料供給領域(Y)とが設定されており、前記第1改質原料供給領域(X)は、前記第1の領域における回転蓄熱体回転方向(L)上流側に設定されており、
前記第1改質原料供給領域(X)に供給された前記第1改質原料が前記回転蓄熱体(21)を通過するのに要する通過時間が、前記第1改質原料供給領域(X)に供給された前記第1改質原料が前記回転蓄熱体(21)の回転により前記高温流体通路(B)に移送されるのに要する移送時間より短くなるように、前記第1改質原料供給領域(X)が設定されることを特徴とする水素供給装置。 - 前記第1改質原料供給領域(X)は、前記第1の領域における外周部から所定間隔を設けて設定されることを特徴とする請求項1に記載の水素供給装置。
- 前記第2改質原料は、前記第1の領域における前記第1改質原料供給領域(X)を除いた領域に設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の水素供給装置。
- 前記第1改質原料が前記回転蓄熱体(21)を通過する速度を検出する改質原料通過速度検出手段(11)を備え、
前記第1改質原料供給領域(X)は、改質原料通過速度検出手段(11)により検出した前記第1改質原料が前記回転蓄熱体(21)を通過する速度に基づいて設定されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の水素供給装置。 - 前記回転蓄熱体(21)の回転速度を検出する回転速度検出手段(24)を備え、
前記第1改質原料供給領域(X)は、回転速度検出手段(24)により検出した前記回転蓄熱体(21)の回転速度に基づいて設定されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の水素供給装置。 - 少なくとも水素化合物を含む第1改質原料と少なくとも水を含む第2改質原料とからなる改質原料を用いた改質反応により水素を生成し、この水素を水素消費装置(50)に供給する水素供給装置であって、
前記改質原料が通過する低温流体通路(A)と、燃焼ガスを発生させる燃焼ガス供給部(60)が設けられた高温流体通路(B)と、回転軸(26)を中心に回転駆動されることにより前記低温流体通路(A)と前記高温流体通路(B)とを交互に移動する回転蓄熱体(21)を有するとともに、前記燃焼ガスの燃焼熱を前記改質原料に伝える熱交換部(20)と、前記熱交換部(20)で加熱された前記改質原料を改質して水素を生成する改質部(30)とを備え、
前記回転蓄熱体(21)は、軸方向に多数の貫通孔(21a)が形成されるとともに、 その貫通孔(21a)の開放側の端面が2つの領域に区画されており、第1の領域は前記低温流体通路(A)に位置し、第2の領域は前記高温流体通路(B)に位置しており、前記第1の領域に形成されている前記貫通孔(21a)には前記改質原料が通過し、前記第2の領域に形成されている前記貫通孔(21a)には前記燃焼ガスが通過するように構成され、
前記回転蓄熱体(21)の回転が停止している場合に、前記低温流体通路(A)における前記回転蓄熱体(21)の上流側に前記第1改質原料を所定時間供給し、前記第1改質原料が前記回転蓄熱体(21)を通過した後に、前記回転蓄熱体(21)を半周だけ回転させることを繰り返すことを特徴とする水素供給装置。 - 前記第1改質原料の供給停止後、前記回転蓄熱体(21)を半周回転させる前に、前記低温流体通路(A)における前記回転蓄熱体(21)の上流側に前記第2改質原料を供給すること特徴とする請求項6に記載の水素供給装置。
- 前記第1改質原料が前記回転蓄熱体(21)を通過する速度を検出する改質原料通過速度検出手段(11)を備え、
前記回転蓄熱体(21)の停止時間は、改質原料通過速度検出手段(11)により検出した前記第1改質原料が前記回転蓄熱体(21)を通過する速度に基づいて設定されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の水素供給装置。 - 前記回転蓄熱体(21)は、軸方向に多数の貫通孔(21a)が形成されるともに、その貫通孔(21a)の開放側の端面が2つの領域に区画されており、第1の領域は前記低温流体通路(A)に位置し、第2の領域は前記高温流体通路(B)に位置しており、前記第1の領域に形成されている前記貫通孔(21a)には前記改質原料が通過し、前記第2の領域に形成されている前記貫通孔(21a)には前記燃焼ガスが通過するように構成され、
前記回転蓄熱体(21)の前記改質原料が供給される端面における前記第1の領域には、前記第1改質原料が供給される第1改質原料供給領域(X)と、前記第2改質原料が供給される第2改質原料供給領域(Y)とが設定されており、前記第1改質原料供給領域(X)は、前記第1の領域における外周部から所定間隔を設けて設定されることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1つに記載の水素供給装置。
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JP2002134149A JP4000898B2 (ja) | 2002-05-09 | 2002-05-09 | 水素供給装置 |
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