JP4000781B2 - ステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
例えば、電動式パワーステアリング装置では、図6に示すように、ステアリングシャフト90を回転自在に支持する筒状のステアリングコラム91と、ステアリングシャフト90に操舵補助力を付与するモータ等の駆動機構のハウジング92とが、互いに連結されている。具体的には、ステアリングコラム91の端部の圧入部93がハウジング92の圧入孔94に嵌め込まれた嵌合構造となっている。
【0003】
この嵌合構造がステアリングコラム91に負荷される曲げ力に対抗するべく、ハウジング92に対する圧入部93の結合強度が高いことが望ましい。
そこで、圧入部93の圧入荷重を高めることが考えられるが、圧入部93にかかる応力が組立当初から高くなってしまうので、曲げ力に対する強度を高めることは期待できない。
また、圧入部93を軸方向Sに長くして嵌合長95を長くすることが考えられる。しかし、軸方向に限られたスペースの中で、嵌合長95を長くした場合、例えば、ステアリングコラム91を構成する内筒96および外筒97の相対的な衝撃吸収ストローク98を確保できない等の不具合が生じるので、上述のように圧入部93を軸方向に長くすることは、実質的に不可能である。
【0004】
また、筒状のステアリングコラム91全体を厚肉の素材で形成することが考えられる。この場合、ステアリングコラム91の外径を増大させることはスペース上困難であるため、ステアリングコラム91の内径が小さくなり、その結果、ステアリングシャフト90の上部を構成する外筒99と、ステアリングコラム91との間に、両者の干渉防止のために必要な隙間89を確保できない。従って、このような対策は実施が実質的に不可能である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、圧入部周辺の部材の設計変更や機能の減退を伴うことなく、ハウジングに対するステアリングコラムの結合強度を高めることができるステアリング装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1に記載の発明は、筒状のステアリングコラムの端部の圧入部がハウジングの圧入孔に圧入されているステアリング装置において、上記ステアリングコラムの圧入部に、少なくとも圧入部を含むステアリングコラムの端部を補強する補強部として、径方向の内方に向けて延びるフランジが形成されていることを特徴とするステアリング装置を提供する。
この発明によれば、圧入部を含むステアリングコラムの端部を補強するので、ハウジングに対するステアリングコラムの結合強度を高めることができる。
【0007】
圧入部の嵌合長さを軸方向に長くせずに済むので、軸方向に限られたスペースの中から周辺部材の機能のためのスペースを削減せずに済む。例えば、衝撃吸収ストロークを確保でき、衝撃吸収機能を高く維持することができる。
ステアリングコラムの端部以外のステアリングコラムの残りの部分を変更せずに済むので、これの周囲にある部材の設計変更は必要ない。
【0008】
また、上述の作用効果を、フランジという簡単な構成で得ることができる。しかも、フランジであれば、軸方向のスペースを取らずにすむ。また、補強部はステアリングコラムの内側に設けられているので、圧入孔を変更せずに済む。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のステアリング装置において、上記ステアリングコラムに回転自在に支持されたステアリングシャフトを備え、上記ステアリングシャフトは、筒状のアッパシャフトと、ロアーシャフトとを含み、アッパシャフトの端部の内周に、ロアーシャフトの端部が、相対移動可能に嵌合されており、上記ステアリングコラムは、筒状のアッパコラムと、筒状のロアーコラムとを含み、アッパコラムの端部の内周に、ロアーコラムの一方の端部が、相対移動可能に嵌合されており、ロアーコラムの他方の端部に、上記圧入部が設けられ、衝撃吸収時には、アッパコラムと、筒状のロアーコラムとが、軸方向に相対移動しつつ、アッパシャフトと、ロアーシャフトとが、軸方向に相対移動するようにされていることを特徴とするステアリング装置を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態のステアリング装置を図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態のステアリング装置の一部断面正面図である。
ステアリング装置1は、車輪(図示せず)を操向するためにステアリングホイール(図示せず)の動きを伝達するステアリングシャフト3と、このステアリングシャフト3を内部に通して回転自在に支持するステアリングコラム4とを有している。ステアリングシャフト3の一方の端部31(図1に簡略化して図示した。)にステアリングホイールが連結されている。ステアリングホイールが回されると、その回転がステアリングシャフト3、ステアリングシャフト3の他方の端部32に一体回転可能に連結される出力軸33、出力軸33に連結される図示しないユニバーサルジョイント、ピニオン、ラック軸等を介して車輪に伝達され、これにより車輪を操向することができる。
【0011】
ステアリングシャフト3は、ステアリングホイール側に配置されて上部を構成する筒状のアッパシャフト5と、車輪側に設けられて下部を構成する筒状のロアシャフト6とを有している。アッパシャフト5とロアシャフト6とは、同心で直線状に配置されている。アッパシャフト5の端部34の内周とロアシャフト6の端部35の外周とは、セレーション構造等により、一体回転可能に嵌合されている。また、アッパシャフト5とロアシャフト6とはステアリングシャフト3が延びる方向(軸方向ともいう)に相対移動可能とされている。
【0012】
なお、各図には、軸方向を示す矢印Sを図示している。また、軸方向については、ステアリングホイール側を上方ともいい、反ステアリングホイール側(車輪側となる)を下方ともいう。
ステアリングコラム4は、ステアリングホイール側に配置される筒状のアッパコラム7と、車輪側に設けられる筒状のロアコラム8とを有している。ロアコラム8の上端部が、アッパコラム7の下端部の内部に嵌め入れられていて、軸方向に相対移動可能とされている。また、アッパコラム7は、軸受(図示せず)を介してアッパシャフト5を回動自在に支持しつつ、アッパシャフト5とアッパコラム7との間の軸方向の相対移動を規制している。
【0013】
また、ステアリング装置1は、パワーステアリング装置として構成され、操舵操作に伴い生じる操舵抵抗に見合った操舵補助力を得られるようになっている。すなわち、出力軸33には、操舵操作を検知するためのトルクセンサと、このトルクセンサからの出力信号に基づいて操舵補助力を発生させるモータ等の駆動機構(図示せず)とが設けられている。駆動機構は、例えば、モータの回転軸と一体回転可能に連結されたウォーム軸と、このウォーム軸と噛み合うウォームホイールとにより構成されている。トルクセンサ、ウォーム軸およびウォームホイールはハウジング9内部に収容されている。このハウジング9は、ウォーム軸およびウォームホイールを回転自在に支持しつつ、モータを支持している。また、ウォームホイールは出力軸33と一体回転可能に連結されている。ステアリングホイールの動きが、トルクセンサにより検知され、駆動機構による操舵補助力とともに、ステアリングシャフト3、出力軸33を介してラック軸に伝達され、車輪(図示せず)が操舵される。
【0014】
また、ステアリング装置1は、車体の所定部(図示せず)に支持構造10を介して取り付けられている。この支持機構10は、衝突時の衝撃を吸収する衝撃吸収機構を内蔵している。
支持構造10は、アッパコラム7の下端部に相対変位しないように取り付けられたコラムブラケット11と、車体の所定部に固定される固定ブラケット12と、コラムブラケット11と固定ブラケット12とを係合する係合部13とを有している。係合部13により、コラムブラケット11と固定ブラケット12とは通常時に所定の保持力で保持されている。また、係合部13は係合状態を解除可能に構成され、衝突時等に保持力を超える力が作用すると、係合部13の係合が解除されて、コラムブラケット11と固定ブラケット12とが相対移動できるようにされている。衝突時、係合部13の係合が解除される際に、摩擦や塑性変形が生じ、これにより衝撃が吸収される。これとともに、アッパコラム7とロアコラム8とが軸方向に相対移動しつつ、アッパシャフト5とロアシャフト6とが軸方向に相対移動する。例えば、アッパコラム7およびアッパシャフト5が図1で右から左へハウジング9に向かって相対移動する。
【0015】
ハウジング9は、出力軸33を回転自在に支持する軸受14を保持している。この軸受14は、出力軸33を介してロアシャフト6をも支持している。
ハウジング9は、軸受14に隣接して且つステアリングホイール側の端部に設けられた圧入嵌合構造15により、ステアリングコラム4のロアコラム8と結合されている。すなわち、ロアコラム8の端部21の圧入部22がハウジング9の圧入孔23に所定の嵌合長で嵌め込まれて、圧入されている。圧入部22は、ロアコラム8の端部21に軸方向に所定長さの円筒形状に形成されている。
【0016】
特に、本発明のステアリング装置1では、ステアリングコラム4の圧入部22に、端部21を補強する補強部24が形成されている。
補強部24は、ロアコラム8の端部21の内周に、圧入部22に一体に設けられて、圧入部22を含む端部21の剛性を高め、この圧入部22を含む端部21を補強する。ロアコラム8の端部21の径方向の内側空間であれば、軸方向の他の位置に比べて比較的にスペースに余裕があるので、補強部24を設けることによる他の部品に与える影響を少なくできる。
【0017】
特に本実施形態の補強部24は、図2に示す様に、ステアリングコラム4の端部21に形成され、径方向(矢印R参照)の内方に向けて延びる環状のフランジ25からなる。このフランジ25は周方向の全周に形成されている。フランジ25の径方向の内側の端部とロアシャフト6の外周面との間には所定の隙間が開けられている。
このように本発明によれば、補強部24が圧入部22を含むステアリングコラム4の端部21を補強するので、ハウジング9に対するステアリングコラム4の結合強度、例えば、曲げ力に対する結合強度を高めることができる。例えば、ステアリングコラム4の上端部に軸方向と直交する力が負荷される場合、ステアリングコラム4が曲げ力を受ける。このような曲げ力が、圧入された圧入部22にかかるとしても、圧入部22は塑性変形せずに、ハウジング9との結合を維持することができる。ここで、結合強度とは、圧入部22が塑性変形を生じない状態での、負荷できる力、例えば、曲げ力の最大の大きさである。
【0018】
しかも、圧入部22と圧入孔23との圧入荷重および嵌合長を変更せずに済み、例えば、従来と同じにできるので、引っ張り力等に対する嵌合構造の結合強度を維持できる。
圧入部22の嵌合長さ(L1)を軸方向に長くせずに済むので、軸方向に限られたスペースの中から周辺部材の機能のためのスペースを削減せずに済む。例えば、衝撃吸収時には、アッパコラム7とロアコラム8とが軸方向に相対移動し、このときの相対移動距離である衝撃吸収ストロークの上限値が、アッパコラム7の下端面37とハウジング9の端面38とが当接することにより規制されている。アッパコラム7の下端面37からロアコラム8の下端部までの軸方向距離(L1+L2)が限られているなかで、圧入部22の嵌合長さL1が長くならずに済むので、上述の上限値を規制するハウジング9の端面38とアッパコラム7の端面37との間の距離L2を長く確保できる。その結果、衝撃吸収機能を高く維持することができる。
【0019】
ステアリングコラム4の端部21以外のステアリングコラム4の残りの部分を変更せずに済むので、これの周囲にある部材の設計変更は必要ない。例えば、通常最少隙間となる、上述の残りの部分であるロアコラム8の上部の内周と、これと対向するステアリングシャフト3のアッパシャフト5の外周との間に、干渉防止のために必要な隙間27を広く確保することができる。従って、ステアリングシャフト3の形状変更をせずに済む。なお、補強部24の内周とロアシャフト6の外周との間の隙間は、補強部24がない構成の従来の構成に比べて狭くなるが、通常、この部分の隙間は最少隙間でないので、補強部24を設けても、十分な隙間を確保できる。しかも、補強部24が対向するロアシャフト6の部分は、ステアリングシャフト3を回転自在に支持する軸受14に隣接した近傍位置の部分であるので、触れ回りを生じる虞もない。
【0020】
また、ステアリングコラム4の内側に設けられている補強部24であれば、圧入孔23を変更せずに済む。
特に、本実施形態のフランジ25からなる補強部24であれば、上述の作用効果を簡単な構成で得ることができる。さらに環状のフランジ25であれば、周方向の全周についての結合強度を均一に高めるのに好ましい。しかも、フランジ25であれば、軸方向のスペースを取らずにすむ。
【0021】
また、本実施形態の補強部24に代えて、図3に示すように、参考例の補強部24を設けてもよい。なお、以下では、上述の実施形態と異なる点を主に説明し、同様の点については同じ符号を付して説明を省略する。
参考例では、補強部24は、ステアリングコラム4のロアコラム8の端部21で径方向の内側に折り返された折り返し部26からなる。この折り返し部26は、円筒状で、軸方向にステアリングホイール側に向けて延びている。折り返し部26の外周面28は、径方向の外方に隣接する部分29の内周面30に当接している。隣接する部分29の外周面は、圧入孔23の内周面に嵌め込まれている。隣接する部分29と折り返し部26とによりロアコラム8の端部21は二重になっている。また、折り返し部26の内周面と、ロアシャフト6の外周面との間には、所定の隙間が確保されている。
【0022】
参考例の折り返し部26からなる補強部24であれば、簡単な構成で実現でき、特に、圧入部22を含む端部21を、端から軸方向に沿って折り返し長さで補強でき、高い結合強度を得ることができる。しかも、ロアコラム8の端部21の内径をほとんど小さくせずに済むので、中を通るステアリングシャフト3の設計変更は不要である。
また、図3に示す折り返し部26は、圧入孔23に対応する位置に設けられ、その軸方向の長さは、ロアコラム8の圧入部22の嵌合長と等しくされている。このような折り返し部26であれば、圧入部22をその軸方向の全長にわたり効果的に補強することができる。
【0023】
また、折り返し部26を、図4に示すように、圧入孔23に対応する長さ(図3の折り返し部26の長さとなる。)より軸方向に短く形成してもよい。また、折り返し部26を、図5に示すように、圧入孔23に対応する長さよりも軸方向に長く形成してもよい。図4および図5に示すような折り返し部26であれば、曲げの支点近傍の応力集中の発生を避けつつ、端部21を補強することができる。また、図5に示す折り返し部26であれば、圧入部22に加えて、圧入部22と軸方向のステアリングホイール側に隣接する部分を補強できるので、より結合強度を高めることができる。折り返し部26の軸方向の端部は、衝撃吸収時にアッパシャフト5がハウジング9に向かって移動する際にアッパシャフト5の端面39が達する位置よりも車輪側に配置され、衝撃吸収ストロークが短くなることが防止されている。
【0024】
なお、参考例の折り返し部26と、実施形態のフランジ25とを共に設けることにより補強部24を構成してもよい。例えば、折り返し部26の端部にフランジ25を形成してもよい。
また、補強部24は、圧入部22のみを補強するものに限定されず、図5に示すように、圧入部22とこれに軸方向に隣接する部分とを含む端部21を補強するものでもよい。要は、補強部24は、少なくとも圧入部22を含む端部21を補強するものであればよい。
【0025】
また、本発明をパワーステアリング装置の他、操舵補助力を得られない手動操作タイプのステアリング装置に適用してもよい。また舵取り機構の構成は、上述のラックアンドピニオン式のものの他、公知の他の構成を利用できる。
その他、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態のステアリング装置の一部断面正面図である。
【図2】図1に示すステアリング装置のA部拡大図である。
【図3】 参考例としてのステアリング装置の要部拡大正面断面図であり、図1のA部を図示している。
【図4】図3に示す補強部の変形例の正面断面図である。
【図5】図4と異なる補強部の変形例の正面断面図である。
【図6】従来のステアリング装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1 ステアリング装置
3 ステアリングシャフト、
4 ステアリングコラム
5 アッパシャフト
6 ロアーシャフト
7 アッパコラム
8 ロアーコラム
9 ハウジング
21 ステアリングコラムの端部
22 圧入部
23 ハウジングの圧入孔
24 補強部
25 フランジ
34 (アッパシャフトの)端部
35 (ロアーシャフトの)端部
R 径方向
S 軸方向
Claims (2)
- 筒状のステアリングコラムの端部の圧入部がハウジングの圧入孔に圧入されているステアリング装置において、
上記ステアリングコラムの圧入部に、少なくとも圧入部を含むステアリングコラムの端部を補強する補強部として、径方向の内方に向けて延びるフランジが形成されていることを特徴とするステアリング装置。 - 請求項1に記載のステアリング装置において、
上記ステアリングコラムに回転自在に支持されたステアリングシャフトを備え、
上記ステアリングシャフトは、筒状のアッパシャフトと、ロアーシャフトとを含み、アッパシャフトの端部の内周に、ロアーシャフトの端部が、相対移動可能に嵌合されており、
上記ステアリングコラムは、筒状のアッパコラムと、筒状のロアーコラムとを含み、アッパコラムの端部の内周に、ロアーコラムの一方の端部が、相対移動可能に嵌合されており、ロアーコラムの他方の端部に、上記圧入部が設けられ、
衝撃吸収時には、アッパコラムと、筒状のロアーコラムとが、軸方向に相対移動しつつ、アッパシャフトと、ロアーシャフトとが、軸方向に相対移動するようにされていることを特徴とするステアリング装置。
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