JP2008222202A - 車両用操舵装置 - Google Patents

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加寿也 吉岡
Yasuyuki Yoshii
康之 吉井
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賢司 東
Yukifumi Jinbo
志文 神保
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Abstract

【課題】衝撃吸収ストローク量を十分に確保することができる車両用操舵装置を提供する。
【解決手段】電動パワーステアリング装置は、環状のロータ18およびステータ19を有する電動モータ7を備える。ロータ18は、ロアーシャフト6に固定された第1の筒状部20と、第1の筒状部20と同軸的に配置された第2の筒状部21と、第1および第2の筒状部20,21間に介在して両筒状部20,21を連結する環状の中間部材23とを含む。車両の衝突のときに、中間部材23は、ジャケット10に押されて、第1の筒状部20から摩擦抵抗を受けながら第2の筒状部21とともに軸方向X1に移動する。第2の筒状部21が内壁面28に当接した後は、中間部材23が、第1および第2の筒状部20,21から摩擦抵抗を受けながら軸方向X1に移動する。
【選択図】図3

Description

この発明は、自動車等の車両に用いられる車両用操舵装置に関するものである。
自動車用の操舵装置として、電動モータにより操舵を補助する電動パワーステアリング装置が知られている。
例えば下記特許文献1には、ステアリングホイール等の操舵部材に連なるステアリングシャフトと同軸に設けられた電動モータを備える電動パワーステアリング装置が提案されている。
特開2005−145436号公報
電動パワーステアリング装置には、通常、ステアリングシャフト等を軸方向に収縮させることにより車両の衝突のときに運転者から操舵部材に加えられた衝撃を吸収する衝撃吸収機構が備えられている。しかしながら、特許文献1記載の電動パワーステアリング装置に衝撃吸収機構を設けた場合、電動モータが、ステアリングシャフトの軸方向スペースの一部を占有しているので、衝撃吸収機構の収縮ストローク(衝撃吸収ストローク)を十分に確保できない場合がある。
この発明は、かかる背景のもとになされたものであり、衝撃吸収ストローク量を十分に確保することができる車両用操舵装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、操舵部材(2)に連なるステアリングシャフト(3、50、100)と同軸に設けられた電動モータ(7,52、110)と、ステアリングシャフトを回転可能に支持するジャケット(10,11,51、105)とを備え、電動モータは、ステアリングシャフトを取り囲む環状のロータ(18,72、112)を含み、このロータは、ステアリングシャフトと一体回転可能に支持されており、車両の衝突のときに、ロータの少なくとも一部がジャケットまたはステアリングシャフトとともに軸方向(X1,X2、X3)に同行移動することにより衝撃を吸収するようにしてあることを特徴とする車両用操舵装置(1,1a,1b)である。
本発明によれば、衝撃吸収のときにロータの少なくとも一部がジャケットまたはステアリングシャフトとともに軸方向に移動するので、ジャケットまたはステアリングシャフトの軸方向移動による衝撃吸収ストローク量を十分に確保することができる。
ロータは、その一部がジャケットまたはステアリングシャフトとともに移動してもよいし、全体がジャケットまたはステアリングシャフトとともに移動してもよい。
また、本発明において、上記ロータは、ステアリングシャフト(3)の外周に嵌合された第1の筒状部(20)と、第1の筒状部と同軸的に配置され外周に永久磁石(22)を保持する第2の筒状部(21)と、第1および第2の筒状部を一体回転可能に連結する環状の中間部材(23)とを含み、上記第1の筒状部は、ステアリングシャフトに対する周方向移動および軸方向移動が規制されており、上記中間部材は、第1および第2の筒状部に対する軸方向移動に抵抗を与えるように第1および第2の筒状部に対して軸方向(X1)に関して摩擦係合しており、車両の衝突のときに、ジャケット(10)またはステアリングシャフトにより押された中間部材が第1の筒状部に対して軸方向に移動することにより、衝撃を吸収するようにしてある場合がある。
この場合、車両の衝突のとき、中間部材は、ジャケットまたはステアリングシャフトに押されて第1の筒状部に対して軸方向に移動する。そして、この移動に伴って生ずる中間部材と第1の筒状部との間での摩擦抵抗によって上記衝突による衝撃が吸収される。したがって、上記衝突による衝撃を確実に吸収することができる。
また、本発明において、上記ジャケット(11)にストッパ(28)が設けられ、このストッパは、車両の衝突のときに、中間部材とともに移動する第2の筒状部に当接することにより、第2の筒状部の移動ストロークを所定量に規制し、その結果、中間部材と第2の筒状部との軸方向相対移動によって衝撃が吸収されるようにしてある場合がある。この場合、ジャケットに設けられたストッパによって、第2の筒状部の軸方向への移動を規制し、それによって、中間部材を第2の筒状部に対して軸方向に移動させることができる。したがって、中間部材と第1および第2の筒状部のそれぞれとの間での摩擦抵抗によって上記衝突による衝撃をさらに確実に吸収することができる。
また、第1および第2の筒状部ならびに中間部材を同軸的に配置し、こられの部材を互いに軸方向に相対移動させることにより、限られた軸方向スペースで十分な衝撃吸収ストロークを確保することができる。
また、本発明において、上記ステアリングシャフト(50)は、ロアーシャフト(55)と、このロアーシャフトの外周(55a)に嵌合する筒状のアッパーシャフト(54)とを含み、上記ロータ(72)は、ロアーシャフトと同心の筒状のロータ本体(74)と、このロータ本体の下端(74a)をロアーシャフトに固定する固定部(75)と、ロータ本体の上端(74b)の内周(74c)とロアーシャフトの外周との間に介在してロータ本体の上端を支持し、ロータ本体およびロアーシャフトに対して軸方向(X2)に移動可能な環状の支持体(76)とを含み、衝撃吸収のときに、アッパーシャフトの下端(54a)またはジャケットが、支持体をロータ本体の下端に向けて押しながら支持体と同行移動するようにしてある場合がある。
この場合、衝撃吸収のときに、アッパーシャフトの下端またはジャケットによって支持体を押しながらロータ本体の下端に向けて支持体を移動させることにより、アッパーシャフトの一部またはジャケットをロータの内部に進入させることができる。すなわち、ロータの内部空間を有効に利用することにより、十分な衝撃吸収ストロークを確保することができる。
また、ロータ本体の下端および上端がそれぞれ固定部および支持体によって支持されているので、撓みや振動を生じさせることなく安定してロータ本体を回転させることができる。これにより、電動モータの出力を安定させることできる。
また、本発明において、上記ジャケット(51)は、ロアージャケット(56)と、このロアージャケットの外周(56a)に嵌合したアッパージャケット(57)とを含み、上記電動モータ(52)は、アッパージャケットの内周(67a)に保持された環状のステータ(73)を含み、このステータの内径がロアージャケットの外径以上に設定され、衝撃吸収のときに、アッパージャケットと同行移動するステータが、ロアージャケットの外周によって上記移動を案内されるようにしてある場合がある。
この場合、アッパージャケットがロアージャケットに対して移動する際に、アッパージャケットと同行移動するステータの内周にロアージャケットの外周を嵌合させることにより、アッパージャケットがロアージャケットから外れた場合に、アッパージャケットの移動をステータを介してロアージャケットによって案内させることができる。したがって、衝撃吸収のときに、アッパージャケットをスムーズに移動させることができるので、車両の衝突による衝撃を確実に吸収することができる。
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
最初に、図1〜図3を用いて、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置1の概略構成を模式的に示す断面図である。
図1を参照して、この第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2と、操舵部材2が連結されたステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に連結された例えばラックアンドピニオン機構等のステアリング機構4とを備えている。
ステアリングシャフト3は、複数のシャフトによって構成されており、操舵部材2に連なるアッパーシャフト5と、ステアリング機構4に連なるロアーシャフト6とを含む。アッパーシャフト5およびロアーシャフト6は、同一軸線上に配置されており、アッパーシャフト5は、筒状をなしている。アッパーシャフト5の内部には、ロアーシャフト6の一部が、例えばスプライン嵌合している。アッパーシャフト5およびロアーシャフト6は、一体回転可能、且つ、ステアリングシャフト3の軸方向X1に相対移動可能に連結されている。
なお、図1では、ロアーシャフト6が単一のシャフトによって構成されているように図示しているが、ロアーシャフト6は、例えばトーションバーによって相対回転可能に連結された筒状の入力軸および出力軸を含む複数のシャフトによって構成されていてもよい。
ステアリングシャフト3に関連して、ステアリングシャフト3の周囲には、操舵補助用の電動モータ7と、ステアリングシャフト3を回転可能に支持する筒状のステアリングコラム8(ジャケット)とが配置されている。
本実施形態では、電動モータ7としてブラシレスモータが用いられており、電動モータ7の出力は、ステアリングシャフト3に対して直接的に伝達されるようになっている。電動モータ7は、ロアーシャフト6に同軸に連結されている。
ステアリングコラム8は、複数の軸受9a,9b,9cを介してステアリングシャフト3を回転可能に支持しており、筒状のジャケット10(アッパージャケット)と、電動モータ7の一部である筒状のフレーム11(ロアージャケット)とによって構成されている。
ジャケット10は、アッパーシャフト5の一部およびロアーシャフト6の一部を覆っており、アッパーシャフト5は、軸受9aを介してジャケット10に相対回転可能に支持されている。また、ジャケット10およびアッパーシャフト5は、ステアリングシャフト3の軸方向X1に関して、一体移動可能に連結されている。したがって、ジャケット10、アッパーシャフト5および操舵部材2は、軸方向X1に一体移動可能となっている。
フレーム11は、ロアーシャフト6の一部を覆っており、一端が開放された筒状の主体部12と、主体部12の一端を閉塞する環状の蓋部材13とを有する。ロアーシャフト6は、主体部12および蓋部材13を挿通している。
ジャケット10は、蓋部材13の中央に形成された嵌合孔14に例えば圧入嵌合されており、軸方向移動可能に蓋部材13に保持されている。例えば車両の衝突のときに、蓋部材13の保持力を超える衝撃がジャケット10に加わると、ジャケット10は、ジャケット10と蓋部材13との間での摩擦による抵抗を受けながら蓋部材13に対して軸方向X1に移動できるようになっている。
ジャケット10およびフレーム11は、それぞれ取付部材15,16を介して車体の一部17に取り付けられている。ジャケット10を車体の一部17に取り付ける取付部材15は、破断可能な合成樹脂製のピン(図示せず)を含んでいる。したがって、例えば車両の衝突のときに、所定値を超える衝撃が取付部材15に加わると、上記ピンが破断してジャケット10と車体の一部17との固定が解除され、操舵部材2、アッパーシャフト5およびジャケット10が、軸方向X1に移動できるようになる。
次に、電動モータ7の構成について詳しく説明する。
図2は、図1に係る電動モータ7およびその近傍の拡大断面図である。図2を参照して、電動モータ7は、ロアーシャフト6を取り囲む環状のロータ18と、電動モータ7の径方向Y1に所定間隔を隔ててロータ18を取り囲む環状のステータ19と、ロータ18およびステータ19を収容する上記フレーム11とを有する。
ロータ18は、ロアーシャフト6の外周に嵌合された第1の筒状部20と、第1の筒状部20と同軸的に配置された第2の筒状部21とを有する。
第1の筒状部20は、例えば圧入によって、ロアーシャフト6に嵌合されており、軸方向X1に相対移動不能且つ一体回転可能にロアーシャフト6に連結されている。
第2の筒状部21は、複数の永久磁石22をその外周に保持しており、これら複数の永久磁石22はロータ18の周方向Z1に沿って配置されている。第2の筒状部21の外周は、N極およびS極が周方向Z1に交互に入れ替わる磁極となっている。
また、第2の筒状部21は、径方向Y1に所定間隔を隔てて第1の筒状部20を取り囲んでいる。第1および第2の筒状部20,21の間には、環状の中間部材23が介在しており、両筒状部20,21は、中間部材23によって連結されている。
具体的には、第1の筒状部20は、例えば所定の締め代を持ったセレーション嵌合によって、中間部材23と連結されており、中間部材23は、例えば所定の締め代を持ったセレーション嵌合によって、第2の筒状部21と連結されている。これら第1および第2の筒状部20,21ならびに中間部材23は、一体回転可能に連結されている。
また、第1の筒状部20および中間部材23は、軸方向X1に相対移動可能に連結されており、第1の筒状部20に対して中間部材23を軸方向X1に移動させると、中間部材23には、その移動方向と逆方向の摩擦抵抗が加わるようになっている。同様に、第2の筒状部21および中間部材23は、軸方向X1に相対移動可能に連結されており、第2の筒状部21に対して中間部材23を軸方向X1に移動させると、中間部材23には、その移動方向と逆方向の摩擦抵抗が加わるようになっている。
第1の筒状部20および中間部材23間での摩擦抵抗は、両部材20,23間での締め代を変えることにより調整することができるようになっている。同様に、第2の筒状部21および中間部材23間での摩擦抵抗は、両部材21,23間での締め代を変えることにより調整することができるようになっている。
また、第1の筒状部20の外径は、蓋部材13を挿通してフレーム11内に進入しているジャケット10の端部24の内径よりも小さくされており、第2の筒状部21の内径は、上記端部24の外径よりも大きくされている。したがって、ジャケット10の端部24は、第1および第2の筒状部20,21の間に進入できるようになっている。
一方、ステータ19は、環状のステータコア25と、このステータコア25に巻回されたコイル26とを有する。ステータコア25は、例えば圧入嵌合によって、フレーム11の主体部12内に固定されている。
主体部12の軸方向X1に関する端部には、環状の端壁27が設けられており、端壁27の内壁面28は、軸方向X1に関して所定間隔を隔てて第2の筒状部21の下方側の端部29に対向している。
図3は、上記第1の実施形態における操舵部材2の衝撃吸収ストロークについて説明するための図である。
図3(a)を参照して、車両が衝突を起こしていない通常時では、操舵部材2は軸方向X1のほぼ定位置に保持されている。
この状態から、車両が衝突(1次衝突)して運転者が操舵部材2に衝突(2次衝突)すると、運転者から操舵部材2に衝撃が加えられる。そして、操舵部材2に加えられた衝撃は、アッパーシャフト5やジャケット10等を介して取付部材15に伝達される。
取付部材15に加えられた衝撃が、所定値を超えると、上述のように操舵部材2、アッパーシャフト5およびジャケット10は、軸方向X1に移動可能となる。これにより、操舵部材2、アッパーシャフト5およびジャケット10が車体の一部17に対して軸方向X1に移動する。
まず最初に、ジャケット10は、ジャケット10に対する蓋部材13の保持力に逆らって軸方向X1に移動する。これにより、ジャケット10、アッパーシャフト5および操舵部材2が軸方向X1に一体移動し、ジャケット10の端部24は、図3(b)に示すように、中間部材23の端面に当接する。この際に、蓋部材13に対するジャケット10の移動により、ジャケット10には摩擦抵抗が加えられ、その摩擦抵抗によって上記2次衝突による衝撃が吸収される。
そして、ジャケット10および蓋部材13の相対移動による摩擦抵抗よって吸収されなかった上記衝撃は、ジャケット10から中間部材23に伝達される。これにより、中間部材23は、図3(c)に示すように、ジャケット10によって押されて、第1の筒状部20に対して軸方向X1に移動する。このとき、中間部材23とともに第2の筒状部21も軸方向X1に移動する。中間部材23が第1の筒状部20に対して移動することにより、上述のように、中間部材23には、その移動方向と逆方向の摩擦抵抗が加えられる。これにより、上記2次衝突による衝撃がさらに吸収される。
中間部材23および第2の筒状部21は、第2の筒状部21の端部29が端壁27の内壁面28に当接するまで、軸方向X1に移動可能となっている。すなわち、端壁27の内壁面28は、第2の筒状部21の移動ストロークを所定量に規制するためのストッパとしての機能を有している。
第2の筒状部21の端部29が内壁面28に当接した後は、図3(d)に示すように、中間部材23のみが第1の筒状部20に対して軸方向X1に移動する。このとき、第2の筒状部21は、内壁面28によってその移動が規制されているので、中間部材23は、第2の筒状部21に対しても軸方向X1に移動する。したがって、中間部材23には、第1の筒状部20に対する移動による摩擦抵抗と、第2の筒状部21に対する移動による摩擦抵抗とが加わる。これにより、上記2次衝突による衝撃がさらに吸収される。第1および第2の筒状部20,21に対する中間部材23の移動は、アッパーシャフト5の端部30がジャケット10の内周に保持された軸受9bに当接するまでの範囲で移動可能となっている。
このように、衝撃吸収ストロークLは、ジャケット10が中間部材23に当接するまでのストロークL1と、第2の筒状部21が内壁面28に当接するまでのストロークL2と、第2の筒状部21が内壁面28に当接した後、アッパーシャフト5の端部30が軸受9bに当接するまでのストロークL3とを加えたものとなっている。換言すると、衝撃吸収ストロークLは、図1に示すように、アッパーシャフト5の端部30が軸方向X1に移動する前の位置から当該端部30が軸受9bに当接する位置までの軸方向長さとなっている。
以上のように、本実施形態では、同軸的に配置された複数の部材(第1および第2の筒状部20,21、中間部材23)によってロータ18を構成し、これらの部材20,21,23を互いに軸方向X1に相対移動させることにより、限られた軸方向スペースで衝撃吸収ストロークを十分に、且つ、効率的に確保することができる。
また、第1の筒状部20および中間部材23間での締め代、ならびに第2の筒状部21および中間部材23間での締め代を管理することにより、容易に安定した衝撃吸収荷重(上記摩擦抵抗に相当)を得ることができる。
本発明の第1の実施形態についての説明は以上であるが、この第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置1は、上述の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上述の第1の実施形態では、ジャケット10が単一の部材によって構成されている場合について説明したが、ジャケット10は、軸方向X1に相対移動可能に嵌合された筒状のアッパージャケットおよびロアージャケットを含んでいてもよい。この場合、車両の衝突のときにアッパージャケットおよびロアージャケットを軸方向X1に相対移動させることにより、衝撃吸収ストロークをさらに十分に確保することができる。
また、上述の第1の実施形態では、ジャケット10が中間部材23を押す構成について説明したが、以下で説明する第2の実施形態のように、アッパーシャフト5が中間部材23を押す構成としてもよい。
次に、図4〜図6を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。この図4〜図6において、上述の図1〜図3に示された各部と同等の構成部分については、図1〜図3と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置1aの概略構成を模式的に示す断面図である。図4を参照して、この第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置1aは、操舵部材2に連結されたステアリングシャフト50と、このステアリングシャフト50を回転可能に支持する筒状のジャケット51と、このジャケット51内にそれぞれ保持された電動モータ52およびロータ72の回転位置検出装置としてのレゾルバ53とを備えている。
ステアリングシャフト50は、操舵部材2に連結されたアッパーシャフト54と、図示しない中間軸等を介してステアリング機構4に連結されたロアーシャフト55とを含む。アッパーシャフト54は筒状であり、ロアーシャフト55の一部はアッパーシャフト54の内周に嵌合している。アッパーシャフト54およびロアーシャフト55は、ステアリングシャフト50の軸方向X2に相対移動可能、かつ、一体回転可能に連結されている。
ジャケット51は、筒状のロアージャケット56と、このロアージャケット56の外周56aに嵌合した筒状のアッパージャケット57とを含む。ロアージャケット56およびアッパージャケット57は軸方向X2に相対移動可能に連結されており、それぞれ取付部材60,59を介して車体の一部17に取り付けられている。
ステアリングシャフト50は、ロアージャケット56およびアッパージャケット57を挿通しており、複数の軸受58a,58b,58cを介してロアージャケット56およびアッパージャケット57に回転可能に支持されている。
アッパージャケット57を車体の一部17に取り付ける取付部材59は、破断可能な合成樹脂製のピン(図示せず)を含むものであり、例えば車両の衝突のときに、所定値を超える荷重が加わると上記ピンが破断して車体の一部17に対するアッパージャケット57の固定を解除できるようになっている。
また、ロアージャケット56を車体の一部17に取り付ける取付部材60は、アッパージャケット57がロアージャケット56に対して軸方向X2に移動したときに、当該アッパージャケット57が衝突しないような形状にされている。すなわち、取付部材60は、ロアージャケット56に固定された固定部61と、この固定部61から軸方向X2に延設された延設部62と、この延設部62に連結され車体の一部17に固定された取付部63とを含む。
ロアージャケット56は、筒状の主体部64と、この主体部64の一端を塞ぐ端壁65とを含む。端壁65には、ロアーシャフト55が挿通する挿通孔が形成されている。また、取付部材60の固定部61はこの端壁65に固定されている。ロアーシャフト55は、主体部64および端壁65を挿通しており、主体部64に保持された軸受58aを介してロアージャケット56に回転可能に支持されている。
アッパージャケット57は、アッパーシャフト54を回転可能に支持する筒状のシャフト支持部66と、電動モータ52を収容する筒状のモータ収容部67と、ロアージャケット56が嵌合した筒状の嵌合部68とを含む。アッパーシャフト54は、シャフト支持部66を挿通しており、このシャフト支持部66に保持された一対の軸受58b,58cを介して回転可能にアッパージャケット57に支持されている。また、この一対の軸受58b,58cの間に対応するアッパーシャフト54の一部には、運転者から操舵部材2に与えられた操舵トルクを検出するためのトルクセンサ69が連結されている。
アッパーシャフト54は、アッパージャケット57に軸方向X2に同行移動可能かつ回転可能に支持されている。したがって、例えば車両が衝突して取付部材59によるアッパージャケット57と車体の一部17との固定が解除されると、アッパージャケット57、アッパーシャフト54および操舵部材2等は、軸方向X2に同行移動するようになっている。
モータ収容部67は、シャフト支持部66と嵌合部68との間に設けられており、シャフト支持部66および嵌合部68を同軸的に連結している。すなわち、モータ収容部67は、筒状の主体部70と、この主体部70の一端および他端とシャフト支持部66および嵌合部68とをそれぞれ連結する一対の環状端壁71,71とを備えている。
嵌合部68は、ロアージャケット56の主体部64の外径とほぼ同じ大きさの内径を有しており、例えば圧入によりロアージャケット56に嵌合されている。嵌合部68の内周面と、ロアージャケット56の外周面とは摩擦係合しており、アッパージャケット57がロアージャケット56に対して軸方向X2に移動すると、この嵌合部68の内周面とロアージャケット56の外周面との摩擦により、その移動方向と逆方向の摩擦抵抗がロアージャケット56からアッパージャケット57に加えられるようになっている。
電動モータ52は、操舵補助力をステアリングシャフト50に伝達することにより運転者の操舵を補助するためのものであり、ロアーシャフト55に同軸的に連結されている。すなわち、電動モータ52は、ロアーシャフト55に一体回転可能に同軸的に連結された環状のロータ72と、電動モータ52の径方向Y2に所定間隔を隔ててロータ72を取り囲む環状のステータ73とを含む。電動モータ52の出力の大きさは例えばトルクセンサ69によって検出されたトルク検出結果などに基づいて制御されるようになっている。電動モータ52の出力はロアーシャフト55に直接伝達されるようになっている。
ロータ72は、電動モータ52の径方向Y2に所定間隔を隔ててロアーシャフト55を取り囲む筒状のロータ本体74と、このロータ本体74の下端74aをロアーシャフト55に固定する環状の固定部75と、ロータ本体74の上端74bを支持する環状の支持体76とを含む。ロータ本体74、固定部75および支持体76は、ロアーシャフト55と同軸的に配置されており、ロアーシャフト55と一体回転可能となっている。
ロータ本体74はアッパーシャフト54の下端54aの外径よりも大きい内径を有する筒状の部材であり、その外周には図示しない複数の永久磁石が保持されている。ロータ本体74の外周は、N極およびS極が電動モータ52の周方向に交互に入れ替わる磁極となっている。
固定部75は、ロータ本体74の下端74aに同軸的に固定されるとともに、ロータ本体74よりも軸長の短い環状の部材である。本実施形態では、固定部75がロータ本体74と単一の材料で一体に形成されている。固定部75は、例えば圧入嵌合によりロアーシャフト55に固定されている。したがって、ロータ本体74および固定部75は、ロアーシャフト55に対して、軸方向移動不能、かつ、一体回転可能に連結されている。
支持体76は、ロータ本体74よりも軸長の短い環状の部材であり、ロータ本体74の上端74bの内周74cとロアーシャフト55の外周55aとの間に介在している。支持体76は、例えば、圧入嵌合や所定の締め代を持ったセレーション嵌合によりロアーシャフト55とロータ本体74との間で保持されている。支持体76は、ロアーシャフト55およびロータ本体74に対して軸方向移動可能、かつ、一体回転可能にされている。
また、支持体76の外周面とロータ本体74の内周面、および、支持体76の内周面とロアーシャフト55の外周面はそれぞれ摩擦係合している。したがって、ロアーシャフト55およびロータ本体74に対して支持体76を軸方向X2に移動させると、その移動方向と逆方向の摩擦抵抗がロータ本体74およびロアーシャフト55のそれぞれから支持体76に加わるようになっている。
ロータ本体74は、固定部75および支持体76によって二箇所で支持された状態で、ロアーシャフト55に連結されている。また、ロータ本体74、固定部75および支持体76がロアーシャフト55に連結された状態では、ロータ本体74の内方に、固定部75と支持体76とによって軸方向X2に挟まれた中空の円筒状空間が形成されている。支持体76は、この円筒状空間内で軸方向X2に移動可能となっている。
ステータ73は、電動モータ52の径方向Y2に所定間隔を隔ててロータ72を取り囲む環状のステータコア77と、このステータコア77に巻回されたコイル78とを含む。ステータコア77は、モータ収容部67の内周67aに例えば圧入嵌合により保持されている。また、ステータコア77の内径は、ロアージャケット56の主体部64の外径以上の大きさにされている。
アッパージャケット57がロアージャケット56に対して所定値以上、軸方向X2に移動してアッパージャケット57の嵌合部68がロアージャケット56から外れると、アッパージャケット57と同行移動するステータコア77の内周にロアージャケット56が嵌合して、ステータコア77がロアージャケット56に案内されるようになっている。したがって、嵌合部68がロアージャケット56から外れても、アッパージャケット57はスムーズに軸方向X2に移動できるようになっている。
レゾルバ53は、電動モータ52のロータ72の回転位置を検出するためのものであり、ロアーシャフト55に同軸的に連結されている。すなわち、レゾルバ53は、ロアーシャフト55に一体回転可能に同軸的に連結された環状のレゾルバロータ79と、このレゾルバロータ79をレゾルバ53の径方向に所定間隔を隔てて取り囲む環状のレゾルバステータ80とを含む。レゾルバステータ80は、環状のステータコア81と、このステータコア81に巻回されたコイル82とを含む。ステータコア81は、例えば圧入嵌合によりロアージャケット56の主体部64の内周に保持されている。なお、ロータ72の回転位置を検出する装置としては、ロータリエンコーダ等の他の検出装置を用いてもよい。
図5は、上記第2の実施形態における操舵部材2の衝撃吸収ストロークについて説明するための図である。
図4および図5を参照して、車両が衝突を起こしていない通常時では、図4(a)に示すように、操舵部材2が軸方向X2のほぼ定位置に保持されている。この状態から、車両が衝突(1次衝突)して運転者が操舵部材2に衝突(2次衝突)すると、運転者から操舵部材2に衝撃が加えられる。そして、操舵部材2に加えられた衝撃は、アッパーシャフト54およびアッパージャケット57等を介して、アッパージャケット57を車体の一部17に取り付けている取付部材59に伝達される。
取付部材59に加えられた衝撃が所定値を超えると、上述のように取付部材59によるアッパージャケット57と車体の一部17との固定が解除され、操舵部材2、アッパーシャフト54およびアッパージャケット57等が車体の一部17に対して軸方向X2に移動する。また、それとともに、アッパージャケット57がロアージャケット56に対して軸方向X2に移動する。これにより、その移動方向と逆方向の摩擦抵抗(衝撃吸収荷重)がロアージャケット56からアッパージャケット57に加えられ、この衝撃吸収荷重によって上記2次衝突による衝撃が吸収される。
また、アッパージャケット57が軸方向X2に所定量移動すると、図5(b)に示すように、アッパーシャフト54の下端54aが支持体76に当接する。そして、アッパーシャフト54の下端54aから支持体76に、上記2次衝突による衝撃が加えられる。
支持体76に加えられた衝撃が所定値を超えると、支持体76は、図5(c)に示すように、アッパーシャフト54の下端54aに押されながらロアーシャフト55およびロータ本体74に対して軸方向X2に移動する。これにより、支持体76の移動方向と逆方向の摩擦抵抗(衝撃吸収荷重)が支持体76を介してロアーシャフト55およびロータ本体74のそれぞれからアッパーシャフト54に加えられる。そして、この衝撃吸収荷重によって上記2次衝突による衝撃が吸収される。すなわち、上記2次衝突による衝撃は、ロアージャケット56からの衝撃吸収荷重と、ロアーシャフト55およびロータ本体74のそれぞれからの衝撃吸収荷重によって吸収されるようになっている。
また、ロータ本体74の内径はアッパーシャフト54の下端54aの外径よりも大きくされているので、アッパーシャフト54の下端54aは、ロータ本体74の下端74aへの支持体76の移動に伴ってロータ本体74の内方に入り込んでいく。さらに、図5(c)に示すように、アッパージャケット57が所定値以上、軸方向X2に移動して、アッパージャケット57の嵌合部68がロアージャケット56から外れると、アッパージャケット57と同行移動するステータコア77がロアージャケット56によって案内されて、アッパージャケット57が軸方向X2にスムーズに移動していく。このとき、ロアージャケット56を車体の一部17に取り付けている取付部材60には軸方向X2に延びる延設部62が設けられているので、アッパージャケット57が取付部材60に衝突しないようになっている。
以上のように、本実施形態では、車両が衝突を起こしていない通常時において、ロータ本体74の上端74bおよび下端74aがそれぞれ支持体76および固定部75によって支持されているので、撓みや振動を生じさせることなくロータ本体74を安定して回転させることができる。これにより、電動モータ52の出力を安定させることができる。また、車両の衝突のときにアッパーシャフト54の下端54aによって支持体76を押して、アッパーシャフト54の下端54aをロータ本体74の内方に入り込ませることにより、ロータ本体74の内方の空間を有効に利用して衝撃吸収ストロークを十分に確保することができる。
さらに、車両の衝突のときにアッパージャケット57が所定値以上、軸方向X2に移動してアッパージャケット57がロアージャケット56から外れても、アッパージャケット57と同行移動するステータコア77がロアージャケット56によって案内されるので、アッパージャケット57を軸方向X2にスムーズに移動させることができる。これにより、上記2次衝突による衝撃を確実に吸収することができる。
本発明の第2の実施形態についての説明は以上であるが、この第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置1aは、上述の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上述の第2の実施形態では、アッパージャケット57が単一の部材によって構成されている場合について説明したが、アッパージャケット57を複数の部材によって構成してもよい。例えば、互いに軸方向X2に相対移動可能に嵌合された複数の筒状部材によって構成してもよい。
また、上述の第2の実施形態では、衝撃吸収荷重としての摩擦抵抗が、支持体76の内周面とロアーシャフト55の外周面との間、支持体76の外周面とロータ本体74の内周面との間、および、嵌合部68の内周面とロアージャケット56の外周面との間で発生される例について説明したが、これに限らず、衝撃吸収荷重としての摩擦抵抗は、支持体76の内周面とロアーシャフト55の外周面との間、支持体76の外周面とロータ本体74の内周面との間、および、嵌合部68の内周面とロアージャケット56の外周面との間の少なくとも1つで発生されればよい。
また、上述の第2の実施形態では、支持体76の内周面とロアーシャフト55の外周面、支持体76の外周面とロータ本体74の内周面、および、嵌合部68の内周面とロアージャケット56の外周面とが、それぞれ摩擦係合している場合について説明したが、摩擦係合に代えて、凹凸係合させてもよい。この場合、凹部と凸部との係合により衝撃吸収荷重を発生させることができるとともに、凸部を破断させることにより、アッパージャケット57等をストロークさせることができる。
また、上述の第2の実施形態では、アッパージャケット57が軸方向X2に移動した際にアッパージャケット57と衝突しない形状にされた取付部材60によってロアージャケット56が車体の一部17に取り付けられている場合について説明したが、これに限らず、その他の取付部材を用いてもよい。
例えば図6に示すような、アッパージャケット57によって軸方向X2に押されると変形しながらアッパージャケット57とともに軸方向X2に移動する取付部材83(いわゆる「ベンディングブラケット」とよばれるもの)を用いてもよい。取付部材83は、ロアージャケット56に固定された固定部84と、車体の一部17に固定された取付部85と、固定部84および取付部85を連結する連結部86とを含む。連結部86は複数の屈曲部87を有する。
アッパージャケット57によって連結部86が軸方向X2に押されると、複数の屈曲部87の屈曲角度が変わることにより、車体の一部17とロアージャケット56との相対位置が保たれたまま、連結部86の一部が軸方向X2に移動するようになっている(図6の二点鎖線で示す状態)。
アッパージャケット57の軸方向移動に伴って取付部材83を変形させることにより、上記2次衝突による衝撃を取付部材83に吸収させることができる。したがって、取付部材83を用いる場合、支持体76の内周面とロアーシャフト55の外周面との間、支持体76の外周面とロータ本体74の内周面との間、および、嵌合部68の内周面とロアージャケット56の外周面との間で衝撃吸収荷重が発生されなくてもよいし、これらの少なくとも1つで衝撃吸収荷重が発生されてもよい。
また、上述の第2の実施形態では、アッパーシャフト54の下端54aが支持体76を押す構成について説明したが、第1の実施形態のように、ジャケットが支持体76を押す構成としてもよい。
次に、図7および図8を用いて、本発明の第3の実施形態について説明する。この図7および図8において、上述の図1〜図6に示された各部と同等の構成部分については、図1〜図6と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図7は、本発明の第3の実施形態に係る電動パワーステアリング装置1bの概略構成を模式的に示す断面図である。図7を参照して、この第3の実施形態に係る電動パワーステアリング装置1bは、操舵部材2とステアリング機構4とを備えている。
操舵部材2とステアリング機構4はステアリングシャフト100および中間軸(図示せず)等を介して機械的に連結されており、操舵部材2の回転はステアリングシャフト100および中間軸を介してステアリング機構4に伝達されるようになっている。
ステアリングシャフト100は、直線状に延びており、筒状の第1のシャフト101と、第1のシャフト101に一体回転可能に連結された第2のシャフト102と、トーションバー104を介して相対回転可能に第2のシャフト102に連結された第3のシャフト103と、によって構成されている。第1、第2および第3のシャフト101〜103は、ステアリングシャフト100の軸方向X3に一体移動可能に連結されている。
第1のシャフト101は、その一部が円筒状のジャケット105の内周に配置されており、軸受141を介してジャケット105に回転可能に支持されている。第1のシャフト101とジャケット105とは、軸受141を介して軸方向X3に一体移動可能に連結されている。ジャケット105は、外径がほぼ一定の円筒状の部材である。
ジャケット105は、破断可能な合成樹脂製のピン106aを含む取付部材106によって車体の一部17に取り付けられている。例えば車両の衝突のときに、所定値を超える荷重が取付部材106に加わると上記ピン106aが破断して車体の一部17に対するジャケット105の固定が解除されるようになっている。
第2のシャフト102の下端部は、例えばすきま嵌めで、第3のシャフト103の上端部に内嵌している。トルクセンサ69は、第2のシャフト102と第3のシャフト103との嵌合部の近傍に配置されている。トルクセンサ69は、第2のシャフト102と第3のシャフト103との相対回転変位量に基づいて、操舵部材2に加えられた操舵トルクを検出するようになっている。また、トルクセンサ69によって検出されたトルク検出結果は、図示しないECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)に入力されるようになっている。
トルクセンサ69は、筒状のセンサハウジング107内に収容されており、ステアリングシャフト100は、ジャケット105およびセンサハウジング107を挿通している。トルクセンサ69の上端部は第2のシャフト102に形成された環状段部102aに係合している。第2のシャフト102が軸方向X3下方に移動すると、トルクセンサ69は、環状段部102aによって押されて第2のシャフト102と共に軸方向X3下方に移動するようになっている。
センサハウジング107は、その内周にトルクセンサ69が配置された筒状部108と、この筒状部108の外周からその径方向外方に延設されたフランジ部109とを含む。フランジ部109は、電動モータ110の一部であるフレーム111に固定されている。また、第3のシャフト103の下端部は、電動モータ110の一部であるロータ112に一体回転可能に連結されている。本実施形態に係る電動モータ110は、いわゆるインナーロータ型のブラシレスモータであり、上記フレーム111およびロータ112と、ロータ112を取り囲むステータ113とを備えている。なお、電動モータ110としては、ブラシレスモータに限らず、その他のモータを用いることができる。
センサハウジング107の筒状部108の上端部の内周にはジャケット105の下端部が例えば圧入されている。これにより、センサハウジング107とジャケット105とが、軸方向X3に相対摺動可能に、且つ、同軸的に連結されている。ジャケット105の外周面と、筒状部108の上端部の内周面とは、摩擦係合している。
後述するように、車両の衝突によって、ジャケット105がセンサハウジング107に対して軸方向X3下方に移動すると、ジャケット105に加えられた衝撃は、ジャケット105と筒状部108との間に生じる摩擦抵抗によって吸収されるようになっている。すなわち、ジャケット105と筒状部108との間に生じる摩擦抵抗が衝撃吸収荷重として作用する。
第2のシャフト102は、ジャケット105の下端部に配置された軸受142を介して回転可能にジャケット105に支持されている。また、第3のシャフト103は、センサハウジング107の下端部に配置された軸受143を介して回転可能にセンサハウジング107に支持されている。軸受142とジャケット105とは、軸方向X3下方に一体移動可能であり、軸受143と第3のシャフト103とは、軸方向X3下方に一体移動可能である。
すなわち、ジャケット105が軸方向X3下方に移動すると、軸受142は、ジャケット105によって押されてジャケット105と共に軸方向X3下方に移動するようになっている。また、軸受143は第3のシャフト103の外周に固定されており、第3のシャフト103が軸方向X3下方に移動すると、軸受143は、第3のシャフト103と共に軸方向X3下方に移動するようになっている。
続いて電動モータ110について詳しく説明する。
ロータ112は、ステアリングシャフト100と同軸的に配置された概ね円筒状の部材であり、その下端部にはシャフト部114が設けられている。ロータ112の上端部は第3のシャフト103の下端部に一体回転可能に、且つ、同軸的に連結されている。また、シャフト部114は中間軸等を介してステアリング機構4に連結されている。ロータ112には、ステアリングシャフト100を介して操舵部材2の回転が伝達されるようになっており、ロータ112に伝達された操舵部材2の回転は、シャフト部114を介してステアリング機構4に伝達されるようになっている。
ロータ112は、第3のシャフト103の下端部を同軸的に取り囲む筒状のロータ本体115と、ロータ本体115の下端部からその径方向内方に向けて延設された端壁116と、第3のシャフト103の下端部とロータ本体115の上端部との間に介在しこれらの部材103,115を一体回転可能に連結する環状の連結部材117とを含む。
上記シャフト部114は、ロータ本体115と同軸となるように端壁116の下面から軸方向X3下方に向けて延設されている。また、ロータ112には、シャフト部114および端壁116を軸方向X3に貫通する貫通孔118が形成されている。貫通孔118の上端は、ロータ本体115の内方に設けられた中空の空間S1と連通しており、その下端は、電動モータ110の外部の空間と連通している。
ロータ本体115は、筒状のロータコア119と、このロータコア119の外周に保持された複数の永久磁石120とを含む。本実施形態では、シャフト部114、端壁116およびロータコア119が単一の部材で一体に形成されている。
ロータ本体115の上端部は、第3のシャフト103の下端部を同軸的に取り囲むとともに、その内周に配置された第3のシャフト103の下端部および連結部材117等によってほぼ密閉された状態で塞がれている。ロータ本体115の内方であり、端壁116と連結部材117との間の空間が上記中空の空間S1となっている。
連結部材117の中心部に形成された嵌合孔121には第3のシャフト103の下端部が例えば圧入されており、これによって、連結部材117と第3のシャフト103とが、一体回転可能に、且つ、同軸的に連結されている。連結部材117の上端部は、第3のシャフト103に形成された環状段部103aに係合しており、第3のシャフト103が軸方向X3下方に移動すると、連結部材117は、環状段部103aによって押されて第3のシャフト103と共に軸方向X3下方に移動するようになっている。
一方、連結部材117とロータ本体115とは、例えばスプライン嵌合やセレーション嵌合、圧入等によって、一体回転可能に連結されている。連結部材117は、ロータ本体115に対して軸方向X3下方に移動できるようになっている。具体的には、車両が衝突を起こしていない通常時における連結部材117の位置から(図7に示す位置から)、連結部材117の一端面117a(図7では下面)が端壁116の一端面116a(図7では上面)に当接するまでの範囲で、連結部材117は、ロータ本体115に対して軸方向X3下方に移動できるようになっている。
連結部材117がロータ本体115に対して軸方向X3下方に移動すると、空間S1内の空気は、連結部材117等によって押されて貫通孔118を通じて電動モータ110の外部に逃がされるようになっている。すなわち、上記貫通孔118は、空間S1内の空気を電動モータ110の外部に逃がすための空気逃がし孔として機能するようになっている。貫通孔118を設けることで、連結部材117等は軸方向X3下方にスムーズに移動できるようになっている。また、貫通孔118の径を調整して(例えば小さくして)空気の流通抵抗を変更することにより、衝撃吸収荷重を調整してもよい。
ロータ112は、回転トルクとしての電磁力をステータ113から受けて回転するようになっている。また、ロータ112が受けた回転トルクは、操舵補助力としてステアリング機構4に伝達されるようになっている。これにより、運転者の操舵が補助されるようになっている。
ステータ113は、環状のステータコア122と、このステータコア122に巻回された複数のコイル123とを含む。ステータコア122は、その径方向に間隔を隔ててロータ112を同軸的に取り囲んでいる。また図示はしないが、ステータコア122は、環状のヨークと、ヨークの内周からその径方向内方に突出する複数のティースとを含む。
複数のコイル123は、それぞれ複数のティースに巻回されており、各コイル123には、図示しない電力供給源からの電力が供給されるようになっている。各コイル123への電力の供給は、ECUによって制御される。ECUが、電力供給源から各コイル123に電力を供給させることにより、ロータ112が回転されるようになっている。
ステータコア122は、フレーム111によって保持されている。フレーム111は、その内周にステータコア122を保持する筒状部124と、この筒状部124の下端部に連結された端部材125とを含む。筒状部124は、その軸方向長さがステータコア122の軸方向長さよりも長くされている。ステータコア122は、筒状部124の軸方向中間部に保持されている。また、筒状部124の上端部には、センサハウジング107のフランジ部109が固定さている。
端部材125は、筒状部124の下端部に連結された環状板部126と、環状板部126の内周に設けられた内筒部127とを含む。環状板部126には、車体の一部17に取り付けられた取付部材128が固定されており、これによって、電動モータ110が車体の一部17に対して固定されている。
ロータ112のシャフト部114は、端部材125の中央部に形成された挿通孔129を挿通しており、内筒部127の内周面に保持された軸受144を介して端部材125に回転可能に支持されている。また、レゾルバの一部であるレゾルバステータ130は、軸受144よりも軸方向X3上方の位置において、内筒部127の内周面に保持されている。レゾルバステータ130は、シャフト部114の外周に一体回転可能に連結されたレゾルバロータ131と協働して、ロータ112の回転位置を検出するようになっている。なお、上述のように、ロータ112の回転位置を検出する装置としては、レゾルバに限らない。
図8は、上記第3の実施形態における操舵部材2の衝撃吸収ストロークについて説明するための図である。
図7および図8を参照して、車両が衝突を起こしていない通常時では、図8(a)に示すように、操舵部材2が軸方向X3のほぼ定位置に保持されている。この状態から、車両が衝突(1次衝突)して運転者が操舵部材2に衝突(2次衝突)すると、運転者から操舵部材2に衝撃が加えられる。そして、操舵部材2に加えられた衝撃は、第1のシャフト101、軸受141およびジャケット105を介して、取付部材106に伝達される。
取付部材106に加えられた衝撃が所定値を超えると、上述のようにピン106aが破断して取付部材106によるジャケット105と車体の一部17との固定が解除される。これにより、操舵部材2、ステアリングシャフト100およびジャケット105等が車体の一部17に対して移動可能となり、軸方向X3下方に移動する(図8においては、左方に移動する)。
具体的には、図8(b)に示すように、操舵部材2、ステアリングシャフト100およびジャケット105に加えて、ステアリングシャフト100に関連して設けられた構成(軸受141〜143、トルクセンサ69および連結部材117)が軸方向X3下方に一体的に移動する。このとき、ジャケット105の外周面とセンサハウジング107の筒状部108の内周面とが摺動して、その移動方向と逆方向の摩擦抵抗が衝撃吸収荷重としてジャケット105に加えられる。これにより、上記2次衝突による衝撃が吸収される。操舵部材2、ステアリングシャフト100およびジャケット105等は、連結部材117の一端面117a(図8では左端面)が端壁116の一端面116a(図8では右端面)に当接するまでの範囲で軸方向X3下方に移動することができる。
すなわち、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置1bでは、車両が衝突を起こしていない通常時を示す図7において、連結部材117の一端面117aから端壁116の一端面116aまでの軸方向X3に沿う長さが、操舵部材2の衝撃吸収ストロークとなっている。
以上のように、本実施形態では、上記2次衝突に伴う衝撃吸収のときに、ロータ112の一部である連結部材117をステアリングシャフト100とともに軸方向X3下方に移動させることで、上記2次衝突による衝撃が吸収されるようになっている。ロータ112の内部には中空の空間S1が設けられており、上記衝撃吸収のときに、ステアリングシャフト100の一部がこの空間S1に進入するようになっているので、電動モータ110内の空間が有効に利用されている。これにより、ステアリングシャフト100と同軸に配置された電動モータ110を備える電動パワーステアリング装置1bであっても、十分な衝撃吸収ストロークを確保することができる。
また、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置1bは、ステアリングシャフト100およびジャケット105全体を軸方向X3下方に移動させて上記2次衝突による衝撃を吸収するようになっているので、例えば互いに相対摺動可能に嵌合されたアッパージャケットおよびロアージャケットをステアリングシャフトの軸方向に収縮させて上記2次衝突による衝撃を吸収する構成の電動パワーステアリング装置に比べて部品点数が削減されている。
本発明の第3の実施形態についての説明は以上であるが、この第3の実施形態に係る電動パワーステアリング装置1bは、上述の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、この第3の実施形態では、ジャケット105の外周面とセンサハウジング107の筒状部108の内周面とが、摩擦係合している場合について説明したが、これらに限らず、ジャケット105とセンサハウジング107とが、凹凸係合していてもよい。
また、上述の第3の実施形態では、ジャケット105とセンサハウジング107との摺動により生じる摩擦抵抗によって、上記2次衝突による衝撃が吸収される場合について説明したが、連結部材117の外周面とロータ本体115の内周面とを摩擦係合または凹凸係合させ、連結部材117がロータ本体115に対して軸方向X3下方に移動するときに生じる抵抗を衝撃吸収荷重として作用させてもよい。この場合、ジャケット105とセンサハウジング107との摺動により生じる摩擦抵抗に加えて、連結部材117がロータ本体115に対して移動するときに生じる抵抗が衝撃吸収荷重として作用するので、上記2次衝突による衝撃を確実に吸収することができる。
本発明の第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を模式的に示す断面図である。 図1に係る電動モータおよびその近傍の拡大断面図である。 上記第1の実施形態における操舵部材の衝撃吸収ストロークについて説明するための図である。 本発明の第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を模式的に示す断面図である。 上記第2の実施形態における操舵部材の衝撃吸収ストロークについて説明するための図である。 上記第2の実施形態における電動パワーステアリング装置に用いられる取付部材を模式的に示す図である。 本発明の第3の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を模式的に示す断面図である。 上記第3の実施形態における操舵部材の衝撃吸収ストロークについて説明するための図である。
符号の説明
1,1a、1b・・・電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置)2・・・操舵部材、3,50、100・・・ステアリングシャフト、7,52、110・・・電動モータ、10,51、105・・・ジャケット、11・・・フレーム(ジャケット)、18,72、112・・・ロータ、20・・・第1の筒状部、21・・・第2の筒状部、22・・・永久磁石、23・・・中間部材、28・・・内壁面(ストッパ)、54・・・アッパーシャフト、54a・・・下端(アッパーシャフトの下端)、55・・・ロアーシャフト、55a・・・外周(ロアーシャフトの外周)、56・・・ロアージャケット、56a・・・外周(ロアージャケットの外周)、57・・・アッパージャケット、67a・・・内周(アッパージャケットの内周)、73・・・ステータ、74・・・ロータ本体、74a・・・下端(ロータ本体の下端)、74b・・・上端(ロータ本体の上端)、74c・・・内周(ロータ本体の内周)、75・・・固定部、76・・・支持体、X1,X2、X3・・・軸方向

Claims (5)

  1. 操舵部材に連なるステアリングシャフトと同軸に設けられた電動モータと、
    ステアリングシャフトを回転可能に支持するジャケットとを備え、
    電動モータは、ステアリングシャフトを取り囲む環状のロータを含み、
    このロータは、ステアリングシャフトと一体回転可能に支持されており、
    車両の衝突のときに、ロータの少なくとも一部がジャケットまたはステアリングシャフトとともに軸方向に同行移動することにより衝撃を吸収するようにしてあることを特徴とする車両用操舵装置。
  2. 請求項1において、上記ロータは、ステアリングシャフトの外周に嵌合された第1の筒状部と、第1の筒状部と同軸的に配置され外周に永久磁石を保持する第2の筒状部と、第1および第2の筒状部を一体回転可能に連結する環状の中間部材とを含み、
    上記第1の筒状部は、ステアリングシャフトに対する周方向移動および軸方向移動が規制されており、
    上記中間部材は、第1および第2の筒状部に対する軸方向移動に抵抗を与えるように第1および第2の筒状部に対して軸方向に関して摩擦係合しており、
    車両の衝突のときに、ジャケットまたはステアリングシャフトにより押された中間部材が第1の筒状部に対して軸方向に移動することにより、衝撃を吸収するようにしてあることを特徴とする車両用操舵装置。
  3. 請求項2において、上記ジャケットにストッパが設けられ、
    このストッパは、車両の衝突のときに、中間部材とともに移動する第2の筒状部に当接することにより、第2の筒状部の移動ストロークを所定量に規制し、その結果、中間部材と第2の筒状部との軸方向相対移動によって衝撃が吸収されるようにしてあることを特徴とする車両用操舵装置。
  4. 請求項1において、上記ステアリングシャフトは、ロアーシャフトと、このロアーシャフトの外周に嵌合する筒状のアッパーシャフトとを含み、
    上記ロータは、ロアーシャフトと同心の筒状のロータ本体と、このロータ本体の下端をロアーシャフトに固定する固定部と、ロータ本体の上端の内周とロアーシャフトの外周との間に介在してロータ本体の上端を支持し、ロータ本体およびロアーシャフトに対して軸方向に移動可能な環状の支持体とを含み、
    衝撃吸収のときに、アッパーシャフトの下端またはジャケットが、支持体をロータ本体の下端に向けて押しながら支持体と同行移動するようにしてあることを特徴とする車両用操舵装置。
  5. 請求項4において、上記ジャケットは、ロアージャケットと、このロアージャケットの外周に嵌合したアッパージャケットとを含み、
    上記電動モータは、アッパージャケットの内周に保持された環状のステータを含み、
    このステータの内径がロアージャケットの外径以上に設定され、
    衝撃吸収のときに、アッパージャケットと同行移動するステータが、ロアージャケットの外周によって上記移動を案内されるようにしてあることを特徴する車両用操舵装置。
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