JP3998956B2 - 導電性シート及び電子部品搬送用容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は導電性シート、特にIC等の電子部品の搬送及び保管に利用されるエンボスキャリヤテープやトレー等の製造で使用される導電性シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子部品の表面実装化が大きく進んできており、それに伴って表面実装技術も大幅に進歩し、より高性能でより小型なチップ型電子部品が開発され、それらの需要が急増しており、これらを搬送、保管する包装形態の1つとしてエンボスキャリヤテープが用いられている。チップ型電子部品はエンボスキャリヤテープの各ポケットに収納され、蓋体であるカバーテープでシールされた後、リールに巻き取られた状態で保管、搬送され、表面実装機のカセットフィーダーへ装着される。次に収納されているチップ型電子部品の回路基板への組付けはエンボスキャリヤテープを順々に送り出しながらカバーテープを剥離してチップ型電子部品を自動的にピックアップして回路基板の所定の場所へ自動的に配置するという方法で行われている。この工程ではチップ型電子部品とエンボスキャリヤテープのポケット内部面との摩擦による静電気やカバーテープを剥がす工程において発生する静電気によってエンボスキャリヤテープが帯電する為にチップ型電子部品がポケットより取り出すことが出来なかったり、静電気破壊が発生するという問題があり、それらを解決する為にエンボスキャリヤテープに導電性を付与して静電気の蓄積を防止することが必要とされ、カーボンブラック等の導電性フィラーを樹脂に練り込んだタイプのシートや導電性フィラーを含む塗料をシート表面に塗布したシート等を真空成形、圧空成形、プラグ成形及びプレス成形等によって成形した導電性エンボスキャリヤテープが用いられている。
【0003】
ベース樹脂にスチレン系樹脂を用いた導電性エンボスキャリヤテープは開発当初、従来使用されていた塩化ビニル樹脂を用いたものと比較して割れ易いという問題があり、それを改善する為に米国特許USP4478903に示される様に表裏面の導電層と導電成分を含まないスチレン系樹脂(ナチュラルPS系樹脂)からなる中間層を共押出して強度UPを図った検討がなされ実用化されている。しかし、中間層は強度UPを目的に引張伸度や衝撃強度が大きなものが用いられた為、エンボスキャリヤテープを成形する工程のパンチング(送り穴やポケット穴をピンで打抜く工程)時に穴バリ・ヒゲが発生し易く、スリット時にも側面にヒゲが発生し易いという問題が生じていた。
その為、引張伸度や衝撃強度が小さい単層の導電性シートが開発されたが引張強度が弱く、成形時にポケット部において穴が開き易く、割れの向上、成形性及び表面導電性の3つの要求特性を同時に満たすものの開発は出来ていなかった。同時に原料コストも高価な為、限られた範囲でしか使用されていない。
一般に割れ性を改良する為に衝撃強度をUPしたスチレン系樹脂は打抜き性が非常に悪く、それらを多層シートの1層以上に用いた場合、エンボスキャリヤテープを成形する際のパンチング工程において穴バリ・ヒゲが発生し易く、その問題を解決した単層の導電性シートでは機械強度、成形性とコストに問題があり、機械強度(割れ性含む)、成形性、表面導電性及びコストの全ての要求特性を同時に満たすものの開発は出来ていなかった。本発明は、打抜き性に優れたスチレン系樹脂組成物よりなる基材シートの少なくとも片面に導電層を設けた構成にする事により、機械強度(割れ性含む)、成形性、表面導電性及びコストの全ての要求特性を満たす導電性シート及び電子部品搬送用容器が得られる事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる問題点を解決するものであり、どんな形状のエンボスキャリヤテープに加工した場合にも機械強度(割れ性含む)、成形性、打抜き性、表面導電性、外観及びコスト的にも優れたバランスの良い導電性シート及び電子部品搬送用容器を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1) 打抜き性に優れたスチレン系樹脂組成物からなる基材シートの少なくとも片面に、表面固有抵抗値が1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満の帯電防止性能を有する導電層を設けてなることを特徴とする導電性シート、
(2) 打抜き性に優れたスチレン系樹脂組成物が、スチレン系樹脂(A)とフィラー(B)をアロイしたものを含んでなる(1)記載の導電性シート、
(3) 打抜き性に優れたスチレン系樹脂組成物が、2種類以上のスチレン系樹脂(A)とフィラー(B)をアロイしたものを含んでなる(1)記載の導電性シート、
(4) 打抜き性に優れたスチレン系樹脂組成物が、スチレン系樹脂(A)、ポリオレフィン(C)及びフィラー(B)からなるポリマーアロイを含んでなる(1)記載の導電性シート、
(5) 打抜き性に優れたスチレン系樹脂組成物が、スチレン系樹脂(A)99.5〜75重量%、ポリオレフィン(C)0〜15重量%及びフィラー(B)0.5〜10重量%からなるポリマーアロイを含んでなる(1)〜(4)のいずれかに記載の導電性シート、
(6) 導電層が、打抜き性に優れたスチレン系樹脂組成物と共押出法により多層シート化されたものである(1)〜(5)のいずれかに記載の導電性シート、
(7) 導電層に、打抜き性に優れたスチレン系樹脂組成物と同じ樹脂成分が1種類以上配合されている(6)記載の導電性シート、
(8) フィラーがカーボンブラックである(4)又は(5)記載の導電性シート、
(9) (1)〜(8)のいずれかに記載の導電性シートを成形してなることを特徴とする電子部品搬送用容器である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる打抜き性に優れたスチレン系樹脂組成物としては、スチレン系樹脂(A)とフィラー(B)をアロイしたもの、スチレン系樹脂(A)、ポリオレフィン(C)及びフィラー(B)よりなるポリマーアロイ等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、特に限定するものではなく、一般に用いられるもので、透明スチレン樹脂、耐衝撃性スチレン樹脂及びこれらの混合物または他のスチレン系樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合樹脂、ブタジエン成分の共役ジエン部分を水素添加した共重合樹脂、スチレン−イソプレン−スチレン共重合樹脂、イソプレン成分の共役ジエン部分を水素添加した共重合樹脂、スチレン−ブタジエン−イソプレン−スチレン共重合樹脂、ABS樹脂等である。
【0007】
本発明に用いるフィラー(B)としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛等のカーボンブラックやシリカ、アルミナ等の酸化物を主成分とするもの、タルク、マイカ等の珪酸塩を主成分とするもの、炭酸カルシウム等の炭酸塩を主成分とするもの、硫酸バリウム等の硫酸塩を主成分とするものが無機充填材として挙げられる。
【0008】
本発明に用いるポリオレフィン(C)としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘプテンー1、ペンテンー1、ヘキセン−1,3−メチルブテン−1、オクテンー1等のα−オレフィンの単独重合体、ランダム又はブロック等の形態をなす相互共重合体、これらα−オレフィンの過半重量と他の不飽和単量体とのランダム、ブロックもしくはグラフト等の共重合体、またはこれらの重合体の酸化、ハロゲン化、スルホン化したものであり、少なくとも部分的に結晶性を示すものである。ここで他の不飽和単量体としては例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド等の不飽和有機酸またはその誘導体、及び酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、ビニルトリメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン、ジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエンなどを用いる事が出来る。共重合体の場合には、α−オレフィンや他の単量体は、2種に限らず、複数種からなるものであっても良い。
【0009】
本発明におけるスチレン系樹脂(A)とフィラー(B)をアロイしたもの、スチレン系樹脂(A)、ポリオレフィン(C)及びフィラー(B)よりなるポリマーアロイは、機械強度(割れ性含む)、成形時の打抜き性及びコスト性のバランスに優れたもので、従来の導電性シートと同じ導電性及び成形性を有している。打抜き性に優れたスチレン系樹脂組成物において、スチレン系樹脂(A)、ポリオレフィン(C)とフィラー(B)は、99.5〜75重量%:0〜15重量%:0.5〜10重量%、好ましくは99.5〜82重量%:0〜12重量%:0.5〜6重量%の範囲で配合することが好ましい。スチレン系樹脂(A)が75重量%より少なくなると機械強度特性が弱く、割れが発生し易くなり、99.5重量%より多くなると打抜き性が悪くなる。ポリオレフィン(C)が15重量%より多くなると機械特性が弱くなり、割れが発生し易くなる。ポリオレフィン(C)はフィラー量が増加してきた時に分散剤的な効果を発揮する為、フィラー量が多い配合の場合に添加するのが良い。フィラー(B)が0.5重量%より少なくなると打抜き性が悪くなり、10重量%より多くなると機械特性が弱くなり、割れが発生し易くなる。
【0010】
本発明における導電層にスチレン系樹脂組成物と同じ樹脂成分を1種類以上配合配合すると打抜き性に優れたスチレン系樹脂組成物との層間密着強度が向上する。
【0011】
本発明において導電層の形成方法は、好ましくは共押出を用いるのが幅広い樹脂選択が行え望ましいがスチレン系樹脂にダメージの少ないアルコール系や水系の導電性塗料をグラビヤコーティング法等の一般的に知られた方法で塗布して形成しても特に問題は無い。
【0012】
また、電子部品搬送用容器はこれら導電性シートの導電層側をポケット内壁面として、真空成形、圧空成形、プラグ成形及びプレス成形等で作製される。
【0013】
【実施例】
以下本発明を実施例により更に詳細に説明するがこれは単なる例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。実施例及び比較例は、導電性シートとして表1に示した導電層樹脂とスチレン系樹脂組成物を表2で示した組み合せにおいて、導電層樹脂/スチレン系樹脂組成物/導電性樹脂の構成で、3層共押出シーティングで0.3mm厚みシート(層構成比率:15/70/15)を作製したものを使用した。導電層樹脂及びスチレン系樹脂組成物については、表1に記載した配合のものを二軸押出機によりコンパウンドしたものを用いた。エンボスキャリヤテープの機械強度(割れ性)評価には、得られたシートを圧空成形にて成形したものを用いた。表面固有抵抗値測定は、JIS K6911に従い測定した。引張伸度は、JIS K6734に従い測定した。引張衝撃強度は、ISO 8256に従い測定した。
【0014】
エンボスキャリヤテープの機械強度(割れ性)評価については、ポケット間のリブ部で180°折り曲げを手にて10回行った。
○:折り曲げ10回後にも割れが発生しなかった場合
△:折り曲げ5回後に割れが発生しなかったが、折り曲げ10回後までに割れが発生した場合
×:折り曲げ5回後までに割れが発生した場合
打抜き性の評価については、スチレン系樹脂シート(ナチュラル)にて穴バリ・ヒゲが発生するピンとダイプレートの組み合せにて打抜きを行い、穴の状態を観察した。
◎:穴バリ・ヒゲの発生無し
○:穴バリ・ヒゲの発生がナチュラルより少ない
×:穴バリ・ヒゲがナチュラルと同等以上の発生有り
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
【発明の効果】
以上のように、本発明の導電性シート及び電子部品搬送用容器は、打抜き性に優れたスチレン系樹脂組成物よりなるシートを基材にする事により表面導電性、打抜き性及び機械物性(割れ性)のバランスの取れた、従来の問題点を克服したものである。
Claims (6)
- 打抜き性に優れたスチレン系樹脂組成物からなる基材シートの少なくとも片面に、表面固有抵抗値が1×104Ω/□以上、1×1010Ω/□未満の帯電防止性能を有する導電層を設けてなり、前記スチレン系樹脂組成物が、スチレン系樹脂(A)、ポリオレフィン(C)及びフィラー(B)からなるポリマーアロイを含み、前記スチレン系樹脂(A)がABS樹脂、耐衝撃性スチレン樹脂を含むことを特徴とする電子部品搬送用導電性シート。
- 打抜き性に優れたスチレン系樹脂組成物が、スチレン系樹脂(A)99.5〜75重量%、ポリオレフィン(C)0.5〜15重量%及びフィラー(B)0.5〜10重量%からなるポリマーアロイを含んでなる請求項1に記載の電子部品搬送用導電性シート。
- 導電層が、打抜き性に優れたスチレン系樹脂組成物と共押出法により多層シート化されたものである請求項1または2に記載の電子部品搬送用導電性シート。
- 導電層に、打抜き性に優れたスチレン系樹脂組成物と同じ樹脂成分が1種類以上配合されている請求項3記載の電子部品搬送用導電性シート。
- フィラーがカーボンブラックである請求項1又は2記載の電子部品搬送用導電性シート。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子部品搬送用導電性シートを成形してなることを特徴とする電子部品搬送用容器。
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