JP3642579B2 - 導電性複合プラスチックシート及び成形品 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は導電性を有し、且つ、機械的強度、剛性、耐衝撃性に優れ、IC製品の包装用に適した導電性複合プラスチックシート及び該シートを熱成形してなる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からICやICを用いた電子機器部品の包装形態として真空成形系トレー、エンボスキャリアテープなどが知られている。この真空成形トレーやエンボスキャリアテープの原反となるプラスチックシートは、一般に表面比抵抗値が高い為、非常に帯電し易くICの機能を破壊する可能性が高い。この為、改善策として(1)包装容器の表面に帯電防止剤を塗布する方法、(2)導電性塗料を塗布する方法、(3)帯電防止剤若しくはカーボンブラック等の導電性付与材を成形樹脂に練り混む方法などが提案されている。
【0003】
しかしながら(1)の方法は、塗布直後は帯電防止効果を示すが、長時間使用している間に帯電防止剤が水分に伴い流出したり、表面の摩擦により帯電防止剤が離脱したり、又表面比抵抗値が109〜1012Ωであるため、厳しい帯電防止効果を要求されるLSI等の製品の包装には不適当である。(2)の方法は導電塗料の密着性の面より対象となる基材が限定され、且つ、塗布が不均一となりやすく、表面の摩擦に弱いため導電層が剥がれて帯電防止性を失い、IC製品を破壊するので好ましくない。(3)の方法において、帯電防止剤を練混む方法は、その添加量が多量であると成形加工が困難となり、また添加量が少量では表面比抵抗値が増大する。すなわち、実際には表面比抵抗値を1011Ω程度までしか低下させることが出来ず、十分な帯電防止効果を有するシートは得られない。また、カーボンブラックや金属微粉末等の導電性付与材の場合は、帯電防止効果の持続性及び表面比抵抗値の面からみれば非常に有効な方法であるが、多量のカーボンブラックや金属微粉末の添加が必要である。この様なシートは機械的強度や衝撃強度が著しく低下し、更に真空成形、圧空成形、熱板成形等の二次成形性も低下してしまいIC包装容器として満足するものでは無い。
【0004】
これらの改善策として特公平1−43622号公報において、ポリスチレン系又はABS系樹脂シート基材の両面に、導電性樹脂を積層した導電性複合プラスチック容器が提案されている。しかしながら近年半導体の実装工程が高速化され、包装容器にかかる機械的強度も増加しており、またICリードが細径化し折れ曲がりが発生しやすくなっていることから、ICの保護性能の改善のため機械的強度向上が強く要望されているが、この要求を満足するものはない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる欠点を解決するものであり、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂20〜96重量部とポリスチレン系樹脂80〜4重量部を含有するポリフェニレンエーテル系樹脂組成物100重量部からなる基材層の片面、若しくは両面に、(B)ポリスチレン系又はABS系樹脂100重量部に対し導電性付与材5〜50重量部を含有し、その表面比抵抗が1010Ω以下である導電性樹脂組成物からなる導電層を、共押出し法により一体に積層してなることを特徴とする導電性複合プラスチックシート及び該シートを熱成形してなる成形品を提供することを目的とするものである。
【0006】
【問題を解決するための手段】
すなわち、本発明は(A)ポリフェニレンエーテル樹脂20〜96重量部とポリスチレン系樹脂80〜4重量部からなるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物100重量部からなる基材層の片面、若しくは両面に、(B)ポリスチレン系又はABS系樹脂100重量部に対し導電性付与材5〜50重量部を含有し、その表面比抵抗が1010Ω以下である導電性樹脂組成物からなる導電層を、共押出し法により一体に積層してなることを特徴とする導電性複合プラスチックシート及び該シートを熱成形してなる成形品である。
【0007】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
はじめに、基材層について説明する。本発明で使用するポリフェニレンエーテル樹脂とは米国特許3383435号に記載されているホモポリマーあるいは共重合体を示す。
基材層に使用するポリフェニレンエーテル系樹脂はポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン系樹脂とからなり、樹脂組成物100重量部におけるポリフェニレンエーテル樹脂の含有量は20〜96重量部が好ましく、20重量部未満では十分な力学特性が得られず96重量部を越えると押出機による加工が困難となる。更にこの範囲の中で20〜88重量部が特に好ましい。ポリスチレン系樹脂としては耐衝撃の補強効果のためゴム成分を2〜10重量%含有する耐衝撃性ポリスチレン樹脂又は同量のゴム成分を含有する耐衝撃性ポリスチレン樹脂と透明ポリスチレン樹脂との混合物を使用する事が好ましい。
【0008】
更に、耐衝撃性などの力学特性や2次成形性を向上させるために改質材を添加する事が可能である。ポリフェニレンエーテル系樹脂の改質材としてはエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂やエチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂などが知られており、本発明においてはエチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂を使用することが好ましく、この中でもエチルアクリレートの含有量が5〜20重量%のエチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂が最適である。エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂の添加量はポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対し2〜20重量部が好ましく、2〜10重量部が特に好ましい。2重量部未満では改質材としての効果が十分に得られず、20重量部を越えると相溶性の低下によって剥離が生じる恐れがある。
【0009】
また、改質材の添加によって剥離が生じてしまう場合にはポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対し0.3〜10重量部の充填材を添加することで剥離を防止することができる。充填材の添加量が0.3重量部未満では十分な効果が得られず10重量部を越えると力学特性、2次成形性が低下する。充填材としては炭酸カルシウム、タルク、マイカなどの無機フィラーの使用も可能であるがカーボンブラックが最適である。また加工助剤として酸化防止剤、滑剤など各種添加剤を必要に応じて添加することができ、更に力学特性を著しく低下させない程度に本発明の導電性複合プラスチックシートのスクラップを添加することもできる。
【0010】
次に、導電層について説明する。本発明で使用する樹脂は、ポリスチレン系樹脂及びABS系樹脂である。ポリスチレン系樹脂としては、耐衝撃の補強効果のため、ゴム成分を2〜10重量%含有する耐衝撃性ポリスチレン樹脂又は耐衝撃性ポリスチレン樹脂と汎用の透明ポリスチレン樹脂の混合物が使用できる。また、ABS系樹脂はアクリルニトリル−スチレン共重合体とアクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の混合物からなるものであり、樹脂100重量部に対するアクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の含有量は10〜80重量部が好ましく、またアクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体中の樹脂成分とゴム成分(ブタジエン成分)の比率は1:5〜2:1の範囲が好ましい。
【0011】
導電層の導電性付与材としては、カーボンブラック、炭素繊維、金属繊維、金属粉など各種導電性フィラーの使用が可能であるが、力学特性、2次成形性を得るためにはカーボンブラックの使用が好ましい。本発明において使用されるカーボンブラックとはファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等であり、好ましくはカーボン純度98%以上、揮発分含有量1.5%以下のものである。揮発分含有量が1.5%を越えると押出加工時にシート表面に発泡が生じる場合がある。カーボンブラックの添加量は樹脂100重量部に対して5〜50重量部であり、5重量部未満では表面比抵抗が1010Ω以下にならず、また50重量部を越えると力学特性が低下してしまう。この他、必要に応じて加工助剤として酸化防止剤、滑剤など各種添加剤を添加することができる。
【0012】
本発明のシート及び成形品を製造するには、まず、2軸押出機、連続混練機などの混練機によって、基材層用及び導電層用のペレットを得、次いで2台若しくは3台の押出機によって前記各原料を各々供給し、フィードブロック法やマルチマニホールド法など公知の方法で共押出し積層する方法を用いる。これら一連の加工温度は220〜300℃の範囲が適当であり、この温度範囲よりも低温側では十分な成形が行えず、高温側では樹脂が劣化する恐れが有る。
【0013】
このような共押出方法で得られたシートの全体の肉厚は0.1〜5.0mmが好ましく、特に好ましくは、0.2〜2.0mmである。肉厚が0.1mm未満では包装容器としての強度が不足し、5.0mmを越えると2次成形が困難となる。又、導電層の肉厚は全体の2〜70%が好ましく、5〜50%が特に好ましい。肉厚が2%未満では2次成形品の表面導電性が失われる場合が有り、70%を越えると力学特性、2次成形性が低下する。
本発明の導電性複合プラスチックシートを熱成形して得られる成形品は、IC製品の包装用キャリアテープ、ソフトトレー等に使用できる。前記成形品を得るためには、真空成形、圧空成形、熱板成形等の公知の方法によって熱加工を施せばよい。成形品の形状は包装されるIC製品等の形状によって決定されるが、エンボス形状をもったものが一般的である。本発明のシートの成形品をキャリアテープとして使用すると、従来品に比べ製品の機械的強度が増加しているため、半導体の高速実装を可能とし、且つ、ICの保護性能も改善するものである。
【0014】
【実施例】
以下本発明を実施例により説明する。
実施例1
基材層用として、ポリフェニレンエーテル樹脂、耐衝撃性ポリスチレン樹脂及びエチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂を配合・混練し、ペレットを得た。又、導電層用として、耐衝撃性ポリスチレン樹脂及びカーボンブラックを配合・混練し、ペレットを得た。このペレットを用い、3台の押出機を使用し、フィードブロック法によりシート全体の肉厚が0.3mm、基材層の肉厚が全体の75%となるような導電層/基材層/導電層(肉厚比率:1/6/1)からなる3層シートを作成した。表1に原料樹脂の商品名を、表2に基材層及び導電層の配合組成を示す。さらに、これらのシートを幅24mmにスリットし、真空成形により縦13mm、幅19mm、深さ3mmのエンボス加工を施し、キャリアテープを得た。
表4に評価結果を示す。
【0015】
実施例2〜4
実施例1と同様にして、表2に示す基材層及び導電層の配合組成にて、配合・混練し、ペレットを作成し、このペレットを用い、3台の押出機を使用し、フィードブロック法により導電層/基材層/導電層(肉厚比率:1/6/1)からなる3層シートを作成した。表4に評価結果を示す。
比較例1〜4
実施例1と同様にして、表3に示す基材層及び導電層の配合組成にて、配合・混練し、ペレットを作成し、このペレットを用い、3台の押出機を使用し、フィードブロック法によりシートを作成した。表5に評価結果を示す。
比較例5
表3に示す配合組成にて、導電性の樹脂組成物を作成し、1台の押出機を使用し、0.3mmの単層シートを得た。表5に評価結果を示す。
【0016】
各種評価方法を以下に示す。
(1)基材層肉厚
製膜時に基材層、導電層用押出機の回転数による吐出量を測定し吐出量比によって決定した。
(2)表面抵抗
ロレスターMCP−テスター/三菱油化社により、端子間を10mmとし、シートを幅方向に等間隔に10箇所、表裏各2列計40箇所の表面抵抗を測定し、対数平均をとり表面抵抗とした。
【0017】
(3)引張特性
JIS−K−6732に準拠して、インストロンにより10mm/minの引張速度で引張試験を行い、左側にシートの流れ方向、右側に幅方向に対する測定値を示した。
(4)衝撃強度
デュポン衝撃試験機/東洋精機社を使用し、300g、500g若しくは1kgの重りを落下させ、50%破壊高さを求め、その時の重りの重量よりエネルギー値を計算した。計算はJIS−K−7211に準じて行った。
【0018】
(5)成形品表面抵抗
成形品において、隣接するポケットの底部間の表面抵抗4点を、ロレスターMCP−テスター/三菱油化社により測定し、対数平均をとり表面抵抗とした。
(6)成形品の引張強度
24mm幅、長さ100mmの成形品を長手方向に、20kgfの荷重で引張った時に破断しないものを○、破断するものを×とした。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】
【表5】
【0024】
【発明の効果】
以上説明した通りポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン系樹脂からなるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物シート基材の片面若しくは両面に、導電性付与材を含有するポリスチレン系又はABS系樹脂を積層する事により、導電性を有し、且つ、機械的強度、剛性、耐衝撃性等に優れ、IC製品の包装用に適した半導体包装用導電性複合プラスチックシート及び該シートを熱成形してなる成形品を得ることが可能となる。
Claims (2)
- (A)ポリフェニレンエーテル樹脂20〜96重量部と、耐衝撃性ポリスチレン樹脂または耐衝撃性ポリスチレン樹脂と透明ポリスチレン樹脂との混合物80〜4重量部を含有するポリフェニレンエーテル系樹脂組成物100重量部とエチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂2〜20重量部からなる基材層の片面、若しくは両面に、(B)ポリスチレン系又はABS系樹脂100重量部に対し導電性付与材5〜50重量部を含有し、その表面比抵抗が1010Ω以下である導電性樹脂組成物からなる導電層を、共押出し法により一体に積層してなることを特徴とするキャリアテープ用の導電性複合プラスチックシート。
- 請求項1記載の導電性複合プラスチックシートを熱成形してなるキャリアテープ。
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