JP3998836B2 - シラン化合物の不均化反応生成物の製造方法 - Google Patents
シラン化合物の不均化反応生成物の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種シラン化合物の不均化反応生成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、ジクロロシラン等の水素化ハロゲン化シランを特定の触媒存在下に不均化反応させることにより、モノシラン等のシラン化合物の不均化反応生成物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
モノシラン、ジクロロシラン等のシラン化合物は、シリコン単結晶の原料、シリコンのエピタキシャル成長等の半導体工業において重要な物質であり、近年急激に需要が増大している。
【0003】
これらの化合物の製造方法としては、様々な方法が知られているが、水素化ハロゲン化シランを不均化して目的とするシラン化合物を含む多くの不均化反応生成物を得、その中から目的の化合物を蒸留等の手段により分別して得る方法が、最も経済的であるとされる。
【0004】
水素化ハロゲン化シランの不均化反応とは、該水素化ハロゲン化シランの分子間で、水素とハロゲンを交換することにより、原料の水素化ハロゲン化シランとは各々異なるシラン化合物を生成させる反応である。新しく生成した化合物が、更に同様の交換反応を繰り返すので、反応系は数種類のシラン化合物からなる混合組成となる。
【0005】
例としてトリクロロシランの不均化を説明する。ある適当な触媒の存在下では、下式のように、まずトリクロロシラン同士が水素と塩素を交換し合い、ジクロロシランと四塩化ケイ素を生成する。ジクロロシランは同様にモノクロロシランとトリクロロシランを生成する。モノクロロシランも同様に、モノシランとジクロロシランを生成する。これらの反応が繰り返され、系はモノシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、四塩化ケイ素の5成分からなる混合組成となる。
【0006】
【化1】
【0007】
例えば、目的物がモノシランの場合、この混合物の中から蒸留などの方法によって分別すれば良い。なお、この不均化反応は平衡反応であり、十分な反応時間(接触時間)をとると、反応系は平衡組成に達する。但し、目的物を分別して得る際に、必ずしも系が平衡に達している必要はない。
【0008】
水素化ハロゲン化シランの不均化反応に使用する触媒については、多くの技術が特許等に開示されている。例えば、特開昭60−96518号公報には、第四級ホスホニウム化合物を、そのまま反応系に添加して液相均一系触媒として作用させる方法が示されている。また、特開昭60−60915号公報にも、上記第四級ホスホニウム化合物を触媒として使用することが記載され、これを活性炭、アルミナ、シリカ-アルミナなどの担体に担持させて使用しても良いことが開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、第四級ホスホニウム化合物を使用した場合、かなり良好な触媒活性で不均化反応を行うことが可能であるが、第四級ホスホニウム化合物をそのまま反応系に添加して作用させる方法は、反応生成物と触媒の分離に多大なエネルギーを要する問題があった。これは、上記特開昭60−60915号公報に記載されるように、第四級ホスホニウム塩を担体に担持して使用すれば、該分離の問題は解消できるが、その場合、上記例示されるような活性炭、アルミナ、シリカ-アルミナ等の担体を使用したのでは、得られる触媒の活性が低い問題があった。
【0010】
従って、上記水素化ハロゲン化シランの不均化反応において、高い触媒活性を有する担持型触媒を開発し、該反応を効率良く行うことが課題であった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を重ねた結果、第四級ホスホニウム化合物をシリカに担持した触媒を用いることによって、水素化ハロゲン化シランの不均化反応を高い反応活性で行うことができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、第四級ホスホニウム化合物がシリカに担持された触媒を用いて、水素化ハロゲン化シランを不均化させることを特徴とするシラン化合物の不均化反応生成物の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明において使用される水素化ハロゲン化シランは、ケイ素に結合した水素原子およびハロゲン原子をそれぞれ少なくとも一つ有するシラン化合物である。かかる水素化ハロゲン化シランとしては、一般には、下記の一般式(1)で表わされる化合物が使用される。
【0014】
Y(4-m-n)SiHnXm (1)
ここで、Yはアルキル基またはアリール基を表わし、Xはハロゲン原子を表わす。また、mおよびnは1以上3以下の整数で、かつm+nは4以下である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、およびブチル基等の炭素数1〜4のものが好ましく、アリール基としては、フェニル基等が好ましい。具体例としては、トリクロロシラン、ジクロロシラン、モノクロロシラン、メチルジクロロシラン、メチルモノクロロシラン、ジメチルモノロロシラン、エチルジクロロシラン、エチルモノクロロシラン、ジエチルモノロロシラン、フェニルジクロロシラン、フェニルモノクロロシラン、ジフェニルモノクロロシランおよびこれらのうちの任意の混合物等が挙げられる。
【0015】
これらのうち、下記の一般式(2)
SiHnXm (2)
で表わされるトリクロロシラン、ジクロロシラン、モノクロロシランから選ばれるクロロシラン化合物、またはこれらの混合物が特に好適である。
【0016】
なお、モノシランやメチルシランのようなケイ素原子に結合したハロゲン原子を有さない水素化シランおよび、四塩化ケイ素やメチルトリクロロシランのようなケイ素原子に結合した水素原子を有さないハロゲン化シランは、それ単独では不均化反応を起こさない。しかし、上記の水素化ハロゲン化シランと共存する場合は、不均化反応に関与し、対応した混合物を与える。したがって、本発明では原料として、水素化ハロゲン化シランを用いる他、これらのものと上記水素原子を有さないハロゲン化シランや水素化シランとを混合して用いても良い。
【0017】
本発明において触媒成分である第四級ホスホニウム化合物は、公知のものが制限なく使用される。ホスホニウムイオンの中心リン原子に結合する炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などが好ましく、これらはそれぞれ同種または異種であっても良い。アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。アルケニル基としてはビニル基、アリル基、ヘキセニル基等が挙げられる。アリール基としてはフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、アラルキル基としてはベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。また、これらの基は、アルコキシル基やアルコキシカルボニル基等の置換基を有するものであっても良い。なお、第四級ホスホニウム化合物は、リン原子に上記のような一価の炭化水素基とともにアルキレン基等の多価の炭化水素基が結合し、該多価の炭化水素基を介して複数の第四級ホスホニウム基が分子内に存在する多価の第四級ホスホニウム化合物であっても良い。
【0018】
また、第四級ホスホニウム化合物を構成するアニオンとしては、特に制限はないが、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、硝酸イオン等の無機酸基イオン、あるいは、酢酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、クロコン酸イオン、ロジゾン酸イオン等の有機酸イオン、および、水酸化物イオン等が挙げられる。特に、無機酸イオン又は水酸化物イオンが好適である。
【0019】
これらの第四級ホスホニウム化合物の具体例としては、塩化テトラブチルホスホニウム、臭化テトラブチルホスホニウム、フッ化テトラブチルホスホニウム、硫酸テトラブチルホスホニウム、硫酸水素テトラブチルホスホニウム、水酸化テトラブチルホスホニウム、塩化テトラオクチルホスホニウム、臭化テトラオクチルホスホニウム、フッ化テトラオクチルホスホニウム、硫酸テトラオクチルホスホニウム、硫酸水素テトラオクチルホスホニウム、水酸化テトラオクチルホスホニウム、臭化テトラペンチルホスホニウム、臭化アリルトリフェニルホスホニウム、臭化ビニルトリフェニルホスホニウム、臭化(エトキシカルボニルメチル)トリフェニルホスホニウム、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム、臭化シクロプロピルトリフェニルホスホニウム、臭化メチルトリフェニルホスホニウム、臭化エチルトリフェニルホスホニウム、臭化プロピルトリフェニルホスホニウム、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム、臭化ペンチルトリフェニルホスホニウム、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム、臭化ヘプチルトリフェニルホスホニウム、および、臭化オクチルトリフェニルホスホニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
上記第四級ホスホニウム化合物のうち、本発明において、特に良好に使用されるものは、ホスホニウムイオン中心のリン原子に結合する炭化水素基が、それぞれ同種または異種のアルキル基であり、その対アニオンが、無機酸イオン、または水酸化物イオンであるテトラアルキルホスホニウム化合物である。さらに、このテトラアルキルホスホニウム化合物において、アルキル基は炭素数4〜18、より好ましくは4〜12のものが好適である。また、対アニオンは、硫酸イオンであるものが好適である。
【0021】
本発明では、上記第四級ホスホニウム化合物は、シリカを担体として使用し、これに担持させて使用する。このようにシリカを担体として使用することにより、水素化ハロゲン化シランの不均化反応の触媒活性は著しく向上する。前記したとおり、活性炭、アルミナ、シリカ-アルミナ等を担体として使用した場合には、第四級ホスホニウム化合物の不均化反応に対する活性は大きく低下するものであり、このような状況にあって、シリカを担体として選定すれば、該不均化反応の活性が大きく向上することは驚くべき知見である。
【0022】
本発明においてシリカは、石英、トリジマイト、クリストバライト等の結晶性シリカを用いても良いが、通常は、シリカゲル等の無定形シリカを用いるのが好ましい。特に、細孔容積が0.1〜10ml/g、好適には0.3〜1.5ml/gであり、平均細孔径が0.5〜200nm、好適には2〜100nmであり、比表面積が10〜1000m2/g、好適には100〜800m2/gのものを用いるのが好ましい。また、粒子径は、30μm〜3mm、特に50μm〜1mmであるのが好ましい。なお、本発明においてシリカは、乾量基準でSiO2分の含有量が80重量%以上、好適には95重量%以上であり、不純物であるAl2O3分の含有量が2重量%以下であるのが好ましい。
【0023】
本発明において、触媒の調製方法、即ち、第四級ホスホニウム化合物のシリカへの担持方法は、特に限定されるものではない。具体的には、第四級ホスホニウム化合物を溶媒に溶解し、シリカに含浸、乾燥を行う含浸法の他、単に第四級ホスホニウム化合物とシリカを機械的に混合する方法により行っても良い。好適には、含浸法が、より高い触媒活性が得られるため好ましい。
【0024】
本発明に使用される触媒は、第四級ホスホニウム化合物の担持量が多いほど高活性である。好適な担持量は、第四級ホスホニウム化合物の種類によって異なるが、通常、触媒全量に対して0.01〜50重量%、好適には0.1〜20重量%の範囲であることが望ましい。
【0025】
本発明において不均化反応は、原料の水素化ハロゲン化シランを、上記触媒と接触させることにより実施される。接触の方法は特に制限されない。回分式でも、流通式でも良い。また、気相でも液相でも良い。
【0026】
本発明を最も有効に実施するためには、触媒を固定床とする流通式反応が望ましい。この反応は、減圧から加圧まで幅広い反応条件で行うことができるが、反応の効率と安全性を考慮すれば、0.5〜100気圧で行うことが望ましく、より好適には、常圧〜60気圧で行うことが望ましい。また、反応温度に関しても、幅広い範囲で反応が可能であるが、反応を速やかに進行させるためには、0℃以上であることが望ましく、触媒の安全性を考慮すれば、400℃以下が望ましい。より好ましくは、40〜300℃の範囲で反応を行うことが望ましい。
【0027】
接触時間(原料が触媒層を通過するのに要する時間)は、反応系が平衡組成にほぼ到達する程度に設定することが望ましい。接触時間が短すぎる場合、十分に不均化反応が進行しないため、目的物の収率が低くなる。接触時間が必要以上に長い場合、平衡組成に十分達しているため、原料に対する目的物の収率は変わらないが、平衡組成以上に目的物の割合が増加することは有り得ず、結果として単位時間当たりの目的物の収量が少なくなる。適当な接触時間は、反応温度や圧力、原料、触媒、およびその他の要素によって異なるが、一般には0.01〜300秒から採択される。
【0028】
本発明の製造方法によれば、原料の水素化ハロゲン化シランは、上記不均化反応により、多くの不均化反応生成物を与える。従って、その混合物中から、必要な成分を蒸留などの一般的な方法を用いて分別し、取得すれば良い。特に、水素化ハロゲン化シランとして、トリクロロシラン、ジクロロシラン、およびモノクロロシランから選ばれる少なくとも一種を、必要により四塩化ケイ素と混合して用い、不均化反応生成物として、上記水素化ハロゲン化シランよりも高次に水素化されたシラン化合物を取得するのが好ましい。
【0029】
特に、水素化ハロゲン化シランとして、トリクロロシランを用い、以下説明する図1に示す2段の不均化反応を実施してモノシランを取得するのが好適である。
【0030】
原料のトリクロロシランは、ドラム6より不均化反応器1、例えば流動床式または固定床式の反応器に供され、第四級ホスホニウム化合物担持触媒と接触させる。それにより、各種のクロロシラン化合物、主にジクロロシラン、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素の混合系が生成する。この時点では目的物であるモノシランの割合は低い。不均化反応器1で生成した混合物は、次工程の分別装置である蒸留塔3へと送られる。蒸留塔3からは、ジクロロシランとトリクロロシランを中心とする低沸点成分がパイプライン8より、蒸留塔4へと送られ、蒸留塔3の低部からは四塩化ケイ素が排出される。蒸留塔4では、ジクロロシランを中心とする低沸点成分がパイプライン9より不均化反応器2に供給される。蒸留塔4の低部からはトリクロロシランがドラム6へと回収され、不均化反応に供される。不均化反応器2では、同様に触媒と接触させて、各種のクロロシラン化合物、主にモノシラン、モノクロロシラン、ジクロロシランおよびトリクロロシランの混合系が生成する。この時点では、目的物のモノシランが十分分別可能な割合で含まれていることが好ましい。この混合物は蒸留塔5へと送られ、モノシランをパイプライン10より取得する。蒸留塔5の低部からは主に、モノクロロシラン、ジクロロシランおよびトリクロロシランがドラム7へと回収され、さらに蒸留塔4でモノクロロシランとジクロロシランを中心とする低沸点成分とトリクロロシランを中心とする高沸点成分に分けられる。この低沸点成分と高沸点成分は、それぞれ不均化反応器2と不均化反応器1へと送られ、再び不均化反応に供される。このようにして、トリクロロシランを原料に用いて、モノシランを得ることが可能となる。
【0031】
もちろん、モノシラン以外のシラン化合物、例えばジクロロシランを目的物とする場合には、例えば分別工程として蒸留を採択する場合であれば、蒸留条件を変更することにより目的物であるジクロロシランのみを分取し、より高沸点または低沸点のクロロシラン化合物を不均化反応器へ循環する。このようにして、不均化反応生成物のいずれかの一種、または二種以上のクロロシラン化合物をも、目的物として取得することができるのである。
【0032】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、従来の方法に比べ、より短い接触時間でシラン化合物の製造を行うことができる。即ち、本発明の触媒を使用すれば、反応速度が大きいため、十分に不均化反応を進行させるために必要な時間が、従来のものに比べて短く設定できる。従って、同じ触媒量ならば、従来方法に比べ、単位時間当たりの収量をより多くできる。逆に同じ収量を得るためには、触媒量がより少なくて済む。
【0033】
【実施例】
本発明を、具体例を用いて説明する。
【0034】
なお、以下の実施例及び比較例において触媒調製は、以下の方法により実施した。
【0035】
(触媒調製)
・含浸法
各種の第四級ホスホニウム化合物を、メタノールまたは水に溶解し、そこにシリカを加えて、250℃で乾燥することによって調製した。
【0036】
・混合法
各種の第四級ホスホニウム化合物とシリカとを、乳鉢により機械的に混合することによって調製した。
【0037】
実施例1
シリカとして、西尾工業社製のIDゲル(粒子径250〜500μm,比表面積310m2/g,細孔容積1.2ml/g,平均細孔径15nm)を用い、表1に示す触媒を調製した。
【0038】
次いで、表1の触媒1を、内径4mmガラス製反応管に0.5ml充填し、また、内径8mmガラス製反応管に2.0ml充填し、各々80℃に加熱した。ここに、トリクロロシランとヘリウムの1:1混合ガスを、4mmの反応管に60,30ml/分で各流通させ、他方、8mmの反応管に60,24ml/分で各流通させた。この時の接触時間は、それぞれ0.5,1.0,2.0,5.0秒であった。反応は常圧で行った。
【0039】
触媒層を通過したガスを、ガスクロマトグラフィーで分析し、各接触時間におけるトリクロロシランの転化率を求め、その値を80℃でのトリクロロシランの平衡転化率22.7%で除した。この値を平衡到達率とした。結果を表2に示した。接触時間1.0秒において、平衡到達率は93.3%の高率に達していた。
尚、接触時間5.0秒におけるガス組成は、
モノシラン;0.1mol%
モノクロロシラン;0.5mol%
ジクロロシラン;10.8mol%
トリクロロシラン;77.3mol%
四塩化ケイ素;11.3mol%
であった。この組成は80℃におけるトリクロロシランの不均化反応の平衡組成と一致した。
【0040】
実施例2〜6
表1に示した触媒の中から5種類を選択し、実施例1に準じて反応を行った。結果を表2に示した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
実施例7
実施例1に準じて、トリクロロシランの代わりに、ジクロロシランを用いて反応を行った。ここでの平衡到達率は、各接触時間におけるジクロロシランの転化率を80℃でのジクロロシランの平衡転化率65.0%で除して求めた。結果を表3に示した。接触時間1.0秒において、平衡転化率は93.9%の高率に達していた。
【0044】
尚、接触時間5.0秒におけるガス組成は、
モノシラン;13.7mol%
モノクロロシラン;10.6mol%
ジクロロシラン;35.0mol%
トリクロロシラン;39.7mol%
四塩化ケイ素;0.9mol%
であった。この組成は80℃におけるジクロロシランの不均化反応の平衡組成と一致した。
【0045】
実施例8〜12
表1に示した触媒の中から5種類を選択し、実施例7に準じて反応を行った。結果を表3に示した。
【0046】
【表3】
【0047】
実施例13
内径4mmのガラス製反応管に、表1の触媒1を0.1mlおよび0.5ml充填し、200℃に加熱した。ここに、トリクロロシランとヘリウムの1:1混合ガスを、0.1ml充填した反応管に120,60,30ml/分で各流通させ、他方、0.5ml充填した反応管に60,30ml/分で各流通させた。この時の接触時間は、それぞれ 0.05,0.10,0.20,0.50,1.0秒であった。反応は常圧で行った。
【0048】
触媒層を通過したガスを、ガスクロマトグラフィーで分析し、各接触時間におけるトリクロロシランの転化率を求め、その値を200℃でのトリクロロシランの平衡転化率29.9%で除した。この値を平衡到達率とした。結果を表4に示した。接触時間0.20秒において、平衡到達率は87.1%の高率にに達していた。
【0049】
尚、接触時間1.0秒におけるガス組成は、
モノシラン;0.1mol%
モノクロロシラン;0.9mol%
ジクロロシラン;13.0mol%
トリクロロシラン;70.1mol%
四塩化ケイ素;15.9mol%
であった。この組成は200℃におけるトリクロロシランの不均化反応の平衡組成と一致した。
【0050】
実施例14〜22
表1に示した触媒の中から9種類を選択し、実施例13に準じて反応を行った。結果を表4に示した。
【0051】
【表4】
【0052】
実施例23
実施例13に準じて、トリクロロシランの代わりに、ジクロロシランを用いて反応を行った。ここでの平衡到達率は、各接触時間におけるジクロロシランの転化率を200℃でのジクロロシランの平衡転化率62.0%で除して求めた。結果は表5に示した。接触時間0.20秒において、平衡到達率は88.1%の高率に達していた。
【0053】
尚、接触時間1.0秒におけるガス組成は、
モノシラン;10.7mol%
モノクロロシラン;13.7mol%
ジクロロシラン;38.0mol%
トリクロロシラン;36.2mol%
四塩化ケイ素;1.4mol%
であった。この組成は200℃におけるジクロロシランの不均化反応の平衡組成と一致した。
【0054】
実施例24〜32
表1に示した触媒の中から9種類を選択し、実施例23に準じて反応を行った。結果を表5に示した。
【0055】
【表5】
【0056】
実施例33〜36
シリカに西尾工業社製のシリカ(IDゲル)を用いて、臭化テトラブチルホスホニウムを表6に示す量で含浸法により担持させた触媒を調製した。これらの触媒を用いて、実施例23に準じて反応を行った。結果を表7に示した。単位体積当たりの触媒活性は、第四級ホスホニウム化合物の担持量が多いほど平衡に到達するまでの時間は短かく、高活性であった。
【0057】
【表6】
【0058】
【表7】
【0059】
実施例37〜43
臭化テトラブチルホスホニウムを、表8に示した種々のシリカに担持した触媒を調製した。担持量はすべて5重量%であり、含浸法により担持させた。
【0060】
これらのシリカを用いて、実施例23に準じて反応を行った。結果を表9に示した。
【0061】
【表8】
【0062】
【表9】
【0063】
実施例44
実施例7に準じて、ジクロロシランの代わりに、ジクロロシランとトリクロロシランの1:2混合物を用いて反応を行った。接触時間5.0秒において、触媒層通過後のガス組成は、
モノシラン;2.5mol%
モノクロロシラン;4.0mol%
ジクロロシラン;26.8mol%
トリクロロシラン;63.7mol%
四塩化ケイ素;3.1mol%
であった。この組成は80℃におけるジクロロシランとトリクロロシランの1:2混合原料を用いた場合の不均化反応の平衡組成と一致した。
【0064】
実施例45
実施例7に準じて、ジクロロシランの代わりに、ジクロロシランと四塩化ケイ素の1:2混合物を用いて反応を行った。接触時間5.0秒において、触媒層通過後のガス組成は、
モノシラン;0mol%
モノクロロシラン;0mol%
ジクロロシラン;1.9mol%
トリクロロシラン;62.9mol%
四塩化ケイ素;35.2mol%
であった。この組成は80℃におけるジクロロシランと四塩化ケイ素の1:2混合原料を用いた場合の不均化反応の平衡組成と一致した。
【0065】
比較例1
触媒として、ローム&ハース社製の弱塩基性陰イオン交換樹脂アンバーリストA−21(イオン交換容量;4.6meq/g)を用いて、実施例7に準じて反応を行った。結果を表10に示した。接触時間2.0秒において、平衡到達率は63.2%にしか達していなかった。
【0066】
比較例2
触媒として、表10に示す化合物を担体に担持させずに用いて、実施例7に準じて反応を行った。結果を表10に示した。第四級ホスホニウム化合物を担持せずに単独で用いると、接触時間5.0秒においても、平衡到達率は20%に達していなかった。
【0067】
比較例3〜5
西尾工業製のシリカ(IDゲル)に、オクチルアミン(OcNH2)、ジオクチルアミン(Oc2NH)、トリオクチルアミン(Oc3N)を担持した触媒を調製した。担持量はすべて5重量%であり、含浸法により担持させた。
【0068】
これらの触媒を用いて、実施例7に準じて反応を行った。結果を表10に示した。これらの触媒では、接触時間5.0秒においても、平衡到達率は80%に達していなかった。
【0069】
比較例6〜10
臭化テトラブチルホスホニウムを、表11に示したシリカ以外の触媒担体(活性炭、アルミナ、シリカ-アルミナ)に担持した触媒を調製した。担持量はすべて5重量%であり、含浸法により担持させた。
【0070】
これらの触媒を用いて、実施例7に準じて反応を行った。結果を表12に示した。これらの触媒では、接触時間5.0秒においても、平衡到達率は50%に達していなかった。
【0071】
【表10】
【0072】
【表11】
【0073】
【表12】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明を実施するための製造プロセスの代表的形態を示す概略図である。
【符号の説明】
1,2;不均化反応器
3,4,5;蒸留塔
6,7;ドラム
8,9,10;パイプライン
Claims (3)
- 第四級ホスホニウム化合物がシリカに担持された触媒を用いて、水素化ハロゲン化シランを不均化させることを特徴とするシラン化合物の不均化反応生成物の製造方法。
- 第四級ホスホニウム化合物が、中心リン原子に結合している炭化水素基が、それぞれ同種または異種のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基であり、その対アニオンが、無機酸イオンであることを特徴とする請求項1記載のシラン化合物の不均化反応生成物の製造方法。
- 第四級ホスホニウム化合物がシリカに担持されてなる水素化ハロゲン化シランの不均化反応用触媒。
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