JP3998402B2 - シクロドデカノン類の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、臭化リチウムあるいはヨウ化リチウムを触媒として使用し、エポキシシクロドデカン、エポキシシクロドデセン、エポキシシクロドデカジエン、エポキシシクロドデカトリエン等(これらの化合物群をエポキシシクロドデカン類とする)を連続する複数の反応区域の第1反応区域に供給し、それぞれシクロドデカノン、シクロドデセノン、シクロドデカジエノン、シクロドデカトリエノン等(これらの化合物群をシクロドデカノン類とする)を短時間で、かつ、高い転化率、高い選択率で工業的に製造するものである。これら12員環の環状ケトン化合物であるシクロドデカノン類は、ラウロラクタムやドデカン二酸、ドデカンジオール等の原料としての重要な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化リチウムを触媒とするエポキシシクロドデカン類の異性化反応によるシクロドデカノン類の製造方法としては、いくつか報告がなされている。
例えば、ドイツ特許DE3744094には、溶媒としてN−メチルピロリドンやN,N‘−ジメチルエチレン尿素を使用し、触媒として塩化リチウムを用いて、エポキシシクロドデカンの異性化反応を行うことにより、シクロドデカノンが94%の収率で得られることが記載されている。
また、ドイツ特許DE3601380には、ポリエチレングリコール溶媒中で、ヨウ化ナトリウム存在下、1,2−エポキシシクロドデカ−5、9−ジエンの異性化反応を行なうことにより、98.7%の収率でシクロドデカ−3,7−ジエン−1−オンが得られることが報告されている。
【0003】
これらの方法では、いずれも極性溶媒を使用するため、溶媒の回収工程の増設や溶媒の分解によるコストアップが問題となっている。また溶媒による希釈効果ならびに溶媒和効果により反応速度が遅くなるため、転化率を100%近くにするために反応時間が長くなり、さらに反応形式がバッチであるため、工業的に大量生産する場合に効率的であるとは言えない。
【0004】
一方、ソ連特許SU407874には、無溶媒で無水LiBrを触媒としたエポキシシクロドデカンの異性化反応が開示されている。この特許の実施例では、LiBr 4wt%、反応温度120〜130℃、反応時間18時間、あるいはLiBr 3.3wt%、200℃、3時間行うとそれぞれ収率が100%、あるいは83.3%のシクロドデカノンが得られることが報告されている。前者の場合は、反応時間が長く実用的であるとは言えず、後者の場合では選択率が低下し、高沸物が生成する。高沸物は触媒をリサイクルした場合、反応系内に高沸物が蓄積し反応に悪影響を与え、さらに高沸物を除去する工程が必要となる。
【0005】
ところで、反応速度を上げるための方法としては、触媒濃度を上げることも考えられるが、前者の方法は、LiBrの溶解度が既に飽和状態にあるため、触媒濃度を濃くすることができない。後者の方法では、反応速度を上げるために反応温度を高くしているが、副反応が起こり、収率が低下し、高沸物の生成が起こっている。
【0006】
さらに、Zh.Org.Khim (1990), 26(7), 1497-1500には、無溶媒で、エポキシシクロドデカンの異性化反応が記載されている。例えば、触媒として臭化リチウム2.3mol%を使用し、150℃、10時間行うと、シクロドデカノンが収率96.6%で得られ、触媒としてヨウ化リチウム1.5mol%を使用し、150℃、5時間反応を行うとシクロドデカノンが91.2%の収率で得られている。しかし、この文献の場合も、エポキシシクロドデカンの転化率を100%近くするためには、更に反応時間がかかることが予想される。また、この文献での反応形態はバッチ方式であり連続反応についての記載はない。
【0007】
次に、工業的な見地からエポキシシクロドデカン類を異性化してシクロドデカノン類を生産する場合、エポキシシクロドデカン類とシクロドデカノン類の沸点がほぼ同じであるため、蒸留分離が極めて困難となる場合が多い。また、両物質の物性も類似しているため、晶析や抽出で分離・精製することも困難である。そのため高純度のシクロドデカノン類を生成するためには、エポキシシクロドデカン類の転化率をほぼ100%にする必要があり、反応温度を高くするか、触媒量を増やす方法が考えられる。
しかし、すでに述べたように反応温度を高くすると副反応が起こりやすくなり、高沸物等が生成しシクロドデカノン類の収率が低下してしまう。一方、エポキシシクロドデカン類の転化率を上げるために、触媒濃度を高くすることも考えられるが、触媒の溶解度の問題や触媒費用のコストアップの問題が考えられ、現実的とはいえない。
【0008】
また、上記の先行技術の反応形式は、いずれもバッチ方式であるため、反応操作が煩雑となり、安定運転・操作上も好ましいとは言えず、また、経済的であるとも言えない。
【0009】
以上、述べたように、既存の技術では、エポキシシクロドデカン類を短時間で異性化反応し、ほぼ100%近くの転化率ならびに100%近くの選択率を達成することができていない。さらに、既存技術では反応形式がいずれもバッチ方式であるために、シクロドデカノン類を大量かつ連続的に供給することができず、工業規模で生産可能な技術は見出されていないのが現状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、臭化リチウムあるいはヨウ化リチウムを触媒として用いたエポキシシクロドデカン類の異性化反応によるシクロドデカノン類の製造法において、短時間で、かつ、高い転化率、高い選択率でシクロドデカノン類を連続的に工業規模で製造できる方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、液相部が複数の反応区域を有する反応器の第1反応区域に、エポキシシクロドデカン類及び触媒として臭化リチウムあるいはヨウ化リチウムを連続的に供給し、その第1反応区域の反応液を連続する反応区域に順次導いて、最終反応区域からシクロドデカノン類を含む反応液を連続的に抜き出すことを特徴とするシクロドデカノン類の製造方法により、達成される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明では、反応器として液相部が複数の反応区域を有する反応器が使用される。その第1反応区域に、エポキシシクロドデカン類と触媒(臭化リチウムあるいはヨウ化リチウム)を連続的に供給し、その反応区域の液相部が連続する反応区域に順次導かれ、最終の反応区域から高純度のシクロドデカノン類を連続的に抜き出す。
【0014】
本発明で使用するエポキシシクロドデカン類とは、エポキシ基を有する飽和または不飽和の炭素数12の環状炭化水素であり、具体的にはエポキシシクロドデカン、エポキシシクロドデセン、エポキシシクロドデカジエン、エポキシシクロドデカトリエンが挙げられ、好ましくはエポキシシクロドデカンおよびエポキシシクロドデカジエンが挙げられる。前記エポキシシクロドデカン類については、種々の異性体が存在する場合もあるが、その場合ではエポキシおよび二重結合の位置による制限は、特になく、さらにシス体、トランス体等による制限も受けない。
また、実際に反応を行う場合、上記エポキシシクロドデカン類は、単独でも二種以上を共存した状態で実施してもよい。
【0015】
本発明で得られるシクロドデカノン類は、使用するエポキシシクロドデカン類に対応しており、具体的にはシクロドデカノン、シクロドデセノン、シクロドデカジエノン、シクロドデカトリエノンが挙げられる。
【0016】
本発明において使用する触媒は、臭化リチウム、ヨウ化リチウムである。触媒として使用するために特別な前処理等は必要がなく、通常市販されている臭化リチウム、ヨウ化リチウムを使用することができる。具体的には無水臭化リチウム、臭化リチウム一水和物、臭化リチウム二水和物、臭化リチウム三水和物、無水ヨウ化リチウム、ヨウ化リチウム一水和物、ヨウ化リチウム二水和物、ヨウ化リチウム三水和物等が挙げられる。これらの化合物は固体状態で連続的に供給してもよく、あるいはエポキシシクロドデカン類及び/又はシクロドデカノン類に溶解させた溶液状態やエポキシシクロドデカン類を含む無極性溶媒に溶解させた溶液状態で反応槽に連続的に供給しても良い。また臭化リチウムやヨウ化リチウムの水溶液として反応槽に連続的に供給しても良い。好ましくは、触媒をエポキシシクロドデカン類及び/又はシクロドデカノン類に溶解させた溶液状態で反応槽に連続的に供給する。
【0017】
触媒の使用量は、特に制限はなく、溶媒への溶解度等の反応条件等にも影響されるが、エポキシシクロドデカン類1モルに対して、0.01〜20モル%、好ましくは0.1〜5モル%である。触媒の使用量が余りに少ないと反応時間が長くなり、工業的ではない。一方、触媒の使用量が余りに多いと触媒コストがかかりすぎ、好ましくない。
【0018】
本発明の反応中のガス雰囲気については、特に制限されないが、不活性ガスを使用する方が好ましい。使用する不活性ガスとしては、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、水素ガス、窒素ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンガス、エチレンガス等が挙げられるが、好ましくは窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素である。これらのガスは、単独でも混合して使用しても良い。
【0019】
本発明の反応温度も、特に制限はないが、好ましくは100〜350℃であり、より好ましくは120〜300℃であり、さらに好ましくは150〜250℃、もっとも好ましくは160〜240℃である。反応温度が余りにも低いと反応速度が遅く工業的ではない。また、反応温度が余りに高すぎると高沸物の生成が多くなるため、好ましくない。
反応温度は、各反応区域で異なった反応温度にすることもできる。
特に、反応区域前部は、比較的低温にしておき、エポキシシクロドデカン類の存在量が少なくなった反応区域後部で、反応温度を反応区域前部と同じかより高くすることが好ましい。即ち、連続する反応区域の前後の反応温度が、反応区域前部の反応温度≦反応区域後部の反応温度となるように反応させるのが好ましい。この方法により、高い転化率、高い選択率をさらに達成することが可能となる。具体的には、反応区域後部の反応温度は、反応区域前部に比べて0〜100℃、好ましくは1〜50℃高くする。
選択率がよくなる理由は、はっきりとはわからないが、エポキシシクロドデカン類に比較してシクロドデカノン類のほうが、高温下での熱安定性がよいため、エポキシシクロドデカン類が少なくなった時点で高温にしたほうが、エポキシシクロドデカン類の劣化の割合が抑えらるためと考えられる。
【0020】
反応圧力も、特に制限されるものではなく、加圧、常圧、減圧のいずれの条件で反応を行っても差し支えない。
【0021】
反応時間は、触媒の使用量、反応温度、連続反応槽の数により異なるが、通常10時間以内で十分である。
【0022】
本発明のエポキシシクロドデカン類の異性化反応は、通常は無溶媒で実施し、エポキシシクロドデカン類あるいは生成したシクロドデカノン類が溶媒としての役割を果たす。しかし、無極性溶媒の使用を妨げるものではない。
【0023】
無極性溶媒としては、炭素数6〜12の環状炭化水素が挙げられるが、その使用量はエポキシシクロドデカン類の使用量を超えるものではない。
【0024】
本発明でのエポキシシクロドデカン類の異性化反応は、液相部が複数の反応区域を有する反応器を使用する。このような反応器としては、例えば、図1に示すような原料供給ライン1、反応区域2(2−1、2−2、2−3など)、液相部送入ライン3、液相部抜き出しライン6を備えた複数の反応区域が独立した構造を有する多槽式の反応器が挙げられる。
また図2,3に示すような、原料供給ライン1、反応区域2(2−1、2−2、2−3、2−4など)、反応区域仕切り板4、連通孔5、液相部抜き出しライン6などを備えた反応器も挙げられる。
【0025】
このように、本発明で使用される反応器としては、複数の反応区域が独立した構造をもつものか、あるいは反応器の内部が反応区域仕切り板で複数の反応区域(液相部)に区切られていて、各反応区域が連通している構造をもつものなどが使用される。この反応器において、反応区域の数は特に制限されるものではないが、2〜30、好ましくは2〜10が望ましい。
【0026】
図2、3に示される反応器では、反応区域の仕切り板は、図2のように高さが順次低くなってもよく、図3のように高さが同一であってもよい。このような反応器では、仕切り板は任意の位置に1個以上の連通孔をそれぞれ有しているが、図2の場合は仕切り板は連通孔を有していなくてもよい。
【0027】
また、反応液は、連通孔を通して連続する反応区域に順次導かれるが、連通孔のない図2の場合には、各反応区域を順次オーバーフローして最終反応区域に導かれる。その他、反応区域を複数に区切る方法としては、多孔板を挿入する方法などが挙げられる。なお、各反応区域の液相部は攪拌機、ポンプ循環、ガス吹き込みなどによって強制的に攪拌・混合されてもよく、あるいは液相部の流れや対流などによって攪拌・混合される程度でもよい。また、反応器は外部ジャケット等に熱媒を通して加熱される。
【0028】
本発明では、これらの反応器を使用することによって、原料供給ライン1から第1反応区域に供給される原料液(エポキシシクロドデカン類、臭化リチウムあるいはヨウ化リチウム)を連続する反応区域に順次導き、短時間で、高い転化率、高い選択率で異性化反応を行い、最終反応区域から高純度のシクロドデカノン類を連続的に得ることができる。
【0029】
シクロドデカノン類とエポキシシクロドデカン類は、物性がよく似ているため、蒸留、晶析、抽出等で分離精製することが、通常、困難である。そのため最終反応区域から得られたシクロドデカノン類に含まれるエポキシシクロドデカン類を分離することが難しい。そのため、シクロドデカノン類に含まれるエポキシシクロドデカン類の含有量は5wt%以下であることが好ましい。さらに好ましくは2wt%以下、特に好ましくは1wt%以下である。
【0030】
最終反応区域から得られたシクロドデカノン類は、そのまま製品として使用してもよいが、用途に応じて蒸留等により、生成した高沸物を精製分離することもある。
【0031】
反応器の材質は、特に制限されるものではなく、例えば、ガラス製またはステンレス製の反応器を使用することができる。
【0032】
【実施例】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0033】
測定方法
(1)原料ならびに生成物の分析:ガスクロマトグラフィーでキャピラリーカラムを使用し、内部標準法にて定量分析をおこなった。
なお、エポキシシクロドデカン類の転化率(仕込みエポキシシクロドデカン類に対する消費されたエポキシシクロドデカン類の割合)、シクロドデカノン類の選択率(消費されたエポキシシクロドデカン類に対する生成したシクロドデカノン類の割合)及びシクロドデカノン類の収率(仕込みエポキシシクロドデカン類に対する生成したシクロドデカノン類の割合)等は、原料のエポキシシクロドデカン類と対応する生成物シクロドデカノン類の分子量が同じであるため、重量比率で求めた。
【0034】
実施例1
図2に示すような、4つの反応区域の液相部の容積が、導入部から順に27ml、24ml、22ml、46ml(液相部全容積 119ml)であり、連通孔のない仕切り板を有するガラス製反応器を使用して、窒素流通下でエポキシシクロドデカンの異性化反応を行った。4槽目の反応区域の液量はオーバーフローでないため、液相部の容積が実施例により異なる。
エポキシシクロドデカン98.3wt%、シクロドデカノン0.2wt%およびヨウ化リチウム0.35wt%(エポキシシクロドデカンに対して0.49モル%)を含む仕込み液を35ml/hrで、230℃のオイルバスに入れた反応器の第1槽にポンプで連続的に供給した。第1反応区域の液相部を仕切り板からオーバーフローさせて、順次、第2反応区域、第3反応区域、第4反応区域に導いて、第4反応区域から反応液をポンプで連続的に抜き出した。各反応区域はスターラーピースにより攪拌を行った。反応が定常状態に達して時点で、第4反応区域から抜き出された反応液を、室温まで冷却した後にトルエンで溶解しガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果、エポキシシクロドデカンが0.3wt%残存し、シクロドデカノンは96.5wt%であった。これは、エポキシシクロドデカンの転化率99.7%、シクロドデカノンの選択率98.3%に相当する。
なお、反応液の平均滞留時間は3.4時間であり、反応温度は第1〜4反応区域はともに230℃であった。
【0035】
実施例2
エポキシシクロドデカン98.0wt%、シクロドデカノン0.2wt%およびヨウ化リチウム0.64wt%(エポキシシクロドデカンに対して0.88モル%)を含む仕込み液を供給速度33ml/hr、反応温度 200℃、液相部全容積90mlにした他は、実施例1と同一の操作を行い、第4反応区域から抜き出された反応液をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、エポキシシクロドデカンが0.8wt%残存し、シクロドデカノンは96.2wt%であった。これは、エポキシシクロドデカンの転化率99.2%、シクロドデカノンの選択率は98.8%に相当する。
なお、反応液の平均滞留時間は2.7時間、反応温度は第1〜4反応区域はともに200℃であった。
【0036】
実施例3
エポキシシクロドデカン98.1wt%、シクロドデカノン0.2wt%および臭化化リチウム0.47wt%(エポキシシクロドデカンに対して1.0モル%)を含む仕込み液を供給速度36ml/hr、反応温度 230℃、液相部全容積85mlにした他は実施例1と同一の操作を行い、第4反応区域から抜き出された反応液をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、エポキシシクロドデカンが2.8wt%残存し、シクロドデカノンは90.5wt%であった。これは、エポキシシクロドデカンの転化率97.1%、シクロドデカノンの選択率94.8%に相当する。
なお、反応液の平均滞留時間は2.4時間、反応温度は第1〜4反応区域はともに230℃であった。
【0037】
実施例4
図1に示すような3つの50mlガラス製反応槽からなり、第1反応槽には、定量ポンプによりエポキシシクロドデカン97.9wt%、シクロドデカノン0.2wt%およびヨウ化リチウム0.68wt%(エポキシシクロドデカンに対して0.94モル%)を含む仕込み液を42ml/hrで送液し、第1反応槽から第2反応槽、第2反応槽から第3反応槽へはオーバーフローにより液を順次流していき、エポキシシクロドデカンの異性化反応を行った。
第1〜3反応槽の温度はいずれも200℃であり、スターラーピースにより攪拌を行った。反応が定常状態に達して時点で、第3反応槽から抜き出した反応液を、室温まで冷却した後にトルエンで溶解しガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果、エポキシシクロドデカンが0.6wt%残存し、シクロドデカノンは96.1wt%であった。これは、エポキシシクロドデカンの転化率99.4%、シクロドデカノンの選択率は98.6%に相当する。
なお、反応液の平均滞留時間は3.6時間であった。
【0038】
実施例5
1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン98.8wt%およびヨウ化リチウム0.70wt%(1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンに対して0.95モル%)を含む仕込み液を使用した他は,実施例4と同じ反応条件で行った。反応液の分析の結果、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンが0.3wt%残存し、1−オキソ−5,9−シクロドデカジエンが96.6wt%生成していた。これは、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエンの転化率99.7%、1−オキソ−5,9−シクロドデカジエンの選択率98.1%に相当する。反応液の平均滞留時間は3.6時間であった。
【0039】
実施例6
実施例4において、第1反応槽の反応温度を180℃、2反応槽の反応温度を200℃、第3反応槽の反応温度を220℃にした以外は、実施例4と同じ条件で反応を行なった。反応液の分析の結果、エポキシシクロドデカンが0.1wt%残存し、シクロドデカノンは97.4wt%であった。これは、エポキシシクロドデカンの転化率99.9%、シクロドデカノンの選択率99.4%に相当する。
なお、第1、第2および第3反応槽の平均滞留時間はそれぞれ1.2時間であり、トータルの平均滞留時間は3.6時間であった。
【0040】
比較例1
図4に示すような、1つの反応区域からなる液相部の容積が105mlのガラス製反応器を使用して、窒素流通下でエポキシシクロドデカンの異性化反応を行った。即ち、エポキシシクロドデカン98.2wt%、シクロドデカノン0.2wt%およびヨウ化リチウム0.42wt%(エポキシシクロドデカンに対して0.58モル%)を含む仕込み液を供給速度31ml/hrで、反応温度230℃と、実施例1とほぼ同じ条件で反応を行った。抜き出した反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、エポキシシクロドデカンは3.1wt%残存し、シクロドデカノンは89.0wt%であった。これは、エポキシシクロドデカンの転化率96.8%、シクロドデカノンの選択率は93.4%に相当する。なお、反応液の平均滞留時間は3.4時間であった。
【0041】
比較例2
図4に示すような、1つの反応区域からなる液相部の容積が105mlのガラス製反応器を使用して、窒素流通下でエポキシシクロドデカンの異性化反応を行った。即ち、エポキシシクロドデカン97.9wt%、シクロドデカノン0.2wt%およびヨウ化リチウム0.70wt%(エポキシシクロドデカンに対して0.97モル%)を含む仕込み液を供給速度35ml/hrで、反応温度200℃と、実施例2とほぼ同じ条件で反応を行った。抜き出した反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、エポキシシクロドデカンは6.8wt%残存し、シクロドデカノンは86.9wt%であった。これは、エポキシシクロドデカンの転化率93.1%、シクロドデカノンの選択率95.2%に相当する。
なお、反応液の平均滞留時間は3.0時間であった。
【0042】
比較例3
図4に示すような、1つの反応区域からなる液相部の容積が105mlのガラス製反応器を使用して、窒素流通下でエポキシシクロドデカンの異性化反応を行った。即ち、エポキシシクロドデカン98.1wt%、シクロドデカノン0.2wt%および臭化化リチウム0.47wt%(エポキシシクロドデカンに対して1.0モル%)を含む仕込み液を供給速度36ml/hrで、反応温度230℃と、実施例3とほぼ同じ条件で反応を行った。抜き出した反応液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、エポキシシクロドデカンは12.7wt%、残存し、シクロドデカノンは77.8wt%であった。これは、エポキシシクロドデカンの転化率87.1%、シクロドデカノンの選択率90.9%に相当する。なお、反応液の平均滞留時間は2.9時間であった。
【0043】
実施例1〜6および比較例1〜3の反応条件および結果をまとめて表1に示した。
【表1】
Figure 0003998402
【0044】
【発明の効果】
本発明により、エポキシシクロドデカン類から対応するシクロドデカノン類に短時間で、高い転化率、高い選択率で、しかも工業的規模で連続的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例4で使用した反応器を概略示す図である。
【図2】図2は、実施例1で使用した反応器を概略示す図である。
【図3】図3は、本発明の一実施態様を概略示す図である。
【図4】図4は、比較例1〜3で使用した反応器を概略示す図である。
【符号の説明】
1:原料および触媒の供給ライン
2:(2−1、2−2,2−3、2−4など):反応区域
3:液相部送入ライン
4:反応区域仕切り板
5:連通孔
6:液相部抜き出しライン

Claims (4)

  1. 液相部が複数の反応区域を有する反応器の第1反応区域に、エポキシシクロドデカン類及び触媒として臭化リチウムあるいはヨウ化リチウムを連続的に供給し、その第1反応区域の反応液を連続する反応区域に順次導いて、最終反応区域からシクロドデカノン類を含む反応液を連続的に抜き出すことを特徴とするシクロドデカノン類の製造方法。
  2. 連続する反応区域の前後の反応温度が、反応区域前部の反応温度≦反応区域後部の反応温度となるように反応させることを特徴とする請求項1記載のシクロドデカノン類の製造方法。
  3. 触媒としてヨウ化リチウムを使用することを特徴とする請求項1または2記載のシクロドデカノン類の製造方法。
  4. 不活性ガスの雰囲気下で反応させることを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載のシクロドデカノン類の製造方法。
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