JP3997963B2 - 鋼の連続鋳造用モールドパウダー - Google Patents

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Description

本発明は、鋼を連続鋳造する際に使用するモールドパウダーに関するものである。
近年、鋼の清浄化に対する要求が強まる中で、連続鋳造用パウダーには、溶鋼中へ巻き込まれ難く、溶鋼を汚染(酸素供給)しない、という特性が求められるようになった。これら特性を満たすために具備すべき物性は、a)Al等の溶鋼中脱酸成分に還元されやすいSiO2 等の低級酸化物が少ない、すなわち高塩基度(高CaO/SiO2 )である、及び、b)高粘度である、ことである。
従来は、上記特性の中でも高粘度化が重要とされ、パウダー塩基度を低下させることにより高い粘度のパウダーを得ていた。例えば1300℃における粘度が3〜15ポアズの極低炭素鋼用モールドパウダーで、粘度を3ポアズ以上とすることで、モールドパウダーの巻き込みを防止するものである。なお、パウダーの粘度を上昇させるには、塩基度(CaO/SiO2 )を低下させ、SiO2 のネットワークを強化することが一般に行われる。
特開平10−263767号公報
しかしながら、パウダーの塩基度低下は、他方の具備すべき物性を犠牲にする。すなわち、低塩基度パウダーは、多く含まれるSiO2 がAl等の溶鋼中脱酸元素により還元され、鋼に酸素供給(溶鋼を汚染)しやすいという問題がある。
上記問題は、高粘度の高塩基度パウダーを開発することにより解消される。例えば1300℃における粘度が3〜8ポアズ、塩基度(CaO/SiO2 )が1.3以上3.0未満である連続鋳造用パウダーが提案されているが、高粘度かつ高塩基度パウダーの設計ノウハウに関する具体的な記述は無い。
特許第2991057号公報
また、高塩基度パウダーに結晶化調整剤としてAl23 を添加する方法が提案されているが、主たる結晶カスピダイン(Cuspidine :3CaO・2SiO2 ・CaF2 )の析出安定性がAl23 添加の影響を受けることに関する記述は無い。
特許第3339436号公報
高塩基度パウダーの粘度上昇には両性酸化物であるAl23 等の添加が有効であるが、高塩基度パウダーに単にAl23 等の両性酸化物を添加すると、溶融パウダーが鋳型・凝固シェル間に流入し、形成するパウダーフィルム中への結晶析出が不安定となる。
パウダーフィルム中に析出する結晶は、鋳型への抜熱を抑制し、凝固シェルを緩冷却化することにより凝固の均一性を高めるという重要な役割を果たしている。ゆえに、不安定な結晶析出は、シェルの不均一凝固を引き起こし、鋳片に縦割れ等の欠陥が生じる原因となる。或いは、鋳型温度が大きく変動しブレークアウト予知システムが誤作動するなど、操業性が悪化する。
このように、従来技術においては、清浄鋼用の連続鋳造用パウダーに求められる高粘度と高塩基度(低SiO2 )という条件を同時に満たすパウダーが、実用に耐える結晶析出の安定性を併せ持つということができなかった。
かかる問題を解消するべく、本発明者らは、特願2002−028211において、溶融スラグの凝固時にゲーレナイト(Gehlenite :2CaO・Al23 ・SiO2 )、アケルマナイト(Akermanite:2CaO・MgO・2SiO2 )、或いは、両者の全率固溶体であるメリライト(Melilite)を主な結晶組成として析出させる連続鋳造用パウダーを提案している。本発明者はその後の研究開発結果を反映し、上記提案したパウダーに対しCaO/SiO2 や凝固温度、粘度、TiO2 農度、アルカリ金属酸化物(Na2 O+K2 O+Li2 O)の範囲を調整すると共に、F濃度の下限値、Al23 とMgOとの濃度和、FeOとMnOとの濃度和、S濃度や膨張性黒鉛添加について新たに具体的に規定した本発明を成立するに到った。
本発明者は他に、上述の先に提案したパウダーから派生したものとして、特願2002−070276を提案している。このパウダーは、一旦溶融した後、凝固したパウダーフィルム中に析出する結晶の内、1種類の「主な結晶」の析出量が他種結晶の析出量の2倍以上であることを(請求項1)、また、一旦溶融した後凝固したパウダーフィルム中に析出する結晶の内、少なくとも2種類の結晶組が全率固溶体を形成し実質的に1種類の「主な結晶」をなすこと(請求項3)を、また、F濃度が4質量%以下であること(請求項6)を、また、「主な結晶」がアケルマナイト、ゲーレナイト、メリライト等のうちのいずれか1種であること(請求項7)を、それぞれ特徴とする連続鋳造用パウダーである。しかしながら、これらのパウダーは、結晶析出或いは晶出が安定化する、より一般的な条件について規定したパウダーの一部を成すものであり、本発明とは異なる発明である。
解決しようとする問題点は、高粘度および高塩基度(低SiO2 )、という鋼を清浄に連続鋳造するためのパウダーに求められる特性を同時に満たしつつ、パウダーフィルム中への安定な結晶析出をも同時に実現できない点である。
本発明は、アケルマナイト、ゲーレナイト、或いは、両者の全率固溶体であるメリライトを、溶融スラグ凝固時に主な結晶組成として析出し、CaO濃度とSiO2 濃度の比、CaO/SiO2 が1.0〜1.5、Al23 とMgOの濃度合計が15〜27質量%、Na2 OとLi2 OとK2 Oの濃度合計が1〜13質量%、F濃度が1〜5質量%、FeOとMnOの濃度合計が3質量%以下、S濃度が0.5質量%以下、凝固温度が1100℃〜1260℃、1300℃における粘度が0.2〜1.3Pa・sであることを最も主要な特徴としている。
本発明によれば、粘度が高く、塩基度が高く、パウダーフィルムの結晶化が安定しているという、鋼を清浄に連続鋳造することができるモールドパウダーが具備すべき特性を併せ持つことが可能である。
高塩基度パウダーの粘度を上げようとして両性酸化物であるAl23 等を添加すると、鋳型内で溶融スラグとなったモールドパウダーが鋳型・凝固シェル間に流入し、形成するパウダーフィルム中における結晶析出が不安定となる。この問題は、多量に含まれるAl23 等の両性酸化物がパウダーフィルム中に析出する代表的結晶であるカスピダインの析出を阻害していることに起因していると考えた。
本発明者は、Al23 を多く含有するモールドパウダーのフィルム中結晶析出を安定させるには、Al23 を構成成分に持つ結晶を析出させる他にないと考え、Al23 を含む適当な結晶を探した。適当な結晶とは、塩基度(CaO/SiO2 )が1.0以上であり、融点が鋼の融点より200℃程度の低い範囲、すなわち1300℃〜1550℃程度であり、構成成分が工業的に安く入手できる結晶である。その結果、発明者はゲーレナイトとアケルマナイトとの全率固溶体であるメリライト(表1参照)を見出した。
Figure 0003997963
次に、メリライトを安定して析出させることができるモールドパウダー組成に調整した。結晶は、その純組成に近い溶融スラグからは安定して析出するので、例えば、ゲーレナイトとアケルマナイトとが50:50の割合で固溶したメリライト、すなわち、表1中のゲーレナイトとアケルマナイトとの中間組成であるCaO/SiO2 が1.24、Al23 が18.6質量%、MgOが7.35質量%を主成分とし、それに物性調整上必要なアルカリ金属酸化物(Na2 O等)やFなどを加えた組成を基材とする手法で以下の本発明の組成を決定した。
すなわち、第1の本発明の鋼の連続鋳造用モールドパウダーは、アケルマナイト、ゲーレナイト、或いは、両者の全率固溶体であるメリライトを、溶融スラグ凝固時に主な結晶組成として析出し、CaO濃度とSiO2 濃度の比、CaO/SiO2 を1.0〜1.5、Al23 とMgOの濃度合計を15〜27質量%、Na2 OとLi2 OとK2 Oの濃度合計を1〜13質量%、F濃度を1〜5質量%、FeOとMnOの濃度合計を3質量%以下、S濃度を0.5質量%以下、凝固温度を1100℃〜1260℃、1300℃における粘度を0.2〜1.3Pa・sとしたものである。
本発明において、CaO/SiO2 を1.0〜1.5としたのは、1.0未満ではSiO2 活量が高くなり、低級酸化物であるSiO2 による溶鋼汚染が大きくなるためである。一方、CaO/SiO2 が1.5を超えると、凝固温度が高くなり過ぎて操業に適さないためである。
また、Al23 とMgOとの濃度合計を15〜27質量%としたのは、メリライトがAl23 あるいはMgOを主な組成のひとつとして含む結晶であることから、メリライトの安定析出にはAl23 とMgOとの濃度合計が15質量%必要であるためである。しかしながら、Al23 とMgOとの濃度合計が27質量%を超えると、凝固温度が高くなり過ぎて適当でないので、27質量%以下とした。
また、Na2 OとLi2 OとK2 Oとの濃度合計を1〜13質量%としたのは、これが1質量%以下では、パウダーフィルム中の液相が不足しやすくなり、鋳型内潤滑性が悪化するためである。逆に13質量%を超えると、凝固温度が低下しすぎたり、アルカリ金属酸化物を含む他の結晶が析出したり、これらアルカリ金属酸化物がSiO2 と反応して約800℃で生成する液相がバインダとなって鋳型内のパウダーの焼結が進行し、流動性が悪化するなど、操業に悪影響を及ぼすからである。
さらには、肥大化したスラグベアが、鋳型のオシレーション(上下振動)に伴い凝固シェル先端を押し込むことで局部的なメニスカスの乱れを引き起こし、パウダー巻込欠陥が発生する。Na2 OとLi2 OとK2 Oとの濃度合計は2〜10質量%であればさらに好ましい。さらに、鋳型断面の小さいビレットの連続鋳造では、鋳型壁から庇状に成長したパウダー焼結体であるスラグべアが鋳型表面を覆って操業を阻害しやすいので、Na2 OとLi2 OとK2 Oとの濃度合計は4質量%に上限値を抑えることが望ましい。
F濃度を1〜5質量%としたのは、これが1質量%未満では凝固温度が高くなり過ぎ、鋳型内潤滑性が悪化するためである。但し、5質量%を超えると、パウダーフィルム中において主たる結晶であるメリライトと競合してFを含むカスピダインが多く析出するようになり、互いの結晶界面の不整合性に起因する融点低下を引き起こし、結晶析出が不安定になるので好ましくないからである。F濃度は1.5〜4質量%の範囲内であればさらに望ましい。
これらアルカリ金属酸化物とF濃度との比は、カスピダイン析出を抑制するという観点からは、溶融スラグ中においてアルカリ金属がFと優先的に結合し(例えばNaFとなり)、カスピダインの析出を抑制するという現象を活用するべく、含有するFと等モル濃度以上のアルカリ金属を含有するよう調整することがより好ましい。
FeOとMnOとの濃度合計を3質量%以下にするのは、SiO2 よりもさらに低級、すなわち酸素を放出しやすいFeO或いはMnOの濃度が高いと、高塩基度(高CaO/SiO2 )化し、溶鋼汚染を低減する効果が損なわれてしまうからである。FeOとMnOとの濃度合計は2質量%以下であればさらに好ましい。
S濃度を0.5質量%以下とするのは、パウダー中のS濃度が高い場合には、界面活性元素であるSがパウダー溶融スラグ層と溶鋼との界面に集まって界面張力を低下させ、パウダーが溶鋼中に巻き込まれ易くなるからである。S濃度は0.3質量%以下であればさらに好ましい。
凝固温度を1100℃〜1260℃とするのは、凝固温度が1100℃未満であると、凝固シェルと鋳型との間隙に位置するパウダーフィルムが凝固しにくくなり、パウダーフィルム中の結晶析出が不足して、パウダーフィルムを介した凝固シェルから鋳型への輻射熱伝導が増加し、凝固シェルを急激に冷却しすぎて縦割れ等の割れ性欠陥が鋳片表面に生じ易くなるからである。逆に凝固温度が1260℃を超えると、パウダーフィルムの凝固が進行しすぎて液相が不足し、潤滑性が悪化する結果、凝固シェルの破断等のトラブルを生じるので好ましくないからである。
一般に凝固初期の収縮が大きな鋼種ほど縦割れ等の割れ性欠陥を鋳片表面に生じ易く、逆に凝固初期の収縮が小さな鋼種ほど凝固シェルと鋳型との間隙が小さくなるので、パウダーフィルムが薄くなり、潤滑性が悪化し易い。ゆえに凝固温度は1100℃〜1260℃の間で、凝固初期の収縮が大きな鋼種では高めに、凝固初期の収縮が小さな鋼種では低めに調整するとさらに良い結果が得られる。
1300℃における粘度を0.2〜1.3Pa・sとするのは、粘度が0.2Pa・s未満の場合には粘度が低すぎるので、パウダー溶融スラグが溶鋼中へ巻き込まれ易くなり、一方、粘度が1.3Pa・sを超えると粘度が高すぎて潤滑性が悪化するからである。粘度は0.3〜1.0Pa・sであればさらに好ましい。
上記に加え、凝固温度を低下させる成分調整としてTiO2 を1〜8質量%含有させることも有効である。TiO2 濃度が1質量%未満では、凝固温度の調整効果が小さく、一方、8質量%を超えると、単体で1980℃と高い融点を持つペロブスカイト(Perovskite:CaO・TiO2 )が多く析出して凝固温度が上昇に転じるので好ましくないからである。さらに望ましいTiO2 含有量は2〜6質量%である。これが、第2の本発明である。
モールドパウダーは、上述のように成分調整した基材に、滓化速度調整用の骨材としてカーボンブラックやコークス粉などのカーボンを加えたものが一般に用いられる。この骨材として膨張性黒鉛を1〜5質量%添加すると、鋳型内におけるパウダーの焼結が進行せず、特に小断面鋳型を使用したビレット製造の連続鋳造で問題となるスラグベアの成長が抑制されることが判明した。あるいは、肥大化したスラグベアが、鋳型のオシレーション(上下振動)に伴い凝固シェル先端を押し込むことで、局部的なメニスカスの乱れを引き起こし、パウダー巻込欠陥を発生させることも防止できる。
膨張性黒鉛とは、黒鉛の積層構造の間に、加熱時にガスを発生する硫酸等の物質を含侵させたもので、加熱すると数十倍から数百倍に体積が膨張する。膨張性黒鉛は、1質量%未満では添加効果が無く、5質量%を超えて添加すると鋳型内で膨張した黒鉛が体積の多くを占めるようになり、パウダーの流動性が悪化する。これが、第3の発明である。膨張性黒鉛は、鋳型断面が小さくスラグベアの成長が問題となる場合や、Na2 OとLi2 OとK2 Oとの濃度合計が大きくパウダーが焼結し易い場合には、添加量を2乃至3質量%以上に調整することが望ましい。
なお、パウダー組成は上述のように金属酸化物、F、及びカーボン濃度として表している。このうち、金属酸化物で表した組成は、パウダー原料における該当金属の総濃度を酸化物濃度に換算して表したものである。例えば、CaOとは、CaOやCaF2 に含まれる総Ca濃度のCaO濃度換算値であり、Na2 Oとは、Na2 O、NaF、Na2 CO3 に含まれる総Na濃度のNa2 O濃度換算値と言った具合である。また、Fはパウダー原料におけるF化合物、例えばCaF2 、NaF、AIF3 に含まれる総F濃度である。カーボンは、骨材として基材に添加される固体のカーボンを指し、Na2 CO3 等の炭酸塩中のカーボンは含まない。
溶融スラグ凝固時に主に析出する結晶組成とは、鋳型から回収したパウダーフィルムや、同組成の溶融スラグを徐冷した固形物を、X線回折試験に供し、回折ピークが最も高い結晶組成を調査することにより明らかとなる。本発明においては、同組成の溶融スラグを100〜400℃/hrで徐冷した固形物を用いて調査した。
アケルマナイトとゲーレナイトの結晶構造が酷似している結果、両者がメリライトという全率固溶体を形成するということから、析出結晶がアケルマナイトかゲーレナイトかメリライトか厳密に区別することは難しい。ゆえに本発明においてアケルマナイト、ゲーレナイト、またはメリライトが析出する場合、パウダー中のMgO含有量がAl23 含有量に対して3倍以上の場合にアケルマナイト、パウダー中のAl23 含有量がMgO含有量の3倍以上の場合にゲーレナイト、その他の場合にはメリライトが析出していると便宜的に定義し、以下の実施例を説明している。
下記表2及び表3のA〜Fは本発明による実施例である。
Figure 0003997963
Figure 0003997963
実施例Aは、第1の本発明を満たすモールドパウダーである。塩基度(CaO/SiO2 )及び粘度が十分に高くS濃度も低いので、パウダー巻込欠陥発生指数が良好であり、Al23 とMgOとの濃度合計が適正でF濃度が低くNa2 OとLi2 OとK2 Oとの濃度合計が上限値を超えていないことに加え、凝固温度が下限値(1100℃)以上であるので、アケルマナイトを溶融スラグ凝固時の主な結晶組成として安定して析出する。また、Na2 OとLi2 OとK2 Oとの濃度合計が下限値以上であり、凝固温度が上限値(1260℃)を超えていないので、潤滑性も良好である。このように、実施例Aは、第1の本発明が必要な要件を満たしているので、良好な鋳片品質及び操業性を実現できる。
実施例E及びGは、第1及び第2の本発明が必要な要件を満たすモールドパウダーである。これらは第1の本発明が必要な要件を満たすので、実施例Aと同様に優れた鋳片品質及び操業性を実現できた。さらに第2の本発明が必要な要件をも満たす、すなわちTiO2 を適正量含有するので、凝固温度を下げることもできた。
一般に塩基度(CaO/SiO2 )を高めると凝固温度が高くなるので、TiO2 添加により凝固温度を下げることができれば、TiO2 を添加しない場合に比べて高塩基度化(高CaO/SiO2 化)し易くなる。TiO2 添加の効果により実施例E及びGは実施例Aよりも容易に高塩基度化することができた。高塩基度化の結果、パウダー巻込欠陥発生指数は実施例Aに比べさらに優良となる。
実施例B、C、D、Fは、第1〜第3の本発明が必要な要件満たすモールドパウダーである。これらは第1及び第2の本発明が必要な要件を満たすので、実施例E及びG同様に、優良な鋳片品質及び操業性を実現する。さらに、第3の本発明が必要な要件をも満たす、すなわち膨張性黒鉛を適正量添加したので、小断面の連続鋳造機でのスラグベア肥大による操業阻害や、肥大化したスラグベアが鋳型のオシレーション(上下振動)に伴って、凝固シェル先端を押し込むことで局部的なメニスカスの乱れを引き起こし発生するパウダー巻込欠陥を効果的に防止できる。
一方、表2及び表3のH〜Nは、表2に*印を付したものが、本発明の範囲を外れた比較例を示したものである。
比較例Hは、凝固温度が本発明の上限値より高いため潤滑性が悪く実操業に耐えない例である。
また、比較例I及びJは、Al23 とMgOとの濃度合計が本発明の下限値よりも小さいので、カスピダインが主な結晶として析出した例である。比較例IではF濃度が本発明の上限値より高いこともカスピダインが析出する要因である。上記のAl23 とMgOとの濃度合計が小さいことに加えて、比較例Iのように更にAl23 濃度が10質量%と高い場合や、比較例JのようにF濃度が2質量%と低い場合には、たとえ主な結晶としてカスピダインが析出しても、析出が不安定になり易い。
すなわち、凝固シェルと鋳型との間隙に位置するパウダーフィルム中の結晶析出の不安定さに起因して、パウダーフィルムを介した凝固シェルから鋳型への輻射熱伝導の変動が増大するので、凝固シェルの成長が不均等になり、鋳片表面に割れ性欠陥が発生し易くなるという問題が生じる。
また、比較例Kは、Al23 とMgOとの濃度合計が本発明の下限値よりも小さく、TiO2 濃度が20.0質量%と過度に高いので、チタナイト(Titanite:CaO・SiO2 ・TiO2 )が主な結晶として析出した例である。この場合、チタナイトの他にカスピダインやペロブスカイトが競合して析出し、異種結晶界面における大幅な融点低下に起因して結晶析出が不安定となり、比較例I及びJと同様に鋳片表面に割れ性欠陥が発生し易くなるという問題が生じる。
比較例Lは、主な結晶としてメリライトが析出するものの、Na2 OとLi2 OとK2 Oとの濃度合計が1質量%未満と本発明の下限値よりも小さいので、鋳型内における潤滑性が悪化する例である。加えて、FeO+MnO濃度が高いので、溶鋼汚染が大きい例である。
比較例M及びNは、塩基度すなわちCaO濃度とSiO2 濃度との比CaO/SiO2 が1.0未満と本発明の下限値よりも小さいので、溶鋼汚染が大きいという問題を有する。加えて比較例Mはパウダー中のS濃度が本発明の上限値よりも高いので溶鋼中への巻き込みが発生しやすい。
本発明の効果を実証するべく、以下のように実機において比較実験を行った。
まず、実施例Bと比較例Nとを用い、鋳型径がφ310mmの丸ビレツト連続鋳造機において0.2質量%C−1.3質量%Mnのアルミ脱酸普通鋼を、鋳型内を電磁攪拌しつつ引抜速度1.4m/minで鋳造し、鋳造したビレットをシームレス製管に供し、製品パイプにおけるパウダー巻込欠陥発生率を比較した。
その結果、パウダー巻込欠陥発生率は、比較例Nを用いた鋳片から製造したパイプに対し実施例Bを用いたものでは、1/6に軽減する効果が確認された。また、実施例Bと比較例Iとを用い、鋳型径がφ225mmの丸ビレット連続鋳造において0.2質量%C−0.6質量%Mnのアルミ脱酸普通鋼を、鋳型内を電磁攪拌しつつ引抜速度2.4m/minで鋳造した結果、鋳型銅チューブ温度の変動が、比較例Iを用いた鋳型においては30℃以上あり操業に支障をきたしたのに対し、実施例Bを用いた鋳型においては10℃以下に抑制され、安定した鋳造が可能であった。鋳型銅チューブ温度はメニスカス下150mm、鋳型表面から5mmの点において測定した。
あるいは、実施例Fと比較例Mとを用い、鋳型断面が230mm厚×1250mm幅のスラブ連続鋳造機において、低炭素アルミ脱酸普通鋼を引抜速度1.4m/minで鋳造し、鋳造したスラブの表層から10mmの範囲におけるパウダー性介在物の量を比較した結果、比較例Mを用いたスラブに比べ実施例Fを用いたスラブでは、介在物が1/5に減少していることが確認された。
また、実施例Eと比較例Jを用いて鋳型断面が230mm厚×1150mm幅のスラブ連続鋳造機において、低炭素アルミ脱酸普通鋼を引抜速度1.6m/minで鋳造した結果、鋳型銅板温度の変動が、比較例Jを用いた鋳型においては15℃以上あり、ブレークアウト予知システムの誤作動を引き起こしたのに対し、実施例Eを用いた鋳型においては5℃以下に抑制され、安定した鋳造が可能であった。鋳型銅チューブ温度はメニスカス下100mm、鋳型表面から15mmの点において測定した。
以上のように、本発明に係るモールドパウダーは、ビレットやスラブを連続鋳造する際に使用するモールドパウダーとして有用であり、特に清浄な鋼を連続鋳造するためのパウダーとして適している。

Claims (3)

  1. アケルマナイト(Akermanite:2CaO・MgO・2SiO2 )、ゲーレナイト(Gehlenite :2CaO・Al23 ・SiO2 )、或いは、両者の全率固溶体であるメリライト(Melilite)を、溶融スラグ凝固時に主な結晶組成として析出し、CaO濃度とSiO2 濃度との比(CaO/SiO2 )が1.0〜1.5、Al23 とMgOとの濃度合計が15〜27質量%、Na2 OとLi2 OとK2 Oとの濃度合計が1〜13質量%、F濃度が1〜5質量%、FeOとMnOとの濃度合計が3質量%以下、S濃度が0.5質量%以下、凝固温度が1100℃〜1260℃、1300℃における粘度が0.2〜1.3Pa・sであることを特徴とする鋼の連続鋳造用モールドパウダー。
  2. 更にTiO2 を1〜8質量%含有することを特徴とする請求項1記載の鋼の連続鋳造用モールドパウダー。
  3. 骨材として膨張性黒鉛を1〜5質量%添加したことを特徴とする請求項1又は2記載の鋼の連続鋳造用モールドパウダー。
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