JP3995493B2 - 1,1,1−トリフルオロアセトンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬・農薬の中間体として、また含フッ素基導入試薬として有用な1,1,1−トリフルオロアセトンの製造方法に関する。またその際に用いる固相触媒の調製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有用な有機試薬である1,1,1−トリフルオロアセトンを工業的に製造する方法として、本出願人は、一般式[1]で表されるハロゲン化トリフルオロアセトン類
【0003】
【化2】
【0004】
(式中、Xは塩素、臭素またはヨウ素を表し、nは1〜3の整数を表す。)
を原料とし、これを、還元剤として金属亜鉛とプロトン性溶媒の存在下、液相中で還元する方法を特開2000−336057号公報にて開示した。
【0005】
本出願人はさらに、還元剤として金属亜鉛を必要としない方法として、一般式[1]で表されるハロゲン化トリフルオロアセトンを、特定の遷移金属によりなる固相触媒を用いて気相中で水素化分解する方法を、特開2001−316322号公報として開示した。この発明において用いられた触媒とはルテニウム、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ニッケル、銅、鉄などの遷移金属を、活性炭等の担体に担持させたものである。この触媒の存在下、気相中においてハロゲン化トリフルオロアセトンを水素ガスと反応させることで、大量の亜鉛廃棄物を生じることなく、かつ高い収率で、目的化合物1,1,1−トリフルオロアセトンを合成することができた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開2001−316322号公報の発明における主要な問題として、固相触媒の表面に強い発熱が起こりやすいという事実があった。固相触媒表面の発熱があまり大きいと反応の制御が難しくなり、原料の供給速度を低減したり、除熱効果を上げるため反応管を細くする必要が生じるなど、効率が悪くなる。その上、発熱が大きい系では触媒の寿命も短いものとなる。
【0007】
すなわち、ハロゲン化トリフルオロアセトンを水素化分解によって1,1,1−トリフルオロアセトンに誘導する技術において、触媒表面の発熱をより小さく抑えることができれば、1,1,1−トリフルオロアセトンの工業的な製造を行いやすくなる。このような発熱抑制の手段を見いだすことが求められていた。
【0008】
【課題を解決するための具体的手段】
本発明者らはかかる課題に鑑み、ハロゲン化トリフルオロアセトンを1,1,1−トリフルオロアセトンに、より有効に誘導する方法について鋭意検討した。
【0009】
その結果、ハロゲン化トリフルオロアセトンを気相中で水素ガスにより水素化分解し1,1,1−トリフルオロアセトンに誘導する技術において、パラジウムおよびその他に、銀、レニウム、金から選ばれる金属(以下、添加金属という)が同一活性炭担体に担持された固相触媒を用いると、上記問題が解決されることを見いだした。すなわち、活性炭担体をパラジウム化合物を含む溶液、および添加金属化合物を含む溶液に接触させるか、活性炭担体をパラジウム化合物と添加金属化合物を同時に含む溶液に接触させた後、水素等の還元性気体で還元処理して得た固相触媒を該反応に用いることにより、触媒としての活性が実質的に損なわれることなく、触媒表面での発熱が大幅に抑制されることを知った。またこれらの触媒を使用すると、触媒の寿命が顕著に増大するという事実を見いだした。
【0010】
本発明者らはさらに、これらの固相触媒において、添加金属の担持量がパラジウム100gあたり合計1〜100gであると好ましいことを見いだした。
【0011】
本発明者らはまた、このように使用される触媒の1つである、同一活性炭担体上にパラジウムと銀が担持された触媒を調製する方法として、活性炭担体を硝酸パラジウムを含む溶液と硝酸銀を含む溶液に接触させるか、活性炭担体を硝酸パラジウムと硝酸銀を同時に含む溶液に接触させた後、還元性気体により還元処理すると特に好ましいことを見いだし、本発明の完成に至ったものである。
【0012】
本発明における、「パラジウムと添加金属が同一活性炭担体上に担持された触媒」のことを「複合化触媒」と呼ぶ。これに対し、パラジウムのみを担持させた担体と、添加金属のみを担持させた担体を物理的に混ぜ合わせたものは、本発明にいう「複合化触媒」には該当しない。
【0013】
すなわち、本発明は、一般式[1]で表されるハロゲン化トリフルオロアセトンを気相中で水素ガスにより水素化分解し1,1,1−トリフルオロアセトンに誘導する方法において、触媒として、同一活性炭担体上にパラジウムおよびその他に、銀、レニウムまたは金から選ばれる少なくとも1種類の添加金属が担持された固相触媒を用いることを特徴とする。また、特にその固相触媒が、活性炭担体を、パラジウム化合物を含む溶液および、添加金属化合物を含む溶液に接触させた後、これを還元性気体で還元して得たものであることを特徴とする。また、固相触媒が、パラジウム化合物および添加金属化合物を同時に含む溶液に、活性炭担体を接触させた後、還元性ガスで還元処理して調製したものであることを特徴とする。また、固相触媒において、添加金属の担持量がパラジウム100gあたり合計1〜100gであることを特徴とする。さらに本発明は、活性炭担体を硝酸パラジウムを含む溶液および、硝酸銀を含む溶液に接触させるか、活性炭担体を硝酸パラジウムと硝酸銀を同時に含む溶液に接触させた後、還元性気体により還元処理することを特徴とする、同一活性炭担体上にパラジウムと銀が担持された、上記の反応に使用する触媒を調製する手段を提供する。
【0014】
以下、本発明につきさらに詳細に説明する。本発明の方法は、流通式の気相反応装置において気相中で実施することができる。本発明の方法における原料である、一般式[1]で表されるハロゲン化トリフルオロアセトンの構造式を以下に列挙する。
【0015】
【化3】
【0016】
本発明においては、これらのハロゲン化トリフルオロアセトンのうち、一種類のみを用いてもよいし、複数のハロゲン化トリフルオロアセトンの混合物を用いてもよく、何れも目的とする1,1,1−トリフルオロアセトンに変換される。
【0017】
担体としては活性炭を使用する。担持方法として上記金属化合物を含む溶液を活性炭担体に浸漬したり、溶液を活性炭担体に噴霧するなどの方法が挙げられる。この際、パラジウム化合物および添加金属化合物を含む溶液としては、これら金属の塩化物、臭化物、フッ化物、酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、アコ錯体、ハロゲノ錯体等を、水やアルコールに溶かしたものが使用できる。
【0018】
活性炭担体を金属化合物と接触させる順序としては、活性炭担体をパラジウム化合物を含む溶液に接触させた後、添加金属化合物を含む溶液に接触させる方法、活性炭担体を添加金属化合物を含む溶液に接触させた後、パラジウム化合物を含む溶液に接触させる方法、あるいは両方の溶液と同時に接触させる方法の何れを用いてもよい。パラジウム化合物と添加金属化合物を共に含む溶液を調製し、この溶液を活性炭担体に一時に接触させる方法でもよく、通常はその方が操作が簡便であるので、好ましい。
【0019】
これらの方法で活性炭担体にパラジウムおよび添加金属を含浸させた後に、不活性ガスの存在下で、概ね150〜350℃で乾燥、焼成し、次いで水素ガス等の還元性気体を流通させて還元処理に付することにより、複合化触媒が調製される。
【0020】
これらの中で、銀を添加金属として用いる場合、銀のハロゲン化物は難溶性のため、原料として好ましくなく、それ以外の銀化合物、例えば硝酸銀などを使用することが好ましい。また銀を添加金属とする場合に、パラジウムの対陰イオンがハロゲン化物イオンであったり、液相中にハロゲン化物イオンが存在すると、銀との間に難溶性のハロゲン化銀が形成され、担体への浸漬が阻害される恐れがあるので好ましくない。すなわち、パラジウムの対陰イオンとしてもハロゲン化物イオン以外のものを用いるのが好ましい。
【0021】
このように、同一活性炭担体上にパラジウムと銀が担持された固相触媒を調製するためには、活性炭担体を硝酸パラジウムと硝酸銀を含む溶液と接触させるか、活性炭担体を硝酸パラジウムを含む溶液および、硝酸銀を含む溶液に接触させて金属を含浸させ、その後に還元性気体で還元処理するのが好ましい態様である。この場合、金属化合物を溶解させる溶媒中にもハロゲン化物イオンは存在しないことが好ましく、純水や硝酸水溶液が好ましく使用できる。
【0022】
このような複合化触媒を使用すると、パラジウムのみが担持された通常の触媒を用いる場合に比較して1,1,1−トリフルオロアセトンの選択率、収率に事実上変化はないにも関わらず、触媒表面の温度上昇が大幅に抑制され、反応制御が格段に行いやすくなり、かつ触媒寿命が顕著に増大する。一方、添加金属のみを活性炭担体に担持させても触媒活性はごく低く、水素化分解はほとんど進行しない。また、パラジウムのみが担持された通常の触媒と添加金属のみを担持させた活性炭担体を物理的に混ぜ合わせても、反応は進行するものの、触媒表面の温度上昇は十分抑制されず、触媒寿命も増大しない。すなわち、ハロゲン化トリフルオロアセトンを水素化分解し、1,1,1−トリフルオロアセトンを合成する反応を有利に進行させる効果は、パラジウムと添加金属が同一の活性炭担体上に担持された触媒を用いる場合に、特異的に発現するものである。
【0023】
添加金属としては銀、レニウム、金の何れも同様の効果を有するが、発熱を抑制する効果の大きさと、触媒寿命を延長させる効果の大きさはどちらも、おおむね、銀>レニウム、金、の順である。
【0024】
本発明の方法において担体に担持させるパラジウムの量(金属原子に換算した重量)に特に制限はないが、担体100gに対し0.1g〜10gが好ましく、0.2〜5gが特に好ましい。0.1g以下では1,1,1−トリフルオロアセトンの収率が低下し、また5gを超えると経済的に好ましくない。
【0025】
複合化触媒中の添加金属の担持量にも格段の制限はないが、パラジウム100gに対して、添加金属は合計1〜100gであることが好ましく、5〜50gであることが特に好ましい。添加金属が1gよりも少ないと、敢えて使用する効果が得られ難く、逆に100gを上回るとパラジウム含量が相対的に低下し触媒としての活性が低下するため、好ましくない。
【0026】
ハロゲン化トリフルオロアセトンの水素化分解は無溶媒で行っても、溶媒を使用してもよい。溶液を使用する場合には、水溶液、アルコール溶液(メタノール溶液、エタノール溶液など)が好ましく、水溶液が特に好ましい。アルコールを用いる場合には炭素数1〜20のアルキル基が水酸基に結合したアルコールが好ましい。水溶液、アルコール溶液の場合、ハロゲン化トリフルオロアセトンは次の式[2]〜[4]に示す水和物、アルコール付加物、gem−ジオール、ヘミアセタール、アセタール等の構造をとり得るが、何れの構造であっても差し支えない。
【0027】
【化4】
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】
(各式中、X、nは一般式[1]と同じ意味を表す。mは整数、R1はアルキル基、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。)
溶媒を用いる場合、その量には特別な制限はないが、ハロゲン化トリフルオロアセトン100gに対して、100g以下とすることが好ましく、50g以下が特に好ましい。溶媒が上記の量より多いと過大な反応装置が必要となるなど問題が生ずるため、経済的に好ましくない。
【0031】
反応を実施する場合には、上記の原料もしくはその溶液を気化装置でガス化したのちに、反応器に導入し、触媒の存在下、水素ガスと反応させれば良い。この際、反応の調節、触媒の劣化の防止を目的として、反応器内に窒素ガスを共存させることができる。
【0032】
水素化分解における反応器の設定温度は50℃〜300℃が好ましく、80℃〜230℃が特に好ましい。50℃未満では反応速度が十分でなく、好ましくない。また300℃を超えると、触媒表面での発熱が大きく、触媒寿命が短くなる上、トリフルオロメチル基の水素化分解および/またカルボニル基への水素付加が進行し1,1,1−トリフルオロアセトンの収率が減少し、副生物により精製も困難になるので好ましくない。
【0033】
出発原料のハロゲン化トリフルオロアセトン1モルに作用させる水素のモル数は原料化合物のハロゲン化メチル基(−CH2-nXn)のハロゲン原子の個数(n)により異なるが、1.5〜50の範囲であり、2〜10が好ましく、特に好ましくは2.5〜5である。モル数が1.5未満では原料のハロゲン化トリフルオロアセトンの反応率は十分高くなく、一方、モル比50を超えても反応率の向上はほとんど認められず、未反応水素回収の点から経済的に有利でないので何れも好ましくない。
【0034】
本発明の反応を行う反応器は、四フッ化エチレン樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂、PFA樹脂、カーボンなどを内部にライニングした材質で製作したものが好ましく、水の存在しない条件で反応を行う場合には、これらの材質の他に、鉄、ステンレス鋼、ニッケル、ハステロイ(TM)で製作したものも使用できる。
本発明の方法を実施する方法は限定されるものではないが、代表的な態様の具体例を述べる。反応条件に耐えられる流通式反応器に、活性炭に担持した複合化触媒を充填する。反応器の外部より加熱し、水素を流通させ、または水素と窒素を同時に流通させる。反応管の内部が所定の温度になったら、原料のハロゲン化トリフルオロアセトンを含む原料混合物を気化器に導入し、気化して水素と混合し、かかる後に反応管に導入し流通させる。反応管より流出した気体及び液体の混合物は水に吸収させ、冷却して液体として回収する。なおハロゲン化トリフルオロアセトンを水素と別々に反応器に導入してもよい。
【0035】
本発明の方法で製造された1,1,1−トリフルオロアセトンは、フッ素化物の水素化分解反応生成物についての公知の方法を適用して精製されるが、例えば、反応器より塩化水素とともに液体または気体状態で流出した1,1,1−トリフルオロアセトンを含む生成物を、冷却し、取り出した後、塩化水素を蒸留あるいは液相分離などの操作で除去し、次いで残留した酸性成分を塩基性物質などで除いた後、精製蒸留に付することにより目的とする高純度の1,1,1−トリフルオロアセトンを得ることができる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により、気相法における本発明の態様を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。なお実施例において、ガスクロマトグラフ分析組成の「%」は「面積%」を表す。
【0037】
[触媒調製例1]「パラジウム−銀/活性炭」触媒(複合化触媒)の調製。
【0038】
金属重量換算で0.5gの硝酸パラジウムと金属重量換算で0.1gの硝酸銀を250gの水に溶解した後、椰子殻活性炭(粒状、直径4mm)100gを加え18時間浸漬させた。水を減圧して除去し、ガラス管(直径30mm)に充填し120℃まで加熱して窒素を流通しながら乾燥を行った。十分に乾燥した後、水素を100ml/分で流通し、50℃/時間の速度で250℃まで昇温して、更に2時間、その温度で水素の流通を継続して「パラジウム−銀/活性炭」触媒を調製した。得られた触媒の活性炭あたりのパラジウム含量は0.5重量%、銀の含量は0.1重量%である。得られた触媒を触媒1と呼ぶ。
[触媒調製例2]「パラジウム−レニウム/活性炭」触媒(複合化触媒)の調製。
【0039】
金属重量換算で0.5gの塩化パラジウムと金属重量換算で0.2gの酸化レニウム(Re2O7)を10%塩酸水溶液250gに溶解した後、触媒調製例1と同様に「パラジウム−レニウム/活性炭」触媒を調製した。得られた触媒の活性炭あたりのパラジウム含量は0.5重量%、レニウムの含量は0.2重量%である。得られた触媒を触媒2と呼ぶ。
[触媒調製例3]「パラジウム−金/活性炭」触媒(複合化触媒)の調製。
【0040】
金属重量換算で0.5gの塩化パラジウムと金属重量換算で0.3gのテトラクロロ金(III)酸(HAuCl4)を10%塩酸水溶液250gに溶解した後、触媒調製例1と同様に「パラジウム−金/活性炭」触媒を調製した。得られた触媒の活性炭あたりのパラジウム含量は0.5重量%、金の含量は0.3重量%である。得られた触媒を触媒3と呼ぶ。
【0041】
[触媒調製例4]「パラジウム−銀/活性炭」触媒(複合化触媒)の調製。
【0042】
金属重量換算で0.5gの硝酸パラジウムと金属重量換算で0.3gの硝酸銀を250gの水に溶解した後、触媒調製例1と同様に「パラジウム−銀/活性炭」触媒を調製した。得られた触媒の活性炭あたりのパラジウム含量は0.5重量%、銀の含量は0.3重量%である。得られた触媒を触媒4と呼ぶ。
【0043】
[触媒調製例5]「パラジウム−銀−金/活性炭」触媒(複合化触媒)の調製。
【0044】
金属重量換算で0.5gの硝酸パラジウムと金属重量換算で0.1gの硝酸銀、ならびに金属重量換算で0.1gのテトラクロロ金(III)酸(HAuCl4)を250gの水に溶解した後、触媒調製例1と同様に「パラジウム−銀−金/活性炭」触媒を調製した。得られた触媒の活性炭あたりのパラジウム含量は0.5重量%、銀の含量は0.1重量%、金の含量は0.1重量%である。得られた触媒を触媒5と呼ぶ。
【0045】
[触媒調製例6]「パラジウム/活性炭」触媒の調製。
【0046】
金属重量換算で0.5gの塩化パラジウムを10%塩酸水溶液250gに溶解した後、触媒調製例1と同様に「パラジウム/活性炭」触媒を調製した。得られた触媒の活性炭あたりのパラジウム含量は0.5重量%である。得られた触媒を触媒6と呼ぶ。
【0047】
[触媒調製例7]「銀/活性炭」触媒の調製。
【0048】
金属重量換算で0.5gの硝酸銀を250gの水に溶解した後、触媒調製例1と同様に「銀/活性炭」触媒を調製した。得られた触媒の活性炭あたりの銀の含量は0.5重量%である。得られた触媒を触媒7と呼ぶ。
【0049】
[触媒調製例8]「レニウム/活性炭」触媒の調製。
【0050】
金属重量換算で0.5gの酸化レニウム(Re2O7)を10%塩酸水溶液250gに溶解した後、触媒調製例1と同様に「レニウム/活性炭」触媒を調製した。得られた触媒の活性炭あたりのレニウムの含量は0.5重量%である。得られた触媒を触媒8と呼ぶ。
【0051】
[触媒調製例9]「金/活性炭」触媒の調製。
【0052】
金属重量換算で0.5gのテトラクロロ金(III)酸(HAuCl4)を250gの水に溶解した後、触媒調製例1と同様に「パラジウム−金/活性炭」触媒を調製した。得られた触媒の活性炭あたりの金の含量は0.5重量%である。得られた触媒を触媒9と呼ぶ。
【0053】
[触媒調製例10]「パラジウム/活性炭」触媒と「銀/活性炭」触媒を混合した触媒の調製。
【0054】
調製例6で得られた触媒6と、調製例7で得られた触媒7を、5:1の重量比で混ぜ合わせた。得られた固体を触媒10と呼ぶ。
【0055】
以上のように調製した触媒1〜触媒10について、表1にまとめる。
【0056】
【表1】
【0057】
[実施例1〜6]複合化触媒を使用した1,1,1−トリフルオロアセトンの合成。
【0058】
実施例1〜5の各実験に共通して、以下の操作を行った。ステンレス製管状反応器(直径18mm、高さ500mmの円筒であり、その内部の中央に直径8mm、高さ500mmの保護管(熱電対を差し込むための円筒)が存在している)のうち、保護管内部を除く部分に、触媒1〜触媒5の何れかを充填した(充填量は何れも100ml(50g))。水素ガスを0.1リットル/分の流速で管上部から管下部へ流通させながら、反応器外部を熱媒によって100℃に加熱した(反応器の外部設定温度;100℃)。反応器の内部温度(保護管に差し込んだ熱電対の示す温度)が100℃に安定した後、ハロゲン化トリフルオロアセトンの混合物(ガスクロマトグラフ組成:1−クロロ−3,3,3−トリフルオロアセトン3.8%、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロアセトン84.0%、1,1,1−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロアセトン9.9%、その他の成分2.3%)180gを、0.3g/分の速度で、100℃に設定された気化器に導入した。この気化させた有機物と、水素ガス(0.1リットル/分の流速)とを混合し、この混合気体を反応器に導入し、管上部から管下部へと連続的に流通させた。
【0059】
試料の導入を開始したところ、反応器の内温(保護管に差し込んだ熱電対の温度)が上昇した。試料の入り口付近(管上部)が最も高い温度を示した。熱電対を保護管内を動かすことによって、反応器内の温度の最高値(以下、「最高温度」という)を測定した。この最高温度は連続導入の間、ほぼ一定の値を示した。
【0060】
試料が全て導入されるまで、10時間、流通を継続した。その後、水素ガスの代わりに窒素ガスを同じ速度で1時間流通した。反応器から流出する液体及び気体は0℃の水700g中に導入し捕集した。有機物の回収量は、水分測定(カールフィッシャー法)から算出した水分の重量を、全重量から差し引くことにより求めた。有機成分の組成はガスクロマトグラフ(FID)により求めた。
【0061】
実施例6では反応系中に水を共存させて同様の反応を行った。実施例1〜5に記載のハロゲン化トリフルオロアセトンの混合物(ガスクロマトグラフ組成:1−クロロ−3,3,3−トリフルオロアセトン3.8%、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロアセトン84.0%、1,1,1−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロアセトン9.9%、その他の成分2.3%)90gと水90gとを混合して、ハロゲン化トリフルオロアセトンの水溶液180gを調製した。このハロゲン化トリフルオロアセトン水溶液180gを原料とし、気化器を経て反応器に導入し、触媒1(パラジウム−銀/活性炭触媒)を使用して、実施例1〜5と同一の設備、操作、条件で反応を行った。
【0062】
実施例1〜6に関して得られた結果を次の表2にまとめる。
【0063】
【表2】
【0064】
表2から、10時間の反応ではいずれの複合化触媒系でも、ハロゲン化トリフルオロアセトンは選択性よく1,1,1−トリフルオロアセトンに変換されていることがわかる。これは後に示すパラジウム/活性炭触媒の系(比較例1)と同等である。一方、最高温度は、水を含まない系で120〜145℃(外部温度との差;+20〜+45℃)であり(実施例1、4)、水を含む系で114℃(外部温度との差;+14℃)であり(実施例6)、パラジウム/活性炭触媒系(比較例1、6)に比べると、発熱が大幅に抑制されている。
[比較例1〜6]複合化触媒を使用しない1,1,1−トリフルオロアセトンの合成。
【0065】
比較例1〜5では、触媒6〜触媒10(いずれも通常の遷移金属触媒)を使用して、実施例1〜5に記載のハロゲン化トリフルオロアセトンの混合物(ガスクロマトグラフ組成:1−クロロ−3,3,3−トリフルオロアセトン3.8%、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロアセトン84.0%、1,1,1−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロアセトン9.9%、その他の成分2.3%)を原料とし、実施例1〜5と同一の設備、操作、条件で水素化反応を行った。
【0066】
比較例6は反応系中に水を共存させて反応を行ったものである。触媒としては、触媒6(銀/活性炭触媒)を使用し、実施例6に記載のハロゲン化トリフルオロアセトンの水溶液180gを原料として、実施例6と同様の方法で反応を行った。
【0067】
比較例1〜6に関して得られた結果を表3にまとめる。
【0068】
【表3】
【0069】
表3から、銀/活性炭触媒を使用する場合には、複合化触媒を用いる場合と比べて発熱が大きく、それだけ反応の制御が難しいことを示している(比較例1、6)。また、添加金属だけを活性炭に担持させた触媒では、ほとんど触媒としての活性はないことも確認された(比較例2〜4)。また、パラジウム/活性炭触媒と、銀/活性炭触媒を物理的に混ぜ合わせるだけでは発熱が大きく、複合化触媒を用いた時のような発熱抑制効果が現れていないことが分かる(比較例5)。
【0070】
[実施例7〜9および比較例7]長時間反応を行った場合の触媒の活性の比較。
【0071】
実施例1〜5に記載のハロゲン化トリフルオロアセトン混合物(ガスクロマトグラフ組成:1−クロロ−3,3,3−トリフルオロアセトン3.8%、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロアセトン84.0%、1,1,1−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロアセトン9.9%、その他の成分2.3%)を原料として、上記と同一の反応装置を使用して、水素化分解反応を行った。但しこれらの実験では、ハロゲン化トリフルオロアセトンの供給速度を0.25g/分、水素の供給速度を0.13g/分、反応器外部の設定温度を120℃とし、500時間にわたって、原料の供給(反応)を続けた。実施例7では触媒1(パラジウム−銀/活性炭)、実施例8では触媒2(パラジウム−レニウム/活性炭)、実施例9では触媒3(パラジウム−金/活性炭)を、対する比較例7では触媒6(パラジウム/活性炭)を使用した。
【0072】
反応開始から60時間後、150時間後、300時間後、そして500時間後において反応器から流出される気体および液体の混合物を冷水に採取して、ガスクロマトグラフで有機成分の組成を測定した。
【0073】
これらの実験における、各時間ごとのガスクロマトグラフ測定結果(1,1,1−トリフルオロアセトンの純度)を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
表4から、反応開始から60時間後の段階では各触媒系でそれほど活性の違いは観測されていないが、それ以降、パラジウム/活性炭触媒(比較例7)の活性は大きく低下するのに対し、複合化触媒(実施例7〜9)の活性はほとんど損なわれておらず、触媒寿命が増大していることが認められる。
【0076】
【発明の効果】
本発明は、ハロゲン化トリフルオロアセトンを触媒の存在下、水素化分解して1,1,1−トリフルオロアセトンを合成する技術において、触媒表面の発熱が抑制され、触媒寿命が延長されるという効果を奏する。
Claims (5)
- 固相触媒が、活性炭担体をパラジウム化合物を含む溶液および、銀、レニウムまたは金から選ばれた少なくとも1種類の金属の化合物を含む溶液に接触させた後、還元性ガスで還元処理して調製したものであることを特徴とする、請求項1に記載の1,1,1−トリフルオロアセトンの製造方法。
- 固相触媒が、パラジウム化合物およびその他に、銀、レニウムまたは金から選ばれた少なくとも1種類の金属の化合物を同時に含む溶液に、活性炭担体を接触させた後、還元性ガスで還元処理して調製したものであることを特徴とする、請求項1に記載の1,1,1−トリフルオロアセトンの製造方法。
- 固相触媒に担持された銀、レニウムまたは金から選ばれた少なくとも1種類の金属の担持量が、パラジウム100gあたり、合計1〜100gであることを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の1,1,1−トリフルオロアセトンの製造方法。
- 活性炭担体を硝酸パラジウムを含む溶液と、硝酸銀を含む溶液に接触させるか、活性炭担体を硝酸パラジウムと硝酸銀を同時に含む溶液に接触させた後、還元性ガスにより還元処理することによりなる、同一活性炭担体上に、パラジウムと銀が担持された、請求項1記載の方法に用いる固相触媒の調製方法。
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