JP3995346B2 - 薄板収納搬送容器用ポリカーボネート樹脂 - Google Patents

薄板収納搬送容器用ポリカーボネート樹脂 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスクあるいは集積回路チップへと加工されるウエーハなどを収納あるいは運搬するために使用される薄板収納搬送容器用のポリカーボネート樹脂に関するものである。さらに詳しくは、半導体ウエーハや磁気ディスクの表面汚れとして支障を及ばさない程度まで金属原子および揮発性ガスの発生を抑制した薄板収納搬送容器用のポリカーボネート樹脂に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ウエーハや磁気ディスクなどの表面汚染に敏感な薄板を収納運搬するための容器は、ウエーハ表面を常に正常に保って輸送できることが重要で、合成樹脂、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリアセタール等の汎用樹脂からポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、フッ素系樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等の高機能または超高機能樹脂材料で成形される。その中でもそのバランスのとれた機械物性、成形性、約0.9の比重を生かした軽量性、さらに合成樹脂の中でも大量に生産され価格的に有利な経済性など、さまざまな観点からの総合的なコストパフォーマンスの良さからポリプロピレン樹脂が使用されている(特開平8−250581号公報)。
【0003】
ところが、ポリプロピレンを基本材料とし、各種の添加剤を添加してウエーハ収納搬送容器を成形した場合、この容器から有機物やイオン性不純物が漏出し、半導体ウエーハを汚染してしまうおそれがある。また、ポリプロピレンは表面硬度が比較的低いため、半導体ウエーハを容器から出し入れする際等にこれらが互いに接触して摩擦されると、微粒子が発生して、半導体ウエーハを汚染してしまう恐れがある。
【0004】
また、特定の熱処理をした際の揮発ガスの量と水に溶出するアルカリ金属の量を規定したポリエステル樹脂よりなるシリコンウエーハ容器が開示されている(特開平10−116889号公報)。かかるポリエステル樹脂は、ある程度シリコンウエーハの汚染を防止できるが十分ではなく、また、容器としての強度の面でも十分とは云えない。
【0005】
最近の半導体ウエーハの大口径化と共に容器からのウエーハ表面への汚染に対する要求がより厳しくなり、同時により高強度の材料が求められるようになった。そして、ウエーハだけでなく磁気ディスク収納搬送容器に関しても同様の要求がある。この要求に適した成形材料としてポリカーボネート樹脂あるいはこれを主成分とする樹脂組成物を用いる試みがなされるようになった。
【0006】
これら薄板収納搬送容器用材料の理想は、揮発あるいは漏出の可能性のある不純物成分が材料中に全く存在しないことである。しかしながら、現実には、揮発あるいは漏出の可能性のあるすべての不純物成分を材料からなくすことは技術的に不可能である。重要なのは、シリコンウエーハ等の薄板に影響を与える不純物の種類や量およびその組み合わせを実害のない程度に抑制することが肝要である。さらに、例えば加熱時における揮発分測定の際に検出されるもの中で注意すべき成分は何か、そして、それに関し目的材料として揮発量はどのくらい減らせばよいかを知ることである。
【0007】
しかしながら、“ポリカーボネート樹脂あるいはこれを材料とした成形品から漏出する有機物や無機不純物の種類”と“ウエーハ表面の汚染度”との関係については、明確な知見がなく、成形材料について最適の選択をすることは現在極めて困難な状態にある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、表面汚染に敏感とされる半導体ウエーハや磁気ディスク等の薄板の表面汚染を低減できるポリカーボネート樹脂から成形された薄板収納搬送容器を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意検討の結果、ポリカーボネート樹脂において、粘度平均分子量、特定成分の含有量を規制し、さらに特定の加熱試験における特定成分の揮発量を規制することによって上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、粘度平均分子量が14000〜30000の芳香族ポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂中の塩素原子含有量が10ppm以下であり、炭素数が6〜18であるフェノール化合物の合計含有量が100ppm以下であり、ナトリウム、カリウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、ニッケルおよび鉄原子の含有量の合計が0.7ppm以下であり、且つナトリウムの含有量が0.2ppm未満である芳香族ポリカーボネート樹脂から成形されたことを特徴とする薄板収納搬送容器が提供される。
【0010】
本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法また溶融法で反応させて得られるものである。ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでもビスフェノールAが特に好ましい。
【0011】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステル又はハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート又は二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0012】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を溶液法又は溶融法によって反応させて芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、二価フェノールは単独又は2種以上を使用することができ、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。また芳香族ポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であってもよく、芳香族又は脂肪族、好ましくは炭素数8以上の芳香族又は脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、更に2種以上の芳香族ポリカーボネート樹脂の混合物であってもよい。
【0013】
本発明においては、特に溶液法が好適に用いられ、かかる溶液法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物又はピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間程度である。
【0014】
また、かかる重合反応において、末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノール又は低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式(1)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0015】
【化1】
Figure 0003995346
【0016】
(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜9、好ましくは1〜8のアルキル基を示し、mは1〜5、好ましくは1〜3の整数を示す。)
【0017】
前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールなどが挙げられる。
【0018】
溶融法による反応は、通常二価フェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとジフェニルカーボネートを混合し、好ましくは重合速度を速めるためにアルカリ(土類)金属化合物等の重合触媒を用いて、減圧下通常120〜350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には1mmHg以下にして生成したフェノール類を系外に除去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0019】
本発明のポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量(M)で14,000〜30,000が好ましく、14,500〜25,000がより好ましく、15,000〜23,000がさらに好ましい。かかる粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂は、一定の機械的強度を有し成形時の流動性も良好であり好ましい。分子量が14,000未満の場合は、成形品に強度がでないため実用的な材料が得られず、分子量が30,000を超える場合は、成形流動性が劣るという問題が生じる。さらにこの場合、シリコンウエーハ等の薄板汚染の原因となるフェノール化合物や塩素系有機溶媒が、押出加工中に樹脂中から揮発しにくくなる問題が生じ、それを解消しようと押出温度を上げると、塩素系有機溶媒は低減されるが、樹脂の分解が進みフェノール化合物量が増える結果となる。
【0020】
本発明でいう粘度平均分子量Mは塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηSP)を次式に挿入して求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
【0021】
本発明におけるポリカーボネート樹脂中の塩素原子含有量は、ポリカーボネート樹脂に対して10ppm以下であり、特に好ましいのは8ppm以下である。塩素原子は、製造中に使用した前記の塩素系有機溶媒がポリカーボネート樹脂中に残留したものがほとんどであり、これに加えて、ポリマー鎖に残った微量の未反応のクロロホーメート基に由来するものである。残存する塩素系有機溶媒が多くなると樹脂から漏出してウエーハなどの薄板汚染につながり、ポリマー鎖に残った未反応のクロロホーメート基はそれ自体ポリマーより漏出することはないが、その量が多くなると成形加工においてポリマーの分解を微妙に促進して低分子量分つまり揮発成分をふやし結果的に薄板汚染につながる。
【0022】
本発明において、炭素数が6〜18であるフェノール化合物とは、ポリカーボネート樹脂の製造の際に用いられる末端封鎖用の1価フェノール化合物、原料の2価フェノールおよび添加剤を構成するフェノール化合物である。
【0023】
それらは、未反応フェノール化合物が残留したものあるいはポリカーボネート樹脂や添加剤の分解によるものである。炭素数が18を超えるフェノール化合物は揮発性が低くなるため、炭素数が18を超えるフェノール化合物の含有量だけがふえても本発明の達成に関する影響は小さい。
【0024】
本発明における炭素数が6〜18であるフェノール化合物とは、具体的には前述した原料の2価フェノール、殊にビスフェノ−ルAや、前述した末端停止剤として使用される1価のフェノールであるフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノール等が挙げられる。
【0025】
本発明において炭素数が6〜18であるフェノール化合物の合計含有量はポリカーボネート樹脂に対して100ppm以下であり、好ましくは70ppm以下である。含有量が100ppmを超えると、揮発するフェノール化合物の量も多くなり、ウエーハ等の薄板を汚染することになる。
【0026】
本発明の薄板とは、コンパクトディスク、ハードディスクやMOに代表される磁気ディスクおよび集積回路チップへと加工されるウエーハ等、表面汚染に敏感な薄板を意味する。
【0027】
本発明のポリカーボネート樹脂において、樹脂中のカリウム、ナトリウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、ニッケルおよび鉄原子の含有量の合計は、ポリカーボネート樹脂に対して0.7ppm以下であることが好ましい。0.7ppmを超えるとかかる金属により成形加工において樹脂の分解が促進され易くなり、結果として薄板表面を汚染する揮発分を生じやすくなる。
【0028】
本発明のポリカーボネート樹脂において、これを150℃で1時間加熱した場合、揮発する塩素系有機溶媒量の合計量は、測定に使用したポリカーボネート樹脂に対して0.05ppm以下であり、且つ揮発する炭素数が6〜18であるフェノール化合物の合計量が、測定に使用したポリカーボネート樹脂に対して0.2ppm以下であることが好ましい。揮発する塩素系有機溶媒量の合計量が0.05ppmを超えるか、あるいは揮発する炭素数が6〜18であるフェノール化合物の合計量が0.2ppmを超えるポリカーボネート樹脂を使用すると、ウエーハ等の薄板を汚染することとなる。
【0029】
本発明におけるポリカーボネート樹脂中の塩素原子含有量は、燃焼塩素法により測定される。また、ポリカーボネート樹脂中のフェノール含有量は、高速液体クロマトグラフィーにより測定される。また、ポリカーボネート樹脂中のカリウム、ナトリウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、ニッケルおよび鉄原子の含有量は、加熱灰化処理後に誘導結合プラズマ・質量分析法(ICP−MS法)により測定される。
【0030】
本発明のポリカーボネート樹脂を150℃で1時間加熱した場合において揮発する塩素系有機溶媒の量、揮発する炭素数が6〜18であるフェノール化合物の量は、ヘッドスペース・ガスクロマトグラフィー法で測定される。
【0031】
本発明のポリカーボネート樹脂が発明の目的とするウエーハ等の薄板収納搬送容器用に適合した材料であるか確認するために、薄板表面のわずかの汚染状況を測定する必要がある。その測定方法として、容器に長時間放置した際に、ウエーハ表面と水との接触角が放置前と放置後でどのくらい変わったっかを判定する方法がある。ミクロのレベルでわずかに表面が汚染されただけもこの接触角は大きく変化することから、簡便な評価法として用いることができる。
【0032】
本発明において、ポリカーボネート樹脂中に残存する塩素系有機溶媒や炭素数6〜18のフェノール化合物を少なくする方法としては、例えば、ポリカーボネート樹脂の乾燥を強化する方法、表面積を大きくしたポリカーボネート樹脂を乾燥する方法、そして、貧溶媒でポリカーボネート樹脂粉粒体の洗浄を行なう方法などが挙げられる。
【0033】
ポリカーボネート樹脂の乾燥を強化する方法としては、具体的には、乾燥温度を上げることが有効である。ただし、ポリカーボネート樹脂の軟化点以上の温度に設定するのは好ましくなく、通常60〜130℃で乾燥が行われる。また、乾燥時間を延長したり、乾燥中のポリカーボネート樹脂の攪拌効率を上げる方法がある。
【0034】
ポリカーボネート樹脂の表面積を大きくするには、具体的には、ポリカーボネート樹脂の粒径を小さくしたパウダー形状にすることが好ましく、そのためにはポリカーボネート樹脂の粉砕を強化する等の方法が用いられる。特に乾いた樹脂を粉砕するには粒子が硬すぎて効率が悪いため、造粒後の有機溶媒や水を含んだスラリー状態のものを粉砕することが好ましい。また、多孔質パウダーとすることも有効であり、例えば、良溶媒に溶かしたポリカーボネート樹脂溶液を、その良溶媒の沸点よりかなり高い温度に設定してある貧溶媒へ滴下しながら攪拌して造粒する方法がある。
【0035】
貧溶媒でポリカーボネート樹脂、殊に樹脂パウダーの洗浄を行なう方法を採用することにより、ポリカーボネート樹脂中のフェノール化合物が貧溶媒へ抽出される。さらに、この方法はかかる貧溶媒がポリカーボネート樹脂中の塩素系有機溶媒と置換され塩素系有機溶媒を少なくする効果もある。貧溶媒としては、アセトン、メタノール、ヘプタン等が挙げられ、なかでもアセトンが好ましく用いられる。
【0036】
また、金属原子を少なくする方法としては、良溶媒に溶かしたポリカーボネート樹脂溶液を純水と混合、分液を繰り返し洗浄する方法やフィルターでろ過する方法等が用いられる。
【0037】
本発明においては、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤などの各種添加剤は、使用しないかあるいは使用量を出来るだけ少なくすることが好ましい。
【0038】
殊に、一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステル、具体的にはステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等に代表される離型剤は、特にシリコンウエーハの表面を汚染するため配合しないことが好ましい。
【0039】
また、熱安定剤は、芳香族ポリカーボネート樹脂の成形時における分子量の低下や色相の悪化を防止するため樹脂の劣化を防ぐため少量配合してもよく、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して50ppm以下が好ましく、10〜50ppmがより好ましく、10〜40ppmがさらに好ましい配合量である。かかる範囲内では、熱安定剤の揮発や熱安定剤の変質物の揮発により、殊にシリコンウエーハの表面を汚染するおそれがなく好ましい。
【0040】
かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトおよびベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。これらの熱安定剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。
【0041】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、他の樹脂やエラストマーを本発明の目的が損なわれない範囲で、すなわち極めて少割合であれば配合することもできる。
【0042】
かかる他の樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0043】
また、エラストマーとしては、例えばイソブチレン/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、シリコーンゴム、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、コアシェル型のエラストマーであるMBS(メタクリル酸メチル/スチレン/ブタジエン)ゴム、MAS(メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/スチレン)ゴム等が挙げられる。
【0044】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂においてこれらをブレンドするには、任意の方法が採用される。例えばタンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法が適宜用いられる。こうして得られる芳香族ポリカーボネート樹脂は、そのまま又は溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で成形品にすることができる。なお、芳香族ポリカーボネート樹脂への配合成分の分散を高めて安定した離型性や各物性を得るためには、溶融押出において二軸押出機を使用するのが好ましい。
【0045】
【実施例】
以下、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。なお評価は下記の方法に従った。
【0046】
(1)フェノール化合物の含有量
ペレットを塩化メチレンに溶かし、アセトニトリルを加えてポリマーを析出させ、溶液部分について液体クロマトグラフィ測定により求めた。
【0047】
(2)塩素原子含有量
三菱化学(株)製の塩素イオウ分析装置TSX10型を用いて燃焼塩素法により測定した。具体的には、サンプルを電気炉(920℃)で加熱し、全量気化させ、気化したガスを硫酸に通して脱水後、塩素用の電解液(酢酸ナトリウム)に吸着させる。吸着により生じた電位差を電位滴定により元の電位へ戻す。元の電位に戻すのに必要なエネルギーによりCl量を算出した。
【0048】
(3)Na、K、Zn、Al、Ti、Ni、Feの各金属量
加熱灰化処理後、誘導結合プラズマ・質量分析法(ICP−MS法)による測定を行なった。
【0049】
(4)ポリカーボネート樹脂を150℃で1時間加熱した場合の揮発する塩素系有機溶媒量および揮発するフェノール化合物の量
ヘッドスペース法(150℃、1hr)により、ガスクロマトグラフィーを用いて求めた。
【0050】
(5)透明性
ASTM D1003に準じて、厚さ3mmの成形品を用い全光線透過率(%)を測定した。
【0051】
(6)耐衝撃性
ASTM D256に準じて、厚さ3.2mm(ノッチ付)の成形品を用いて衝撃強度(J/m)を測定した。
【0052】
(7)耐熱性
ASTM D648に準じて、試験片を作成し、これを用いて1.82MPaの荷重により荷重たわみ温度(℃)を測定した。
【0053】
[製造例1]
温度計、撹拌機及び還流冷却器付き反応器にイオン交換水2194部、48%水酸化ナトリウム水溶液402部を仕込み、これに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン575部(2.52モル)およびハイドロサルファイト1.2部を溶解した後、塩化メチレン1810部を加え、撹拌下15〜25℃でホスゲン283部を40分要して吹込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液72部およびp−tert−ブチルフェノール19.6部を加え、撹拌を始め、乳化後トリエチルアミン0.6部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を分液した。この塩化メチレン溶液にトリス(ノニルフェニル)ホスファイトをポリカーボネート樹脂に対して25ppmとなる量添加した。
【0054】
得られたポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を60℃の温水(ニーダー内部空間容量の10%程度を占める量)が仕込まれたニーダーに攪拌下に投入し、スチームを吹き込みながら塩化メチレンを蒸発除去させてポリカーボネート樹脂の造粒を行なった。1時間かけてかかる塩化メチレン溶液を投入し、投入終了後もそのまま攪拌を10分間継続して行い、ポリカーボネート粉粒体の水スラリーを得た。得られた水スラリーは、ポリカーボネート粉粒体の量が水スラリーの量に対して25重量%であり、塩化メチレン量が水スラリーの量に対して25重量%であった。かかる水スラリーを粉砕機に通してスラリー中のポリカーボネート粉粒体を粉砕し、さらに遠心脱水を行ないポリカーボネート粉体を得た。このポリカーボネート粉体を乾燥機に入れて120℃で7時間乾燥し、次いで280℃で溶融押出を行ない、粘度平均分子量18,500のポリカーボネート樹脂ペレットを得た。このペレット中に残存するp−tert−ブチルフェノールの量は30ppmであり、ビスフェノールAの量は19ppmであり、塩素原子含有量は7ppmであり、金属としてFeの量が0.11ppmであった。
【0055】
[製造例2]
製造例1において、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液をニーダーへ投入終了後、そのまま攪拌を継続した時間が5分間であることおよび乾燥機での乾燥時間が4時間であること以外は製造例1と同様に行ない、粘度平均分子量18,700のポリカーボネート樹脂ペレットを得た。このペレット中に残存するp−tert−ブチルフェノールの量は72ppmであり、ビスフェノールAの量は53ppmであり、塩素原子含有量は40ppmであり、金属としてFeの量が0.11ppmであった。
【0056】
[製造例3]
製造例1において、p−tert−ブチルフェノールの添加量を12.4部に代えたこと以外は製造例1と同様に行ない、粘度平均分子量23,400のペレットを得た。このペレット中に残存するp−tert−ブチルフェノールの量は30ppmであり、ビスフェノールAの量は20ppmであり、塩素原子含有量は60ppmであり、金属としてFeの量が0.10ppmであった。
【0057】
[実施例1]
製造例1で得られたペレットを使用して、半導体ウエーハ用収納搬送容器を成形した。この半導体ウエーハ用収納搬送容器に所定枚数の半導体ウエーハを挿入し、密閉容器内で1週間常温保持した後、半導体ウエーハをとりだし表面5カ所で、水とウエーハ表面との接触角を測定した。測定した接触角の平均、および挿入前ブランクの接触角の平均を表1に示した。また、製造例1で得られたペレットを150℃、1時間処理した時の揮発量を表1に示した。
【0058】
[比較例1]
製造例2で得られたペレットを使用して、半導体ウエーハ用収納搬送容器を成形した。実施例1と同様に処理し、測定した接触角の平均を表1に示した。また、製造例2で得られたペレットを150℃、1時間処理した時の揮発量を表1に示した。
【0059】
[比較例2]
製造例3で得られたペレットを使用して、半導体ウエーハ用収納搬送容器を成形した。実施例1と同様に処理し、測定した接触角の平均を表1に示した。また、製造例3で得られたペレットを150℃、1時間処理した時の揮発量を表1に示した。
【0060】
[比較例3および比較例4]
表1記載のフェノール化合物、塩素原子、金属成分を含有するペレットを使用して、半導体ウエーハ用収納搬送容器を成形した。実施例1と同様に処理し、測定した接触角の平均を表1に示した。また、このペレットを150℃、1時間処理した時の揮発量を表1に示した。
【0061】
【表1】
Figure 0003995346
【0062】
[実施例2および比較例5、6]
製造例1で得られたポリカーボネート樹脂ペレット、ポリブチレンテレフタレート樹脂(帝人(株)製TRB−H)およびポリプロピレン樹脂(三井東圧化学(株)製ノーブレンBJH−M)を使用して、それぞれ透明性、耐衝撃性および耐熱性を測定した。その結果を表2に示した。ポリカーボネート樹脂は、他の樹脂に比べ透明性、耐衝撃性および耐熱性に優れ、したがってポリカーボネート樹脂製の容器は透明で内容物の確認が容易であり、繰り返しの使用に耐えうる良好な効果をもたらす。
【0063】
【表2】
Figure 0003995346
【0064】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネート樹脂は、表面汚染に敏感とされる半導体ウエーハや磁気ディスク等の薄板の表面汚染を低減できる薄板収納搬送容器の材料として好適に使用され、その奏する工業的効果は格別のものがある。

Claims (2)

  1. 粘度平均分子量が14000〜30000の芳香族ポリカーボネート樹脂であって、該ポリカーボネート樹脂中の塩素原子含有量が10ppm以下であり、炭素数が6〜18であるフェノール化合物の合計含有量が100ppm以下であり、ナトリウム、カリウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、ニッケルおよび鉄原子の含有量の合計が0.7ppm以下であり、且つナトリウムの含有量が0.2ppm未満である芳香族ポリカーボネート樹脂から成形されたことを特徴とする薄板収納搬送容器
  2. 薄板収納搬送容器が、半導体ウエーハ用収納搬送容器である請求項1記載の薄板収納搬送容器
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