JP3994078B2 - 非水電解液電池活物質用リチウム複合ニッケル−コバルト酸化物の製造方法 - Google Patents
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Description
特にLiNiO2は、LiCoO2に比べ高エネルギー密度が期待され、各方面で開発が進められている。しかし、LiNiO2は、充電時の分極が大きく、Liが十分取り出せないうちに電解液の酸化分解電圧に達してしまうため、期待される大きい容量が得られなかった。
このため、Co置換量(z値)が大きくなるほど結晶相がより安定化し、放電容量、サイクル特性ともに改善されると考えられる。
しかし、実際には特許文献3や特許文献4で報告されているようなコバルト、ニッケルの炭酸塩、水酸化物、酸化物等のそれぞれの化合物を混合することによって合成されたリチウム複合ニッケル−コバルト酸化物は、Co置換量(z値)が大きくなると(z≧0.1)実際にはニッケルとコバルトが均一に分散されておらず、部分的にLiNiO2とLiCoO2の混合物になっていることが明らかになった。
また、特許文献5のようにニッケルイオンとコバルトイオンを炭酸塩として共沈させた場合、ニッケルとコバルトが均一に分散するため良好なサイクル特性が確保された。しかし、この場合、塩基性炭酸塩として析出するため、実際には不定含量のNi(OH)2を含む複塩NiCO3・xNi(OH)2となっており、リチウムとの合成過程が均一でない。また、炭酸塩では結晶性が低く、放電容量が小さいという問題があった。
LiNiO2は、通常、原材料としてニッケル水酸化物とリチウム塩、例えば、硝酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウムを混合し、熱処理を行うことで合成される。これらの反応過程は、原材料双方の熱分解の後、ニッケル化合物にリチウムが侵入する形で進行する。本発明者らは、原料を混合し、温度上昇させながらX線構造を測定するHT−XRD法を用いて検討を行った結果、特にニッケル水酸化物を原料とした場合に、原料−中間生成物−反応生成物の間に結晶学的な相関関係が得られることが明らかとなった。このような現象は、トポタキシーと呼ばれ、トポ反応では結晶の形態が維持されたままで反応が進行する。
従って、例えばNi−Ni原子間距離が2.878オングストロームであるLiNiO2を合成するためには、Ni−Ni原子間距離が4.609オングストロームである炭酸ニッケルを用いるよりも、Ni−Ni原子間距離が3.126オングストロームであるニッケル水酸化物を用いる方が望ましいといえる。
Niの一部をCoで置換したニッケル−コバルト水酸化物についても、結晶構造が異なると、合成過程において中間的に生成する中間生成物の結晶構造(この場合の生成過程である500〜600℃付近での結晶構造)も異なることが明らかとなり、更にこれが電池活物質の放電容量と相関があることが見いだされた。
通常、LixNiyCozO2(0.90≦x≦1.05、0.7≦y≦0.9、y+z=1)は、650〜850℃で結晶化を進行させて活物質として取り出すため、最終的には非常に結晶化が進行した状態となり、中間生成物の時に現れた結晶構造の違いはほとんど区別できなくなってしまう。このため単にLixNiyCozO2(0.90≦x≦1.05、0.7≦y≦0.9、y+z=1)の結晶構造を調べるだけでは活物質の放電容量が小さい原因を明らかにすることができなかった。
このような、ニッケルとコバルトを水酸化物として共沈させる方法は、ニッケル−カドミウム蓄電池用正極に使用される水酸化ニッケルの製法として報告がなされている。例えば、特開昭63−16556号公報、特開昭63−211563号公報、特開昭64−42330号公報では、水酸化ニッケルの製造方法としてpH、温度を調整した槽内にニッケル塩水溶液、コバルト塩水溶液およびか性アルカリ水溶液をその濃度、流量を制御しながら連続的に供給、採取する方法が報告されている。
しかし、これらの発明におけるCoの添加は、いずれも水溶液系のニッケル−カドミウム電池もしくはニッケル−水素吸蔵合金電池等のアルカリ蓄電池の特性改良が目的であり、以下の理由によって行われている。
(2)水酸化ニッケル表面における水素のイオン化速度や、水酸化ニッケル中のプロトン伝導の促進による利用率、高率充放電効率の向上。(例えばI.Matsumoto,M.Ikeyama,T.Iwaki,Y.Umeo and Y.Ogawa,Denkikagaku,54,159〜164 (1986)等)
また、ニッケル水酸化物のX線構造についても例えば、特開平4−328257号公報、特開平5−41213号公報に報告されているが、基本的にはCoを含まないか含んでいても共晶しないCoを添加した例であり、これらの発明はいずれもアルカリ電池におけるプロトンの移動度の向上を目的として発明されたものであって、本発明の目的とは本質的に異なるものである。
当然のことながらCoは、活物質の結晶マトリックス中に固溶しており、活物質として作用するため、前述のアルカリ蓄電池の特性改善とは全く異なるものである。
なお、Co置換量(z値)が0.3を越えると、結晶成長が困難となり、多結晶のNi y Co z (OH)2が生成してしまう。このためCo置換量は0.1≦z≦0.3であることが望ましい。
また、Co添加方法として合成時に酸化コバルトや炭酸コバルト、水酸化コバルトを添加した場合、共沈法で得られるような原子レベルでの固溶は実現できず、部分的にLiNiO2やLiCoO2として存在することになるため、容量低下の原因となる。
ただし、Ni y Co z (OH)2(y+z=1)で表されるニッケル−コバルト水酸化物のCoの置換量(z値)が0.1以上と大きいものでは、結晶性を大きくするのは困難であり、(101)面のピークの半価幅が0.3゜以下のものを製造しようとすると、その生産性が著しく低下する。
このため電池用活物質の原料としてのニッケル−コバルト水酸化物は、本発明の様にX線回折における(101)面のピークの半価幅が0.3〜1.0゜の範囲であることが望ましい。
このような本発明のニッケル−コバルト水酸化物を原料として用いた場合、結晶性が大きく、結晶粒界の非常に少ないLixNiyCozO2の合成が可能となる。このような構造を持つNi y Co z (OH)2(0.7≦y≦0.9、y+z=1)を合成の原材料としたLixNiyCozO2(0.90≦x≦1.05、0.7≦y≦0.9、y+z=1)を用いて二次電池を構成し、充放電を行った場合、Coを添加することによって結晶の安定性が向上し、充放電に伴う結晶相の転移がなくなると共に、結晶のLi層におけるNi原子の混入を激減させることができる。その結果、電池活物質として大きい放電容量を実現することができる。
以下、図面とともに本発明を具体的な実施例に沿って説明する。
負極板6は、黒鉛粉100重量部に、フッ素樹脂系結着剤10重量部を混合し、カルボキシメチルセルロース水溶液に懸濁させてペースト状にした。そして、このペーストを厚さ0.015mmの銅箔の表面に塗着し、乾燥した後、厚さ0.2mmに圧延し、幅37mm、長さ280mmの大きさに切り出して負極板とした。
電解液には、炭酸エチレンと炭酸ジエチルの等容積混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム1モル/リットル(L)の割合で溶解した溶液を用いて極板群4に注入した後、電池を密封口し、試験電池とした。
コバルト水酸化物を製造する析出槽として、容積50Lのタンクを用いた。ニッケル塩水溶液として、金属ニッケル量が40〜60g/L相当の硫酸ニッケル水溶液を用い、これに、コバルトがニッケルに対しモル比で5、10、20、30、40%になるように硫酸コバルトを添加、溶解して硫酸ニッケル−コバルト混合水溶液を調製した。また、か性アルカリ水溶液として、25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いた。
なお、X線回折の測定は、乾燥後の試料をX線回折分析装置(株式会社リガクのRINT2000型)にCuKα管球およびグラファイト製モノクロメーターを使用し、管電圧40V、管電流150A、発散スリット0.5deg、散乱スリット0.5deg、受光スリット0.15mm、走査速度1.00deg/min、サンプリングピッチ0.010degの条件で測定を行った。
半価幅の算出は、図3に示したように、ピークの最大強度の1/2の点を通る直線の幅に対応する2θ値で算出した。
また、ピークの積分強度は、回折図のバックグラウンドをSonneveldとVisserの方法によって除去した後、ピークの面積を算出することによって算出した(Sonneveld,E.J. and Visser, J.W. J.Appl. Cryst.8, 1(1975).参照)。
また、原子吸光分析によりA〜Fのニッケル−コバルト水酸化物中に含まれるCo量を分析した。
以上の条件で作製したニッケル−コバルト水酸化物の物性を表1に示す。
上記の方法で作製したニッケル−コバルト水酸化物A〜Fを、水酸化リチウムと(ニッケル+コバルト)が原子比で1.05対1になるように混合し、酸化雰囲気下において700℃で10時間焼成して活物質LixNiyCozO2(y+z=1)を合成した。ニッケル−コバルト水酸化物A〜Fから得られた活物質をそれぞれ活物質A〜Fとする。
合成されたLixNiyCozO2は、比較的ほぐれやすい凝集塊状物として得られたので、乳鉢を用いて粉砕した。
まず、正極活物質であるLixNiyCozO2(y+z=1)の粉末100重量部に、アセチレンブラック3重量部、およびフッ素樹脂系結着剤5重量部を混合し、この混合物を前記結着剤の溶媒N−メチル−2−ピロリドンに懸濁させてペースト状にした。このペーストを厚さ0.020mmのアルミ箔の両面に塗着し、乾燥した後、厚み0.130mm、幅35mm、長さ270mmの正極板を作製した。
そして正極板と負極板を、セパレータを介して渦巻き状に巻回し、直径13.8mm、高さ50mmの電池ケース内に収納した。
電解液には、炭酸エチレンと炭酸ジエチルの等容積混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム1モル/Lの割合で溶解した溶液を用い、極板群4に注入した後、電池を密封口し、試験電池とした。上記の活物質A〜Fを用いた電池をそれぞれ電池A〜Fとする。
20℃の環境下で120mAの電流で4.2Vまで充電した後、1時間休止し、その後同様に120mAの電流で3Vまで放電した。この方法で充放電を3回繰り返し、3回目の放電容量を電池内に含有されるリチウム複合ニッケル−コバルト酸化物の重量で割ることにより活物質の比容量(mAh/g)を算出した。表2に、電池A〜Fの活物質の比容量を示す。
以上の結果より、リチウム複合ニッケル−コバルト酸化物の原料としてのニッケル−コバルト水酸化物は、Ni y Co z (OH)2(0.7≦y≦0.9、y+z=1)で表されるニッケル−コバルト水酸化物を用いた場合に、放電容量の大きい非水電解液二次電池が得られる。
(101)面ピークの半価幅が1.0゜よりも大きく、ピークの積分強度比(101)/(001)が0.9よりも小さいものを原料とした活物質を用いた電池Gは、出発原材料であるニッケル−コバルト水酸化物の結晶性が小さいため、反応過程で生成する中間生成物の結晶性も同様に低く、結果として得られた活物質の比容量も160mAh/g以下と小さくなった。
(101)面のピークの半価幅が0.3よりも小さい電池Kは、放電比容量が168mAh/gと活物質としては十分な性能を示した。しかし、このように半価幅を小さくするためには、ニッケル−コバルト水酸化物の生成速度をかなり小さくすることが必要となるため、工業的には不向きであった。よって半価幅が0.3以上であることが望ましい。
同様にX線回折における(101)面のピークと(001)面のピークの積分強度比(101)/(001)が0.9〜1.2の範囲であることが望ましい。
また、上記実施例においては、円筒型の電池を用いて評価したが、角型やコイン型など電池形状が異なっても同様の効果が得られる。
さらに、上記実施例において、負極には炭素質材料を用いたが、本発明における効果は正極板において作用するため、リチウム金属や、リチウム合金、Fe2O3、WO2、WO3等の酸化物など、他の負極材料を用いても同様の効果が得られる。
さらに、上記実施例では、炭酸エチレンと炭酸ジエチルの混合溶媒を用いたが、他の非水溶媒例えば、プロピレンカーボネートなどの環状エステル、テトラヒドロフランなどの環状エーテル、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル、プロピオン酸メチルなどの鎖状エステルなどの非水溶媒や、これらの多元系混合溶媒を用いても同様の効果が得られる。
2 封口板
3 絶縁パッキング
4 極板群
5 正極板
5a 正極リード
6 負極板
6a 負極リード
7 セパレータ
8、9 絶縁リング
Claims (4)
- 硫酸ニッケルと硫酸コバルトから合成され、Ni y Co z (OH)2(0.7≦y≦0.9、y+z=1)で表されるニッケル−コバルト水酸化物と、リチウム塩とから、LixNiyCozO2(0.90≦x≦1.05、0.7≦y≦0.9、y+z=1)で表される非水電解液電池活物質用リチウム複合ニッケル−コバルト酸化物を合成する製造方法であって、
CuKα線を線源とするX線回折における(101)面のピークの半価幅が1.0°以下であるニッケル−コバルト水酸化物と、リチウム塩とを混合、焼成する工程を具備するリチウム複合ニッケル−コバルト酸化物の製造方法。 - 硫酸ニッケルと硫酸コバルトから合成され、Ni y Co z (OH)2(0.7≦y≦0.9、y+z=1)で表されるニッケル−コバルト水酸化物と、リチウム塩とから、LixNiyCozO2(0.90≦x≦1.05、0.7≦y≦0.9、y+z=1)で表される非水電解液電池活物質用リチウム複合ニッケル−コバルト酸化物を合成する製造方法であって、
CuKα線を線源とするX線回折における(101)面のピークの半価幅が0.3〜1.0°の範囲であるニッケル−コバルト水酸化物と、リチウム塩とを混合、焼成する工程を具備するリチウム複合ニッケル−コバルト酸化物の製造方法。 - 硫酸ニッケルと硫酸コバルトから合成され、Ni y Co z (OH)2(0.7≦y≦0.9、y+z=1)で表されるニッケル−コバルト水酸化物と、リチウム塩とから、LixNiyCozO2(0.90≦x≦1.05、0.7≦y≦0.9、y+z=1)で表される非水電解液電池活物質用リチウム複合ニッケル−コバルト酸化物を合成する製造方法であって、
CuKα線を線源とするX線回折における(101)面のピークの半価幅が1.0°以下であり、CuKα線を線源とするX線回折における(101)面のピークと(001)面のピークの積分強度比(101)/(001)が0.9〜1.2の範囲にあるニッケル−コバルト水酸化物と、リチウム塩とを混合、焼成する工程を具備するリチウム複合ニッケル−コバルト酸化物の製造方法。 - 硫酸ニッケルと硫酸コバルトから合成され、Ni y Co z (OH)2(0.7≦y≦0.9、y+z=1)で表されるニッケル−コバルト水酸化物と、リチウム塩とから、LixNiyCozO2(0.90≦x≦1.05、0.7≦y≦0.9、y+z=1)で表されるリチウム複合ニッケル−コバルト酸化物を合成する製造方法であって、
CuKα線を線源とするX線回折における(101)面のピークの半価幅が0.3〜1.0°の範囲であり、CuKα線を線源とするX線回折における(101)面のピークと(001)面のピークの積分強度比(101)/(001)が0.9〜1.2の範囲にあるニッケル−コバルト水酸化物と、リチウム塩とを混合、焼成する工程を具備するリチウム複合ニッケル−コバルト酸化物の製造方法。
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