JP3993401B2 - 耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度鋼板 - Google Patents

耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度鋼板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度鋼板に関し、詳細には、加工性等の特性を経時劣化させることのない優れた耐時効性を有し、かつ塗装焼付を施して高強度を確保することのできる優れた焼付硬化性(以下、BH[Bake Harding]性ということがある)を発揮する高強度鋼板に関するものである。
【0002】
本発明は、自動車、電機、機械等の産業分野で広く利用されるものであるが、以下では代表的な用途例として、自動車の車体に使用する場合を中心に説明を進める。
【0003】
【従来の技術】
近年、自動車用鋼板には、燃費向上の観点から薄肉化が要求され、かつ衝突時の安全性向上から、一層の高強度化が要求されている。また、成形加工時には、プレス加工に代表されるような、優れた成形加工性を発揮しうることが求められている。しかしながら強度の向上は、前記成形加工性の劣化を引き起こし易いことから、複雑な加工が要求される自動車鋼板の場合、鋼板の特性として、成形加工時には比較的軟質で成形し易く、成形加工後の塗装焼付では焼付硬化量が大きく高強度を確保できることが求められている。
【0004】
この様な事情から、前記焼付硬化性の向上を図った鋼板が従来より提案されており、準IF(Interstitial Free)型BH鋼では、30ppm程度の固溶炭素により転位を固着して、焼付硬化性を確保している。しかしながら上記準IF型BH鋼では、もともとの固溶C量が少ないこともあって、焼付硬化を行って得られる強度は、せいぜい440MPaと低強度である。
【0005】
また、DP鋼(Dual Phase Steel)では、マルテンサイト変態により母相フェライト中に転位が導入され、そのままではYP値は低いが、塗装焼付により、上記転位および加工で導入された転位が固着されて、硬化によりYPを上昇させたものがある。
【0006】
更に、金属組織中に残留オーステナイト(以下、残留γと示すことがある)を数%〜数十%存在させて、塑性加工による強靭化を図った、いわゆるTRIP鋼においても、焼付硬化性の向上を図ったものがある。例えば特開2001−11565号では、乗用車の衝突安全性および車体の軽量化を同時に達成することを課題に、衝突吸収エネルギーを高めるべく、焼付硬化量を上昇させた技術が開示されている。
【0007】
尚、この様なTRIP鋼にて焼付硬化性を高めることのできるメカニズムとして、一般的には、前記DP鋼と同様に、もともとフェライトにあったCが加工転位に固着すると考えられている。しかしながらこの考え方では、50MPa以上もの高い焼付硬化量を確保することについて説明がつかない。焼付硬化前の塑性加工により残留γがマルテンサイトに変態し、該マルテンサイト中のCが放出され、塗装焼付時に該Cが、加工により導入されたフェライト中の転位に固着して、硬化が生ずるものと考えられる。
【0008】
強度−加工性バランスに優れたTRIP鋼において、この様に塗装焼付時の焼付硬化性を高めたものが提案されているが、焼付硬化性を高めた鋼板では、YPが上昇したり伸びが低下するなど特性の経時劣化、即ち、時効の発生が問題となる。その発生機構として、製造時のスキンパスや製造時に生ずるマルテンサイト変態等で転位が導入され、一方、TRIP鋼には固溶炭素を多量に含有する残留γが存在することから、何らかの原因で残留γが分解し、残留γを構成していたCが拡散移動して転位に固着し、その結果、YPが上昇したり伸びが低下するといった特性劣化が生じるものと考えられる。従って、鋼板製造直後には優れた成形加工性を発揮するものであっても、その後に上記の様な時効が進み、ユーザー側で該鋼板を取り扱う時点では特性が劣化してしまっているといった問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に着目してなされたものであり、その目的は、優れた耐時効性及び焼付硬化性を兼ね備えた高強度鋼板を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し得た本発明の耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度鋼板とは、質量%で、C:0.06%以上0.3%以下、Si:0.8%以上2%以下、Mn:0.5%以上3%以下、sol.Al:0.01%以下(0%を含む)、0.001%+(7/13)[sol.Al]<N<0.02%([sol.Al]はsol.Alの含有量(質量%)を示す)、P:0.15%以下(0%を含まない)、S:0.02%以下(0%を含む)を満たし、且つ、占積率で、フェライト:70%以上、残留オーステナイト:3〜30%を含有し、更に、パーライト、ベイナイト、およびマルテンサイトよりなる群から選択される1種以上を含有してもよいところに要旨を有するものである。
【0011】
更に、本発明において、質量%で、▲1▼Crおよび/またはMoを合計で1%以下(0%を含まない)を含有するもの;▲2▼Ni:0.5%以下(0%を含まない)、および/またはCu:0.5%以下(0%を含まない)を含有するもの;▲3▼Ti:0.1%以下(0%を含まない)、Nb:0.1%以下(0%を含まない)、およびV:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも一種を含有するもの;▲4▼B:0.003%以下(0%を含まない)を含有するもの;▲5▼Ca:0.003%以下(0%を含まない)、および/またはREM:0.003%以下(0%を含まない)を含有するものは、いずれも本発明の好ましい態様である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前述した様な状況の下で、時効を発生させることなく良好な加工性を維持することができ、かつ塗装焼付けを行って高強度を確保することのできる焼付硬化性に優れた高強度鋼板の実現を目指し、鋭意研究を進めた。その結果、固溶Nを残留γ中に存在させることによって、良好な強度−加工性バランスを得るために確保した残留γの分解を有効に抑制することができ、製造時において導入された転位への固溶Cの固着、即ち、時効を有効に抑制できることを突き止めた。そして、該固溶Nの定量的作用効果について更に追求を重ねた結果、上記本発明に想到した。
【0013】
まず、本発明の鋼板にて、残留γを安定化すべく固溶Nを確保し、定量的作用効果の検討を行ったことについて説明する。尚、以下の化学成分の単位はすべて質量%である。
【0014】
sol.Al(酸可溶性Al):0.01%以下(0%を含む)
0.001%+( 7 13 [sol.Al ]<N<0.02%
(上記[ sol.Al ]はsol.Alの含有量(質量%)を示す)
高強度領域における加工性を高めるために導入した残留γが、何らかの原因で分解し、残留γを構成していたCが転位に固着して、時効を生じさせない様にするには、前記残留γの分解を抑制する必要がある。固溶Nは、オーステナイト安定化元素であり、残留γの安定化にも有効であることが知られている。しかしながら前記固溶Nは、鋼中の金属成分と窒化物を形成しやすいことから、残留γの安定化に有効に作用する固溶Nを確保するには、共存する金属元素量を制限する必要がある。本発明では、固溶Nが、特にAlと窒化物を形成し易いことから、sol.Al(酸可溶性Al)量を制限して固溶Nを確保することとした。
【0015】
固溶Nを十分に確保することができ、かつ、AlNが形成された場合であっても、該AlNが伸びや伸びフランジ性等の特性を劣化させないようにするには、上記sol.Al量を0.01%以下、好ましくは0.005%以下とする必要があることが分かった。尚、この様に鋼中のsol.Al量を低減する方法として、製鋼段階における脱酸をAlではなくSiで行うことが挙げられる。
【0016】
一方、N量の下限値についても、固溶N量確保の観点から規定した。即ち、後述する占積率で3〜30%の残留オーステナイトの安定化を図り、残留γ分解による時効の発生を抑制するには、0.001%以上の固溶Nが必要であることが分かった。従って、トータルとしてのN量は、前述のsol.Al含有量を考慮して、少なくとも〔0.001%+(7/13)[sol.Al]〕%必要であることが分かった。
【0017】
一方、N含有量が多過ぎる場合には、製造時の鋳塊に気泡が生じ、熱間圧延工程にて割れや破断が生じる原因となることから、N量は0.02%以下に抑える必要がある。好ましくは0.01%以下である。
【0018】
次に、その他の化学成分を規定した理由について以下に述べる。
【0019】
C:0.06%以上0.3%以下
Cは、高強度を確保し、且つ、室温にて残留γを所定量確保するために必須の元素であることから、0.06%以上、好ましくは0.1%以上含有させる必要がある。但し、過剰に含有されていると溶接性や加工性が劣化するので、0.3%以下、好ましくは0.2%以下に抑えるようにする。
【0020】
Si:0.8%以上2%以下
Siは、残留γが分解して炭化物が形成されるのを有効に抑える元素であり、また固溶強化元素としても有用である。この様な作用を有効に発揮させるには、Siを0.8%以上添加することが必要であり、好ましくは1.0%以上である。但し、上記元素を過剰に添加しても上記効果は飽和してしまう他、熱間脆性を起こすことから、その上限を2%とする。好ましくは1.8%以下である。
【0021】
Mn:0.5%以上3%以下
Mnは、オーステナイト組織を安定化させて、所望の残留γを得るのに必要な元素である。この様な作用を有効に発揮させるには、0.5%以上添加することが必要であり、好ましくは1.0%以上である。但し、3%を超えて添加すると、鋳片割れが生じる等の悪影響が見られる。好ましくは2%以下である。
【0022】
P:0.15%以下(0%を含まない)
Pは、所望の残留γを確保するのに有効な元素である。この様な作用を有効に発揮させるには、0.03%以上添加することが推奨され、より好ましくは0.05%以上である。しかしながら、0.15%を超えて添加すると二次加工性が劣化する。より好ましくは0.1%以下である。
【0023】
S:0.02%以下(0%を含む)
Sは、MnS等の硫化物系介在物を形成し、割れの起点となって加工性を劣化させる元素であるので、0.02%以下、好ましくは0.01%以下に抑えるようにする。
【0024】
本発明の鋼板の基本的な化学成分は上述の通りであるが、次の様な元素を添加することも有効である。
【0025】
Crおよび/またはMoを合計で1%以下(0%を含まない)
CrやMoは、焼入れ性を向上させて、鋼の強度を高めるのに有効な元素であることから、Crおよび/またはMoを合計で0.1%以上添加することが推奨される。しかしながら過剰に添加すると、フェライト変態やベイナイト変態を抑制しすぎて残留γの生成を妨げることとなるので、Crおよび/またはMoを合計で1%以下に抑えることが好ましく、より好ましくは合計で0.8%以下である。
【0026】
Ni:0.5%以下(0%を含まない)および/または
Cu:0.5%以下(0%を含まない)
これらの元素は、鋼の強化元素として有用であると共に、残留γの安定化や所定量の確保にも有効な元素である。この様な作用を有効に発揮させるには、Ni:0.1%以上、および/またはCu:0.1%以上添加することが推奨される。しかしながら、これらの元素を過剰に添加しても上記効果が飽和してしまうことから、Ni:0.5%以下、および/またはCu:0.5%以下に抑えるのがよい。
【0027】
Ti:0.1%以下(0%を含まない),
Nb:0.1%以下(0%を含まない),
V:0.1%以下(0%を含まない)の少なくとも一種
これらの元素は、析出強化及び組織微細化の効果があり、高強度化に有用な元素である。この様な作用を有効に発揮させるには、Ti:0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)、Nb:0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)、V:0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)を、夫々添加することが推奨される。但し、いずれの元素も0.1%を超えて添加すると上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄である。より好ましくはTi:0.08%以下、Nb:0.08%以下、V:0.08%以下である。
【0028】
B:0.003%以下(0%を含まない)
Bは、焼入れ性を向上させ、鋼の強度を高める効果を有する元素であるので、0.0005%以上添加することが推奨される。しかしながら過剰の添加は、粒界を脆化させ、鋳造や圧延で割れを生じさせる原因となるので、その上限を0.003%、好ましくは0.002%とするのがよい。
【0029】
Ca:0.003%以下(0%を含まない)、および/または
REM:0.003%以下(0%を含まない)
Ca及びREM(希土類元素)は、鋼中硫化物の形態を制御し、加工性向上に有効な元素である。ここで、本発明に用いられる希土類元素としては、Sc、Y、ランタノイド等が挙げられる。上記作用を有効に発揮させるには、夫々0.0003%以上(より好ましくは0.0005%以上)添加することが推奨される。但し、0.003%を超えて添加しても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄である。より好ましくは0.0025%以下である。
【0030】
本発明の好ましい含有元素は上記の通りであり、残部成分は実質的にFeであるが、該鋼板中に微量の不可避不純物の含有が許容されるのは勿論のこと、前記本発明の作用に悪影響を与えない範囲で、更に他の元素を積極的に含有させた鋼板を使用することも可能である。
【0031】
また本発明の鋼板では、高強度領域において優れた加工性を確保すべく、その金属組織についても下記の通り規定している。
【0032】
フェライト:占積率で70%以上
優れた伸び特性を確保して高強度における加工性を確保するには、金属組織中のフェライトを、占積率で70%以上、好ましくは75%以上確保する必要がある。しかしながらフェライトの占積率が高すぎると、必要な強度を確保するのが困難となる他、従来の複合組織やTRIP鋼と同様、フェライトと第2相の界面に多くのボイドが発生し、伸びフランジ性が劣化するため、その上限を95%とすることが推奨される。
【0033】
残留オーステナイト(残留γ):占積率で3〜30%
残留γは全伸びの向上に有用であり、この様な作用を有効に発揮させるには、残留γを占積率で3%以上、好ましくは5%以上確保することが必要である。一方、残留γの占積率が大きくなりすぎると、伸びフランジ性が劣化するので、その上限を30%に定めた。より好ましくは25%以下である。
【0034】
その他:パーライト、ベイナイト、およびマルテンサイトよりなる群から選択される1種以上(占積率で0%を含む)
本発明の鋼板は、上記組織のみ(即ち、フェライトおよび残留γとの混合組織)からなっていても良いが、本発明の作用を損なわない範囲で、他の異種組織として、パーライト、ベイナイト、およびマルテンサイトよりなる群から選択される1種以上を含有するものであってもよい。これらの組織は本発明の製造過程で必然的に残存し得るものであるが、少なければ少ないほど好ましい。
【0035】
本発明の鋼板を得るにあたって、その製造方法は特に限定されるものではないが、本発明の組織を得るには、下記に示す様な方法で製造することが推奨される。
【0036】
即ち、熱間圧延工程では、その条件として、熱延仕上温度(FDT)をAr3点以上の温度とすることが推奨される。これは、2相域での圧延を避けて、所望の組織を得るのに有効だからである。
【0037】
また、上記仕上圧延後の冷却では、冷却速度(CR)を制御することで所望の組織を得ることができ、特に、熱間圧延ままの鋼板を製造する場合には、仕上圧延後、700±100℃の範囲の温度域まで30℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、該温度域で空冷を1〜30秒間行った後、350〜450℃で巻き取る二段冷却を行えば、残留γを確保できるので好ましい。
【0038】
熱間圧延後に冷間圧延を施すものについては、特に冷却速度を制御する必要はないが、冷延時の負荷を軽減するため熱延鋼板の硬質化を抑制し、また、延性劣化の原因となるAlNの析出を抑制するという観点からは、巻き取りを600℃以上で行うことが望ましい。
【0039】
連続焼鈍処理やめっき処理を施す場合には、その熱処理方法として、A1点以上A3点以下の温度で10〜600秒加熱保持した後、3℃/s以上の平均冷却速度でパーライト変態を避けながら、300℃以上480℃以下の温度まで冷却し、該温度域で1秒以上保持して所望の混合組織及び残留γを生成することが推奨される。
【0040】
焼付硬化性に加え、より良好な伸びを確保するには、上記焼鈍後の冷却を次の様にして行うことが推奨される。即ち、▲1▼(A1点〜600℃)の温度まで15℃/s以下の平均冷却速度で冷却することで、フェライトを生成させ、該フェライト中のCがγに濃縮するようにし、▲2▼次に、300℃以上480℃以下の温度まで20℃/s以上の平均冷却速度で冷却して、γがパーライトに変態することを抑制して残留γ組織を得るようにする方法である。
【0041】
まためっき処理を行う場合には、めっき層の合金化を400〜650℃で行えばよい。
【0042】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0043】
表1に示す化学成分組成の鋼材を真空溶製して、実験用スラブを得た後、該スラブに熱間圧延を施した。後述する表2における実験No.1〜17では、熱間圧延に際して行う加熱を900℃で行い、巻き取りは600℃で行って、板厚2.4〜3.2mmの熱延鋼板を得た。更に、得られた熱延鋼板を酸洗した後、冷間圧延を施して板厚1.0〜1.6mmの鋼板とした。その後、実験No.1〜16のものは、連続めっきライン(CGL)で、また実験No.17のものは連続焼鈍ライン(CAL)で熱処理を行った後、それぞれ減面率0.5〜2%のスキンパスを施して巻取りを行った。また表2における実験No.18では、熱間圧延に際して900℃で加熱し、仕上圧延後の巻き取りを380℃で行って、上記板厚の熱間圧延ままの鋼板を得た。
【0044】
この様にして得られた鋼板の金属組織は、レペラー腐食を施した後に、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察を行い、組織写真から、フェライトおよびベイナイト等その他の組織の面積率を求めた。また残留γは、X線測定を行ってその占積率を求めた。
【0045】
得られた鋼板の引張強度(TS)、伸び[全伸び(El)]、焼付硬化量(BH量)、および自然時効量は、下記要領で夫々測定した。
【0046】
まず、引張試験にはJIS5号試験片を用い、引張強度(TS)、および伸び[全伸び(El)]を測定した。焼付硬化量(BH量)は、上記鋼板製造後、および該鋼板に170℃×20分の熱処理を施して焼付を行った後の2%予歪みを測定し、その応力差を求めたものである。
【0047】
また、耐時効性は、一般的に行われている加速試験(AI値)で評価せず、室温で放置して自然時効量を求めて評価した。詳細には、製造直後の鋼板、および製造から3月間室温で放置した鋼板の引張試験を行い、YP平均値の差を自然時効量とした。尚、引張試験は、上記と同様にJIS5号試験片を用いて行い、YP平均値は、鋼板製造直後および製造から3ヵ月後のそれぞれについて3回ずつ測定した値の平均である。これらの結果を表2に示す。
【0048】
【表1】
Figure 0003993401
【0049】
【表2】
Figure 0003993401
【0050】
これらの結果より、以下の様に考察できる。尚、以下のNo.はすべて表2中の実験No.を示すものである。
【0051】
まずNo.2,4,6および9〜18は、いずれも本発明で規定する要件を満足するものであり、良好な特性の鋼板が得られていることが分かる。
【0052】
これに対し、本発明で規定する要件のいずれかを満足しない下記例では、夫々以下の不具合が生じた。即ちNo.1は、C量が少ないことから、十分な強度を確保することができず、強度−延性バランスに劣る結果となった。また十分な焼付硬化量を確保することもできていない。No.3,5,および7は、sol.Al量が多過ぎて含有するNが全てAlNの形成に用いられ、固溶Nを確保することができなかったため、自然時効が生じる結果となった。またNo.8は、Si含有量が少なすぎて十分な残留γを確保することができなかったため、伸びが好ましくなく、また自然時効が生じる結果となった。
【0053】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、本発明で規定する如く固溶Nを確保することで、良好な強度−加工性バランスを保持することのできる優れた耐時効性を有し、かつ塗装焼付時に優れた焼付硬化性を発揮する鋼板を得ることができた。この様な鋼板の実現によって、優れた強度−加工性バランスが経時劣化することなく安定した鋼板を提供できることとなった。

Claims (14)

  1. 質量%で、
    C :0.06%以上0.3%以下、
    Si:0.8%以上2%以下、
    Mn:0.5%以上3%以下、
    sol.Al:0.01%以下(0%を含む)、
    0.001%+(7/13)[sol.Al]<N≦0.0049%
    ([sol.Al]はsol.Alの含有量(質量%)を示す。)、
    P :0.15%以下(0%を含まない)、
    S :0.02%以下(0%を含む)を満たし、
    残部が鉄および不可避不純物であり、且つ、
    占積率で、
    フェライト:70%以上、
    残留オーステナイト:3〜30%を含有し、
    更に、パーライト、ベイナイト、およびマルテンサイトよりなる群から選択される1種以上を含有してもよいものであることを特徴とする耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
  2. 更に、質量%で、Crおよび/またはMoを合計で1%以下(0%を含まない)を含有する請求項1に記載の耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
  3. 更に、質量%で、Ni:0.5%以下(0%を含まない)、および/またはCu:0.5%以下(0%を含まない)を含有する請求項1または2に記載の耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
  4. 更に、質量%で、
    Ti:0.1%以下(0%を含まない)、
    Nb:0.1%以下(0%を含まない)、および
    V :0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
  5. 更に、質量%で、
    B:0.003%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
  6. 更に、質量%で、
    Ca:0.003%以下(0%を含まない)、および/またはREM:0.003%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
  7. 質量%で、
    C :0.06%以上0.3%以下、
    Si:0.8%以上2%以下、
    Mn:0.5%以上3%以下、
    sol.Al:0.01%以下(0%を含む)、
    0.001%+(7/13)[sol.Al]<N<0.02%
    ([sol.Al]はsol.Alの含有量(質量%)を示す)、
    P :0.15%以下(0%を含まない)、
    S :0.02%以下(0%を含む)を満たし、
    更に、Ni:0.5%以下(0%を含まない)、および/またはCu:0.5%以下(0%を含まない)を含有し、
    残部が鉄および不可避不純物であり、且つ、
    占積率で、
    フェライト:70%以上、
    残留オーステナイト:3〜30%を含有し、
    更に、パーライト、ベイナイト、およびマルテンサイトよりなる群から選択される1種以上を含有してもよいものであることを特徴とする耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
  8. 質量%で、
    C :0.06%以上0.3%以下、
    Si:0.8%以上2%以下、
    Mn:0.5%以上3%以下、
    sol.Al:0.01%以下(0%を含む)、
    0.001%+(7/13)[sol.Al]<N<0.02%
    ([sol.Al]はsol.Alの含有量(質量%)を示す)、
    P :0.15%以下(0%を含まない)、
    S :0.02%以下(0%を含む)を満たし、
    更に、B:0.003%以下(0%を含まない)を含有し、
    残部が鉄および不可避不純物であり、且つ、
    占積率で、
    フェライト:70%以上、
    残留オーステナイト:3〜30%を含有し、
    更に、パーライト、ベイナイト、およびマルテンサイトよりなる群から選択される1種以上を含有してもよいものであることを特徴とする耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
  9. 質量%で、
    C :0.06%以上0.3%以下、
    Si:0.8%以上2%以下、
    Mn:0.5%以上3%以下、
    sol.Al:0.01%以下(0%を含む)、
    0.001%+(7/13)[sol.Al]<N<0.02%
    ([sol.Al]はsol.Alの含有量(質量%)を示す)、
    P :0.15%以下(0%を含まない)、
    S :0.02%以下(0%を含む)を満たし、
    残部が鉄および不可避不純物であり、且つ、
    占積率で、
    フェライト:70%以上、
    残留オーステナイト:3〜30%を含有し、
    更に、パーライト、ベイナイト、およびマルテンサイトよりなる群から選択される1種以上を含有してもよいものであることを特徴とする耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度冷延鋼板。
  10. 更に、質量%で、Crおよび/またはMoを合計で1%以下(0%を含まない)を含有する請求項に記載の耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度冷延鋼板。
  11. 更に、質量%で、Ni:0.5%以下(0%を含まない)、および/またはCu:0.5%以下(0%を含まない)を含有する請求項9または10に記載の耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度冷延鋼板。
  12. 更に、質量%で、
    Ti:0.1%以下(0%を含まない)、
    Nb:0.1%以下(0%を含まない)、および
    V :0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する請求項11のいずれかに記載の耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度冷延鋼板。
  13. 更に、質量%で、B:0.003%以下(0%を含まない)を含有する請求項12のいずれかに記載の耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度冷延鋼板。
  14. 更に、質量%で、Ca:0.003%以下(0%を含まない)、および/またはREM:0.003%以下(0%を含まない)を含有する請求項13のいずれかに記載の耐時効性および焼付硬化性に優れた高強度冷延鋼板。
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