本発明の送血機構付貯血槽を図面に示す実施例を用いて詳細に説明する。
図7は、本発明の送血機構付貯血槽の実施例の部分破断側面図である。図8は、図7に示した送血機構付貯血槽よりケース部材211を取り外した状態の送血機構付貯血槽の下部の水平断面図である。
この実施例の送血機構付貯血槽200と後述する参考例の送血機構付貯血槽1との相違は、血液保留部材と血液保留部材押圧部の機構の相違である。
この実施例の送血機構付貯血槽200は、後述する参考例の送血機構付貯血槽1と同様に、貯血部と、貯血部と連通し、かつ貯血部の貯血量が所定値以下となったときに、貯血部内の貯血量に比例した量の血液を保留し、かつ、外方より押圧されることにより内部の血液を流出可能な血液保留部を備える血液保留部材を備える送血機構付貯血槽である。さらに、血液保留部材は、軟質管状体203であり、血液保留部材押圧部は、軟質管状体203を圧迫して内部の血液を送り出すポンプ204でり、さらに、送血機構付貯血槽は、軟質管状体203と軟質管状体を圧迫して内部の血液を送り出す部分のポンプ部位とを外部に対してほぼ気密に区画するためのケース部材211と、ケース部材内部と貯血部の上部とを連通する連通路(連通部材85により形成)を備えている送血機構付貯血槽である。
送血機構付貯血槽200では、血液保留部材は、水平に延びる軟質管状体203により構成されており、この軟質管状体203は、上述した血液保留部材と同様に実質的に自己復元性のないものとなっており、このため、軟質管状体203は、貯血部210の血液量が減少し、貯血内の血液面が軟質管状体203の上端より下方になると、血液面高さに対応した血液量を保留する。いわゆる液面感受性を発揮する。軟質管状体203には血液排出口を形成するチューブ207が取り付けられている。
そして、血液保留部材押圧部としては、軟質管状体203を圧迫して内部の血液を送り出すポンプ204が用いられている。特に、この実施例では、ローラポンプが使用されている。なお、ポンプは、ペリスタリック式ポンプであってもよい。そして、これらのポンプは、軟質管状体203を潰すようにして血液を送るものであるため、押し潰す部分において軟質管状体203は、閉塞した状態となるので後述する参考例の送血機構付貯血槽1において設けた2つの逆止弁は不要である。なお、この送血機構付貯血槽200では、軟質管状体保持部205を備えており、軟質管状体203は、ローラポンプ204のローラ204aとこの保持部間にて押しつぶされる。
そして、この送血機構付貯血槽200においても、血液フィルター6は、貯血槽部202の底面付近まで延びており、その下端は、血液保留部材である軟質管状体203の下端より下方に位置している。言い換えれば、血液フィルター6の下端は、貯血部210の血液面が軟質管状体203の下端と同一になった状態においても血液面下に位置するように設けられている。
このため、貯血部210の貯血量が減少し所定値以下となり、送血用血液保留部材3a,3bが貯血部210内の貯血量に比例した量の血液を保留する機能を発揮する状態となった状態においても、貯血部210内の血液面より下方まで血液フィルター6の下端は到達しているので流入する血液による泡立ちはなく、さらに、再び、貯血部210の貯血量が増加し所定値以上に復帰する際においても、貯血部210内の血液面より下方に血液フィルター6の下端は位置しているので流入する血液による泡立ちが極めて少ない。
なお、この実施例の送血機構付貯血槽200においても、血液保留部材と血液保留部材押圧部は、2組以上設けてもよい。
さらに、この送血機構付貯血槽200では、軟質管状体203と軟質管状体を圧迫して内部の血液を送り出す部分のポンプ部位とを外部に対してほぼ気密に区画するためのケース部材211と、ケース部材211の内部と貯血部210の上部201とを連通する連通路85を備えている。具体的には、ケース部材211は、ポンプ本体204上に取り付けられており、軟質管状体203と軟質管状体保持部205とローラポンプ204のローラ204a部分を外部に対してほぼ気密に区画している。このため、少なくとも軟質管状体203を被包する空間は、直接外部と連通していない。送血機構付貯血槽200は、図7に示すように、吸引装置接続用ポート82、連通路を形成する連通部材取り付けポート212(貯血部210の上部201と連通)を備え、ケース部材211は、連通部材取り付けポート91を有する。連通部材取り付けポート212には、通気性かつ血液不透過性部材(図示せず)が設けられている。血液不透過性部材としては、メンブランフィルター、焼結フィルターなどが使用でき、圧力損失の少ないものが好適である。また、連通部材取り付けポート212の位置は、血液との接触の可能性が少ない部位であればいずれでもよい。図7の連通用ポート212は、貯血槽内部の最上端と連通するように設けられているが、これに限られるものではない。例えば、貯血槽のハウジングの上部でもよい。また、ケース部材は、チューブ207を気密状態に保持(延出)させるための開口を備えている。開口にはシリコーンゴム、ウレタンゴムなどのゴムもしくはエラストマーより形成されたOリング208が取り付けられている。
そして、ポート212とポート91とは、連通部材85により連通している。連通部材85としては、硬質または軟質のチューブが使用される。
最近では、貯血槽への血液流入および患者からの脱血を貯血槽に接続した吸引装置(陰圧付加装置)により行う方法がとられることがある。この装置を作動させると、貯血槽部内が陰圧となるとともに、この陰圧は、軟質管状体203内にも影響を与える。つまり、軟質管状体203は、内部が吸引装置(陰圧付加装置)による陰圧状態となり、外部は大気圧という状態となる。このため、軟質管状体203は両者の圧力の差圧分押され、送血用血液保留部材である軟質管状体203の液面感受性(圧力感受性、前負荷感受性)機能を阻害するおそれがある。しかし、上記のように、連通部材85により貯血部210の上部201と軟質管状体203を被包する空間(ケース部材211の内部)とを連通することにより、貯血槽部内部が吸引され陰圧状態となると、同時にケース部材内も陰圧状態となるので、軟質管状体203の貯血量(液面高さ)に対応した前負荷感受性の発現を阻害しない。連通用ポート91には、通気性かつ血液不透過性部材(図示せず)を設けてもよい。血液不透過性部材としては、メンブランフィルター、焼結フィルターなどが使用でき、圧力損失の少ないものが好適である。
次に、参考例の送血機構付貯血槽を図面を用いて説明する。
図1は、人工肺を取り付けた状態の参考例の送血機構付貯血槽の正面図である。図2は、人工肺を取り付けた状態の参考例の送血機構付貯血槽の側面図である。図3は、図1における送血用血液保留部材付近および貯血部の下部付近を破断した部分断面図である。図4は、図1の送血機構付貯血槽の送血機構付近および貯血部の下部付近の拡大断面図である。図5は、図1の送血機構付貯血槽の送血時における送血機構付近および貯血部の下部付近の拡大断面図である。図6は、図1の送血機構付貯血槽の送血時における送血機構の拡大断面図である。
送血機構付貯血槽1は、貯血部10と、貯血部10と連通し、かつ貯血部10の貯血量が所定値以下となったときに、貯血部10内の貯血量に比例した量の血液を保留し、かつ、外方より押圧されることにより内部の血液を流出可能な血液保留部30a,30bを備える血液保留部材3a,3bと、貯血部10内に位置する消泡部材6もしくは除泡部材とを備え、そして、消泡部材6もしくは除泡部材の下端は、血液保留部材3a,3bの血液保留部30a,30bの下端より、言い換えれば、下端より引いた水平線X(図4)より下方に位置している。
また、参考例の送血機構付貯血槽1は、表現を変えれば、消泡部材6もしくは除泡部材の下端は、貯血部10の血液面が血液保留部材3a,3bの血液保留部30a,30bの下端と同一になった状態においても血液面下(血液面以下)に位置するように設けられているものである。
また、参考例の送血機構付貯血槽1は、貯血部10と、貯血部10と連通し、かつ貯血部10の貯血量が所定値以下となったときに、貯血部10内の貯血量に比例した量の血液を保留し、かつ、外方より押圧されることにより内部の血液を流出可能な血液保留部30a,30bを備える血液保留部材3a,3bと、血液保留部材3a,3b内の血液を送血する際に作動する送血用駆動部4a,4bとからなる送血機構を備えるものであり、さらに、血液保留部材3a,3bは、硬質材料により形成され、内側にすり鉢状に窪んだ凹面部を備える血液保留部材本体部41a,41bと、血液保留部材本体部41a,41bの凹面部54a,54bの周縁部付近に周縁が凹面部の中央に向かって傾斜するように保持された可撓性ダイアフラム42a,42bを有し、送血用駆動部4a,4bは、伸縮可能なシート材により形成された血液保留部材押圧部43a,43bと、血液保留部材押圧部43a,43bを伸縮させるための送血用流体流通ポート44a,44bとを備え、かつ、血液保留部材押圧部43a,43bの伸張時に可撓性ダイヤフラム42a,42bは血液保留部材本体部41a,41bの凹面部54a,54bに実質的な屈曲点の形成がなく押しつけられるものでもある。
また、参考例の送血機構付貯血槽1は、貯血部10と、貯血部10と連通し、かつ貯血部10の貯血量が所定値以下となったときに、貯血部10内の貯血量に比例した量の血液を保留し、かつ、外方より押圧されることにより内部の血液を流出可能な血液保留部30a,30bを備える血液保留部材3a,3bと、血液保留部材3a,3b内の血液を送血する際に作動する送血用駆動部4a,4bとからなる送血機構を備え、さらに、血液保留部材3a,3bは、硬質材料により形成された血液保留部材本体部41a,41bと、血液保留部材本体部41a,41bに周縁が保持された可撓性ダイアフラム42a,42bを有し、送血用駆動部4a,4bは、伸縮可能なシート材により形成された血液保留部材押圧部43a,43bと、血液保留部材押圧部43a,43bを伸縮(膨張)させるための送血用流体流通ポート44a,44bとを備え、さらに、送血機構付貯血槽は、ダイヤフラム42a,42bと血液保留部材押圧部43a,43b間の空間52a,52bと外部とを連通する通路を備えている。
送血機構付貯血槽1は、貯血槽部2と、2つの送血用血液保留部材3a,3bと、貯血槽部2とそれぞれの送血用血液保留部材3a,3bとを連通する血液通路35a,35bを備え、さらに、熱交換器付人工肺5が、貯血槽部2の底面に吊り下げられるように取り付けられている。また、熱交換器付人工肺5の血液流入口は、送血機構付貯血槽1の血液排出口7とチューブ51により接続されている。なお、図1および図3においては、このチューブ51が取り外された状態となっている。また、ダイアフラム42a,42bの外側には、使用時にダイアフラム42a,42b側を押圧する送血用駆動部4a,4bが設けられている。
貯血部10は、貯血槽部2の血液貯留部29と送血器具3の血液貯留部28からなる空間である。送血機構付貯血槽1では、ダイアフラム42a,42bの上端と水平の高さの位置は、貯血槽部2と送血器具3の接続部81付近であるため、貯血部10における貯血槽部2の血液貯留部29の下端付近より血液面が低下したとき(貯血部10内の貯血量が少なくとも所定値以下となったとき)、送血用血液保留部材3a,3bは、貯血部10の貯血量に比例した量の血液を保留する。そして、送血用血液保留部材3a,3bのダイアフラム42a,42b側を外側より押圧することにより、送血用血液保留部材3a,3b内の血液を間欠的に流出させることができる。このため、貯血部10内の貯血残量が少なくなればそれに比例した少ない量の送血が行われ、貯血残量が少量となっても微量な送血が維持される。このため貯血残量が低下しても送血を中断する必要がなく、体外循環回路中での血液停滞を回避できる。
貯血槽部2は、図1ないし図3に示すように、硬質樹脂により形成された貯血槽部ハウジング本体23aと蓋体23bとで構成されるハウジングを有する。蓋体23bは、貯血槽部ハウジング本体23aの上部開口を覆うように、ハウジング本体23aの上端に嵌合されている。蓋体23bは、図1および図2に示すように、血液流入ポート21、22、エア排出口27を有している。血液流入ポート22は、術野からの血液を送血するカーディオトミーラインに接続される。血液流入ポート21は、患者の心臓上下行静脈に挿入された脱血カニューレからの血液を送血する脱血ラインと接続される。
貯血槽部ハウジング本体23aおよび蓋体23bを構成する部材としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−ブタジエン−スチレン共重合体等が好適に使用できる。特に、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルが好ましい。
ハウジング本体23a内には、血液流入ポート21より流入した血液を濾過するための消泡部材および除泡部材である血液フィルター(静脈血フィルター)6と、血液流入口22より流入した血液を濾過するカーディオトミー血液フィルター(図示せず)が設けられている。血液流入ポート21の下端は、貯血部10内に延び、血液フィルター6内に位置しており、血液流入ポート21より流入したすべての血液は、血液フィルター6を通過した後、貯血部10内に流入する。このため、血液流入ポート21より流入した血液が、貯血部10内の血液面の直接滴下することはないように構成されている。具体的には、蓋体23bの内面に血液流入ポート21の貯血部10内への突出部を被包するように、血液フィルター6が固定されており、血液フィルター6は、貯血部10の下方に延びている。
貯血槽部ハウジング本体23aは、下方に突出した突出部23cを有しており、血液フィルター6の下端は、この突出部23cを越えてさらに可能に延びている。
そして、血液フィルター6の内部には、気泡を含む血液が流入した際に消泡を行うための消泡材6aもしくは除泡材が充填されている。この消泡材6aもしくは除泡材としては、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン等の発泡体、メッシュ、織布、不織布、または多孔質セラミックスや樹脂等の焼結体のような各種多孔質体が好適に使用できる。特に、比較的、空気の通過抵抗(圧力損失)が少ない材料が好適である。この通気抵抗が少ない材料として、発泡ポリウレタン等の発泡体やその他の多孔質材を使用する場合は、その孔径は、20μm〜10mm、特に50μm〜5mm程度であることが好ましい。
さらに、このような消泡材6aには、気泡が接触すると破泡するような機能を有する消泡剤が担持されていることが好ましい。この消泡剤としては、シリコーン(シリカを配合したコンパウンド型、オイル型等)が好適である。なお、消泡材6aに消泡剤を担持する方法としては、消泡剤を含有する液中に消泡部材を含浸させる方法、消泡剤を含有する液を塗布またはスプレーし、乾燥(例えば、30℃、180分)させる方法などが挙げられる。
そして、消泡材6aの外部は、フィルター部材6bにより被包されている。フィルター部材6bは、血液中の異物や気泡を除去するためのものである。フィルター部材6bの材質としては、十分な血液の透過性を有する多孔質材料が好適である。多孔質材料としては、メッシュ(ネット)状のもの、織布、不織布等が挙げられ、これらを単独または任意に組み合わせて(特に積層して)用いることができる。具体的には、PET、PBTのようなポリエステル、ナイロン(ポリアミド)、テトロン、レーヨン、ポリプロピレン、ポリエチレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等の高分子材料、あるいはこれらのうちの2以上を組み合わせたものが好適であるが、アルミニウム、ステンレス等の金属材料も使用可能である。特に、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ステンレスが好適である。また、また、フィルター部材6bに用いられるメッシュの網目のオープニングは、15〜300μm程度、特に20〜200μmが好適である。なお、フィルター部材6bには、血液の透過性を向上させるため、必要に応じてプラズマ処理や親水性高分子材料のコーティングのような親水化処理を施すことが好ましい。
そして、貯血槽部2の内部は、図3および図4に示すように、血液を一時的に貯留しておくための貯血部10の一部を形成している。この貯血部10の容積は、特に限定されないが、通常、成人用では、3000〜5000ml程度であり、小児用では、1000〜2500mlである。また、貯血槽部ハウジング本体23aは、貯血量や内部に貯留している血液の状態を容易に確認できるように、実質的に透明または半透明であることが好ましい。突出部23cは、言い換えれば、断面積狭小部であり、貯血量低下時における貯血量または貯血量の変化を正確かつ容易に把握できるようにするためのものである。なお、貯血槽部2としては、軟質樹脂により形成された軟質貯血槽部であってもよい。この場合、貯血槽部は密閉型貯血槽部となる。
貯血槽部2の下方には、図4、図5および図6に示すように、貯血槽部2への接続部81を備える送血器具3が接続固定されている。送血器具3は、貯血部10の一部を構成する血液貯留部28と、2つの送血用血液保留部材3a,3bと、これを血液貯留部28(貯血部10)と連通させるための血液通路35a,35bと、血液排出口7を備えている。
第1の血液通路35aは、第1の送血用血液保留部材3aとのみ連通し、第2の血液通路35bは、第2の血液保留部材3bとのみ連通している。また、貯血部10と血液通路35a,35bの境界部位には、第1の逆止弁33a,33bが設けられ、貯血部10側から血液通路35側(言い換えれば、血液保留部材3側)への血液の流通を許容し、その逆方向の血液の流通を規制(阻止)している。
この第1の逆止弁33a,33bは、後述する送血駆動部4の作動中における貯血部10と血液保留部材間の連通を遮断する流路制御部材として機能する。また、送血器具3には、血液通路35a,35bと連通する血液排出口7が設けられており、この血液排出口7付近には、第2の逆止弁34a,34bが設けられいる。第2の逆止弁34a,34bにより、血液通路35a,35b側(言い換えれば、血液保留部材3側)より下流側への血液流通を許容し、その逆方向の血液流通を規制している。この第2の逆止弁34a,34bは、後述する送血駆動部4の非作動時における下流側からの血液の血液保留部材側(血液流通部側)への流入を遮断する流路制御部材として機能する。
逆止弁33、34は、円盤状の可動弁体の一部をハウジングに固定することにより形成されている。可動弁体は、血液より比重が若干軽いものが好ましく、ショアA硬度で3〜7程度のものが好適である。このような弁体としては、例えば、スチレン系エラストマー/オイル系ゲル、シリコーンゲルなど好適であり、厚さは、0.5〜5mm程度が好ましい。
血液保留部材3a,3bは、硬質材料により形成された血液保留部材本体部41a,41bと、血液保留部材本体部41a,41bに周縁が保持もしくは固定された可撓性ダイアフラム42a,42bと、血液保留部材本体部41a,41bと可撓性ダイアフラム42a,42b間により形成された血液保留部30a,30b(図4)を有する。
図4は、図1の送血機構付貯血槽の送血機構付近および貯血部の下部付近の拡大断面図であり、かつ、可撓性ダイアフラム42a,42bの非押圧時(非送血時)の状態を示す図である。そして、図5は、図1の送血機構付貯血槽の送血時における送血機構付近および貯血部の下部付近の拡大断面図であり、かつ、可撓性ダイアフラム42a,42bの押圧時(送血時)の状態を示す図である。そして、図6は、図5の一部をさらに拡大した状態を示す図である。
血液保留部材3a,3bは、血液保留部の一部を形成する可撓性材料により形成された変形可能部である可撓性ダイアフラム42a,42bを有している。そして、送血機構付貯血槽1は、送血の際に変形可能部である可撓性ダイアフラム42a,42bを変形させて、血液保留部材血液保留部材3a,3b内の血液を押し出し血液を送血する際に作動するための送血駆動部4a,4bを備えている。送血駆動部4a,4bについては、後述する。
血液保留部材本体部41a,41bは、内側にすり鉢状に窪んだ凹面部54a,54bを備え、可撓性ダイアフラム42a,42bは、血液保留部材本体部41a,41bの凹面部54a,54bの周縁部付近に周縁が凹面部54a,54bの中央に向かって傾斜するように保持されている。血液保留部材本体部41a,41bは、周縁部を含む内側全体がすり鉢状に窪んでおり、この凹面部表面が血液送血時に可撓性ダイアフラム42a,42bと密着する。よって、血液保留部30a,30bは、凹面部表面と可撓性ダイアフラム42a,42bの内面により形成される容積が変化する空間である。また、ダイヤフラム保持用環状部材53a,53bは、血液保留部材本体部41a,41b側の外面が、対応する血液保留部材本体部41a,41bの周縁部(周縁より若干内側となっている部分)の傾斜形状とほぼ同じ形状に、言い換えれば、対応する血液保留部材本体部41a,41bの周縁部内に収納可能であり、かつ、周縁部より若干内側となっている部分の傾斜形状とほぼ平行となるように形成されており、ダイヤフラム保持用環状部材53a,53bの血液保留部材本体部41a,41b側の外面はテーパー状に突出している。
そして、ダイヤフラム42a,42bの周縁は、血液保留部材本体部41a,41bの周縁部(周縁より若干内側となっている部分)とダイヤフラム保持用環状部材53a,53b間の外側周縁部にて挟まれ保持されており、挟持部の形状に対応して、ダイヤフラム42a,42bの周縁部は血液保留部材本体部41a,41bの凹面部54a,54bの中央に向かって傾斜している。このため、ダイヤフラム42a,42bは、血液保留部材本体部41a,41bの凹面部に押しつけられた状態においても、実質的な屈曲点の形成がなく、ストレスが集中する部分がない。このため、繰り返して血液保留部材本体部41a,41bの凹面部に押しつけられても、破損することが極めて少ない。
また、ダイヤフラム保持用環状部材53a,53bの内面は、ダイアフラムを挟持する状態において、血液保留部材本体部41a,41bの凹面部とほぼ連続し、かつ凹面部54a,54bの中央に向かって傾斜する環状傾斜面となっている。後述する可撓性ダイアフラムを押圧するシート材により形成された血液保留部材押圧部43a,43bは周縁部が、ダイヤフラム保持用環状部材53a,53bの環状傾斜面に規制されて伸張するこのため、図5および図6におけるダイヤフラム押圧時において、最もストレスを与えやすいダイヤフラム42a,42bとの接触環状端(ダイヤフラム保持用環状部材53a,53bの先端)においてもダイヤフラム42a,42bにストレスを与えることが少ない。
そして、図4におけるダイヤフラム非押圧時には、ダイヤフラム42a,42bは、保持部境界部(ダイヤフラム保持用環状部材53a,53bの先端)において屈曲するが、この状態では、ダイヤフラムには貯血部10内の血液の落差圧しか負荷されていないので、これによりダイヤフラムが破損することはない。
また、血液保留部材3a,3bは、血液保留部30a,30bの上端と連通する脱気用ポート55a,55bを備えている。具体的には、血液保留部材本体部41a,41bは、その上部でありかつダイヤフラム42a,42bの保持部の境界部付近に脱気用ポート55a,55bを備えている。この脱気用ポート55a,55bに三方活栓などの開閉手段を取り付けたチューブを接続しこれを用いてプライミング時にエアーの除去を行う。また、三方活栓などの開閉手段を途中に取り付けたチューブの一端をこの脱気用ポート55a,55bに接続し、他端を貯血部の上部(通常血液面以上となる部分)と接続してもよい。この場合には、ハウジング本体23aの上部側面もしくは蓋体23bに接続用ポートを設けることが必要となる。
送血用血液保留部材3a,3bの最大血液保留量(血液量流部の最大収納量、容積)としては、使用する貯血槽部2の最大貯血量などにより相違するが、20〜500ml程度が好ましく、特に50〜500ml程度が好ましい。より好ましくは、50〜300mlであり、特に、80〜300mlである。
そして、ダイアフラム42a,42bは、この血液保留部材本体部41a,41bの凹面部の内面形状に対応した形状に形成されている。ダイアフラム42a,42bは、変形に必要とする圧力が100mmH2O以下であることが好ましい。このようにすれば、貯血部10の貯血量に敏感反応し、貯血部10の貯血量に比例した量の血液の保留がより確実となる。ダイアフラム42a,42bは、変形に必要とする圧力が、50mmH2O以下であることがより好ましい。
ダイアフラム42a,42bの形成材料としては、例えばポリウレタン、シリコン、ポリ塩化ビニル等が好適に使用できる。特に血液に接触する部材として現在広く用いられているポリウレタン、シリコンが好ましい。
ダイアフラム42a,42bは、十分に柔軟であることが望ましく、柔軟性の指標としては、例えば、コンプライアンスがある。送血用血液保留部材3a,3bとしては、貯血槽1の貯血部10内の血液面が、送血用血液保留部材3a,3bの内部の最上部より低いとき、言い換えれば、送血用血液保留部材3a,3bの圧力感受性(液面感受性)が機能するときに、コンプライアンスが、2ml/sec・mmHg以上であることが好ましく、5〜30ml/sec・mmHgであるものが好ましい。さらに、貯血槽1の貯血部10内の血液面が、送血用血液保留部材3a,3bの内部の最上部より高いときには、送血用血液保留部材3a,3bは、コンプライアンスが、上記値より低いものとなるものがより好適である。また、送血用血液保留部材3a,3bへの血液の流入抵抗は、送血用血液保留部材3a,3bへの血液の流入速度により、表すことができ、送血用血液保留部材3a,3bとしては、血液流入速度が、20〜600ml/secであることが好ましい。
さらに、ダイアフラム42a,42bの外側を被覆し、かつ周縁が血液保留部材本体部41a,41bに固定された補強体(図示せず)を設けることが好ましい。そして、ダイアフラムと補強体をあわせたものの物性は、ダイアフラムの変形に必要とする圧力が100mmH2O以下、破断強度が5kg/cm2以上で、ダイアフラム自身に変形に対する自己復元力をもたないことが好ましい。また、ダイアフラムと補強体は、全く接着されていないか、少なくとも周縁部以外では接着されていないものとすることが好ましい。補強材としては、織布、不織布、編布、シートなどいずれでもよいが、強度面より、織布、編布が好ましい。また、補強材形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66,再生セルロース、ポリプロピレン、FRP(アラミド繊維他)、ステンレス、アルミニウム等が好適に使用できる。特にポリエチレンテレフタテート、ナイロン6、ナイロン66,再生セルロース、ポリプロピレンが好ましい。
送血用血液保留部材3a,3bは、内部に血液保留部30a,30bを備え、さらに、それぞれの血液保留部材の下方(下端)に位置し血液保留部30a,30bと連通する血液流入通口を備えており、送血用血液保留部材3a,3bは、この血液流入通口を介して血液通路35a,35bと連通している。送血用血液保留部材3a,3bは、貯血部10と血液通路35a,35bの境界部位を形成する第1の逆止弁33a,33bより上方に位置している。そして、送血用血液保留部材3a,3bは、ほぼ垂直上方に伸びるように形成されている。もし、送血用血液保留部材3a,3bの血液保留部30a,30b(内部空間)の最上端より貯血部10内の血液面が下方であれば、送血用血液保留部材3a,3b内には、この血液面に比例した量の血液が流入する。逆に、送血用血液保留部材3a,3bの血液保留部30a,30bの最大保留量は不変であるので、送血用血液保留部材3a,3bの血液保留部30a,30b(内部空間)の最上端より貯血部10内の血液面が上方であれば、この最大保留量(図4の状態)の血液がこの内部に流入する。
つまり、この送血用血液保留部材3a,3bには、貯血部10内の貯血量に比例した圧力が負荷されており、圧力感受性容器となっている。貯血部10の液面高さ(貯血量)が所定量以上(この例では、送血用血液保留部材3a,3bの内部空間の最上端より貯血部10内の血液面が上方)であれば、貯血量による圧力よりも送血用血液保留部材3a,3bの最大保留量が優先され、送血用血液保留部材3a,3bは最大保留量の血液を保留する。貯血部10の貯血量が所定量以下(この例では、送血用血液保留部材3a,3bの内部空間の最上端より貯血槽部2内の血液面が下方)であれば、送血用血液保留部材3a,3bの圧力感受性が機能し、貯血部10内の貯血量(言い換えれば、貯血槽部2内の血液面高さ)に比例した量の血液を保留する。つまり、この送血用血液保留部材3a,3bは、貯血部10の貯血量が少なくとも所定値以下となったときに、貯血部10内の貯血量に比例した量の血液を自動的に保留する機能を備えている。
そして、送血用血液保留部材3a,3bは、自己的に血液を吸引しないもの、言い換えれば、形状自己復元性を実質的に持たない。送血用血液保留部材3a,3bが、予め形成された内部容積を持つような形状に形成されていると、内部に収納した血液が駆動部材により押し出され、駆動部材による負荷が解除されたとき、予め形成されている形状に復元し、その復元力によって生じる吸引力により、貯血槽部2側から血液を吸引してしまう。このため、血液保留部材は、最低血液保有量を持つことになり、この最低血液保有量以下では、上記のような、圧力感受性を発揮しなくなる。
そして、参考例の送血機構付貯血槽では、血液フィルター6は、貯血槽部2の血液貯留部29を越え、送血器具3の血液貯留部28にまで延びており、さらに、その下端は、血液保留部材3a,3bの血液保留部30a,30bの下端より下方に位置している。言い換えれば、血液フィルター6の下端は、貯血部10の血液面が血液保留部材3a,3bの血液保留部30a,30bの下端と同一になった状態においても血液面下に位置するように設けられている。
このため、貯血部10の貯血量が減少し所定値以下となり、送血用血液保留部材3a,3bが貯血部10内の貯血量に比例した量の血液を保留する機能を発揮する状態となった状態においても、貯血部10内の血液面より下方まで血液フィルター6の下端は到達しているので流入する血液による泡立ちはなく、さらに、再び、貯血部10の貯血量が増加し所定値以上に復帰する際においても、貯血部10内の血液面より下方に血液フィルター6の下端は位置しているので流入する血液による泡立ちが極めて少ない。
そして、送血器具3の血液通路35a,35b(言い換えれば、第1の逆止弁33a,33bと第2の逆止弁34a,34bと血液保留部材の血液保留部30a,30bの血液流入口間にて形成される一つの血液通路)の容積は、各々150mL以下とすることが好ましい。なお、送血器具3の血液通路35a,35bは、送血用血液保留部材3a,3bのダイアフラム42a,42bが閉じた状態において、第1の逆止弁33a,33bと第2の逆止弁34a,34bと血液保留部材3a,3bの血液保留部30a,30bの血液流入口(ダイアフラム42a,42bの内側面)間にて形成される一つの血液通路を示すものである。
さらに、血液通路35a,35bの最小断面積は、1.0cm2以上となっている。このようなものであれば、血液保留部材の圧力感受性を阻害することがなく、送血用血液保留部材3a,3bの圧力感受性は十分に機能し、貯血部10内の貯血量(言い換えれば、貯血槽部2内の血液面高さ)に比例した量の血液を保留する。そして、血液通路35a,35bの圧力損失(一つの血液通路の圧力損失)は、より低いことが好ましいが、参考例では、130mmH2O以下であることが好ましく、特に、110mmH2O以下、より好ましくは、100mmH2O以下であることが好ましく、このようなものであれば、十分に圧力感受性を発揮でき、かつ、良好に使用できる。さらに、血液通路35a,35bの最小断面積は、1.5cm2以上であることが好ましい。このようなものであれば、血液保留部材の圧力感受性をより確実に発揮させることができる。
また、血液通路35a,35bの容積は、送血用血液保留部材3a,3bの最大血液保留量(血液量流部の最大収納量)より少ないことが好ましく、このようであれば、送血用血液保留部材3a,3b内の血液の排出により血液通路35a,35b内に貯留していた血液全量が押し出されるので、血液通路35a,35b血液流通部での血液の滞留が少ない。
血液保留部材本体部41a,41bの形成材料としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル−スチレン共重合体、アクリル−ブタジエン−スチレン共重合体等が好適に使用できる。特に、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルが好ましい。なお、この参考例では、血液保留部材本体部41aと血液通路35aは一体に形成されている。同様に、血液保留部材本体部41bと血液通路35bも一体に形成されている。なお、これに限らず、別個に形成したものを接続してもよい。
送血用血液保留部材3a,3bの外側には、送血用血液保留部材3a,3bを被包するように送血用駆動部4a,4bが設けられている。送血器具3とこの送血用駆動部4により、送血機構が形成されている。
送血用駆動部4a,4bは、伸縮可能なシート材により形成された血液保留部材内の血液を送血する際に作動する血液保留部材押圧部43a,43bを備える。具体的には、送血用駆動部4a,4bは、中央部に外方に斜めに下方に突出する送血用流体流通ポート44a,44bを備えるヘッダー45a,45bと、このヘッダー45a,45bを送血器具の血液保留部材本体部41a,41bを固定するための固定リング46a,46bを備えている。
そして、血液保留部材押圧部43a,43bは、周縁に形成された膨出部47a,47bおよびこの膨出部47a,47bより若干内側の環状部分が、ヘッダー45a,45bとダイヤフラム保持用環状部材53a,53bの周縁部間に押圧され、それらによりほぼ気密に保持されている。ダイヤフラム保持用環状部材53a,53bは、ダイヤフラムと血液保留部材押圧部43a,43bの両者を保持するとともに、ダイヤフラムの過剰膨張を抑制する。なお、送血用駆動部4a,4bの血液保留部材押圧部43a,43bは、流体により膨張収縮を行う伸縮可能なシート材であるので、血液保留部材の押圧時にダイアフラムに損傷を与えることが少ない。さらに、血液保留部材押圧部43a,43bは周縁部が、ダイヤフラム保持用環状部材53a,53bの環状傾斜面に規制されて伸張する。
また、このダイヤフラム保持用環状部材53a,53bの環状傾斜面は、血液保留部材本体部41a,41bの凹面部54a,54bとほぼ連続し、かつ凹面部54a,54bの中央に向かって傾斜している。このため、最もストレスを与えやすいダイヤフラム42a,42bとの環状端(ダイヤフラム保持用環状部材53a,53bの先端)においても、血液保留部材押圧部43a,43bがダイヤフラム42a,42bにストレスを与えることが少ない。
そして、使用時には、送血用流体流通ポート44a,44bには、送血用流体供給機(図示せず)が接続され、送血用流体供給機が備えるコンプレッサーによる送液(もしくは送気)および排出(もしくは排気)により、血液保留部材押圧部43a,43bは、伸張(膨張)および収縮といった駆動を繰り返す。送血用駆動部4a,4bの血液保留部材押圧部43a,43bは、非膨張時(収縮時)には、図4に示すように、送血用血液保留部材3a,3bのダイアフラム42a,42bに接触しない状態となっており、伸張時(膨張時)には膨らみ、送血用血液保留部材3a,3bのダイアフラム42a,42bを血液保留部材本体部41a,41bと共同して押圧し、送血用血液保留部材3a,3b内(血液保留部30a,30b内)の血液を排出させる。
そして、血液保留部材3a,3b(ダイヤフラム42a,42b)と血液保留部材押圧部43a,43b間の空間52a,52b(言い換えれば、送血用血液保留部材3a,3bと送血用駆動部4a,4b間の空間)は、外部と連通している。具体的には、血液保留部材3a,3bと血液保留部材押圧部43a,43b間の空間52a,52bは、送血用駆動部4a,4bの構成部材であるダイヤフラム保持用環状部材53a,53bに形成された開口48a,48bおよび固定リング46a,46bに形成された開口49a,49bにより通路が形成されており、この空間52a,52bと外部とを連通している。つまり、この参考例のものでは、送血用駆動部4a,4bは、送血用血液保留部材3a,3bと送血用駆動部4a,4b間の空間と外部とを連通する通路を備えている。
なお、血液保留部材3a,3bと血液保留部材押圧部43a,43b間の空間52a,52bは、外部と連通し、閉鎖空間を形成してなければよく、外部との連通形態は上記のものに限定されるものではない。例えば、固定リング46a,46bを血液保留部材本体部41a,41bに気密に固定されないものとすれば、ダイヤフラム保持用環状部材53a,53bにのみ外部と連通する開口を形成したものでもよい。また、固定リング46a,46b、ダイヤフラム保持用環状部材53a,53bに形成される開口は複数設けてもよい。この場合、空間52a,52bは、密閉空間を形成ないので、血液保留部材押圧部43a,43bが伸張状態より収縮する時に、この空間内が減圧空間となり、減圧力により送血用血液保留部材3a,3bが血液を吸引することを防止している。
血液保留部材押圧部43a,43bの形成に使用される弾性材料としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴム、オレフィン系エラストマー、アミド系エラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマー)、ポリウレタンエラストマーなどのエラストマーが好適である。
また、送血用駆動部は、内部に流入される流体の量もしくは圧力を調整することにより、血液保留部材より流出する血液量を調整することもできる。つまり、送血量は、所定時間あたりの送血用駆動部材の駆動回数を固定し、送血用駆動部内部に流入される流体の量もしくは圧力を調整することにより、容易に変更できる。
この参考例の送血機構付貯血槽1は、上述したように、送血用血液保留部材3および送血用駆動部4をそれぞれ2組備えている。また、図4および図5に示すように、血液通路35も2つの血液通路35a,35bに区分されており、両者は連通してない。このように2組以上設けることにより、個々の送血用血液保留部材3a,3b、送血用駆動部4a,4bの容量は小さくなり、血液流入および排出リスポンスは良好となる。さらに、このように2組以上設け、それぞれの送血用駆動部4a,4bの膨張タイミングをずらせばより良好な血液流を形成することができる。このように送血用駆動部4a,4bの膨張タイミングをずらしても、この参考例では血液通路35a,35bは連通しておらず、個々の血液保留部材は独立した血液通路35a,35bを備えるため、一方の血液保留部材より他方の血液保留部材に血液が流れることもない。なお、この参考例に限られるものではなく、送血用血液保留部材3および送血用駆動部4は、1組、さらには、3組以上備えるものであってもよい。なお、送血用駆動部4としては、流体により膨張収縮を繰り返すタイプのものを用いているが、これに限られるものではなく、例えば、押圧板を機械的に駆動し血液保留部材を押圧するようなタイプのものであってもよい。
また、この参考例の送血機構付貯血槽1のように送血用血液保留部材および送血用駆動部を2組設け、送血用流体供給器が、送血用駆動部を個々に駆動できる制御機能を備えるものとすれば、送血される血流形態を選択することができ、患者の状態、使用される人工肺などを考慮し、拍動流もしくは定常流を選択することができ、さらには、使用時に血流形態を変更することもできる。具体的には、個々の送血用血液保留部材3a,3bより流出する血液流の位相がほぼ180度ずれるようにすること、言い換えれば、送血用駆動に流出入する流体の位相がほぼ180度ずれるようにすることにより血液流はほぼ定常流とすることができる。また、逆に、個々の送血部材より流出する血液流の位相をほぼ同じもしくは±30度とすること、言い換えれば、送血用駆動に流出入する流体の位相をほぼ同じもしくは±30度とすることにより、良好な拍動流が形成される。なお、血液保留部材および送血用駆動部を3組以上とした場合には、360度を組数で除した角度ごと、個々の送血部材より流出する血液流の位相をずらすことにより、血流形態はほぼ定常流となる。
また、この参考例の送血機構付貯血槽1では、血液保留部材のダイアフラム42a,42bは、ダイアフラム42a,42bおよびヘッダー45a,45bにより囲まれており、外部に露出していない。これらが、いわゆる保護カバーとして機能している。
さらに、上述したすべての送血機構付貯血槽において血液接触面は、抗血栓性表面となっている事が好ましい。特に、送血用血液保留部材3a,3bの血液接触面、血液通路35a,35b、第1の逆止弁33a,33b、第2の逆止弁34a,34bは、抗血栓性表面となっている事が好ましい。
抗血栓性表面は、抗血栓性材料を表面に被覆、さらには固定することにより形成できる。抗血栓性材料としては、ヘパリン、ウロキナーゼ、HEMA−St−HEMAコポリマー、ポリHEMAなどが使用できる。
抗血栓性表面は、例えば、オゾン処理により生成された基材表面の酸化物中に含まれる官能基と、ヘパリンのアミノ基とが、直接、または少なくとも一種のカップリング剤を介して共有結合することにより形成する事が好ましい。この方法であれば、溶剤を使用することなく、血液接触面にヘパリンが固定されるので、血液接触面を形成する基材の物性の変化、具体的には、可撓性、弾性、強度などの低下が少ない。
オゾン処理によって基材表面に形成される酸化物中には、種々の官能基、例えば、アルデヒド、ケトン、エポキシなど反応性の高い官能基が生成される。
そして、これらの官能基に直接官能基を結合させることも可能であるが、立体障害等の問題も有り、これらの官能基にスペーサー(カップリング剤)を導入し、ヘパリンを固定する方法が、容易で、しかも表面のヘパリン活性発現の点からも有用である。カップリング剤としては、1種または2種以上のものを用いてもよく、また2つ以上のアルデヒド基や、エポキシ基を有する化合物が好適に用いられる。
また、複数種のカップリング剤を用いる場合は、基材上に導入された上記官能基にアミノ基等の官能基を2つ以上有する化合物からなるカップリング剤(スペーサ用カップリング剤)を予め結合させて基材にアミノ酸等を導入した後、ヘパリンを2つ以上のアルデヒド基やエポキシ基を有する化合物からなるカップリング剤(ヘパリン固定用カップリング剤)を用いて基材に結合させる事が好ましい。さらにはヘパリンを結合する際に、カップリング剤をヘパリンと同時、あるいはヘパリン投入以降に反応系内に投入することが好ましい。
特に、スペーサ用カップリング剤を用いて、アミノ基を導入すれば、ヘパリンのアミノ基と反応系内でほぼ同様な反応性を示すので、より効果的に後者のヘパリン固定用カップリング剤によるヘパリンの基材への固定を行わせることができる。
また、ヘパリンと直接結合するカップリング剤の官能基または基材に導入された官能基がアルデヒド基である場合は、ヘパリンとして、ヘパリンのN−硫酸基の一部を脱硫化して第1級アミノ化したものを用いることが好ましい。
スペーサ用カップリング剤としては、基材上のオゾン処理により得た官能基と結合(共有結合)し、かつ2つ以上の第1級アミノ基を有するものが好ましい。アミノ基を2つ以上有するスペーサ用カップリング剤としては、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレングリコールジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン等が挙げられる。
ヘパリンを基材に固定するために使用されるカップリング剤としては、アルデヒド化合物、エポキシ化合物が好適に使用できる。アルデヒド化合物としては、グルタルアルデヒド、グリオキサール、スクシンジアルデヒド、エポキシ化合物としては、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオール−ジグリシジルエーテル、ソルビトールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテルなどが好適に使用される。
具体的には、エポキシ化合物がソルビトールジグリシジルエーテルであるデナコール EX−421、521、611、612、614、614B、ジエポキシ化合物がグリセロールジグリシジルエーテルであるデナコール EX−313、ジエポキシ化合物がポリエチレングリコールグリジジルエーテルであるEX−810、811、851、821、830、832、841、861(ナガセ化成社製)等が挙げられる。 さらにエポキシの反応性の違いから、デナコール EX−313、421、512、521、810、811、821、851等が更に好ましい。そして、上記のヘパリン固定では、基材に固定されたポリエチレンイミンとグルタールアルデヒドの結合、グルタールアルデヒドとヘパリンの結合はすべて共有結合であり、ヘパリンの離脱が少ない。