JP3992099B2 - X線分析装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は被照射体への1次X線の照射によって生じる2次X線を検出するX線分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線分析装置として、X線透過部を有する試料ステージ下方のX線源から該X線透過部上方の試料に向けて1次X線を照射し、試料に1次X線を照射した際に生じる2次X線を検出手段で検出する装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この装置においては、試料ステージ(X線透過部)、X線源、および検出手段はハウジングなどに固定されており、試料とX線源との距離及び試料と検出手段との距離はほぼ一定に保たれている。そのため、試料からX線源又は検出手段までの距離変動の影響を受けることなく2次X線を検出することが可能である。従って、この装置の場合は、試料ステージ上方に配置されたX線源及び検出手段によって夫々1次X線を照射及び2次X線を検出するX線分析装置のように、試料の厚み(高さ)に応じて、試料からX線源又は検出手段までの距離が変動し、2次X線の検出結果が変動することはない。
【0004】
また、この装置では、試料ステージ下方にX線源及び検出手段が配置されているため、試料ステージ上方の空間は空いており、大型の試料であっても試料ステージに容易に載置することが可能である。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−128262号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したX線分析装置において、1次X線は試料ステージのX線透過部全体に照射されており、試料のX線透過部近接領域に対する平均的な2次X線が検出されている。1次X線がX線透過部全体に照射されているため、試料の一部分(一地点)に対する2次X線は検出できない。
【0007】
また、試料の一部分に対する2次X線を検出する場合、試料の1次X線の被照射位置を調整する必要がある。しかし、上述したX線分析装置においては、1次X線を試料ステージのX線透過部全体に照射しているため、試料の1次X線の被照射位置調整は考慮されておらず、前記被照射位置を検出する手段は備えていない。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、X線源から発生した1次X線を被照射体下方に導くX線導管を備えることにより、被照射体下方の一部分に1次X線を照射して、前記一部分のX線分析を行うことが可能なX線分析装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、1次X線の照射方向と同軸的な方向から被照射体を撮像する撮像手段を備えることにより、試料の1次X線の被照射位置を正確に調整することが可能なX線分析装置を提供することを他の目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係るX線分析装置は、X線を透過するX線透過部を有し、該X線透過部上方に被照射体が配置される被照射体ステージと、被照射体ステージ下方に配置されたX線源と、X線源から発生した1次X線を、ビーム径を絞りつつ、前記X線透過部に導くX線導管と、前記被照射体からの光を反射する反射面、及び前記X線導管を挿通する挿通部を有する反射手段と、前記被照射体ステージ下方に配置され、前記X線透過部上方の前記被照射体への1次X線照射によって生じる2次X線を検出する検出手段と、前記反射手段で反射された光を受光する位置に配置され、前記被照射体への1次X線の照射方向と同軸的な方向から前記被照射体を撮像する撮像手段とを備え、前記X線導管は、端部が前記反射面の被照射体側端部より被照射体側に位置する状態で前記挿通部に挿通されていることを特徴とする。
【0011】
第1発明においては、X線を透過するX線透過部を有する被照射体ステージのX線透過部上方に被照射体(試料)を載置し、被照射体ステージ下方に配置されたX線源から発生した1次X線を、X線導管でX線透過部に導く。被照射体への1次X線照射によって生じる2次X線を、被照射体ステージ下方に配置された検出手段で検出する。X線源から発生した1次X線は、X線導管により、細いビーム径に絞られ、X線透過部上方の被照射体の一部分に照射される。被照射体の一部分に1次X線を照射した際に生じる2次X線を検出手段で検出し、被照射体の前記一部分のX線分析を行うことが可能になる。
また、撮像手段により、被照射体への1次X線の照射方向と同軸的な方向から被照射体を撮像する。撮像手段で撮像された撮像画像は、表示装置に表示される。前記撮像画像は、1次X線の照射方向と同軸的な方向から撮像されているため、試料の1次X線の被照射位置を正確に撮像することが可能である。表示装置に表示された撮像画像に基づいて、試料の1次X線の被照射位置を正確に調整することが可能になる。
そして、X線導管の周囲に配置された反射手段により、被照射体からの光を反射し、反射手段で反射された光を撮像手段で受光する。例えば、X線導管の先端部が挿通され、鏡面が試料に向けられたミラー板を反射手段として用い、前記鏡面で反射された被照射体の像を撮像手段で撮像することが可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
図1は本発明に係るX線分析装置の構成を示す模式図、図2はX線分析装置のX線導管部分を拡大した模式図である。X線分析装置は、箱型のX線分析装置本体1の下部に、1次X線aを発生させるX線源2が設けられており、X線分析装置本体1の上部に、試料(被照射体)10が載置される載台(被照射体ステージ)3が配置されている。載台3には、X線を透過させるX線透過部としてのX線透過窓4が形成されている。X線透過窓4は、前記1次X線a、後記する2次X線b、および可視光線cを透過させ得る合成樹脂などの隔膜で閉じられている。また、載台3外周には側壁18が形成され、側壁上部には開閉自在の蓋19が取付けられている。
【0017】
また、X線分析装置本体1内には、前記X線源2から発生した1次X線aをX線透過窓4に導くX線導管5が垂設されている。X線分析装置本体1内の上部には、前記X線透過窓4の周りから下方へ凸となり、中央に前記X線導管5上部が挿通された湾曲板1aが設けられており、該湾曲板1aと前記X線透過窓4との間の空間を密閉されたX線照射空間6としてある。X線照射空間6は、2次X線の減衰などを防止するため、真空に保つことが好ましい。X線導管5はガラス等により形成されており、X線源2が発生した1次X線aを10〜100μm単位の細いビーム径に絞りつつ導き、この細いビーム径の1次X線aをX線透過窓4(試料10)に向けて照射するように構成されている。
【0018】
また、X線照射空間6内には、X線導管5から試料10に1次X線aを照射することにより発生した蛍光X線等の2次X線bを検出する半導体検出器等の検出手段7と、X線透過窓4(試料10)を可視光線で照明する照明器11と、X線導管5の周囲に配置され、試料10からの光cをX線導管5の軸心と直交する方向へ反射させる反射体8と、該反射体8により反射した光cを集光する集光レンズ9とが収容されている。
【0019】
検出手段7は、前記湾曲板1aに挿入される円筒形のハウジング13の一端部(挿入側)に収容された状態でX線導管5に対して一側方に配置されている。X線源2から発生した1次X線aをX線導管5の上端から載台3上の試料10に向けて照射することにより、2次X線bが発生し、この2次X線bがX線照射空間6内で検出手段7によって検出される。
【0020】
集光レンズ9は前記湾曲板1aに挿入される円筒形のハウジング14の一端部(挿入側)に収容された状態でX線導管5に対して検出手段7と反対側に配置されている。ハウジング14の他端部には、前記試料10を撮像するCCDカメラ等の撮像手段15が設けられている。集光レンズ9はその光軸が後述する反射体8の反射面とほぼ45度となるように配置されている。この集光レンズ9によって集光された光は撮像手段15としてのCCDカメラの受光部に入光される。
【0021】
反射体8は、一側から中央部にかけて長孔形に切りかかれた挿通部8aを有し、この挿通部8aに前記X線導管5が挿通される鏡(反射面)からなり、X線導管5の軸周りで前記試料10の像を反射することができるように反射面を上向きにして前記ハウジング14に支持されている。即ち、反射体8は、X線導管5の周囲にX線導管5の軸心に対してほぼ45度となる角度で配置されており、試料10からの光(可視光線)をX線導管5の軸心に対してほぼ45度となる角度で反射させるように配置してある。反射体8で反射された試料10の像が、撮像手段15によって撮像される。
【0022】
以上のように構成されたX線分析装置の検出手段7が検出した検出値は、該検出値に基づいて2次X線bの強さを計測する計測部及び該計測部から出力された計測信号に基づいて試料10の組成等を分析する分析部を有する分析手段16に入力される。また、撮像手段15が撮像した像は表示手段17に表示される。分析手段16による分析結果を表示手段17に表示することも可能である。
【0023】
次に、本発明に係るX線分析装置を用いたX線分析方法について説明する。ユーザは、蓋19を開けて、試料10を載台3のX線透過部4付近に載置する。照明器11からの照明等によって発生した光(可視光線)が試料10下面で反射し、さらに、反射体8の鏡面で反射して集光レンズ9から撮像手段15の受光部に入光され、試料10の撮像画像が表示手段17に表示される。ユーザは、表示手段17に表示された撮像画像に基づいて、試料10の載置位置を調整する。
【0024】
載置位置の調整完了後、ユーザは、蓋19を閉じて、X線分析の開始を指示する。X線分析の開始の指示により、X線源2から1次X線が出力され、試料10への1次X線の照射により生じた2次X線を検出手段7で検出し、X線分析を行う。試料10に照射される1次X線はX線導管5により細いビーム径に絞られているため、試料10の一部分に1次X線が照射される。本説明においては、表示手段17に表示されている撮像画像は、反射体8により、X線導管5と同軸的な方向から撮像されており、例えば試料10の前記撮像画面中心部分に向けて1次X線が照射される。
【0025】
図3(a)、(b)に、1次X線の照射方向及び試料10の撮像方向の概念図を示す。X線導管5を挟んで検出手段7と対向するように撮像手段15を配置した場合は、図3(b)に示すように、1次X線の照射方向(図中の矢印A)と試料10の撮像方向(図中の矢印C)とがずれてしまい、正確な被照射位置を表示手段17に表示できない。本発明においては、図3(a)に示すように、1次X線の照射方向(図中の矢印A)と試料10の撮像方向(図中の矢印C)とは同軸的であり、正確な被照射位置を表示手段17に表示することが可能である。
【0026】
図4は、試料10がX線透過窓4よりも小さい場合の試料載置方法の例を示す図である。X線透過窓4を閉じる隔膜は非常に薄いため、試料10をX線透過窓4に接触させないことが好ましい。X線透過窓4よりも小さい試料10aのX線分析を行う場合は、底部をX線透過窓4よりも広いX線透過体20aで構成した試料容器20に試料10aを入れてX線分析を行う。また、試料10が液体の場合も、図4に示す試料容器20に液体試料を入れてX線分析を行う。
【0027】
Pb(鉛)、Cd(カドミウム)のX線分析結果の例を図5(a)、(b)に夫々示す。図5(a)は、Pb濃度が43,93,250,540ppmの各試料に対するX線分析を夫々10回繰返したPb濃度の検出結果(検出値の平均値及び標準偏差)であり、図5(b)は、Cd濃度が33,69,200,250ppmの各試料に対するX線分析を夫々10回繰返したCd濃度の検出結果(検出値の平均値及び標準偏差)である。ここで、X線導管5の内径は1mm、X線源2の管電圧は50kV、電流は1mA、フィルタは85μmのMo、測定時間は100sであり、試料10周辺は大気圧状態である。最小2乗法により、0ppmの標準偏差σを求めると、10.84ppm(Pb)及び4.68ppm(Cd)となる。検出下限は、例えば3σより、32.5ppm(Pb)及び14.1ppm(Cd)となる。
【0028】
【発明の効果】
第1発明によれば、X線導管により、X線源から発生した1次X線は細いビーム径に絞られており、被照射体下方の一部分に1次X線を照射することが可能である。被照射体下方の一部分への1次X線の照射により生じた2次X線を検出手段で検出し、前記一部分のX線分析を行うことが可能である。また、1次X線は細いビーム径に絞られているため、X線透過部の面積よりも小さな被照射体のX線分析を行うことが可能である。
そして、撮像手段により、被照射体への1次X線の照射方向と同軸的な方向から被照射体を撮像することにより、試料の1次X線の被照射位置を正確に撮像することが可能である。撮像した画像を用いて試料の1次X線の被照射位置を正確に調整することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るX線分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明に係るX線分析装置のX線導管部分を拡大した模式図である。
【図3】1次X線の照射方向及び試料の撮像方向の概念図を示す図である。
【図4】試料がX線透過窓よりも小さい場合の試料載置方法の例を示す図である。
【図5】X線分析結果の例を示す図である。
【符号の説明】
2 X線源
3 載台(被照射体ステージ)
5 X線導管
4 X線透過窓(X線透過部)
7 検出手段
8 反射体(反射手段)
10 試料(被照射体)
15 撮像手段

Claims (1)

  1. X線を透過するX線透過部を有し、該X線透過部上方に被照射体が配置される被照射体ステージと、
    被照射体ステージ下方に配置されたX線源と、
    X線源から発生した1次X線を、ビーム径を絞りつつ、前記X線透過部に導くX線導管と、
    前記被照射体からの光を反射する反射面、及び前記X線導管を挿通する挿通部を有する反射手段と、
    前記被照射体ステージ下方に配置され、前記X線透過部上方の前記被照射体への1次X線照射によって生じる2次X線を検出する検出手段と
    前記反射手段で反射された光を受光する位置に配置され、前記被照射体への1次X線の照射方向と同軸的な方向から前記被照射体を撮像する撮像手段と
    を備え
    前記X線導管は、端部が前記反射面の被照射体側端部より被照射体側に位置する状態で前記挿通部に挿通されていることを特徴とするX線分析装置。
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