JP3991501B2 - 3次元入力装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、物体に参照光を投射して物体を走査し、物体形状を特定するためのデータを出力する3次元入力装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レンジファインダと呼称される非接触型の3次元入力装置は、接触型に比べて高速の計測が可能であることから、CGシステムやCADシステムへのデータ入力、身体計測、ロボットの視覚認識などに利用されている。
【0003】
レンジファインダに好適な計測方法としてスリット光投影法(光切断法ともいう)が知られている。この方法は、物体を光学的に走査して距離画像(3次元画像)を得る方法であり、特定の参照光を投射して物体を撮影する能動的計測方法の一種である。距離画像は、物体上の複数の部位の3次元位置を示す画素の集合である。スリット光投影法では、参照光として投射ビームの断面が直線帯状であるスリット光が用いられる。走査中のある時点では物体の一部が照射され、撮像面には照射部分の起伏に応じて曲がった輝線が現れる。したがって、走査中に周期的に撮像面の各画素の輝度をサンプリングすることにより、物体形状を特定する一群のデータ(3次元入力データ)を得ることができる。
【0004】
従来においては、撮像面内の輝線の位置に基づいて、物体で反射して撮像面に入射したスリット光の入射角度を求め、その入射角度と当該スリット光の投射角度と基線長(投射の起点と受光基準点との距離)とから三角測量の手法で物体の位置を算出していた。つまり、参照光の投射方向と受光方向とに基づく位置演算が行われていた。なお、特開平10−2722号の装置のように参照光としてスポット光(ビーム断面が点状)を用いる場合にも、投射方向と受光方向とに基づいて物体の位置が算出されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来においては、3次元入力データの精度が参照光の投射角度制御の精度に依存し、このために十分に高い精度の3次元入力データが得られなかったり、精度を確保するために高価な部品を用いなければならなかったり、投光系の取付け姿勢の調整に手間がかかったりするという問題があった。精度の確保が難しい理由としては、投光系は参照光を偏向する可動機構を有しており、その動作は温度、湿度などの使用環境の変化の影響を受け易いことが挙げられる。
【0006】
本発明は、参照光の投射角度情報によらない3次元入力を実現し、投射角度制御の精度に係わらず高精度の3次元入力データを得るとともに、データの信頼性を高めることを目的としている。他の目的は、動作モードの多様化による実用性の向上を図ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、参照光で照らされた状態の物体と環境光で照らされた状態の物体とを互いに離れた2点のそれぞれを視点として順に撮影し、視点間の距離と各視点からみた物体上の注目点の方位(視点どうしを結ぶ直線に対する傾き)とから三角測量の手法で物体の位置を算出する。その際、注目点の方位を特定するために、参照光を投射したときの視点の異なる2個の撮影像についての画素の対応検索(マッチング)に加えて、参照光を投射しないときの撮影像についても対応検索を行う。物体の形状や配色によっては、参照光を投射しない場合の対応検索の方が信頼性が高くなる。2種の対応検索の結果を適切に選択することにより、データの信頼性を高めることができる。
【0008】
請求項1の発明の装置は、入力対象の物体を走査するように起点から前記物体に向かって参照光を投射する投光系と、第1の位置で前記物体を撮影するための第1の撮影系と、前記第1の位置から離れた第2の位置で前記物体を撮影するための第2の撮影系と、前記参照光を投射して前記物体を前記第1及び第2の撮影系によって同時に撮影したときの撮影データに基づいて、前記第1の撮影系の撮影面と前記第2の撮影系の撮影面との間での前記物体上の同一点からの光が入射する画素位置どうしを対応づける第1マッチング手段と、前記参照光を投射せずに前記物体を前記第1及び第2の撮影系によって撮影したときの撮影データに基づいて、前記第1の撮影系の撮影面と前記第2の撮影系の撮影面との間での前記物体上の同一点からの光が入射する画素位置どうしを対応づける第2マッチング手段と、前記第1の撮影系の撮影面における各画素について、前記第1マッチング手段によって得られた対応関係及び前記第2マッチング手段によって得られた対応関係の一方を選択する選択手段とを有し、前記選択手段によって選択された対応関係で決まる前記第1及び第2の位置のそれぞれでの受光角度に応じたデータを前記物体の位置情報として出力する3次元入力装置である。
【0009】
請求項2の発明の3次元入力装置において、前記選択手段は、前記第1マッチング手段によって得られた対応関係及び前記第2マッチング手段によって得られた対応関係のうち、信頼度の大きい方を選択する。
【0010】
請求項3の発明の3次元入力装置において、前記選択手段は、前記第1マッチング手段によって得られた対応関係の信頼度が第1基準値より小さく、且つ前記第2マッチング手段によって得られた対応関係の信頼度が第2基準値より大きい場合のみにおいて、前記第2マッチング手段によって得られた対応関係を選択する。
【0011】
請求項4の発明の3次元入力装置は、前記選択手段によって選択された対応関係が、前記第1マッチング手段及び前記第2マッチング手段のどちらによって得られたかを示す識別データを、前記データと対応づけて出力する。
【0012】
請求項5の発明の3次元入力装置は、前記第1マッチング手段によって得られた対応関係で決まる前記第1及び第2の位置のそれぞれでの受光角度に応じたデータを出力する第1モードと、前記選択手段によって選択された対応関係で決まる前記第1及び第2の位置のそれぞれでの受光角度に応じたデータを出力する第2モードと、前記第2マッチング手段によって得られた対応関係で決まる前記第1及び第2の位置のそれぞれでの受光角度に応じたデータを出力する第3モードとが設けられ、これらのうちの任意の1つを動作モードとして選択するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る3次元入力装置1の機能ブロック図である。
3次元入力装置1は、スリット光Uを投射する投光系10と、同一構成の2個の撮影系20A,20Bと、同一構成の2個の受光信号処理部30A,30Bとを有している。
【0014】
投光系10は、光源としての半導体レーザ12、ビーム整形のためのレンズ群13、及び投射角度を変更するビーム偏向手段としてのガルバノミラー14からなり、撮影系20A,20Bの中間に配置されている。レンズ群13は、コリメータレンズとシリンドリカルレンズとで構成される。ガルバノミラー14には、投光制御回路32からD/A変換器33を介して偏向制御信号が与えられる。
【0015】
撮影系20Aは、受光レンズ21、ビームスプリッタ22、スリット光Uで照射された物体Qを撮影して距離画像を得るためのイメージセンサ24A、物体Qのカラー撮影のためのカラーイメージセンサ25A、及びズーミングとフォーカシングとを可能にするレンズ駆動機構26からなる。ビームスプリッタ22は、半導体レーザ12の発光波長域(例えば中心波長685nm)の光と可視光とを分離する。同様に撮影系20Bも受光レンズ21、ビームスプリッタ22、イメージセンサ24B、カラーイメージセンサ25B、及びレンズ駆動機構26からなる。イメージセンサ24A,24B及びカラーイメージセンサ25A,25Bは2次元撮像デバイス(エリアセンサ)である。これらセンサとして、CCDセンサ、CMOSセンサを使用することができる。
【0016】
各イメージセンサ24A,24Bの出力はA/D変換器35で所定ビット数の受光データに変換され、逐次にメモリ回路37に転送される。メモリ回路37では受光データの値に応じて後述の受光角度θA,θBを特定する時間重心TA,TBが記憶される。カラーイメージセンサ25の出力はA/D変換器36で受光データに変換され、カラー画像メモリ38によって逐次に記憶される。記憶されたカラー画像はステレオ視法による3次元入力に用いられる。メモリ回路37及びカラー画像メモリ38のアドレス指定はメモリ制御回路39が担う。
【0017】
3次元入力装置1を制御するCPU31は制御対象に適時に指示を与える。また、CPU31は、受光信号処理部30A,30Bのそれぞれのメモリ回路37から時間重心TA,TBを取り込むとともに、2個の画像メモリ38のそれぞれからカラー画像を読み出し、2種のマッチング処理を行って距離データを生成する。距離データは適時に3次元入力データとして図示しない外部装置に出力される。その際、受光信号処理部30A,30Bの少なくとも一方のカラー画像メモリ38によって記憶されているカラー画像も参考情報として出力される。外部装置としては、コンピュータ、ディスプレイ、記憶装置などがある。CPU31には、後述の時間重心画像どうしのマッチングを行うブロック311、カラー画像どうしのマッチングを行うブロック312、及び2種のマッチングの結果の一方を選択するブロック313の各機能を実現するデータ処理プログラムが組み込まれている。
【0018】
3次元入力装置1においては、距離データの生成に関して3つのモードが設けられている。第1モードでは、時間重心画像のマッチングの結果のみに基づいて距離データを得る。第2モードでは、時間重心画像のマッチングの結果及びカラー画像のマッチングの結果の一方を所定条件に則して選択して距離データを得る。第3モードでは、カラー画像のマッチングの結果のみに基づいて距離データを得る。これらモードは物体の形状や配色などに応じて適宜選択される。例えば、物体の色が一様な場合は、カラー画像のマッチングの信頼性は低いので、第1モードが適している。逆に参照光の反射率が低い物体の場合は、時間重心画像のマッチングの信頼性は低いので、第3モードが適している。また、反射率の異なる部分が混在する物体の場合は、第2モードが適している。
【0019】
CPU31はモード指定部51の状態判別によって指定モードを検知する。モード指定部51としては、操作パネル、操作パネルとは別に設けられたディップスイッチ、遠隔操作のためのインタフェースなどがある。
【0020】
図2は投射の模式図である。
3次元入力装置1は、ガルバノミラー14の反射面上の点を起点Cとして仮想面VSを走査するようにスリット光Uを投射する。仮想面VSは、イメージセンサ24で撮影可能な空間(画角内の範囲)の奥行き方向と直交する断面に相当する。そして、仮想面VSのうちのイメージセンサ24A,24Bにおける各画素に対応した範囲agが、3次元入力のサンプリング区画となる。図2においては、投光の起点C、及び視点(受光の主点)A,Bが一直線上に配置されており、起点Cの位置は視点A,Bの中間である。ここで、視点A,Bは垂直方向に沿って並び、スリット光Uのスリット長さ方向は水平方向であるものとする。
【0021】
図3は時間重心の説明図である。
3次元入力装置1は、撮像面S2上でのスリット幅がピッチpvで並ぶ画素gの複数個分となる比較的に幅の広いスリット光Uを物体Qに投射する。具体的にはスリット光Uの幅を5画素分程度とする。スリット光Uは起点Cを中心に図の上下方向に等角速度で偏向される。物体Qで反射したスリット光Uは結像の主点A(ズームレンズの後側主点)を通って撮像面S2に入射する。スリット光Uの投射中に撮像面S2の各画素gの受光量を周期的にサンプリングすることにより、物体Q(厳密には物体像)が走査される。サンプリング周期(撮像周期)毎にイメージセンサ24A,24Bから1フレーム分の光電変換信号が出力される。
【0022】
物体Qの表面が平面であって光学系の特性によるノイズがないものとすると、撮像面S2の各画素gの受光量は、当該画素gがにらむ範囲(厳密にはその中心)の物体表面agをスリット光Uの光軸が通過する時点で最大となり、その時間的な分布は正規分布に近くなる。図3では撮像面S2における垂直方向のj番目の画素gj が注目され、その受光量の推移が図3(b)に示されている。図3(b)の例ではn回目のサンプリング時点Tn とその1つ前の(n−1)回目のサンプリング時点Tn-1 との間で受光量が最大になっている。このように注目した1つの画素gにおける受光量が最大になる時点、すなわち輝度分布曲線の頂上付近の変曲点を“時間重心”と定義する。ただし、離散的なサンプリングデータの大小判別による時間重心の検出では、検出結果(図3の例では時点Tn )と実際の時間重心との間に最大でサンプリング周期の1/2のずれが生じる。
【0023】
ここで、主点Aと撮像面S2の各画素gとの位置関係から、各画素gに対するスリット光Uの入射角度が一義的に決まる。したがって、時間重心は、「特定の角度(これを受光角度θAという)でスリット光Uが主点Aに入射する時刻」ということもできる。
【0024】
図4は投射角度情報によらない距離画像の生成要領を説明するための図、図5は時間重心画像どうしのマッチングの模式図である。
投射角度情報によらない物体Qの3次元入力の概要は次のとおりである。
【0025】
第1モード及び第2モードではスリット光Uを投射し、2個のイメージセンサ24によるフレーム周期の撮影に同期させてガルバノミラー14の偏向角を制御する。このとき、2個のイメージセンサ24A,24Bを同一タイミングで駆動する。つまり、物体Qを視点A,Bから同時に撮影する。そして、各イメージセンサ24A,24Bの各画素が、刻々と偏向されていくスリット光Uのどの時点の投射により照らされたかを検知する。
【0026】
一方のイメージセンサ24Aの出力に基づいて、撮影面S2の各画素gについて時間重心TAを検出し、検出結果の集合である時間重心画像GAをメモリに記録する。このとき、撮像面S2の水平方向(主走査方向)の画素位置を示す水平アドレスiと、垂直方向の画素位置を示す垂直アドレスjとによって個々の時間重心TAを記録するメモリ空間を指定する。同様に、他方のイメージセンサ24Bの出力に基づいて、撮影面S2の各画素gについて時間重心TBを検出し、検出結果の集合である時間重心画像GBをメモリに記録する。
【0027】
一方のイメージセンサ24Aにおける水平方向iA番目で垂直方向jA番目の画素giAjAに注目すると、画素giAjAに対応した視線上の点Pをスリット光Uが通過する際にその出力が最大となる。このとき、他方のイメージセンサ24Bの出力に注目すると、点Pを通る視線に対応した画素giBjBの出力が最大となる。ここで、時間重心画像GAと時間重心画像GBとについて、垂直方向にエピポラー拘束が成り立っているとすると、画素giAjAの水平方向位置iAに対して、画素giBjBの水平方向位置iBは一意に決まる。また、画素giAjAの垂直方向位置jAに対する画素giBjBの垂直方向位置jBは、時間重心画像GB中の水平方向位置iBの画素列のうち、画素giAjAの出力が最大となった時刻と同時刻に出力が最大となった画素を見つければ判る。したがって、イメージセンサ24A,24Bの各画素の出力が最大となる時刻である時間重心TAiAjA,TBiBjBを把握すれば、時間重心画像GAの各画素に対応する時間重心画像GBの画素を見つけ出すことができる。
【0028】
点Pが時間重心画像GAの画素giAjAに対応するとき、画素giAjAの位置で決まる受光角度θAiAjAと視点Aの空間座標とによって特定される直線上に点Pが存在することになる。同様に点Pが時間重心画像GBの画素giBjBに対応するとき、画素giBjBの位置で決まる受光角度θBiBjBと視点Bの空間座標とによって特定される直線上に点Pが存在することになる。つまり、これら2つの直線の交点が点Pである。したがって、受光角度θAiBjB,θBiBjB及び基線長Lに基づいて、三角測量の原理を適用して、視点A,Bを通る基線と点Pとの奥行き方向の距離DiAjAを算出することができ、視点A,Bと点Pとの相対位置を特定することができる。そして、以上の処理を時間重心画像GAの各画素gについて行えば、物体Qについて画素数分のサンプリング点の3次元位置情報(距離画像)が得られる。
【0029】
次に、時間重心TA,TBを検出するための回路の具体的な構成を説明する。なお、以下では画素位置の区別が必要な場合を除いて、画素位置を表す添字iAjA,iBjBの記述を省略する。
【0030】
図6はメモリ回路の第1例のブロック図である。
例示のメモリ回路37は、2個のメモリ371,376、比較器377、及びインデックスジェネレータ378から構成されている。
【0031】
メモリ371にはA/D変換器35から受光データD35が入力され、メモリ376にはインデックスジェネレータ378からフレーム番号Tが入力される。。比較器377は、イメージセンサ24の画素毎に最新の入力データであるt番目のフレームの受光データD35と以前にメモリ371に書き込まれた受光データD35とを比較し、最新の受光データD35が以前の受光データD35より大きい場合にメモリ371,376に対して書込みを許可する。これを受けて各メモリ371,376は上書き形式で最新の入力データを記憶する。比較結果が逆の場合は各メモリ371,376において以前の記憶内容が保持される。したがって、走査が終了した時点において、メモリ371は各画素g毎に受光データD35の最大値を記憶し、メモリ376は各画素毎に受光データD35が最大となったフレームの番号Tを記憶することになる。各フレームの撮影は一定周期で行われるので、フレーム番号Tは走査期間中の時刻(走査開始からの経過時間)を表す。つまり、メモリ376が記憶するフレーム番号Tは上述の時間重心TAiAjA,TBiBjBに相当し、受光角度θAiAjA,θBiBjBの対応を特定する情報である。
【0032】
この例によれば、比較的に簡単な回路構成によって時間重心TAiAjA,TBiBjBを検知することができる。ただし、検知の分解能はイメージセンサ24の撮影周期に依存する。分解能の向上を図ったものが次の第2例である。
【0033】
図7はメモリ回路の第2例のブロック図、図8は撮影面における輝度分布と受光データとの関係を示す図である。図7において図6に対応した要素には図6と同一の符号を付してある。
【0034】
第2例のメモリ回路37bは、メモリ371に加えてそれと同サイズの4個のメモリ372,373,374,375を設け、計4個の1フレームディレイメモリ379a〜dを介在させて各メモリ372〜375のデータ入力をメモリ371に対して順に1フレームずつ遅らせるように構成したものである。すなわち、メモリ回路37bでは、各画素gについて連続した5フレームの受光データD35が同時に記憶される。比較器377は、入力が2フレーム遅れの第3番目のメモリ373の入力と出力とを比較する。メモリ373の入力データ値が出力データ値(以前に書き込まれたデータ値)より大きい場合に、メモリ371〜375及びメモリ376の書込みが許可される。
【0035】
各走査が終了した時点において、メモリ373は各画素g毎に受光データD35の最大値を記憶することになる。また、メモリ371,372,374,375によって、受光データD35が最大となったフレームの2つ前、1つ前、1つ後、2つ後の計4フレームの受光データD35が記憶されることになる。そして、メモリ376は、各画素g毎に受光データD35が最大となったフレームの番号Tを記憶することになる。
【0036】
ここで、図8(a)のように、撮影面に結像したスリット光像の幅が5画素分であり、輝度分布が単一峰の山状であるものとする。このとき、1つの画素gに注目すると、図8(b)のように輝度分布に応じた変化の受光データが得られる。したがって、メモリ371〜375に記憶されている5フレーム分の受光データD35に基づいて重心演算を行うことにより、フレーム周期(つまり画素ピッチ)よりも細かな刻みで時間重心TA,TBを算出することができる。図8(b)の例では、時間重心TA(TB)はt回目と(t+1)回目のサンプリング時刻間にある。
【0037】
この第2例によれば分解能が向上するが、輝度分布によっては所望の精度が得られないという問題がある。すなわち、実際の撮影では、光学系の特性などに起因して結像に何らかのノイズが加わる。このため、輝度分布に複数のピークが生じたり、平坦でピークの不明瞭な輝度分布となったりする。輝度分布が理想形状から大きく外れると、重心演算の信頼性が低下する。
【0038】
このようなノイズの影響は、輝度の最大値が得られたフレームとその前後の各数フレームを合わせた程度の短い期間ではなく、十分に長い期間の輝度分布に基づいて重心演算を行うことによって低減することができる。それを実現するのが次の第3例である。
【0039】
図9はメモリ回路の第3例のブロック図、図10は図9に係る重心の概念図である。
第3例のメモリ回路37cは、メモリ3710、定常光データ記憶部3720、減算部3730、第1加算部3740、第2加算部3750、及び除算部3760から構成され、各画素g毎にフレーム数分の受光データD35に基づいて時間重心を算出する。
【0040】
メモリ3710は、物体Qに対する走査で得られた所定数qのフレームの受光データD35を記憶する。各画素gのT番目(T=1〜q)のフレームの受光データ値をxT と表す。定常光データ記憶部3720は、スリット光U以外の不要入射光量を表す定常光データを記憶する。定常光データはスリット光Uが入射していないときの受光データD35に基づいて算出される。その値sは、予め定めた固定値でもよいし、受光データD35を用いてリアルタイムで求めてもよい。固定値とする場合には、受光データD35が8ビット(256階調)である場合に、例えば「5」「6」又は「10」などとする。減算部3730は、メモリ3710から読み出された受光データD35の値xT から定常光データの値sを差し引く。ここで、減算部3730からの出力データの値をあらためてXT とする。第1加算部3740は、画素g毎にq個の受光データD35について、それぞれの値XT とそれに対応したフレーム番号Tとの乗算を行い、得られた積の合計値を出力する。第2加算部3750は、画素g毎にq個の受光データD35の値XT の総和を出力する。除算部3760は、第1加算部3740の出力値を第2加算部3750の出力値で除し、得られた時間重心TA,TBを出力する。
【0041】
以上の3次元入力はスリット光投影法を用いるものであったが、ステレオ視法を用いて投射角度情報によらない3次元入力を行うこともできる。
図11はカラー画像どうしのマッチングの説明図である。
【0042】
第2モード及び第3モードでは、スリット光Uを投射せずにせずに視点A,Bから物体Qのカラー撮影を行う。一方のカラーイメージセンサ25Aで撮影したカラー画像CAと、他方のカラーイメージセンサ25Bで撮影したカラー画像CBとの間で垂直方向にエピポラー拘束が成り立っているとすると、カラー画像CA中の画素PA(iA,jA)の対応点であるカラー画像CB中の画素PB’(iB,jB’)の探索方向は、画素PAの水平方向位置iAに対して水平方向位置iBと一意に決まる。なお、イメージセンサ24A,24Bとカラーイメージセンサ25A,25Bとで画像サイズと各画素が一致しているものとする。カラー画像間の対応点探索には、周知の相関法を用いる。ここで、その内容を簡単に説明する。
【0043】
図12は相関の一般例を示す図、図13は信頼度値の一例を示す図である。
相関法では、画像の局所的パターンを比較することにより、画素の対応づけを行う。カラー画像CAの注目画素PAについて、それを中心とするウインドウWを設定し、カラー画像CBの探索方向に沿った画素列(水平方向位置iBの画素列上)における各画素を中心とするウインドウWとの類似度を調べる。ウインドウWについては、例えば3×3,5×5,3×5というように奇数×奇数の構成の適切なサイズを選定する。カラー画像CBのウインドウWのうち、類似度が最も高く、且つ相関曲線のピーク形状が十分に急峻なウインドウWの中心画素PB’(iB,jB’)を注目画素PAの対応点とする。
【0044】
ここでは、類似度の評価に、いわゆる相関値を用いる。相関値Sは次式によって計算される。
【0045】
【数1】
相関値Sは、「−1〜+1」の範囲内にあり、「1」に近いほど、両ウィンドウWの類似度が高い。対応点は、図12のような曲線のピークを探すことにより決定する。相関値Sが広い範囲にわたって一定であれば、それは画像パターンが変化しないことを意味し、たとえ相関値が大きくても、対応点は特定できない。また、ピークが存在しても、ピークの相関値が十分に大きくない場合は、ピーク位置の画素を対応点に決定するのは不適切である。ピークが存在し、ピークの相関値Sが十分に大きい場合に、注目画素PA(iA,jA)の対応点として画素PB’(iB,jB’)を決定する。ここで、信頼度値RC を次のようにして決定する。ピークが存在していないときには定数「0」を、ピークが存在しているときには定数「1」を相関値に乗じて信頼度値とする。このとき負の値を示すものは強制的に「0」にする。
【0046】
上述したCPU31の機能要素であって本発明の選択手段に相当するブロック313(図1参照)は、ブロック311が時間重心画像どうしのマッチングで求めた対応点についての相関値ST から算出される信頼度値RT と、ブロック312がカラー画像どうしのマッチングで求めた対応点についての相関値SC とから算出される信頼度値RC とを比較し、より「1」に近い値を示した方を対応点として選択する。本実施形態では、時間重心画像どうしのマッチングには、相関法を用いていないので、相関値ST に定数「1」を乗じて信頼度値RT とし、ここで負の値を示すものは強制的に「0」にする。また、対応点が見つからなかったときも信頼度値RT を強制的に「0」にする。又は、信頼度値RT があらかじめ設定された基準値Raより小さく且つ信頼度値RC があらかじめ設定された基準値Rbより大きいときのみ、カラー画像どうしのマッチングで求めた対応点を選択するように構成する。
【0047】
このような対応点の選択を、イメージセンサ24Aの撮影面S2(画素配列はカラーイメージセンサ25Aと同一)の画素毎に行うことにより、スリット光投影法とステレオ視法とを併用することになり、両者の長所を生かして距離データDの信頼度を高めることができる。
【0048】
図14は3次元入力装置1の概略の動作を示すフローチャートである。
上述の第3モードであるカラーモードが指定されている場合は、投射を行わずに撮影系20A,20Bによる物体Qのカラー撮影を行い(#1、#2)、カラー画像CAの各画素に対応するカラー画像CBの画素を探索する(#3)。そして、このカラー画像どうしのマッチングの結果に基づいて距離データDを算出して出力する(#4)。ここでの出力は、外部装置へのデータ伝送、又は装置内のメモリへの記録(データ蓄積)を意味する。
【0049】
ステップ#1のモード判別でカラーモードでない場合は、半導体レーザ12及びガルバノミラー14をオンして走査を開始する(#5)。視点A,Bでの撮影で得られた受光データD35を記録する(#6)。走査が終わって半導体レーザ12をオフにした後、投射を行わずに撮影系20A,20Bにより物体Qのカラー撮影を行う(#7、#8)。そして、再びモード判別を行う(#9)。
【0050】
第2モードである対応点選択モードが指定されている場合は、時間重心画像GA,GBどうしのマッチングを行って対応の信頼度値RT を算出するとともに、カラー画像CA,CBどうしのマッチングを行って対応の信頼度値RC を算出する(#10、#11)。そして、信頼度値RT ,RC を比較し、上述の要領で画素毎に一方の対応づけを選択する(#12)。その後、カラーモードの場合と同様に距離データDを算出して出力する(#4)。ただし、対応点選択モードでは、どちらのマッチングの結果に基づく距離データDであるかを示す識別データDsを距離データDに付加して出力する。
【0051】
ステップ#9で対応点選択モードでない場合、すなわち第1モードが指定されている場合は、時間重心画像GA,GBどうしのマッチングの結果に基づいて距離データDを算出して出力する(#13、#4)。
【0052】
なお、カラー画像を参考情報として出力しない構成とする場合は、ステップ#9のモード判別とステップ#8のカラー撮影との順序を入れ替え、第1モードのときにはカラー撮影を行わないようにしてもよい。
【0053】
図15は投光と受光との位置関係の設定例を示す図である。
投光系10及び受光系20の配置においては、必ずしも投光の起点C及び受光の主点(視点)A,Bが一直線上に並ぶ図15(a)又は(b)のような構成にする必要はない。例えば、物体側からみて3個の点A,B,CがL字状に並ぶ図15(c)の構成、T字状に並ぶ図15(d)の構成を採用してもよい。特に、図15(b)又は(d)のように視点Aと視点Bとの間に起点Cを配置すれば、視点A,Bと起点Cとが異なることにより発生するオクルージョンを軽減することができる。その際には投光の起点Cと各視点A,Bとの距離dを等しくするのが好ましい。
【0054】
【発明の効果】
請求項1乃至請求項5の発明によれば、参照光の投射角度情報によらない3次元入力が実現されて、投射角度制御の精度に係わらず高精度の3次元入力データを得ることが可能になるとともに、データの信頼性を高めることができる。
【0055】
請求項5の発明によれば、動作モードの多様化による実用性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る3次元入力装置の機能ブロック図である。
【図2】投射の模式図である。
【図3】時間重心の説明図である。
【図4】投射角度情報によらない距離画像の生成要領を説明するための図である。
【図5】時間重心画像どうしのマッチングの模式図である。
【図6】メモリ回路の第1例のブロック図である。
【図7】メモリ回路の第2例のブロック図である。
【図8】撮影面における輝度分布と受光データとの関係を示す図である。
【図9】メモリ回路の第3例のブロック図である。
【図10】図9に係る重心の概念図である。
【図11】カラー画像どうしのマッチングの説明図である。
【図12】相関の一般例を示す図である。
【図13】信頼度値の一例を示す図である。
【図14】3次元入力装置1の概略の動作を示すフローチャートである。
【図15】投光と受光との位置関係の設定例を示す図である。
【符号の説明】
Q 物体
1 3次元入力装置
C 起点
U スリット光(参照光)
10 投光系
A 視点(第1の位置)
B 視点(第2の位置)
20A,20B 撮影系
D35 受光データ(撮影データ)
CA,CB カラー画像(撮影データ)
311 ブロック(第1マッチング手段)
312 ブロック(第2マッチング手段)
313 ブロック(選択手段)
TA,TB 時間重心
θA,θB 受光角度
D 距離データ(位置情報)
Ra 基準値
Rb 基準値
51 モード指定部
Ds 識別データ
Claims (5)
- 入力対象の物体を走査するように起点から前記物体に向かって参照光を投射する投光系と、
第1の位置で前記物体を撮影するための第1の撮影系と、
前記第1の位置から離れた第2の位置で前記物体を撮影するための第2の撮影系と、
前記参照光を投射して前記物体を前記第1及び第2の撮影系によって同時に撮影したときの撮影データに基づいて、前記第1の撮影系の撮影面と前記第2の撮影系の撮影面との間での前記物体上の同一点からの光が入射する画素位置どうしを対応づける第1マッチング手段と、
前記参照光を投射せずに前記物体を前記第1及び第2の撮影系によって撮影したときの撮影データに基づいて、前記第1の撮影系の撮影面と前記第2の撮影系の撮影面との間での前記物体上の同一点からの光が入射する画素位置どうしを対応づける第2マッチング手段と、
前記第1の撮影系の撮影面における各画素について、前記第1マッチング手段によって得られた対応関係及び前記第2マッチング手段によって得られた対応関係の一方を選択する選択手段とを有し、
前記選択手段によって選択された対応関係で決まる前記第1及び第2の位置のそれぞれでの受光角度に応じたデータを前記物体の位置情報として出力する
ことを特徴とする3次元入力装置。 - 前記選択手段は、前記第1マッチング手段によって得られた対応関係及び前記第2マッチング手段によって得られた対応関係のうち、信頼度の大きい方を選択する
請求項1記載の3次元入力装置。 - 前記選択手段は、前記第1マッチング手段によって得られた対応関係の信頼度が第1基準値より小さく、且つ前記第2マッチング手段によって得られた対応関係の信頼度が第2基準値より大きい場合のみにおいて、前記第2マッチング手段によって得られた対応関係を選択する
請求項1記載の3次元入力装置。 - 前記選択手段によって選択された対応関係が、前記第1マッチング手段及び前記第2マッチング手段のどちらによって得られたかを示す識別データを、前記データと対応づけて出力する
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の3次元入力装置。 - 前記第1マッチング手段によって得られた対応関係で決まる前記第1及び第2の位置のそれぞれでの受光角度に応じたデータを出力する第1モードと、前記選択手段によって選択された対応関係で決まる前記第1及び第2の位置のそれぞれでの受光角度に応じたデータを出力する第2モードと、前記第2マッチング手段によって得られた対応関係で決まる前記第1及び第2の位置のそれぞれでの受光角度に応じたデータを出力する第3モードとが設けられ、これらのうちの任意の1つを動作モードとして選択する
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の3次元入力装置。
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