JP3991354B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や各種産業機械の変速機として利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用変速機として、図10および図11に略示するようなトロイダル型無段変速機を使用することが一部で実施されている。このトロイダル型無段変速機は、例えば実開昭62-71465号公報に開示されているように、入力軸1と同心に第1のディスクである入力側ディスク2を支持し、入力軸1と同心に配置された出力軸3の端部に、第2のディスクである出力側ディスク4を固定している。トロイダル型無段変速機を納めたケーシングの内側には、入力軸1並びに出力軸3に対し捻れの位置にある枢軸5,5を中心として揺動するトラニオン6,6が設けられている。
【0003】
すなわち、各トラニオン6,6は、図12および後述する図14に示すように、支持板部7の長手方向(図12および図14の左右方向)の両端部に、この支持板部7の内側面側(図12の上側)に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部8,8を有している。そして、この折れ曲がり壁部8,8によって、トラニオン6には、後述するパワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部8,8の外側面(支持板部7と反対側の面)には、各枢軸5,5が互いに同心的に設けられている。
【0004】
支持板部7の中央部には円孔10が形成され、この円孔10には変位軸9の基端部が支持されている。そして、各枢軸5,5を中心として各トラニオン6,6を揺動させることにより、これら各トラニオン6,6の中央部に支持された変位軸9の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン6,6の内側面から突出する変位軸9の先端部の周囲には、パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、入力側および出力側の両ディスク2,4の間に挟持されている。なお、各変位軸9,9の基端部と先端部は、互いに偏心している。
【0005】
入力側および出力側の両ディスク2,4の互いに対向する内側面2a,4aの断面はそれぞれ、枢軸5を中心とする円弧或いはこのような円弧に近い曲線を回転させて得られる凹面を成している。そして、球状の凸面に形成された各パワーローラ11,11の周面11a,11aが各内側面2a,4aに当接されている。
【0006】
入力軸1と入力側ディスク2との間には、ローディングカム式の押圧装置12が設けられている。この押圧装置12は、入力側ディスク2を出力側ディスク4に向けて弾性的に押圧している。また、押圧装置12は、入力軸1と共に回転するカム板13と、保持器14により保持された複数個(例えば4個)のローラ15,15とから構成されている。また、カム板13の片側面(図10および図11の左側面)には、周方向に亙って凹凸面であるカム面16が形成され、入力側ディスク2の外側面(図10および図11の右側面)にも同様のカム面17が形成されている。そして、複数個のローラ15,15は、入力軸1に対して放射方向に延びる軸を中心に回転できるように、支持されている。
【0007】
このような構成のトロイダル型無段変速機においては、入力軸1を回転させると、その回転に伴ってカム板13が回転し、カム面16によって複数個のローラ15,15が、入力側ディスク2の外側面に設けられたカム面17に押圧される。この結果、入力側ディスク2が複数のパワーローラ11,11に押圧されると同時に、1対のカム面16,17と複数個のローラ15,15の転動面との押し付け合いに基づいて、入力側ディスク2が回転する。そして、この入力側ディスク2の回転が、各パワーローラ11,11を介して、出力側ディスク4に伝達され、この出力側ディスク4に固定された出力軸3が回転する。
【0008】
入力軸1と出力軸3との回転速度を変える場合であって、入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、枢軸5,5を中心として各トラニオン6,6を揺動させ、各パワーローラ11,11の周面11a,11aが、図10に示すように、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接するように、各変位軸9,9を傾斜させる。
【0009】
反対に、増速を行なう場合には、各トラニオン6,6を揺動させ、各パワーローラ11,11の周面11a,11aが、図11に示すように、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とにそれぞれ当接するように、各変位軸9,9を傾斜させる。各変位軸9,9の傾斜角度を図10と図11との中間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比が得られる。
【0010】
更に、図13および図14は、実願昭63−69293号(実開平1−173552号)のマイクロフィルムに記載されたより具体化されたトロイダル型無段変速機を示している。入力側ディスク2および出力側ディスク4はそれぞれ、円管状の入力軸18の周囲に、ニードル軸受19,19を介して、回転自在および軸方向に変位自在に支持されている。また、ローディングカム式の押圧装置12を構成するためのカム板13は、入力軸18の端部(図13の左端部)の外周面にスプライン係合され、鍔部20によって入力側ディスク2から離れる方向への移動が阻止されている。また、出力側ディスク4には出力歯車21がキー22,22により結合されており、これら出力側ディスク4と出力歯車21とが同期して回転するようになっている。
【0011】
前述の図12に示されるような構成を成す一対のトラニオン6,6の両端部はそれぞれ、一対の支持板23,23に対して揺動自在および軸方向(図13の表裏方向、図14の左右方向)に変位自在に支持されている。そして、各トラニオン6,6を構成する支持板部7の中央部に形成された円孔10には、基端部9aと先端部9bとが互いに平行で且つ偏心した変位軸9の基端部9aが、回転自在に支持されている。また、各支持板部7の内側面から突出する各変位軸9の先端部9bの周囲には、パワーローラ11が回転自在に支持されている。
【0012】
なお、一対のトラニオン6,6毎に設けられた一対の変位軸9,9は、入力軸18に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸9,9の先端部9bが基端部9aに対して偏心している方向は、入力側および出力側の両ディスク2,4の回転方向に対して同方向(図14で左右逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸18の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸18の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸18の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
【0013】
また、各パワーローラ11,11の外側面と各トラニオン6,6を構成する支持板部7の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉26,26と、これら各玉26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
【0014】
また、スラストニードル軸受25は、各トラニオン6,6を構成する支持板部7の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、各パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11および外輪28が各変位軸9の基端部9aを中心として揺動変位することを許容する。具体的に、スラストニードル軸受25は、レース25aと、保持器25bと、ニードル25cとから構成される。このうち、レース25aおよび保持器25bは、回転方向に若干変位できるように組み合されている。また、これらのレース25aおよび保持器25bは、変位軸9を中心とする円環部(図示せず)と、各円環部の一部外周縁から径方向外側に突出する突出部(図示せず)とを有している。
【0015】
更に、各トラニオン6,6の一端部(図14の左端部)にはそれぞれ駆動ロッド29が結合されており、各駆動ロッド29の中間部外周面に駆動ピストン30が固設されている。そして、これら各駆動ピストン30はそれぞれ、駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。
【0016】
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸18の回転は、押圧装置12を介して、入力側ディスク2に伝えられる。そして、この入力側ディスク2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して出力側ディスク4に伝えられ、更にこの出力側ディスク4の回転が、出力歯車21より取り出される。
【0017】
入力軸18と出力歯車21との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン30,30を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン30,30の変位に伴って、一対のトラニオン6,6が互いに逆方向に変位する。例えば、図14の下側のパワーローラ11が同図の右側に、同図の上側のパワーローラ11が同図の左側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと入力側ディスク2及び出力側ディスク4の内側面2a,4aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン6,6が、支持板23,23に枢支された枢軸5,5を中心として、互いに逆方向に揺動する。
【0018】
その結果、前述の図10および図11に示したように、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,4aとの当接位置が変化し、入力軸18と出力歯車21との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸18と出力歯車21との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11及びこれら各パワーローラ11に付属の外輪28が、各変位軸9の基端部9aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28の外側面と各トラニオン6を構成する支持板部7の内側面との間には、各スラストニードル軸受25が存在するため、前記回動は円滑に行なれる。したがって、前述のように各変位軸9,9の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
【0019】
図15は、従来技術に係るスラストニードル軸受25を組み付けたトラニオンの内側面図であり、中立状態から最大に変位した状態を示したものである。スラストニードル軸受25を構成するニードル25cがトラニオン6の内側面に、この内側面からはみ出さない状態で添設したレース25aからはみ出すことを防止すべく、保持器25bとトラニオン6との間に凹凸係合(凸部54、凹部56)が設けられている。
【0020】
保持器25bは、金属板または合成樹脂等により形成された基板49に、それぞれ長矩形である複数のポケット41を形成して成る。また、基板49の一部で中央から少し長さ方向片側(図15の右側)に偏った部分には、円孔50と、この円孔50の一部から径方向外側に突出する切り欠き51とが形成されている。
【0021】
保持器25bの基板49に形成された各ポケット41の長さ方向は、円孔50を中心とする放射線方向に一致する。したがって、スラストニードル軸受25を構成する全ニードル25cの軸線方向は、円孔10に挿通された変位軸9の基端部9aを中心とする放射線方向に一致する。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述のようなトロイダル型無段変速機の運転時においては、図15の(a)に矢印Aで示されるようにパワーローラ11が変位軸9を中心に揺動すると、図15の(b)に矢印Bで示されるようにスラストニードル軸受(バックアップ軸受)25の保持器25bもパワーローラ11の揺動方向に移動するが、スラストレース25aは、図15の(b)に矢印Cで示されるようにスラストニードル軸受25の保持器25bと逆方向に移動して、トラニオン6のポケット部Pに接触する。具体的には、トラニオン6の壁とスラストレース25aの外周とが図15の(c)のD部で接触し、スラストレース25aの移動が止まる。
【0023】
この場合、図15の(d)に明確に示されるようにスラストレース25aの外縁部90が直角であると、トラニオン6のポケット部Pの隅Rとスラストレース25aの外縁部90とが干渉し、トラニオン6のポケット部Pの隅Rにスラストレース25aが乗り上げ、スラストレース25aが破損したり、スラストニードル軸受25の剥離が生じる虞がある。また、スラストレース25aの移動量が大きすぎると、スラストレース25aがディスク2,4と干渉する虞もある。このような事態は、図16に示される丸型のベアリング(スラストニードル軸受)25’のスラストレース25a’の場合にも同様にして生じ得る。
【0024】
実際のところ、従来において、スラストレース25aは、図15の(d)に明確に示されるように、外周部がストレート形状となっている(バリ取りのみ、または、プレス打ち抜き状態であり、スラストレース25aの外縁部90が直角になっている(特開平9−133193号公報、特開平10−30700号公報、特開平11−351344号公報等参照)。したがって、前述したように、トラニオン6のポケット部Pの隅Rにスラストレース25aが乗り上げるといた問題が生じ得る。
【0025】
このようなスラストレース25aの乗り上げを防ぐためには、トラニオン6の隅Rを小さくする(スラストレース25aの外縁部90の直角形状に合わせて隅Rを直角にする)必要がある。しかしながら、ツールを用いて隅Rを精度良く直角に加工すると、ツールが摩耗したり欠損したりして、ツールの寿命が低下し、また、検査ロードの増大により、製造コストがアップする。
【0026】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、パワーローラ揺動時のスラストレースの移動に伴って、スラストレースの外周がトラニオンのポケット部の隅に乗り上がることを有効且つ安価に防止し得るトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された第1および第2のディスクと、これら第1および第2のディスクの中心軸に対して捻れの位置にある枢軸を中心に揺動するトラニオンと、このトラニオンを構成する支持板部の中央部に、この支持板部の内側面から突出する状態で支持された変位軸と、この変位軸の周囲に回転自在に支持された状態で前記第1および第2の両ディスクの間に挟持されたパワーローラと、このパワーローラの外側面に添設して設けられ、このパワーローラに加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、このパワーローラの揺動を許容する軸受とを備えたトロイダル型無段変速機において、前記軸受と前記トラニオンとの間に、これらの軸受およびトラニオンに対して相対移動可能に設けられるスラストレースの外周部の少なくとも前記トラニオンに面する側に面取りを設けたことを特徴とする。
【0028】
この請求項1に記載された発明においては、パワーローラが揺動してスラストレースがトラニオンの壁に接触する際にも、スラストレースの外周部に形成された面取りによって、トラニオンのポケット部の隅とスラストレースとの干渉に余裕ができるため、スラストレースの外周がトラニオンのポケット部の隅に乗り上がることが防止されるとともに、トラニオン側の隅を大きくできる。
【0029】
また、請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の発明において、スラストレースの外周部の前記トラニオンに面する側および前記パワーローラに面する側に面取りを設け、前記トラニオンに面する側におけるスラストレースの面取りを、前記パワーローラに面する側におけるスラストレースの面取りよりも大きくしたことを特徴とする。
【0030】
この請求項2に記載された発明においては、スラストレースがトラニオンの壁に食い込んでしまうことを防止できる。
【0031】
また、請求項3に記載された発明は、請求項1に記載の発明において、前記スラストレースにおける前記面取りが、プレス加工によって形成されていることを特徴とする。
【0032】
この請求項3に記載された発明においては、スラストレースの加工コストを下げることができる。
【0033】
また、請求項4に記載された発明は、請求項3に記載の発明において、トラニオンと接触しないスラストレースの部位には、プレス加工時に肉を逃がす肉逃げ部が設けられていることを特徴とする。
【0034】
この請求項4に記載された発明においては、スラストレースの面取りをプレスで加工しても、肉の逃げによって外周部、平面側、幅方向に出張りが生じることを防止できる。
【0035】
また、請求項5に記載された発明は、請求項2に記載の発明において、前記スラストレースには、組み立て後に視認可能な位置に、面取り位置を判別するためのマークが施されていることを特徴とする。
【0036】
この請求項5に記載された発明においては、組み立て後の最終検査で誤組みを検査することが可能になる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の特徴は、パワーローラ揺動時のスラストレースの移動に伴って、スラストレースの外周がトラニオンのポケット部の隅に乗り上がることを有効且つ安価に防止し得る構造にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図10〜図16と同一の符号を付してその詳細な説明を省略することにする。
【0038】
図1には、本発明の第1の実施形態が示されている。図1(a)はスラストレースの平面図、また(c)は側面図を示す。図1(b)および(e)に拡大して図示するように、本実施形態のスラストレース25Aの外周縁には、面取り60が形成されている。したがって、図1(d)に示すように、パワーローラ11が揺動してスラストレース25Aがトラニオン6の壁に接触する際にも、スラストレース25Aの外周部に形成された面取り60によって、トラニオン6のポケット部Pの隅R’とスラストレース25Aとの干渉に余裕ができるため、スラストレース25Aの外周がトラニオン6のポケット部Pの隅R’に乗り上がることが防止されるとともに、トラニオン6側の隅R’を大きくできる(隅R’を直角に形成する必要がない)。これに対し、図2に示す従来のように、スラストレース25aの外周部に面取りが形成されていないと、図2(d)に示すように、スラストレース25aの乗り上げを防止するためにトラニオン6のポケット部Pの隅Rを小さくしなければならず、したがって、隅Rを小さく加工するツールが摩耗したり欠損したりして、ツールの寿命が低下し、また、検査ロードの増大により、製造コストがアップする。本実施形態の構成では、そのような問題が生じない。
【0039】
図3には、本発明の第2の実施形態が示されている。図示のように、本実施形態では、丸型のベアリング(スラストニードル軸受)25’のスラストレース25A’の外周縁に面取り60を形成したものである。したがって、図3(c)に示すように、パワーローラ11が揺動してスラストレース25A’がトラニオン6の壁に接触する際にも、スラストレース25A’の外周部に形成された面取り60によって、トラニオン6のポケット部Pの隅R’とスラストレース25A’との干渉に余裕ができるため、スラストレース25A’の外周がトラニオン6のポケット部Pの隅R’に乗り上がることが防止されるとともに、トラニオン6側の隅R’を大きくできる(隅R’を直角に形成する必要がない)。これに対し、図4に示す従来のように、スラストレース25a’の外周部に面取りが形成されていないと、図4(c)に示すように、スラストレース25a’の乗り上げを防止するためにトラニオン6のポケット部Pの隅Rを小さくしなければならず、したがって、隅Rを小さく加工するツールが摩耗したり欠損したりして、ツールの寿命が低下し、また、検査ロードの増大により、製造コストがアップする。本実施形態の構成では、そのような問題が生じない。
【0040】
ところで、スラストレース25A,25A’の両面に面取り60を加工すると、加工費がアップするだけはなく、スラストレース25A,25A’とトラニオン6の壁との接触幅W(図1の(d)参照)が減少することにより、スラストレース25A,25A’がトラニオン6の壁に食い込んでしまう虞がある。したがって、スラストレース25A,25A’の食い込みを防止するために、トラニオン6側におけるスラストレース25A,25A’の面取りを、パワーローラ11側におけるスラストレース25A,25A’の面取りよりも大きくすることが望ましく、特に板厚の薄いスラストレースを使用する場合には、面取り60をトラニオン6側だけに設けることが望ましい。また、バックアップ軸受の耐力を確保するために、スラストレース25A,25A’の肉厚不同を0.03mm以下にすることが望ましい。
【0041】
また、スラストレース25A,25A’の加工コストを下げるため、面取り60をプレスで面押し形成することが望ましい。しかし、このように、スラストレース25A,25A’の面取り60をプレスで加工すると、図5に示されるように、各方向に出張りが発生してしまう。すなわち、面取り60のプレス加工時にスラストレース25A,25A’の外周部に肉が逃げてこの部位に出張り65が生じたり(図5の(a)の状態)、あるいは、スラストレース25A,25A’の平面側に肉が逃げてこの部位に出張り66が生じたり(図5の(b)の状態)、あるいは、スラストレース25A,25A’の幅方向に肉が逃げてこの部位に出張り67が生じてしまう(図5の(c)の状態)。スラストレースは、トラニオン6のポケット部Pとの隙間を小さくすることにより、揺動時のトラニオン6からの出張りを小さくすることができるため、スラストレースの外径は寸法公差を小さくする必要があるが、スラストレースの外周部の面取りをプレスで加工する場合に、図5の(a)のように外周方向に出張り65が生じると、組み立てが不能になったり、前記揺動量が大きくなってしまう。また、図5の(b)のように、平面側に出張り66が生じると、スラストレースおよびバックアップ軸受の面圧分布が均等でなくなり、剥離してしまう虞がある。すなわち、スラストレースの耐力が低下してしまう。更に、図5の(c)のように幅方向に出張り67が生じると、スラストレースとディスク2,4とが干渉してしまう可能性がある。
【0042】
そこで、図6および図7に示されるように、トラニオン6と接触しないスラストレース25A,25A’の部位にプレスの肉逃げ部70を設けることが望ましい。具体的には、図6に示されるように、トラニオン6と接触しないスラストレース25Aの両サイド(図6の(a)のF部)に肉逃げ部70を設ける。なお、図6の(c)は面取り60のプレス加工前の形状を示し、(d)はプレス加工後の形状を示す。このようにすれば、プレス加工時に図6の(d)に示されるように、肉逃げ部70内で肉が逃げて肉逃げ部70内で出張り79が生じるため、図8の(a)(b)に示されるように、外周部、平面側、幅方向に出張りが生じることがない。なお、図7は、スラストレース25Aの中央部に凹状の肉逃げ部70を設けた場合であり、図7の(c)が面取り60のプレス加工前の形状を示し、(d)はプレス加工後の形状を示す。この場合も、図6と同様の作用効果が得られる。
【0043】
なお、面取り60は、一般に、組み立て後に隠れてしまい、後に、誤組みを検査することがねきないため、図9に示されるように、組み立て後でも見える位置に表裏が分かるような(面取り位置が分かるような)マーク80をつけることが望ましい。これにより、最終検査で誤組みを検査することが可能になる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のトロイダル型無段変速機によれば、パワーローラ揺動時のスラストレースの移動に伴って、スラストレースの外周がトラニオンのポケット部の隅に乗り上がることを有効且つ安価に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るスラストレースを示し、(a)はスラストレースの平面図、(b)は(a)のF部の拡大図、(c)は(a)のスラストレースの側面図、(d)はスラストレースの組み立て時の要部断面図、(e)は(a)のスラストレースの外周縁部の拡大図である。
【図2】従来のスラストレースを示し、(a)はスラストレースの平面図、(b)は(a)のE部の拡大図、(c)は(a)のスラストレースの側面図、(d)はスラストレースの組み立て時の要部断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るスラストレースを示し、(a)はスラストレースの平面図、(b)は(a)のスラストレースの側面図、(c)はスラストレースの組み立て時の要部断面図、(d)は(a)のスラストレースの外周縁部の拡大図である。
【図4】従来のスラストレースを示し、(a)はスラストレースの平面図、(b)は(a)のスラストレースの側面図、(c)はスラストレースの組み立て時の要部断面図である。
【図5】プレス加工による肉逃げに伴う出張りの発生形態を示す要部拡大図である。
【図6】肉逃げ部の第1の形成形態を示し、(a)はスラストレースの平面図、(b)は(a)のスラストレースの側面図、(c)は面取りのプレス加工前の形状を示す(a)のF部の拡大図、(d)はプレス加工後の形状を示す(a)のF部の拡大図である。
【図7】肉逃げ部の第2の形成形態を示し、(a)はスラストレースの平面図、(b)は(a)のスラストレースの側面図、(c)は面取りのプレス加工前の形状を示す拡大図、(d)はプレス加工後の形状を示す拡大図である。
【図8】肉逃げ部の形成によって外周部、平面側、幅方向に肉逃げによる出張りが生じない状態を示す概略図である。
【図9】面取りの位置を判別するためのマーキングを付与した形態を示し、(a)はスラストレースの平面図、(b)は(a)のスラストレースの側面図、(c)は組み立て後のスラストニードルのマーコング位置を示す側面図である。
【図10】従来から知られているの基本的構成を最大減速時の状態で示す側面図である。
【図11】従来から知られているトロイダル型無段変速機の基本的構成を最大増速時の状態で示す側面図である。
【図12】トラニオンの具体的形状をスラスト荷重により弾性変形した状態で示す断面図である。
【図13】従来の具体的構造の一例を示す断面図である。
【図14】図11のX−X線に沿う断面図である。
【図15】従来のパワーローラユニットを示し、(a)はパワーローラユニットの下面図、(b)はパワーローラを取り外した状態におけるスラストニードル軸受の内側平面図、(c)は(b)の要部拡大図、(d)は(c)のX−X線に沿う断面図である。
【図16】従来の他のパワーローラユニットを示し、(a)はパワーローラユニットの下面図、(b)はパワーローラを取り外した状態におけるスラストニードル軸受の内側平面図、(c)は(b)の要部拡大図、(d)は(c)のX−X線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1 入力軸
2 入力側ディスク
2a 内側面
3 出力軸
4 出力側ディスク
4a 内側面
5 枢軸
6 トラニオン
7 支持板部
8 折れ曲がり壁部
9 変位軸
9a 基端部
9b 先端部
10 円孔
11 パワーローラ
11a 周面
25 スラストニードル軸受
25A,25A’ スラストレース
60 面取り
P ポケット部
Claims (5)
- 互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された第1および第2のディスクと、これら第1および第2のディスクの中心軸に対して捻れの位置にある枢軸を中心に揺動するトラニオンと、このトラニオンを構成する支持板部の中央部に、この支持板部の内側面から突出する状態で支持された変位軸と、この変位軸の周囲に回転自在に支持された状態で前記第1および第2の両ディスクの間に挟持されたパワーローラと、このパワーローラの外側面に添設して設けられ、このパワーローラに加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、このパワーローラの揺動を許容する軸受とを備えたトロイダル型無段変速機において、
前記軸受と前記トラニオンとの間に、これらの軸受およびトラニオンに対して相対移動可能に設けられるスラストレースの外周部の少なくとも前記トラニオンに面する側に面取りを設けたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。 - スラストレースの外周部の前記トラニオンに面する側および前記パワーローラに面する側に面取りを設け、前記トラニオンに面する側におけるスラストレースの面取りを、前記パワーローラに面する側におけるスラストレースの面取りよりも大きくしたことを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機
- 前記スラストレースにおける前記面取りが、プレス加工によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
- トラニオンと接触しないスラストレースの部位には、プレス加工時に肉を逃がす肉逃げ部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のトロイダル型無段変速機。
- 前記スラストレースには、組み立て後に視認可能な位置に、面取り位置を判別するためのマークが施されていることを特徴とする請求項2に記載のトロイダル型無段変速機。
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