JP4461349B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や各種産業機械の変速機として利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用変速機として、図8および図9に略示するようなトロイダル型無段変速機を使用することが一部で実施されている。このトロイダル型無段変速機は、例えば実開昭62−71465号公報に開示されているように、入力軸1と同心に第1のディスクである入力側ディスク2を支持し、入力軸1と同心に配置された出力軸3の端部に、第2のディスクである出力側ディスク4を固定している。トロイダル型無段変速機を納めたケーシングの内側には、入力軸1並びに出力軸3に対し捻れの位置にある枢軸5,5を中心として揺動するトラニオン6,6が設けられている。
【0003】
すなわち、各トラニオン6,6は、図10および後述する図12に示すように、支持板部7の長手方向(図10および図12の左右方向)の両端部に、この支持板部7の内側面側(図10の上側)に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部8,8を有している。そして、この折れ曲がり壁部8,8によって、トラニオン6には、後述するパワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部8,8の外側面(支持板部7と反対側の面)には、各枢軸5,5が互いに同心的に設けられている。
【0004】
支持板部7の中央部には円孔10が形成され、この円孔10には変位軸9の基端部が支持されている。そして、各枢軸5,5を中心として各トラニオン6,6を揺動させることにより、これら各トラニオン6,6の中央部に支持された変位軸9の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン6,6の内側面から突出する変位軸9の先端部の周囲には、パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、入力側および出力側の両ディスク2,4の間に挟持されている。なお、各変位軸9,9の基端部と先端部は、互いに偏心している。
【0005】
入力側および出力側の両ディスク2,4の互いに対向する内側面2a,4aの断面はそれぞれ、枢軸5を中心とする円弧或いはこのような円弧に近い曲線を回転させて得られる凹面を成している。そして、球状の凸面に形成された各パワーローラ11,11の周面11a,11aが各内側面2a,4aに当接されている。
【0006】
入力軸1と入力側ディスク2との間には、ローディングカム式の押圧装置12が設けられている。この押圧装置12は、入力側ディスク2を出力側ディスク4に向けて弾性的に押圧している。また、押圧装置12は、入力軸1と共に回転するカム板13と、保持器14により保持された複数個(例えば4個)のローラ15,15とから構成されている。また、カム板13の片側面(図8および図9の左側面)には、周方向に亙って凹凸面であるカム面16が形成され、入力側ディスク2の外側面(図8および図9の右側面)にも同様のカム面17が形成されている。そして、複数個のローラ15,15は、入力軸1に対して放射方向に延びる軸を中心に回転できるように、支持されている。
【0007】
このような構成のトロイダル型無段変速機においては、入力軸1を回転させると、その回転に伴ってカム板13が回転し、カム面16によって複数個のローラ15,15が、入力側ディスク2の外側面に設けられたカム面17に押圧される。この結果、入力側ディスク2が複数のパワーローラ11,11に押圧されると同時に、1対のカム面16,17と複数個のローラ15,15の転動面との押し付け合いに基づいて、入力側ディスク2が回転する。そして、この入力側ディスク2の回転が、各パワーローラ11,11を介して、出力側ディスク4に伝達され、この出力側ディスク4に固定された出力軸3が回転する。
【0008】
入力軸1と出力軸3との回転速度を変える場合であって、入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、枢軸5,5を中心として各トラニオン6,6を揺動させ、各パワーローラ11,11の周面11a,11aが、図8に示すように、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接するように、各変位軸9,9を傾斜させる。
【0009】
反対に、増速を行なう場合には、各トラニオン6,6を揺動させ、各パワーローラ11,11の周面11a,11aが、図9に示すように、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とにそれぞれ当接するように、各変位軸9,9を傾斜させる。各変位軸9,9の傾斜角度を図8と図9との中間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比が得られる。
【0010】
更に、図11および図12は、実願昭63−69293号(実開平1−173552号)のマイクロフィルムに記載されたより具体化されたトロイダル型無段変速機を示している。入力側ディスク2および出力側ディスク4はそれぞれ、円管状の入力軸18の周囲に、ニードル軸受19,19を介して、回転自在および軸方向に変位自在に支持されている。また、ローディングカム式の押圧装置12を構成するためのカム板13は、入力軸18の端部(図11の左端部)の外周面にスプライン係合され、鍔部20によって入力側ディスク2から離れる方向への移動が阻止されている。また、出力側ディスク4には出力歯車21がキー22,22により結合されており、これら出力側ディスク4と出力歯車21とが同期して回転するようになっている。
【0011】
前述の図10に示されるような構成を成す一対のトラニオン6,6の両端部はそれぞれ、一対の支持板23,23に対して揺動自在および軸方向(図11の表裏方向、図12の左右方向)に変位自在に支持されている。そして、各トラニオン6,6を構成する支持板部7の中央部に形成された円孔10には、基端部9aと先端部9bとが互いに平行で且つ偏心した変位軸9の基端部9aが、回転自在に支持されている。また、各支持板部7の内側面から突出する各変位軸9の先端部9bの周囲には、パワーローラ11が回転自在に支持されている。
【0012】
なお、一対のトラニオン6,6毎に設けられた一対の変位軸9,9は、入力軸18に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸9,9の先端部9bが基端部9aに対して偏心している方向は、入力側および出力側の両ディスク2,4の回転方向に対して同方向(図12で左右逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸18の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸18の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸18の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
【0013】
また、各パワーローラ11,11の外側面と各トラニオン6,6を構成する支持板部7の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉26,26と、これら各玉26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
【0014】
また、スラストニードル軸受25は、各トラニオン6,6を構成する支持板部7の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、各パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11および外輪28が各変位軸9の基端部9aを中心として揺動変位することを許容する。
【0015】
更に、各トラニオン6,6の一端部(図12の左端部)にはそれぞれ駆動ロッド29が結合されており、各駆動ロッド29の中間部外周面に駆動ピストン30が固設されている。そして、これら各駆動ピストン30はそれぞれ、駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。
【0016】
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸18の回転は、押圧装置12を介して、入力側ディスク2に伝えられる。そして、この入力側ディスク2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して出力側ディスク4に伝えられ、更にこの出力側ディスク4の回転が、出力歯車21より取り出される。
【0017】
入力軸18と出力歯車21との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン30,30を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン30,30の変位に伴って、一対のトラニオン6,6が互いに逆方向に変位する。例えば、図12の下側のパワーローラ11が同図の右側に、同図の上側のパワーローラ11が同図の左側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと入力側ディスク2及び出力側ディスク4の内側面2a,4aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン6,6が、支持板23,23に枢支された枢軸5,5を中心として、互いに逆方向に揺動する。
【0018】
その結果、前述の図8および図9に示したように、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,4aとの当接位置が変化し、入力軸18と出力歯車21との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸18と出力歯車21との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11及びこれら各パワーローラ11に付属の外輪28が、各変位軸9の基端部9aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28の外側面と各トラニオン6を構成する支持板部7の内側面との間には、各スラストニードル軸受25が存在するため、前記回動は円滑に行なれる。したがって、前述のように各変位軸9,9の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
前述のようなトロイダル型無段変速機の運転時において、各トラニオ6,6の内側面側(ポケット部P側)に回転自在に支持されたパワーローラ11には、入力側および出力側の両ディスク2,4の内側面2a,4aからスラスト荷重が加わる。そして、このスラスト荷重は、スラスト玉軸受24及びスラストニードル軸受25を介して、各トラニオン6を構成する支持板部7の内側面に伝達される。したがって、トロイダル型無段変速機の運転時に各トラニオン6,6は、図10に誇張して示すように、パワーローラ11が位置する内側面側が凹面となる方向に、僅かとは言え弾性変形する。
【0020】
そして、この弾性変形量が大きくなると、スラスト玉軸受24を構成する転動体である玉26,26及びスラストニードル軸受25を構成するニードルに加わるスラスト荷重が不均一になる。すなわち、各トラニオン6の弾性変形の結果、これら各トラニオン6を構成する支持板部7の内側面と各パワーローラ11の外側面との距離が不均一になる。そして、これら両面同士の距離が大きくなった部分に存在する転動体に加わるスラスト荷重が小さくなる代わりに、この距離が小さくなった部分に存在する転動体に加わるスラスト荷重が大きくなる。この結果、一部の転動体に過大なスラスト荷重が加わり、この一部の転動体と当該転動体の転動面が当接している軌道面との当接圧が過大となって、これら転動面及び軌道面の疲れ寿命が著しく短くなる。
【0021】
また、トラニオン6の両端部に設けられた傾転軸受の転動面である各枢軸5,5と、パワーローラ11を支持するための支持板部7との結合部位A(図13参照)には応力が集中し易く、過大なトルクが入力されて前述のようにトラニオン6が弾性変形した場合には、前記結合部位Aに亀裂等の損傷が発生し易くなる。そのため、従来は、トラニオン6の肉厚を大きくして、このような損傷の発生を防止しているが、大型化して重量が増加するとともに、コストも増大するため、好ましくない。また、枢軸5と支持板部7とを必要以上に大きな半径で結合する必要があり、加工上においても問題が生じていた。
【0022】
また、トラニオン6が図10に示すように弾性変形すると、変位軸9がトラニオン6に対し傾斜する。その場合、変位軸9の基端部9aとトラニオン6との係合部B(図13参照)に応力が集中して、この部分に亀裂等の損傷が発生し易くなる。また、変位軸9がトラニオン6に対し傾斜すると、変位軸9の先端部9bに支持されたパワーローラ11の位置がずれるため、パワーローラ11の周面11aと各ディスク2,4の内側面2a,4aとの接触点が所定位置からずれ、変速動作が不安定になる。
【0023】
そのため、パワーローラ11が位置するトラニオン6の内側面側に、一対の折れ曲がり壁部8,8の先端部同士を連結する連結部材を設け、この連結部材によって、トラニオン6の内側面側が凹面となる方向に弾性変形することを規制する技術も提案されている(特願2000−122648号参照)。しかしながら、この技術では、前記連結部材によって一対の折れ曲がり壁部8,8の先端部同士が単に連結されているだけであるため、トラニオン6の弾性変形を効果的に防止できない場合も生じ得る。すなわち、前記連結部材が位置するトラニオン6の側(内側面側)にはパワーローラ11が収容される凹状のポケット部Pが存在するため、このポケット部Pを押し潰す方向にトラニオン6が弾性変形し易いが、前記連結部材は、折れ曲がり壁部8,8の先端部同士を単に連結しているだけであるため、ポケット部Pを押し潰す力をその方向でうまく受けることができず(トラニオン6の弾性変形を規制する前記連結部材の規制力が、ポケット部Pを押し潰す力に抗する方向に有効に作用せず)、したがってトラニオン6の弾性変形を効果的に防止することができない場合も生じ得る。そのため、連結部材の強度を大きく確保することが必要になる場合もあり得る。
【0024】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、トラニオンの弾性変形を効果的に防止できるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載されたトロイダル型無段変速機は、互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された第1および第2のディスクと、これら第1および第2のディスクの中心軸に対して捻れの位置にある枢軸を中心に揺動するトラニオンと、このトラニオンを構成する支持板部の中央部に、この支持板部の内側面から突出する状態で支持された変位軸と、この変位軸の周囲に回転自在に支持された状態で前記第1および第2の両ディスクの間に挟持されたパワーローラと、このパワーローラの外側面に添設して設けられ、このパワーローラに加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、このパワーローラの回転を許容する軸受とを備え、前記支持板部の長手方向の両端部には、前記パワーローラを収容するポケット部を形成するように前記支持板部の内側面側に折れ曲がる一対の折れ曲がり壁部が形成され、これらの各折れ曲がり壁部の外側面に前記各枢軸が互いに同心的に設けられて成るトロイダル型無段変速機において、前記一対の折れ曲がり壁部同士を連結する連結部材を備え、この連結部材は、スラスト方向と略直交する方向で前記ポケット部の内面に当接し且つポケット部を押し潰すように作用する押圧力を受ける受圧部を有し、この受圧部は、前記ポケット部内の前記折れ曲がり壁部の端部に形成された段部に対向配置していることを特徴とする。
【0026】
この請求項1に記載された発明によれば、ポケット部の内面に当接される受圧部によって、ポケット部を押し潰す力をその方向で直接に受けることができる。したがって、トラニオンの弾性変形を効果的に防止することができ、トラニオンの枢軸と支持板部との結合部位に作用する応力を低減できる。
【0031】
また、請求項2に記載されたトロイダル型無段変速は、請求項1に記載の発明において、前記連結部材は、これが前記トラニオンからスラスト方向で外れることを防止する手段を有していることを特徴とする。
【0032】
この請求項2に記載された発明によれば、連結部材をトラニオンに強固に固定することができる。
【0033】
また、請求項3に記載されたトロイダル型無段変速は、請求項1に記載の発明において、前記連結部材の受圧部及びこれと接合する前記トラニオンの接合面は、スラスト方向に対し所定の角度をもって傾斜していることを特徴とする。
【0034】
この請求項3に記載された発明によれば、トラニオンが変形した際に、傾斜する面が相手部材に楔のように食い込むため、トラニオンの変形を更に抑えることができる。また、傾斜する面が楔状に食い込むことにより、連結部材がトラニオンからスラスト方向に外れることを防止できる。
また、請求項4に記載されたトロイダル型無段変速は、請求項1に記載の発明において、前記連結部材の前記受圧部とこれが接合する前記ポケット部の内面との間に締め代が設けられ、前記受圧部が前記ポケット部内に締りばめによって圧入されることを特徴とする。
この請求項4に記載された発明によれば、前記受圧部が前記ポケット部内に締りばめによって圧入されることにより、トラニオンの曲げ変形を緩和することができる。また、締め代により、連結部材がトラニオンからスラスト方向に外れることを防ぐことができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本発明の特徴は、トロイダル型無段変速機の運転時に、パワーローラ11からスラスト玉軸受24及びスラストニードル軸受25を介してトラニオン6の支持板部7の内側面に加わるスラスト荷重によって、支持板部7が弾性変形することを効果的に防止する点にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図8〜図13と同一の符号を付してその詳細な説明を省略することにする。
【0036】
図1は本発明の第1の実施形態を示している。図示のように、本実施形態のトロイダル型無段変速機を構成するトラニオン6は、前述した従来構造の場合と同様に、支持板部7の長手方向(図1の左右方向)の両端部に、支持板部7の内側面側(図1の上側)に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部8,8を有している。そして、各折れ曲がり壁部8,8の外側面には、枢軸5,5が互いに同心的に設けられている。
【0037】
また、本実施形態では、従来構成における変位軸9の基端部9aと外輪28とが一体に形成されるとともに、変位軸9の先端部9bとパワーローラ11とが一体に形成されている。また、変位軸9の基端部9aを支持する支持板部7の中央部の円孔10は、貫通しておらず、一端側(パワーローラ11が収容されるポケット部Pと反対の側)が閉塞された袋状に形成されている。
【0038】
また、本実施形態のトラニオン6においては、パワーローラ11が位置するトラニオン6の内側面側(ポケット部P側)に、トラニオン6の内側面側が凹面となる方向に弾性変形することを規制する連結部材33が設けられている。この連結部材33は、一対の折れ曲がり壁部8,8の先端部間に架設されるように延びる本体部33aと、本体部33aの両端部に形成され且つポケット部Pの内面(具体的には、折れ曲がり壁部8,8の内面)に十分広い範囲で当接されてポケット部Pを押し潰す押圧力をその方向で直接に受けることができる受圧部33b,33bとから成る。この場合、受圧部33bは、スラスト方向と略直交する方向でポケット部Pの内面と当接し、トラニオン6に溶接等によって接合される。なお、連結部材33は、例えば、鋼等の十分な剛性を有する材料に、鍛造加工の如き、大きな剛性を得られる加工を施すことにより橋状に成形される。
【0039】
このような連結部材33は、このトラニオン6に、変位軸9、パワーローラ11、スラスト玉軸受24、スラストニードル軸受25を組み付けた後、トラニオン6に対し結合固定する。すなわち、受圧部33bをポケット部P内に挿入してポケット部Pの内面に突き当てるとともに、受圧部33bの端部を例えばポケット部P内に形成された段部59に突き当て、パワーローラ11を跨ぐように本体部33aを延在配置させる。そして、その状態で、ポケット部Pの例えば側口から受圧部33bをトラニオン6に溶接等によって接合する。
【0040】
この連結部材33をトラニオン6に結合固定した状態で、パワーローラ11は、連結部材33とトラニオン6の支持板部7との間に配置された状態となる。ただし、パワーローラ11のうちで、入力側および出力側の両ディスク2,4の内側面2a,4a(図8,9,11参照)と当接する部分は、連結部材33の側縁(ポケット部Pの側口)から露出している。パワーローラ11の周面11aの一部で、このように連結部材33の側縁から露出した部分が、各内側面2a,4aに当接自在とするため、トラニオン6の揺動に拘らず、各ディスク2,4と干渉しないように、連結部材33の形状及び大きさを設定する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態のトロイダル型無段変速機においては、トラニオン6の長手方向の両端部に設けた一対の折れ曲がり壁部8,8同士が連結部材33によって連結されているため、トラニオン6の曲げ剛性が向上する。そのため、トロイダル型無段変速機の運転に伴って、このトラニオン6を構成する支持板部7の内側面に、図1で上向きのスラスト荷重が加わった場合でも、トラニオン6が弾性変形しにくい。特に、本実施形態の連結部材33は、ポケット部Pの内面(具体的には、折れ曲がり壁部8,8の内面)に十分広い範囲で当接されてポケット部Pを押し潰す力をその方向で直接に受けることができる受圧部33b,33bを有しているため、トラニオン6の弾性変形を効果的に防止することができる。すなわち、受圧部33は、ポケットPを押し潰す力をその方向で効果的に受けて支持することができるため、トラニオン6の弾性変形を規制する連結部材33の規制力が、ポケットPを押し潰す力に抗する方向に有効に作用する。したがって、一対の折れ曲がり壁部8,8の先端縁同士の間隔の変化が規制され、トラニオン6の弾性変形が効果的に防止される。また、受圧部33は、ポケットPを押し潰す力を比較的広い面積で受けることができるため、この力を分散して本体部33aに伝えることができる。そのため、連結部材33に集中応力が発生せず、連結部材33の破損を防止できる。
【0042】
また、このように、トラニオン6の弾性変形を効果的に防止できれば、過大なトルクが入力された場合でも、各枢軸5,5と支持板部7との結合部位Aに応力が集中することがなく(応力の低下を図れ)、トラニオン6の肉厚を特に大きくしなくても、各枢軸5,5の基端部分に亀裂等の損傷が発生しにくくできる。このため、重量やコストの低減を図れるとともに、トラニオンを小型化することもできる。また、トラニオン6の変形に基づく変位軸9の傾斜を防止し、この変位軸9の先端部9bに支持したパワーローラ11の位置がずれるのを抑えることができるので、変速動作を安定させることができる。なお、本実施形態では、変位軸9の基端部9aを支持する支持板部7の中央部の円孔10が貫通しておらず、一端側が閉塞された袋状に形成されているため、仮に変位軸9がトラニオン6に対し傾斜するようなことがあっても、変位軸9の基端部9aとトラニオン6との係合部Bに応力が集中してこの部分に亀裂等の損傷が発生するといった事態を回避できる。
【0043】
図2は本発明の第2の実施形態を示している。なお、本実施形態は第1の実施形態の変形例であるため、以下、第1の実施形態と共通する構成部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0044】
図示のように、本実施形態の連結部材33は、トラニオン6のポケット部Pの外側でトラニオン6の内側端部(ポケット部Pの周縁に位置するトラニオンの端面部)とスラスト方向(図2の上下方向)で当接することによりトラニオン6の曲げ方向の力をスラスト方向で受ける当接面33cを有している。
【0045】
このような構成によれば、当接面33cによってトラニオン6のスラスト方向への倒れ込みを抑えることができるため、トラニオン6の枢軸5と支持板部7との結合部位Aの応力を更に下げることができる。なお、本実施形態においては、トラニオン6と当接面33cとを密着させるため、当接面33cの領域でスラスト方向からボルト50を挿入して、トラニオン6と連結部材33とを締結するようにしても良い。
【0046】
図3は本発明の第3の実施形態を示している。なお、本実施形態は第1の実施形態の変形例であるため、以下、第1の実施形態と共通する構成部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
図示のように、本実施形態では、連結部材33の受圧部33bとポケット部P(凹状の穴)との間に締め代が設けられている。すなわち、ポケット部Pの内径Lは、受圧部33bの外径よりも小さく設定されている。したがって、受圧部33bは、連結部材33の長手方向内側に弾性的に変形されるようにして、ポケット部P内に締りばめによって圧入される。
【0048】
このような構成によれば、大きなスラスト荷重がトラニオン6に作用した場合でも、トラニオン6の曲げ変形を緩和することができ、結合部位Aでの応力を低下させることができる。また、締め代により、連結部材33がトラニオン6からスラスト方向に外れることを防ぐことができる。したがって、図2に示されるようなスラスト方向のボルト50が不要となり、信頼性が向上する。
なお、受圧部33bを連結部材33の長手方向内側に傾斜させることにより、締りばめを形成するようにしても良い。
【0049】
図4は本発明の第4の実施形態を示している。なお、本実施形態は第2の実施形態の変形例であるため、以下、第2の実施形態と共通する構成部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図示のように、本実施形態の連結部材33には、受圧部33bの端部に、スラスト方向に対して直交する方向(連結部材33の径方向外側)に延びる突出部33dが形成されている。そして、この突出部33dは、枢軸5の軸方向に延びるトラニオン6の孔61内に挿入されるようになっている。
【0051】
このような構成によれば、突出部33dと孔61との係合によって、連結部材33がトラニオン6からスラスト方向に外れることを防ぐことができる。したがって、図2に示されるようなスラスト方向のボルト50が不要となり、信頼性が向上する。なお、連結部材33がトラニオン6からスラスト方向に外れることを防ぐ他の手段としては、他にも、図5に示されるように、連結部材33の受圧部33bの所定部位及びこれと対向するトラニオン6の部位にキー溝を設け、このキー溝に挿入されたキー55によって連結部材33のスラスト方向への移動を制限することも考えられる。
【0052】
図6は本発明の第5の実施形態を示している。なお、本実施形態は第2の実施形態の変形例であるため、以下、第2の実施形態と共通する構成部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0053】
本実施形態では、連結部材33の受圧部33bとトラニオン6との接合面が、スラスト方向に対し所定の角度をもって傾斜している。具体的には、トラニオン6に当接する受圧部33bの接合面60は、連結部材33の長手方向内側に向かって傾斜するとともに、受圧部33bに当接するトラニオン6の接合面62もこれと同じ方向に傾斜している。
【0054】
このような構成によれば、トラニオン6が変形した際に、傾斜面60,62が互いに楔のように食い込むため、トラニオン6の変形を更に抑えることができる。また、傾斜面60,62が楔状に食い込むことにより、連結部材33がトラニオン6からスラスト方向に外れることを防止できる。なお、傾斜面60,62の傾斜方向は、図7に示されるように、図6の場合と逆になっていても良い
【0055】
なお、本発明は、前述した各実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは言うまでもない。例えば、前述した実施形態では、過大な応力が作用し得るトラニオン6の円孔10を袋状に形成した構造に対して本発明が適用されているが、従来のように円孔10が貫通する構造に対しても本発明を適用することができる。また、前述した実施形態では、パワーローラ11における内輪および外輪が軸受を介して支持された構造に対して本発明が適用されているが、従来のように内輪および外輪が共にピボット軸に支持された構造に対しても本発明を適用することができる。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載された発明によれば、ポケット部の内面に当接される受圧部によって、ポケット部を押し潰す力をその方向で直接に受けることができる。したがって、トラニオンの弾性変形を効果的に防止することができ、トラニオンの枢軸と支持板部との結合部位に作用する応力を低減できる。
【0059】
請求項2に記載された発明によれば、請求項1と同様の作用効果が得られるとともに、連結部材をトラニオンに強固に固定することができる。
【0060】
請求項3に記載された発明によれば、請求項1と同様の作用効果が得られるとともに、トラニオンが変形した際に、傾斜する面が相手部材に楔のように食い込むため、トラニオンの変形を更に抑えることができる。また、傾斜する面が楔状に食い込むことにより、連結部材がトラニオンからスラスト方向に外れることを防止できる。
請求項4に記載された発明によれば、請求項1と同様の作用効果が得られるとともに、前記受圧部が前記ポケット部内に締りばめによって圧入されることにより、トラニオンの曲げ変形を緩和することができる。また、締め代により、連結部材がトラニオンからスラスト方向に外れることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るトロイダル型無段変速機から図12の上側に配置したトラニオンに相当するトラニオンを取り出して示す拡大断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の図1に対応する部位の拡大断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の図1に対応する部位の拡大断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の図1に対応する部位の拡大断面図である。
【図5】図4の変形例に係る拡大断面図である。
【図6】本発明の第5の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の図1に対応する部位の拡大断面図である。
【図7】図6の変形例に係る拡大断面図である。
【図8】従来から知られているの基本的構成を最大減速時の状態で示す側面図である。
【図9】従来から知られているトロイダル型無段変速機の基本的構成を最大増速時の状態で示す側面図である。
【図10】トラニオンの具体的形状をスラスト荷重により弾性変形した状態で示す断面図である。
【図11】従来の具体的構造の一例を示す断面図である。
【図12】図11のX−X線に沿う断面図である。
【図13】トラニオンおよびパワーローラの従来構造を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
1 入力軸
2 入力側ディスク
2a 内側面
3 出力軸
4 出力側ディスク
4a 内側面
5 枢軸
6 トラニオン
7 支持板部
8 折れ曲がり壁部
9 変位軸
9a 基端部
9b 先端部
10 円孔
11 パワーローラ
11a 周面
33 連結部材
33a 本体部
33b 受圧部
33c 当接面
33d 突出部
60,62 傾斜面
P ポケット部

Claims (4)

  1. 互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された第1および第2のディスクと、これら第1および第2のディスクの中心軸に対して捻れの位置にある枢軸を中心に揺動するトラニオンと、このトラニオンを構成する支持板部の中央部に、この支持板部の内側面から突出する状態で支持された変位軸と、この変位軸の周囲に回転自在に支持された状態で前記第1および第2の両ディスクの間に挟持されたパワーローラと、このパワーローラの外側面に添設して設けられ、このパワーローラに加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、このパワーローラの回転を許容する軸受とを備え、前記支持板部の長手方向の両端部には、前記パワーローラを収容するポケット部を形成するように前記支持板部の内側面側に折れ曲がる一対の折れ曲がり壁部が形成され、これらの各折れ曲がり壁部の外側面に前記各枢軸が互いに同心的に設けられて成るトロイダル型無段変速機において、
    前記一対の折れ曲がり壁部同士を連結する連結部材を備え、この連結部材は、スラスト方向と略直交する方向で前記ポケット部の内面に当接し且つポケット部を押し潰すように作用する押圧力を受ける受圧部を有し、この受圧部は、前記ポケット部内の前記折れ曲がり壁部の端部に形成された段部に対向配置していることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
  2. 前記連結部材は、これが前記トラニオンからスラスト方向で外れることを防止する手段を有していることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
  3. 前記連結部材の受圧部及びこれと接合する前記トラニオンの接合面は、スラスト方向に対し所定の角度をもって傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
  4. 前記連結部材の前記受圧部とこれが接合する前記ポケット部の内面との間に締め代が設けられ、前記受圧部が前記ポケット部内に締りばめによって圧入されることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
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