JP3990995B2 - 有極性ガス検出方法 - Google Patents
有極性ガス検出方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3990995B2 JP3990995B2 JP2003038512A JP2003038512A JP3990995B2 JP 3990995 B2 JP3990995 B2 JP 3990995B2 JP 2003038512 A JP2003038512 A JP 2003038512A JP 2003038512 A JP2003038512 A JP 2003038512A JP 3990995 B2 JP3990995 B2 JP 3990995B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- gas
- data
- value
- polar
- polar gas
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Investigating Or Analyzing Materials By The Use Of Electric Means (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、接触燃焼式ガスセンサに対して、所定の周期で間欠的に駆動パルスを与え、パルスオン期間に得られるセンサ出力を用いて、有極性ガスを検出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のガス検出方法としては、例えば、下記特許文献1に示すものがある。この文献においては、図11に示すようなオン期間Dの矩形波からなる駆動パルスが間欠的に接触燃焼式ガスセンサに与えられる。そして、このような駆動パルスが与えられたときの接触燃焼式ガスセンサからのセンサ出力が、図12(A)及び図12(B)にそれぞれ示すように、有極性ガスでは、駆動パルスオン直後の時点T1〜T3においてピーク値VMAX1を有し、その後の時点TCにおいて定常値VC1を有するパターンを呈するのに対して、無極性ガスでは、時点T1〜T3においてはピーク値を有することなく時点TCにおいて定常値VC2(=VMAX2)を有するパターンを呈する点に着目して、無極性ガスと有極性ガスとを識別するようにしている。更に、各有極性ガスはそれぞれ、固有のピーク波形を呈する点に着目して、有極性ガスのガス種を識別するようにしている。なお、図11及び図12において、PON及びPOFFはそれぞれ、パルスオン時点及びパルスオフ時点を示す。また、図12に示す時点T1〜T3、TCは、図11に示すそれらと一致する。すなわち、図11に示す時点T1〜T3、TCにおけるセンサ出力がそれぞれ、図12に示されている。
【0003】
詳しくは、有極性ガスのガス種を識別するために、上記従来例では、検出すべき有極性ガスのピーク波形に対応させて、パルスオン直後に5ms〜10ms間隔で上記時点T1〜T3を予め設定している。また、検出すべき有極性ガスのピーク波形に対応させて、各時点T1、T3前後及び各時点T1〜T3間におけるセンサ出力を予め格納している。そして、上記オン期間Dにおける各時点T1、T3前後及び各時点T1〜T3間におけるセンサ出力の実測値と上記格納値とをそれぞれ比較することにより、有極性ガスの種類を判定するようにしている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−323468号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図12(A)に示すように、有極性ガスはパルスオン直後の短時間にてピーク値を持つため、上記従来例のように波形パタンそのものに基づいて有極性ガスの種類を判別しようとすると、非常に近接した時点T1〜T3に対応するタイミングで、複数のセンサ出力を取得する必要がある。ところが、現実的には、外乱等の影響により、偶然的に、センサ出力が乱れることもあり得る。そうすると、上述のような非常に近接した時点T1〜T3に対応するタイミングでは、本来検出すべき波形とは異なる波形であると判定されることもあり得るため、これを防止するために、接触燃焼式ガスセンサに連続的に駆動パルスを与えて、多数決判定等の処理を加えることが必要となる。この結果、処理手順が複雑化するうえに、ガス種判定までに時間がかかるという問題があった。
【0006】
よって本発明は、上述した現状に鑑み、簡易な処理手順でありながら正確かつ高速に有極性ガスを検出可能なガス検出方法を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の有極性ガス検出方法は、接触燃焼式ガスセンサに対して、所定の周期で間欠的に駆動パルスを与え、パルスオン期間に得られるセンサ出力を用いて、有極性ガスを検出する方法であって、測定開始以前に得られたセンサ出力に基づいて、検出すべきガスの影響のない、前記パルスオン期間のセンサ出力データである基準データを取込む基準データ取込工程と、測定開始以降の各周期毎のパルスオン期間に得られたセンサ出力をそれぞれ、実測データとして取込む実測データ取込工程と、前記実測データから前記基準データを除去したデータである差分データを算出する差分データ算出工程と、前記差分データをこの差分データ中の最大値を基準にして正規化したデータである正規化データを算出する正規化データ算出工程と、前記正規化データを微分した結果である微分データから最大微分値を抽出する最大微分値抽出工程と、前記最大微分値がゼロより大きいときいとみなせるときには前記有極性ガス又は無極性ガスのいずれかを検出したものと判定する第1判定工程と、前記第1判定工程にて前記いずれかのガスが検出されたものと判定された後に、検出されたガスが有極性ガスであるか或いは無極性ガスであるかを、前記実測データとセンサ出力が定常状態にあるときの出力値のセンサ出力最大値に対する関係により予め定められた有極性ガス及び無極性ガスを示す波形パターンとを比較した結果に基づいて判定する第2判定工程と、前記第2判定工程にて前記検出されたガスが有極性ガスであると判定された後に、前記最大微分値を、所定種の第1有極性ガスとこれとは異種の第2有極性ガスとを識別するために予め定められた最大微分しきい値と比較することにより、前記第1有極性ガス又は前記第2有極性ガスを検出する第3判定工程と含むことを特徴とする。
【0015】
請求項1記載の発明によれば、測定開始以前に得られたセンサ出力に基づいて、検出すべきガスの影響のない、パルスオン期間のセンサ出力データである基準データが取込まれ、測定開始以降の各周期毎のパルスオン期間に得られたセンサ出力がそれぞれ、実測データとして取込まれ、実測データから基準データを除去して差分データが算出され、この差分データの最大値を基準にした正規化データを微分した結果から最大微分値が抽出され、そして、最大微分値がゼロより大きいときいとみなせるときには有極性ガス又は無極性ガスのいずれかが検出されたものと判定される。
【0016】
このように、実測データから基準データを除去することにより、駆動パルスのオン直後のガスの有無には関係ない急激なセンサ出力変化分が実測データから除去されて、ガスによる急激なセンサ出力変化分のみを示す差分データが算出できる。また、差分データをその最大値を基準にして正規化した後に微分することにより、常に正確に変化分が算出できる。そして、このような微分結果から抽出された最大微分値とゼロとを比較することにより、有極性ガス検出の可能性があることを認識できる。
【0017】
また、上述のように最大微分値に基づき有極性ガスの可能性を判定したうえで、可能性ありと判定されたガスが有極性ガスであるか或いは無極性ガスであるかを、実測データとセンサ出力が定常状態にあるときの出力値のセンサ出力最大値に対する関係により予め定められた有極性ガス及び無極性ガスを示す波形パターンとを比較した結果に基づいて判定するようにしているので、正確に有極性ガスを検出することができる。
【0018】
さらに、最大微分値を所定種の第1有極性ガスと第2有極性ガスとを識別するために予め定められた最大微分しきい値と比較することにより、第1有極性ガス又は第2有極性ガスを検出するようにしているので、有極性ガスの種類までも特定して検出できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、図1、図2及び図11を用いて、本発明の方法を実施する装置の基本構成、本発明で用いられる接触燃焼式ガスセンサの構成及び本発明で用いられる駆動パルスについて説明する。図1は、本発明の方法を実施するガス検出装置の基本構成を示すブロック図である。図2(A)、図2(B)及び図2(C)はそれぞれ、本発明で用いられる接触燃焼式ガスセンサの平面図、背面図及びAA線断面図である。図11は、本発明で用いられる駆動パルスを例示するタイムチャートである。
【0021】
図1に示すように、このガス検出装置のコントローラ10には、駆動電源20、出力部30、及び検出用のブリッジ回路を含む接触燃焼式ガスセンサ40が接続されている。このガス検出装置では、従来例と同様の図11に示すような駆動パルスが供給されて接触燃焼式ガスセンサ40が通電制御され、このセンサ40のセンサ出力に基づいてコントローラ10にて所定の有極性ガスが検出される。
【0022】
コントローラ10は、後述する図7のような本発明のガス検出に関する処理動作を司り、センサ駆動制御部11、記憶部12、センサ出力検出部13、演算部14及びガス検出部15を含んで構成される。図示しないがコントローラ10は、タイマ部等も有している。
【0023】
センサ駆動制御部11は、接触燃焼式ガスセンサ40に対して駆動電源20を通電制御して、図11に示すような駆動パルスを所定周期で接触燃焼式ガスセンサ40に与える。詳しくは、駆動パルスは、例えば、10秒間のパルスOFF期間と200msの通電期間Dとから構成され、これが繰り返される。TCはパルスオン時点から、例えば、180ms経過した、センサ出力が定常状態になると想定される時点である。なお、図中、時点T1〜T3は上述した通りであるが、本発明では特に考慮されない。
【0024】
記憶部12には、少なくとも、図7のステップS10にて利用される有極性ガス及び無極性ガスの波形パターン、図7のステップS9やステップS12にて最大微分値との比較に利用されるしきい値が記憶されている。これら波形パターンやしきい値は予め実験等により予め求めらたものである。また、図7に示す処理手順において発生する一時データの保存場所としても利用される。
【0025】
センサ出力検出部13は、上記駆動パルスにより接触燃焼式ガスセンサ40が駆動されたときの各センサ出力を、各パルスオン期間にわたって時系列的に検出する。検出されたセンサ出力は、対応する処理が終了するまで記憶部12に保存される。
【0026】
演算部14は、図7に示す処理手順における、フィルタリング、正規化、微分等のガス検出に関する演算処理を行う。ガス検出部15は、演算部14にて求められた最大微分値と記憶部12中のしきい値との比較に基づいて、所定の有極性ガスを検出する。これらに対応する処理手順は図7を用いて後述する。
【0027】
上記駆動電源20は、既成の電池等が用いられる。また、出力部30は、上記コントローラ10のガス検出部15からのガス検出結果を受けてその旨を出力する。この出力部30は、例えば、ガス検出結果のひとつとして、有極性ガスの種類を直接表示出力するLCD及びその駆動回路であってもよいし、有極性ガスの種類を色分表示したり点滅するLED及びその駆動回路等であってもよい。また、ブザー等の可聴信号にてガス検出結果を出力するようにしてもよい。
【0028】
上記接触燃焼式ガスセンサ40は、上記図11で示すような駆動パルスが供給されて間欠的に駆動する。この接触燃焼式ガスセンサ40は、基本的に、感応素子部Rs及び補償素子部Rrから構成されている。感応素子部Rsは(白金)Ptヒータ42及びPd/Al2O3触媒層43を含み、補償素子部RrはPtヒータ44及び(アルミナ)Al2O3層45を含む。詳しくは、図2(A)及び図2(B)に示すように、この接触燃焼式ガスセンサ40は、(シリコン)Siウエハ41の上に、(酸化)SiO2膜48c、(窒化)SiN膜48b、及び(酸化ハフニウム)HfO2膜48aからなる絶縁薄膜が生膜され、その上に、感応素子部Rsとして(白金)Ptヒータ42及びPd/Al2O3触媒層43、補償素子部Rrとして(白金)Ptヒータ44及び(アルミナ)Al2O3層45が形成されている。また、図2(C)に示すように、異方性エッチングして凹部46及び47を形成して、それぞれ薄膜ダイヤフラムDs及びDrを形成することにより熱容量を小さくしている。このような構成にすることにより、高速反応可能でかつ測定精度が向上した接触燃焼式ガスセンサが得られる。また、熱容量が小さくなるので、消費電力が低減される。
【0029】
上記Ptヒータ42、44は、固定抵抗R1、R2及び可変抵抗Rvと共にブリッジ回路を構成している。そして、このブリッジ回路のPtヒータ44及び固定抵抗R1の接続点、並びにPtヒータ42及び固定抵抗R2の接続点には、上記コントローラ10を介して駆動パルスが所定のインターバルで間欠的に供給される。また、Ptヒータ42及び44の接続点、並びに可変抵抗Rvからは、センサ出力としての電圧値がコントローラ10に供給される。
【0030】
このような接触燃焼式ガスセンサ40を使用するに際しては、まず、検出動作開始前に、センサ出力検出部13に供給されるセンサ出力が中間電位になるように可変抵抗Rvを調整する。この状態において、COガス等が感応素子部Rsに触れると触媒作用により、この素子の表面で酸化されて反応熱が生じる。この反応熱により、Ptヒータ42の抵抗値が上昇し、この抵抗値の上昇によりブリッジ回路の平衡が崩れ、コントローラ10に上記センサ出力が供給される。この場合、Ptヒータ44は周囲温度の変動によるPtヒータ42の抵抗値の変動を相殺し、反応熱に起因するPtヒータ42の抵抗値の変動成分のみを取り出せるように補償する。
【0031】
ここで、本発明の実施形態に係る処理手順を説明する前に、図3〜図6を用いて、本発明における基本的な考え方について説明する。図3は、本発明で用いられる基準波形を示すグラフである。図4は、有極性ガスの出力波形の一例を示すグラフである。図5は、図4に示す有極性ガスの出力波形に対応する正規化波形である。図6は、図4に示す有極性ガスの正規化波形に対応する微分波形である。なお、図3〜図6中、PON及びPOFFはそれぞれ、図11で示したパルスオン時点及びパルスオフ時点を示す。また、図4に示す出力波形は、図11で示した駆動パルスにて接触燃焼式ガスセンサが駆動されたときに、得られたものである。
【0032】
すなわち、図11に示すような矩形波の駆動パルスにより接触燃焼式ガスセンサ40が駆動されて、最初のオン期間Dにおけるセンサ出力が検出され、このセンサ出力が基準データとして取込まれる。基準データの一例は、図3において、基準波形として示されている。この基準データは、検出すべき無極性ガスや有極性ガスの影響のない、パルスオン期間にわたるセンサ出力データである。
【0033】
続いて、次の駆動パルスにより接触燃焼式ガスセンサ40が駆動されて、基準データ取得後のオン期間Dにおけるセンサ出力が検出され、このセンサ出力が実測データとして取込まれる。実測データの一例は、図4において、出力波形として示されている。
【0034】
続いて、上記実測データから基準データが除去されたデータである差分データが算出される。更に、この差分データから正規化データが算出される。この正規化データは、差分データをフィルタリングした後に、このうちの最大値を基準にして正規化することにより算出される。
【0035】
詳しくは、フィルタリングは例えば移動平均手法を利用して、以下のように表される。
y[n]=1/20・(x[n−10]+x[n−9]+…+x[n]+x[n+1]+…+x[n+9])…(1)
ここで、x[n]は移動平均前のデータ、y[n]は移動平均後のデータを示す。なお、説明を加えると、式(1)は、20個のデータを加算し、それを20で除した、いわゆるローパスフィルタ処理である。
【0036】
続いて、フィルタリングしたデータ群から最大値YMAXを抽出し、全データをその最大値YMAXで除して、正規化を行う。すなわち、正規化データYs[n]は、以下のように表される。
Ys[n]=y[n]/YMAX…(2)
上記正規化データYs[n]の一例は、図5において、正規化波形として示されている。
【0037】
続いて、上記正規化データが微分されて微分値データが得られ、この微分値データから最大微分値が抽出される。
詳しくは、微分値データYdiv[n]は、以下のように表され、
Ydiv[n]=d(Ys[n+t]−Ys[n])/dt…(3)
このうちから、最大微分値YdMAXが抽出される。
微分値データYdiv[n]の一例は、図6において、微分波形として示されている。
【0038】
そして、上記最大微分値YdMAXが、有極性ガス又は無極性ガスのいずれかが含まれているか否かを判定するためのしきい値R0(図6参照)や、後述する有極性ガスのガスの種類を特定するためのしきい値R200(図10参照)と比較されて、有極性ガス又は無極性ガスの判別や有極性ガスの種類の特定が行われる。
【0039】
このように、実測データから基準データを除去することにより、駆動パルスのオン直後のガスの有無には関係ない急激なセンサ出力変化分が実測データから除去されて、ガスによる急激なセンサ出力変化分のみを示す差分データが算出できる。また、差分データをその最大値を基準にして正規化した後に微分することにより、常に正確に変化分が算出できる。そして、このような微分結果から抽出された最大微分値と所定のしきい値とを比較することにより、高速かつ正確に所望の有極性ガスを検出できる。
【0040】
次に、本発明の一実施形態に係る処理手順について、図8〜図10を参照しつつ、図7を用いて説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る処理動作を示すフローチャートである。図8は、有極性ガスの一例であるエタノール及びDMC(Dimethyl Methyl Carbonet)の出力波形をそれぞれ示すグラフである。図9は、図8に示すエタノール及びDMCの出力波形にそれぞれ対応する正規化波形である。図10は、図8に示すエタノール及びDMCの正規化波形に対応する微分波形である。この処理手順では、無極性ガスと有極性ガスとしてのエタノール及びDMCとをそれぞれ検出する方法を例示する。なお、図8〜図10において、エタノール及びDMCの濃度は共に1000ppmとする。この実施形態においても、例えば、図11で示したような駆動パルスが用いられる。
【0041】
まず、図7のステップS1において、上記駆動パルスにより接触燃焼式ガスセンサ40が駆動されて、最初のオン期間Dにおけるセンサ出力が検出され、ステップS2において、このセンサ出力が基準データとして取込まれる。基準データの一例は、図3に示した通りである。ステップS1及びステップS2は、請求項中の基準データ取得工程及び基準データ取得手段に対応する。また、最初のセンサ出力は、請求項中の測定開始以前に得られたセンサ出力に対応する。
【0042】
次に、ステップS3において、次の駆動パルスにより接触燃焼式ガスセンサ40が駆動されて、基準データ取得後のオン期間Dにおけるセンサ出力が検出され、ステップS4において、このセンサ出力が実測データとして取込まれる。エタノール及びDMCの基準データの一例は、図8において、出力波形としてそれぞれ示されている。ステップS3及びステップS4は、請求項中の実測データ取得工程及び実測データ取得手段に対応する。また、ここで得られるセンサ出力は、請求項中の測定開始以降に得られたセンサ出力に対応する。
【0043】
次に、ステップS5において、上記実測データから基準データが除去されたデータである差分データが算出される。更に、ステップS6において、この差分データから正規化データが算出される。この正規化データは、上述のように、差分データをフィルタリングした後に、このうちの最大値を基準にして正規化することにより算出する。
【0044】
なお、正規化に際し、フィルタリング処理は必ずしも必要ではないが、上述のようなフィルタリング処理を施すことにより、突発的な外乱等の影響を効果的に除去することができる。また、フィルタリング処理として、移動平均手法以外の手法を利用してもよい。エタノール及びDMCの正規化データの一例は、図9において、正規化波形としてそれぞれ示されている。ステップS6は、請求項中の正規化データ算出工程に対応する。
【0045】
次に、ステップS7において正規化データが微分されて微分値データが得られ、ステップS8において微分値データから最大微分値が抽出される。最大微分値の求め方は、上述した通りである。エタノール及びDMCの微分値データの一例は、図10において、微分波形としてそれぞれ示されている。ステップS7及びステップS8は、請求項中の最大微分値抽出工程に対応する。
【0046】
そして、ステップS9において、上記最大微分値が0と比較され(図10参照)、最大微分値YdMAXが0よりも大きいと判定されるとステップS10に進み(ステップS9のY)、さもなければステップS3に戻る(ステップS9のN)。ここで、0という値は、上記ステップS3で検出されたセンサ出力に、有極性ガス又は無極性ガスのいずれかが含まれているか否かを判定するためのしきい値R0(図10参照)である。
【0047】
このしきい値R0の値は、有極性ガス又は無極性ガスのいずれも含まれないときには、上記正規化データは、1駆動パルスのパルスオン時点PONからパルスオフ時点POFFにわたって定常値のままである、つまり、この間、微分値が0であるはずである、という考えに基づくものである。したがって、しきい値R0は、完全に0でなくても、予め外乱等を考慮して設定された0に近い値であってもよい。しきい値R0は記憶部12に予め記憶されおり、ここで読み出される。このステップS9の判定により、有極性ガス検出の可能性があることを認識できるようになる。なお、ステップS9は、請求項中の第1判定工程に対応する。
【0048】
次に、ステップS10において、検出されたガスが有極性ガスであるか或いは無極性ガスであるかが判定される。詳しくは、この判定は、ステップS4で取込まれた実測データと、記憶部12に予め記憶されている、図12(A)に示すような有極性ガス及び図12(B)に示すような無極性ガスの波形パターンに関するデータとの比較に基づいて行われる。例えば、図12(A)中の最大値VMAX1や図12(B)中の最大値VMAX2で示すように、センサ出力の最大値VMAXと、パルスオンから180ms経過した時点TCにおけるセンサ出力値Y[180]とを比較し、センサ出力値Y[180]が最大値VMAXの±2%以内に入れば無極性ガス、センサ出力値Y[180]が最大値VMAXの2%以下であれば有極性ガスと判定するようにする。ここで、無極性ガスと判定されるとステップS11に進み、有極性ガスと判定されるとステップS12に進む。このステップS10により、正確に有極性ガスを検出することができるようになる。なお、ステップS10は、請求項中の第2判定工程に対応する。
【0049】
ステップS11においては、無極性ガスが検出された旨が、LCDやLEDにより出力部30から出力される。一方、有極性ガスと判定されて進んだステップS12においては、上記最大微分値が200と比較され(図10参照)、最大微分値が200よりも大きいと判定されるとステップS13に進み(ステップS12のY)、さもなければステップS14に進む(ステップS12のN)。ここで、200という値は、DMCとエタノールとを識別するために予め定められた最大微分しきい値R200(図10参照)である。DMC及びエタノールはそれぞれ、請求項中の第1有極性ガス及び第2有極性ガスに対応する。第1有極性ガス及び第2有極性ガスがDMCやエタノールとは異なるガスであるときには、最適な最大微分しきい値は変わる可能性がある。最大微分しきい値は記憶部12に予め記憶されおり、ここで読み出される。なお、ステップS12は、請求項中の第3判定工程に対応する。
【0050】
そして、ステップS13及びステップS14においてそれぞれ、DMC及びエタノールが検出された旨が、LCDやLED点滅等により出力部30から出力される。勿論、これにブザー音等の可聴信号を付加してもよいし、可聴信号のみでDMC及びエタノールが検出された旨を出力するようにしてもよい。
【0051】
このように本実施形態によれば、簡易な処理手順でありながら正確かつ高速に有極性ガスを検出できるようになる。
【0052】
なお、上記実施形態においては、有極性ガスとしてエタノール及びDMCを検出する方法を例示したが、他種の有極性ガスであっても同様の処理手順により検出可能である。また、本発明は、上記各センサ出力のオン時間、オンオフ間隔等を上記実施形態に例示した値に限定するものではなく、各値は、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、実測データから基準データを除去することにより、駆動パルスのオン直後のガスの有無には関係ない急激なセンサ出力変化分が実測データから除去されて、ガスによる急激なセンサ出力変化分のみを示す差分データが算出できる。また、差分データをその最大値を基準にして正規化した後に微分することにより、常に正確に変化分が算出できる。そして、このような微分結果から抽出された最大微分値とゼロとを比較することにより、有極性ガス検出の可能性があることを正確に認識できるようになる。また、測定開始以降の1駆動パルスだけでも有極性ガスの検出可能性を認識できるようになる。
【0055】
また、上述のように最大微分値に基づき有極性ガスの可能性を判定したうえで、可能性ありと判定されたガスが有極性ガスであるか或いは無極性ガスであるかを、実測データとセンサ出力が定常状態にあるときの出力値のセンサ出力最大値に対する関係により予め定められた有極性ガス及び無極性ガスを示す波形パターンとを比較した結果に基づいて判定するようにしているので、より正確に有極性ガスを検出することができるようになる。
【0056】
さらに、最大微分値を所定種の第1有極性ガスと第2有極性ガスとを識別するために予め定められた最大微分しきい値と比較することにより、第1有極性ガス又は第2有極性ガスを検出するようにしているので、有極性ガスの種類までも特定して検出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガス検出装置の基本構成を示すブロック図である。
【図2】図2(B)及び図2(C)はそれぞれ、本発明で用いられる接触燃焼式ガスセンサの平面図、背面図及びAA線断面図である。
【図3】本発明で用いられる基準波形を示すグラフである。
【図4】有極性ガスの出力波形の一例を示すグラフである。
【図5】図4に示す有極性ガスの出力波形に対応する正規化波形である。
【図6】図4に示す有極性ガスの正規化波形に対応する微分波形である。
【図7】本発明の一実施形態に係る処理動作を示すフローチャートである。
【図8】エタノール及びDMCの出力波形をそれぞれ示すグラフである。
【図9】図8に示すエタノール及びDMCの出力波形にそれぞれ対応する正規化波形である。
【図10】図8に示すエタノール及びDMCの正規化波形に対応する微分波形である。
【図11】本発明で用いられる駆動パルスを例示するタイムチャートである。
【図12】図12(A)及び図12(B)はそれぞれ、有極性ガス及び無極性ガスの典型的なセンサ出力パターンを示すグラフである。
【符号の説明】
10 コントローラ
20 駆動電源
30 出力部
40 接触燃焼式ガスセンサ
42、44 Ptヒータ
43 Pd/Al2O3触媒層
45 Al2O3層
Rs 感応素子部
Rr 補償素子部
Claims (1)
- 接触燃焼式ガスセンサに対して、所定の周期で間欠的に駆動パルスを与え、パルスオン期間に得られるセンサ出力を用いて、有極性ガスを検出する方法であって、
測定開始以前に得られたセンサ出力に基づいて、検出すべきガスの影響のない、前記パルスオン期間のセンサ出力データである基準データを取込む基準データ取込工程と、
測定開始以降の各周期毎のパルスオン期間に得られたセンサ出力をそれぞれ、実測データとして取込む実測データ取込工程と、
前記実測データから前記基準データを除去したデータである差分データを算出する差分データ算出工程と、
前記差分データをこの差分データ中の最大値を基準にして正規化したデータである正規化データを算出する正規化データ算出工程と、
前記正規化データを微分した結果である微分データから最大微分値を抽出する最大微分値抽出工程と、
前記最大微分値がゼロより大きいときいとみなせるときには前記有極性ガス又は無極性ガスのいずれかを検出したものと判定する第1判定工程と、
前記第1判定工程にて前記いずれかのガスが検出されたものと判定された後に、検出されたガスが有極性ガスであるか或いは無極性ガスであるかを、前記実測データとセンサ出力が定常状態にあるときの出力値のセンサ出力最大値に対する関係により予め定められた有極性ガス及び無極性ガスを示す波形パターンとを比較した結果に基づいて判定する第2判定工程と、
前記第2判定工程にて前記検出されたガスが有極性ガスであると判定された後に、
前記最大微分値を、所定種の第1有極性ガスとこれとは異種の第2有極性ガスとを識別するために予め定められた最大微分しきい値と比較することにより、前記第1有極性ガス又は前記第2有極性ガスを検出する第3判定工程と、
を含むことを特徴とする有極性ガス検出方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003038512A JP3990995B2 (ja) | 2003-02-17 | 2003-02-17 | 有極性ガス検出方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003038512A JP3990995B2 (ja) | 2003-02-17 | 2003-02-17 | 有極性ガス検出方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004245792A JP2004245792A (ja) | 2004-09-02 |
JP3990995B2 true JP3990995B2 (ja) | 2007-10-17 |
Family
ID=33023027
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003038512A Expired - Fee Related JP3990995B2 (ja) | 2003-02-17 | 2003-02-17 | 有極性ガス検出方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3990995B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4617168B2 (ja) * | 2005-02-04 | 2011-01-19 | 公立大学法人高知工科大学 | 軸受損傷評価装置および軸受損傷評価方法 |
JP4805759B2 (ja) * | 2006-09-05 | 2011-11-02 | 矢崎総業株式会社 | ガス検出装置 |
JP7553379B2 (ja) | 2021-02-17 | 2024-09-18 | 矢崎エナジーシステム株式会社 | ガス検出装置 |
-
2003
- 2003-02-17 JP JP2003038512A patent/JP3990995B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2004245792A (ja) | 2004-09-02 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP2202509B1 (en) | Particulate matter detection apparatus | |
WO2008047452A1 (fr) | Unité de commande d'alimentation électrique d'une machine à décharge électrique | |
ATE468530T1 (de) | Vorrichtung zur identifizierung von flüssigkeitsarten | |
JP3990995B2 (ja) | 有極性ガス検出方法 | |
JP4805759B2 (ja) | ガス検出装置 | |
JP3754686B2 (ja) | ガス検知方法およびその装置 | |
JP3672082B2 (ja) | 熱線式ガスセンサーを用いたガス検知警報装置 | |
JP3660183B2 (ja) | ガス検出装置及びガス検出方法 | |
ATE276694T1 (de) | Elektrischer wasserkocher zum aufheizen von wasser | |
JP5111180B2 (ja) | 熱式流量計 | |
JP2000329730A (ja) | 酸素濃度センサの素子インピーダンス検出方法及び素子インピーダンス検出装置 | |
JP4035099B2 (ja) | ガス検出方法及びその装置 | |
EP1420245A1 (en) | Method and apparatus for detecting a dry/wet state of a thermistor bead | |
JP4440702B2 (ja) | 火災判定方法及びこれを用いた火災警報器 | |
JP3791596B2 (ja) | 熱式流量計 | |
JP2018138884A (ja) | 信号検出装置 | |
JP3735350B2 (ja) | ガスセンサ装置 | |
JP3696597B2 (ja) | ガス濃度測定方法及びガス濃度測定装置 | |
JP2001194330A (ja) | ガス警報器及びガス警報方法 | |
JP4382609B2 (ja) | ガス検知装置 | |
JPH0961389A (ja) | ガス検出装置とその設定方法 | |
JP2002168819A (ja) | ガス検出装置及びガス検出方法 | |
JP3595179B2 (ja) | 流量測定装置及びその方法 | |
JP2000329722A (ja) | 炭酸ガス検知装置及び炭酸ガス検知方法 | |
EP0971220A3 (de) | Vorrichtung zur Erfassung der Wicklungstemperatur eines über eine Steuerschaltung betriebenen Elektromotors |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050915 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20070412 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070417 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070615 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20070710 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20070723 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100727 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100727 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110727 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110727 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120727 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130727 Year of fee payment: 6 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |