JP3990764B2 - 反応検索方法、反応検索装置および反応検索用記憶媒体 - Google Patents
反応検索方法、反応検索装置および反応検索用記憶媒体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、所望の化学反応を検索する反応検索方法、この検索方法を実施させる反応検索装置およびこの検索方法を実行するためのプログラムが記憶された反応検索記憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来は、化学反応の出発物質の分子構造及び生成物質の分子構造がそれぞれデータベースに登録されていた。このため、化学反応を検索する際には、出発物質と生成物質とを別々に検索して、双方の物質を備えた化学反応を検出する必要があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、化学反応の数が膨大であるため、出発物質と生成物質とを組み合わせた数は非常に多くなる。このため、従来の検索方法では所望の化学反応を迅速に検索することが困難であった。
【0004】
本発明は、このような問題を解決し、所望の化学反応を迅速に検索することのできる検索方法を提供することを目的とする。また、本発明は、所望の化学反応を迅速に検索できる検索装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、所望の化学反応を迅速に検索できるプログラムが記憶された記憶媒体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の反応検索方法は、化学反応のデータが登録された反応データベースにアクセスして検索対象である被検索化学反応を検索する装置、における反応検索方法であって、反応データベースに登録された化学反応のデータは、化学反応前の出発物質を構成する原子と化学反応後の生成物質を構成する原子とが対応する原子の対であって、化学反応の前後で原子の化学的環境が変化する原子の対を反応中心原子対とし、反応中心原子対の原子間を仮想的に結合することにより、出発物質の分子構造と生成物質の分子構造とが一体となった仮想分子構造として表現されたデータであり、化学反応の検索は、装置が、被検索化学反応についての出発物質の分子構造のデータと生成物質の分子構造のデータとの入力を受け付ける第1のステップと、装置が、第1のステップで受け付けたデータに係る分子構造に基づいて反応中心原子対を規定する第2のステップと、装置が、第1のステップで受け付けたデータに係る分子構造に対して、第2のステップで規定した反応中心原子対の原子間が接続された仮想分子構造のデータを作成する第3のステップと、装置が、第3のステップで作成した仮想分子構造のデータを検索キーとして、反応データベースに登録された化学反応のデータを検索する第4のステップとを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の反応検索方法はこのような構成を有するので、利用者によって被検索化学反応についての出発物質の分子構造と生成物質の分子構造とが入力されると、これらの分子構造の入力は受け付けられる。そして、受け付けられた分子構造に基づいて反応中心原子対が規定される。ここで、反応中心原子対とは、出発物質を構成する原子と生成物質を構成する原子とで対応関係を有する原子の対の中から抽出された、化学反応の前後で化学的環境が変化する原子の対をいう。
【0007】
さらに、反応中心原子対の原子間が接続されて、出発物質の分子構造と生成物質の分子構造とが一体となった仮想分子構造が作成される。そして、この仮想分子構造を検索キーとして化学反応データベースを検索することにより、被検索化学反応を迅速に検出することができる。
【0008】
ここで、第3のステップでは、反応中心原子対の原子間を接続すると共に反応中心原子対以外の原子を削除して仮想分子構造のデータを作成しており、第4のステップでは、被検索化学反応の仮想分子構造のデータと少なくとも一部が一致する化学反応のデータを検索していることが好ましい。
【0009】
また、第3のステップでは、反応中心原子対の原子間を接続すると共に反応中心原子対およびこの反応中心原子対に順次結合する所定範囲の原子以外の原子を削除して仮想分子構造のデータを作成しており、第4のステップでは、被検索化学反応の仮想分子構造のデータと少なくとも一部が一致する化学反応のデータを検索していることが好ましい。
【0010】
さらに、第3のステップでは、反応中心原子対の原子間を接続した第1の仮想分子構造のデータと、この第1の仮想分子構造から反応中心原子対以外の原子を削除した第2の仮想分子構造のデータを作成しており、第4のステップでは、反応データベースと略同一の化学反応のデータが登録され且つこれらのデータの仮想分子構造が反応中心原子対以外の原子を削除した構造である第2の反応データベースにアクセスして、第2の仮想分子構造のデータと少なくとも一部が一致する化学反応のデータを検索し、さらに、この検索で絞り込まれた化学反応のデータのみを対象にして反応データベースにアクセスし、前記第1の仮想分子構造のデータと完全に一致する前記化学反応のデータを検索していることが好ましい。
【0011】
さらにまた、出発物質及び生成物質を構成する1の原子についての化学的環境は、1の原子に結合している原子の数、1の原子に結合している原子の種類、1の原子に結合している原子との間の結合の種類および1の原子の荷電状態であり、原子の対において原子の化学的環境を調べて、該化学的環境の少なくとも1つが変化している原子の対を反応中心原子対としていることが好ましい。
【0012】
次に、本発明の反応検索装置は、検索対象である被検索化学反応を検索する装置であって、化学反応前の出発物質を構成する原子と化学反応後の生成物質を構成する原子とが対応する原子の対であって、化学反応の前後で原子の化学的環境が変化する原子の対を反応中心原子対とし、反応中心原子対の原子間を仮想的に結合することにより、出発物質の分子構造と生成物質の分子構造とが一体となった仮想分子構造として表現された化学反応のデータが登録された反応データベースと、被検索化学反応についての出発物質の分子構造のデータと生成物質の分子構造のデータとの入力を受け付ける分子構造入力手段と、分子構造入力手段で受け付けたデータに係る分子構造に基づいて反応中心原子対を規定する原子対規定手段と、分子構造入力手段で受け付けたデータに係る分子構造に対して、原子対規定手段で規定した反応中心原子対の原子間が接続された仮想分子構造のデータを作成する分子構造作成手段と、分子構造作成手段で作成した仮想分子構造のデータを検索キーとして、反応データベースに登録された化学反応のデータを検索する化学反応検索手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の反応検索装置はこのような構成を有するので、利用者によって被検索化学反応についての出発物質の分子構造と生成物質の分子構造とが入力されると、これらの分子構造の入力は分子構造入力手段で受け付けられる。そして、受け付けられた分子構造に基づいて反応中心原子対が原子対規定手段で規定される。ここで、反応中心原子対とは、出発物質を構成する原子と生成物質を構成する原子とで対応関係を有する原子の対の中から抽出された、化学反応の前後で化学的環境が変化する原子の対をいう。
【0014】
さらに、原子対規定手段で規定された反応中心原子対は分子構造作成手段に与えられ、この反応中心原子対の原子間を接続した仮想分子構造が作成される。そして、この仮想分子構造を検索キーとして化学反応データベースを検索することにより、被検索化学反応を迅速に検出することができる。
【0015】
ここで、分子構造作成手段では、反応中心原子対の原子間を接続すると共に反応中心原子対以外の原子を削除して仮想分子構造のデータを作成しており、化学反応検索手段では、被検索化学反応の仮想分子構造のデータと少なくとも一部が一致する化学反応のデータを検索していることが好ましい。
【0016】
また、分子構造作成手段では、反応中心原子対の原子間を接続すると共に反応中心原子対およびこの反応中心原子対に順次結合する所定範囲の原子以外の原子を削除して仮想分子構造のデータを作成しており、化学反応検索手段では、被検索化学反応の仮想分子構造のデータと少なくとも一部が一致する化学反応のデータを検索していることが好ましい。
【0017】
さらに、反応データベースと略同一の前記化学反応のデータが登録され且つこれらのデータの仮想分子構造が反応中心原子対以外の原子を削除した構造である第2の反応データベースを更に備え、分子構造作成手段では、反応中心原子対の原子間を接続した第1の仮想分子構造のデータと、この第1の仮想分子構造から反応中心原子対以外の原子を削除した第2の仮想分子構造のデータを作成しており、化学反応検索手段では、第2の反応データベースにアクセスして、第2の仮想分子構造のデータと少なくとも一部が一致する化学反応のデータを検索し、さらに、この検索で絞り込まれた化学反応のデータのみを対象にして第2の反応データベースにアクセスし、第1の仮想分子構造のデータと完全に一致する化学反応のデータを検索していることが好ましい。
【0018】
さらにまた、出発物質及び生成物質を構成する1の原子についての化学的環境は、1の原子に結合している原子の数、1の原子に結合している原子の種類、1の原子に結合している原子との間の結合の種類および1の原子の荷電状態であり、原子の対において原子の化学的環境を調べて、該化学的環境の少なくとも1つが変化している原子の対を反応中心原子対としていることが好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本実施形態である反応検索装置1を示すブロック図である。図1に示すように、反応検索装置1は、オペレーティングシステム(OS)11および反応検索プログラム12が記憶されたメモリ装置10と、第1及び第2の反応データベース21,22が記憶されたハードディスク装置20とを備えている。更に、反応検索装置1は、入力手段であるキーボード30およびマウス40と、出力手段であるディスプレイ50およびプリンタ60と、反応検索プログラム12の実行等を制御するCPU70とを備えている。
【0028】
そして、反応検索プログラム12は、被検索化学反応についての出発物質の分子構造と生成物質の分子構造との入力を受け付ける分子構造入力ルーチン(分子構造入力手段)13と、分子構造入力ルーチン13で受け付けた分子構造に基づいて反応中心原子対を規定する原子対規定ルーチン(原子対規定手段)14と、分子構造入力ルーチン13で受け付けた分子構造に対して、原子対規定ルーチン14で規定した反応中心原子対の原子間が接続された仮想分子構造を作成する分子構造作成ルーチン(分子構造作成手段)15と、分子構造作成ルーチン15で作成した仮想分子構造を検索キーとして、第1及び第2の反応データベース21,22に登録された化学反応のデータを検索する化学反応検索ルーチン(化学反応検索手段)16とを備えている。
【0029】
第1及び第2の反応データベース21,22は、出発物質の分子構造と生成物質の分子構造とからなる化学反応を仮想的な1つの分子構造(以下、仮想分子構造という)としてとらえ、この仮想分子構造を結合表と正準化データ(カノニカルデータともいう)といった2種類のデータ形式で登録したデータベースである。仮想分子構造には、出発物質および生成物質の全ての原子を含む反応構造(以下、全反応構造ともいう)と、化学反応の前後で化学的環境の変化する原子のみを含む反応中心構造と、反応中心構造に周辺原子を付加した周辺原子付加構造とがある(周辺原子付加構造については後述する)。
【0030】
そして、第1の反応データベース21には、全反応構造の結合表が登録された結合表ファイル21aと、全反応構造の正準化データが登録された正準化データファイル21bとが設けられている。また、第2の反応データベース22には、反応中心構造の結合表が登録された結合表ファイル22aと、反応中心構造の正準化データが登録された正準化データファイル22bとが設けられている。
【0031】
なお、第1及び第2の反応データベース21,22は、ファイル21a,21b,22a,22bの他に、それぞれの化学反応に付随する関連情報(例えば、収率、反応条件、文献)が格納されたファイルを更に備えることが好ましい。
【0032】
次に、図2に示す出発物質81,82(CH3-CH2-NH-CO-CH2-CO-CH3,C6H5-OH)を反応させて、生成物質83,84(CH3-CH2-NH2,C6H5-O-CO-CH2-CO-CH3)を生成させる化学反応(図の分子構造は水素原子を省略して図示されている)を例にとり、仮想反応分子構造を詳細に説明する。仮想反応分子構造は、まず、出発物質81,82を構成する原子と生成物質83,84を構成する原子とで対応関係を有する原子の対を決定又は抽出し、続いて各原子の対における化学的環境を比較するという順で、化学反応を構成する分子の分子構造から作成することができる。
【0033】
ここで、対応関係を有する原子の対は、例えば、反応機構に基づいて決定することができる。これを図2の例で説明すると、図の反応は、出発物質81のアミド結合(原子2と原子3とからなる結合)が切断され、生成されるアシル基と出発物質82の酸素原子1とが結合し、生成物質84が生成されると同時に、生成物質83が出発物質81から生成されると考えることができる。そして、この反応機構に従って原子の対を決定すると、(番号17,番号22)、(番号8,番号14)、(番号2,番号6)、(番号3,番号5)、(番号10,番号13)、(番号9,番号12)、(番号18,番号21)、(番号26,番号30)、(番号25,番号29)、(番号23,番号28)、(番号31,番号32)、(番号24,番号27)、(番号16,番号19)、(番号7,番号11)、(番号15,番号20)、(番号1,番号4)がそれぞれ原子の対となる。
【0034】
なお、番号15と番号16の原子および番号23と番号24の原子はそれぞれ等価であるので、原子の対として(番号16,番号19)、(番号24,番号27)、(番号15,番号20)及び(番号23,番号28)の代わりに、(番号15,番号19)、(番号23,番号27)、(番号16,番号20)及び(番号24,番号28)の組合せを用いることもできる。いずれの組合せを用いるにしても、以下の説明から明らかなように、得られる結果(仮想分子構造の正準化データ等)は変わらない。
【0035】
また、出発物質81,82及び生成物質83,84を構成する1の原子についての化学的環境は、▲1▼1の原子に結合している原子の数、▲2▼1の原子に結合している原子の種類、▲3▼1の原子に結合している原子との間の結合の種類、◯41の原子の荷電状態である。そして、上述した原子の対のそれぞれについて原子の化学的環境を調べ、該化学的環境の少なくとも1つが変化している原子の対を反応中心原子対とする。
【0036】
具体的に説明すると、まず、番号17と番号22との原子の対については、番号17の原子に結合した番号8の原子の数と番号22の原子に結合した番号14の原子の数とが共に1である。また、番号8の原子と番号14の原子とは共に炭素である。更に、番号17の原子と番号8の原子との結合は単結合であり、番号22の原子と番号14の原子との結合も単結合である。更にまた、番号17の原子の電荷と番号22の原子の電荷とは共に0である。このように、化学的環境が全て等しいので、この原子の対は反応中心原子対でない。
【0037】
また、番号2と番号6との原子の対については、番号2の原子に結合した番号8,3の原子の数が2であるのに対して、番号6の原子に結合した番号14の原子の数は1である。このように、化学的環境が変化しているので、この原子の対は反応中心原子対である。
【0038】
更に、番号3と番号5との原子の対については、番号3の原子に結合した番号2,9の原子の数と番号5の原子に結合した番号4,12の原子の数とが共に2で等しい。ところが、番号2,9の原子が窒素および炭素であるのに対して、番号4,12の原子は酸素および炭素である。このように、化学的環境が変化しているので、この原子の対は反応中心原子対である。
【0039】
以上のような比較処理を全ての原子の対について行い、反応中心原子対を抽出する。その結果、番号2と番号6との原子の対、番号3と番号5との原子の対、番号1と番号4との原子の対が反応中心原子対として抽出される。さらに、抽出された各反応中心原子対の間を、例えば点線で仮想的に結合させることにより、図3に示すように、出発物質81,82の分子構造と生成物質83,84の分子構造とが一体となった単一の分子構造(即ち、仮想分子構造)として、化学反応が表現される。
【0040】
図3の仮想分子構造は、出発物質および生成物質の全ての原子(番号1〜番号32)を含む全反応構造である。この全反応構造の原子(番号1〜番号32)の中から、反応中心原子対を構成する原子(番号1〜番号6)以外の原子を削除することによって、反応に直接関係する要部だけからなる反応中心構造が得られる。この反応中心構造の例を図4に示す。同図に示すように、番号2の原子および番号3の原子と、番号4の原子および番号5の原子とがそれぞれ単結合している。また番号2の原子および番号6の原子と、番号3の原子および番号5の原子と、番号1の原子および番号4の原子とがそれぞれ仮想的に結合している。
【0041】
以上のように、出発物質と生成物質とからなる一連の化学反応を仮想分子構造として表現することにより、化学反応の特定が容易になる。特に、反応中心構造は反応に直接関係する要部だけの構造であるため、反応中心構造が一致する化学反応を抽出することにより、同種の化学反応をグループ化することができる。また、反応中心構造をキーにして化学反応を検索する場合、全反応構造に比べて構造が単純であるために高速処理が可能である。
【0042】
ところで、仮想分子構造を第1及び第2の反応データベース21,22に登録するためには、この仮想分子構造を一意的に特定できるバイナリのデータに置き換える必要がある。そこで、第1及び第2の反応データベース21,22には、仮想分子構造を結合表および正準化データといった2種類のデータ形式で登録している。
【0043】
ここで、結合表は、各原子についての固有データが記録された原子テーブルと、原子間の結合対データが記録された原子対テーブルとを備えている。また、正準化データは、所定のアルゴリズムで結合表を文字、数字および記号に変換したデータ列である。そして、結合表と正準化データとは、双方向に変換することができる。このように、第1及び第2の反応データベース21,22には結合表、正準化データといった2種類のデータが登録されているが、これらのデータは次のように使い分けることができる。即ち、結合表には各原子の情報、特に座標データが書き込まれており、この情報を用いれば仮想分子構造を容易に作成することができる。従って、仮想分子構造をディスプレイ50に表示させ、或いはプリンタ60から出力させる場合には、結合表が好ましく用いられる。また、正準化データは文字及び記号列データであり、結合表に比べて情報量が少ないため、分子構造の差異の比較が容易であり検索に適している。従って、反応検索プログラム12によって仮想分子構造を検索する場合には、正準化データが好ましく用いられる。
【0044】
次に、結合表の例を図5〜図7に示す。図5,6は、全反応構造の結合表である。また、図7は、反応中心構造の結合表である。図5および図7に示すように原子テーブルには、原子の番号、原子の三次元座標(X座標、Y座標、Z座標)、元素名(一般に元素記号が用いられるが、原子番号などの数字であってもよい)、質量、電荷および反応方向属性(例えば、反応中心原子対の出発側の原子は−1、反応中心原子対の生成側の原子は1、反応中心原子対でない原子は0)を書き込む欄が設けられている。また、図6および図7に示すように、原子対テーブルには、結合原子対、結合種(例えば、単結合は1、二重結合は2、仮想的な結合は7)および構造を書き込む欄が設けられている。ここで、原子の番号は、化合物を構成する各原子をコンピュータで識別するための番号であり、図5〜図7の例では数字であるが、記号であってもよい。また、結合原子対は、原子の番号の組合せとして表現されるのがよい。
【0045】
具体的には、図3の反応構造における番号1の原子については、原子デーブルのX座標の欄に“−5.5983”がY座標の欄に“−4.0972”が書き込まれている。また、元素名の欄に“O”が反応方向属性の欄に“−1”が書き込まれている。更に、番号1の原子は番号7の原子と単結合で結ばれているので、原子対テーブルの結合原子対の欄に“7 1”が結合種の欄に“1”が書き込まれている。そして、番号2〜番号32の原子についても同様のデータが書き込まれている。
【0046】
次に、正準化データの例を示す。正準化データは本発明者が特願平8−125123号で提示したアルゴリズムを用いることにより、結合表から一意的に作成されるデータである。即ち、図5,6の反応構造の結合表から正準化データを作成すると、正準化データは例えば、“1−01<1−1=02−2<03−N3−3=04−6%6%7−8<N8−9−11−11=012%13%14%14%15−16−17−17=020%22%23%24−29%/21%28/30%32/”と表現される。また、図7の反応中心構造の結合表から正準化データを作成すると、“1<1−N2−03<N4<0/”と表現される。なお、これらの正準化データでは、単結合に記号“−”を、二重結合に記号“=”を、三重結合に記号“#”を、芳香結合に記号“%”を、仮想的結合に記号“<”をそれぞれ用いている。
【0047】
次に、反応検索装置1による化学反応の検索動作について、図8のフローチャートに基づいて説明する。まず、CPU70の制御の下で分子構造入力ルーチン13が実行され、ディスプレイ50にデータの入力を促すメッセージ(或いはプロンプト記号などの入力促進用の記号)が表示される。このメッセージを見た利用者がキーボート30或いはマウス40を操作して、検索対象である被検索化学反応についての出発物質の分子構造と生成物質の分子構造とを入力すると、これらの分子構造の入力は受け付けられる(ステップ100:第1のステップ)。次に、原子対規定ルーチン14が実行され、ステップ100で受け付けられた分子構造に基づいて反応中心原子対が規定される(ステップ101:第2のステップ)。更に、分子構造作成ルーチン15が実行され、ステップ100で受け付けた分子構造に対して、ステップ101で規定した反応中心原子対の原子間が接続され、出発物質の分子構造と生成物質の分子構造とが一体となった仮想分子構造の正準化データが作成される(ステップ103:第3のステップ)。そして、ステップ103で作成された仮想分子構造の正準化データを検索キーとして反応データベース21,22が検索され、検索対象である被検索化学反応が迅速に検出される(ステップ104:第4のステップ)。
【0048】
ここで、ステップ103で作成する仮想分子構造には、出発物質および生成物質の全ての原子を含む全反応構造(図3参照)と、この全反応構造の原子の中から、反応中心原子対を構成する原子以外の原子を削除した反応中心構造(図4参照)と、反応中心構造に周辺原子を付加した周辺原子付加構造とがある。周辺原子付加構造は例えば図9に示すように、図4に示す反応中心構造に一結合数以内で結合する範囲の周辺原子である炭素原子(番号7,8,9,11,12,14)および酸素原子(番号10,13)を付加した構造である。このように、反応中心構造に周辺原子を付加した周辺原子付加構造を用いることによって、反応データベース21,22の検索効率を向上させることができる。
【0049】
ステップ104で行う検索処理には、次に挙げる3種類の手法のいずれかが用いられる。まず、第1の検索手法としては、ステップ103で作成した反応中心構造の正準化データを検索キーとして第1の反応データベース21にアクセスし、反応構造の正準化データファイル21bに登録された反応構造の正準化データの中から、検索キーである反応中心構造の正準化データと少なくとも一部が一致する正準化データを検出する手法である(この手法は、請求項2の反応検索方法、請求項7の反応検索装置、請求項12の反応検索用記憶媒体でそれぞれ用いられる。)。この検索手法を用いることにより、共通の反応中心構造を有する複数の化学反応(この中に検索対象である被検索化学反応が含まれる)を高速に検索することができる。
【0050】
また、第2の手法としては、ステップ103で作成した周辺原子付加構造(反応中心構造に周辺原子を付加した構造)の正準化データを検索キーとして第1の反応データベース21にアクセスし、反応構造の正準化データファイル21bに登録された反応構造の正準化データの中から、検索キーである周辺原子付加構造の正準化データと少なくとも一部が一致する正準化データを検出する手法である(この手法は、請求項3の反応検索方法、請求項8の反応検索装置、請求項13の反応検索用記憶媒体でそれぞれ用いられる。)。この検索手法を用いることにより、共通の周辺原子付加構造を有する複数の化学反応(この中に検索対象である被検索化学反応が含まれる)を高速に検索することができる。
【0051】
さらに、第3の手法は、検索を2段階に行って正準化データを検出する手法である(この手法は、請求項4の反応検索方法、請求項9の反応検索装置、請求項14の反応検索用記憶媒体でそれぞれ用いられる。)。即ち、まず、ステップ103で作成した反応中心構造の正準化データを検索キーとして第2の反応データベース22にアクセスし、反応中心構造の正準化データファイル22bに登録された反応中心構造の正準化データの中から、検索キーである反応中心構造の正準化データと少なくとも一部が一致する正準化データを検索する。この第1段の検索処理によって複数の反応中心構造の正準化データが検出される。
【0052】
次に、これらの検出データを対象にして第2段の検索処理を行う。第2段の検索処理は、ステップ103で作成した反応構造の正準化データを検索キーとして第1の反応データベース21にアクセスし、反応構造の正準化データファイル21bに登録された反応構造の正準化データの中から、検索キーである反応構造の正準化データと完全に一致する正準化データを検出する処理である。このような2段階の検索処理によって、検索対象である被検索化学反応を高速に検出することができる。
【0053】
次に、本実施形態である反応検索用記憶媒体2について説明する。図10は、反応検索用記憶媒体2のデータ構成を示すブロック図である。反応検索用記憶媒体2は、データエリア2aとプログラムエリア2bとを有し、データエリア2aには、第1の反応データベース21と第2の反応データベース22とが記憶されている。また、プログラムエリア2bには、反応検索プログラム12が記憶されている。なお、第1及び第2の反応データベース21,22の各ファイル21a,21b,22a,22bに登録された各データは上述した結合表および正準化データと同一であるため、その説明は省略する。また、反応検索プログラム12の各ルーチン13〜16は上述した各ルーチン13〜16と同一であるため、その説明は省略する。さらに、反応検索用記憶媒体2としては、フレキシブルディスク、CD−ROM、MD、DVDなどの光学的又は磁気的に情報を記録することが可能ないずれの記憶媒体であってもよい。
【0054】
反応検索用記憶媒体2に記憶された反応データベース21,22および反応検索プログラム12は、情報処理装置で読み出すことができる。この情報処理装置の例を図11に示す。図11に示すように、情報処理装置3は、反応情報記憶媒体2に記憶された反応データベース21,22および反応検索プログラム12を読み出す記憶媒体読出装置90と、オペレーティングシステム(OS)11およびデータ読み出し用のアプリケーション(図示せず)が記憶されたメモリ装置10と、ハードディスク装置20とを備えている。また、情報処理装置3は、入力手段であるキーボード30およびマウス40と、出力手段であるディスプレイ50およびプリンタ60と、反応検索プログラム12の実行等を制御するCPU70とを備えている。
【0055】
そして、記憶媒体読出装置90に反応検索用記憶媒体2が挿入されると、反応検索用記憶媒体2から第1及び第2の反応データベース21,22が読み出され、ハードディスク装置20に記憶される。また、反応検索用記憶媒体2から反応検索プログラム12が読み出され、メモリ装置10に記憶される。
【0056】
その結果、情報処理装置3の構成は、図1に示した反応検索装置1の構成とほぼ同一になる。このため、反応検索プログラム12を情報処理装置3で実行させた場合の処理内容は、上述した反応検索装置1の処理内容と同一となる。よって、反応検索プログラム12の処理内容については、説明を省略する。
【0057】
なお、第1及び第2の反応データベース21,22をハードディスク装置20に記憶することなく、反応検索用記憶媒体2に記憶された第1及び第2の反応データベース21,22を反応検索プログラム12の処理で直接アクセスしてもよい。この場合にも、反応検索プログラム12の処理内容が変わることはない。
【0058】
【発明の効果】
本発明による反応検索方法、反応検索装置および反応検索用記憶媒体は、以上のように構成されているため次のような効果を得ることができる。
【0059】
即ち、被検索化学反応についての出発物質の分子構造と生成物質の分子構造とから作成された仮想分子構造を検索キーとして化学反応データベースを検索することにより、被検索化学反応を迅速に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る反応検索装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】2つの化合物を反応させた化学式の例を示す図である。
【図3】反応構造の例を示す図である。
【図4】反応中心構造の例を示す図である。
【図5】結合表の原子テーブルの例を示す図である。
【図6】結合表の原子対テーブルの例を示す図である。
【図7】結合表の原子テーブルおよび原子対テーブルの例を示す図である。
【図8】図1の反応検索装置による化学反応の検索動作について示すフローチャートである。
【図9】周辺原子付加構造の例を示す図である。
【図10】反応検索用記憶媒体のデータ構成を示すブロック図である。
【図11】情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1…反応検索装置、2…反応検索用記憶媒体、2a…データエリア、2b…プログラムエリア、3…情報処理装置、12…反応検索プログラム(検索用のプログラム)、13…分子構造入力ルーチン(分子構造入力手段)、14…原子対規定ルーチン(原子対規定手段)、15…分子構造作成ルーチン(分子構造作成手段)、16…化学反応検索ルーチン(化学反応検索手段)、21…第1の反応データベース、22…第2の反応データベース。
Claims (10)
- 化学反応のデータが登録された反応データベースにアクセスして検索対象である被検索化学反応を検索する装置、における反応検索方法であって、
前記反応データベースに登録された前記化学反応のデータは、化学反応前の出発物質を構成する原子と化学反応後の生成物質を構成する原子とが対応する原子の対であって、化学反応の前後で原子の化学的環境が変化する原子の対を反応中心原子対とし、前記反応中心原子対の原子間を仮想的に結合することにより、前記出発物質の分子構造と前記生成物質の分子構造とが一体となった仮想分子構造として表現されたデータであり、
前記化学反応の検索は、
前記装置が、前記被検索化学反応についての前記出発物質の分子構造のデータと前記生成物質の分子構造のデータとの入力を受け付ける第1のステップと、
前記装置が、前記第1のステップで受け付けたデータに係る分子構造に基づいて前記反応中心原子対を規定する第2のステップと、
前記装置が、前記第1のステップで受け付けたデータに係る分子構造に対して、前記第2のステップで規定した前記反応中心原子対の原子間が接続された前記仮想分子構造のデータを作成する第3のステップと、
前記装置が、前記第3のステップで作成した前記仮想分子構造のデータを検索キーとして、前記反応データベースに登録された前記化学反応のデータを検索する第4のステップとを備えることを特徴とした反応検索方法。 - 前記第3のステップでは、前記反応中心原子対の原子間を接続すると共に前記反応中心原子対以外の原子を削除して前記仮想分子構造のデータを作成しており、
前記第4のステップでは、前記被検索化学反応の前記仮想分子構造のデータと少なくとも一部が一致する前記化学反応のデータを検索している請求項1記載の反応検索方法。 - 前記第3のステップでは、前記反応中心原子対の原子間を接続すると共に前記反応中心原子対およびこの反応中心原子対に順次結合する所定範囲の原子以外の原子を削除して前記仮想分子構造のデータを作成しており、
前記第4のステップでは、前記被検索化学反応の前記仮想分子構造のデータと少なくとも一部が一致する前記化学反応のデータを検索している請求項1記載の反応検索方法。 - 前記第3のステップでは、前記反応中心原子対の原子間を接続した第1の仮想分子構造のデータと、この第1の仮想分子構造から前記反応中心原子対以外の原子を削除した第2の仮想分子構造のデータを作成しており、
前記第4のステップでは、前記反応データベースと略同一の前記化学反応のデータが登録され且つこれらのデータの前記仮想分子構造が前記反応中心原子対以外の原子を削除した構造である第2の反応データベースにアクセスして、前記第2の仮想分子構造のデータと少なくとも一部が一致する前記化学反応のデータを検索し、さらに、この検索で絞り込まれた前記化学反応のデータのみを対象にして前記反応データベースにアクセスし、前記第1の仮想分子構造のデータと完全に一致する前記化学反応のデータを検索している請求項1記載の反応検索方法。 - 前記出発物質及び前記生成物質を構成する1の原子についての前記化学的環境は、前記1の原子に結合している原子の数、前記1の原子に結合している原子の種類、前記1の原子に結合している原子との間の結合の種類および前記1の原子の荷電状態であり、
前記原子の対において原子の化学的環境を調べて、該化学的環境の少なくとも1つが変化している原子の対を反応中心原子対としている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の反応検索方法。 - 検索対象である被検索化学反応を検索する装置であって、
化学反応前の出発物質を構成する原子と化学反応後の生成物質を構成する原子とが対応する原子の対であって、化学反応の前後で原子の化学的環境が変化する原子の対を反応中心原子対とし、前記反応中心原子対の原子間を仮想的に結合することにより、前記出発物質の分子構造と前記生成物質の分子構造とが一体となった仮想分子構造として表現された化学反応のデータが登録された反応データベースと、
前記被検索化学反応についての前記出発物質の分子構造のデータと前記生成物質の分子構造のデータとの入力を受け付ける分子構造入力手段と、
前記分子構造入力手段で受け付けたデータに係る分子構造に基づいて前記反応中心原子対を規定する原子対規定手段と、
前記分子構造入力手段で受け付けたデータに係る分子構造に対して前記原子対規定手段で規定した前記反応中心原子対の原子間が接続された前記仮想分子構造のデータを作成する分子構造作成手段と、
前記分子構造作成手段で作成した前記仮想分子構造のデータを検索キーとして、前記反応データベースに登録された前記化学反応のデータを検索する化学反応検索手段とを備えることを特徴とした反応検索装置。 - 前記分子構造作成手段では、前記反応中心原子対の原子間を接続すると共に前記反応中心原子対以外の原子を削除して前記仮想分子構造のデータを作成しており、
前記化学反応検索手段では、前記被検索化学反応の前記仮想分子構造のデータと少なくとも一部が一致する前記化学反応のデータを検索している請求項6記載の反応検索装置。 - 前記分子構造作成手段では、前記反応中心原子対の原子間を接続すると共に前記反応中心原子対およびこの反応中心原子対に順次結合する所定範囲の原子以外の原子を削除して前記仮想分子構造のデータを作成しており、
前記化学反応検索手段では、前記被検索化学反応の前記仮想分子構造のデータと少なくとも一部が一致する前記化学反応のデータを検索している請求項6記載の反応検索装置。 - 前記反応データベースと略同一の前記化学反応のデータが登録され且つこれらのデータの前記仮想分子構造が前記反応中心原子対以外の原子を削除した構造である第2の反応データベースを更に備え、
前記分子構造作成手段では、前記反応中心原子対の原子間を接続した第1の仮想分子構造のデータと、この第1の仮想分子構造から前記反応中心原子対以外の原子を削除した第2の仮想分子構造のデータを作成しており、
前記化学反応検索手段では、前記第2の反応データベースにアクセスして、前記第2の仮想分子構造のデータと少なくとも一部が一致する前記化学反応のデータを検索し、さらに、この検索で絞り込まれた前記化学反応のデータのみを対象にして前記第2の反応データベースにアクセスし、前記第1の仮想分子構造のデータと完全に一致する前記化学反応のデータを検索している請求項6記載の反応検索装置。 - 前記出発物質及び前記生成物質を構成する1の原子についての前記化学的環境は、前記1の原子に結合している原子の数、前記1の原子に結合している原子の種類、前記1の原子に結合している原子との間の結合の種類および前記1の原子の荷電状態であり、
前記原子の対において原子の化学的環境を調べて、該化学的環境の少なくとも1つが変化している原子の対を反応中心原子対としている請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の反応検索装置。
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