JP3990312B2 - 託送用電力制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力系統に連系する発電所から、自家用発電設備を備えた需要家へ託送する電力を制御する託送用電力制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
規制緩和により電力小売事業の自由化が始まり、電力系統に連系している自家用発電設備の発電電力を、電力会社の送電ネットワークを介して別の場所の需要家に供給する電力託送を行うことが可能となった。この電力託送によって需要家に電力を供給する事業を特定規模電気事業と言い、この事業を行う者を特定規模電気事業者と言う。
【0003】
特定規模電気事業者は、契約した需要家が必要とする電力を発電あるいは調達することで供給する義務が生じ、送電電力量と需要家受電電力量とを一致させることが求められている。具体的には30分間の電力量が一致していれば良いとされている。これを同時同量と言う。また、30分間の電力量の一致は、電力会社と契約する送電サービス電力の±3%相当電力量の範囲に入ることが目標値とされている。
【0004】
現在の系統連系する発電所の基本的な構成は、図6に示すように発電機1、原動機2、調速機3、発電コントローラ4、自動電圧調整装置(AVR)5、および遮断器6から成っている。そして、遮断器7を介して構内系統に接続された構内負荷8に電力を供給し、更に遮断器9を介して電力系統15と連系されている。また、保護装置として発電機異常を保護する発電機保護装置10、電力系統15との連系保護のための系統連系保護装置11が設置されている。この系統連系する発電所において発電機出力の制御は発電コントローラ4により行われる。
【0005】
電力計12および電力計13による電力計測値は、発電コントローラ4による発電機出力の制御に際してフィードバック信号として用いる。発電コントローラ4は、発電電力指令値aに追従させるため調速機3を動作させ、発電機出力が制御される。ここで発電電力制御は、逆潮流あり連系の場合、発電所の稼働率を考え、発電効率の良いポイントにおける発電電力一定制御が行われることが考えられる。
【0006】
このような構成の発電所は、例えば特許文献1に記載されている。また、特許文献2には、需要家が契約した契約電力量と、需要家が消費した消費電力量との差を容易に把握できるようにするための技術が公開されている。これは、特定規模電気事業者が、電力の供給義務の履行を容易にするためになされた発明である。また、特許文献3には、特定規模電気事業者が、需要家の消費電力量を容易に予測するための技術が公開されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−247768号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2002−15036号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2002−64934号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6にその構成を示すような従来の発電所から、電力会社の送電ネットワークを介して別の場所の需要家に供給する電力託送を行う場合には以下のような問題がある。
【0011】
すなわち、発電所から電力系統へ電力を送り出す逆潮流ありの系統連系において、発電電力一定制御を行った場合、逆潮流となる電力である逆送電力は、構内負荷8で消費した残りの電力であり、これは成り行き任せとなる。
【0012】
この逆送電力を託送することを考える場合、現状の成り行き任せでは特定規模電気事業者としての同時同量を満たすことは不可能である。ゆえに、発電コントローラ4を同時同量を満たすための制御に変更するか、そのための制御装置を追加することが必要となる。
【0013】
また、供給先の需要家に自家用発電設備が設置されており、需要家は特定規模電気事業者からの託送電力と、需要家が所有する自家用発電設備との両方にて電力需要を賄う場合、同時同量を満たすためには需要家所有の自家用発電設備の発電電力も含めた制御が必要となる。
【0014】
このように、自家用発電設備を保有している需要家に対しても、同時同量を満足するように発電電力を制御することが可能な装置の開発が望まれている。
【0015】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、電力系統に連系する発電所から、自家用発電設備を備えた需要家へ電力を託送する場合に、発電所および自家用発電装置による発電電力を、同時同量を実現するように制御することが可能な託送用電力制御装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0017】
すなわち、請求項1の発明は、電力系統に連系する発電所から、電力系統を介して、自家用発電設備を備えた需要家へ託送する電力を制御する託送用電力制御装置であって、発電所から電力系統に逆送した送電電力量と、電力系統を介して需要家が受電した受電電力量とに基づいて、所定時間区間における受電電力量と、送電電力量から送電時に損失する電力量である損失電力量を減じた実効送電電力量とを一致させるために、所定時間区間を所定のサンプリング区間毎に区切るサンプリング区間設定手段を備えている。
【0018】
更に、サンプリング区間設定手段によって区切られたサンプリング区間毎に、発電所による発電電力の制御と自家用発電設備の発電電力の制御とを行う発電電力制御手段と、所定時間区間の開始時間を起点とする今回サンプリング区間までの受電電力量と実効送電電力量との間の誤差を誤差補正値として次回サンプリング区間において誤差を補うようにした誤差補正手段とを備えている。
【0019】
また、今回サンプリング区間における受電電力量と前回サンプリング区間における受電電力量との差に基づいて次回サンプリング区間における受電電力量を予測する受電電力量予測手段と、誤差補正手段による誤差補正値と、受電電力量予測手段によって予測された受電電力量とを加算し、またその加算結果をもとに送電時に想定される損失電力量をさらに加算結果に加算することによって必要送電電力量を算出する必要送電電力量算出手段と、必要送電電力量算出手段によって算出された必要送電電力量を発電所と自家用発電設備に対して配分する電力量配分手段とを備えている。
【0020】
更にまた、電力量配分手段によって発電所へ配分された電力量を次回サンプリング区間で出力する電力値に変換する第1の変換手段と、電力量配分手段によって自家用発電設備へ配分された電力量からその電力量に内包している必要送電電力量算出手段で加算された損失電力量の一部を減じた電力量を次回サンプリング区間で出力する電力値に変換する第2の変換手段と、第1および第2の変換手段によって変換された電力値のそれぞれを、次回サンプリング区間における発電所および自家用発電設備の発電電力として発電所および自家用発電設備のそれぞれに対して指令する発電電力指令手段とを備えている。
【0021】
従って、請求項1の発明の託送用電力制御装置においては、以上のような手段を講じることにより、需要家における受電電力量と発電所からの送電電力量に基づいて、同時同量を実現することができるような発電所の送電電力と需要家の自家用発電設備の発電電力とを決定することができる。
【0022】
請求項2の発明は、請求項1の発明の託送用電力制御装置において、電力量配分手段は、以下に示すような第1または第2の配分方法にしたがって、必要送電電力量算出手段によって算出された必要送電電力量を発電所と自家用発電設備に対して配分する。
【0023】
すなわち、第1の配分方法は、必要送電電力量算出手段によって算出された必要送電電力量のうち予め定めた一定電力量を発電所に対して配分し、必要送電電力量から一定電力量を減じた電力量を自家用発電設備に対して配分する方法である。一方、第2の配分方法は、必要送電電力量算出手段によって算出された必要送電電力量のうち予め定めた一定電力量を自家用発電設備に対して配分し、必要送電電力量から一定電力量を減じた電力量を発電所に対して配分するとのうちの何れかの方法にしたがって配分する方法である。
【0024】
第1の配分方法は、発電所の送電電力を一定とし、自家用発電設備によって同時同量のしわ取りをさせることになる。すなわち、比較的容量の小さい発電設備でしわ取りすることになり、発電所に比べて微調整が容易で応答性も早いことから同時同量を成立させやすくなる。一方、第2の配分方法は、自家用発電設備の発電電力を一定にするので、自家用発電設備の運転効率を重視するために適した方法である。
【0025】
請求項2の発明の託送用電力制御装置においては、以上のような手段を講じることにより、発電電力の配分方法を設備状況に応じて決定することができる。
【0026】
請求項3の発明は、請求項2の発明の託送用電力制御装置において、電力量配分手段がしたがう配分方法として、第1の配分方法であるかまたは第2の配分方法であるかを所定時間区間毎に定義した定義データを記憶した記憶手段を更に備えている。そして、電力量配分手段は、記憶手段に記憶された定義データに定義された配分方法にしたがって必要送電電力量を配分するようにしている。
【0027】
従って、請求項3の発明の託送用電力制御装置においては、以上のような手段を講じることにより、第1の配分方法を採用する時間帯と、第2の配分方法を採用する時間帯とを定義データとして予め定め、その定義データにしたがって必要送電電力量を配分することができる。その結果、需要家の事情あるいは設備状況に応じて、きめ細かく配分方法を設定することが可能となる。
【0028】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のうち何れか1項の発明の託送用電力制御装置において、所定時間区間を30分としている。
【0029】
従って、請求項4の発明の託送用電力制御装置においては、以上のような手段を講じることにより、発電所は、30分間に亘る同時同量を実現することが可能となる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0031】
なお、以下の各実施の形態の説明に用いる図中の符号は、図6と同一部分については同一符号を付して示すことにする。
【0032】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を図1から図3を用いて説明する。
【0033】
図1は、第1の実施の形態に係る託送用電力制御装置が適用された状態の一例を示す系統図である。
【0034】
すなわち、本実施の形態に係る託送用電力制御装置20は、制御対象とする各需要家30および各発電所32とデータ授受可能な状態で接続している。託送用電力制御装置20と各需要家30との間、および託送用電力制御装置20と各発電所32との間のデータ授受のための通信手段としては、例えば電話回線を用いる。なお、図1中では、通信手段となる構成要素、例えば通信端末や回線ケーブル等の表記を省略している。
【0035】
なお、図1では、一例として2つの需要家30(#A、#B)および2つの発電所32(#A,#B)のみを記載しているが、本実施の形態に係る託送用電力制御装置20は、需要家30および発電所32が1カ所であっても3カ所以上であっても対象とすることは可能である。
【0036】
発電所32は、電力系統15に対して電力を逆送し、電力系統15を介して需要家30に電力を供給する。このような発電所32は、図6に示す従来技術による構成に加え、電力系統15へ送電する送電電力量を検出する電力量計14を備えている。
【0037】
一方、需要家30は、構内負荷21の容量よりも小さな自家用発電設備24を所有しており、ここで発電した電力を遮断器25および遮断器22を介して構内負荷21へと給電している。また、電力系統15から受電した受電電力量を検出する電力量計23を備えている。また、電力系統15から受電した受電電力を、遮断器26および遮断器22を介して構内負荷21へと給電するようにしている。なお、本実施の形態に係る託送用電力制御装置20が制御する複数の需要家30の中には、自家用発電設備24を所有していない需要家30が存在していても良い。
【0038】
託送用電力制御装置20は、需要家30および発電所32とは離れた場所に設けられた例えば管理センタ40内に備えられるようにしており、発電所32から電力系統15に送電した送電電力量と、需要家30が受電した受電電力量とに基づいて、同時同量を満たすために各発電所32に指令する指令信号n、および各需要家30に指令する指令信号mを生成し、指令信号nを発電所32の発電コントローラ4に、指令信号mを需要家30の自家用発電設備24にそれぞれ出力する。
【0039】
図2は、本実施の形態に係る託送用電力制御装置20の構成例を示す機能ブロック図である。
【0040】
すなわち、本実施の形態に係る託送用電力制御装置20は、加算部34と、比較演算部35と、加算部36と、加算部37と、誤差補正部42と、受電電力量予測部43と、送電損失電力量加算部44と、電力量配分部45と、送電損失電力量減算部46と、レートリミット部47と、サンプリング設定部48と、第1の変換部49と、第2の変換部50とを備えている。
【0041】
加算部34は、制御対象としている各需要家30(#A、#B)に備えられた電力量計23(#A、#B)によって検出された受電電力量c(#A、#B)の信号を取り込む。そして、取り込んだ各受電電力量c(#A、#B)を加算することによって受電電力量合計値Σcを得、合計受電電力量信号を生成し、生成した合計受電電力量信号を比較演算部35および受電電力量予測部43へと出力する。
【0042】
加算部37は、制御対象としている各発電所32(#A、#B)に備えられた電力量計14(#A、#B)によって検出された送電電力量b(#A、#B)の信号を取り込む。そして、取り込んだ各送電電力量b(#A、#B)を加算することによって送電電力量合計値Σbを得、合計送電電力量信号を生成し、生成した合計送電電力量信号を送電損失電力量減算部46へと出力する。
【0043】
送電損失電力量減算部46は、加算部37から出力された合計送電電力量信号を得ると、合計送電電力量Σbから所定の送電損失率に基づく送電損失電力量を減算し、減算結果である供給電力量eに対応する供給電力量信号を比較演算部35に出力する。例えば、送電損失率をLoss(%)とすると、送電損失電力量減算部46にゲイン(1−Loss/100)を設定することにより送電損失電力量を減じたことになる。
【0044】
比較演算部35は、加算部34から出力された合計受電電力量信号と、送電損失電力量減算部46から出力された供給電力量信号とを取得する。そして、合計受電電力量Σcから、供給電力量eを減算する。そして、減算結果(Σc−e)を誤差とし、この誤差信号を誤差補正部42へと出力する。
【0045】
誤差補正部42は、比較演算部35から出力された誤差信号を取得し、この誤差(Σc−e)を誤差補正値fとし、誤差補正値信号を加算部36へと出力する。
【0046】
受電電力量予測部43は、加算部34から出力された合計受電電力量信号を取得する。そして、この合計受電電力量信号に対応する合計受電電力量Σcの変動量に基づいて、受電電力量予測値gを算出する。そして、算出した受電電力量予測値gに対応する受電電力量予測値信号を加算部36へと出力する。
【0047】
加算部36は、誤差補正部42から出力された誤差補正値信号と、受電電力量予測部43から出力された受電電力量予測値信号とを受信する。そして、誤差補正値信号に対応する誤差補正値fと、受電電力量予測値信号に対応する受電電力量予測値gとを加算して必要供給電力量(f+g)を求め、必要供給電力量信号を送電損失電力量加算部44へと出力する。
【0048】
送電損失電力量加算部44は、加算部36から出力された必要供給電力量信号を受信する。そして、必要供給電力量信号に対応する必要供給電力量(f+g)に、送電損失電力量hを加算することによって必要送電電力量(f+g+h)を得る。そして、この必要送電電力量(f+g+h)に対応する必要送電電力量信号を電力量配分部45へと出力する。送電損失電力量加算部44は、送電損失電力量減算部46と逆数のゲイン1/(1−Loss/100)を設定することで、送電損失電力量hを加算したことになる。
【0049】
電力量配分部45は、送電損失電力量加算部44から出力された必要送電電力量信号を取得し、対応する必要送電電力量(f+g+h)を、各発電所32および各需要家30の自家用発電設備24に対して配分し、配分結果に対応する第1の変換部49および第2の変換部50へと出力する。
【0050】
第1の変換部49は、電力量配分部45から出力された信号の内で発電所32(#A,#B)へ配分された電力量の信号k(#A、#B)を入力し、サンプリング設定部48にて設定されたサンプリングレートに応じた電力指令に変換する。
【0051】
第2の変換部50は、電力量配分部45から出力された信号の内で需要家30(#A、#B)へ配分された電力量の信号k(#A、#B)を入力する。この電力量の信号kは、送電を前提にした電力量となっており送電損失量が上乗せされている。これらkの電力量は、需要家30内の負荷21への給電における自家用発電設備24への配分なので、送電損失量分は不要である。そのため、第2の変換部50では不要となる上乗せした送電損失量相当分を減じた上で、サンプリング設定部48にて設定されたサンプリングレートに応じた電力指令に変換する。
【0052】
レートリミット部47は、制御信号の急激な変更を制御するものであって、第1の変換部49および第2の変換部50から出力された制御信号であって電力指令信号であるd(#A、#B)およびd(#A、#B)を入力し、それらの急激な変更を抑制し、発電所32への指令信号n(#A、#B)および需要家30の自家用発電設備24への指令信号m(#A、#B)を出力する。
【0053】
サンプリング設定部48は、図2中に示す点線内の範囲、すなわち加算部34と、比較演算部35と、加算部36と、加算部37と、誤差補正部42と、受電電力量予測部43と、送電損失電力量加算部44と、電力量配分部45と、送電損失電力量減算部46と、レートリミット部47と、第1の変換部49と、第2の変換部50との動作タイミングを司っている。
【0054】
サンプリング設定部48におけるサンプリングレートの設定値は、30分の時間区間を任意のレートで等間隔で区切る場合や、レートを自由に設定する場合の何れであっても良い。一例として、30分間の同時同量を満たすため、30分の時間区間を1分間隔のレートのサンプリング区間に区切り、このサンプリングによって制御する方法について図3を用いて説明する。
【0055】
図3は、本実施の形態に係る託送用電力制御装置20の動作を説明するための図であって、図3中の曲線PLは需要家受電電力(需要家合計値)の推移を表している。
【0056】
図3において、今回のサンプリング区間をtn、前回のサンプリング区間をtb、次回のサンプリング区間をtaでそれぞれ示している。Pbは前回サンプリング区間tbにおける曲線PLの推移から決まる需要家30の受電電力の平均値である。同様に、Pnは今回のサンプリング区間tnにおける需要家30の受電電力の平均値である。また、PrbおよびPrnは、前回サンプリング区間tbおよび今回サンプリング区間tnにおける送電電力の平均値である。
【0057】
サンプリング区間毎に電力量計23での計測値を取得すると、前回サンプリング区間tbおよび今回サンプリング区間tnにおける電力量は、Pb×tb、Pn×tnとしてそれぞれ計算することができる。発電所32からの送電電力量についても電力量計14の計測値に基づいて、前回サンプリング区間tbおよび今回サンプリング区間tnにおける送電電力量をPrb×tb、およびPrn×tnとそれぞれ表現できる。
【0058】
また、Pra*は次回サンプリング区間taにおける送電電力の指令値である。送電電力量から送電損失電力量を差し引く損失率をLoss(%)とすると、需要家30に供給した電力量はそれぞれ
Prb×tb×(1−Loss/100)、
Prn×tn×(1−Loss/100)となる。
【0059】
したがって、30分の時間区間の最初のサンプリング区間がtbである場合、今回サンプリング区間tnまでの需要家30と発電所32との電力量の誤差αは、以下に示す式の通りとなる。
α=(Pb×tb+Pn×tn)−
(Prb×tb+Prn×tn)×(1−Loss/100))
同時同量を実現するためにはこの誤差αを埋める必要があるので、誤差αに相当する電力量を次回のサンプリング区間に上乗せすることによって誤差を補正する。このように、誤差を補正することを比較演算部35と誤差補正部42にて行っている。
【0060】
一方、需要家30の受電電力が図3の曲線PLに示すように増加傾向にあるなど変動している場合には、上述したような誤差αの補正だけでは必ず1サンプリング区間の遅れが発生するので需要家30の受電電力への追従が不十分となる。このため、前回サンプリング区間tbにおける電力量(Pb×tb)から今回サンプリング区間tnにおける電力量(Pn×tn)へ受電電力量が変動したものとし、同じ変動が今回サンプリング区間tnから次回サンプリング区間taの間でも生じると仮定して、変動分β=(Pn×tn)−(Pb×tb)を予測補正値とする。また、次回サンプリング区間taの受電電力量予測値は、β+(Pn×tn)、すなわち2×(Pn×tn)−(Pb×tb)となる。このように、受電電力の予測を受電電力量予測部43で行っている。
【0061】
したがって、次回サンプリング区間taにおける送電電力の指令値Pra*は、送電損失電力量を含めて、
Pra*=((α+β+(Pn×tn))/(1−Loss/100))/ta
となる。
【0062】
すなわち、本実施の形態に係る託送用電力制御装置20は、送電電力の指令値Pra*から決定される電力量(Pra*×ta)を、各発電所32および各需要家30の自家用発電設備24に配分する。
【0063】
本実施の形態に係る託送用電力制御装置20は、上述したような構成をしているので、需要家30に設置された電力量計23によって検出された受電電力量と、発電所32に設置された電力量計14によって検出された送電電力量とに基づいて、発電所32の送電電力および需要家30の自家用発電設備24の発電電力とを決定することができる。
【0064】
以上により、需要家30の受電電力量に対する発電所32からの供給電力量を例えば30分単位のような所定の時間区間毎に追従させることができる所謂同時同量を実現することが可能となる。
【0065】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態を図4から図5を用いて説明する。
【0066】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る託送用電力制御装置27の構成例を示す機能ブロック図であり、図2と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0067】
すなわち、本実施の形態に係る託送用電力制御装置27は、第1の実施の形態に係る託送用電力制御装置20に記憶部51を付加した構成としている。
【0068】
記憶部51は、電力量配分部45がしたがう配分方法を所定の時間区間(例えば30分)毎に定義した定義データを記憶している。そして、電力量配分部45は、記憶部51に記憶された定義データに定義された配分方法にしたがって必要送電電力量を配分する。
【0069】
配分方法としては、例えば以下に示すような第1の配分方法と第2の配分方法とがある。
【0070】
第1の配分方法とは、送電損失電力量加算部44によって算出された必要送電電力量(f+g+h)のうち、予め定めた一定電力量を発電所32に対して配分し、残りの電力量を自家用発電設備24に対して配分する方法である。
【0071】
第1の配分方法は、このように発電所32の送電電力を一定にして、需要家30の自家用発電設備24側で同時同量のしわ取りの役割を持たせるので、比較的容量の小さい発電設備でしわ取りをする事になり、発電所32よりも微調整が容易であり、かつ応答性も早いことから、同時同量を成立させやすいという長所を有する。
【0072】
一方、第2の配分方法とは、送電損失電力量加算部44によって算出された必要送電電力量(f+g+h)のうち、予め定めた一定電力量を自家用発電設備24に対して配分し、残りの電力量を発電所32に対して配分する方法である。
【0073】
このような第2の配分方法では、需要家30における自家用発電設備24の発電電力を一定にするので、自家用発電設備24側の運転効率を重視したい場合や、コージェネレーション設備での熱需要も抱えている需要家であれば熱需要を主とする時間帯においては安定した熱需要を得たい場合等に有利である。
【0074】
本実施の形態に係る託送用電力制御装置27では、一日のうちの所定の時間区間(例えば30分)毎に第1および第2の配分方法のうちの何れを採用するかを定義データに定義することによって、需要家30側の目的や事情等に応じて、きめ細かく配分方法を設定できるようにしている。
【0075】
図5は、第1の配分手法における発電所32と需要家30の自家用発電設備24への配分のイメージを示す図である。
【0076】
図5では、30分からなる時間区間を示している。すなわち30分区間における需要家30(#A,#B)の負荷21の負荷電力合計の推移は図中に示す曲線Qの通りである。
【0077】
一方、発電所32(#A,#B)から託送される送電電力を一定としており、図中に示す斜線部がこの送電電力で賄われる電力量を表している。すなわち、負荷電力合計の推移を示す曲線Qと斜線部で挟まれた残りの電力を需要家30(#A,#B)の自家用発電設備24が賄う。需要家30(#A,#B)の自家用発電設備24は、図3で示したようにサンプリング区間毎に出力調整することによって負荷電力の推移に追従させるようにしている。
【0078】
本実施の形態に係る託送用電力制御装置27は、上述したような構成をしているので、第1の実施の形態で得られる作用効果に加えて、以下の作用効果を更に奏することができる。
【0079】
すなわち、第1の配分方法を採用する所定の時間区間と、第2の配分方法を採用する所定の時間区間とを定義データとして予め定め、その定義データにしたがって必要送電電力量(f+g+h)を配分することができるので、需要家30の事情に応じて、きめ細かく配分方法の設定することが可能となる。
【0080】
以上、本発明の好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電力系統に連系する発電所から、自家用発電設備を備えた需要家へ電力を託送する場合に、発電所および自家用発電設備による発電電力を、同時同量を実現するように制御することが可能な託送用電力制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施の形態に係る託送用電力制御装置が適用された状態の一例を示す系統図。
【図2】 第1の実施の形態に係る託送用電力制御装置の構成例を示す機能ブロック図。
【図3】 第1の実施の形態に係る託送用電力制御装置の動作を説明するための図。
【図4】 第2の実施の形態に係る託送用電力制御装置の構成例を示す機能ブロック図。
【図5】 第1の配分手法における発電所と需要家への配分例を示す模式図。
【図6】 従来技術による発電電力制御装置によって逆潮流運転を行う発電所の一構成例を示すブロック図。
【符号の説明】
1…発電機、2…原動機、3…調速機、4…発電コントローラ、5…自動電圧調整装置、6,7,9,22,25,26…遮断器、8,21…構内負荷、10…発電機保護装置、11…系統連系保護装置、12,13…電力計、14,23…電力量計、15…電力系統、20,27…託送用電力制御装置、24…自家用発電設備、30…需要家、32…発電所、34,36,37…加算部、35…比較演算部、40…管理センタ、42…誤差補正部、43…受電電力量予測部、44…送電損失電力量加算部、45…電力量配分部、46…送電損失電力量減算部、47…レートリミット部、48…サンプリング設定部、49…第1の変換部、50…第2の変換部、51…記憶部

Claims (4)

  1. 電力系統に連系する発電所から、前記電力系統を介して、自家用発電設備を備えた需要家へ託送する電力を制御する託送用電力制御装置であって、
    前記発電所から前記電力系統に逆送した送電電力量と、前記電力系統を介して前記需要家が受電した受電電力量とに基づいて、所定時間区間における前記受電電力量と、前記送電電力量から送電時に損失する電力量である損失電力量を減じた実効送電電力量とを一致させるために、前記所定時間区間を所定のサンプリング区間毎に区切るサンプリング区間設定手段と、
    前記サンプリング区間設定手段によって区切られたサンプリング区間毎に、前記発電所による発電電力の制御と、前記自家用発電設備の発電電力の制御とを行う発電電力制御手段と、
    前記所定時間区間の開始時間を起点とする今回サンプリング区間までの受電電力量と、前記実効送電電力量との間の誤差を誤差補正値として、次回サンプリング区間において誤差を補うようにした誤差補正手段と、
    前記今回サンプリング区間における受電電力量と前回サンプリング区間における受電電力量との差に基づいて次回サンプリング区間における受電電力量を予測する受電電力量予測手段と、
    前記誤差補正手段による誤差補正値と、前記受電電力量予測手段によって予測された受電電力量とを加算し、またその加算結果を基に送電時に想定される損失電力量を更に前記加算結果に加算することによって必要送電電力量を算出する必要送電電力量算出手段と、
    前記必要送電電力量算出手段によって算出された必要送電電力量を前記発電所と前記自家用発電設備に対して配分する電力量配分手段と、
    前記電力量配分手段によって前記発電所へ配分された電力量を、前記次回サンプリング区間で出力する電力値に変換する第1の変換手段と、
    前記電力量配分手段によって前記自家用発電設備へ配分された電力量からその電力量に内包している前記必要送電電力量算出手段で加算された損失電力量の一部を減じた電力量を前記次回サンプリング区間で出力する電力値に変換する第2の変換手段と、
    前記第1および第2の変換手段によって変換された電力値のそれぞれを、前記次回サンプリング区間における発電所および自家用発電設備の発電電力として前記発電所および前記自家用発電設備のそれぞれに対して指令する発電電力指令手段と
    を備えた託送用電力制御装置。
  2. 請求項1に記載の託送用電力制御装置において、
    前記電力量配分手段は、
    前記必要送電電力量算出手段によって算出された必要送電電力量のうち予め定めた一定電力量を前記発電所に対して配分し、前記必要送電電力量から前記一定電力量を減じた電力量を前記自家用発電設備に対して配分する第1の配分方法と、
    前記必要送電電力量算出手段によって算出された必要送電電力量のうち予め定めた一定電力量を前記自家用発電設備に対して配分し、前記必要送電電力量からこの一定電力量を減じた電力量を前記発電所に対して配分する第2の配分方法とのうちの何れかの方法にしたがって配分するようにした託送用電力制御装置。
  3. 請求項2に記載の託送用電力制御装置において、
    前記電力量配分手段がしたがう配分方法として、前記第1の配分方法であるかまたは前記第2の配分方法であるかを前記所定時間区間毎に定義した定義データを記憶した記憶手段を更に備え、
    前記電力量配分手段は、前記記憶手段に記憶された定義データに定義された配分方法にしたがって前記必要送電電力量を配分するようにした託送用電力制御装置。
  4. 前記所定時間区間を30分とした請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の託送用電力制御装置。
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