JP3989856B2 - スピーカ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スピーカ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のドーム型スピーカの基本構造は、図1(a)に示すように、ボイスコイルAが取り付けられたドーム振動板Bを備え、リング状マグネットC1とトップヨークC2とヨークC3とで磁気回路(内磁型)を形成し、トップヨークC2の外周とヨークC3との間隙に形成される磁気ギャップにボイスコイルAを配置し、ヨークC3の周囲にフレームDを設けて、ドーム振動板BをエッジEによってフレームDに支持させるものである。
【0003】
図1(a)に示すドーム振動板Bは、スピーカ装置の表面側に突出した凸状断面を有するものであるが、これによると、スピーカの全高がヨークC3の底面からドーム振動板Bの突出した頂部までとなり、ドーム振動板Bの突出分だけ全高が厚くなる。これに対して、更に薄型を目指して、図1(b)に示すように、ドーム振動板BをボイスコイルA側に突出した凹状断面を有する形状にした逆ドーム型スピーカが知られている(下記特許文献1,2参照)。
【0004】
【特許文献1】
実公昭54−1242号公報
【特許文献2】
特開平11−88987号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなドーム型スピーカは、一般に指向性が高く、また、ドーム振動板の湾曲を曲率半径の異なる円弧を連続させることで、高域共振の分散効果が得られ、高域共振周波数を高くできると共に、高域でフラットな音圧周波数特性が得られることが知られている。そこで、このようなドーム型スピーカは、この高域特性を生かして、主に高音再生用スピーカ(ツイータ)として採用されることが多い。
【0006】
そして、前述した逆ドーム型スピーカは、振動板外形の最適位置を駆動して高域特性をコントロールすることで、同一口径のドーム型スピーカに比べて更に指向性を改善することが可能である。また、振動板の凹断面形状によって高い形状安定性と形状剛性が得られるので、分割振動周波数が高く、中音域の歪みを低く抑えることが可能になる。更には、振動板を浅い凹断面形状にすることで、前室効果(振動板前面の窪みによって生じる音圧特性の乱れ)の起きない良好な性能を得ることができる。
【0007】
このように、逆ドーム型スピーカは、一般に、薄型が可能で、コーン型のスピーカ等に比べて高域での周波数特性や指向性において優れた特性を有している。しかしながら、通常、ドーム振動板とエッジとの逆共振による特性の乱れを抑えるために、エッジ幅(エッジ外径)をなるべく小さくしており、その結果、ドーム型振動板はドーム振動板の内部のみの有効振動面積しか持たないので、逆ドーム型スピーカを含めたドーム型スピーカは、一般に低域の再生には不利である。また、エッジ幅が小さいため、振動板の振幅範囲が小さくなり、大振幅が必要な低域再生には向かないという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを一つの課題とするものである。すなわち、指向性が良好で薄型化が可能な逆ドーム型スピーカの利点を生かしながら、高域から低域に至るまで広い再生帯域を有するスピーカ装置を提供すること等が本発明の目的である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明によるスピーカ装置は、以下の独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
【0010】
請求項1に係る発明は、スピーカ装置であって、ボイスコイルが取付けられ、該ボイスコイル側に突出した凹断面形状のドーム振動板と、該ドーム振動板の外縁部に設けられ、前記ドーム振動板をフレームに支持する凹断面形状のエッジと、前記ボイスコイルが配置される磁気ギャップを形成する磁気回路とを備え、前記エッジは、前記ドーム振動板による再生帯域より低い再生帯域を担い、前記エッジの外径は、当該エッジの内径の1.5〜3倍であることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図2は本発明の一実施形態に係るスピーカ装置の構成を示す説明図(概略断面図)である。スピーカ装置の基本構成は、ボイスコイル1が取り付けられたドーム振動板2、このドーム振動板2をフレーム3に支持するエッジ4、マグネット50,トップヨーク51,ヨーク52からなる磁気回路5とを備え、この磁気回路5により形成される磁気ギャップG内にボイスコイル1が配置されている。また、必要に応じてドーム振動板2をフレーム3に支持するサスペンション6が設けられる。
【0012】
そして、第1には、本発明の実施形態に係るスピーカ装置は、ドーム振動板2をボイスコイル1側に突出した凹断面形状とし、ドーム振動板2の外縁部に設けられるエッジ4を同様の凹断面形状として、エッジ4をドーム振動板2による再生帯域より低い再生帯域を担うようにし、エッジ外径bを当該エッジの内径aの1.5〜3倍にしたことを特徴とする。
【0013】
これによると、まず、凹断面形状のドーム振動板2と同じく凹断面形状のエッジ4を備えるので、スピーカ表面側に突出する部分がなく、また、ドーム振動板2とエッジ4の凹みを浅くすることで平面振動板に近い形態が得られるので、スピーカ装置の全高を低く抑えることが可能になり、装置の薄型を達成することができる。また、ドーム振動板2とエッジ4とを浅い凹断面形状にすることで、形状安定性と高剛性を確保でき、分割振動周波数を高めて中音域の歪みを低く抑えることが可能であり、また前室効果の起きない良好な性能を得ることができる。
【0014】
更には、エッジ4の幅を広くしたので、エッジ自身が低域の再生特性を有すると共にドーム振動板2を大振幅させることが可能になるので、良好な低域再生が可能になる。したがって、ドーム振動板2自身の良好な高域再生と併せて、広い再生帯域を確保することが可能になる。更には、逆ドーム型スピーカとして良好な指向性を発揮することもできる。
【0015】
また、エッジ幅は、エッジ外径bがエッジ内径aの1.5培より小さいようでは、ドーム振動板2は低域再生のために十分な振幅を得ることができないし、エッジ自身の低域再生特性を得ることもできない。また、エッジ幅をエッジ外径bがエッジ内径aの3倍より大きくなる程広くすると、低域再生が可能な軟らかい材料では、ドーム振動板1を支持するために必要な剛性を確保することができないし、材料を硬くすると、低域再生を行うことができなくなる。したがって、前述の作用を得るエッジ幅としては、エッジ外径bを当該エッジの内径aの1.5〜3倍程度にするのが有効であり、特には、エッジ外径bをエッジ内径aの2倍程度にするのが有効である。
【0016】
には、前述のスピーカ装置を前提として、ドーム振動板2とエッジ4とは別の部材で形成されていることを特徴とする。これによると、前述の作用と併せて、高域再生を担うドーム振動板2と低域再生を担うエッジ4の周波数特性を容易に設定することが可能になる。
【0017】
には、前述のスピーカ装置を前提として、ドーム振動板2とエッジ4とは異なる材料で形成されていることを特徴とする。これによると、前述の作用と併せて、高域再生を担うドーム振動板2と低域再生を担うエッジ4の周波数特性を材料の違いによって容易に設定することが可能になる。
【0018】
には、前述のスピーカ装置を前提として、スピーカ装置を構成する磁気回路を内磁型にすることを特徴とする。前述したスピーカ装置の磁気回路は外磁型でもよいが、図2に示した磁気回路5のように内磁型を採用することによって、装置全体の高さをより抑えることができ、更なる薄型が可能になる。
【0019】
図3は、実施形態のスピーカ装置における音圧周波数特性の解析例を示すグラフである。実施形態のスピーカ装置によると、ドーム振動板2とエッジ4に対して、有限要素法等によって目標帯域内で特性が乱れないように、材料、材厚、湾曲形状(曲率R)等を決定することができる。同図は、有限要素法によって、b=2a(a:エッジ内径,b:エッジ外径)とした場合の解析例を示したものである。一般的なドーム型スピーカの場合は、20kHz付近に高域共振周波数fhが存在する高音再生用のスピーカでは、低域共振周波数f0は1kHz程度と高くなるが、本発明の実施形態に係るスピーカ装置によると、解析上図示のように400Hz程度に引き下げることが可能になる。
【0020】
図4は、本発明の実施形態に係るスピーカ装置において、b=2a(a:エッジ内径,b:エッジ外径)の場合の音圧周波数特性の測定例を示すグラフである。ここでは、指向性を示すために、方向(θ=0°,θ=30°,θ=60°)毎の特性を示している。同図(a)はドーム振動板2及びエッジ4が共に凹断面状のスピーカの測定例であり、同図(b)は、比較のためにドーム振動板及びエッジを凸断面状にしたスピーカの測定例を示している。ドーム振動板2及びエッジ4が凹断面状のものでは、同図(a)に示すように、約200〜10kHzの広帯域で方向に拘わらずほぼフラットな音圧周波数特性を示すことができる。これに対して、ドーム振動板とエッジを凸断面状にした場合には、同図(b)に示すように、5kHzを超えた当たりで指向性が悪化する傾向がある。
【0021】
以上説明したように、本発明の実施形態に係るスピーカ装置によると、指向性が良好で薄型化が可能な逆ドーム型スピーカの利点を生かしながら、高域から低域に至るまで広い再生帯域を有するスピーカ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術の説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスピーカ装置の構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るスピーカ装置における音圧周波数特性の解析例を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態に係るスピーカ装置において、b=2a(a:エッジ内径,b:エッジ外径)の場合の音圧周波数特性の測定例を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ボイスコイル
2 ドーム振動板
3 フレーム
4 エッジ
5 磁気回路
6 サスペンション
50 マグネット
51 トップヨーク
52 ヨーク
G 磁気ギャップ

Claims (4)

  1. ボイスコイルが取付けられ、該ボイスコイル側に突出した凹断面形状のドーム振動板と、該ドーム振動板の外縁部に設けられ、前記ドーム振動板をフレームに支持する凹断面形状のエッジと、前記ボイスコイルが配置される磁気ギャップを形成する磁気回路とを備え、前記エッジは、前記ドーム振動板による再生帯域より低い再生帯域を担い、前記エッジの外径は、当該エッジの内径の1.5〜3倍であることを特徴とするスピーカ装置。
  2. 前記ドーム振動板と前記エッジとは別の部材で形成されていることを特徴とする請求項に記載のスピーカ装置。
  3. 前記ドーム振動板と前記エッジとは異なる材料で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカ装置。
  4. 前記磁気回路を内磁型とすることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のスピーカ装置。
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