JP3989154B2 - 導電性インク組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性に優れ、溶剤による炭素充填剤の分離が無く、かつ硬化被膜を形成した場合に耐こすり性に優れている導電性インク組成物及びその硬化物に関する。
【0002】
【従来の技術】
導電性インク組成物としては、室温硬化性又は付加硬化性オルガノポリシロキサン組成物に炭素粉末、金属粉末又は金属酸化粉末を導電性充填剤として配合し、その硬化物(シリコーンゴム)に導電性を付与するようにした導電性インク組成物が知られており、これは例えばキーボードのトップコーティング材として使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、オルガノポリシロキサンをベースポリマーとする組成物にこれらの導電性充填剤を高充填した導電性インク組成物は溶剤で希釈すると、導電性充填剤がオルガノポリシロキサンから分離してしまい易い。またこれをトップコーティング材として硬化して得られた被膜を強くこすると硬化被膜がキーボード基材表面から剥離し、こすった部分近傍に付着し外観を損ねるという欠点がある。
そこで、本発明の目的は、溶剤による導電性充填剤の分離やこすれによる剥離などが起こりがたい導電性インク組成物を提供することになる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、導電性インク組成物について鋭意検討を行った結果、
(A)両末端が加水分解性シリル基で封鎖され、主鎖が酸素原子及び/又はシロキサン結合を含んでもよい二価炭化水素基の繰り返し単位からなる炭化水素系液状ポリマー、
(B)硬化触媒、
(C)炭素系導電性充填剤、及び
(D)溶剤
を含有してなることを特徴とする導電性インク組成物により上記の課題を解決することができることを見出した。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
・(A)成分は、両末端が加水分解性シリル基で封鎖され、主鎖が酸素原子及び/又はシロキサン結合を含んでもよい二価炭化水素基の繰り返し単位からなる液状ポリマーである。
【0006】
このように、本発明のベースポリマーである重合体(A)は、ポリオレフィン、ポリエーテルのような炭化水素系ポリマーであるため、組成物状態では溶剤による炭素系導電性充填剤の分離が抑制され、被膜状に硬化後はこすれによる剥離が抑制される。これは、主鎖を構成するポリオレフィンまたはポリエーテル等が炭素系導電性充填剤との親和性が良く、一般に希釈用溶剤として使用される炭素系溶剤等とも親和性が良好であることに基づいている。
【0007】
主鎖の繰り返し単位となる二価の炭化水素基としては、炭素原子数2〜20のものが挙げられ、例えばエチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、これらの組合せからなり、具体的には、例えば、
【0008】
【化4】
等が挙げられ、好ましくは炭素数が2〜8のものである。ポリマー鎖は、これら単位構造の一種単独で形成されていても良いし、2種類以上の単位構造が混合された形で形成されていても良い。
【0009】
また、主鎖の繰り返し単位となる二価の炭化水素としては炭素原子2以上のアルキレンオキシ基もあげられ、該アルキレンオキシ基の具体例としては、
【0010】
【化5】
等が挙げられる。
主鎖にシロキサン結合を含まない場合は、オキシアルキレン基が好ましく、炭素数2〜8、特に2〜5のオキシアルキレン基が好ましい。中でも、
【0011】
【化6】
基が好ましい。これらの繰り返し単位から構成される主鎖は直接又はエチレン結合やプロピレン結合等の二価炭化水素基を介して、末端の加水分解性シリル基で結合している。これらの主鎖にシロキサン結合を含まない場合は分子量が200〜50,000、特に1,000〜30,000であることが好ましい。分子量が50,000を超えると固体となったり、作業性が低下することがある。尚、本成分の「液状」とは、室温で流動性を有することを意味する。
【0012】
また、主鎖の繰り返し単位にシロキサン結合を導入することにより更に高分子量化しても液状とすることができると共に耐候性や耐熱性を向上させることができる。この場合は、繰り返し単位に導入されるシロキサン結合が長すぎると導電性充填剤が分離し易くなるため、導入するシロキサン結合は短い方が好ましく、特にけい素原子数が5以下のシロキサン結合、中でも、式:
【0013】
【化7】
(R1は同一でも異なってもよく、一価炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基である。)で表される単位が好ましい。具体的には、
【0014】
【化8】
(R2は酸素原子を含んでもよい二価炭化水素基)、
より具体的には、
【0015】
【化9】
等が例示される。
【0016】
シロキサン結合を導入した場合は、繰り返し単位の数(重合度)が1〜1000、特に2〜200であることが好ましい。
シロキサン結合を導入した場合も、主鎖は、導入しない場合と同様に直接又は酸素原子を含んでもよい二価炭化水素基を介して末端の加水分解性シリル基と結合している。
末端の加水分解性シリル基は、式:
【0017】
【化10】
(R3は同一又は異種の一価炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、Xは加水分解性基、aは0〜2の整数)で表され、加水分解性基としては、アルコキシ基、ケトオキシム基、ハロゲン原子、アセトキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アルケニルオキシ基、、アミド基等が例示され、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、ケトオキシム基が好ましい。aは0又は1が好ましい。
【0018】
・(B)硬化触媒:
硬化触媒としては、シラノール縮合触媒として公知のものはいずれも使用することが出来る。代表的なものは、例えば、アルキルチタン酸塩:有機珪素チタン酸塩;オクチル酸錫、ジブチル錫フタレート、等のごとき金属カルボン酸塩;ジブチルアミン−2−エチルヘキソエート等のごときアミン塩;並びに他の酸性触媒及び塩基性触媒、特にグアニジル基を有した窒素含有化合物などが挙げられる。これらは、通常一種単独で使用してもよく二種以上併用してもよい。一般式(4)中の加水分解性基Xがアルコキシ基である場合には、錫のカルボン酸塩が特に好ましい。
縮合触媒の量は、(A)成分100重量部あたり、通常O.1〜10重量部でよく、好ましくは0.1〜3重量部である。
【0019】
・(C)炭素系導電性充填剤:
炭素系導電性充填剤はこの組成物において導電性付与剤として作用するものである。例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、カーボン繊維、グラファイト等が例示される。これらを使用する際には1種類の単独で使用してもよく、2種類以上の併用も可能である。
【0020】
この(C)成分の(A)成分100重量部に対する配合量は、通常、5〜500重量部の範囲とすることが好ましく、より好ましくは15〜50重量部の範囲である。該成分の配合量が少なすぎると得られる導電性が不十分なことがあり、多すぎると得られる組成物の押出機による吐出性が低下する場合があり、望ましくない。
【0021】
・(D)溶剤:
溶剤は組成物の流れ性や濡れ性を向上させる目的で使用される。使用される溶剤としてはトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、ジクロロメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤が例示される。中でもトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素系溶剤が好ましい。
この(D)成分は、所要の流れ性や濡れ性が得られるような適宜の量でよい。具体的には、(A)〜(C)成分の合計100重量部に対して1〜900重量部の範囲が好ましく、より好ましくは100〜500重量部の範囲である。
【0022】
・その他の成分
本発明の組成物には、必要に応じて他の成分を配合しても良い。例えば、接着助剤、架橋剤、充填剤、可塑剤等が挙げられる。本発明の組成物は架橋剤を添加しなくても硬化するものであるが、硬化を促進させるために架橋剤を用いてもよい。架橋剤としては、1分子中に加水分解性基を3個又は4個有するシラン化合物又はその部分加水分解物が例示される。
【0023】
接着助剤は添加することが好ましく、(A)成分100重量部に対して0.1〜10重量部配合することが好ましい。接着助剤としてはシランカップリング剤やチタン系カップリング剤が例示され、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としてはアミノ系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、メタクリル系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤が好ましく、特にアミノ系シランカップリング剤が好ましい。
【0024】
充填剤としては、例えばフュームドシリカ、沈降性シリカ、無水珪酸、含水珪酸等の補強性充填剤;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪藻土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン等のごとき充填剤を使用できる。これらの充填剤は多量に添加しすぎると導電性を損なうことがあるのでそのような弊害がでない程度に配合量を調製する。通常、(A)成分の重合体100重量部当り5〜20重量部程度が好ましい。
【0025】
可塑剤は充填剤と併用すると、硬化物の伸びを高めたり、充填剤の充填量を高めるのに有効である。可塑剤としては、通常よく使用されているものが利用でき、例えばジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のごときフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、セバシン酸ジブチル等のごとき脂肪族2塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステルなどのごときグリコールエステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチルなどのごとき脂肪族エステル類;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル等のごときリン酸エステル類;エポキシ大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のごときエポキシ系可塑剤類;塩素化パラフィンなどの可塑剤が挙げられる。これらは一種単独でも2種以上を組み合わせた形でも使用することができる。可塑剤は、通常、(A)成分の重合体100重量部に対し100重量部以下で添加することが好ましい。
【0026】
・使用法及び用途
本発明の組成物は、1液型組成物及び2液型組成物のいずれの形でも調製することができる。2液型組成物として使用する場合には、例えば(A)成分の重合体、充填剤及び可塑剤からなるパックと、可塑剤及び縮合触媒からなるパックに分け、使用直前に両パックの成分を混合し使用すればよい。1液型組成物として使用する場合には、全成分を混合した状態でカートリッジなどの無水状態を保持できる容器に封入し保存しておき、使用時に容器から出して使用すればよい。本発明の組成物は1液型及び2液型の導電性インクとして特に有用である。
【0027】
本発明の組成物を用いて厚さ1mm以下の硬化被膜を形成する場合、室温でも硬化させることがでくるが、70℃以上で加熱すると約20分程度で速やかに硬化し、導電性に優れた被膜が得られる。
【0028】
【実施例】
次に本発明を実施例で説明するが、実施例中、部とあるのは重量部のことであり、粘度は23℃における値である。また、表面抵抗は表面抵抗測定器(ヒューレット・パッカード社製、商品名:マルチメーターE2378A)にて測定した。また、溶剤に溶解させたときの分散性は目視で観察して測定した。
【0029】
・(実施例1)
分子量が5000で両末端がアリル基で停止したプロピレングリコールと、白金触媒下でメチルジイソプロペノキシシランと付加反応させることで得た、下記式:
【0030】
【化11】
で表される末端シラン変性ポリエーテルを100部、導電性カーボンブラック(電気化学工業社製、商品名:デンカブラックHS-100)を35部、ジブチルジメトキシ錫を1部、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシランを1部、アミノプロピルトリメトキシシランを2部、ビニルトリイソプロペノキシシランを2.5部、キシレンを300部混合することで導電性インク組成物を得た。(粘度:2Pa・s、不揮発分:30%)
【0031】
・(実施例2)
テトラメチルジシロキサンを134gとジビニルベンゼン135gを白金触媒下で付加反応させることで、下記式:
【化12】
で表される両末端ビニル基停止のポリマーを得た。更にこのポリマーにトリメトキシラン4.7gを滴下して付加反応させることで末端シラン変性ポリマーを得た。このポリマー100部に対し、導電性カーボンブラック(電気化学工業社製、商品名:デンカブラックHS-100)を35部、ジブチルジメトキシ錫を1部、アミノプロピルトリメトキシシランを2部、ビニルトリメトキシシランを2.5部、キシレンを300部混合することで導電性インク組成物を得た。(粘度:5Pa・s、不揮発分:30%)
【0032】
・(実施例3)
分子量が5000で、両末端をアリル基で停止させたポリ1,4−ブチレングリコールと、メチルジイソプロペノキシシランとを白金触媒下で付加反応させることで得た、下記式:
【化13】
で表される末端シラン変性ポリエーテルを100部、導電性カーボンブラック(電気化学工業社製、商品名:デンカブラックHS-100)を35部、ジブチルジメトキシ錫を1部、アミノプロピルトリメトキシシランを2部、ビニルトリイソプロペノキシシランを2.5部、キシレンを300部混合して導電性インク組成物を得た。(粘度:2Pa・s、不揮発分:30%)
【0033】
・(比較例1)
下記式:
【化14】
で表される分子量が33000で両末端がビニル基で停止したポリジメチルシロキサンを100部、導電性カーボンブラック(電気化学工業社製、商品名:デンカブラックHS-100)を25部、塩化白金酸(2%)2−エチルヘキサノール溶液を0.08部、テトラメチルビニルシクロテトラシロキサンを0.2部、α,ω−トリメチルシリルポリメチルハイドロジェンシロキサン(分子量:700)を1部、キシレンを300部混合することで導電インク組成物を得た。(粘度:10Pa・s、不揮発分:30%)
【0034】
・(比較例2)
下記式:
【化15】
で表される分子量が33000で両末端がシラノール基で停止したポリジメチルシロキサンを100部、導電性カーボンブラック(電気化学工業社製、商品名:デンカブラックHS-100)を25部、ジブチルジメトキシ錫を0.1部、アミノプロピルトリメトキシシランを1部、ビニルトリイソプロペノキシシランを4部、キシレンを300部混合することで導電性インク組成物を得た。(粘度10Pa・s、不揮発分:30%)
【0035】
・導電性カーボンブラックの分散性評価:
上記の実施例及び比較例で製造した5種類の組成物を製造から1ヶ月間放置し、カーボンブラックの凝集物が容器壁面に生成したか否かの有無を明視で観察し評価した。結果を表1に示す。なお、○、×の意味は次の通りである。
○:容器壁面に凝集無し
×:容器壁面に凝集有り
【0036】
・耐こすり性の評価:
信越化学工業(株)製KE951の上に組成物を塗り、100℃で30分間加熱して硬化させた。そして得られた硬化物表面をこすり試験機を用いてガラス棒で繰り返しこすり、該ガラス棒にカーボンブラックが付着するまでのこすり回数を測定した。(試験結果)
【0037】
【表1】
上記結果より、本発明より得られた組成物は良好な分散性を示し、かつ表面からの導電性カーボンブラックの分離も効果的に抑制されることが分かる。
【0038】
【発明の効果】
本発明の導電性インク組成物は、溶剤による導電性充填剤の分離が起こり難く、また基材上に被膜状に形成した場合にこすれによる剥離などが起こりがたい。したがって、導電性コーティング形成材料としても有用である。
Claims (7)
- (A)両末端が加水分解性シリル基で封鎖され、主鎖が酸素原子及び/又はシロキサン結合を含んでもよい二価炭化水素基の繰り返し単位からなる炭化水素系液状ポリマー、
(B)硬化触媒、
(C)炭素系導電性充填剤、及び
(D)溶剤
を含有してなることを特徴とする導電性インク組成物。 - ポリマーとして、前記 (A) 成分の炭化水素系液状ポリマーのみを含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性インク組成物。
- (A) 成分のポリマーの主鎖が炭素数2〜8のアルキレン基、又はオキシアルキレン基の繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の導電性インク組成物。
- 請求項1〜6いずれか1項に記載の組成物を硬化させることにより得られる硬化物。
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