JP3988030B2 - セラミックス系多孔質材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス系多孔質材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来より金属多孔質材の製造方法としては、各種の方法が知られており、利用分野も多岐にわたっている。しかし、セラミックスに比べると融点の低い物質が多く、また耐薬品性及び耐摩耗性という点でも、使用条件が限られるという欠点がある。
【0003】
これに対し、耐薬品性に優れるポーラスガラス、ゼオライト等の酸化物セラミックス系多孔質材も製造されている。しかし、粉末冶金焼結法等の長時間の外部加熱が必要となり、特に製品コストの点で問題がある。
【0004】
他方、窒化ケイ素、炭化ケイ素等の非酸化物系セラミックス多孔質材は、金属多孔質材よりも耐摩耗性・耐熱性に優れている。しかし、より高温の外部加熱、粒子間の焼結を促進させるために熱間静水圧圧縮法(HIP)等の大がかりな装置が必要となっており、気孔率の制御という点で技術的課題を残している。加えて、加工性、経済性、生産性等という点でも十分なものとは言えない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来においてはセラミックス系多孔質材料を製造する場合、外部加熱が必要不可欠とされているため、経済性・生産性が不十分であり、この点において改善する余地がある。特に、フィルター等として利用できるような三次元網目構造を有する気孔率の大きなセラミックス系多孔質材料を製造することが困難である。とりわけ、表面の少なくとも一部に酸化物層を有する多層構造をもつセラミックス系多孔質材料を製造しようとする場合には、従来技術ではより複雑な工程が必要となるため、それだけ経済性・生産性の低下が顕著となっている。
【0006】
従って、本発明の主な目的は、三次元網目構造を有する多層セラミックス系多孔質材料を効率良く製造することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来技術の問題に鑑みて研究を重ねた結果、特定の方法によりセラミックスを製造することによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、セラミックス系多孔質材料の製造方法に係る。
【0009】
1.2種以上の無機粉末からなる混合粉末を成形し、得られた成形体を空気中又は酸化性雰囲気中で燃焼合成反応させることにより、セラミックス系多孔質材料を製造する方法であって、
当該混合粉末は、チタン及びジルコニウムの少なくとも1種の無機粉末と、炭素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ素、ケイ素及びアルミニウムの少なくとも1種の無機粉末とを含み、
当該セラミックス系多孔質材料は、1)表面の一部又は全部に酸化物系セラミックス層が形成され、2)当該セラミックス層以外の部分に非酸化物系セラミックスが含まれ、3)三次元網目構造を有する、
ことを特徴とする多層セラミックス系多孔質材料の製造方法。
【0010】
2.混合粉末が、Cu、Mo、ステンレス鋼、鉄、Pt及びPt−Ir合金の少なくとも1種の無機粉末をさらに含む前記項1に記載の製造方法。
【0011】
3.前記項1又は2に記載の製造方法により得られるセラミックス系多孔質材料。
【0012】
4.前記項3記載のセラミックス系多孔質材料を用いたセラミックスフィルター。
【0013】
5.前記項4記載のセラミックスフィルターを加熱することに特徴を有するセラミックスフィルターの再生利用方法。
【0014】
6.前記項3記載のセラミックス系多孔質材料を水と接触させ、少なくとも当該接触部分に光照射することによって、酸素ガスと水素ガスを発生させることを特徴とするガス製造方法。
【0015】
【発明の実施の態様】
本発明の製造方法は、2種以上の無機粉末からなる混合粉末を成形し、得られた成形体を空気中又は酸化性雰囲気中で燃焼合成反応させることにより、セラミックス系多孔質材料を製造する方法であって、
当該セラミックス系多孔質材料は、1)表面の一部又は全部に酸化物系セラミックス層が形成され、2)当該セラミックス層以外の部分に非酸化物系セラミックスが含まれ、3)三次元網目構造を有する、
ことを特徴とする(第一方法)。
【0016】
さらに、本発明は、2種以上の無機粉末からなる混合粉末を成形し、得られた成形体を真空中又は不活性ガス雰囲気中で燃焼合成反応させることにより、三次元網目構造を有するセラミックス系多孔質材料の製造方法(第二方法)も包含する。
【0017】
すなわち、本発明は、三次元網目構造を有するセラミックス系多孔質材料を1)空気中又は酸化性雰囲気中の燃焼合成反応で製造する方法(第一方法)、2)真空中又は不活性ガス雰囲気中の燃焼合成反応で製造する方法(第二方法)の両者を包含する。従って、燃焼合成反応の雰囲気及び得られる多孔質材料の構造以外の点では両者は実質的に共通するので、それらの事項については両者をまとめて説明する。
【0018】
本発明で用いる混合粉末は、2種以上の無機粉末から構成されるが、これらの組み合わせは燃焼合成反応が進行する組み合わせであれば特に限定されない。無機粉末の種類は限定的でなく、目的とする製品や用途、所望の特性等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、金属単体の粉末のほか、酸化物、炭化物、窒化物、塩類(硝酸塩、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩等)、水酸化物等が挙げられる。
【0019】
無機粉末及び混合粉末の平均粒径は、成形可能であれば特に限定されないが、通常は0.1〜200μm程度の範囲内で使用すれば良い。
【0020】
本発明では、特に、混合粉末が、チタン、ジルコニウム及びハフニウムの少なくとも1種の無機粉末(無機粉末A)と、ホウ素、炭素、ケイ素、アルミニウム、ホウ化アルミニウム、ホウ化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ホウ素、炭化ケイ素、炭化アルミニウム及びケイ化アルミニウムの少なくとも1種の無機粉末(無機粉末B)とを含むことが好ましい。
【0021】
無機粉末Aと無機粉末Bとの混合割合は、用いる粉末の種類、最終製品の用途等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は無機粉末A:無機粉末B(モル比)=1:0.2〜5程度、好ましくは1:0.5〜3とすれば良い。
【0022】
また、本発明では、必要に応じて、無機粉末A及びB以外の無機粉末(無機粉末C)をさらに配合することもできる。例えば、金属(Ag、Cu等の単体金属)、金属間化合物、酸化物セラミックス、ホウ化物セラミックス、窒化物セラミックス、炭化物セラミックス及びケイ化物セラミックスの少なくとも1種の無機粉末を含むことが望ましい。例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、 ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化ハフニウム、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、ケイ化チタン、ケイ化ジルコニウム、ケイ化ハフニウム等も配合することができる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
無機粉末Cの配合割合は、無機粉末Cの種類、他の無機粉末等に応じて適宜決定できるが、通常は混合粉末中1〜50重量%程度、好ましくは10〜20重量%とする。
【0024】
本発明では、これら無機粉末を含む混合粉末を成形して成形体を作製する。成形方法は、公知のセラミックスの成形法に従って実施すれば良い。例えば、プレス成形、鋳込み成形、射出成形、静水圧成形等が挙げられる。成形圧等の成形条件は、用いる無機粉末の種類、最終製品の用途等に応じて適宜決定すれば良い。また、成形体の形状も限定的でなく、柱状体、筒状体(パイプ状)、球状体、直方体、板状体等のいずれであっても良い。
【0025】
本発明では、燃焼合成反応に先立って、予め成形体表面に金属及び金属酸化物の少なくとも1種を付与することができる。これにより、燃焼合成時に金属及び/又は金属酸化物が成形体表面に溶融付着し、表面改質を行うことができる。金属及び金属酸化物としては、例えばチタン、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、クロム、バナジウム、銅、銀、金、白金、鉄、ニッケル、コバルト、チタニア、シリカ、カルシア、マグネシア、アルミナ、クロミア、ヘマタイト等を挙げることができる。また、これらを付与する方法としては、例えば金属及び金属酸化物の少なくとも1種の粉末を適当な溶媒に分散させた分散液又はペーストを塗付する方法のほか、ディッピング法、スプレー法、スピンコート法等の方法が挙げられる。
【0026】
次いで、上記成形体を燃焼合成反応に供する。燃焼合成反応自体の方法、操作条件等は、従来と同様にすれば良い。例えば、放電、レーザー照射、カーボンヒーター等による着火等により成形体を局部的に加熱することによって反応を開始させることができる。いったん反応が開始すれば、自発的な発熱により反応が進行し、最終的に目的とする多孔質材料を得ることができる。反応時間は、成形体の大きさ等にもよるが、通常は数秒〜数分程度である。
【0027】
反応雰囲気は、第一方法と第二方法で区別すれば良い。すなわち、第一方法では、通常は大気中(空気中)又は酸化性雰囲気中とすれば良い。例えば、0.1気圧以上(好ましくは1気圧以上)の空気中で燃焼合成反応を好適に行うことができる。
【0028】
また、第二方法では、真空中又は不活性ガス雰囲気中とすれば良い。例えば、アルゴン、窒素、ヘリウム等の不活性ガスを用いた不活性ガス雰囲気で燃焼合成反応を実施することができる。
【0029】
本発明により得られるセラミックス系多孔質材料は、第一方法及び第二方法の場合ともに三次元網目構造を有する。特に、上記多孔質材料中の気孔(連通孔)が貫通孔であることが好ましい。上記多孔質材料の相対密度は限定的でないが、通常30〜70%程度とすることが望ましい。相対密度又は気孔率は、成形体の密度、燃焼合成の反応温度、雰囲気圧力等によって制御することができる。また、気孔径は、一般に数十ミクロンと微細で均一である。
【0030】
また、第一方法では、次の1)及び2)の特徴も兼ね備えた多孔質材料を得ることができる。すなわち、表面部は酸化物系セラミックス、内部は非酸化物系セラミックスで構成される多層セラミックス多孔質材料を得ることができる。
【0031】
1)セラミックス系多孔質材料の表面の一部又は全部に酸化物系セラミックス層が形成されている。酸化物系セラミックス層の厚さ(深さ)は、限定的でなく、上記多孔質材料の用途、使用目的、大きさ等に応じて適宜決定すれば良い。上記厚さの調整は、前記雰囲気の気圧調整等によって制御することができる。
【0032】
2)上記セラミックス層以外の部分に非酸化物系セラミックスが含まれる。特に、本発明多孔質材料の内部は主として非酸化物系セラミックスから構成されることが好ましい。
【0033】
これに対し、第二方法によるセラミックス系多孔質材料は、表面部に酸化物系セラミックスを有しない非酸化物系セラミックスから構成される。すなわち、第一方法による多孔質材料が酸化物系セラミックスと非酸化物系セラミックスの多層から構成されるのに対し、第二方法による多孔質材料は実質的に非酸化物系セラミックスの単層である。ただし、第二方法による多孔質材料は、本発明の効果を損なわない範囲内で他の成分が含まれていても良い。
【0034】
本発明では、第一方法及び第二方法で得られるセラミックス系多孔質材料自体の発明も包含する。上記のように、本発明多孔質材料の構成・構造は、用いる無機粉末の種類等によって適宜調節することが可能である。例えば、無機粉末としてチタン粉末とカーボン粉末とを含む混合粉末を成形し、その成形体を空気中又は酸化性雰囲気中で燃焼合成反応させた場合には、表面に酸化チタンセラミックス層が形成され、内部が炭化チタンセラミックスから構成されるセラミックス系多孔質材料を得ることができる。
【0035】
また、本発明では、例えば多孔質材料の表面が酸化物系セラミックス層によって構成され、内部に進むに従って非酸化物系セラミックスの割合が増加するという傾斜構造を有するセラミックス系多孔質材料も包含される。
【0036】
本発明のセラミックス系多孔質材料は、従来の多孔質材料が使用される各種用途に幅広く使用することができる。例えば、フィルター、触媒又は触媒担体、センサー、生体材料(人工骨、人工歯根、人工関節等)、抗菌・防汚材料、気化器、放熱板又は熱交換器、電極材料、半導体ウェハー吸着板、吸着材、ガス放出用ベントホール、防振・防音材料、発熱体(ダイオキシン分解用発熱体等)等が挙げられる。
【0037】
なお、上記多孔質材料は加工性が良好であり、上記のような各種の用途に応じて加工し、所望の形状とすることができる。加工方法は、例えば切削等の公知の加工方法(装置)によって実施することができる。
【0038】
本発明材料は、フィルター(セラミックスフィルター)としても好適に用いることができる。フィルターとしての使用方法は限定的でなく、公知のセラミックスフィルターと同様の方法で用いることができる。また、気相用又は液相用のいずれの用途にも使用できる。例えば、廃水、廃液、汚染水、濁水等の液体をろ過するためのフィルターとして上記多孔質材料を用いることができる。特に、表面が酸化物系セラミックス層で構成されていることから、フィルターとしての物理的浄化作用と、酸化物系セラミックスのもつ光触媒効果による化学的浄化作用との複合作用が期待される。これらは、抗菌又は防汚機能を発揮し得ることから、難分解性有害物質の酸化除去等に有効である。
【0039】
また、本発明フィルターは、加熱することによって再利用を図ることができる。加熱により、気孔内又は表面部に蓄積した介在物がガス化して系外に放散させることができ、これにより所定の機能を再現することが可能である。加熱温度は、再利用可能になるような温度であれば限定されないが、通常は500℃以上の範囲内で適宜決定すれば良い。
【0040】
本発明製法によるセラミックス系多孔質材料は、これを水と接触させ、少なくとも当該接触部分に光照射することによって、酸素ガスと水素ガスを発生させることを特徴とするガス製造方法にも適用することができる。特に、多孔質材料表面部に酸化物系セラミックス層が形成され、多孔質材料内部が非酸化物系セラミックスによって構成されているセラミックス系多孔質材料が好ましい。酸化物系セラミックス及び非酸化物系セラミックスは、それぞれ光半導体の電極のような機能を果たし、その電極間(酸化物系セラミックスと非酸化物系セラミックスとの間)で構成される一種の回路により、光照射した時にセラミックス系多孔質材料に接触した水が分解され、酸素ガスと水素ガスがそれぞれ発生する。例えば、水中又は水面に上記セラミックス系多孔質材料を設置し、水と接触している材料部分を少なくとも光照射することにより、水素ガスと酸化ガスとを発生させることができる。
【0041】
照射する光は、通常は紫外線を用いれば良い。照射する光強度は、発生させるガス量等によって適宜決定すれば良い。水素ガスと酸化ガスとは分解発生するが、これらは公知の分離方法によって高い濃度の水素ガス及び酸化ガスをそれぞれ得ることができる。
【0042】
【発明の効果】
本発明は、三次元網目構造を有するセラミックス系多孔質材料を外部加熱無しに化学反応時の発熱反応を有効に利用して短時間で、セラミックス化合物自体の合成から多孔質化まで1工程で完了させる経済的な製造方法を提供するものである。より具体的には、以下のような効果を発揮することができる。
【0043】
1.従来法によりセラミックス粉末を焼結した多孔質材料は粒子間隙が独立気孔となるのに対して、本発明によるセラミックス系多孔質材料は三次元網目状構造という特異な構造を作り出すことができる。
【0044】
2.金属又はセラミックス多孔質体を製造する際には一般的に外部加熱が必要となるが、本発明では燃焼合成反応時に発生する化学反応熱を有効に利用するため、着火を除いて外部加熱が不要であり、また短時間で反応が終了するため、経済性・生産性に優れている。この点、本発明方法は、工業的規模での生産に最適である。
【0045】
3.燃焼合成時の約2000℃以上の高温反応により、混合粉末に含まれていた不純物が気化して系外に放出されることにより、得られたセラミックス系多孔質材料は比較的高純度である。
【0046】
4.燃焼合成時の高温反応により、セラミックス系多孔質材料を構成する化合物の一部は溶融して粒子が相互に融着接合される結果、なめらかな表面を有する気孔形状となり、気体又は液体が通過する際の抵抗を小さくできる。このため、フィルターとして好適に用いることができる。
【0047】
5.本発明による材料は、セラミックスからできているため、金属多孔質材との対比おいて耐腐食性・耐薬品性・耐熱性・耐摩耗性に優れる。
【0048】
6.一般的に多層の多孔質セラミックスを作るには、単一相セラミックスを作成した後に表面処理を実施したり、多層セラミックス成形体を作成した後に焼結するなどの複数工程が必要となるのに対し、本発明では表面部の一部又は全部が酸化物系セラミックスから構成され、内部が非酸化物系セラミックスから構成されるセラミックス系多孔質材料(多層セラミックス系多孔質材料)を一工程で製造することが可能である。すなわち、セラミックスの合成から多層化までが一工程で実現でき、この点においても経済性・生産性に優れていると言える。
【0049】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明の特徴とするところをより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例の範囲に限定されるものではない。
【0050】
実施例1
チタン粉末とカーボン粉末をモル比で1:1に混合し、得られた混合粉末を用いて直径50mm×高さ100mmの円柱状成形体を製造した。次いで、空気中、黒鉛板上に置いた上記成形体の上部一端を放電により着火したところ、約2800℃度の高温燃焼波が伝播して燃焼合成反応が約10秒で完了した。これにより、相対密度50%の多孔質体が得られた。この多孔質体は、電子顕微鏡による観察から図1のような三次元網目構造を有していることが確認された。また、粉末X線回折による分析の結果、表面層は主として酸化チタンセラミックスからなり、内部は主として炭化チタンセラミックスからなることが判明した。なお、黒鉛板上に接した底面層は空気が遮断されたため、内部と同様の炭化チタンセラミックスから構成されていることも確認できた。
【0051】
また、上記多孔質体の底面を水面に接触されたところ、連続する細孔を通した毛細管現象によって約10mm/秒の速度で多孔質体上面まで水が吸い上げられた。この特性により、本発明材料が気化器等の材料としての応用も期待できる。
【0052】
実施例2
チタン粉末とカーボン粉末をモル比で1:1.2に混合し、得られた混合粉末を用いて直径50mm×高さ100mmの円柱状成形体を作成した。次いで、空気中、その上部一端を放電により着火したところ、高温燃焼波が伝播して燃焼合成が約10秒で完了した。これにより、相対密度が45%の多孔質体が得られた。粉末X線回折による分析の結果、表面層は主として酸化チタンセラミックスからなり、内部は主として炭化チタンセラミックスに少量のカーボンを含む混合相から構成されていることがわかった。
【0053】
実施例3
チタン粉末と窒化ホウ素粉末をモル比で3:2に混合し、得られた混合粉末を用いて外径50mm(内径25mm)×高さ50mmの円筒状混合成形体を作成した。空気中で、その上部一端を放電により着火した所、高温燃焼波が伝播して燃焼合成が約10秒で完了した。これにより、相対密度が55%の多孔質体が得られた。粉末X線回折による分析の結果、表面層は主として酸化チタンセラミックスからなり、内部は主としてホウ化チタンと窒化チタンセラミックスの混合相からなることが確認できた。
【0054】
実施例4
濁度5以上の河川の水を、実施例1で得られた多孔質体を用いて水の浄化を行った。市販の水槽用ろ過装置の中に上記多孔質体を3つ浸漬し、24時間経過後の水槽中の水の状態を試験前のそれと比較した。その結果、濁度は2度以下となった。また、プランクトン、水生昆虫等の異物も除去されていた。フェノール及びアンモニアも、ろ過前に比べて約50%以下減少した。
【0055】
実施例5
実施例1で得られた多孔質体の表面にチタン酸ストロンチウム粉末を厚さ1mmに塗布した後に、空気中、その上部一端を放電により着火したところ、高温燃焼波が伝播して燃焼合成が約10秒で完了した。これにより、相対密度が45%の多孔質体が得られた。チタン酸ストロンチウム粉末は、燃焼合成時の高温で化合物成形体の表面に溶融付着した。この多層セラミックス系多孔質材料の全部を水中に入れて、多孔質材料表面に紫外線(λ=310nm)を30分間照射したところ、上記材料と接触した水が分解して酸素ガスと水素ガスが発生した。
【0056】
参考例1
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して直径150mm×厚さ20mmの円盤状の成形体を得た。アルゴン中で、上記成形体の一端をYAGレーザで着火して燃焼合成した。その結果、相対密度48%の炭化チタンからなるセラミック多孔質体が得られた。この炭化チタンセラミック多孔質体は、目視では亀裂、反り等の欠陥が認められず、上記成形体とほぼ同形状の製品であった。また、上記多孔質体の密度は1.7g/cm3であり、金属Mgよりも軽く高融点のセラミック多孔質体であった。
【0057】
参考例2
チタン粉末、カーボン粉末及びニッケル粉末を用い、(1−X)Ti+(1−X)C+XNiの化学式に従って、X=0、0.05、0.1、0.15、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3及び0.35の混合粉末をそれぞれ調製した。次いで、各混合粉末をX値が大きくなる順序で厚さ10mm程度に金型内に充填した後にプレス成形して円柱状成形体を得た。窒素中で上記成形体の一端をYAGレーザで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約20秒で完了した。得られた一体型の円柱状セラミック多孔質体は、各層の剥離、亀裂等の欠陥が認められなかった。この多孔質体について長尺方向にNiの元素分析を行ったところ、Ni濃度が連続的に変化した傾斜型多孔質材料となっていた。すなわち、TiC−Ni傾斜機能型サーメット多孔質体が得られた。
【0058】
参考例3
チタン粉末:窒化ホウ素粉末が2:1(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して1辺が100mmで厚さ10mmの四角板状の成形体を得た。窒素中で、上記成形体の一端をYAGレーザで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約15秒で完了した。得られた反応生成物をX線分析した結果、ホウ化チタンと窒化チタンの複合非酸化物セラミックスであることを確認した。このセラミックスは相対密度50%の多孔質体であり、亀裂、反り等の欠陥がなく、上記成形体とほぼ同形状の製品であった。
【0059】
参考例4
チタン粉末:シリコン粉末:カーボン粉末が1:1:2(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して直径50mm×高さ50mmの円柱状の成形体を得た。アルゴン中で、その成形体の上部表面の一部をCO2レーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約10秒で完了した。得られた反応生成物をX線分析した結果、少量のケイ化チタンを含み、主成分が炭化チタン及び炭化珪素である複合非酸化物セラミックスであることが判明した。このセラミックスは相対密度40%の多孔質体であり、亀裂、反り等の欠陥がなく、上記成形体とほぼ同形状の製品であった。
【0060】
実施例6
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末にCu粉末を1〜5wt%加えた混合粉末を調製した。このCu粉末を含む混合粉末を金型に充填し、プレス成形して直径20mm、高さ25mmの円柱状の成形体を得た。この成形体を実施例1と同様にして燃焼合成したところ、相対密度が40%の金属含有セラミック多孔質体が得られた。X線分析の結果、その表面層はTiO2−XNX(チタンオキシナイトライド(酸窒化チタン))と少量のCuとからなり、内部層は炭化チタンとCuとからなるサーメット多孔質体であることが確認された。内部層について元素分布分析を行った結果、3次元網目構造を形成する炭化チタン骨格表面に均一に微細なCuが分散分布していた。Cu粉末の代わりにMo粉末、ステンレス鋼粉末又は鉄粉末を用いた混合粉末原料を用いても、同様のサーメット多孔質体が得られることも確認できた。
【0061】
参考例5
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末にPt粉末を1wt%加えた混合粉末を調製した。このPt粉末を含む混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径50mm(内径30mm)×長さ50mmの円筒状の成形体を得た。アルゴン中で、その成形体の上部表面の一部をCO2レーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約10秒で完了し、相対密度が45%の金属含有セラミック多孔質体が得られた。X線分析の結果、炭化チタンとPtとからなるサーメット多孔質体であることが確認できた。また、EDXを用いて元素分布分析を行った結果、3次元網目構造を形成する炭化チタン骨格内部に均一に微細なPtが分散分布すると同時に、炭化チタン骨格表面(空孔壁面)全体にPt薄層が形成された構造となっていた。
【0062】
参考例6
平面状の電磁誘導加熱方式によるIHヒータ上に、参考例1で得られた円盤状セラミック多孔質体を載せた後、セラミック多孔質体の電磁誘導加熱を実施した。その結果、このセラミック多孔質体の特徴である導電性(カーボン並の低い電気抵抗率)と3次元網目構造という連続性から、セラミック多孔質体内に誘導電流が発生して数秒間で100℃まで昇温した。
【0063】
他方、粘土を用いて土鍋形状の成型物を作る際に、上記円盤状セラミック多孔質体を土鍋形状の下部に埋め込み、炉内で焼成して一体化した。この円盤状セラミック多孔質体が埋め込まれた土鍋を平面状の電磁誘導加熱方式によるIHヒータ上に載せて電磁誘導加熱したところ、セラミック多孔質体が発熱して土鍋内に入れた水を沸騰させることができた。
【0064】
参考例7
図2に示すように、参考例1で得られた円盤状セラミック多孔質体(1)とほぼ同じ内径をもつ石英管(2)の内部に上記多孔質体をはめ込んだ。図2のように、上記多孔質体の2ヶ所の端部に電極をそれぞれ取り付けた。電極に電流を流したところ、上記多孔質体が発熱して2000℃まで昇温した。
【0065】
上記多孔質体を発熱させた状態で石英管中にダイオキシン類を含むガス(3)を流したところ、石英管出口のガス中にはダイオキシン類は含まれていないことを確認した。このことから、上記多孔質体を通過させることによりダイオキシン類を分解し、無害化できることがわかる。
【0066】
参考例8
ジルコニウム粉末:窒化ホウ素粉末が3:2(モル比)の混合粉末にAlN粉末を10wt%加えた混合粉末を調製した。このAlN粉末を含む混合粉末を金型に充填し、プレス成形して幅15mm・厚さ10mm・長さ100mmの板状で中心にくぼみを有する成形体を得た。窒素中で、その成形体の一端をYAGレーザー着火したところ、燃焼合成反応が約10秒で完了し、相対密度55%のセラミック多孔質体が得られた。得られた板状セラミック多孔質体の両端に電極を取り付け、中心のくぼみにAl塊を置き、真空中で板状セラミック多孔質体に直接通電したところ、板状セラミック多孔質体が1000℃以上に発熱し、くぼみに置かれたAl塊が溶融すると共に気化し、上部に設置したポリプロピレンフィルム上にAl蒸着膜を形成することができた。なお、セラミック多孔質体中の気孔を通ってAl溶融液が下部に流れ出すことは認められなかった。
【0067】
実施例7
チタン粉末:カーボン粉末が1:1.1(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して一辺が15mm・長さ100mmの角柱棒状の成形体を得た。空気中で、その成形体の一端を着火したところ、燃焼合成反応が約5秒で完了し、相対密度45%のセラミック多孔質体棒が得られた。このセラミック多孔質体棒の両端に電極を取り付けて通電加熱できるようにした導電性棒を複数組み合わせて排気ダクト内にセットした。たばこの煙、焼肉等から発生する低濃度の有臭性ガスを含む空気を上記排気ダクトに通したところ、セラミック多孔質棒に臭いが吸着されて、排気ダクト外では無臭となった。臭いの吸着効果は約1週間続いた。この後にセラミック多孔質棒を500℃前後まで数分間の通電加熱することにより、内部に吸着した成分が蒸発ないしは酸化分解される結果、最初の吸着特性を再び発揮することが分かった。これにより、繰り返し使用が可能になった。また、高濃度の有臭性ガスの場合は、セラミック多孔質棒の吸着と同時に、通電加熱による300℃前後の高温化との併用により、無臭化することができた。
【0068】
実施例8
実施例1で得られた円柱状多孔質体の下部の一部を水に浸けたところ、毛細管現象により上端まで水が吸い上げられた。また、表面の酸化チタンが親水性のため、特に表面に水がにじみ出た。この水を含む多孔質体に非接触で、外周に螺旋状コイルを配置して30kWの電力で5〜500kHz程度の高周波を発振させたところ、多孔質体が高温度に発熱すると共に、500℃程度の過熱水蒸気が発生した。この過熱水蒸気を用いて食品の解凍・焼成・蒸し煮・殺菌・焙煎等を含む加熱加工が可能となった。また、綿に過熱水蒸気を当てたところ、綿の結晶構造変化が起こると共に、結晶化が促進される物性変化が認められた。
【0069】
実施例9
実施例1で得られた円柱状多孔質体の下部の一部を水に浸けたところ、毛細管現象により上端まで水が吸い上げられた。また表面の酸化チタンが親水性のため、特に表面に水がにじみ出た。この水を含む多孔質体に非接触で、外周に螺旋状コイルを配置して70kWの電力で5〜500kHz程度の高周波を発振させたところ、多孔質体が高温度に発熱すると共に、1000℃以上の過熱水蒸気が発生した。ダイオキシン類、トリクロロエチレン又はポリ塩化ビフェニール(PCB)の1種類以上を含む汚染土壌に過熱水蒸気を吹き付けた。その結果、いずれも熱分解して無害化できることを高分解能質量分析システム(GC−MS)及び高速液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS)により確認できた。
【0070】
参考例9
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径20mm×長さ25mmの円柱状ペレットを得た。アルゴン中で、そのペレット上部表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約5秒で完了し、相対密度が45%のセラミック多孔質体が得られた。このセラミック多孔質体(ペレット)を石英管に複数個充填して、下部ペレットが水に漬かるようにした後、石英管の外周に配置した高周波コイルでペレットを加熱した。その結果、ペレットが高温度に発熱すると共に、1000℃以上の過熱水蒸気が発生した。この過熱水蒸気を鋼及びステンレス鋼棒に吹き付けたところ、金属組織を変える焼き入れ又は焼き鈍しが可能となった。この際、金属表面は空気から遮断されるために酸化されず、金属の還元熱処理ができることがわかった。また、この過熱水蒸気雰囲気中に、金属粉末とバインダー等からなる混練物を金型内に射出成形して得られた複雑形状成型品を置いたところ、通常の脱脂にかかる時間が約1/5に短縮された。脱脂後の金属粉末成形体に割れ、表面酸化等は認められなかった。
【0071】
参考例10
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して幅100mm×厚さ15mm×長さ200mmの直方体板状の成形体を得た。アルゴン中で、その成形体表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約10秒で完了し、相対密度50%のセラミック多孔質体が得られた。この直方体板状のセラミック多孔質体の上部両端に電極を取り付け、下部を水に浸けた状態で、電極を介してセラミック多孔質体に直接通電した。その結果、上部が高温発熱して毛細管現象で吸い上げられた水が1500℃の過熱水蒸気となって発生した。この高温過熱水蒸気雰囲気中にペットボトルを含むプラスチック類及び自動車用タイヤの一部を置いたところ、約6時間後に体積が1/20以下に減容化すると共に、熱分解により完全に炭化した。これと同様にして、粘土で作成した壺や皿を置いたところ、約12時間で緻密に焼成することができた。
【0072】
参考例11
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径20mm×長さ25mmの円柱状成形体を得た。アルゴン中で、その成形体上部表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約5秒で完了して、相対密度が45%のセラミック多孔質体が得られた。このセラミック多孔質体(ペレット)を石英管に複数個充填し、石英管の外周に配置した高周波コイルでペレットを加熱した。その結果、ペレットが高温度に発熱すると共に、石英管内に吹き入れた気体(空気、窒素、アルゴン、水素)が加熱されて、出口での気体温度は1800℃となった。また、同様の装置を用い、100ng/m3のダイオキシン類を含む焼却ガスを通したところ、高温熱分解により装置出口での濃度は1/100以下の0.5ng/m3まで減少した。
【0073】
実施例10
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径60mm×長さ250mmの円柱棒状の成形体を得た。空気中で、その成形体の上部表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約10秒で完了した。これにより、表面層が酸化チタンからなり、内部層が炭化チタンからなる相対密度55%のセラミック多孔質体が得られた。
【0074】
次に、密封されたアクリル製容器の中に、上記セラミック多孔質体を立てて置いた。次いで、この容器の下部に海水を入れて、セラミック多孔質体の下部1/4程度を浸けたところ、毛細管現象により上端まで海水が吸い上げられた。この状態で、アクリル製容器の天蓋に取り付けたフレネルレンズにより太陽光を集光し、セラミック多孔質体の上部表面に照射したところ、表面温度が200℃に達して、大量の水蒸気が発生した。この水蒸気を、アクリル製容器につながったパイプを通して、放熱作用を有する凝縮器を通過させたところ、回収タンクに淡水が貯まった。海水中に含まれる微生物や有機物は、セラミック多孔質体表面層に形成された酸化チタンの光触媒作用と高温化により死滅したり又は分解されたため、淡水中では検出されなかった。一般の蒸発法による海水淡水化装置は広い設置面積が必要となるが、本装置では1/10以下の小型化が可能で、かつ、1日1m2あたりの換算で50リットルの淡水製造能力を発揮した。
【0075】
同様の装置で海水に代えて、機械部品製造工場にあるクーラント切削廃液を入れたところ、水分が蒸発して分離し、アクリル製容器内で廃液の濃縮と減容化ができた。また、海水に替えて、オレンジジュースを入れたところ、同様に水分が蒸発して、アクリル製容器内で濃縮ジュースとなった。
【0076】
実施例11
実施例10の装置を用い、セラミック多孔質体温度が80℃になるよう太陽光の流入を制限した。アクリル製容器の中に、バイオマスから得られたアルコール20wt%及び水80wt%の混合溶液を入れたところ、主にアルコールが蒸発して、回収タンクには95wt%以上のアルコールが貯まった。このようにして、バイオマス原料のアルコール蒸留が可能となった。
【0077】
実施例12
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径20mm×長さ25mmの円柱状成形体を得た。空気中で、その成形体の上部表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約5秒で完了し、相対密度が45%のセラミック多孔質体が得られた。ビーカーに上記多孔質体とメチルオレンジ水溶液(濃度100mg/L)を入れ、太陽光に72時間露光させた結果、多孔質体表面層でメチルオレンジが分解され、濃度が1mg/Lまで減少した。また、太陽光を当てた際にセラミック多孔質体から多くの気泡の発生が確認された。このように空気中で燃焼合成されたセラミック多孔質体は、可視光で有機物を分解する能力を有することが判明した。
【0078】
実施例13
チタン粉末:窒化ホウ素粉末が3:2(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径20mm×長さ25mmの円柱状成形体を得た。空気中で、その成形体の上部表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約5秒で完了し、相対密度50%の円柱状セラミック多孔質体が得られた。2つの透明ビニール袋にそれぞれ食用パンを入れて、一方の袋内には上記セラミック多孔質体も入れた後に、どちらの袋も密閉した。室内で自然光が当たる場所に7日間2つの袋を置いた。その結果、セラミック多孔質体を入れなかった袋内のパンは大部分がカビで覆われたのに対し、セラミック多孔質体を入れた袋内のパンにはほとんど変化が見られず、元の状態を保っていた。このように作成したセラミック多孔質体は、食品に対して抗菌・腐敗防止効果を有することが確認された。
【0079】
実施例14
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径20mm×長さ25mmの円柱状成形体を得た。空気中で、その成形体の上部表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約5秒で完了して、相対密度45%のセラミック多孔質体が得られた。このセラミック多孔質体100個ほどをアクリル製カラムに充填し、池から採取した原水をカラム内に循環させた。表1は、池から採取した原水と、セラミック多孔質体充填カラムを循環させた後の水に関する水質検査結果を示す。この結果より、上記セラミック多孔質体は水質浄化作用を有することが確認された。
【0080】
【表1】
【0081】
実施例15
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径20mm×長さ25mmの円柱状成形体を得た。空気中で、その成形体の上部表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約5秒で完了して、相対密度45%のセラミック多孔質体が得られた。このセラミック多孔質体100個ほどをアクリル製カラムに充填し、水道水を循環させた。カラムを通す前の水道水の酸化還元電位(ORP)は500mVであったのに対し、セラミック多孔質体充填カラムを循環させた後の水道水の酸化還元電位は100mVとなった。このことから、上記セラミック多孔質体は水質変化を起こさせる能力を有していることが判明した。
【0082】
実施例16
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して一辺100mm・厚さ15mmの板状の成形体を得た。空気中で、その成形体の表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約10秒で完了し、相対密度50%のセラミック多孔質体が得られた。このセラミック多孔質体を用い、社団法人日本電機工業会(JEMA)のJEM1467(附属書1)の脱臭性能試験に基づいてアンモニア・酢酸の除去率をそれぞれ測定した。その結果、アンモニアの除去率は66.7%、酢酸の除去率は20.0%であった。上記セラミック多孔質体は、気体に含まれるアンモニア及び酢酸ガスの分解ないしは吸着による脱臭効果が認められた。
【0083】
実施例17
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して直径50mm、厚さ15mmの円盤状の成形体を得た。空気中で、上記成形体の一端を着火したところ、燃焼合成反応が約7秒で完了し、相対密度45%のセラミック多孔質体が得られた。密閉した容器内で、このセラミック多孔質体からおおよそ1cm離れた場所に直径50mmの金属メッシュ板を平行に配置し、セラミック多孔質体と金属メッシュ板との間に10kVの電場を形成した。金属メッシュ板を通してセラミック多孔質体の表面に10ppmのホルムアルデヒドあるいはエチレンガスを含む空気を流速0.5m/sで当てたところ、セラミック多孔質体と金属メッシュ板の間にプラズマ放電が発生した。この状態を5分間保持した後に、容器内の空気に含まれるホルムアルデヒドあるいはエチレンガスを測定したところ、検出限界である0.1ppm以下まで減少した。このことから、上記セラミック多孔質体は、ホルムアルデヒドあるいはエチレンガスの分解に有効であることが分かった。
【0084】
実施例18
チタン粉末:カーボン粉末が1:1(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して直径50mm×長さ30mmのペレット状の成形体を得た。空気中で、上記成形体の一端を着火したところ、燃焼合成反応が約3秒で完了し、相対密度45%のセラミック多孔質体が得られた。微粒子が浮遊した濁度5の水溶液中に上記セラミック多孔質体を入れたところ、1時間後に濁度1以下まで減少した。一方、セラミック多孔質体を入れない場合、水溶液の濁度の変化は認められなかった。このようにセラミック多孔質体は、水溶液中の浮遊微粒子を凝集・沈殿させる効果を有することが判明した。
【0085】
実施例19
暗室中において、実施例1で得られた円柱状セラミック多孔質体を網状袋に入れ、水道水を満たした容器中に入れておいたところ、約1000時間後に袋を形成する着色樹脂の脱色が確認された。容器中の水道水は約30分毎に全量を入れ替えた。セラミック多孔質体が接していない網状袋の端まで脱色されていた。このことから、この脱色作用はセラミック多孔質体が網状袋に直接作用したのではなく、セラミック多孔質体を入れることによって最初に水が何らかの変化を起こし、その水が網状袋の着色樹脂と反応して脱色させたと考えられる。
【0086】
本実験は暗室中で行っているので、上記脱色作用はセラミック多孔質体表面層の光触効果によるものではないことがわかる。また、上記脱色作用が水道水中に含まれる塩素によるものではないことを確認するため、セラミック多孔質体を入れない網状袋だけで同様の実験を行ったが、この場合は脱色作用が全く認められなかった。このように、上記の脱色作用が光触媒効果及び水道水中の塩素による脱色作用ではないことから、上記セラミックス多孔質体が水の特性を変化させる働きがあることがわかる。
【0087】
実施例20
チタン粉末:カーボン粉末が1:1(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して直径15mm×長さ30mmの円柱状の成形体を得た。空気中で、上記成形体の一端を着火したところ、燃焼合成反応が約3秒で完了して、相対密度45%のセラミック多孔質体が得られた。ビーカーに水200ccと鉱物系オイル(真空ポンプ用油)20ccとを加え、さらに上記セラミック多孔質体を約10本入れて約1分間攪拌した。その結果、水面上に浮いていたオイルがすべてセラミック多孔質体内に吸着され、水面上のオイル層がなくなった。このようにセラミック多孔質体は油の選択的吸着特性を有し、油水分離に利用できることがわかる。この後に、ビーカーを超音波洗浄機に入れて超音波を照射したところ、セラミック多孔質体内に吸着されていたオイルは乳化して再び水中に放出され、水が白色化した。
【0088】
実施例21
チタン粉末:カーボン粉末が1:1(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径60mm・内径40mm・長さ50mmの円筒状の成形体を得た。空気中で、上記成形体の一端を着火したところ、燃焼合成反応が約8秒で完了して、相対密度40%のセラミック多孔質体が得られた。このセラミックス多孔質体の底部内面に厚さ1cm程度の多孔質樹脂を埋め込み、上部開口からおおよそ10億セル/gの濃度の微生物菌を付着させた有機物粉体を投入した後に、厚さ1cm程度の多孔質樹脂を埋め込んで蓋をして有機物粉体が円筒状セラミックス多孔質体から流出しない構造にした(以後、これをバイオリアクターと称す)。池から採取したヘドロの混じった原水を入れた容器に、上記バイオリアクターを入れたところ、約2週間後にはバイオリアクター表面に微生物菌が白色透明ゼリー状となって付着するほど増殖した。約6ヶ月後にはヘドロが半分以下の体積まで減少した。このようにセラミックス多孔質体は微生物菌の増殖に有効であることが確認された。
【0089】
実施例22
実施例21で用いたバイオリアクターを、厨房・調理場に敷設されたグリーストラップ(1976年施行の建設省告示1597号に基づき、排水中に含まれる油脂分を自然浮上分離で除去し、油脂分を回収することで環境汚染を防止する装置)の自然浮上分離した油脂層部分に入れた。その結果、実施例20に基づくセラミックス多孔質体への油脂の吸着効果と、実施例21に基づく微生物菌の増殖効果により、炭化水素を主体とした油脂が酵素リパーゼにより分解される結果、ノルマルヘキサン抽出物質量の大幅な低下と水質改善がみられた。
【0090】
実施例23
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末にPt粉末又はPt−Ir合金粉末を5wt%加えた混合粉末を調製した。その混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径60mm(内径40mm)×長さ50mmの円筒状の成形体を得た。空気中で、上記成形体の一端を着火したところ、燃焼合成反応が約8秒で完了し、相対密度40%の円筒状セラミック多孔質体が得られた。同様の粉末を金型に充填して外径60mm×厚さ15mmの円板状にプレス成形した。空気中で、その一端を着火したところ、燃焼合成反応が約5秒で完了し、相対密度40%の円板状セラミック多孔質体が得られた。上記円筒状セラミック多孔質体の一端面に上記円板状セラミック多孔質体を取り付け、上記円筒状セラミック多孔質体の他端開口よりディーゼルエンジンから排出されるガスを通した。実施例6と同様に3次元網目構造を形成する炭化チタン骨格表面に均一に分散分布した微細なPtあるいはPt−Ir触媒効果により、セラミック多孔質体を通り抜けた排気ガスではNOx及びSOxの濃度が1/10に減少すると共に、微粒子状物質(PM)もセラミック多孔質体内で除去されて1/50の濃度まで減少した。このように触媒を分散させたセラミック多孔質体を用いることにより、NOx及びSOxの分解除去に加えて、微粒子状物質も同時に除去できるディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)となることがわかる。
【0091】
また、このセラミック多孔質体の導電性を活かして、セラミック多孔質体の2箇所に電極を取り付け、その電極を通してセラミック多孔質体に直接通電した結果、セラミック多孔質体が1000℃以上に発熱し、セラミック多孔質体内に蓄積された微粒子状物質を酸化により完全に分解することができた。この作用により、微粒子状物質によるセラミック多孔質体の目詰まりを解消できるため、フィルターとしての再利用が可能になった。
【0092】
実施例24
チタン粉末:ホウ化炭素粉末が3:1(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径60mm(内径40mm)×長さ50mmの円筒状の成形体を得た。空気中で、上記成形体の一端を着火したところ、燃焼合成反応が約8秒で完了し、相対密度40%の円筒状セラミック多孔質体が得られた。同様の混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径60mm×厚さ15mmの円板状の成形体を得た。空気中で、上記成形体の一端を着火したところ、燃焼合成反応が約5秒で完了し、相対密度40%の円板状セラミック多孔質体が得られた。上記円筒状セラミック多孔質体の両端面に上記円板状セラミック多孔質体を取り付け、その内部にKHz帯からGHz帯の周波数の電磁波発信装置を入れた。セラミック多孔質体の外部で電磁波の漏れを測定したが、検出されなかった。このようにセラミック多孔質体が、良好な電磁波吸収体になることが判明した。
【0093】
参考例12
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径15mm×長さ100mmの円柱状の成形体を得た。アルゴン中で、その成形体の上部表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約10秒で完了し、相対密度45%のセラミック多孔質体が得られた。この円柱状セラミック多孔質体の両端面に電極を取り付け、電気抵抗を測定できるようにした。この多孔質棒を立てた状態で水と接触させ、水面の高さを高くするか又は多孔質棒を沈めてゆくに従い電気抵抗値が小さくなるという相関関係があることを確認した。水に替えてアルコール及びガソリンで行った場合も同様な結果が得られた。このことから、上記セラミック多孔質体が、液体のレベルセンサーとして使用できることがわかる。
【0094】
参考例13
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.6(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して幅15mm×厚さ5mm×長さ100mmの板状の成形体を得た。窒素ガス中で、その成形体の表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約5秒で完了し、相対密度50%のセラミック多孔質体が得られた。この板状セラミック多孔質体の両端面に電極を取り付け、電気抵抗を測定できるようにした。密閉した容器内に、板状セラミック多孔質体を置き、空気と都市ガスとの混合ガスを入れた。空気と都市ガスとの混合比率を変化させて電気抵抗値を測定したところ、都市ガスの濃度が増加するに従い電気抵抗値が小さくなるという相関関係があることを確認した。都市ガスに替えて芳香性植物から抽出したアロマオイル蒸気を用いた場合も同様な結果が得られた。このことから、上記セラミック多孔質体が、ガスセンサーあるいは臭気センサーとして使用できることがわかる。
【0095】
参考例14
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.6(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して直径20mm×厚さ5mmの円盤状の成形体を得た。窒素ガス中で、その成形体表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約3秒で完了し、相対密度50%のセラミック多孔質体が得られた。この円盤状セラミック多孔質体の両面に電極を取り付け、電気抵抗を測定できるようにした。空気中で湿度を変化させて電気抵抗値を測定したところ、湿度が増加するに従い電気抵抗値が小さくなるという相関関係が確認された。このことより、上記セラミック多孔質体が、湿度センサーとして使用できることがわかる。
【0096】
実施例25
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して直径20mm×厚さ5mmの円盤状の成形体を得た。空気中で、その成形体表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約3秒で完了し、相対密度45%のセラミック多孔質体が得られた。芳香性植物から抽出した液体アロマオイルを上記円盤状セラミック多孔質体上に約1cc滴下したところ、数秒でセラミック多孔質体内部に吸収されると共に、臭いがおおよそ3ヶ月間にわたって持続的に発散された。比較実験として市販の多孔質シリカ粒子に同じ液体アロマオイルを同量滴下したが、約2週間後には臭いが発散されなくなった。この相違の原因として、空気中で燃焼合成された多層セラミック多孔質体においては、内部が親油性の炭化チタンからなるためアロマオイルが選択的に吸着され、親水性の表面層は空気中の湿気を吸着して一種のコーティング膜を形成するため、臭いの発散が抑制される結果、長期間にわたり一定の臭いを発散したと考えられる。一方、多孔質シリカ粒子は親水性が大きく、液体アロマオイルが内部まで浸透できないため表面層に付着して、発散が速いために短期間しか臭いの発散が続かなかったと考えられる。このようにセラミック多孔質体はアロマオイルの吸着及び長期間の芳香性を有する材料となることがわかる。
【0097】
実施例26
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径60mm(内径40mm)×長さ70mmの円筒状の成形体を得た。空気中で、上記成形体の一端を着火したところ、燃焼合成反応が約10秒で完了し、相対密度50%の円筒状セラミック多孔質体が得られた。ステンレス鋼パイプの外表面と円筒状セラミック多孔質体の内壁面とが接するように、上記セラミック多孔質体を複数個パイプの外側に挿入配置した。ステンレス鋼パイプ内部の温度は当初50℃であった。その後、円筒状セラミック多孔質体の一部を水と接触させると、毛細管現象でセラミック多孔質体全体に水が吸い上げられて、蒸発気化によって冷却される結果、ステンレス鋼パイプ内部の温度は20℃まで低下した。このように、セラミック多孔質体に含ませた水分の蒸発気化冷却を利用した凝縮器及び放熱材として、上記セラミック多孔質体を利用できることがわかる。
【0098】
実施例27
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径30mm(内径10mm)×長さ30mmの円筒状の成形体を得た。空気中で、上記成形体の一端を着火したところ、燃焼合成反応が約4秒で完了し、相対密度50%の円筒状セラミック多孔質体が得られた。水を張った水盤内に、複数個の円筒状セラミック多孔質体を立てて置き、個々の中心穴部分に切り花を差して放置したところ、円筒状セラミック多孔質体のない場合と比較して2倍以上の長期間にわたって切り花が枯れなかった。水盤内の水の温度を測定した結果、円筒状セラミック多孔質体のある場合は15℃前後で一定の値となった。これに対し、上記セラミック多孔質体のない場合は気温と共に変化して20〜25℃と高い値となった。このように、セラミック多孔質体の毛細管現象による水の吸い上げと、蒸発気化冷却により生花の保存期間を2倍以上にできる作用を有することがわかる。
【0099】
参考例15
チタン粉末:カーボン粉末:鉄粉末が1:0.9:0.1(モル比)である混合粉末を容量1000ccのカーボン容器内に相対密度で約50%となるように充填した。真空中で、その混合粉末表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約20秒で完了した。得られた試料は1つの塊でなく、1cm程度の複数の多孔質ブロック集合体となったが、個々のブロック体内部は3次元網目構造の連続立体を形成しており、粉末とはなっていなかった。この多孔質ブロック体の相対密度は40%であり、X線回折から結晶相は炭化チタンと鉄からなっていることが判明した。ビニール袋に、湿度が50%程度の空気と共に、上記多孔質ブロック体を入れて密封した後に1日間放置した。この後、ビニール袋中の空気に含まれる水分を測定したところ、水分は検出されなかった。原料に用いた鉄粉末の酸素量は0.5wt%であり、鉄粉末の表面に酸化物として存在している。しかし、約2700℃の高温反応である燃焼合成中に、鉄粉末表面の酸化物はチタン粉末ないしはカーボン粉末によって還元される結果、燃焼合成後は酸化物層がなくなり、鉄本来の非常に活性な状態になると考えられる。このため、空気中に含まれる湿気に触れると急激に反応して酸化物となり、ビニール袋中の水分が無くなったと判断される。このように燃焼合成により、活性化した金属を含むセラミック多孔質体が合成されるため、食品の酸化による劣化を防止する脱酸剤として使用することが可能である。
【0100】
参考例16
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.8(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して一辺が15mm、長さ100mmの角柱棒状の成形体を得た。窒素ガス中で、上記成形体の一端を着火したところ、燃焼合成反応が約5秒で完了し、相対密度50%のセラミック多孔質体が得られた。セラミック多孔質体の両端に電極線を取り付け、金属製パイプ内の中心に配置した。パイプ外に引き出した電線を電圧可変電源に接続し、両端の電極を通してセラミック多孔質体に電流を流したところ、数秒で発熱してパイプ内を流れる水を加熱した。500Wの投入電力の場合は、入口と出口の水温差が60℃となった。同様のセラミック多孔質体を耐熱樹脂製パイプ内の中心に配置した後、パイプの外側に誘導加熱用コイルを巻いてセラミック多孔質体を誘導発熱させた場合も前述結果と同様に、パイプ内を流れる水を数秒間で加熱できることが判明した。このように、燃焼合成により得られた導電性セラミック多孔質体を液体の流れるパイプ内に組み入れて、通電発熱あるいは電磁誘導発熱を利用することにより、高い熱交換率を有する床暖房用加熱システム、瞬間湯沸かし用加熱システム等として使用できることがわかる。また、この加熱システムは、各水道蛇口の直前あるいは直後にそれぞれ取り付けることにより、短時間で温水が得られる利点も有する。床暖房の場合も、直近に加熱システムを組み入れることが可能である。いずれの場合も、個別分散型配置が可能な加熱システムであり、一般的に普及している屋外に加熱源を設置する一極集中型よりもエネルギーロスの少ない省エネルギー型となった。
【0101】
実施例28
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径20mm×長さ50mmの円柱状の成形体を得た。空気中で、その成形体の上部表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約5秒で完了し、相対密度40%のセラミック多孔質体が得られた。気孔径が0.5〜20μmである当該セラミック多孔質体の一部をチューブに挿入・固定して、チューブに各種ガスを流したところ、セラミック多孔質体に接した液体中にミクロンオーダーの超微細ガス泡沫を放出させることができた。液体が水・溶剤・溶融金属のいずれでも同様の結果となった。このようにセラミック多孔質体は、液体中へのガスのバブリング用フィルターとして用いることができる。また、2種類以上のガスを混合する場合、通常は別途装置でガス混合を行った後にバブリングさせる必要があるが、本発明のセラミック多孔質体を用いた場合は、事前にガス混合を実施しなくてもセラミック多孔質体内の微細気孔を通過する際に均一な混合ガスとなって放出する効果が得られる。
【0102】
参考例17
金型の一部に複数個の円錐形の孔を開け、そこにチタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を充填した後、それぞれの粉末表面の一部にYAGレーザーを照射したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が起こり、数秒後には金型と一体になったセラミック多孔質体が得られた。円錐形孔の直径は金型内壁面の方が金型外壁面よりも大きくしており、金型内壁面にかかる圧力でセラミック多孔質体が抜け落ちない仕組みとなっている。この金型を射出成形機にセットして、熱可塑性あるいは熱硬化性樹脂を注入したところ、樹脂から放出されるガスがセラミック多孔質体を通して金型外部に放出された結果、欠陥のない良好な射出成型品が得られた。
【0103】
参考例18
ジルコニウム粉末:窒化ホウ素粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末に銅粉末を1〜5wt%加えた混合粉末を調製した。これを金型に充填し、プレス成形して一辺5mm・長さ30mmの角柱状の成形体を得た。窒素ガス中で、その成形体の一端を着火したところ、燃焼合成反応が約5秒で完了し、相対密度60%のセラミック多孔質体が得られた。結晶構造解析と元素分布解析の結果、3次元網目構造の骨格部分はミクロンオーダーの微細な銅粒子が均一に分散されたホウ化ジルコニウムと窒化ジルコニウムの複合セラミックスからなっていた。これを放電加工用電極として用いて金属の放電加工を行ったところ、消耗比が0.2%以下の極めて消耗の少ない無消耗電極となった。
【0104】
実施例29
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して外径50mm×高さ50mmの円柱状の成形体を得た。空気中で、その成形体の上部表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約10秒で完了し、相対密度40%のセラミック多孔質体が得られた。このセラミック多孔質体を水中に1分間沈めた後に取り出し、室内に放置して重量減少による水分蒸発速度を測定した。この比較実験として同面積(直径50mm)の容器に同重量の土を入れて、セラミック多孔質体に吸収されたと同量の水分を加えて水分蒸発速度を同条件で測定した。この結果、土壌と比較してセラミック多孔質体の水分蒸発速度は1/2以下であった。また、このセラミック多孔質体の上に、菊・バラ・カーネーションを含む観賞用植物あるいはカイワレ大根や野菜等を含む食用植物を載せた後に、植物用液体肥料を含む水面にセラミック多孔質体底面を接触させたところ、液体が毛細管現象でセラミック多孔質体内部に吸い上げられた。この状態を保ったところ、植物が枯れるとか根が腐るようなことは起こらず、順調に植物は生育した。このように、上記セラミック多孔質体は、土壌と比較して植物用長期保水材料になることがわかる。
【0105】
実施例30
チタン粉末:カーボン粉末が1:1(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して直径15mm×長さ30mmの円柱状の成形体を得た。空気中で、その成形体の一端を着火したところ、燃焼合成反応が約3秒で完了し、相対密度45%のセラミック多孔質体が得られた。この後、円柱状セラミック多孔質体の表面に多孔質となる有機物をディッピング法で厚さ1mm程度にコーティングした。生体内分泌攪乱物質(環境ホルモン)の一種であるノニルフェノールを20ppm含む溶液を入れた容器に、ノニルフェノール分解菌であるバクテリアと多孔質樹脂をコーティングしたセラミック多孔質体を入れて、溶液中に空気泡沫をバブリングさせた。この結果、ノニルフェノールは分解されて1%まで減少した。比較実験として同条件で、セラミック多孔質体に替えて円筒状ポリプロピレンで行った場合は5%まで減少し、キトサンで行った場合は9%まで減少した。このように多孔質有機物をコーティングしたセラミック多孔質体は、生体内分泌攪乱物質分解菌の吸着固定化及び増殖に有効なバイオリアクターとなることがわかる。
【0106】
実施例31
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して直径50mm×厚さ20mmの円盤状の成形体を得た。空気中で、その成形体表面の一部をYAGレーザーで着火したところ、燃焼波が進行して燃焼合成反応が約5秒で完了し、相対密度45%のセラミック多孔質体が得られた。この円盤状セラミック多孔質体の側面に温度調節用のペルチェ素子を配置した(以後、リアクターと称す)。各リアクターを接触させないために、断熱特性を有する外径50mm(内径40mm)×厚さ10mmの円筒状スペーサーと各リアクターを垂直方向に交互に並べて、各リアクターが10mm間隔毎になるよう配置した。次に、各セラミック多孔質体の温度が交互に、40〜60℃と70〜75℃になるようペルチェ素子を利用して温度調節した。この後、上からプライマーを含むデオキシリボ核酸(DNA)を流したところ、各セラミック多孔質体を通る際の温度サイクルにより、ポリメラーゼ連鎖反応でDNAの増幅が起こった。一般的な方法は、プライマーを含むDNAを樹脂あるいはガラス容器に入れて外部から温度サイクルを行うが、容器毎のバッチシステムのため生産性に問題があった。また樹脂あるいはガラス容器の熱伝導率が小さいため、短時間の温度サイクルをかけることができなかった。今回のようにセラミック多孔質体を複数枚用いることにより、それらの問題を解決して温度サイクル回数速度を上げると共に、連続的なDNA増幅が可能となる多量生産用システムとなる。
【0107】
参考例19
チタン粉末:カーボン粉末が1:0.9(モル比)である混合粉末を金型に充填し、プレス成形して一辺が15mm・長さ100mmの角柱棒状の成形体を得た。窒素ガス中で、その成形体の一端を着火したところ、燃焼合成反応が約5秒で完了し、相対密度50%のセラミック多孔質体が得られた。NaCl又はHClを5wt%程度入れた水溶液中に、10mm離して置いた2本の角柱棒状セラミック多孔質体の下部2/3以上を入れた状態で、各セラミック多孔質体の上部に電極を取り付けて、おおよそ15V・30Aの直流電源につないだところ、上記水溶液の電気分解が起こった。この状態で10000時間保持した後にセラミック多孔質体を取り出したが、腐食等は見られなかった。比較実験として、表面にPt−Ir合金を焼結コーティングしたTi板を電極として水溶液の電気分解を行ったところ、5000時間で電極板の腐食及び焼結コーティング膜の剥離等が見られた。このように導電性を有するセラミック多孔質体は、水溶液電気分解用として長期間にわたり安定な電極材として用いることができた。また金属板電極と比較して、多孔質に起因した大きな表面積を有するため、電極材が小型化できるという特徴も併せ持っている。
【0108】
得られた電解水には、酸化力の強い次亜塩素酸(HClO)が含まれる。有機色素溶液あるいは染色排水に上記電解水を入れたところ、酸化分解により消色して透明化した。また、採取した河川・湖沼水やクーリングタワーに電解水を滴下したところ、有害菌類や藻類が死滅して殺菌効果が認められた。切削用等に使われる水溶性クーラント液に電解水を滴下したところ、電解水を入れない時と比較して5倍以上の長期間にわたり腐敗や汚臭が防止できた。
【0109】
参考例20
参考例19で得られた2本の角柱棒状セラミック多孔質体を、Cr、Mn等の重金属イオンを含む水溶液中に入れ、直流電圧を付加すると、負極(−)側のセラミック多孔質体表面及び多孔質体内部に重金属を析出させることができた。このように導電性セラミック多孔質体を電極に用いた場合、重金属の電気析出が可能な材料となることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られた多孔質体の内部構造を示す図である。
【図2】 参考例7において、円盤状セラミック多孔質体にダイオキシン類を含むガスを流通させるための装置の概要を示す図である。
Claims (6)
- 2種以上の無機粉末からなる混合粉末を成形し、得られた成形体を空気中又は酸化性雰囲気中で燃焼合成反応させることにより、セラミックス系多孔質材料を製造する方法であって、
当該混合粉末は、チタン及びジルコニウムの少なくとも1種の無機粉末と、炭素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ素、ケイ素及びアルミニウムの少なくとも1種の無機粉末とを含み、
当該セラミックス系多孔質材料は、1)表面の一部又は全部に酸化物系セラミックス層が形成され、2)当該セラミックス層以外の部分に非酸化物系セラミックスが含まれ、3)三次元網目構造を有する、
ことを特徴とする多層セラミックス系多孔質材料の製造方法。 - 混合粉末が、Cu、Mo、ステンレス鋼、鉄、Pt及びPt−Ir合金の少なくとも1種の無機粉末をさらに含む請求項1に記載の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の製造方法により得られるセラミックス系多孔質材料。
- 請求項3記載のセラミックス系多孔質材料を用いたセラミックスフィルター。
- 請求項4記載のセラミックスフィルターを加熱することに特徴を有するセラミックスフィルターの再生利用方法。
- 請求項3記載のセラミックス系多孔質材料を水と接触させ、少なくとも当該接触部分に光照射することによって、酸素ガスと水素ガスを発生させることを特徴とするガス製造方法。
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