JP3985848B2 - 光導波路、光導波路モジュール、光伝送装置、光導波路の製造方法 - Google Patents

光導波路、光導波路モジュール、光伝送装置、光導波路の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、光導波路およびそれを備えた光導波路モジュール、光伝送装置、並びに光導波路の製造方法に関するものである。
近年、光を用いた通信技術やエネルギー伝送技術、演算・制御処理技術などが注目されている。例えば、複数の通信機器をつなぐ光ファイバ、プリント基板同士をつなぐ光インターコネクション、複数の回路間を光でつなぐ光回路基板、回路内において光を用いた情報伝達を行う光集積回路(光IC、OEIC(Opto Electronics Integrated Circuit))などが開発されている。光を用いることにより、従来の電気を用いた配線や回路の機能に加えて、大容量のデータを高速で伝送でき、また、従来の電気を用いた装置よりも配線数を少なくできるので、装置の小型化を図ることができる。
ところで、光を用いた通信やエネルギー伝送には、光信号や光エネルギーを導光するための光導波路が用いられる。光導波路は、一般に、下クラッド層と上クラッド層の間に、上下クラッド層より屈折率の高い部分であるコアが形成されてなり、コア内に入射した光が各クラッド層とコアとの界面で全反射されながら伝送されるようになっている。
従来、このような光導波路を作製する際、材料に石英を利用し、その石英にイオン注入法や、イオン交換法などを適用することによって、コアやクラッドを形成していた。
また、最近では、材料価格の点で優れている樹脂製光導波路の開発が進んでいる。しかし、上記の光導波路を形成する際には、クラッド層の表面にコア構造を形成するために、一枚毎にフォトレジストを用いたコアパターンを形成し、これに引き続いて反応性イオンエッチングなどによる加工を行うため、製造工程において、高価な設備や装置を用いた半導体プロセスが必要であり、製造コストが高くなっていた。
また、光導波路のコアパターンの凸形状をもつスタンパを溶融状態または液体状態の高分子に押し当てるとともに、その状態で高分子を硬化させ、コアパターンの溝を転写(複製)して下クラッド層とする方法が検討されている。
このように、高分子を用いた光導波路、つまり、樹脂製光導波路の製作において、複製で光導波路のコア溝を作製する際には、スタンパが離型しやすいように、コアの断面形状に抜きテーパを形成する必要があり、コア形状の断面形状は矩形でなく台形であるのが一般的である。このような方法を用いて作製した光導波路の形状として、例えば、日本国公開特許公報である特開2003−240991号公報(2003年8月27日公開)に開示されたものがある。
また、近年では、従来のFPC(flexible Printed Circuit)基板や電気配線板などを、屈曲性を有する光導波路であるフィルム光導波路に置き換える技術が開発されている。
しかしながら、コアの断面形状が台形や矩形の光導波路では、特に、コア−クラッド界面において、コア−クラッド間の熱膨張率(熱膨張係数)の差により、剥離が生じやすいという問題がある。
コア−クラッド間で剥離が生じると、コアに微小な欠けが生じたり、微小なクラッド樹脂がコア表面に付着してコアを伝搬する光がその微小部分において散乱するために光学的な損失が生じる。また、シングルモード導波路においては、その剥離部分におけるコアとクラッドの屈折率差が変化し、コアからクラッドに滲み出す光量が変化し、光学的損失が生じる。また、一部に剥離が生じると、そこに水分が進入して温度変化により剥離が拡大し、信頼性がますます低下する。
また、FPC基板や電気配線板との置き換えが期待されているフィルム光導波路には、屈曲性が求められるが、繰り返し屈曲させることで、コア−クラッド界面が剥離してしまうという問題がある。
この不具合が発生する原因について図9(a)および図9(b)を用いて説明する。図9(a)はコアの断面形状が台形の光導波路、および、コアの断面形状が矩形の光導波路における断面図である。これらの図に示すように、各光導波路は、下クラッド101、上クラッド102、コア103からなる。コア103は、下クラッド101に設けられた溝に、各クラッドとは屈折率および熱膨張係数が異なる材料が充填されてなる。なお、両クラッドの材質は同じであっても異なっていてもよい。
このように、コア103の熱膨張係数と各クラッドの熱膨張係数とが異なっているので、両者の間に剪断力が生じる。なお、このような剪断力が作用する、最も一般的な部分は、コア103と下クラッド101との界面が挙げられる。
図9(b)は、図9(a)に示した各光導波路において破線で囲んだ部分、すなわち、コア103と下クラッド101との界面を示す断面図である。この図に示すように、コア形状が台形や矩形であると、線膨張係数(熱膨張係数)の差による双方の伸びようとする力の違いにより、界面に剪断力が大きく働き、そこで剥離が生じる。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、剥離を防止し、光学的特性の信頼性を向上させた光導波路、それを用いた光伝送装置、光導波路の製造方法を提供することにある。
本発明の光導波路は、上記の課題を解決するために、光を閉じ込めて伝搬させるためのコアと、上記コアを抱持する溝部を有するクラッド層とを備えた光導波路であって、上記コアは、上記コア内を伝搬する光の光軸方向に垂直な断面における、上記溝部の側面または底面と接する部分の少なくとも一部が、当該断面の中心に対して湾曲した形状であることを特徴としている。
上記の構成によれば、コアとクラッド層の界面が湾曲しているので、例えば上記コアとクラッド層との熱膨張係数の差や上記光導波路の屈曲等によって、上記コアと上記クラッドとの界面に生じる剪断力の作用する方向が界面の微小領域において異なるため、界面全体にかかる剪断力を分散,低減させることができる。したがって、上記コアと上記クラッド層との界面に剥離が生じることを防止し、光学的特性の信頼性を向上させた光導波路を実現できる。
また、上記コアは、上記断面における、上記溝部の側面と接する部分の少なくとも一部が当該断面の中心に対して湾曲した形状であってもよい。
上記の構成によれば、上記コアと上記クラッド層に設けられた溝部の側面との界面に生じる剪断力の作用する方向が界面の微小領域において異なるため、界面全体にかかる剪断力を分散,低減させることができる。したがって、上記界面に剥離が生じることを防止できる。
また、上記コアは、上記断面における、上記溝部の底面と接する部分の少なくとも一部が当該コアの中心に対して湾曲した形状であってもよい。
この場合、上記コアと上記クラッド層に設けられた溝部の底面との界面、または、上記コアと上記溝部の側面および底面との界面に生じる剪断力の作用する方向が界面の微小領域において異なるため、界面全体にかかる剪断力を分散,低減させることができる。したがって、上記界面に剥離が生じることを防止できる。
また、上記クラッド層および上記コアを覆うように形成された第2クラッド層を備え、上記コアは、上記断面における、上記第2クラッド層と接する部分の少なくとも一部が当該コアの中心に対して湾曲した形状であってもよい。
上記の構成によれば、上記クラッド層と上記コアとの界面だけでなく、上記第2クラッド層と上記コアとの界面に生じる剪断力の作用する方向についても、界面の微小領域において異なる方向となるため、この界面全体にかかる剪断力についても分散,低減することができる。したがって、上記クラッド層と上記コアとの界面、および、上記第2クラッド層と上記コアとの界面に剥離が生じることを確実に防止し、光学的特性の信頼性を向上させることができる。
また、上記クラッド層は、曲げ弾性率が1000MPa以下であってもよい。
上記の構成によれば、上記光導波路の製造工程において、上記クラッド層に加える押圧力を制御することによって、上記コアの形状を制御できる。例えば、上記溝部に上記コアを形成する樹脂を封入し、上記クラッド層の表面に押圧力を加えて上記クラッド層を変形させて上記溝部に充填した樹脂を変形させ、その状態で当該樹脂を硬化させることによって、上記した断面形状を有するコアを形成できる。したがって、製造コストを削減した安価な光導波路を実現できる。
また、上記光導波路は、総厚が300μm以下の樹脂層からなるものであってもよい。上記樹脂層の総厚が300μm以下であれば、屈曲させて使用したり、軸などに巻きつけて使用するのに好適である。また、光導波路の設置スペースを低減できるので、当該光導波路が備えられる機器の小型化を図ることができる。
また、上記光導波路は、弾性率が20MPa以上250MPa以下であってもよい。
上記の構成によれば、上記光導波路を、例えば電子機器の駆動部(ヒンジ部,回転部等)に設置するのに好適である。また、光導波路の設置スペースを低減できるので、当該光導波路が備えられる機器の小型化を図ることができる。また、弾性率が20MPa以上250MPa以下であれば、光導波路がねじれることによって当該光導波路の接続部に生じる引張力を、接続不良が生じない程度に低減できる。
本発明の光導波路モジュールは、上記したいずれかの光導波路と、電気信号を光に変換して出射する投光素子とが、上記投光素子から出射した光が上記光導波路のコアに入射するように備えられていることを特徴としている。
上記の構成によれば、投光素子から出射される光を、上記光導波路によって適切に伝播させることができる。
また、本発明の光導波路モジュールは、上記したいずれかの光導波路と、受光した光を電気信号に変換する受光素子とが、上記光導波路によって伝搬された光が上記受光素子に入射するように備えられている構成としてもよい。
上記の構成によれば、上記光導波路によって伝播された光を、上記受光素子によって適切に受光することができる。
また、本発明の光導波路モジュールは、上記したいずれかの光導波路と、電気信号を光に変換して出射する投光素子と、受光した光を電気信号に変換する受光素子とが、上記投光素子から出射した光が上記光導波路のコアに入射し、この入射した光がコアを介して伝搬して上記受光素子に入射するように備えられている構成としてもよい。
上記の構成によれば、投光素子から出射される光を、上記光導波路によって適切に伝播させるとともに、上記光導波路によって伝播された光を、上記受光素子によって適切に受光することができる。
本発明の光伝送装置は、上記の課題を解決するために、本体と、上記本体に対して相対的に移動または回転する駆動部とを備え、総厚が300μm以下の樹脂層の積層体(柔軟性を有する樹脂層の積層体)からなる光導波路、または弾性率が20MPa以上250MPa以下の光導波路、または総厚が300μm以下の樹脂層であって弾性率が20MPa以上250MPa以下である光導波路を用いて、上記本体と上記駆動部との間で光信号を伝送することを特徴としている。
上記の構成によれば、上記駆動部の移動または回転を考慮した形状で、上記光導波路を設置することができる。また、上記駆動部の移動または回転に伴って、上記光導波路の屈曲状態が変化する場合であっても、屈曲によって上記コアと上記クラッド層との界面に生じる剪断力の作用する方向が界面の微小領域において異なるため、界面全体にかかる剪断力を分散,低減することができる。このため、剪断力に対する許容量が増加し、剥離が生じにくくなる。
本発明の光導波路の製造方法は、上記の課題を解決するために、光を閉じ込めて伝搬させるためのコアと、上記コアを抱持する溝部を有するクラッド層とを備えた光導波路の製造方法であって、第1の樹脂からなる上記クラッド層の表面に上記溝部を形成する工程と、上記溝部に第2の樹脂を充填する工程と、上記クラッド層に押圧力を加えることによって上記溝部の形状を変形させ、上記溝部の形状の変形に合わせて上記第2の樹脂を変形させながら、当該第2の樹脂を硬化させることによって、上記コアを形成する工程とを含むことを特徴としている。
上記の製造方法によれば、上記クラッド層に押圧力を加えることによって、上記第2の樹脂の光軸方向に垂直な断面における、上記溝部の側面または底面と接する部分の少なくとも一部を、当該断面の中心に対して湾曲した形状となるように変形させることができる。そして、この状態で第2の樹脂を硬化させることにより、光軸方向に垂直な断面における上記溝部の側面または底面と接する部分の少なくとも一部が、当該断面の中心に対して湾曲した形状のコアを形成できる。
したがって、例えば上記コアとクラッド層との熱膨張係数の差や上記光導波路の屈曲等によって、上記コアと上記クラッドとの界面に生じる剪断力の作用する方向が界面の微小領域において異なるため、界面全体にかかる剪断力を分散,低減できる光導波路を製造できる。これにより、光導波路において、上記コアと上記クラッド層との界面に剥離が生じることを防止し、光学的特性の信頼性を向上させた光導波路を実現できる。
また、上記溝部の形成工程において、上記第1の樹脂からなる樹脂層に、上記溝部の反転パターンを有するスタンパを圧接させながら、当該樹脂層を硬化させることによって、上記クラッド層を形成してもよい。
この場合、スタンパの形状を転写(複製)することによってコアを形成する製造方法において、上記コアの断面に湾曲形状を容易に形成できる。したがって、断面に湾曲形状を有するコアを備え、それによって剥離を防止し、光学的特性の信頼性を向上させた光導波路を、安価に大量に作製することができる。
本発明の他の光導波路の製造方法は、上記の課題を解決するために、光を閉じ込めて伝搬させるためのコアと、上記コアを抱持する溝部を有するクラッド層とを備えた光導波路の製造方法であって、上記クラッド層に、側面または底面の少なくとも一部に湾曲部を有する上記溝部を形成する工程と、上記溝部に第2の樹脂を充填して硬化させることにより、上記コアを形成する工程とを含むことを特徴としている。
上記の製造方法によれば、上記クラッド層に、側面または底面の少なくとも一部に湾曲部を有する溝部を形成し、この溝部に第2の樹脂を充填して硬化させることにより、光軸方向に垂直な断面における、上記溝部の側面または底面と接する部分の少なくとも一部が、当該断面の中心に対して湾曲した形状のコアを形成できる。
したがって、上記コアと上記クラッド層との界面に生じる剪断力の作用する方向が界面の微小領域において異なるため、界面全体にかかる剪断力を分散,低減できる光導波路を製造できる。これにより、上記コアと上記クラッド層との界面に剥離が生じることを防止し、光学的特性の信頼性を向上させた光導波路を実現できる。
また、上記溝部の形成工程において、開口部を有する遮蔽物を介してエネルギービームを照射することにより、上記溝部を形成するようにしてもよい。
この場合、例えば、上記エネルギービームのエネルギー密度を変化させることで、上記溝部の加工形状を変更させることができ、上記クラッド層における光軸方向に垂直な断面に、側面または底面の少なくとも一部に湾曲部を有する溝部を形成することができる。
したがって、上記コアと上記クラッド層との界面に生じる剪断力を分散,低減できる光導波路を製造できる。これにより、上記コアと上記クラッド層との界面に剥離が生じることを防止し、光学的特性の信頼性を向上させた光導波路を実現できる。
本発明のさらに他の光導波路の製造方法は、上記の課題を解決するために、光を閉じ込めて伝搬させるためのコアと、上記コアを抱持するクラッド層とを備えた光導波路の製造方法であって、第1クラッド層上に、第2の樹脂を堆積させてコア層を形成する工程と、上記コア層にエッチングを施すことにより、上記コア内を伝搬する光の光軸方向に垂直な断面の輪郭における少なくとも一部が、当該断面の中心に対して湾曲した形状のコアを形成する工程と、上記コアおよび上記第1クラッド層を覆うように、第2クラッド層を形成する工程とを含むことを特徴としている。
上記の製造方法によれば、光の伝搬方向に垂直な断面の輪郭における少なくとも一部が、当該断面の中心に対して湾曲した形状からなるコアを、第2クラッド層によって抱持した光導波路を製造できる。
したがって、上記コアと上記第2クラッド層との界面に生じる剪断力の作用する方向が界面の微小領域において異なるため、界面全体にかかる剪断力を分散,低減できる光導波路を製造できる。これにより、上記コアと上記第2クラッド層との界面に剥離が生じることを防止し、光学的特性の信頼性を向上させた光導波路を実現できる。
また、上記コアの形成工程において、遮蔽物を介して反応性イオンエッチングを施すことにより、上記コアを形成してもよい。
この場合、例えば、反応性イオンエッチングを施す際のガス流量、チャンバ圧力、プラズマ出力等のパラメータを制御すること、あるいは上記遮蔽物の形状を適切に設定することにより、断面の輪郭が中心に対して湾曲した形状のコアを形成できる。
本発明の一実施形態にかかる光導波路の平面図である。 図1(a)に示した光導波路の断面図である。 図1(b)におけるコアとクラッドの界面に生じる剪断力を示す拡大図である。 本発明の一実施形態にかかる光導波路の製造工程を示す断面図である。 本発明の一実施形態にかかる光導波路の製造工程を示す断面図である。 本発明の一実施形態にかかる光導波路の製造工程を示す断面図である。 本発明の一実施形態にかかる光導波路の製造工程を示す断面図である。 本発明の一実施形態にかかる光導波路の製造工程を示す断面図である。 本発明の一実施形態にかかる光導波路の製造工程を示す断面図である。 本発明の一実施形態にかかる光導波路の製造工程を示す断面図である。 本発明の他の実施形態にかかる光導波路の製造工程の他の例を示す断面図である。 本発明の他の実施形態にかかる光導波路の製造工程の他の例を示す断面図である。 本発明の他の実施形態にかかる光導波路の製造工程のさらに他の例を示す断面図である。 本発明の他の実施形態にかかる光導波路の製造工程のさらに他の例を示す断面図である。 本発明の他の実施形態にかかる光導波路の製造工程のさらに他の例を示す断面図である。 本発明のさらに他の実施形態にかかる光導波路(フィルム光導波路)を備えた折り畳み式携帯電話の外観を示す斜視図である。 図6(a)に示した折り畳み式携帯電話における、本発明のフィルム光導波路が適用されている部分のブロック図である。 図6(a)に示した折り畳み式携帯電話における、ヒンジ部の透視平面図である。 本発明のさらに他の実施形態にかかる光導波路(フィルム光導波路)を備えた印刷装置の外観を示す斜視図である。 図7(a)に示した印刷装置における、本発明のさらに他の実施形態にかかる光導波路(フィルム光導波路)が適用されている部分のブロック図である。 図7(a)に示した印刷装置における、本発明のさらに他の実施形態にかかる光導波路(フィルム光導波路)の湾曲状態を示す斜視図である。 図7(a)に示した印刷装置における、本発明のさらに他の実施形態にかかる光導波路(フィルム光導波路)の湾曲状態を示す斜視図である。 本発明のさらに他の実施形態にかかる光導波路(フィルム光導波路)を備えたハードディスク記録再生装置の外観を示す斜視図である。 従来のフィルム光導波路、すなわち、コアの断面形状が台形および矩形のフィルム光導波路における断面図である。 図9(a)に示した各フィルム光導波路における、コアと下クラッドとの界面に生じる剪断力を示す断面図である。 本発明の一実施形態にかかる光導波路モジュールの一例を示す平面図である。 図10に示した光導波路モジュールにおける、光導波路と基板との接続部の概略構成を示す断面図である。 本発明の一実施形態にかかる光導波路モジュールの他の例を示す平面図である。 本発明の一実施形態にかかる光導波路モジュールを備えた携帯電話の構成を示す断面図である。 図13に示した携帯電話に備えられる光導波路モジュールの平面図である。 図14に示した光導波路モジュールにおいて、接合部に作用する引張力を0.5kgf以下とするための、ねじれ部分の長さと光導波路の弾性率との関係を示すグラフである。
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について図を用いて説明する。図1(a)は、本実施形態にかかる光導波路10の正面図であり、図1(b)は図1(a)のD−D’断面における断面図である。
図1(b)に示すように、光導波路10は、基板1,下クラッド(クラッド層)2、上クラッド(第2クラッド層)3、コア4からなる。コア4は、下クラッド2に設けられた溝(溝部)に抱持されるように形成されており、下クラッド2および上クラッド3よりも屈折率の高い材料からなる。これにより、コア4の一端面からコア4内に入射した光が、両クラッド2,3とコア4との界面で全反射されながら伝送され、コア4の他端面から出射されるようになっている。
基板1の材質は、特に限定されるものではないが、本実施形態ではガラス基板を用いた。
下クラッド2は、硬化後の曲げ弾性率が約1000MPa以下のアクリル樹脂(紫外線硬化樹脂)からなる。
上クラッド3は、特に限定されるものではないが、本実施形態では下クラッド2と同様の材質のものを用いた。
コア4は、下クラッド2および上クラッド2よりも屈折率の高い紫外線硬化樹脂からなる。
また、本実施形態にかかる光導波路10では、図1(b)に示すように、コア4の断面形状が台形や矩形ではなく、楔型を有する形状、すなわち台形または矩形における各辺が内側に凹んだ(湾曲した)形状になっている。図1(c)は、図1(b)のコア4と下クラッド2との界面(破線で囲んだ部分)を示す拡大図である。このように、本実施形態にかかる光導波路10においては、コア4と下クラッド2の界面が湾曲しているので、コア4と下クラッド2との熱膨張係数の差や光導波路10の屈曲等によって、コア4と下クラッド2との界面に生じる剪断力の作用する方向が界面の微小領域において異なる。このため、界面全体にかかる剪断力を分散,低減させることができる。これにより、光導波路10では、剪断力の許容量(許容値)が増加し、剥離が生じにくくなっている。
ここで、光導波路10の製造方法について説明する。図2(a)〜図2(g)は、光導波蕗10の製造工程を示す断面図である。
光導波路10の製造工程においては、まず、基板1上に未硬化の紫外線硬化樹脂(下クラッド樹脂)を塗布(堆積)する。
そして、この紫外線硬化樹脂の表面を、抜きテーパを設けた導波路パターンの反転パターンを表面に有するスタンパ(図示せず)で圧接させるとともに、その状態で紫外線を照射して紫外線樹脂を硬化させる。
これにより、図2(a)に示すように、基板1上に導波路パターンとなるコア溝(溝部)2aが転写された下クラッド2が形成される。なお、本実施形態では、コア溝2aの高さ(深さ)を50μmとし、底部における幅を50μmとした。
次に、このコア溝2aに、下クラッド2よりも屈折率の大きな紫外線硬化樹脂(コア樹脂)4aを充填する(図2(b)参照)。コア樹脂4aの材質は下クラッド2よりも屈折率の大きな樹脂であればよく、特に限定されるものではないが、ここではアクリル樹脂を用いた。
次に、下クラッド2およびコア樹脂4aに、図2(c)に示すように、平らなスタンパ5で基板1方向に押圧をかけて余剰のコア樹脂4aを押し広げる。ここで、スタンパ5の押圧力を強めていくと、図2(d)に示すように、すでに硬化形成された弾力性のある下クラッド2におけるコア溝2aの側面および底面がコア樹脂4に押しこまれ、コア形状が内側に凹み始める(湾曲し始める)。すなわち、コア4を形作る形成済み下クラッド2がたわみ、コア樹脂4aが凹み始める。
そして、スタンパ5の押圧力をさらに強めていくと、図2(e)に示すように、下クラッド2におけるコア溝2aの側面及び底面がコア樹脂4aにさらに押しこまれ、コア形状が内側にさらに凹む。
次に、この状態で紫外線を照射し、コア樹脂4aを硬化させ、スタンパ5を剥離させる。これにより、図2(f)に示すように、断面に楔形部分を有するコア4を作製することができる。なお、この図に示すように、コア4の上面、すなわち後に上クラッド3が形成される面についても、内側に凹み(湾曲)を有する形状となる。これは、コア樹脂4aが硬化収縮するためである。
以降は、図2(g)に示すように、コア4よりも屈折率の小さい紫外線硬化樹脂を下クラッド2およびコア4上に塗布して露光し、上クラッド3を形成する。これにより、光導波路10が完成する。
このように、コア4の断面形状を、従来のように台形や矩形ではなく、凹み(湾曲)部分を有する形状、すなわち、楔型を有する形状とすることにより、光導波路(光通信用部品)における層間密着性の熱に対する信頼性を向上させることができる。
なお、本実施形態の方法により、高さ50μm、幅50μmのコア4を、底面および側面をそれぞれ最大10μmずつ内側に凹ますことができた。これは、コア4と下クラッド2との界面に生じる剪断力による剥離を防止するのに十分な変形量である。
また、スタンパによる下クラッド2およびコア樹脂4aへの押圧力を変化させること、あるいは、スタンパの形状を工夫することによって形成済み下クラッド2のコア形状の側壁(コア溝2a)側へ所望の圧力が意図的に掛かる構造にすることにより、コア4の側面(コア側壁)や底面(コア底面)に凹みを発生させ、またその形状をコントロールできる。また、コア樹脂4aあるいは下クラッド2の硬化収縮を利用して、コア4の上部、下部、側部に凹みを生じさせ、またそれをコントロールすることも可能である。
なお、コア4における凹み部分の形状は、剥離に対する特性だけでなく、コア4内を伝搬する光の光学的特性等も考慮して決定することが好ましい。本実施形態にかかる光導波路10のようにコア4を高さ50μm、幅50μmで形成した場合、十分な耐剪断力を付与するとともに、光学特性に悪影響を与えないためには、各面の凹み量を3μm〜5μm程度とすることが好適であった。
また、本実施形態では、内側に凹んだ断面形状のコア4を形成したが、コア4の形状はこれに限るものではなく、コア4と上下クラッド2,3との界面に作用する剪断力の作用する方向を界面の微小領域において異ならせ、それによって界面全体にかかる剪断力を適切に分散,低減できる形状であればよい。
例えば、少なくとも1部が内側に凹んだ形状の断面を有するコア4を形成してもよい。あるいは、断面がなす多角形における少なくとも1辺が外側に膨らんだ(湾曲した)形状の断面を有するコア4を形成してもよい。
このように、光の伝搬方向に垂直な断面の輪郭における少なくとも一部に、当該断面の中心に対して凹凸(湾曲)した形状を有するコア4を形成することにより、コア4と下クラッド2または上クラッド3との界面に生じる剪断力の作用する方向を界面の微小領域において異ならせ、それによって界面全体にかかる剪断力を分散,低減させることができ、この界面の剥離を防止することができる。
また、本実施形態では、下クラッド2、上クラッド3、コア4に、紫外線を照射することによって硬化する紫外線硬化樹脂を用いているが、各部材の材料はこれに限るものではない。例えば、熱的条件によって硬化する熱硬化樹脂など、光照射以外の条件で硬化する樹脂であってもよい。
また、本実施形態では、1つの光導波路10にコア4が1つだけ形成されている例について説明したが、これに限るものではない。例えば、下クラッド2に複数のコア4が形成されていてもよく、コア4がY字状に分岐されていてもよい。
また、コア4は、光の伝搬方向が直線状に延在するものであっても、湾曲しながら延在するものであってもよい。また、コア4の断面形状は、光の伝搬方向について必ずしも一定でなくてもよい。
また、光導波路10において、上クラッド3上にさらにカバー基板(カバーガラス)を設けてもよい。
また、本実施形態では、上クラッド3を設けているが、上クラッド3は必ずしも設けなくてもよい。
また、本実施形態では、光導波路のコア溝のパターンをもつスタンパを溶融状態または液体状態の紫外線硬化樹脂(高分子)に押し当てるとともに、その状態で高分子を硬化させ、コア溝パターンの凸凹形状を、下クラッドに転写(複製)する。そして、このように形成したコア溝に高分子を充填し、下クラッドに平らなスタンパで押圧力を加えることによって、コア溝に充填した高分子の断面に、コアの中心方向に凹んだ凹部を生じさせる。さらに、この状態でコア溝内の高分子を硬化させてコアを形成する。
このように、本実施形態では、高分子を用いた光導波路、つまり、樹脂光導波路の製作において、複製で光導波路のコアを作製するので、光導波路をローコストで容易に製作できる。
また、本実施形態にかかる光導波路は、コアの断面形状を楔形としたことにより、熱膨張による伸びの部分が長くなり、剪断力の許容量を増加させ、剪断力を低減することで熱膨張による剪断力の許容量を増やし、剥離が生じにくくなっている。すなわち、本実施形態にかかる光導波路は、屈曲させる特定方向に対して耐剥離性を高める為に、各界面で剪断力を高めるために凹ました断面形状のコアが作製されている。
したがって、本発明によれば、コアの形状を容易に楔形にすることができ、屈曲性に強い光導波路を安価に大量に作製することができる。
また、本実施形態にかかる光導波路10は、例えば、複数の通信機器をつなぐ光ファイバ、プリント基板同士をつなぐ光インターコネクション、複数の回路間を光でつなぐ光回路基板、回路内において光を用いた情報伝達を行う光集積回路などに適用できる。
図10は、光導波路10を用いて2つの基板70,80間を光信号により信号伝送できるように構成した光導波路モジュール(光回路)90の一例を示す平面図である。
より詳細には、基板70には、集積回路(駆動・増幅IC)71と、投光素子(VCSEL)72と、受光素子(PD)73とが備えられており、基板80には、集積回路(駆動・増幅IC)81と、投光素子82と、受光素子83とが備えられている。
集積回路71,81は、それぞれ、投光素子72,82を駆動させるとともに、受光素子73,83から伝達された電気信号を増幅する機能を有している。
投光素子72,82は、それぞれ、集積回路71,81から伝達される電気信号を光に変換して出射するものである。受光素子72,82は、受光した光を電気信号に変換して集積回路71,81にそれぞれ伝達するものである。
光導波路10はコア4を2本備えており、各コア4によって、投光素子72と受光素子83との間、および、投光素子82と受光素子73との間をそれぞれ光学的に結合している。
図11は、光導波路10と基板70との接続部の概略構成を示す断面図である。この図に示すように、投光素子72は、集積回路71から伝達される電気信号を光に変換し、変換した光を光導波路10のコア4に入射させる。つまり、光導波路10と投光素子72とは、投光素子72の出射した光が光導波路10のコア4に入射するように配置され、光学的に結合される。なお、図11には、投光素子72と光導波路10との配置関係を示したが、投光素子82と光導波路10との配置関係についても略同様である。
また、受光素子73と光導波路10との配置関係、および、受光素子83と光導波路10との配置関係については、光導波路10のコア4を介して伝搬された光が、受光素子73,83に入射するように配置される。これによって光導波路10と受光素子73,83は光学的に結合される。
なお、本実施形態にかかる光導波路はマルチモードであるが、本発明はマルチモードの光導波路に限定されるものではなく、シングルモードの光導波路にも適用することができる。つまり、光導波路10は、コア4を複数本備えてなる構成としてもよく、あるいは、コア4を1本のみ備えた構成としてもよい。また、例えば、コア4を1本のみ備え、片方向通信を行う構成としてもよい。
図12は、光導波路10を片方向通信に用いる場合の光導波路モジュール90の構成例を示す平面図である。この図に示すように、片方向通信の場合には、送信側の基板70には受光素子73を設けず、集積回路71が増幅機能を備えない構成としてもよい。また、受信側の基板80には投光素子82を設けず、集積回路81が投光素子82に信号を伝達する機能(駆動機能)を備えない構成としてもよい。
また、光導波路10は、投光素子および受光素子に対して光学的に結合するように一体化したものであってもよく、あるいは取り外し可能に装着されるものであってもよい。また、光導波路10の一端側のみが投光素子および/または受光素子と光学的に結合するように一体化されていてもよい。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1と同様の機能を有する部材については同じ符号を用い、その説明を省略する。
本実施形態にかかる光導波路は、実施形態1と同様、断面形状の少なくとも一部に凹凸を有するコア4を備えており、これによって、実施形態1における光導波路10と略同様の効果を奏するものである。
ただし、本実施形態では、半導体プロセスを用いてコア4を形成する点が、実施形態1および2と異なっている。
本実施形態にかかる光導波路の製造方法について説明する。図3(a)および図3(b)は、本実施形態にかかる光導波路の製造工程の一部を示す断面図である。
まず、基板1上に紫外線硬化樹脂(クラッド材)を堆積させ、それを硬化させることにより下クラッド2を形成する。
その後、下クラッド2の上に紫外線硬化樹脂(コア材)を堆積させ、硬化させることによりコア層4bを形成する。なお、コア層4bを形成するコア材は、下クラッドを形成するクラッド材よりも屈折率の高い樹脂を用いる。
次に、コア層4bの表面にレジスト(図示せず)を塗布し、レジストの上に露光マスク(図示せず)を重ねて、紫外線照射により露光する。露光後、レジストを現像することによってパターニングし、コア4を形成する位置をレジストで覆い、マスク(エッチング用マスク)61とする(図3(a)参照)。
そして、図3(b)に示すように、マスク61上から、反応性イオンエッチング(RIE)によってコア層4bの露出領域およびマスク61の下部の一部を除去し、コア4を形成する。この際、作製パラメータ(ガス流量、チャンバ圧力、プラズマ出力等)を制御することで、断面における両側面に、なだらかな形状で歪んだ楔型、すなわち両側面が内側に凹んだ形状のコア4を作製する。
その後、マスク61を除去してコア4を露出させる。そして、コア4及び下クラッド2上に紫外線硬化樹脂(クラッド材)を堆積させ、それを硬化させて上クラッドを形成する。これにより、下クラッド2と上クラッドとの間にコア4が埋め込まれた光導波路を形成できる。
このように形成した光導波路は、実施形態1にかかる光導波路10と略同様の効果を奏する。なお、本実施形態にかかる光導波路は、後述する実施形態3にかかるフィルム光導波路20と同様、基板1を除去し、屈曲性を有するフィルム光導波路としてもよい。この場合には、フィルム光導波路20と略同様の効果を奏する。
なお、上記の説明では、マスク61としてレジストを用いたが、これに限らず、例えばメタルなどからなるマスクを用いてもよい。
また、上記の説明では、作製パラメータ(ガス流量、チャンバ圧力、プラズマ出力等)を制御することで、コア4の断面における両側面の形状をコントロールしているが、コア4の断面形状を制御する方法はこれに限るものではない。例えば、上記の方法に代えて、あるいは上記の方法に加えて、マスク61の形状を変更することにより、コア63の断面における上面の形状が内側に凹んだ形状としてもよい。
図4(a)および図4(b)は、このような場合の製造工程を示す断面図である。これらの図に示す例では、図3(a)に示したマスク61に代えて、中央部が凹んだ形状のマスク61aを用いている。なお、マスクの形状が異なる以外は、上記した方法と同様の方法で光導波路を形成すればよい。
このようなマスク61aによってコア4を形成する位置を覆い、マスク61a上から、反応性イオンエッチング(RIE)によってコア層4bの露出領域およびマスク61aの下部の一部を除去することにより、断面における両側面および上面が内側に凹んだコア4を作製する。
その後、マスク61aを除去してコア4を露出させる。そして、コア4及び下クラッド2上に紫外線硬化樹脂(クラッド材)を堆積させ、それを硬化させて上クラッドを形成する。これにより、下クラッド2と上クラッドとの間にコア4が埋め込まれた光導波路を形成できる。また、この場合、コア4の上面が内側に凹んだ形状をしているので、コア4−上クラッド間の界面における剪断力の作用する方向が界面の微小領域において異なり、界面全体にかかる剪断力が分散,低減され、この界面における剥離を防止することができる。
また、上記の説明では、反応性イオンエッチング(RIE)を用いてコア4を形成しているが、これに限らず、他の半導体プロセスを用いて形成してもよい。例えば、エキシマレーザを用いてコア4を形成することもできる。図5は、この場合の製造工程を示す断面図である。
まず、基板1上に紫外線硬化樹脂(クラッド材)を堆積させ、それを硬化させることにより下クラッド2を形成する。
次に、図5に示すように、下クラッド2に、形成するコア4の形状に応じて中央部に開口部が設けられたマスク61bを介してエキシマレーザを照射し、下クラッド2にコア溝(溝部)2bを形成する。なお、この際、エキシマレーザのエネルギー密度を変化させることで、コア溝2bの加工形状を変更させることができ、やや直線的ではあるが、断面が楔形形状を有するコア溝2bを作製することができる。
次に、下クラッド2よりも屈折率の大きな紫外線硬化樹脂(コア樹脂)をコア溝2bに注入し、ガラス板などで押圧して紫外線硬化樹脂をコア溝2b内に充填させ、紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させることにより、コア4を形成する。
そして、上記のガラス板などを剥離させた後、スピンコータにかけて下クラッド2の上のコア4を薄く延ばす。その後、コア4よりも屈折率の小さい、上クラッド3となる樹脂を塗布して露光すれば、光導波路が完成する。
このように形成した光導波路は、断面が楔形形状を有するコア溝2aと略同形状のコア4を有するので、実施形態1にかかる光導波路10と略同様の効果を奏する。なお、このように形成した光導波路において、基板1を除去し、屈曲性を有するフィルム光導波路としてもよい。この場合、後述する実施形態3にかかるフィルム光導波路20と略同様の効果を奏する。
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1と同様の機能を有する部材については同じ符号を用い、その説明を省略する。
本実施形態にかかるフィルム光導波路(光導波路)20は、実施形態1にかかる光導波路10において、上下クラッド2,3の厚みを薄く作製し、さらに、基板(ガラス基板)1を取り去ることで、総厚が300μmの、屈曲性を有するフィルム導波路(フィルム光導波路)20としたものである。すなわち、フィルム光導波路20は、屈曲させて使用したり、軸などに巻きつけて使用したり、ねじれを許容するように設置したりすることが可能なように、総厚300μmの、柔軟性を有する樹脂層の積層体で構成されている。
フィルム光導波路20において、実施形態1と同様のコア4を形成することにより、屈曲して使用する場合やねじって使用する場合であっても、伸縮等による剪断力に対する許容量が増加し、剥離が生じにくくなる。
なお、フィルム光導波路20は、実施形態1で説明した光導波路10と同様に用いることができる。つまり、複数の通信機器をつなぐ光ファイバ、プリント基板同士をつなぐ光インターコネクション、複数の回路間を光でつなぐ光回路基板、回路内において光を用いた情報伝達を行う光集積回路などに適用できる。
また、実施形態1で説明した光導波路モジュール90において、光導波路10に代えてフィルム光導波路20を備えてもよい。つまり、フィルム光導波路20を投光素子および/または受光素子と光学的に結合させてフィルム光導波路モジュールを構成してもよい。
また、このように、屈曲時の剥離に対する強度が向上したフィルム光導波路20には、例えば以下のような応用例がある。
まず、第一の応用例として、折り畳み式携帯電話,折り畳み式PHS(Personal Handyphone System),折り畳み式PDA(Personal Digital Assistant),折り畳み式ノートパソコン等の折り畳み式の電子機器(情報処理装置、光伝送装置)におけるヒンジ部に用いることができる。
図6(a)〜図6(c)は、フィルム光導波路20を折り畳み式携帯電話40に適用した例を示している。すなわち、図6(a)はフィルム光導波路20を内蔵した折り畳み式携帯電話40の外観を示す斜視図である。
図6(b)は、図6(a)に示した折り畳み式携帯電話40における、フィルム光導波路20が適用されている部分のブロック図である。この図に示すように、折り畳み式携帯電話40における本体40a側に設けられた制御部41と、本体の一端にヒンジ部を軸として回転可能に備えられる蓋(駆動部)40b側に設けられた外部メモリ42,カメラ部(デジタルカメラ)43,表示部(液晶ディスプレイ表示)44とが、それぞれフィルム光導波路20によって接続されている。
図6(c)は、図6(a)におけるヒンジ部(破線で囲んだ部分)の透視平面図である。この図に示すように、フィルム光導波路20は、ヒンジ部における支持棒に巻きつけて屈曲させることによって、本体側に設けられた制御部と、蓋側に設けられた外部メモリ42,カメラ部43,表示部44とをそれぞれ接続している。
フィルム光導波路20を、これらの折り畳み式電子機器に適用することにより、限られた空間で高速、大容量の通信を実現できる。したがって、例えば、折り畳み式液晶表示装置などの、高速、大容量のデータ通信が必要であって、小型化が求められる機器に特に好適である。
また、近年の携帯電話の中には、例えば図14に示すように、本体40aと蓋部40bとを、互いの隣接方向を軸として回転可能としたものもある。また、例えば、図6(a)に示した携帯電話において、蓋40bを上記した回転方向(開閉方向)に対して直交する方向にも回転可能にした携帯電話など、2軸回転型の構造を有するものが普及している。図15はこのような2軸回転型の構造を有する電子機器に備えられる光導波路20の一構成例を示す平面図である。
図14および図15に示すように、駆動部を有する電子機器に用いられるフィルム光導波路20は、駆動部の回転方向(あるいは移動方向)によっては、そのフィルム光導波路20の延在方光を軸としてねじれが生じる場合がある。
ここで、配線のスペース(フィルム光導波路20の設置スペース)を考えると、ねじれ部分の長さを短くすることが好ましい。例えば、図15に示したように、フィルム光導波路20の幅(上下クラッド層2,3の積層方向に垂直な方向の幅)をW、ねじれ部分の長さをH(H=α・W)とすると、αをできるだけ小さくすることが好ましい。
ところが、ねじれ部分の長さを短くしすぎると、フィルム光導波路20の形状が歪むことで伝送特性が劣化してしまう。具体的には、αの値が1未満になると、フィルム光導波路20の伝送特性が劣化する。したがって、伝送特性を劣化させずにフィルム光導波路20の設置スペースを削減するためには、αの値を1以上、かつ1にできるだけ近い値にすることが好ましい。典型的には、1以上1.5以下であることが好ましい。
一方、上記ようなねじれが生じると、フィルム光導波路20と基板との接合部(例えばフィルム光導波路20に設けられた光コネクタ21,22と、基板側の設けられた光コネクタ23,24との間)に、ねじれの反発力によって引張力が作用し(図15参照)、接続不良を生じさせるおそれがある。このような、接合部に作用する引張力による接続不良を防止するためには0.5kgf以下に抑える必要がある。
ここで、フィルム光導波路20のねじれによって生じる引張力の大きさは、上記したねじれ部分の長さHとフィルム光導波路20の幅Wとの比であるα(α=H/W)と、フィルム光導波路20の弾性率とに依存する。図16は、αの値と、接合部に作用する引張力を0.5kgf以下とするための弾性率との関係を示すグラフである。
この図に示すように、αを1以上1.5以下にするとともに、接合部に作用する引張力を0.5kgf以下とするためには、弾性率を20MPa以上250MPa以下となるようにすればよい。これにより、接続不良を防止するとともに、フィルム光導波路20の設置スペースを小さくできる。
なお、従来の「ねじれ構造」を有する電子機器では、捩回性の問題から、複数本の極細同軸ケーブルを縒り束ねた配線を用いていた。つまり、捻っている状態が一番細く、ねじっていない場合に細くなっていた部分が緩む(余長が発生する)ことによってねじれ構造を実現していた。ところが、このような構成では、ヒンジ部の径が太くなってしまうという問題があった。また、このような構成では、ねじれ動作(あるいは屈曲動作)によって配線が筐体に接触し、磨耗によって伝送特性(高周波特性、EMI特性)が劣化するという問題があった。
これに対して、フィルム光導波路20は、配線単体でねじることができる。つまり、図15に示したA−A’断面の断面図およびB−B’断面の断面図のように、ヒンジ部を構成する円筒の内部にフィルム光導波路20を設置する場合、ヒンジ部の内径を、配線幅Wのみによって決めることができる。したがって、従来のような余長部分は不要となるので、ヒンジ構造を小型化し、ヒンジ構造の設置スペースを削減できる。
また、フィルム光導波路20では、配線の外層が、光の伝搬に直接関与しないクラッド層となっている。このため、配線の磨耗が生じたとしても、その磨耗の伝送特性への影響を、従来の極細同軸ケーブルを用いる場合よりも大幅に低減できる。
また、フィルム光導波路20の弾性率を上記した条件に設定することにより、例えば、ねじった状態を定常状態として設置する場合でも、両端の接続部に生じる引張力によって接続不良が生じることを防止できる。したがって、接続部に生じる引張力を低減するための保持構造などを設ける必要がなくなる。
第2の応用例として、フィルム光導波路20は、印刷装置におけるプリンタヘッドやハードディスク記録再生装置における読み取り部など、駆動部を有する装置(光伝送装置)に適用できる。
図7(a)〜図7(c)は、フィルム光導波路20を印刷装置50に適用した例を示している。図7(a)は、印刷装置50の外観を示す斜視図である。この図に示すように、印刷装置50は、用紙52の幅方向に移動しながら用紙52に対して印刷を行うプリンタヘッド51を備えており、このプリンタヘッド51にフィルム光導波路20の一端が接続されている。
図7(b)は、印刷装置50における、フィルム光導波路20が適用されている部分のブロック図である。この図に示すように、フィルム光導波路20の一端部はプリンタヘッド51に接続されており、他端部は印刷装置50における本体側基板に接続されている。なお、この本体側基板には、印刷装置50の各部の動作を制御する制御手段などが備えられる。
図7(c)および図7(d)は、印刷装置50においてプリンタヘッド51が移動(駆動)した場合の、フィルム光導波路20の湾曲状態を示す斜視図である。この図に示すように、フィルム光導波路20をプリンタヘッド51のような駆動部に適用する場合、プリンタヘッド51の駆動によってフィルム光導波路20の湾曲状態が変化するとともに、フィルム光導波路20の各位置が繰り返し湾曲され、コア4と各クラッドとの間に剪断力が繰り返し作用する。
したがって、これらの駆動部にフィルム光導波路を接続する場合には、特に耐剪断力に優れたフィルム光導波路を用いる必要があり、本実施形態にかかるフィルム光導波路20は、これらの駆動部に好適である。また、フィルム光導波路20をこれらの駆動部に適用することにより、駆動部を用いた高速、大容量通信を実現できる。
図8は、フィルム光導波路20をハードディスク記録再生装置(光伝送装置)60に適用した例を示している。
この図に示すように、ハードディスク記録再生装置60は、ディスク(ハードディスク)61、ヘッド(読み取り、書き込み用ヘッド)62、基板導入部63、駆動部(駆動モータ)64、フィルム光導波路20を備えている。
駆動部64は、ヘッド62をディスク61の半径方向に沿って駆動させるものである。ヘッド62は、ディスク61上に記録された情報を読み取り、また、ディスク61上に情報を書き込むものである。なお、ヘッド62は、フィルム光導波路20を介して基板導入部63に接続されており、ディスク61から読み取った情報を光信号として基板導入部63に伝搬させ、また、基板導入部63から伝搬された、ディスク61に書き込む情報の光信号を受け取る。
このように、フィルム光導波路20をハードディスク記録再生装置60におけるヘッド62のような駆動部に適用することにより、光導波路に生じる剥離を防止するとともに、高速、大容量通信を実現できる。
なお、フィルム光導波路20の総厚は特に限定されるものではないが、必要な光学的特性を実現できる範囲内で、より薄いことが好まく、例えば300μm以下であることが好ましい。総厚が300μm以下であれば、屈曲させて使用したり、軸などに巻きつけて使用するのに好適である。また、フィルム光導波路20の設置スペースを低減し、フィルム光導波路20が備えられる機器の小型化を図るのにも好適である。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、光を用いた通信やエネルギー伝送に用いる光導波路全般に適用できる。また、屈曲性に優れたフィルム光導波路に適用することもできる。この場合、特に、折り畳み式携帯電話,折り畳み式PHS(Personal Handyphone System),折り畳み式PDA(Personal Digital Assistant),折り畳み式ノートパソコン等の折り畳み式の装置におけるヒンジ部、あるいは、印刷装置におけるプリンタヘッドやハードディスクにおける読み取り部など、駆動部を有する装置に好適に適用できる。また、折り畳み式の液晶表示装置など、大容量のデータを高速で伝送する必要がある装置に特に好適である。

Claims (15)

  1. 光を閉じ込めて伝搬させるためのコアと、上記コアを抱持する溝部を有するクラッド層とを備えた光導波路であって、
    上記コアは、上記コア内を伝搬する光の光軸方向に垂直な断面における、上記溝部の側面または底面と接する部分の少なくとも一部が、当該断面の中心側に凹むように湾曲した形状であることを特徴とする光導波路。
  2. 上記コアは、上記断面における、上記溝部の側面と接する部分の少なくとも一部が当該断面の中心側に凹むように湾曲した形状であることを特徴とする請求項1に記載の光導波路。
  3. 上記コアは、上記断面における、上記溝部の底面と接する部分の少なくとも一部が当該断面の中心側に凹むように湾曲した形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の光導波路。
  4. 上記クラッド層および上記コアを覆うように形成された第2クラッド層を備え、
    上記コアは、上記断面における、上記第2クラッド層と接する部分の少なくとも一部が当該コアの中心側に凹むように湾曲した形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光導波路。
  5. 上記光導波路は、総厚が300μm以下の樹脂層からなることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の光導波路。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の光導波路と、電気信号を光に変換して出射する投光素子とが、
    上記投光素子から出射した光が上記光導波路のコアに入射するように備えられてなる光導波路モジュール。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の光導波路と、受光した光を電気信号に変換する受光素子とが、
    上記光導波路によって伝搬された光が上記受光素子に入射するように備えられてなる光導波路モジュール。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の光導波路と、電気信号を光に変換して出射する投光素子と、受光した光を電気信号に変換する受光素子とが、
    上記投光素子から出射した光が上記光導波路のコアに入射し、この入射した光がコアを介して伝搬して上記受光素子に入射するように備えられてなる光導波路モジュール。
  9. 本体と、上記本体に対して相対的に移動または回転する駆動部とを備え、
    請求項に記載の光導波路を用いて、上記本体と上記駆動部との間で光信号を伝送することを特徴とする光伝送装置。
  10. 光を閉じ込めて伝搬させるためのコアと、上記コアを抱持する溝部を有するクラッド層とを備えた光導波路の製造方法であって、
    第1の樹脂からなる上記クラッド層の表面に上記溝部を形成する工程と、
    上記溝部に第2の樹脂を充填する工程と、
    上記クラッド層に押圧力を加えることによって上記溝部の形状を変形させ、上記溝部の形状の変形に合わせて上記第2の樹脂を変形させながら、当該第2の樹脂を硬化させることによって、上記コアを形成する工程とを含むことを特徴とする光導波路の製造方法。
  11. 上記溝部の形成工程において、上記第1の樹脂からなる樹脂層に、上記溝部の反転パターンを有するスタンパを圧接させながら、当該樹脂層を硬化させることによって、上記クラッド層を形成することを特徴とする請求項10に記載の光導波路の製造方法。
  12. 光を閉じ込めて伝搬させるためのコアと、上記コアを抱持する溝部を有するクラッド層とを備えた光導波路の製造方法であって、
    上記クラッド層に、上記溝部を、当該溝部の側面または底面の少なくとも一部が当該溝部の断面の中心側に突出するように湾曲させて形成する工程と、
    上記溝部に第2の樹脂を充填して硬化させることにより、上記コアを形成する工程とを含むことを特徴とする光導波路の製造方法。
  13. 上記溝部の形成工程において、開口部を有する遮蔽物を介してエネルギービームを照射することにより、上記溝部を形成することを特徴とする請求項12に記載の光導波路の製造方法。
  14. 光を閉じ込めて伝搬させるためのコアと、上記コアを抱持するクラッド層とを備えた光導波路の製造方法であって、
    第1クラッド層上に、第2の樹脂を堆積させてコア層を形成する工程と、
    上記コア層にエッチングを施すことにより、上記コア内を伝搬する光の光軸方向に垂直な断面の輪郭における少なくとも一部が、当該断面の中心側に凹むように湾曲した形状のコアを形成する工程と、
    上記コアおよび上記第1クラッド層を覆うように、第2クラッド層を形成する工程とを含むことを特徴とする光導波路の製造方法。
  15. 上記コアの形成工程において、遮蔽物を介して反応性イオンエッチングを施すことにより、上記コアを形成することを特徴とする請求項14に記載の光導波路の製造方法。
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