JP3984798B2 - 建築用合成部材 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、スチールハウス等の小規模建築物における床板支持用梁材などに用いられる建築用合成部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、住宅用構造物として、耐力耐震構造を有するスチールハウスが注目されている。そして、このようなスチールハウスを構築する骨組み構造体、例えば、床下地を構成する床板支持用梁材としては、通常、木材よりも軽量で、反りや捩じれ等に対して耐久性に優れた鋼材からなる溝形鋼が好適に用いられている。
【0003】
従来、この種のスチールハウスなどに用いられる梁材では、図8(a)に示すような溝形鋼aや、大きな耐力や剛性が要求される部位では、図8(b)に示すような一対の溝形鋼aのウエブ部b同士を背中合わせに組合せて、ウエブ部bと上下両フランジ部c,dとがI型の断面形態を有するようにドリルネジeなどにて互いに接合してなる組立材が用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記した従来の梁材にあっては、溝形鋼aのウエブ部bの厚さと高さとの比(高さ/厚さ)が大きくなることから、部材の耐力がウエブ部の剪断座屈により決定されて設計される場合が多いため、許容スパンが小さく、溝形鋼断面の性能を十分に活かしきれない状況が起きている。しかも、薄板鋼材の板厚が約1mm程度の溝形鋼aからなるが故に、荷重の載荷点や支点部での大きな圧縮力の作用に伴って、図8(a),(b)にそれぞれ点線で示すようなウエブ部bの局部破壊(クリップリング)が生じやすいといった問題もある。加えて、ウエブ部が薄いため、この部分から振動や異音などが発生し易いという問題もあった。
【0005】
本発明は、前記した事情に鑑みてなされたもので、高剛性かつ高耐力で、振動や異音などの発生防止に効果的な建築用合成部材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するための第1の発明は、建築用合成部材であって、形鋼からなる一対のフランジ部と、該両フランジ部間に配置されて互いに接合される非金属系ボードからなるウエブ部とを有することを特徴としたことにある。
【0007】
この場合、両フランジ部とウエブ部とは、略I型形状、溝形あるいはZ型形状の断面形態に形成される。
【0008】
第2の発明は、前記した第1の発明において、前記両フランジ部に前記ウエブ部の両端部が嵌合保持される嵌合凹部を形成してなることを特徴とした点である。
【0009】
第3の発明は、前記した第2の発明において、前記両フランジ部に形成される嵌合凹部は、前記ウエブ部の両端部が圧嵌状態で弾性的に嵌合保持される形態を有することを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、前記した第1乃至第3の発明において、前記両フランジ部とウエブ部とを接着剤にて接合してなることを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、前記した第1乃至第4の発明において、前記両フランジ部とウエブ部とをねじや釘等のメカニカルな接合材を用いて接合してなることを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、前記した第5の発明において、前記ウエブ部の両端部の接合部位に相当する前記両フランジ部のフランジ面を部分的に凹み形成してなることを特徴とする。
【0013】
第7の発明は、前記した第1乃至第6の発明において、前記非金属系ボードからなるウエブ部に、構造用合板、構造用パネル、ミディアムデンシティファイバーボード、パーティクルボードあるいはプラスチックを用いてなることを特徴とする。
【0014】
第8の発明は、前記した第1の発明のフランジ部に適用される形鋼であって、ウエブ部との接合を容易にするために、ウエブ部との接合位置に凹部を設けることを特徴とする点にある。
【0015】
【作用】
本発明に係る建築用合成部材は、曲げモーメントに対する抵抗要素としての両フランジ部を形鋼にて形成する一方、剪断力に対する抵抗要素としてのウエブ部を高剛性で局部変形に対する高い抵抗性を有する非金属系ボードにて構成してなるため、従前のように、ウエブ部の剪断座屈により耐力が決定されることがなくなり、許容スパンの増大化を図ることが可能になる。しかも、ウエブ部が高剛性化されるため、従前のようなウエブ部の局部破壊(クリップリング)が抑制されとともに、振動や異音などがウエブ部から発生し難く、遮音性能にも優れるという特徴もある。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図1〜図7に示す図面を参照して詳細に説明する。図1及び図2は、本発明に係る建築用合成部材、例えば、スチールハウスの骨組み構造体として用いられる床板支持用梁材の第1の実施形態を示す。
【0017】
図1に示すように、梁材1は、形鋼の中でも最も典型的な溝形鋼21からなる上下一対のフランジ部2と、これら上下両フランジ部2間に配置されて接合される高剛性の非金属系ボード31からなるウエブ部3とで略I型形状の断面形態に組み立てられている。
【0018】
この場合、梁材1の上下両フランジ部2を形成する溝形鋼21としては、厚さが0.5〜3.2mm、好ましくは、1.2〜1.6mmの薄板鋼材からなる。一方、梁材1のウエブ部3を形成する非金属系ボード31としては、例えば、厚さ9mm程度のJAS規格で規定された構造用合板、OSB/JAS規格で規定された構造用パネル、JIS−A5905で規定されたミディアムデンシティファイバーボード(MDF:中質繊維板)、JIS−A5908で規定されたパーティクルボードあるいはプラスチックなどが好適に用いられる。
【0019】
図2は、梁材1のフランジ部2とウエブ部3との接合状態を示す。すなわち、溝形鋼21と非金属系ボード31の端部31aとを接合するには、図2(a)に示すように、例えば、木工用接着剤4にて単に突合せ接合するか、あるいは、図2(b)に示すように、ドリルねじや釘等の接合材5の打込みによるメカニカルな接合にて行われる。また、このようなドリルねじや釘等の接合材5による場合には、フランジ部2のフランジ面2aを形成する溝形鋼21に凹み22を、非金属系ボード31の端部31aの接合部位に相当する部位に設け、この凹み22によって接合材5の頭部5aの突出を避けるようにすることが好ましい。
【0020】
図3及び図4(a)〜(c)は、梁材の第2の実施形態を示す。この梁材1は、上下両フランジ部2を形成する溝形鋼21に嵌合凹部23をフランジ面2aと面一に設け、この嵌合凹部23にウエブ部3を形成する非金属系ボード31の端部31aを嵌合させてなる構成を有する。そして、溝形鋼21と非金属系ボード31の端部31aとの接合は、図4(a)に示すように、例えば、木工用の接着剤4を介して接合するか、あるいは、図4(b)に示すように、ドリルねじや釘等の接合材5の打込みによるメカニカルな接合にて行われる。このドリルねじや釘等の接合材5による接合の場合には、前記した第1の実施形態と同様に、溝形鋼21に形成される嵌合凹部23をフランジ部2のフランジ面2aから凹ませることにより、接合材5の頭部5aの突出を避けるようにすることが好ましい。
【0021】
また、接着剤4による接合の場合には、図4(c)に示すように、溝形鋼21に形成される嵌合凹部23の間口幅W1を非金属系ボード31の厚さW0と同等か狭くし(W1≦W0)、その奥行幅W2を非金属系ボード31の端部31aの厚さW0よりも広くする(W0<W2)ことにより、嵌合凹部23に非金属系ボード31の端部31aが圧嵌状態で弾性的に嵌合保持されるようにすることが好ましい。これにより、梁材1の上下両フランジ部2とウエブ部3との組立段階における非金属系ボード31の保持が容易になり、施工効率を大幅に向上させることが可能になる。
【0022】
図5は、梁材の第3の実施形態を示す。この梁材1は、上下両フランジ部2とウエブ部3とを溝形の断面形態に接合してなる構成を有する。
【0023】
図6は、梁材の第4の実施形態を示す。この梁材1は、上下両フランジ部2とウエブ部3とをZ型形状の断面形態に接合してなる構成を有する。
【0024】
そして、これら第3、第4の実施形態では、上下両フランジ部2とウエブ部3とが、前記した第2の実施形態と同様な接合形態を有し、接着剤4による接合の場合には、図7に示すように、嵌合凹部23の間口幅W1を非金属系ボード31の端部31aの厚さW0よりも狭くし(W1<W0)、その奥行幅W2を非金属系ボード31の端部31aの厚さW0よりも広く(W0<W2)することによって、嵌合凹部23に非金属系ボード31の端部31aが圧嵌状態で弾性的に嵌合保持されるように構成されている。
【0025】
なお、前記した本発明に係る建築用合成部材の各実施形態において、例えば、スチールハウスの骨組み構造体として用いられる床板支持用梁材を例にして説明したが、他の建築用骨組み構造体として用いることも可能である。その他、本発明は、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更実施可能なことは云うまでもない。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る建築用合成部材によれば、曲げモーメントに対する抵抗要素としての両フランジ部を薄板溝形にて形成する一方、剪断力に対する抵抗要素としてのウエブ部を高剛性の非金属系ボードにて形成してなるため、従前のように、ウエブ部の剪断座屈により耐力が決定されることがなくなり、許容スパンの増大化を図ることができる。しかも、ウエブ部が高剛性化されるため、従前のようなウエブ部の局部破壊(クリップリング)が抑制され、振動や異音などの遮音性能にも優れるとともに、全体の曲げ剛性も増大する。
【0027】
そして、このような建築用合成部材を、例えば、住宅用構造物として構築されるスチールハウスの骨組み構造体として用いることにより、低コスト化と居住性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る建築用合成部材の第1の実施形態を概略的に示す断面図である。
【図2】同じくフランジ部とウエブ部との接合形態を示し、図2(a)は接着剤による接合形態の説明図、図2(b)は、ねじや釘等の接合材による接合形態の説明図である。
【図3】本発明に係る建築用合成部材の第2の実施形態を概略的に示す断面図である。
【図4】同じくフランジ部とウエブ部との嵌合よる接合形態を示し、図4(a)は接着剤による接合形態の説明図、図4(b)は、ねじや釘等の接合材による接合形態の説明図、図4(c)は圧嵌状態での弾性保持による接合形態の説明図である。
【図5】本発明に係る建築用合成部材の第3の実施形態を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明に係る建築用合成部材の第3の実施形態を概略的に示す断面図である。
【図7】同じくフランジ部とウエブ部との嵌合よる接合形態を示す説明図である。
【図8】従来の床板支持用梁材をそれぞれ示し、図8(a)は溝形鋼の形態を概略的に示す断面図、図8(b)は溝形鋼を背中合わせに接合してなる形態を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 建築用合成部材(梁材)
2 フランジ部
2a フランジ面
21 溝形鋼
22 凹み
23 嵌合凹部
3 ウエブ部
31 非金属系ボード
31a 端部
4 接着剤
5 接合材(ねじ、釘等)
W0 非金属系ボードの厚さ
W1 嵌合凹部の間口幅
W2 嵌合凹部の奥行幅
Claims (8)
- 形鋼からなるフランジ部と、該両フランジ部間に配置されて互いに接合される非金属系ボードからなるウエブ部とを有することを特徴とする建築用合成部材。
- 前記両フランジ部に前記ウエブ部の両端部が嵌合保持される嵌合凹部を形成してなることを特徴とする請求項1に記載の建築用合成部材。
- 前記両フランジ部に形成される嵌合凹部は、前記ウエブ部の両端部が圧嵌状態で弾性的に嵌合保持される形態を有することを特徴とする請求項2に記載の建築用合成部材。
- 前記両フランジ部とウエブ部とを接着剤にて接合してなることを特徴とする請求項1、2または3に記載の建築用合成部材。
- 前記両フランジ部とウエブ部とをねじや釘等のメカニカルな接合材を用いて接合してなることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の建築用合成部材。
- 前記ウエブ部の両端部の接合部位に相当する前記両フランジ部のフランジ面を部分的に凹み形成してなることを特徴とする請求項5に記載の建築用合成部材。
- 前記非金属系ボードからなるウエブ部に、構造用合板、構造用パネル、ミディアムデンシティファイバーボード、パーティクルボードあるいはプラスチックを用いてなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6に記載の建築用合成部材。
- 請求項1に記載される建築用合成部材のフランジ部に適用される形鋼であって、ウエブ部と接合される部分に嵌合用の凹部を有する合成部材用フランジ形鋼。
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