JP3984751B2 - マスタシリンダ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マスタシリンダに関し、クラッチ操作装置やブレーキ操作装置等に使用するのに適したものである。
【0002】
【従来の技術】
図26は従来のマスタシリンダの一例を示す断面図であって特開平10−53120号公報に開示されている。このマスタシリンダ1は、シリンダボディ2に形成したシリンダ穴2aに摺動自在に嵌合するピストン3を有し、該ピストン3とシリンダボディ2により、圧力発生室4と作動液待機室5を区画している。ピストン3には、軸線の延長上に弁機構6と絞り弁機構7とが取付けられている。弁機構6は、ピストン3が圧力発生室4内に設置されたリターンスプリング8により復帰位置に後退するのに応動してロッド9と一体のフランジ10が環状部材11から離れて軸方向孔12を開放し、且つピストン3が復帰位置から前進するのに応動してフランジ10が環状部材11に当接して軸方向孔12を閉鎖する。
【0003】
また、絞り弁機構7は、絞り孔13aを有する浮動部材13を備え、圧力発生室4から軸方向孔12を通ってリザーバへ向かう作動液流れがある時に、該作動液流れに対し絞り効果を発揮する絞り作用位置へ該浮動部材13を移動させ、且つリザーバから軸方向孔12を通って圧力発生室4へ向かう作動液流れがある時に、該作動液流れに対する絞り効果を発揮しない非絞り作用位置へ該浮動部材13を移動させる。
【0004】
そして、弁機構6が開の状態からピストン3が作動し図において左動前進して該弁機構6が閉になり、圧力発生室4と補給通路5との連通が断たれる。その後、さらにピストン3が左動することにより、圧力発生室4に圧力が発生し、出力ポート14から作動液が吐出される。ピストン3が前進を開始してから弁機構6が閉じるまでの間、ピストン3の前進により圧力発生室4の作動液が絞り弁機構7と弁機構6を通って補給通路5へ逃げる。その際の作動液流れにより絞り弁機構7の浮動部材13がケース15の連通孔15aを閉じる。これにより圧力発生室4の作動液は浮動部材13の絞り孔13aを通って補給通路5へ逃げることになり、圧力発生室4から補給通路5へ逃げる作動液の量が、圧力発生室4から補給通路5へ逃げる作動液流れを絞らない場合に比べて低減される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来のマスタシリンダ1では、ピストン3の軸線延長上に絞り弁機構7を設けているため、ピストン3が長くなり、マスタシリンダ1全体が大型化し、構造が複雑で、必要な部品点数が増加するという問題点があった。
【0006】
本発明は上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、マスタシリンダ全体を大型化することなく絞り弁機構の機能を発揮させることができ、構造が簡単で、部品点数を削減することができるマスタシリンダを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、シリンダボディに形成されたシリンダ穴にピストンが摺動自在に配設され、前記ピストンとシリンダボディにより、圧力発生室を区画し、前記圧力発生室と前記リザーバとを連通し作動液を前記圧力発生室へ補充するための液通路を備え、前記ピストンの作動時に前記圧力発生室で昇圧された作動液を出力ポートに吐出するマスタシリンダにおいて、弁体と、該弁体が接離し前記リザーバの前記シリンダボディへの接続部に設けられた弁座とからなる絞り弁機構であって、前記弁体は、前記ピストンの摺動方向に平行に配置された浮動弁体であって、前記ピストンの作動時に、該弁体が前記弁座に当接して閉弁し、前記圧力発生室から前記リザーバへの作動液の流れを絞るための絞り通路と、前記ピストンの戻り時に、前記弁体が作動液の流れと自重とにより降下して前記弁座から離れて開弁し、前記リザーバから前記圧力発生室への作動液の流れを許容するために、該弁体の外周に沿って前記弁座と反対向きに形成された複数のリブで、該リブのそれぞれの間に形成された切欠き状の複数の液通路とを有する前記絞り弁機構を前記液通路に配設することを特徴とする。
また、前記絞り弁機構の開弁時に前記リザーバから前記圧力発生室へ作動液を補充するための液通路を前記シリンダボディに形成してもよい。また、前記弁体の前記絞り通路に代えて、前記液通路に前記浮動弁体と並列的に該絞り通路を設けてもよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態に係るマスタシリンダにつき、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係るマスタシリンダ及びリザーバを示す縦断面図、図2〜図4はその要部の拡大断面図である。このマスタシリンダ19は、シリンダボディ20のシリンダ本体21に形成したシリンダ穴23に挿入され摺動自在なプライマリピストン24及びセカンダリピストン25を有し、該プライマリピストン24とセカンダリピストン25との間にプライマリ圧力発生室26を画成し、セカンダリピストン25の外端側にセカンダリ圧力発生室27を画成している。
【0009】
そして、マスタシリンダ19は、ピストン24の作動時に着座して圧力発生室26からリザーバ17への作動液の流れを絞り、該ピストン24の非作動時に開く浮動弁体38を有する絞り弁機構35,36を設け、該絞り弁機構35,36を作動液補充用の液通路34,34に配置してあり、絞り弁機構35,36には、小孔である絞り通路39を有する浮動弁体38と、該浮動弁体38が接離する弁座40とを備えており、リザーバ17のシリンダボディ20への接続部31,32の先端に弁座40を設けてある。
【0010】
シリンダボディ20は、シリンダ本体21に上向きに突出した筒状の二つの接続受部41,42と、シリンダ穴23の端部を塞ぐ端壁43とを一体に有し、各圧力発生室26,27に対応する出力ポート44,45を備え、シリンダ穴23の開口した一端側にプラグ46が液密的に嵌着されスナップリング47で抜け止めされており、各接続受部41,42にリザーバ17の接続部31,32が嵌入されている。また、シリンダボディ20は、対応する圧力発生室26,27の周壁の内面に開口しリザーバ17の接続部31,32に連通する半径方向に沿った液通路48,49が開けられている。
【0011】
プライマリピストン24及びセカンダリピストン25は、軸線方向に沿ったスリット51,52を有し、シリンダボディ20に直径方向に沿って固設されたピン53,54がそれぞれのスリット51,52を通っており、スリット51,52よりも前方の先端部中心に液通路55,56が開けられている。また、プライマリピストン24及びセカンダリピストン25は、これらの間に配置したリターンスプリング57と、シリンダボディ20の端壁43との間に配置したリターンスプリング58とによって図1において右方向へ付勢されている。
【0012】
各ピストン24,25の先端にはセンタバルブ60が設けられている。このセンタバルブ60は、各ピストン24,25共に同じものなので、一方のみについて説明する。センタバルブ60は、図2に示すように、ピストン25に嵌着された弾性材料からなる環状の弁座部材61と、ロッド62を一体に有するフランジ状弁体63と、ピストン25の先端に固着したリテーナ64とフランジ状弁体63との間に配置した円錐形スプリング65とを備え、円錐形スプリング65がフランジ状弁体63を弁座部材61に着座させる方向に付勢している。フランジ状弁体63は、ロッド62が弁座部材61及び液通路56を通り、該ロッド62の後端がピン54に対し接離する。
【0013】
プライマリ圧力発生室26は、ピストン24の先端の液通路55、シリンダボディ20に形成した液通路48、絞り弁機構35、リザーバ17の接続部31を介してオイルリザーバ17に連通可能である。セカンダリ圧力発生室27は、ピストン25先端の液通路56、シリンダボディ20に形成した液通路49、絞り弁機構36、接続部32を介してリザーバ17に連通可能である。また、両圧力発生室26,27はシリンダ本体21に穿設されたそれぞれ対応する出力ポート44,45を介して図示しない前後輪のホイールシリンダに連通している。
【0014】
絞り弁機構35,36は、図3及び図4に示すように、接続部31,32の先端に形成した弁座40と、各接続受部41,42内に接続部31,32によって画成された弁室37とを備え、該弁室37内に浮動弁体38を収容して構成されている。浮動弁体38は、図5に示すように、中心に小孔である絞り通路39が開けられている円板形弁本体67と、該円板形弁本体67の外周に沿って等角度間隔にて下向きに形成した三つのリブ68とを有し、隣合うリブ68,68の間に切欠き状の液通路69が形成されている。
【0015】
そして、絞り弁機構35は、圧力発生室26からリザーバ17への作動液の流れがある時には、その作動液の流れにより浮動弁体38が浮上して弁座40に当接し、閉弁状態になり、作動液が絞り通路39のみを通じて上方へ流れるように作用する。逆に、リザーバ17から圧力発生室26への作動液の流れがある時には、その作動液の流れと自重とにより浮動弁体38が降下して弁座40から離れ、開弁状態になり、リザーバ17の作動液が浮動弁体38の外周の液通路69を通って下方へ流れるように作用する。他方の絞り弁機構36の作用も同様なので説明を省略する。なお、浮動弁体38は、図6に示すように、上面に弾性に富むシール部材70を貼着し、圧縮ばね71で上向きに小さな付勢力を付与するようにしたものでもよい。
【0016】
本発明の上記第1の実施の形態に係るマスタシリンダの動作をプライマリ側を中心に説明し、これと同じ動作をするセカンダリ側については説明を省略する。図1に示す非作動状態において、ピストン24はスプリング57の付勢力によってスリット51の左端内面及びロッド62の後端がピン53に当接し、センタバルブ60及び絞り弁機構35が開状態である。この状態から、ピストン24が作動し左方向へ前進すると、ピストン24と共に弁座部材61も前進し、センタバルブ60が閉じる。ピストン24が更に前進すると、圧力発生室26の圧力が上昇し、出力ポート44から作動液が送り出される。上記動作において、センタバルブ60が開から閉となるまでの間に、ピストン24の前進により、圧力発生室26の作動液がセンタバルブ60を経て絞り弁機構35の弁室37へ流れる。この時の作動液の流れにより、絞り弁機構35の浮動弁体38が浮上して弁座40に当接する。この当接により、圧力発生室26の作動液が絞り通路39のみを通ってリザーバ17へ戻されるが、この戻りの作動液の量は微量である。
【0017】
ピストン24の作動が解除されると、ピストン24はスプリング57の付勢力によって後退し、ロッド62がピン54に当接した時又は圧力発生室26内の圧力がリザーバ17内圧力より低くなった時、センタバルブ60が開となり、圧力発生室26がリザーバ17に連通する。この時、絞り弁機構35の浮動弁体38が弁座40から離れ、リザーバ17から圧力発生室26へ作動液が小さな抵抗のみで流れて補充される。又、絞り弁機構35は、トラクションコントロール機構等が装着されている車両にて、リザーバ17からマスタシリンダ19を介して、ホイルシリンダに急速に作動液補充が必要な場合も開く。
【0018】
本発明の上記第1の実施の形態に係るマスタシリンダ19によれば、リザーバ17の接続部31,32の先端に弁座40を形成し、シリンダボディ20の接続受部41,42内に円板状の浮動弁体38を設けマスタシリンダ19全体を大型化することなく絞り弁機構35,36の機能を発揮させることができ、構造が簡単で、部品点数を削減することができるという利点がある。
【0019】
図7は上記第1の実施の形態に係る絞り弁機構の第1の変形例の要部を示す部分断面図であり、図3及び図4に示したのと同一部分につき同一符号を付けて重複説明を省略する。この変形例の場合の絞り弁機構35,36は、接続部31,32の先端に形成した弁座40の面に半径方向に沿った半径方向溝を設け、この半径方向溝を絞り通路39とする。この半径方向溝は、弁座40の面に設けるのに代えて、図8に示すように、浮動弁体38に設けた半径方向溝を絞り通路39としてもよい。
【0020】
この変形例では、圧力発生室26,27からリザーバ17への作動液の流れがある時、その流れにより浮動弁体38が弁座40に当接して圧力発生室26,27の作動液は、浮動弁体38の半径方向溝からなる絞り通路39のみを通ってリザーバ17へ流れる。従って、作動開始時、圧力発生室26,27からリザーバ17へ逃げる作動液の量を小さくすることができる。逆に、リザーバ17から圧力発生室26,27への作動液の流れがある時、その流れと自重により浮動弁体38が弁座40から離れ、リザーバ17の作動液は、弁座40と浮動弁体38との隙間、浮動弁体38の外側を通って圧力発生室26,27に流れる。従って、戻り時、リザーバ17の作動液は、抵抗なく圧力発生室26,27へ補充することができる。
【0021】
図9は上記第1の実施の形態に係る絞り弁機構の第2の変形例の要部を示す部分断面図である。この変形例では、浮動弁体38は、中心に上向き突起38aが突設されており、この突起38aの部分を貫通する小孔形の絞り通路39が開けられ、外径の大きい上端部29aが掛止されている引張りばね29の下端部29bに上向き突起38aを圧入してある。引張りばね29は、リザーバ17の接続部31,32内にあり、浮動弁体38を作動液中に浮遊させるためのものであって、これにより浮動弁体38の着座がより確実になる。この場合も、浮動弁体に開けた小孔形の絞り通路39に代えて、図10に示すように、接続部31,32の先端に形成した弁座40の面に半径方向に沿った半径方向溝を設けてこれを絞り通路39としてもよく、図11に示すように、浮動弁体38に設けた半径方向溝を絞り通路39としてもよい。第2の変形例の動作については、第1の変形例とほぼ同じである。
【0022】
図12は上記第1の実施の形態に係る絞り弁機構の第3の変形例の要部を示す部分断面図である。この変形例では、接続部31,32内に、弁座40が形成され浮動弁体38が浮沈自在に配置されている。浮動弁体38は、短円柱形をしており、中心に小孔形の絞り通路39が開けられ、母線に沿って続く切欠形の液通路69が外周面にあって、接続部31,32内を弁室37としてその上端に形成した弁座40に対し接離自在に浮動する。接続部31,32内の下端には脱落防止部材30が固着されている。この第3の変形例の場合も、小孔形の絞り通路39に代えて、図13に示すように、接続部31,32の弁室37内に下向きに突設した環状弁座40に切欠きを設け、この切欠きを絞り通路39としてもよく、図14及び図15に示すように、浮動弁体38の中心に上向き突起38aを設け、この上向き突起38aに設けた直径方向溝を絞り通路39としてもよい。第3の変形例の動作については、第1の変形例とほぼ同じである。
【0023】
図16は本発明の第2の実施の形態に係るマスタシリンダを示す縦断面図である。このマスタシリンダ19のシリンダボディ20は、シリンダ本体21と、これに組付けたキャップ22とからなっており、シリンダ本体21に二つの接続受部41,42があり、キャップ22の周壁には傾斜した連通孔22aが開けられている。シリンダ本体21内にピストンガイド73及びフランジ付きスリーブ74が嵌着され、キャップ22内にスリーブ75が嵌着されている。
【0024】
このマスタシリンダ19は、スリーブ75にプライマリピストン24が摺動自在に、ピストンガイド73及びフランジ付きスリーブ74にセカンダリピストン25が摺動自在に嵌合し、これらの両ピストン24,25によってプライマリ圧力発生室26とセカンダリ圧力発生室27が画成されている。この場合の絞り弁機構36は、絞り通路のない浮動弁体38を備え、接続受部42に螺着したコネクタ76の半径方向に沿って小孔形の絞り通路39が開けられており、該コネクタ76に前述の接続部31,32の場合と同様の弁座40が形成されている。
【0025】
プライマリピストン24及びセカンダリピストン25は、有底の円筒状をなしており、それらの周壁には、小孔24a,25aが穿設されている。また、両ピストン24,25は、これらの間に配置したリターンスプリング57及びシリンダ本体21の端壁43との間に配置したリターンスプリング58によって図において右方向へ付勢されている。
【0026】
プライマリ圧力発生室26は、プライマリピストン24に開けた小孔24a、キャップ22に開けた連通孔22a、シリンダ本体21の液通路48を経て一方の接続受部41に連通可能である。セカンダリ圧力発生室27は、セカンダリピストン25に開けた小孔25a、ピストンガイド73に開けた液通路73a、シリンダ本体21の液通路49を経て他方の接続受部42に連通可能である。また、両圧力発生室26,27は、シリンダ本体21に穿設された出力ポート44,45を介して図示しない前後輪のホイールシリンダに連通可能である。第2の実施の形態に係るマスタシリンダ19の場合、浮動弁体38が閉の時に、セカンダリ圧力発生室27の作動液がコネクタ76の絞り通路39を通じてリザーバ17に戻される。
【0027】
図17は本発明の第3の実施の形態に係るマスタシリンダを示す縦断面図であって、図16と同一の部分に同一の符号を付けてある。このマスタシリンダ19は、セカンダリピストン25の外周に環状のピストンガイド73及びシール部材80を配置し、該ピストンガイド73とシール部材80の間にリテーナ部材81を設けてある。
【0028】
また、マスタシリンダ19は、セカンダリピストン25の外側でピストンガイド73とシール部材80の間にはリザーバ17に連通可能な環状室82を設け、該環状室82内でセカンダリピストン25の外周に液密的に摺動可能であって絞り通路39を有する環状の浮動弁体83をリテーナ部材81の内側に配置し、該リテーナ部材81の内側にシート部材84を固定して構成されている。
【0029】
上記第3の実施の形態に係るマスタシリンダの動作について説明する。セカンダリ圧力発生室27からリザーバ17への作動液の流れがある場合、その流れによって浮動弁体83がシート部材84のシート面85に当接し、リザーバ17への作動液の流れは、浮動弁体83の絞り通路39のみを通って行われる。従って、作動開始時に、セカンダリ圧力発生室27の作動液がリザーバ17へ逃げる量は少ない。
【0030】
逆に、リザーバ17からセカンダリ圧力発生室27への作動液の流れがある場合、その流れによって、浮動弁体83は、シート部材84のシート面85から離れ、リテーナ部材81の端板部の円周方向の複数箇所に突設したストッパ部81aに当接する。この当接により、リザーバ17からの作動液は、浮動弁体83とシート部材84の隙間、浮動弁体83の外側、浮動弁体83とリテーナ部材81の隙間、ピストン25の小孔25aを通ってセカンダリ圧力発生室27に供給される。従って、戻り時、リザーバ17から作動液が抵抗なくセカンダリ圧力発生室27に供給される。
【0031】
図18は本発明の第4の実施の形態に係るマスタシリンダを示す縦断面図である。このマスタシリンダ19は、ピストン25の外周に環状のピストンガイド73を配置し、該ピストンガイド73内に作動液補充用の液通路を形成し、該液通路内の絞り弁機構36にはボール形の浮動弁体87を備えたボール弁86を採用し、該ボール弁86の前後の作動液補充用の液通路をつないでバイパスさせる絞り通路39をピストンガイド73の周壁に半径方向に沿って形成し設けてある。
【0032】
ピストンガイド73は、作動液補充用の液通路として2箇所の半径方向通路90,91とこれらに直交して続く直交通路92とを備え、外周の一部には接続部32に連通する隙間を形成し、作動液補充用の液通路34中の作動液の流れと自重によって開閉を行うボール弁86が配置されており、ボール弁86に対し並列的に外周の隙間と直交通路92とを連通させる絞り通路39が周壁に開けられている。
【0033】
ボール弁86は、直交通路92内に配置したボール形の浮動弁体87と、直交通路92中にあって該浮動弁体87が接離する弁座93と、該弁座93に続き浮動弁体87が着座時に昇る方向に傾斜した傾斜面94と、非作動時に浮動弁体87が弁座93から離れて待機する待機座95と、浮動弁体87が弁座93から離れて待機する位置を規制するストッパ96とを備えている。待機座95の位置における直交通路92は、浮動弁体87がリザーバ17側へ流出しないように寸法設定されている。絞り弁機構36は、単数に限らずピストンガイド73の周方向の複数箇所に設けてもよく、ピストンガイド73の周壁に半径方向に沿って形成した絞り通路39に代えて、直交通路92に沿った溝又は孔を設けてもよい。
【0034】
このマスタシリンダ19の動作は、非作動時に、ボール形の浮動弁体87は待機座95に位置しており、セカンダリ圧力発生室27はピストン25の小孔25a、ピストンガイド73内の作動液補充用の液通路及びその外周の隙間等、接続受部42、コネクタ76及び管路97を経て図示しないリザーバ17に連通している。セカンダリ圧力発生室27からリザーバ17への流れがある時には、その流れによって浮動弁体87は傾斜面94を登って着座し、直交通路92の流れが遮断される。従って、セカンダリ圧力発生室27の作動液は、絞り通路39のみを通ってリザーバ17に送られるので、作動開始の際にピストン25が前進する時の圧力発生室27からリザーバ17へ逃げる作動液の量は少ない。
【0035】
逆に、リザーバ17から圧力発生室27への流れがある時には、その流れと浮動弁体87の自重により、浮動弁体87は、ストッパ96に当接した位置にある。従って、作動液は、ピストンガイド73内の作動液補充用液通路を通って圧力発生室27へ供給される。
【0036】
図19は本発明の第5の実施の形態に係るマスタシリンダの絞り弁機構を示す縦断面図であって、セカンダリピストンのみを示し、プライマリピストンの絞り弁機構はこれと同様なので省略する。このマスタシリンダは、有底円筒形のピストン24の周壁に開けた孔形の液通路24aの位置に絞り弁機構35を設け、該絞り弁機構35には、ピストン24の周壁に開けた液通路24aに対し該周壁の内面側で接離し小孔形の絞り通路39を有する絞り弁部101と、ピストン24の内面に嵌合し絞り弁部101を支える支持部102とを備えている絞り弁部材100が設けられている。
【0037】
ピストン24は、周壁の4箇所に等角度間隔にて液通路24aとなる孔が開けられ、この液通路24aの内面側周囲が弁座40になっており、端壁99の中心に形成された円錐台形突起99aと、周壁と端壁99との境界部分に形成された位置決め用の台形突起99bとを備えている。そして、ピストン24は、内部に、絞り弁部材100及びこれの支持部102に当接する固定リテーナ104が挿入されている。固定リテーナ104にはピン105が連結され、該ピン105の頭部105aで抜け止めされた可動リテーナ106のフランジ106aと固定リテーナ104との間にリターンスプリング57が配置されている。
【0038】
絞り弁部材100は、弾性金属材料又は合成樹脂材料からなり、ピストン24の4つの液通路24aに対応する4つの絞り弁部101と、該絞り弁部101を支持する円板形の支持部102とを一体に有し、ピストン24の端壁99に支持部102を当接させ、ピストン24内に位置決めし嵌着されている。各絞り弁部101は、ピストン24の内面に合わせた曲断面形状を有し、軸線に平行な帯状にピストン24の内面に沿って連続しており、ピストン24の対応する液通路24aの位置に合わせて開けた小孔を絞り通路39とし、撓み自在に支持部102で片持ち支持され、対応するピストン24の弁座40の面に対して絞り通路39が接離する。支持部102は、中心にピストン24の円錐台形突起99aが入り込む中心孔102aが開けられ、外周に位置決め用の切欠き102bがある、
【0039】
上記第5の実施の形態に係るマスタシリンダの動作について説明する。圧力発生室26からリザーバ17への作動液の流れがある時には、その流れにより、絞り弁部101が弁座40に当接して圧力発生室26の作動液は、絞り弁部101の絞り通路39を通ってリザーバ17に流れる。従って、作動開始時、圧力発生室26からリザーバ17に逃げる作動液の量は少ない。逆に、リザーバ17から圧力発生室26への作動液の流れがある時、その流れにより、絞り弁部101が弁座40から離れ、リザーバ17の作動液は、弁座40と絞り弁部101との隙間を通って圧力発生室26へ流入する。従って、戻り時、リザーバ17の作動液は、抵抗なく圧力発生室26へ補充される。
【0040】
第5の実施の形態に係るマスタシリンダの場合、ピストン24の周壁に孔形の液通路24aを開け、該ピストン24内に絞り弁部材100を嵌入するだけでよいので、簡単な構造で、部品点数の削減、コストダウン、組立性の向上を図ることができ、ピストン24の長さが長くなることもなく、大型化を防止することができ、しかも、作動開始時、ピストン24の前進に伴いリザーバ17に逃げる作動液の量を少なくすることができ、ブレーキ等のペダルストロークを短縮することができる。また、戻り時、圧力発生室26へのリザーバ17からの作動液の補充をスムーズに行うことができ、戻り応答性が良くなる。
【0041】
図21は本発明の第5の実施の形態に係る絞り弁機構の変形例の要部を示す斜視図、図22はその部分拡大斜視図である。この変形例に係る絞り弁機構35は、ピストン24の内周に沿って支持溝110を設け、該支持溝110の位置に周方向に間隔を置き複数の孔を開けてこれを液通路24aとしてあり、支持溝110に、図23に示すリング状の絞り弁部材100が嵌着されて構成されている。ピストン24は、支持溝110と液通路24aとを連通させる連通溝111が弁座面112を介在させて支持溝110よりも狭幅にて周方向に連続して形成されている。
【0042】
図23はピストンに取り付ける前のリング状の絞り弁部材を示した斜視図である。この絞り弁部材100は、弾性金属材料又は合成樹脂材料からなり、絞り弁部101とリング形支持部102とを一体に有し、該リング形支持部102に幅方向切れ目を入れて形成した帯形の絞り弁部101とを一体に有し、周方向に間隔を置き複数の孔を開けてあり、これらの孔が絞り通路39である。
【0043】
絞り弁部101は、一定幅のリングの幅方向に沿った幅方向切り込みC1と、該幅方向切り込みの両端に続く周方向の切り込みC2,C2とを、2箇所に設けて2つが対称的に形成され、ピストン24の対応する液通路24aの位置に合わせて小孔形の絞り通路39を開け、撓み自在に支持部102で片持ち支持され、対応するピストン24の弁座面112に対して絞り通路39が接離する。支持部102は、リング状材料に切れ目C3を設け、弾性変形して拡径縮径可能であり、ピストン24に嵌着する前の状態では、外径が弁座面112の内径よりも若干大きく、縮径した状態で支持溝110へ嵌入され、弁座面112に当接した状態で支持溝110に嵌着される。
【0044】
図23の絞り弁機構の動作について説明する。圧力発生室26からリザーバ17への作動液の流れがある時には、その流れにより、図24に示すように、絞り弁部101は、正面視において支持部102と重なり、弁座面112に当接していて、圧力発生室26の作動液は、絞り弁部101の絞り通路39のみを通ってリザーバ17に流れる。従って、作動開始時、圧力発生室26からリザーバ17に逃げる作動液の量は少ない。逆に、リザーバ17から圧力発生室26への作動液の流れがある時、その流れにより、絞り弁部101は、図25に示すように、内側へ撓んで弁座面112から離れ、リザーバ17の作動液は、弁座面112と絞り弁部101との隙間を通って圧力発生室26へ流入する。従って、戻り時、リザーバ17の作動液は、抵抗なく圧力発生室26へ補充される。
【0045】
なお、本発明は、上記実施の形態によって減縮されるものではなく、新規事項を追加しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、第1の実施の形態において説明した絞り弁機構35,36を第2の実施の形態に係る形式のマスタシリンダ19に適用することもでき、第2〜第4の実施の形態において説明した絞り弁機構36をプライマリ圧力発生室26に連通する作動液補充用の液通路の途中にも同様に設けることができ、第5の実施の形態に係る絞り弁機構35もいずれのの形式のマスタシリンダにも適用できる。また、第2〜第4の実施の形態において、ピストン25の小孔形液通路25aは可能な限り大きくするのが望ましい。さらに、本発明は、ピストンが1つだけの場合にも当然適用することができる。
【0046】
そして、図1に示した第1の実施の形態及び図16に示した第2の実施の形態において、浮動弁体38は、非作動時に弁座40から離れており、作動液の流れにより弁座40に当接する構成になっているが、浮動弁体38を作動液より比重の小さい樹脂等で形成し、非作動時に弁座40に当接させても良い。この場合は、作動開始時、圧力発生室26または27からリザーバ17への作動液の流れのある場合は、その作動液の流れが絞り孔39によって絞られる。逆に、戻り作動時等で、ピストン24または25が後退し、圧力発生室26または27の圧力がリザーバ17内の圧力より低くなった場合等でリザーバ17から圧力発生室26または27への作動液の流れのある場合には、浮動弁体38は弁座40から離れ、作動液が絞られることになく、リザーバ17から圧力発生室26または27に補充される。
【0047】
【発明の効果】
本発明は、ピストンの作動時に圧力発生室からリザーバへの作動液の流れを絞る絞り通路を液通路に形成するとともに、圧力発生室の液圧がリザーバ内圧力より低圧になった時に、開弁してリザーバから圧力発生室への作動液の流れを許容する絞り弁機構を液通路に配設することにより、マスタシリンダ全体を大型化することなく絞り弁機構の機能を発揮させることができ、構造が簡単で、部品点数を削減し、コストを低減することができるという効果を奏する。また、本発明では、ピストンの外周に環状のピストンガイド及びシール部材を配置し、該ピストンガイドとシール部材の間にリザーバと連通する環状室を構成し、環状室内に、作動液の流れを絞る絞り通路を備えた環状の浮動弁体と、浮動弁体が当接するシート面とを設けことによっても、上記と同様の効果が得られる。さらに、筒形をしたピストンの周壁に開けた液通路の位置に絞り弁機構を設け、該絞り弁機構には、ピストンの周壁に開けた液通路に対し該周壁の内面側で接離し絞り通路を有する絞り弁部と、ピストンの内面に嵌合し絞り弁部を支える支持部とを備えていることによっても、簡単な構造で、部品点数の削減、コストダウン、組立性の向上を図ることができ、ピストンの長さが長くなることもなく、大型化を防止することができ、しかも、作動開始時、ピストンの前進に伴いリザーバに逃げる作動液の量を少なくすることができ、ブレーキ等のペダルストロークを短縮することができ、戻り時、圧力発生室へのリザーバからの作動液の補充をスムーズに行うことができ、戻り応答性が良くなる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るマスタシリンダ及びリザーバを示す縦断面図である。
【図2】図1の要部の拡大断面図である。
【図3】図1の要部の拡大断面図である。
【図4】図1の要部の拡大断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るマスタシリンダに用いる浮動弁体を示す底面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るマスタシリンダに用いる浮動弁体の変形例を示す要部の断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る絞り弁機構の第1の変形例の要部を示す部分断面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る絞り弁機構の第1の変形例の別の要部を示す部分断面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る絞り弁機構の第2の変形例の要部を示す部分断面図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る絞り弁機構の第2の変形例の別の要部を示す部分断面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る絞り弁機構の第2の変形例のさらに別の要部を示す部分断面図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る絞り弁機構の第3の変形例の要部を示す部分断面図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る絞り弁機構の第3の変形例の別の要部を示す部分断面図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係る絞り弁機構の第3の変形例のさらに別の要部を示す部分断面図である。
【図15】図14の浮動弁体を拡大して示した斜視図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係るマスタシリンダを示す縦断面図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態に係るマスタシリンダを示す縦断面図である。
【図18】本発明の第4の実施の形態に係るマスタシリンダを示す縦断面図である。
【図19】本発明の第5の実施の形態に係るマスタシリンダの絞り弁機構の要部を示す縦断面図である。
【図20】図19の絞り弁部材を示す斜視図である。
【図21】本発明の第5の実施の形態に係る絞り弁機構の変形例の要部を一部破断して示した斜視図である。
【図22】図21の円A内部分の拡大斜視図である。
【図23】図21の絞り弁部材を示す斜視図である。
【図24】図23の絞り弁機構の動作説明用正断面図である。
【図25】図23の絞り弁機構の動作説明用正断面図である。
【図26】従来のマスタシリンダの縦断面図である。
【符号の説明】
17 リザーバ
20 シリンダボディ
23 シリンダ穴
24 プライマリピストン
25 セカンダリピストン
26 プライマリ圧力発生室
27 セカンダリ圧力発生室
31,32 接続部
34 液通路
35,36 絞り弁機構
38 浮動弁体
39 絞り通路
40 弁座
41,42 接続受部
67 弁本体
68 リブ
69 切欠き状液通路
73 ピストンガイド
74 スリーブ
80 シール部材
81 リテーナ部材
82 環状室
83 浮動弁体
84 シート部材
85 シート面
86 ボール弁
87 浮動弁体
92 直交通路
93 弁座
94 傾斜面
95 待機座
96 ストッパ
100 絞り弁部材
101 絞り弁部
102 支持部
110 支持溝
111 連通溝
112 弁座面

Claims (3)

  1. シリンダボディに形成されたシリンダ穴にピストンが摺動自在に配設され、前記ピストンとシリンダボディにより、圧力発生室を区画し、前記圧力発生室とリザーバとを連通し作動液を前記圧力発生室へ補充するための液通路を備え、前記ピストンの作動時に前記圧力発生室で昇圧された作動液を出力ポートに吐出するマスタシリンダにおいて、
    弁体と、該弁体が接離し前記リザーバの前記シリンダボディへの接続部に設けられた弁座とからなる絞り弁機構であって、前記弁体は、前記ピストンの摺動方向に平行に配置された浮動弁体であって、前記ピストンの作動時に、該弁体が前記弁座に当接して閉弁し、前記圧力発生室から前記リザーバへの作動液の流れを絞るための絞り通路と、前記ピストンの戻り時に、前記弁体が作動液の流れと自重とにより降下して前記弁座から離れて開弁し、前記リザーバから前記圧力発生室への作動液の流れを許容するために、該弁体の外周に沿って前記弁座と反対向きに形成された複数のリブで、該リブのそれぞれの間に形成された切欠き状の複数の液通路とを有する前記絞り弁機構を前記液通路に配設することを特徴とするマスタシリンダ。
  2. 前記絞り弁機構の開弁時に前記リザーバから前記圧力発生室へ作動液を補充するための液通路を前記シリンダボディに形成したことを特徴とする請求項に記載のマスタシリンダ。
  3. 前記弁体の前記絞り通路に代えて、前記液通路に前記浮動弁体と並列的に該絞り通路を設けたことを特徴とする請求項に記載のマスタシリンダ。
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