JP3983862B2 - スパッタリングターゲットとその接合方法及び接合装置 - Google Patents

スパッタリングターゲットとその接合方法及び接合装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスパッタリングにより薄膜を作製するためのスパッタリングターゲットの作製技術、特に、ターゲット材とバッキングプレートとのろう接による接合技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
スパッタリングターゲットは、ターゲットの冷却や強度の補強等の目的でスパッタリングの対象となるターゲット材をろう材によりバッキングプレートに接合した組立体が用いられる。このスパッタリングターゲットの組立即ち接合におけるろう材としては、インジウムろう、低融点合金はんだ、銀ろう等が使用される。一般に、接合の手順としては、バッキングプレートとターゲット材を水平に対向させ、両材料間に溶融したろう材を介在させた後、冷却によりろう材を固化させ、バッキングプレートとターゲット材を接合させるようにしている。
【0003】
この接合について、具体的には、次のような技術が提示されている。
特開昭63−317668号公報には、TbFe合金のターゲット材のはんだ付け面をCuでメタライズし、Cu製のバッキングプレート上に、はんだ付け材としてInシートとスペーサとしてのWの細線とをセットした後、前記ターゲット材を上にのせ、不活性雰囲気内ではんだ付けをすることにより、一枚のバッキングプレートに複数のターゲット材を接合する場合においても継ぎ目におけるターゲット材の段差がないほどに平行面が確保され、また、無接合部も小面積に抑制され、スパッタリングに供しても剥離、割れ等を生じない良品質のスパッタリングターゲットが作製できるとする方法が開示されている。
【0004】
また、特開平3−111564号公報には、純Crの長方形板あるいはCo−20%Cr合金の円板をターゲット材とし、Cuでメタライズした後、Sn合金のろう材層を付け、またCu製のバッキングプレートにも同成分のろう材層を付けて準備し、さらにろう材に対して濡れ難くかつガス発生量の少ない脱ガス処理した炭素繊維で編んだ紐あるいは同様の脱ガス処理したガラス繊維で編んだ紐を、前記バッキングプレート上に並べてこれらに沿うガス排出経路を形成させると共に、その上に前記ターゲット材を重ね、加熱後、重錘をのせて冷却するというボンディングを行うことにより、98%あるいは97%の接合率を有する接合部が得られ、スパッタリング時に熱による剥離や割れ等の問題が生じないターゲット組立体が作製できるとする方法が開示されている。
【0005】
また、特開平4−365857号公報には、銅材からなる冷却板(バッキングプレート)の上面に、全表面に銅材からなる被覆層を施した低融点合金材による軟ろうより高密度かつ高融点のタンタルからなるインサート材(介在物)を載置した後、前記インサート材によって形成された冷却板の上面の空間部にペレット状の低融点合金材軟ろうをインサート材の厚みと同等の厚さとなるように充填し、続いて、アルミ合金よりなるターゲット材を載置し、空気中における加圧下で、加熱処理を施すことにより、接合面積比が97.5%で、ターゲット材と冷却板との間に均一厚さの接合部を形成することができ、従って、スパッタリング時に剥離や割れ等を生じることがなく、長期間に渡って安定した状態で使用できるスパッタリング用ターゲットが得られるとする製造方法が開示されている。
【0006】
また、特開平6−128738号公報には、アルミニウム合金あるいはタングステンのシリサイドからなるターゲット部材の接合面に、Pb−SnあるいはInからなる半田材料で予備半田付けを施すと共に、銅からなるバッキングプレートの上面にはターゲット部材着座のための凹部を設け、その凹部に予備半田付けを施し、さらに、両部材の予備半田表面の酸化膜除去を行った後、フラックスを使用することなく、この予備半田の表面に、新たなる溶融半田を添加し、直ちに両部材相互を押圧固定して冷却固化させることにより、接合欠陥率は、1.8%あるいは2.1%という十分に低い数値となり、所定以上の接合強度が維持されることから、スパッタリング時において接合部の剥離が生じ難いスパッタリングターゲットが得られるとする製造方法が開示されている。
【0007】
特開平8−170170号公報には、ITOからなるターゲット部材の接合面に銅薄膜を積層し、その後200℃に設定したホットプレート上で前記銅薄膜面全体にインジウム半田を塗布し、また、無酸素銅製のバッキングプレートにも、その接合面全体にインジウム半田を塗布し、このインジウム半田を塗布したバッキングプレート上に、真鍮製のワイヤ(棒)を介在物として平行に配置した後、ターゲット部材とバッキングプレートとをワイヤ上を相互に滑らせながら所定の位置に配置し、室温まで放置冷却することにより、ボンディング率97%で、ターゲット部材とバッキングプレート間の平行を所定間隔で保持することができ、スパッタリング放電圧を一定に保持し、ターゲットの偏磨耗の発生をも抑止できるスパッタリングターゲットが得られるとする製造方法が開示されている。
【0008】
また、特開平6−114549号公報には、純ニッケルあるいはニッケルの薄皮膜を施した純アルミニウムによるターゲット板を加熱し、ろう接面にフラックスを塗布した後、フラックスで濡らした低融点合金ろう材あるいは純インジウムの切片を載せて溶融凝固させ、また、純銅の裏打ち板(バッキングプレート)にも同様にろう材を溶融被覆して凝固させ、引き続き、ターゲット板と裏打ち板を加熱し、ろう材を溶融させた上で、ターゲット板を裏打ち板に近づけ、両板材の被覆端縁を接触させた後、所定位置まで摺り合わせ状態で移動させて合体させ、さらに、ターゲット板上に錘をのせてろう材を冷却凝固させることにより、酸化膜による2層分離や気泡の巻き込みのない高品位のろう接状態を有するターゲットが得られるとするスパッタリングターゲットの製造方法が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これらの従来技術においては以下のような問題点があった。
特開昭63−317668号公報の発明においては、ターゲット材とバッキングプレートとの間にWの細線を介在させ平行度を確保するようにしたものであるが、Inシートによるはんだ付けの前に、ターゲット材のはんだ付け面をCuでメタライズするもので、その処理が煩雑であるのみならず、実施例の図面から推定するとターゲット材とバッキングプレートとの無接合部の比率は4%程度に止まり、接合率としては未だ十分とはいえない状況にある。
【0011】
この特開平3−111564号公報の発明にあっては、炭素繊維あるいはガラス繊維による紐状介在物は、ターゲット材とバッキングプレートとろう材のいずれとも構成原子等を相互に拡散する接合やろう接のごとき原子親和力による接合等はしておらず、単に接触しているに過ぎないので、接合率を向上させるためにガスを十分に排出すると共に接合後の水分や油脂等の浸入を防止するため紐等が伴う空間即ちガス排出路の開口部を閉鎖する必要があり、接合面の外縁に達しない所定寸法の紐状介在物を慎重配置しなければならないという煩雑な条件設定を要している。また、紐状介在物は編組した繊維物によっているので、ターゲット材とバッキングプレートとの加圧接合を行う場合、平行度を確保し難いという問題がある。さらに、この発明にあっても、ターゲット材をCuでメタライズするという処理の煩雑さを有している。
【0012】
特開平4−365857号公報の発明においては、インサート材と低融点合金材軟ろうとにより冷却板とターゲット材との平行度は保持されているものの、ターゲット材は酸化性が強くかつ低融点合金材とはなじみ難いアルミニウム合金であり、かつ、空気中における加圧下において加熱処理を行うものであり、また、インサート材には銅が被覆されているものの、例えば予備はんだ付け等の予備処理が施されていない等接合についての配慮がなされていないという問題がある。即ち、この発明は、比較的小寸法形状のターゲット材において有効であっても、特に実用性の高い大きい寸法形状のターゲット材を対象とする場合においては必ずしも十分でないという問題を有している。
【0013】
特開平6−128738号公報の発明にあっては、ターゲット部材とバッキングプレートとの半田接合にあたり予備半田付け等接合度についての配慮はなされているものの、介在物となるインサート材を使用することなく、かつ溶融半田の添加後、直ちに、単純に上下対向方向に押圧して固定する等、両部材間の平行度については配慮されておらず、両部材間の十分な平行度を確保してスパッタリング処理時に放電電圧を一定に保持できる保証がないという問題がある。
【0014】
この特開平8−170170号公報の発明においては、バッキングプレート上に塗布した予備インジウム半田が溶融状態のままターゲット部材との接合操作を行うようにしているもので、ターゲット部材がセラミックスで、無酸素銅によるバッキングプレートとは熱膨張率が大きく異なるので、冷却固化に際してバッキングプレートに反りを生じ、その結果、中央部が薄く全体として不均一な厚さのスパッタリングターゲットが得られることがある。この傾向はターゲット部材が大きくなる程著しいものになるので、特に実用性の高い寸法形状の大きいスパッタリングターゲットにおいては、平行度を確保し難くなるという問題がある。
【0015】
特開平6−114549号公報の発明にあっては、介在物即ちインサート材を使用することなく、ターゲット板と裏打ち板との摺り合わせにより平行度を確保するという特徴を有するもので、ターゲット板と接合面に供するろう材に塩化物系のフラックスを施している。接合面における残存フラックス及び生成残渣は無接合部をもたらすので、実質的にこれら残渣等と共にろう材を排除しながらターゲット板と裏打ち板を摺り合わせて残存ろう材により接合する操作を必要とするものであって、実用性の高い大寸法形状のターゲットにあって高品位のろう接状態を得るには困難を伴うという問題がある。
【0016】
上記の状況に鑑み、本発明は、スパッタリングターゲットのターゲット材とバッキングプレートを接合する場合において、ターゲット材の形状寸法を問わず接合手段に煩雑さを伴わず、ガス残存のおそれがなく、従って接合欠陥率を十分に低減でき、かつ、反りのない精度の高い平行度が確保でき、スパッタリング時に割れや剥離を生じることがなく、生産効率および歩留りの向上が可能となるスパッタリングターゲットとその接合方法、また、接合装置の提供を目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、ターゲット材とバッキングプレートとの間に金属ワイヤが組み込まれかつろう材からなる接合層が介在し、長さ方向の反りがターゲット長さの0.024%以下であることを特徴とするスパッタリングターゲットを提供する。
【0018】
さらに、本発明はターゲット材とバッキングプレートとの間に該バッキングプレートと同じ材質の金属ワイヤが組み込まれかつ低融点金属によるろう材からなる接合層が介在するところのスパッタリングターゲットを提供する。
【0019】
また、ターゲット材とバッキングプレートとを低融点金属によるろう材を介して接合する接合方法において、前記ターゲット材と前記バッキングプレートとの間に、前記ろう材と共に前記バッキングプレートと同じ材質の金属による金属ワイヤを介在させ、真空雰囲気内において、加熱加圧して前記ターゲット材とバッキングプレートを一体に接合するスパッタリングターゲットの接合方法を、さらにまた、前記ターゲットと前記バッキングプレート材と前記金属ワイヤとに、予め前記ろう材と同じ材質の金属を塗布して接合するスパッタリングターゲットの接合方法を、さらに、前記ろう材には金属箔を用い、真空雰囲気内において、加熱下で背部側に流体圧をかけた弾性シートによりターゲット材とバッキングプレートを加圧して接合する方法であって、前記金属ワイヤ径は0.1〜1.0mmで、前記金属箔は前記金属ワイヤ径より0.1〜0.2mm厚い厚さを有するスパッタリングターゲットの接合方法を、また、前記金属ワイヤは、少なくともターゲット材の外縁に達する長さとするスパッタリングターゲットの接合方法を提供する。
【0020】
そして、バッキングプレートとターゲット材をろう材と金属ワイヤを介在して収納する凹部室が形設されると共にヒータにより加熱される第一の型を備え、凹部が形設されると共にヒーターにより加熱される第二の型が前記凹部を覆う弾性シートを備えてなり、前記第一の型に前記第二の型を合わせて閉鎖し、加熱下において前記凹部室内を真空吸引するすると共に前記凹部内に圧力流体を供給することにより、前記弾性シートにより前記ターゲット材を前記バッキングプレート側に押圧して一体のスパッタリングターゲットに接合するスパッタリングターゲットの接合装置を提供する。
【0021】
【発明の実施の形態】
ターゲット材とバッキングプレートとの間の低融点金属のろう材接合層内にバッキングプレートと同じ材質の金属ワイヤを組み込んだものは、バッキングプレートと金属ワイヤの熱膨張率やろう材との濡れ性が同じで、金属ワイヤをバッキングプレートと一体のものとして扱うことができ、ターゲット材とバッキングプレートとの平行度が確保されると共に、ターゲット材との接合性が改善され、また、金属ワイヤの介在によるガスの排出も良好で、無接合による接合欠陥が少ないものとなる。この時スパッタリングターゲットの反りはターゲットの長さ方向のターゲット長さの0.024%以下と非常に反りの小さいスパッタリングターゲットが得られる。
【0022】
また、バッキングプレートの上に低融点金属による箔状等のろう材と共にバッキングプレートと同じ材質の金属ワイヤをのせ、ターゲット材で覆い、真空雰囲気とし、ろう材の融点以上の温度の下でバッキングプレートとターゲット材間を加圧すると、ろう材は融けて金属ワイヤを組み込んだ形に接合層をつくってバッキングプレートとターゲット材を接合し、一体のスパッタリングターゲットを形成する。バッキングプレートとターゲット材間のガスは金属ワイヤに沿って外部に押し出され、両材料は金属ワイヤに規制されて所定の厚さで平行面を保持する。この接合方法によれば、ターゲット材の形状寸法の大小に拘わらず安定した効果が得られる。
【0023】
バッキングプレートとターゲット材のそれぞれの接合面を溶融ろう材で濡らし、また、金属ワイヤについても同様溶融ろう材で濡らして固化させる。次いで、上記のように、バッキングプレートとターゲット材をろう材と金属ワイヤを介在させて、重ね合わせ、接合処理することにより、ろう材はバッキングプレートとターゲット材と金属ワイヤとを隈なく覆って接合するので、さらに接合欠陥が少ないスパッタリングターゲットが得られる。また、金属ワイヤをターゲット材の外縁に達する長さとすることにより、真空吸引によるガス抜き作用が促進される。
【0024】
本発明の接合装置にあっては、ヒータを備える第一の型と第二の型とを合わせ、第一の型の内部即ち凹部室を真空吸引することにより真空室に形成できるようにし、第二の型はその合わせ面に沿って型内部即ち凹部を覆うように弾性シートで仕切り、凹部内に流体圧を供給できるようにした装置を用いる。また、好ましくは濡らし工程を経たバッキングプレートを第一の型の凹部室内に置き、その上に箔状のろう材と共に予めろう材で濡らした金属ワイヤをのせ、さらに好ましくは同様に濡らしたターゲット材を重ねる。そして、第二の型を合わせて閉じ、凹部室内を真空吸引すると共に、両型をヒータによりろう材の融点以上の温度まで加熱し、第二の型内の凹部には流体を供給して膨満させ、伸長する弾性シートで前記ターゲット材をバッキングプレート側に均等に押圧することにより、残留ガスが殆どなく、精度の高い平行面を保持し、接合欠陥のないスパッタリングターゲットを効率的に得ることができる。
【0025】
なお、前記弾性シートは、天然ゴムあるいはイソプレン系やハイパロン系の耐熱性を持つ合成ゴム材料が用いられ、加圧用流体としては、空気または油が用いられる。また、前記第一の型の凹部室内の真空雰囲気としては、特にろう材等の酸化防止の点から、好ましくは、1×10-3〜10-4mmHg程度の減圧雰囲気が利用される。
【0026】
本発明のターゲット部材は、一般に、ITO(In−Sn系酸化物)、SiO2 、BaTiO3 、Al、Crなどであり、バッキングプレートは、無酸素Cuやステンレススチール等である。本発明で用いられる金属ワイヤはCu線やスチール線等バッキングプレートと同じ材質のものであり、ろう材は、はんだ、In等の低融点金属である。
【0027】
また、前記のろう接工程では、ろう材の厚み即ち接合界面の厚みは、0.1〜1.0mmであることが望ましい。接合界面は、熱膨張率の異なるターゲットとバッキングプレートの反りを吸収する部分でもあり、少なくとも0.1mm以上のろう材が一定の厚さで界面に存在する必要がある。この厚みは、ターゲット材とバッキグプレートの材質やターゲット材のサイズによって変わる。即ち、接合後のターゲットの反りが小さくターゲットをスパッタ装置に装着する際に支障のないように調整する。1.0mm以上ではターゲットの冷却効率が低下する。接合界面へ組み込む金属ワイヤの径によってろう材厚みが制御される。金属ワイヤ自体が接合欠陥につながる可能性の点からは、最低2本として本数は少ないほうがよいが、各種ターゲットの曲げ強度と上部圧力を比較して決定する。金属箔の厚さは、必要且つ十分に金属ワイヤを被覆する点から金属ワイヤの径よりも0.1〜0.2mm厚くするのが望ましい。
【0028】
この時スパッタリングターゲットの反りはターゲットの長さ方向のターゲット長さの0.024%以下と非常に反りの小さいスパッタリングターゲットが得られる。
【0029】
図1により好適な接合装置Aを説明する。
1は凹部室aを備えた第一の型としての固定型であり、これに上下対応する第二の型としての可動型2を合わせて閉じることにより内部に密閉空間を形成し、外部に設けた真空吸引装置Bで真空吸引することにより真空室に構成できるようにしてある。固定型1は背部に設けた複数の孔にヒータ3を埋設的に嵌挿してあり、可動型2には凹部bを形設し、同様に背部側に複数の孔を穿設し、ヒータ4を埋設的に嵌挿してある。また、固定型1との合わせ面に沿ってゴム材による弾性シート5を取り付け、凹部bを覆うように仕切ってあり、この凹部bに対し外部に設けた流体圧供給装置Cにより圧力流体を供給することにより、前記の弾性シート5を固定型1側に膨満させていわゆるラバープレスが行えるようにしてある。即ち、この接合装置Aでは、固定型1の内部にバッキングプレート6を置き、ろう材7と金属ワイヤ8を介在してその上にターゲット材9をのせるようにしてある。10は固定治具である。そして、固定型1と可動型2を合わせて密封した後、固定型1と可動型2をそれぞれ加熱し、凹部室aを真空吸引すると共に、凹部bに圧力流体を供給することにより、弾性シート5によりターゲット材9をバッキングプレート6側に均等に押圧し、ろう材7により接合し、一体のスパッタリングターゲットを作製できる。
【0030】
【実施例1】
SnO2 10重量%のITOによる381×127×8mmの寸法のターゲット材と、無酸素銅による421×167×10mmの寸法のバッキングプレートと、Inシートによるろう材を使用した試料について、接合時の雰囲気、凹部空気圧、温度、Inシートの厚さ及びCuワイヤによる厚さ制御条件を設定して接合し、そのろう材平均厚さと接合欠陥率を調査した。
【0031】
ターゲット材とバッキングプレートの不要部分にマスキング処理を行い、ホットプレート上において、Inろう材の融点以上に加熱した。次いで、その上にInろう材をのせて溶解し、超音波はんだごてや布によるこすり等によって接合面を完全に濡らした。また、Cuワイヤについても同様に濡らし工程を設けた。完全に濡れた後、ターゲット材とバッキングプレートの接合面に凹凸がないよう、また、酸化物が残らないように金属へらで掻きだすか、布で拭き取る等の手段により、余分なろう材を除去した。その後、Inろう材の融点以下20〜30℃まで下げた。なお、この時、下げ過ぎると次の工程での昇温時間が長くなる。
【0032】
次いで、図1に示す接合装置を用い、前工程が終了したターゲット材とバッキングプレートをセットした。このセットの際、下にバッキングプレートを置き、その上に接合界面に充満させるに足るInシートを敷き、その上にバッキングプレートと同材質のCuワイヤをピンと張ってテープで止め、数本平行にのせた。この場合、内部ガス抜けの効果を考慮してCuワイヤはターゲットサイズより長めにした。そしてさらに、接合面が下になるようにターゲット材を置いた。なお、この時、バッキングプレートとターゲット材とも接合途中で移動しないよう、例えば、Al製のスペーサのようなもので固定してもよい。
【0033】
セットの終了後、直ちに上部の可動型を閉じ、真空吸引を開始して1×10-3〜10-4mmHg程度の真空室を構成すると共に、20℃/時間の昇温速度でInろう材の融点前後の温度まで昇温した。昇温が済んだ後、可動型の背部に圧力空気を供給してゴム材による弾性シートによっていわゆるラバープレスを行い、ゲージ圧1〜3kgf/cm2 の空気圧で30分間加圧することにより、ターゲット材全面に均等に圧力をかけた。その後、この背部圧力をかけたままで、25℃/時間の降温速度で大気温度まで戻し、背部圧力を解除し、大気雰囲気に戻した後、型を開放し、接合されて一体となったスパッタリングターゲットを取り出した。マスキング処理を施した不要部分のメタル等を除去することにより、スパッタリングターゲット成品が得られた。
【0034】
得られたスパッタリングターゲットについて、超音波探傷手段によって接合欠陥率を調査した。スパッタリングターゲットの反りは、バッキングプレートのターゲット材のついていない面の短辺の中央部から、もう片方の短辺の中央部へステンレス製の差し金を垂直にかつ曲げることなく差し渡し、差し金を両方の短辺中央部へ同時に接触させたときに、バッキンブプレートの長さ方向であって、これらの短辺の中央部を結ぶ線上のほぼ中央部つまり略重心の位置で、バッキングプレートの面と垂直に渡した差し金との間に生じる隙を、隙ゲージで測定した。隙ゲージの最小値は0.03mmであり、これが差し込めないときに反りがないと判断した。
結果を表1に示した。
【0035】
【比較例1】
また、比較例として、接合雰囲気、凹部室圧力、温度、Cuワイヤの有無等の設定条件を発明条件外に設定した試料について、前記実施例の場合と同様の操作により接合処理を行い、その接合欠陥率を調査し、結果を表1に併記した。
【0036】
【表1】
Figure 0003983862
【0037】
本発明の条件を満足する実施例のNo.1及びNo.2の試料において欠陥率は1.53%以下であった。接合温度は、Inの融点(156℃)がよく、比較例の160℃のNo.4の試料や146℃のNo.5の試料では欠陥率が著しく増加した。
また、平行度に関しては、従来の条件による比較例の接合では、ろう材厚みが0.06〜0.16mmと変化があったのに対し、本発明の条件を満足する実施例のNo.1の試料の場合では0.18〜0.22mmと変化の幅が小さくなった。
なお、Cuワイヤの長さをターゲット材のサイズより若干短くした以外は、本発明条件と同様にした比較例No.6の試料の場合、欠陥率が若干高くなっており、Cuワイヤの長さを長くした方が有利であることを示した。
【0038】
【実施例2】
10重量%のSnO2 を含むITOによる381×127×8mmの寸法のターゲット材の接合面に超音波はんだごてを用いてInろうを塗布し、同様に無酸素銅による421×167×10mmの寸法のバッキングプレートの接合面にもInろうを塗布した。また、金属ワイヤとして直径が0.2mmのCuワイヤにも布でこすりながら、Inろうを塗布した。その後、図1に示す接合装置内に、バッキングプレートを配設し、381×127×0.3mmのInシートをおき、Cuワイヤを約3.0cmの間隔で3本をのせ、ターゲット材をセットした。Cuワイヤは、ピンと張ってテープで止め、接合界面のガス抜きのため、ターゲット材より長めにした。また、バッキングプレートとターゲット材はチャンバー内で動かぬよう、Al製のスペーサで位置決めをした。
【0039】
セットして直ちに真空吸引を開始し、1×10-3〜10-4mmHgに達した時点で20℃/時間の割合で昇温加熱した。Inの融点である156℃に達した時点でラバープレスによりターゲット材面に均等に1kgf/cm2 の背部圧力をかけた。温度156℃と背部圧力1kgf/cm2 の真空雰囲気状態を30分間保ち、その後、背部圧力と真空雰囲気はそのままで、25℃/時間の割合で冷却し、大気温度まで戻した。接合装置より抜き出した後、余分なCuワイヤはカットした。
この結果、ろう材厚み0.18〜0.22mmで略均一な平行度が保たれた接合率98.6%のスパッタリングターゲットが得られた。また、バッキングプレートの反りは認められなかった。
【0040】
【実施例3】
BaTiO3 による直径が152mmで厚さが8mmの円板状のターゲット材と無酸素銅による直径が180mmで厚さが15mmの円板状のバッキングプレートと直径が0.2mmのCuワイヤとに、実施例2と同様にInろうを塗布し、図1の接合装置内にセットした。ろう材のInシートは直径が152mmで厚さが0.3mmのものとした。Cuワイヤは、それぞれ長さ20cmのものを3.8cmの間隔で3本平行にピンと張って止めた。その他の条件は実施例1と同様で、真空吸引を行いながら、温度156℃と背部圧力1kgf/cm2 の状態を30分間保持するようにした。
結果、接合率98.2%で、ろう材厚みは0.28〜0.33mmの均一に平行度が保たれたスパッタリングターゲットが得られた。また、このスパッタリングターゲットのバッキングプレートには反りが認められなかった。
【0041】
【比較例2】
SnO2 が10重量%のITOによる381×127×8mmのターゲット材と無酸素銅による471×167×10mmのバッキングプレートをホットプレート上にのせ、Inの融点以上の温度となる190℃まで加熱した。その後ターゲット材とバッキングプレート上の接合面にInをのせ、超音波はんだごてを用いて塗布し、濡れ処理を施した。また、溶解した十分な量のInをろう材としてバッキングプレート上にのせた。ターゲット材の接合面を下にして、バッキングプレートの上を滑らせながら所定の位置に配置し、室温まで冷却した。その結果、ろう材厚みは0.21〜0.33mmであったが、接合率は94.3%に止まった。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、バッキングプレートと同じ材質の金属ワイヤを用い真空雰囲気下で加熱加圧して行う本発明の接合方法及びその成品によれば、バッキングプレートと金属ワイヤの熱膨張率やろう材との濡れ性が同じで、金属ワイヤをバッキングプレートと一体のものとして扱え、ターゲット材とバッキングプレート間の平行度が良好で、また、従来の方法に比べ、大きい形状のターゲット材にも好適に適用でき、操作が煩雑でなく、接合面における残存ガスが少なく、接合時のろう材の酸化もなく、従って接合欠陥の少なく、スパッタリング処理に供してもターゲット材の剥離や割れ等を生じないスパッタリングターゲットが得られるという効果を奏する。さらに、金属ワイヤとしては特殊な材料を使用しないから入手が容易で、また、材料の回収にあたり、成分に関し複雑な処理を必要としない等の効果をも有する。
【0043】
ターゲット材とバッキングプレートと金属ワイヤを予めろう材と同じ材質の金属で濡らしてから接合する本発明の方法によれば、さらに、接合面におけるガス抜きが良好で、接合度が良く、接合欠陥が低減されたスパッタリングターゲットが得られるという効果を奏する。
ろう材として金属箔を用い、真空雰囲気で加熱すると共に背部に加圧流体を供給するラバープレスの手法で加圧を行う本発明は、接合面におけるガス抜きも良く、接合時のろう材の酸化もなく、弾性シートによる加圧により、所定の加圧力による均一な加圧が可能になると共に、加圧力の調整が容易になり、さらに、接合も均一に行われ、接合欠陥が少なく、また、バッキングプレートの反りもなく精度の高い平行度のスパッタリングターゲットが得られるという効果を奏する。
さらにまた、金属ワイヤをターゲット材のサイズより短くならないようにした本発明は、真空吸引によるガス排出が促進され、接合欠陥を低減するという効果を奏する。
真空吸引と加熱とラバープレスが可能な本発明の装置によれば、接合度が良好で、反りが少なく精度の高い平行度を有するスパッタリングターゲットが効率的に得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスパッタリングターゲットの接合装置を示す断面図である。
【符号の説明】
A 接合装置
B 真空吸引装置
C 流体圧供給装置
a 凹部室
b 凹部
1 固定型(第一の型)
2 可動型(第二の型)
3 ヒータ
4 ヒータ
5 弾性シート
6 バッキングプレート
7 ろう材
8 金属ワイヤ
9 ターゲット材
10 固定治具

Claims (2)

  1. ターゲット材とバッキングプレートとを低融点金属によるろう材を介して接合する接合方法において、前記ターゲット材、前記バッキングプレートおよび該バッキングプレートと同じ材質であって少なくとも前記ターゲット材の外縁に達する長さの金属ワイヤに、予め前記ろう材と同じ材質の金属を塗布し、前記ターゲット材と前記バッキングプレートとの間に、前記ろう材と共に前記金属ワイヤを介在させ、真空雰囲気内において、加熱加圧して前記ターゲット材と前記バッキングプレートを一体に接合することによって長さ方向の反りをターゲット長さの0 . 024%以下とすることを特徴とするスパッタリングターゲットの接合方法。
  2. 前記ろう材には金属箔を用い、真空雰囲気内において、加熱下で背部側に流体圧をかけた弾性シートによりターゲット材とバッキングプレートを加圧して接合する方法であって、前記金属ワイヤ径は0.1〜1.0mmで、前記金属箔は前記金属ワイヤ径より0.1〜0.2mm厚い厚さを有することを特徴とする請求項1記載のスパッタリングターゲットの接合方法。
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