JP3762606B2 - バッキングプレート、スパッタリングターゲット−バッキングプレート組立体、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの接合方法及びスパッタリング成膜方法 - Google Patents

バッキングプレート、スパッタリングターゲット−バッキングプレート組立体、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの接合方法及びスパッタリング成膜方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパッタリングによって膜を形成する際に、成膜速度を上げ、生産性を向上させることができるバッキングプレート、スパッタリングターゲット−バッキングプレート組立体、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの接合方法及びスパッタリング成膜方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、膜厚や成分を容易に制御できるスパッタリング法が電子・電気部品用材料の成膜法の一つとして多く使用されている。
このスパッタリング法は正の電極と負の電極とからなるターゲットとを対向させ、不活性ガス雰囲気下でこれらの基板とターゲットの間に高電圧を印加して電場を発生させるものであり、この時電離した電子と不活性ガスが衝突してプラズマが形成され、このプラズマ中の陽イオンがターゲット(負の電極)表面に衝突してターゲット構成原子を叩きだし、この飛び出した原子が対向する基板表面に付着して膜が形成されるという原理を用いたものである。
【0003】
最近ではこのスパッタリングの成膜速度を上げるために、スパッタリングターゲットへの投入電力をできるだけ大きくして成膜している。上記のように陽イオンによるターゲット表面への衝突が繰り返されるため加熱されるが、投入電力の増加とともに、温度は高くなる一方である。
通常、スパッタリングターゲットは銅等の熱伝導性の良い材料で作製されたバッキングプレートに接合されており、このバッキングプレートを水冷等の手段により冷却し、間接的にスパッタリングターゲットを冷却する構造となっている。
【0004】
また、バッキングプレートは多くの場合再利用されるので、このスパッタリングターゲットとバッキングプレートはスパッタリングターゲットの交換ができるように、鑞材や接着剤で接合されている。
また、ターゲットが脆い材料の場合は、割れを防いだり、割れても脱落しないという機能を有する。
【0005】
一般に、スパッタリング装置はスパッタリングターゲット−バッキングプレート組立体を所定の位置にセットできるように定型(規格)化されているが、それはまた冷却(水冷等)の条件も制限があることを意味する。
しかし、場合によっては定型化された以上の条件、すなわちより大きな電力を投入してスパッタリングすることが要求されることもある。
このような場合、スパッタリング操作中にスパッタリングターゲット−バッキングプレート組立体の温度が予定された以上に上昇し、ボンディング鑞材が溶け出したりする事故が発生した。
鑞材の溶け出しは異常放電や短絡を引き起こし、また一旦溶け出しが始まると冷却能低下によりターゲットが過熱され、ターゲットの割れ、剥離、溶融などを発生しかねない。
【0006】
このため、装置上の制約から投入電力を抑える必要があり、それだけスパッタリングの成膜速度を上げることができず、生産性を上げることができないという問題があった。
また、一方で脆いターゲットは、冷却水の水圧と真空のチャンバーによる負圧あるいはバッキングプレートとの熱膨張差に起因する応力等で変形あるいは割れたりして、正常なスパッタリングができない場合があった。
さらに、バッキングプレートが直接冷却水と接しない間接冷却の場合は、過熱下での接合を要するボンディングの熱膨張差による反りのために冷却板に密着せず正常に冷却されない場合もあった。
このような欠点を解決しようとして、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの間にワイヤー等のスペーサーを入れた厚い鑞材によって上記の応力を緩和する提案がなされ、割れや反り自体には一定の効果を上げた。(特開昭63−317668号公報参照)。
しかし、これはむしろ鑞材溶け出しには逆効果となった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、スパッタリングターゲットの反り、割れ防止と高投入電力下での鑞材(なお、本発明において使用する「鑞材」は接着剤を含むものとする。特に区別して記載しない限り、これらを総称して「鑞材」とする。)溶け出し防止を両立するバッキングプレート、スパッタリングターゲット−バッキングプレート組立体、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの接合方法及びスパッタリング成膜方法を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行なった結果、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの接合構造の改善を図ることにより、ボンディング鑞材の流出を抑制し、冷却効果を高めることができるとの知見を得た。
本発明はこの知見に基づき、
1. スパッタリングターゲットに接合するバッキングプレートの面上に堰が設けられ、該堰によって形成されるボンディング鑞材用溜りがターゲットとバッキングプレートとの接する面からはみ出ない大きさであることを特徴とするバッキングプレート
2. スパッタリングターゲットとバッキングプレートを備え、該バッキングプレート上に堰が設けられ、該堰によって形成される溜りがターゲットとバッキングプレートとの接する面からはみ出ない大きさであり、かつ該溜りに充填されたボンディング鑞材からなることを特徴とするスパッタリングターゲット−バッキングプレート組立体
3. バッキングプレート上に堰を形成し、該堰によって形成される溜りがターゲットとバッキングプレートとの接する面からはみ出ない大きさとし、該溜りにボンディング鑞材を充填した後、スパッタリングターゲットを載せ該ボンディング鑞材を用いて接合することを特徴とするスパッタリングターゲットとバッキングプレートの接合方法
4. スパッタリングターゲットとバッキングプレートを備え、該バッキングプレート上に堰が設けられ、該堰によって形成される溜りがターゲットとバッキングプレートとの接する面からはみ出ない大きさであり、かつ該溜りに充填されたボンディング鑞材からなるスパッタリングターゲット−バッキングプレート組立体を用い、バッキングプレートを冷却しながらスパッタリングすることを特徴とするスパッタリング成膜方法
、を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の説明に際し、参考として図1を示す。図1に示すように、スパッタリングターゲット2に接合するバッキングプレート1の面に、該ターゲットとバッキングプレートとの接する面からはみ出ない大きさのボンディング鑞材用凹陥部3を形成する。すなわち該凹陥部3は、ターゲット2の寸法よりも小さく、ターゲット2を上に載せた時に該凹陥部3は完全に塞がる形状になっている。
次に、該凹陥部3にボンディング鑞材4を充填した後、スパッタリングターゲットを載せ、該ボンディング鑞材を用いて接合する。凹陥部3の深さは目的とするボンディング鑞材の厚さとするが、特にこの深さは重要であり、ターゲットの反りや割れを防ぐために、ターゲット2の材質、バッキングプレート1の材質、ボンディング鑞材4の凝固温度、ターゲット2寸法、バッキングプレート1の厚さを考慮して、適切な寸法とすることが必要である。
ボンディング鑞材4には、In鑞、Pb−Sn−Ag鑞等を使用することができ、特に制限はなく、すでに知られた鑞材や接着剤を任意に選択して使用することができる。
【0010】
該凹陥部3以外のバッキングプレート1にスパッタリングターゲット2の接合(対向)面に薄いボンディング鑞材4を有していても良いし、無くてもよい。これは任意に選択できる。バッキングプレート1とスパッタリングターゲット2の接合の主要は、あくまで凹陥部3に存在するボンディング鑞材4であり、これによって十分な接合を達成し、効率的な冷却を行う。
一例を挙げると、φ200mm×6mmt(t:厚さ)ZnS−SiOターゲットと6mmtCuバッキングプレート接合の場合には、ボンディング鑞材の厚みは0.3〜0.5mm程度が適当であり、これに対応した凹陥部を形成する。
【0011】
本発明は、また図2に示すように、バッキングプレート5上に堰8を形成する。この該堰によって形成される溜り7はターゲット6とバッキングプレート5との接する面からはみ出ない大きさとする。すなわち溜り7は、ターゲット6の寸法よりも小さく、ターゲット6を上に載せた時に該溜り7は完全に塞がる形状になっている。
次に、該溜り7にボンディング鑞材9を充填した後、スパッタリングターゲット6を載せ該ボンディング鑞材9を用いて接合する。
堰8の高さ、すなわち溜り7の深さは、目的とするボンディング鑞材の厚さとするが、上記と同様にこの深さは重要であり、ターゲットの反りや割れを防ぐために、ターゲット6の材質、バッキングプレート5の材質、ボンディング鑞材9の凝固温度、ターゲット6寸法、バッキングプレート5の厚さを考慮して、適切な寸法とすることが必要である。
堰8の外側の形状はターゲットと同一であれば位置合わせに便利であるが、必ずしも同一である必要はない。
【0012】
バッキングプレート5の堰8の上部とスパッタリングターゲット6の接合(対向)面に薄いボンディング鑞材9を有していても良いし、無くてもよい。これは任意に選択できる。
上記と同様に、バッキングプレート5とスパッタリングターゲット6の接合の主要は、あくまで溜り7に存在するボンディング鑞材9であり、これによって十分な接合を達成し、効率的な冷却を行う。
上記と同様に、φ200mm×6mmt(t:厚さ)ZnS−SiOターゲットと6mmtCuバッキングプレートを接合した場合、ボンディング鑞材の厚みは0.3〜0.5mm程度が適当であり、これに対応した溜り7を形成する。
【0013】
上記によって、バッキングプレートとスパッタリングターゲットの間に充分な厚さのボンディング鑞材を設けることが可能となり、両者の熱膨張率の差による変形(反り)を充分吸収することができる。
万が一過剰に加熱され、ボンディング鑞材が溶融することがあっても、流出は抑制されるので、鑞材はそこにとどまり、冷却不能、異常放電、短絡等のスパッタ操業異常の惧れを低減する。
【0014】
【発明の効果】
高投入電力下でも、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間に存在するボンディング鑞材の溶け出しを生ずることなくスパッタリングできるバッキングプレート、スパッタリングターゲット−バッキングプレート組立体、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの接合方法及びスパッタリング成膜方法を得ることができる優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】バッキングプレートに凹陥部を形成し、ボンディング鑞材溜りを設けたスパッタリングターゲット−バッキングプレート組立の断面説明図である。
【図2】バッキングプレートに堰を設け、ボンディング鑞材溜りを形成したスパッタリングターゲット−バッキングプレート組立の断面説明図である。
【符号の説明】
1、5 バッキングプレート
2、6 スパッタリングターゲット
3 凹陥部
4、9 ボンディング鑞材
7 溜り
8 堰

Claims (4)

  1. スパッタリングターゲットに接合するバッキングプレートの面上に堰が設けられ、該堰によって形成されるボンディング鑞材用溜りがターゲットとバッキングプレートとの接する面からはみ出ない大きさであることを特徴とするバッキングプレート。
  2. スパッタリングターゲットとバッキングプレートを備え、該バッキングプレート上に堰が設けられ、該堰によって形成される溜りがターゲットとバッキングプレートとの接する面からはみ出ない大きさであり、かつ該溜りに充填されたボンディング鑞材からなることを特徴とするスパッタリングターゲット−バッキングプレート組立体。
  3. バッキングプレート上に堰を形成し、該堰によって形成される溜りがターゲットとバッキングプレートとの接する面からはみ出ない大きさとし、該溜りにボンディング鑞材を充填した後、スパッタリングターゲットを載せ該ボンディング鑞材を用いて接合することを特徴とするスパッタリングターゲットとバッキングプレートの接合方法。
  4. スパッタリングターゲットとバッキングプレートを備え、該バッキングプレート上に堰が設けられ、該堰によって形成される溜りがターゲットとバッキングプレートとの接する面からはみ出ない大きさであり、かつ該溜りに充填されたボンディング鑞材からなるスパッタリングターゲット−バッキングプレート組立体を用い、バッキングプレートを冷却しながらスパッタリングすることを特徴とするスパッタリング成膜方法。
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