JP3983400B2 - ヒンジ構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、扉等の回転体を回動可能に支持するヒンジ構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平8−151850号公報に、家具の扉を支持するヒンジの可動部および固定部にそれぞれスポット的に磁石を取り付けて、磁石間の吸引力あるいは反発力を利用して扉の開閉動を制御する技術が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記技術ではスポット的に磁石を配置しているため、磁石どうしが対向する特定の角度でしか磁力が発生しない。このため、とくに開閉動作中の被支持物に対しては、磁石どうしが対向する一瞬の間しか作用力を及すことができず、したがって充分な制動作用を得ることが困難となる。また、磁石をスポット的に配置する場合には、回転角度に応じて回転力を自由に変化させることができない。
【0004】
本発明は、被支持物が運動している場合であっても、充分な回転力を発生させることができるとともに、回転角度と回転力との対応関係を自由に設定できるヒンジ構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、軸部材(1)と、前記軸部材(1)に対して回動可能に取り付けられる回動部材(2)とを備えるヒンジ構造において、前記軸部材(1)の外周側及び前記回動部材(2)の内周側にそれぞれ設けられた磁性部(11,21)からなる磁力線発生手段(11,21)を備え、前記磁力線発生手段(11,21)に基づいて前記軸部材(1)と前記回動部材(2)との間に生じる吸引力あるいは反発力は、前記軸部材(1)の磁性部(11)に対する前記回動部材(2)の磁性部(21)の回動位置に応じて変化する勾配を有し、この勾配によって前記軸部材(1)および前記回動部材(2)の間に相対的に吸引力が強くなる方向あるいは反発力が弱くなる方向へ回転力を生じさせるようにしたことを特徴とするヒンジ構造。
【0006】
この発明では、磁力線発生手段(11,21)に基づいて前記軸部材(1)と前記回動部材(2)との間に生じる吸引力あるいは反発力は、軸部材(1)の磁性部(11)に対する回動部材(2)の磁性部(21)の回動位置に応じて変化する勾配を有し、この勾配によって軸部材(1)および回動部材(2)の間に相対的に吸引力が強くなる方向あるいは反発力が弱くなる方向へ回転力を生じさせるようにしたので、被支持物が運動している場合であっても、充分な回転力を発生させることができるとともに、回転角度と回転力との対応関係を自由に設定できる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のヒンジ構造において、軸部材(1)には磁力線発生手段としての磁石または着磁した磁性材(11)が設けられている。
【0008】
この発明では、軸部材(1)に磁石または着磁した磁性材(11)を設けるようにしたので、簡単な構造で回転力を発生させることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のヒンジ構造において、回動部材(2)には磁力線発生手段としての磁石または着磁した磁性材(21)が設けられている。
【0010】
この発明では、回動部材(2)に磁石または着磁した磁性材(21)を設けるようにしたので、簡単な構造で回転力を発生させることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載のヒンジ構造において、磁性材(11,21)の軸方向の幅を軸周り方向について変化させることにより、吸引力あるいは反発力に勾配を付与する。
【0012】
この発明では、磁性材(11,21)の軸方向の幅を軸周り方向について変化させることにより、吸引力あるいは反発力に勾配を付与するので、幅の変化のさせ方に応じて、回転力と回転角との関係を自由に設定することができる。
【0013】
なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図7を用いて、本発明によるヒンジ構造の一実施の形態について説明する。
【0015】
図1(a)は本実施の形態のヒンジ構造を示す分解斜視図、図1(b)は図1(a)の反対方向からヒンジ構造を見た斜視図、図2(a)は軸部材の軸心と直交する断面における断面図、図2(b)は図2(a)のB−B線断面図である。
【0016】
図1(a)に示すように、本実施の形態のヒンジ構造は、円柱状の軸を備える軸部材1と、軸部材1に係合され、軸部材1の軸心周りに回転可能とされた円筒状部材2とを備える。なお、図1(a)では軸部材1と円筒状部材2とを分解して示しており、本実施の形態のヒンジ構造は、実際には図2に示すように、円筒状部材2の孔2aに軸部材1を差し込んで使用される。
【0017】
図1および図2に示すように、軸部材1の外周側には磁性部11が形成されている。本実施の形態の原理を説明する図3に示すように、磁性部11は、軸部材1の外周面がS極となる三角形の磁石を、軸部材1の外周に巻きつけた場合に相当するような磁場を発生させる。一方、円筒状部材2の内周側には、軸部材1の軸心方向に沿って磁性部21が延設されており、図3に示すように、磁性部21は円筒状部材2の内周面がN極となる磁石として機能する。そして、図2に示すように、磁性部11と磁性部21とは互いに対向し、互いに向き合ったS極およびN極により生じる磁力線によって、軸部材1と円筒状部材2との間に吸引力が発生する。
【0018】
軸部材1と円筒状部材2との間で生ずる吸引力は、磁性部11および磁性部21が互いに対向する面積におおよそ比例するから、磁性部11を平面状に展開して示す図3に明らかなように、この吸引力は磁性部21が対向している部位における磁性部11の幅(軸部材1の軸心方向の幅)に略比例することとなる。したがって、磁性部12が対向している部分の磁性部11の幅に応じて、吸引力に勾配が生じ、図3において磁性部21が左方向に移動するに従って吸引力が強くなる。上述のように、円筒状部材2は軸部材1に対して回転可能に取り付けられているので、軸部材1と円筒状部材2との間に生じる吸引力の勾配により、軸部材1と円筒状部材2との間には相対的に吸引力が強くなる方向へ回転する力が発生する。したがって、例えば軸部材1を固定しておけば、円筒状部材2が吸引力の勾配に従って回動し、最終的には、磁性部21が磁性部11の幅が最も大きくなる位置(図3において磁性部11の左端部)に対向する状態で、円筒状部材2が停止することとなる。
【0019】
図4は、上記ヒンジ構造の製造方法の一例を示す図である。図4に示すように、予め着磁されたプラスチックマグネット11Aを軸部材1の外周に接着することにより磁性部11を形成することができる。予め着磁されたプラスチックマグネットを用いる代わりに、軸部材1に磁性材料を取り付けた後、着磁してもよい。また、所定の形状のプラスチックマグネットを円筒状部材2の内周面に接着することにより、磁性部11と同様にして、磁性部21を形成することができる。
【0020】
図5は、本実施の形態のヒンジ構造を実際の蝶番に適用した例を示している。図5に示す蝶番30の一方の取付板22は円筒状部材2に対して固定され、円筒状部材2と一体に軸部材1の軸心周りに回動可能とされている。他方の取付板12は円筒部13を介して軸部材1に対して一体的に固定されている。図5には図示しないが、軸部材1および円筒状部材2には、図1〜図3に示すような磁性部11および磁性部21が形成されている。
【0021】
このような蝶番30は、扉の支持具等として使用することが可能である。例えば、取付板12を扉の取付枠に固定するとともに、取付板22を扉に固定すると、扉には磁性部11および磁性部12の間に生ずる吸引力の勾配に基づく回転力が付与される。この場合、広い範囲の回転角度にわたり扉に対して回転力を与えることができるため、回転中の扉に対しても常に制動力を作用させることが可能であり、例えば、自動的に扉を閉めるためのドアチェッカとして蝶番30を使用することができる。
【0022】
また、例えば、洋式トイレの便座や便座の蓋を回動可能に取り付けるための蝶番として、本実施の形態のヒンジ構造を利用することができる。すなわち、磁性部11および磁性部21に基づく回転力によって、便座や蓋が便器等に対して強く叩きつけられるのを防止することができる。
【0023】
図6は、磁性部11と別形状の磁性部の一例を示している。なお、図6では、図3と同様に、磁性部を平面状に展開して示している。上記実施の形態では、回転力が常に一定方向に加わるように構成されているが、図6に示すような形状の磁性部111を軸部材に形成した場合には、軸部材と円筒状部材との間には、円筒状部材に形成された磁性部121を図6の「A」で示す位置に対向させるような双方向の回転力が発生する。したがって、軸部材に磁性部111を形成した場合には、例えば、回動可能に取り付けられた扉を回転範囲の途中で停止させることができる。このように磁性部の形状を変えることにより、発生する回転力と回転角との関係を自由に変化させ、扉等の回転速度を適切にコントロールしたり、あるいは上述のように扉を途中位置で停止させることができる。
【0024】
図7はS極とN極とを交互にストライプ状に配置した磁性部の例を示している。このようにS極とN極とを交互に配置する場合には、比較的、吸引力を高めやすいという利点がある。上記図1〜図5に示したヒンジ構造では、ヒンジ軸の放射方向に向かう磁力線が発生するような磁性部を形成しているが、図7に示すように、ヒンジ軸の周方向に、すなわち隣接するS極およびN極との間に磁力線が発生する。なお、図7では、図3および図6と同様に、磁性部を平面状に展開して示している。
【0025】
図7(a)に示すように磁性部11と同様の形状である三角形の磁性部211を軸部材に形成し、図7(c)に示すように磁性部21と同様の形状の磁性部221を円筒状部材に形成することにより、図1〜図5に示したヒンジ構造と同様の回転力を発生させることができる。なお、この場合、磁性部211および磁性部221のS極とN極とが対向することにより、吸引力が発生する。
【0026】
磁性部211に代えて、図7(b)に示すような複雑な形状の磁性部311を軸部材に形成するようにしてもよい。磁性部の形状に応じて回転角と回転力との関係を変化させることができる点については、図6の場合と同様である。なお、図7(b)に示す磁性部311を軸部材に形成した場合には、磁性部211を「B」で示す位置に対向させるような双方向の回転力が発生するので、図6の場合と同様、扉等を途中の位置で停止させることが可能である。また、このような形状の磁性部を採用することにより、扉が閉まる際の速度を適切に調整することができる。図7に示す磁性部は、例えば、それぞれの磁性部の形状に対応する形状のプラスチックマグネットを軸部材および円筒状部材に取り付けることによって形成することができる。
【0027】
図8(a)〜図8(c)に示すように、図7(a)〜図7(c)のストライプの向きをそれぞれ90度回転させて、S極およびN極を交互にヒンジ軸の周方向に沿ってストライプ状に配置してもよい。図8(a)の磁性部211Aは磁性部211に代えて、図8(b)の磁性部311Aは磁性部311に代えて、図8(c)は磁性部311Aに代えて、それぞれ形成され、対応する磁性部どうしの形状は同一である。
【0028】
軸部材および円筒状部材の間で、S極とN極とが互いに対向するようにヒンジ構造を組み立てることにより、軸部材と円筒状部材との間に吸引力が働く。したがって、図7に示すヒンジ構造と同様、扉等の回転速度を適切にコントロールしたり、扉等を途中位置で停止させることができる。
【0029】
上述した実施の形態では、軸部材に形成される磁性部の幅を軸部材の周方向に対して変化させることにより回転力を発生させているが、磁性部の幅を代える代わりに、磁力の強さの分布を軸部材の周方向に付与してもよい。
【0030】
また、軸部材および円筒部材に形成される磁性部の役割を逆転させ、円筒部材に形成される磁性部の幅を円筒部材の周方向に対して変化させたり、あるいはこの方向の磁力の強さに一定の分布を持たせるようにしてもよい。
【0031】
さらに、上記実施の形態では、自ら磁力線を発生させる磁性部を軸部材および円筒状部材の両者に設けているが、そのような構成に代えて、どちらか一方の磁性部を、自ら磁力線を発生させることのない強磁性体に置換した構成を採用してもよい。
【0032】
また、磁力線による吸引力を利用する代わりに、磁力線による反発力を利用してもよい。吸引力および反発力の両者を利用してもよい。
【0033】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、磁力線発生手段に基づく吸引力あるいは反発力が、軸部材の軸周りにおける軸部材および回動部材の相対角度に対して勾配を有し、この勾配によって軸部材および回動部材の間に相対的な回転力を生じさせるようにしたので、被支持物が運動している場合であっても、充分な回転力を発生させることができるとともに、回転角度と回転力との対応関係を自由に設定できる。
【0034】
請求項2に記載の発明によれば、軸部材に磁性材を設けるようにしたので、簡単な構造で回転力を発生させることができる。
【0035】
請求項3に記載の発明によれば、回動部材に磁性材を設けるようにしたので、簡単な構造で回転力を発生させることができる。
【0036】
請求項4に記載の発明によれば、磁性材の軸方向の幅を軸周り方向について変化させることにより、吸引力あるいは反発力に勾配を付与するので、幅の変化のさせ方に応じて、回転力と回転角との関係を自由に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態のヒンジ構造を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)の反対方向から見た斜視図。
【図2】図1に示すヒンジ構造を示す断面図であり、(a)は軸部材の軸方向に直交する断面での断面図、(b)は(a)のB−B線断面図。
【図3】回転力が発生する原理を説明する図。
【図4】図1に示すヒンジ構造の製造方法の一例を示す図。
【図5】本発明によるヒンジ構造を適用した蝶番の一例を示す斜視図。
【図6】磁性部の別形状を示す図。
【図7】別実施例を示す図であり、(a)は軸部材に形成された三角形状の磁性部を示す図、(b)は(a)と異なる形状の磁性部を示す図、(c)は円筒状部材に形成された磁性部の形状を示す図。
【図8】さらに別の実施例を示す図であり、(a)は図7(a)のストライプの向きを90度回転させたものを示す図、(b)は図7(b)のストライプの向きを90度回転させたものを示す図、(c)は図7(c)のストライプの向きを90度回転させたものを示す図。
【符号の説明】
1 軸部材
2 円筒状部材
11 磁性部
21 磁性部

Claims (4)

  1. 軸部材と、前記軸部材に対して回動可能に取り付けられる回動部材とを備えるヒンジ構造において、
    前記軸部材の外周側及び前記回動部材の内周側にそれぞれ設けられた磁性部からなる磁力線発生手段を備え、
    磁力線発生手段に基づいて前記軸部材と前記回動部材との間に生じる吸引力あるいは反発力は、前記軸部材の磁性部に対する前記回動部材の磁性部の回動位置に応じて変化する勾配を有し、この勾配によって前記軸部材および前記回動部材の間に相対的に吸引力が強くなる方向あるいは反発力が弱くなる方向へ回転力を生じさせるようにしたことを特徴とするヒンジ構造。
  2. 前記軸部材には前記磁力線発生手段としての磁石または着磁した磁性材が設けられていること
    を特徴とする請求項1に記載のヒンジ構造。
  3. 前記回動部材には前記磁力線発生手段としての磁石または着磁した磁性材が設けられていること
    を特徴とする請求項1に記載のヒンジ構造。
  4. 前記磁性材の前記軸方向の幅を前記軸周り方向について変化させることにより、前記吸引力あるいは反発力に前記勾配を付与すること
    を特徴とする請求項2または3に記載のヒンジ構造。
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