JP3983168B2 - 吸音パネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、騒音吸収用の壁面板などとして使用する吸音パネル、特に、吸音性能と景観性などを高めた吸音パネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、高速道路には、分割された壁面パネルを組み合わせて構成される遮音壁や吸音壁が多用されている。このような壁の中に、縦長或いは横長の壁面パネルを多段に積み重ねて取り付けるものがある。
【0003】
その壁面パネルとして用いられている消音ボックスと吸音パネルの一例を図7及び図8に示す。
【0004】
図7は、中空ボックス21の前面板22にルーバ状の打ち出し窓23を設けた縦長の消音ボックス20であって、中空ボックス21には吸音材24が内蔵されている。
【0005】
図8は、中空パネル31の前面板32に多数の丸孔33を整列させて設けた吸音パネル30であり、このパネルは吸音材34を内蔵し、全体が横長に形成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図7の消音ボックスは打ち出し窓23による前面板の開口率を大きく採れず、吸音性能が低い。また、前面板の前方に庇になる突片が打ち出されており、その突片による光の反射で壁面がぎらつき、景観性が損なわれ易い。加えて、ドライバーにも疲労助長などの悪影響を与える。
【0007】
図8の吸音パネルは、前面板32として無数の丸孔をあけたパンチング板を使用しており、図7の消音ボックスに比べて前面板の開口率が高い。しかしながら、これも前面板の開口率はせいぜい50〜60%止まりであり、それ以上に開口率を高めることができない。そのため、吸音性能をさらに高めようとしてもそれが出来なかった。
【0008】
また、図8の吸音パネルは、前面板の上下の縁を裏側に折り曲げて縁無しの構造にしているため、これを多段に積み重ねて構成される吸音壁は外観にメリハリが無く、ドライバーに心理的な不安感を与える部分があった。
【0009】
この発明は、これらの不具合を無くすこと、即ち、吸音効果を高め、さらに、ドライバーのクルーズ性向上につながる景観性を持たせることを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明においては、対向溝を有する上下一対の横枠を複数の縦枠を介して連結した枠体と、上縁部と下縁部を上下の横枠の溝に挿入して枠体に固定する前面板と、枠体内に設ける吸音材と備えさせ、さらに、枠体を構成する上横枠の裏面に添って上方に突出する係止片と、下横枠の裏面から所定長さ後退した位置から下方に垂下する取り付け穴付き取り付け部を横枠の長手方向に位置をずらしてそれぞれ複数備えさせて吸音パネルを構成したのである。
【0011】
この吸音パネルは、前面板に規則的に配列されてハニカム模様を描く正六角形の打ち抜き孔を設けて前面板の前記打ち抜き孔による開口率を65%以上にしたものが好ましい。さらに、吸音材をカラー不織布で包み、前面板の孔を透してカラー不織布が外部から見えるようにしておくと好ましい。
【0012】
また、前面板は軽量な素材で形成されたもの、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金のパンチング板を用いると好ましい。
【0013】
なお、前記係止片に代えて、上横枠の裏面に下横枠に設けたものと同様の取り付け穴付き取り付け部を備えさせてもよい。
【0014】
【作用】
この発明の吸音パネルは、枠体を構成する上横枠の裏面側に係止片を、また、
下横枠の裏面側に取り付け穴付き取り付け部をそれぞれ設けたので、下段の吸音パネルが損傷したときに上段のパネルを外さずに損傷したパネルを交換することができる。
【0015】
前面板に正六角形の打ち抜き孔を設け、この孔をハニカム模様を描くように規則的に配列したものは、力学的に安定した強度を得て前面板の開口率を65%以上確保することができ、前面板による音の遮蔽面積が減少して吸音性能が向上する。また、打ち抜き孔を有する開口率の高い前面板を採用することで、ぎらつき感も最小限に抑えられる。
【0016】
さらに、縦枠は前面板に覆い隠されるため、多段に積み重ねて施工すると、上横枠と下横枠により生じる連続した横ラインが強調され、ドライバーの心理的な不安感が減少してクルーズ性も高まる。
【0017】
なお、吸音材をカラー不織布でくるんだものは、カラー不織布が外部から透けて見えるので、不織布を任意の色に着色してパネルのギラつき感をより抑えたり、パネルを環境に応じた色にして周囲の景観に溶け込ませたりすることができ、景観性のさらなる向上が図れる。
【0018】
また、前面板としてアルミニウムやアルミニウム合金のパンチング板を用いたものは、パネルの軽量化が図れ、パネルの施工、交換がし易い。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の吸音パネルの実施例を図1乃至図6に基づいて説明する。図1は、道路の掘割に設ける吸音壁1を例に挙げている。この吸音壁1は、掘割のコンクリート壁面Wの外側に、横長に形成したこの発明の吸音パネル10を図2に示すように多段に積み重ねた状態に取り付けて構成される。
【0021】
吸音パネル10は、図3に示すように、上横枠11、下横枠12、および両横枠11、12を連結する複数本の縦横枠13からなる枠体14と、アルミパンチング板で形成される開口率65%以上の前面板15と、不織布16で包み込んだ吸音材17とで構成される。
【0022】
上横枠11は、図4に示すように、断面逆U字状のフレーム11aの裏面に上方に突出した係止片11bを設けて成る。また、下横枠12は、断面U字状のフレーム12aと、このフレーム12aの裏面に取り付けた取り付け部12bとから成る。取り付け部12bは、フレーム12aに溶接するプレートを曲げ加工してフレーム12aの裏面から所定長さ後退した位置に垂下部を形成し、その垂下部に横長の取り付け穴12cを設けた構造にしている。最上段に設置される吸音パネル10の上横枠11は、係止片11bに代えて下横枠に設けた取り付け穴付き取り付け部12bと同様の取り付け部11c(図6参照)を設けたものが用いられる。
【0023】
枠体14の両サイドに配置する縦枠13は、パネルに強度を持たせるために断面L型のフレームで形成される。中間縦枠も枠体の強度を高め得るものが好ましいが、この中間縦枠は前面板15の裏側に配置する吸音材17を外れ止めして保持できるものであればよく、断面L型のフレームに限定されない。
【0024】
前面板15は、両端をコの字状に折り曲げてパネルの両端に配置した縦枠13の外面に添わせるようにしている。この前面板15には、正六角形の打ち抜き孔18をハニカム模様を描くように規則的に配列して設けてある。その打ち抜き孔18の配列状態の詳細を図5に示す。この孔18の開口寸法(対辺間の距離)w1を例えば20mm、隣り合う孔間の骨格幅w2を3mmに設定した場合、前面板15の開口率は75.6%にもなり、音を遮蔽する部分の面積が大幅に減少してパネルの吸音性能が大きく向上する。
【0025】
この打ち抜き孔18を設けた前面板15は、上縁部と下縁部を上下の横枠11、12の対向した溝に挿入して枠体14の前側にリベット等の締結部材を用いて固定する。
【0026】
吸音材17は、軽量で吸音効果の高いものが好ましい。ここではグラスウールを用い、ばらけ防止のためにこれをカラー不織布16でくるみ、パネル状に成形したものを前面板と縦枠13との間に挿入したが、グラスウールに限定されるものではなく、多孔質材なども使用できる。
【0027】
カラー不織布16は、ニードルパンチング処理して微細な小孔を無数にあけ、さらに、難燃性加工を施したものを用いている。このカラー不織布16の色は、パネルのぎらつき感を和らげるものや周囲の環境に適合するもの、上下の横枠とは色違いのものを選択する。一体性のある吸音材を使用する場合には、不織布16を省略して吸音材に直に着色することができる。
【0028】
このように構成した吸音パネル10を施工現場に搬入し、最上段のパネルから取り付けを行って、掘割のコンクリート面などに図1に示すような吸音壁1を構築する。
【0029】
このときの吸音パネル10の取り付けは、以下のようにして行う。最初に取り付ける最上段の吸音パネル10は、図6に示すように上横枠11と下横枠12にそれぞれ取り付け部11c、12bを備えている。そこで、掘割のコンクリート壁面Wに植設されたアンカーボルト2を取り付け部11c、12bの取り付け穴に通し、止めナット3と締付けナット4で取り付け部11c、12bを固定して最上段の吸音パネル10の取り付けを終える。
【0030】
次に、上から2段目の吸音パネルの上部に設けられている係止片11bを、既に固定し終えた最上段の吸音パネルの下横枠の裏側に挿入してその下横枠の裏面に係止させ、上から2段目のパネルの下横枠12に設けられている取り付け部12bを、それに対応させてコンクリート壁面Wに植設されているアンカーボルト2に上記と同様の作業を行って固定する。
【0031】
以後、最下段の吸音パネルの取り付けが完了するまで同様の作業を繰り返す。
【0032】
なお、図示の吸音パネル10は、軽量化、コスト低減、吸音性能向上のために背面板を持たない構造にしており、従って、この吸音パネル10を屋外に設置する場合には、図6に示す水切り板5を設けて、最上段吸音パネルとコンクリート壁面Wとの間の隙間を塞ぐのが好ましい。
【0033】
また、アンカーボルト2の植設位置は鉄筋の配筋位置による規制を受けて設計位置からずれることがある。このときの横方向のずれは取り付け部12bに設けた取り付け穴12cの融通を利用して吸収することができるが、横長の取り付け穴12cでは縦方向のずれを吸収することができないので、必要があれば、位置のずれたアンカーボルトと取り付け部との間のずれを吸収して両者を連結することを可能ならしめる補助具を採用する。
【0034】
以上のようにして組み上げた吸音壁は、前面板15の開口率が大きく、吸音性能が高い。また、カラー不織布16が透けて見えるため、ぎらつき感が少ない。さらに、上下の横枠11、12がカラー不織布16と色違いになっているため、横枠11、12よって形成される横のラインが強調されてよく目立つ。また、吸音パネル10を上から下に向けて取り付けているので、下側の吸音パネルの損傷時の交換を上側のパネルを外さずに安全に行うこともできる。
【0035】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明の吸音パネルは、係止片と取付け穴の付いた取り付け部を設けて上から下に向けてパネルを取り付けられるようにしたので、下段のパネルの交換を簡単に行える。
前面板に設ける打ち抜き孔を正六角形の孔にして力学的に安定した強度と、65%以上の開口率を確保したものは、吸音性能が高く、高性能の吸音壁を実現することが可能になる。
【0036】
また、開口率65%以上の前面板を採用したものは、パネルのぎらつき感が減少し、ドライバーに負担がかかりにくくなる。
【0037】
さらに、上下の横枠によって車の走行方向に連続した横のラインが形成され、これにより、ドライバーに与える心理的な不安感が減少し、クルーズ性が良く走行しやすい道路をつくり出せる。
【0038】
このほか、吸音材をカラー不織布で包んだものは、内側のカラー不織布が外部から透けて見えるため、ぎらつき感がより少なく、環境に応じた色彩景観を創出することも可能になり、ドライバーに疲労感を与えることがなくなる。
【0039】
また、縦枠13、固定用のアンカーボルト2、係止片11b、取り付け部11cおよび12bが覆い隠されるため、見栄えの良い吸音壁を構成することができる利点がある。
【0040】
なお、この発明は、従来の取り付け構造を採用した吸音パネルや背面板を付加した吸音パネル等にも適用できる。また、この発明の吸音板は、道路の吸音壁用として特に適するが、道路用以外の吸音壁にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の吸音パネルを用いて構成された吸音壁の断面図
【図2】同上の吸音壁の正面図
【図3】(a)この発明の吸音パネルの実施形態を示す部分破断正面図
(b)同上の吸音パネルの断面図
【図4】図3の吸音パネルを裏側から見た斜視図
【図5】前面板に設けた孔の配列状態を示す図
【図6】パネル取り付け部の詳細を示す断面図
【図7】(a)従来の消音ボックスを示す正面図
(b)同上の消音ボックスの断面図
【図8】(a)従来の吸音パネルを示す正面図
(b)同上の吸音パネルの断面図
【符号の説明】
1 吸音壁
2 アンカーボルト
3 止めナット
4 締付けナット
5 水切り板
W コンクリート壁面
10 吸音パネル
11 上横枠
11a フレーム
11b 係止片
11c 取り付け部
12 下横枠
12a フレーム
12b 取り付け部
12c 取り付け穴
13 縦枠
14 枠体
15 前面板
16 不織布
17 吸音材
18 正六角形の打ち抜き孔
Claims (5)
- 対向溝を有する上下一対の横枠を複数の縦枠を介して連結した枠体と、上縁部と下縁部を上下の横枠の溝に挿入して枠体に固定する前面板と
、枠体内に設ける吸音材とを有し、枠体を構成する上横枠の裏面に添って上方に突出する係止片と、下横枠の裏面から所定長さ後退した位置から下方に垂下する取り付け穴付き取り付け部を横枠の長手方向に位置をずらしてそれぞれ複数備えさせた吸音パネル。 - 前記前面板に規則的に配列されてハニカム模様を描く正六角形の打ち抜き孔を設けて前面板の前記打ち抜き孔による開口率を65%以上にした請求項1に記載の吸音パネル。
- 前記吸音材をカラー不織布で包み、前面板の孔を透してカラー不織布が外部から見えるようにした請求項2に記載の吸音パネル。
- 前記前面板としてアルミニウムまたはアルミニウム合金のパンチング板を用いた請求項1乃至3のいずれかに記載の吸音パネル。
- 前記係止片に代えて、上横枠の裏面に下横枠に設けたものと同様の取り付け穴付き取り付け部を備えさせた請求項1乃至4のいずれかに記載の吸音パネル
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