JP3982885B2 - 金型洗浄装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は合成樹脂成形金型の洗浄装置に関し、詳しくは、金型の樹脂成形面等に付着する樹脂カスやガス焼け等の付着物を短時間で確実に除去することが出来るようにした金型洗浄装置において、特に、給電機構の改良を図るものである。
【0002】
【従来の技術】
合成樹脂用金型は、樹脂製品の成形量に伴ってその内面に樹脂カスや、ガスによる焼け跡等の付着物が付着し、これらの付着物は、後に樹脂成形する製品の離型を悪くして、成形不良につながる等の不都合が生じる。よって、成形用金型は定期的に取り外して洗浄し、上記付着物を除去しなければならない。
【0003】
従来、この種の成形金型用の洗浄装置として、本出願人は特開平7−214570号において図11および図12に示す洗浄装置を提供している。この洗浄装置は電解洗浄と超音波洗浄とを併用して金型の洗浄を短時間で効率良く行うことができる利点を有するものである。図11および図12中において、1は洗浄槽、2は洗浄槽内に着脱自在に挿入する金属製の金型保持カゴ、3は洗浄槽内に吊り下げるプラス側電極であり、マイナス極側となる上記金型保持カゴ2内に保持された金型5との間に電流を流すと共に、洗浄槽1の底面に取り付けた超音波振動子4により洗浄槽内の電解洗浄液を超音波振動を発生させ、よって、電解洗浄と超音波洗浄とを併用して、金型5の洗浄を行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記した金型洗浄装置は電解洗浄と超音波洗浄とを併用しているため、極めて効率良く短時間で金型の付着物を除去でき、洗浄効果が優れた利点を有するものであるが、上記プラス側電極3およびマイナス側に接続する金型保持カゴ2は夫々洗浄槽に着脱自在に取り付けるため、簡単確実に電源側と接続する必要があるが、上記した従来の装置は複雑で手数がかかる問題があった。
【0005】
即ち、従来は金型保持カゴの取っ手の先端マイナスコードのクリップを接続する一方、洗浄槽の上にプラス電極を載置し、プラスコードのクリップをプラス電極に接続しているが、この接続作業に手数がかかると共に、電気接続信頼性の点で問題がある。さらに、洗浄槽の中から外へ金型やカゴを出し入れする度に、金型やカゴの周囲に付着した洗浄液がプラス極側およびマイナス極側のコードやターミナルなどの露出した部分に滴り、滴った部分から洗浄液が浸透して腐食を発生させ、通電性に悪影響を与える問題があった。特に、電解洗浄液の表面張力が34Dynで、水は73Dynであるため、水の2倍の浸透力があり、腐食が発生しやすい。
【0006】
さらに、従来は電線群を集束したワイヤハーネスからなるコードを用いて電源側と接続しているが、洗浄水が集束した電線の隙間に浸透し、電線に腐食が発生しやすい問題もある。
【0007】
さらにまた、洗浄作業中にプラス電極が金型と接触した場合、接触部分に損傷が発生し、特に、金型に損傷が生じると、洗浄した金型により成形する製品に傷が反映して製品の不要な突起が形成され所定形状の成型品が得られない問題がある。特に、前記した従来例のようにプラス電極を揺動させた場合、金型と接触しやすくなる欠点がある。
【0008】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたもので、給電関係の各部の機構を改良し、簡単確実に洗浄作業が行えると共に、上記ショートによる問題、導電回路への腐食発生の問題等をなくすことを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、電解洗浄液を収容する洗浄槽内に、被洗浄物である金型を金属製カゴに保持して電解洗浄液に浸漬すると共に、該洗浄槽内に電極材を吊り下げ、該電極材と上記金属製カゴとを電源のプラス側とマイナス側とに接続し、上記電解洗浄液を介して通電して上記金型の電解洗浄を行う装置において、
上記電極材は、洗浄槽の上方に架け渡される通電支持棒に所定間隔をあけて複数設けられ、各電極材は、上記金属製カゴに保持される上記金型の上方に吊り下げられるとともに、それぞれ上下高さ調整可能に取り付けられ、
電源側から、上記各電極材、電解洗浄液、金属製カゴに保持される金型及び金属製カゴへと通電する回路中に、電解洗浄の際に上記金型が上記各電極材と接触あるいは急接近することによって設定値以上の電流が流れると通電を遮断する回路を備えていることを特徴とする金型洗浄装置を提供している。
【0010】
上記のように設定値以上の電流が流れると通電を遮断する回路を設けておくと、電極材と金型とが接触してショートが発生し、過電流が流れた場合、あるいは、カゴ内で金型が倒れて電極材と急接近して電流値が設定値以上になった場合には、自動的に通電が遮断されるため、金型あるいは/および電極材の接触した箇所に損傷が生じるのを防止できる。
【0011】
上記出力電圧および電流を、手動式、自動式、あるいは自動/手動切替式で選択して設定可としている。このように洗浄する金型の量、および付着物の厚さ等に応じて電圧(電流)を調整し、最適な電流量として洗浄効果を高めることができる。なお、最大電流量は予め設定されている。
【0012】
また、本発明は、電解洗浄液を収容する洗浄槽内に、被洗浄物である金型を金属製カゴに保持して電解洗浄液に浸漬すると共に、該洗浄槽内に電極材を吊り下げ、該電極材と上記金属製カゴとを電源のプラス側とマイナス側とに接続し、上記電解洗浄液を介して通電して上記金型の電解洗浄を行う装置において、
上記電極材は、洗浄槽の上方に架け渡される通電支持棒に所定間隔をあけて複数設けられ、各電極材は、上記金属製カゴに保持される上記金型の上方に吊り下げられるとともに、それぞれ上下高さ調整可能に取り付けられ、
電源側から、上記各電極材、電解洗浄液、金属製カゴに保持される金型及び金属製カゴへと通電する回路中を流れる電流が、電解洗浄の際に上記金型が上記各電極材と接触あるいは急接近することによって所定変化率よりも急激に変化した場合に通電を遮断する回路を備えていることを特徴とする金型洗浄装置を提供している。
該構成とすると、電極材と金型あるいはカゴが接触する寸前、あるいは接触した時に急激に電流量が増加するため、これを検出して通電を遮断できる。
【0013】
また、本発明は、電解洗浄液を収容する洗浄槽内に、被洗浄物である合成樹脂成形用金型等の金型を金属製カゴに保持して電解洗浄液に浸漬すると共に、該洗浄槽内に電極材を吊り下げ、該電極材と上記金属製カゴとを電源のプラス側とマイナス側とに接続し、上記電解洗浄液を介して通電して上記合成樹脂成形用金型の電解洗浄を行う装置において、
上記洗浄槽の上面開口周縁に絶縁ベースを取り付け、該絶縁ベース上にプラス側とマイナス側の金属製給電板を固定し、該マイナス側の金属製給電板と導通接触させて上記金属製カゴを洗浄槽に着脱自在に取り付けると共に、上記プラス側の金属製給電板に電極材の通電支持棒の両端を導通接触させて着脱自在に軸架し、かつ、
上記各金属製給電板を、ワイヤハーネスを用いずに、上記洗浄槽の外面に沿って配置するブスバーを介して電源器と接続していることを特徴とする金型洗浄装置を提供している。
【0014】
上記金属製給電板に、金属製カゴおよび電極材の通電支持棒を位置決め保持手段を設けている。該金属製給電板はステンレス、チタン、真鍮、リン青銅等からなり、留め具で上記絶縁ベースに固定すると共に、該給電板に通した通電ボルトを絶縁ベース内を貫通させ、その下端を導電性金属板からなるブスバーと接続し、該ブスバーを電源側へと配索している。上記金属製給電板には位置決め突起を設け、該突起に当接してカゴの支持腕および導通支持棒を載置することにより位置決め保持している。さらに、バネ板等を取り付けて、金属製給電板上に位置決めしたカゴの支持腕および導通支持棒を固定している。このように、洗浄槽上面の金属製給電板上にカゴの支持腕および導通支持棒を略ワンタッチで位置決め固定することができる。
【0015】
上記洗浄槽をフレームに搭載し、該フレームに外カバーを取り付け、該外カバーにより密閉した部分に上記ブスバーを収容配置し、上記給電板から電源器までの導電材を外部に露出させないようにしている。このように、ブスバーを密閉空間に配置すると、洗浄液がブスバーにかからず、洗浄液により導電材が腐食するのを防止できる。
【0016】
上記外カバーにコード引掛用フックを設けている。該フックに、本洗浄装置と建屋の電源とを接続するコード等を引っ掛けておくと、コード類の収容、管理が容易になる。
【0017】
洗浄時間、電圧・電流設定用等の操作器、および表示器を設けたボックス部を外カバーに露出させて設け、該ボックス部を透明カバーで閉鎖すると共に、該透明カバーを開閉可としている。このように操作器、表示器を取り付けたボックス部に透明カバーを取り付けると、洗浄液がかからないようにすることができる。
【0018】
洗浄作業終了時および非常停止時に作動するブザーと共に、点灯式ライト、点滅式ライトあるいは/および回転式ライトを設けることが好ましい。このライトは、洗浄装置の上面等の作業員の目につきやすい箇所に取り付けることが好ましい。
騒がしい工場の中では、作業終了のブザーが聞こえない場合がある。よって、作業終了時および非常停止時には目につきやすい点灯したままのライト、ライトが点滅するもの、あるいは点灯ライトが回転を併用することが好ましい。
【0019】
上記電極材を収容保持するボックスを上記洗浄槽の外部に付設していることが好ましい。すなわち、洗浄後に金型を保持カゴと共に洗浄槽から取り出す場合、先に電極材を洗浄槽から取り出しているために、該電極材を仮置きする箇所を必要となる。よって、収容ボックスを設けておくと使い勝手がよくなる。
【0020】
上記洗浄槽内の電解洗浄液に超音波振動を発生させる振動子を設けていることが好ましい。即ち、洗浄槽内での金型の洗浄は電解洗浄のみでも効果があるが、さらに超音波振動による洗浄を組み合わせると、洗浄力を強めることができる。
【0021】
上記洗浄槽内に収容する電解洗浄液は、水酸化ナトリウムあるいは/および水酸化カリウム、EDTAのアルカリ塩、グルコン酸ナトリウムを含むアルカリ溶液からなり、該電解洗浄液を循環あるいは洗浄層内に貯留している。上記EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)のアルカリ塩としては、EDTAのカルボン酸基の水素原子の全部あるいは一部がアルカリ金属原子で置換された化合物であり、具体例としては、EDTA2ナトリウム塩、EDTA4ナトリウム塩を挙げることができる。
【0022】
より詳しくは、本発明に係わる洗浄装置は、上記した各電気機構(給電機構)と、
洗浄槽内の電解洗浄液を振動させる上記超音波振動子と、
内部に被洗浄物となる金型を収容し、該金型と共に上記洗浄槽内に挿脱自在に装着して上記電解洗浄液に浸漬されるメッシュ状の金属製のカゴと、
上記電解洗浄液内に挿脱自在に浸漬する電極と、
上記電極に陽極(+)を供給すると共に上記カゴを介して金型に陰極(−)を供給する給電機構と、
洗浄水を洗浄槽の底面から排出してポンプで洗浄槽の上面へと戻す循環配管と、
洗浄槽の上面を作業時に閉鎖するカバー、作業停止時に閉鎖する蓋と、
上記電解洗浄液を所要温度に制御する機構と
を備えていることが好ましい。さらに、上記循環配管には、ポンプの上流側に、内部にろ布を備えた浄化タンクを介在させ、排出した電解洗浄液を洗浄して上記循環用ポンプにより、洗浄槽内に供給することが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施形態を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1乃至図10は本発明の金型洗浄装置の実施形態を示し、該洗浄装置は超音波方式と電解方式の洗浄方法を併用して、金型5に付着した樹脂等の付着物を短時間で確実に除去するようにしている。
【0025】
洗浄装置は、キャスター付のフレーム10の上部仕切板10a上の一側部に洗浄槽11を固定しており、他側部に電源器12、制御器13、循環ポンプ14、電解用変換器17等の所要の駆動装置を搭載し、かつ、下部仕切板10b上に浄化タンク16、超音波発生器90などを搭載して、フレーム10の外周面を外カバー18で閉鎖している。
【0026】
上記洗浄槽11は上面開口のボックス形状で、その外周面の略全面に沿ってシリコンゴムヒータからなる面状ヒータ15を取り付け、該面状ヒータ15を上記制御器13を介して電源器12に接続し、所要時にオンして洗浄槽11を介して内部に収容する電解洗浄液20を60℃に加熱するようにしている。
【0027】
上記電解洗浄液20は水に水酸化ナトリウムあるいは/および水酸化カリウムにグルコン酸ナトリウム等を混合したアルカリ溶液を用いている。該電解洗浄液20は洗浄槽11内に、被洗浄物である金型5の量に応じて所要レベルまで収容しており、所要時に洗浄槽11の底壁11aに設けた取出口11bより循環管30に排出し、濾布を備えた浄化タンク16内に導いて濾過した後、図2に示すように、循環ポンプ14で吸い上げて、洗浄槽11の底面より洗浄槽11内に循環させている。なお、循環ピンプ14で吸い上げた後、洗浄槽11の開口上面側から投入して循環させるようにしてもよく、かつ、上記濾布を備えた浄化タンク16は循環ポンプ14の下流側に配置してもよい。さらに、電解洗浄液の量は、洗浄槽11にゲージ(図示せず)を取り付けて制御しても良いし、洗浄槽11の内周面にマーキングを施して制御しても良い。
【0028】
上記循環管30には温度センサー19を取り付けて、電解洗浄液20の温度を常時検出し、該検出値を上記制御器13に入力し、検出値が上限設定値(本実施形態では70℃に達すると、上記面状ヒータ15への通電をオフしている。また、検出値が下限設定値(本実施形態では50℃)に達すると、面状ヒータ15への通電をオンしている。さらに、制御器13にはタイマー(図示せず)を設置して、始業前から作動させて、始業時には電解洗浄液20の温度が50℃〜70℃の範囲で約60℃になっているようにしている。なお、電解洗浄液の温度は上記範囲に限定されず、30℃〜70℃の範囲であれば好適に使用できる。
【0029】
上記洗浄槽11はステンレス製で、その上面開口を囲む外周フランジ部の上面にジュラコンからなる絶縁ベース21を取り付けている。該洗浄槽11の内部には金属製の金型保持カゴ22を、その支持腕22aを上記絶縁ベース21に吊り下げて着脱自在に吊り下げるようにしており、かつ、洗浄槽11内で、洗浄槽11の底面、内周面にカゴ22が接触しないようにしている。該金型保持カゴ22はパンチングメタルからなる底部22bより上記支持腕22aを突設し、該支持腕22aに設けた上部屈折部22cを絶縁ベース21上に載置して取り付けている。
【0030】
上記絶縁ベース21の対向する2辺上にステンレスあるいはチタン製のマイナス側給電板23を固定し、金型保持カゴ22の支持腕22aの一部を位置決め載置している。即ち、各給電板23に一対のバネで付勢した押さえ板23aを設け、支持腕22aを押さえ板23aで押さえることにより所定位置に固定している。
【0031】
なお、金型保持カゴ22の支持腕22aは洗浄槽11の内面と接触して通電しないように絶縁被覆を施しており、上記給電板23との接触部分のみ絶縁被覆を設けていない。
【0032】
上記給電板23は図8に示すように、絶縁ベース21内を貫通する長尺な通電ボルト24で絶縁ベース21に固定し、通電ボルト24の下端をナット63でブスバー25に連結し、該ブスバー25を電解用変換器17のマイナス側電極に接続している。上記通電ボルト24はジュラコンパイプ85に通して絶縁と防水を図っており、また、ブスバー25は耐熱性および絶縁性を有するチューブ26で外装している。
【0033】
同様に、上記絶縁ベース21の他の対向する2辺上に、同様の給電板27を取り付けて、前記マイナス側給電板23と同様に、通電ボルト、ブスバー、電解用交換気17のプラス側電極と接続している。この給電板27上には、図5および、図9に示すように、洗浄槽11の中央部に着脱自在に軸架する通電支持棒28の両端を押さえ板27aにより押さえて位置決め固定する。
【0034】
上記のように金型保持カゴ22および電極材29と接続する通電ボルト、ブスバー等の導電材は洗浄槽11の外面に沿って取付られ、外カバー18でカバーした密閉空間に位置させているため、洗浄液がかかることがない。
【0035】
上記通電支持棒28には、長さ方向に一定間隔をあけて取付穴28aを設け、これら取付穴28aに、上部縦軸29aの下端を横方向に2又に分岐させ、これら分岐部29bの先端を下向きに屈曲させ、その下端に円形の電極板29cを揺動可能に取り付けた電極材29を上下長さ調整可能に取り付け、通電支持棒28に間隔をあけて並列に吊り下げた電極板29cが金型および保持カゴ22と接触しないようにしている。即ち、上部縦軸29aの外周面にネジを形成しておき、該上部縦軸29aを取付穴28aに挿入し、該上部縦軸29aに蝶螺子34を締め付けて通電支持棒28に取り付けることにより、螺子締め位置を変えて、円形電極板29cの高さを調節している。
【0036】
上記導電棒28、電極材29の上部縦軸29a、分岐軸29bは鉄、 ステンレス、チタン等により形成し、円形の電極板29cは鉄、ステンレス、チタンあるいはグラファイト(100%の炭素を1500℃で焼結したもの)で形成している。また、電極板29cの下面以外は表面を絶縁処理しているが、給電板27と接触させる導電棒28の両端は露出させて電気接続がなされるようにしている。
【0037】
上記電解用変換器17は交流の電源器12と接続し、電流を交流から直流に変換して電解洗浄用の上記電極と金型保持カゴ22に電流を供給している。なお、電源器12と電解用変換器17とは一体として構成したものを用いてもよい。上記のように、電極材29を電解用変換器17のプラス側、上記金型保持カゴ22をマイナス側に接続していることにより、電解洗浄液20を介して通電させて電解方式の洗浄を行うようにしている。
【0038】
上記電源側から、上記電極材、電解洗浄液、金属製カゴへと通電する回路中には、図10に示すように出力電圧および電流の手動設定部70と、機種に応じてメーカーサイドで設定する最大電流設定部71、自動/手動設定切り替えスイッチ72を設けている。さらに、上記電源器12および制御器13内には、図10に示すように、コンピュータ(CPU)73と接続する電源回路74、タイミング制御回路75、出力電圧/出力電流制御回路76、電流値検出回路77、電圧/接触検出回路78、A/Dコンバータ79、入出力回路80を設けている。なお、上記電流値検出回路と電圧値検出回路との検出値は切替表示器14cで表示できるようにしている。
【0039】
上記設定部70と71とは上記A/Dコンバータ79と接続し、また、上記切り替えスイッチ72および自動表示ランプ81は上記入出力回路80と接続している。
【0040】
また、洗浄槽11の電極材29と接続する給電板27と電源とを接続する回路82に電流検出器83を介設し、該電流検出器83を上記電流値検出回路77と接続すると共に、金型保持カゴ22と接続する給電板23とアースとの間に通電をオン/オフする通電切替素子84を介設し、該切替素子84を上記出力電圧/出力電流制御回路76と接続している。
【0041】
洗浄する金型の量および付着物の量等に応じて、上記手動設定部70で電圧(それに応じて電流)をユーザーが設定できるようにしており、この設定された電圧に対応する電流が常時流れる自己保持できるようにCPU73で設定している。その結果、洗浄する量に応じて、最適の電流が流れ、洗浄能力を高めることができる。
【0042】
さらに、上記手動設定した電圧に対応する最大電流量が流れたことを電流検出器83で検出した場合、さらに、所定の緩やかな電流変化率を越える急激な変化を検出した場合には、上記通電切替素子84を動作して通電を遮断するようにCPU73で設定している。
【0043】
よって、上記金型が倒れる等により電極材29と急接近した場合および接触した場合には流れる電流量が設定値を越えるため、あるいは電流量が急激に変化するため、自動に通電が遮断される。その結果、接触した金型と電極材に損傷を発生させない。電流量が緩やかに変化した場合には、設定電流量となるように通電する電流量を自動調節している。
【0044】
さらに、上記洗浄槽11の底面には、超音波方式の洗浄を行うための超音波振動子91を取り付け、該振動子91を超音波発生器90と接続し、洗浄槽11内の電界洗浄液20に超音波振動を発生させるようにしている。該超音波振動は24KHz〜40KHzの範囲、または24KHzと30KHzとの周波数で交互に発振させている。
【0045】
さらにまた、上記フレーム10に取り付ける外カバー18にはルバー40を設け、密閉されたフレーム内部に熱が籠もらないようにして、洗浄槽11や超音波振動子の異常加熱を防止している。さらに、外カバー18には電線コードを引っかけるフック42を設け、電源器12と外部電源(図示せず)とを接続するワイヤー43を引っかけるようにしている。
【0046】
上記外カバー18には操作盤および表示盤の取付用凹部45を設け、該凹部に上記表示ランプ81を含む表示器41Aおよび切替スイッチ72、手動電圧設定部70、作業時間タイマー等の操作器41Bを設置しており、該表示用凹部45を透明カバー46で開閉自在としている。このように、透明カバー46を取り付けると、洗浄液がかかることを防止でき、かつ、該透明カバー46を開閉自在としているため、ユーザーは洗浄量に応じて洗浄装置の能力を適宜に設定することができる。
【0047】
上記表示器41Aには、作業終了時および非常停止時に通電が停止した時に表示するランプを含むが、それ以外に回転式ランプ80を洗浄装置のフレームの上面に設置している。上記回転式ランプ80に代えて点滅式ランプあるいはライトがつきっぱなしの点灯式ライトを用いてもよい。このように、作業員が目につく位置に目立つランプを設置しておくと、作業の終了および非常停止を迅速に知らしめることができる。
【0048】
さらにまた、外カバー18には電極材29の仮置き用のボックス47を付設している。該ボックス47は外カバー18に着脱自在に取り付ける構成とし、必要時のみ取り付けるようにしてもよい。この設置ボックス47には、洗浄槽11に金型保持カゴ22を挿入する場合および洗浄槽11より取り出す場合に、電極材29を洗浄槽11から取り外しておく必要があり、この時に電極材29を設置ボックス47に仮置きしておく。
【0049】
また、洗浄槽11の上面開口外周の絶縁ベース21には、作業時に、洗浄槽開口に向かってシュート状に収縮する形状の幅広の樋48を着脱自在に取り付けている。さらに、洗浄槽11の上面開口に取り付けるカバー49を設けており、該カバーにガス排出管60を接続している。該カバー49を洗浄槽に被せると、作業時に発生するガスが拡散するのを防止できると共に、外部へ排出することができる。また、作業停止時に被せておくと、ゴミ等が洗浄槽11内に落下するのを防ぐことができる。
【0050】
上記構成からなる洗浄装置では、作業時に、まず、洗浄槽11に電解洗浄液20を投入し、ついで、洗浄槽11の外周面に取り付けた面状ヒータ15をオンして加熱し、洗浄槽11内の電解洗浄液20を約60℃まで加熱する。その後、金型保持カゴ22に洗浄する金型5を搭載して洗浄槽11内に取り付け、金型保持カゴ22を給電板23と接触させてマイナス極側と接続させると共に、電極材29も洗浄槽11に取り付け、給電板27と接触させてプラス極側と接続させる。
【0051】
電解洗浄液が60℃に達した後に、作業タイマーを作動させて、給電板23、27から金型保持カゴ22と電極材29とに通電し、電解洗浄液20を通して、金型保持カゴ22に保持された金型5の電解洗浄を行う。このとき、電解用変換器17の電圧を調整し、1dm2当たり2〜7Ampで出力する直流電圧を設定している。同時に24KHzと30KHzの超音波振動を発生させる振動子を動作させる。
【0052】
上記タイマーで設定した作業時間が経過すると、通電が自動停止され洗浄作業を終了する。金型5の付着物が完全に除去出来なかった場合には、再度、タイマー設定して洗浄作業を行う。該洗浄作業時に、電極材29と金型5とが接触あるいは急接近した場合には、自動的に通電が遮断される。
【0053】
電解方式と超音波方式の洗浄方法を併用した本発明の洗浄装置は、超音波方式の洗浄方法により、金型5の外部より樹脂カス等の付着物に振動を与えて付着物を浮き上がらせて電解洗浄液を侵入させ又は付着物を破壊すると共に、電解方式の洗浄方法により金属表面の内部より発生する水素ガスにより金型5から付着物を浮き上がらせ、付着物を金型5より剥離して除去する。かつ、其の際、電解洗浄液20を約60℃に加熱しているため、付着物をやわからくする等、強い洗浄力を発揮させることができる。
【0054】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明に係る電解洗浄方式の金型洗浄装置によると、電解洗浄液を介して電極材と金型とを通電する回路中に電流検出器を介設し、金型(金型保持カゴ)と電極材が接触あるいは急接近した時に自動的に通電を遮断できるため、接触してショートした場合に発生する金型および電極材の損傷を防止できる。
【0055】
さらに、洗浄する金型量および除去する付着物の量に応じてユーザーが電圧(電流)を設定すると、それに応じて、設定された電流量となるように常時自己保持できるため、洗浄力を最適に設定でき、能率のよい洗浄作用を行わせることができる。
【0056】
さらにまた、電極材を支持する通電支持棒および金型保持カゴを洗浄槽の上面に設置した給電板に載置するだけで、ワンタッチで電気接続することができ、作業手数を減少することができる。かつ、上記給電板と電源側とを接続するブスバー等の導電材は、洗浄液がかからない外カバー内部に配置しているため、これら導電材に洗浄液がかかって腐食が発生するのを防止できる等の種々の利点を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の洗浄装置の第1実施形態を示す概略平面図である。
【図2】 洗浄液の循環経路を示す概略図である。
【図3】 図1の概略正面図である。
【図4】 上記洗浄装置の使用時の斜視図である。
【図5】 図1の洗浄装置の要部斜視図である。
【図6】 図5の一部拡大斜視図である。
【図7】 金型保持カゴの斜視図である。
【図8】 給電機構を示す概略図である。
【図9】 洗浄槽の上面に樋を取り付けた状態の斜視図である。
【図10】 上記洗浄装置の概略電気回路図である。
【図11】 従来例の斜視図である。
【図12】 上記従来例の要部断面図である。
【符号の説明】
5 金型
10 フレーム
11 洗浄槽
12 電源器
13 制御器
15 面状ヒータ
22 金型保持カゴ
23、27 給電板
28 導通支持棒
29 電極材
Claims (12)
- 電解洗浄液を収容する洗浄槽内に、被洗浄物である金型を金属製カゴに保持して電解洗浄液に浸漬すると共に、該洗浄槽内に電極材を吊り下げ、該電極材と上記金属製カゴとを電源のプラス側とマイナス側とに接続し、上記電解洗浄液を介して通電して上記金型の電解洗浄を行う装置において、
上記電極材は、洗浄槽の上方に架け渡される通電支持棒に所定間隔をあけて複数設けられ、各電極材は、上記金属製カゴに保持される上記金型の上方に吊り下げられるとともに、それぞれ上下高さ調整可能に取り付けられ、
電源側から、上記各電極材、電解洗浄液、金属製カゴに保持される金型及び金属製カゴへと通電する回路中に、電解洗浄の際に上記金型が上記各電極材と接触あるいは急接近することによって設定値以上の電流が流れると通電を遮断する回路を備えていることを特徴とする金型洗浄装置。 - 電解洗浄液を収容する洗浄槽内に、被洗浄物である金型を金属製カゴに保持して電解洗浄液に浸漬すると共に、該洗浄槽内に電極材を吊り下げ、該電極材と上記金属製カゴとを電源のプラス側とマイナス側とに接続し、上記電解洗浄液を介して通電して上記金型の電解洗浄を行う装置において、
上記電極材は、洗浄槽の上方に架け渡される通電支持棒に所定間隔をあけて複数設けられ、各電極材は、上記金属製カゴに保持される上記金型の上方に吊り下げられるとともに、それぞれ上下高さ調整可能に取り付けられ、
電源側から、上記各電極材、電解洗浄液、金属製カゴに保持される金型及び金属製カゴへと通電する回路中を流れる電流が、電解洗浄の際に上記金型が上記各電極材と接触あるいは急接近することによって所定変化率よりも急激に変化した場合に通電を遮断する回路を備えていることを特徴とする金型洗浄装置。 - 電源側から、上記各電極材、電解洗浄液、金属製カゴに保持される金型及び金属製カゴへと通電する回路中に、電解洗浄の際に上記金型が上記各電極材と接触あるいは急接近することによって設定値以上の電流が流れると通電を遮断する回路を備えている請求項2に記載の金型洗浄装置。
- 上記洗浄槽内の電解洗浄液に超音波振動を発生させる振動子を設けている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の金型洗浄装置。
- 電解洗浄液を上記洗浄槽から排出した後に再度投入する循環機構を備えている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の金型洗浄装置。
- 上記電源側からの出力電圧設定部と、上記回路中を流れる電流検出部と、該検出部からの検出値に基づいて設定された電流に自己保持する制御回路を備えている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の金型洗浄装置。
- 上記出力電圧を、手動、自動、あるいは自動と手動とを併用して切り替えて、選択して設定可としている請求項6に記載の金型洗浄装置。
- 上記電解洗浄される金型は、合成樹脂成形用金型である請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の金型洗浄装置。
- 洗浄作業終了時および非常停止時に作動するブザーと共に、点灯式ライト、点滅式ライトあるいは回転式ライトを設けている請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の金型洗浄装置。
- 上記電極材を収容保持するボックスを上記洗浄槽の外部に付設している請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の金型洗浄装置。
- 上記電極材は、鉄、ステンレスあるいはチタンから形成し、該電極材の下端に鉄、ステンレス、チタンあるいはグラファイトからなる電極板を取り付けている請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の金型洗浄装置。
- 請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の金型洗浄装置の洗浄槽に収容する電解洗浄用の洗浄液であって、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、EDTAのアルカリ塩あるいは/およびグルコン酸ナトリウムを含むアルカリ溶液からなることを特徴とする金型洗浄用の洗浄液。
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