JP3982276B2 - 復水処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発電設備における復水処理方法に関するものであり、詳しくは、従来の復水処理方法に比べて、カチオン交換樹脂の酸化分解の結果発生する高分子電解質成分をコントロールし、さらに発生した高分子電解質の除去性の優れた構造持つ架橋アニオン交換樹脂を利用することによって、復水の清浄さを長期間保つことが可能な復水処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
発電設備においては、各種の熱水および常温水について、脱塩処理、水質浄化処理等が必要とされる。例えば、原子力発電に利用される原子炉には、沸騰水型(BWP)と加圧水型(PWR)とがある。そして、前者は、原子炉で冷却水を加熱して蒸気に変換して直接タービンへ供給する形式であり、後者は、原子炉で一次冷却水を加熱して蒸気発生器へ供給し、蒸気発生器で二次冷却水を加熱して蒸気に変換しタービンへ供給する形式である。上記の何れの原子炉においても、冷却水の循環系には、イオン交換樹脂を充填した原子炉水復水脱塩装置を設置し、炉水の放射性物質の除去および水質純度向上が図られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般にイオン交換樹脂は、使用に伴い性能が劣化することが知られている。カチオン交換樹脂は酸化雰囲気下において分解され、その結果、様々な分子量を有するポリスチレンスルホン酸(以下、「PSA」と略す)を主成分とする高分子電解質の溶出物が発生することが知られている。PWRでは配管の腐食防止に添加されるヒドラジンが酸化分化した結果生ずる過酸化水素が、またBWRでは定期点検等で復水を放射線分解した際に生ずる過酸化水素が、カチオン交換樹脂を酸化雰囲気にさらす原因となる。溶出したPSAは、更に分解し原子炉や蒸気発生器の腐食原因となるSO4 2-の発生源になり、装置の寿命を短くするだけでなく、装置を安全に運転する上での信頼性を低下させる。
【0004】
発生したPSAはアニオン交換樹脂により吸着除去できるが、吸着されたPSAはアニオン交換樹脂の反応性を阻害し、結果として復水中のアニオン不純物の濃度が上昇するため、復水浄化に使用するイオン交換樹脂を交換する必要が生ずる。実際の発電設備では、樹脂やその入れ替えにかかるコストを下げ、更に廃棄物となるイオン交換樹脂の量を減らすために、イオン交換樹脂の寿命を延ばすことが大きな課題となっている。
【0005】
一方、高架橋度の多孔質型カチオン交換樹脂は他の樹脂と比較して耐酸化性が優れることが知られているが、ある程度の酸化は避けられず、酸化分解された場合に溶出するPSAの分子量は大きい。分子量の大きなPSAはアニオン交換樹脂に吸着するとアニオン交換樹脂の反応性を阻害し、その阻害効果はPSAの分子量が大きいほど大きいという弊害があり、復水浄化ではアニオン交換樹脂の寿命が短くなってしまう。
【0006】
また、溶出するPSAが高分子量の場合、架橋度の高いアニオン交換樹脂ではPSAは架橋網目によって拡散を妨害されるため樹脂の表面にしか吸着できず、樹脂が吸着できるPSA量は少ない。その結果として、短い期間で飽和吸着に達し、アニオン交換樹脂の寿命が短くなってしまう。従来から使用されているスチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂は、フリーデルクラフツ反応によるクロロメチル化反応の際分子間での架橋反応が進行する(ジャーナルオブポリマーマテリアルズ、8巻、190ページ(1991年)等参照)。イオン交換容量を増やすためにフリーデルクラフツ反応の温度条件等を厳しくするほど架橋反応が進行し、ジビニルベンゼンのような架橋モノマーによって構成された架橋構造に加えさらに架橋構造が発達することから、高分子量のPSAだけでなく、比較的小さな分子量のPSAの拡散、吸着にも不利な構造となってしまう。結果として、従来型のスチレン系アニオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂から溶出する分子量分布を持ったPSAに対するの吸着能力が総合的に小さくなる。
【0007】
また、特開2001−215294号公報では、耐汚染性に優れるとして多孔質型アニオン交換樹脂の使用が提案されている。しかし、多孔質型イオン交換樹脂は樹脂表面でのみカチオン交換樹脂からの溶出PSAを吸着するため、吸着量には限界がある。
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、従来の復水処理方法に比べて、カチオン交換樹脂の酸化分解の結果発生するPSAの分子量をコントロールし、さらにPSAの除去性の優れたアニオン交換体を利用することによって、復水の清浄さを長期間保つことが可能な復水処理方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記の目的を達成するため検討した結果、特定にアニオン交換樹脂と特定の架橋度のカチオン交換樹脂を併用することにより、上記目的が達成できることを見出して、本発明に到達した。即ち、本発明の要旨は、前記化学式[化1]で示される4級アンモニウム基を有する構造単位および不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーから誘導される構造単位を含有し、且つ、水分が40〜75%であるゲル型の強塩基性アニオン交換樹脂と、架橋度8〜18%のゲル型の強酸性カチオン交換樹脂とを使用することを特徴とする発電設備における復水処理方法に存する。
【0009】
本発明で使用するアニオン交換樹脂は、低分子量、例えば分子量2000以下のPSAについての吸着除去性が優れるため、カチオン交換樹脂からPSAが溶出しても、PSAの吸着総量が多く、復水浄化において使用可能期間の延長が可能である。更に、高分子量PSAを発生しない架橋度が低いゲル型の強塩基性カチオン交換樹脂と併用することにより、復水を長時間清浄に保持することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する強塩基性アニオン交換樹脂は、請求項1に記載の4級アンモニウム塩基を有する構造単位および不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーから誘導される構造単位を含有する。
【0011】
[化1]において、Aは炭素数3〜8の直鎖状アルキレン基または炭素数4〜9のアルコキシメチレン基を表すが、上記の直鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などが挙げられ、上記のアルコキシメチレン基としては、ブトキシメチレン基、ペントキシメチレン基などが挙げられる。
【0012】
[化1]において、置換基R1は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、R2及びR3は、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を表す。例えば、R1、R2及びR3全てがメチル基である場合、トリメチルアンモニウム塩基(I型強塩基性樹脂)であり、R1がヒドロキシエチル基で、R2及びR3がメチル基である場合、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩基( II型強塩基性樹脂) 等になる。X-はアンモニウム基に配位した対イオンを表す。例えば、塩素化物イオン、臭化物イオン、水酸化イオン、炭酸水素イオン等が挙げられる。
【0013】
本発明のアニオン交換樹脂の製造方法は限定はされないが、例えば、特開平4−349941号公報、特開平7−289921号公報等に記載された方法により製造することができる。
具体的には、下記化学式[化2]で表される前駆体モノマーを合成し、少なくとも不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーとともに共重合してゲル型の架橋共重合体を得たあと、各種アミンと反応させ、前駆体モノマーが有していた置換基Zを所望のアニオン交換基で置換する方法が挙げられる。
【0014】
【化2】
【0015】
[化2]において、Aは[化1]におけるAと定義と同じである。Zは塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン元素を表す。
一般的なスチレン系の強塩基性アニオン交換樹脂を製造する場合、フリーデルクラフツ反応で架橋ポリスチレン共重合体にクロロメチル基を導入するため、副反応の架橋反応が進行し、樹脂表面付近では架橋密度が高い。分子量が2000程度のPSAでも樹脂内部への拡散が非常に遅いため、樹脂表面付近の架橋構造が吸着量に大きく影響し、PSAの拡散量が減少する。一方、本発明のアニオン交換樹脂は、フリーデルクラフツ反応を経ずにイオン交換基を導入するため、フリーデルクラフツ反応中に起こる架橋構造が無く、PSA除去吸着に有利な構造となりうる。すなわち、分子量が2000程度のPSA吸着速度が速く吸着量も多いため、様々な分子量のPSAからなるカチオン交換樹脂からの溶出PSAの吸着除去に有利である。
【0016】
前駆体モノマーと反応させる不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーは、アニオン交換樹脂の製造に使用可能なものであれば特に限定はされず、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン等が挙げられるが、ジビニルベンゼンが好ましい。
前駆体モノマーと不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーとの重合方法は特に限定されないが、通常、モノマーに対して重合開始剤を添加して懸濁重合により行う。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、アゾビスイソブチロニトリル等が例として挙げられ、原料モノマー全量に対して、通常0.1〜5重量%の範囲で使用される。そして、重合温度は、重合開始剤の種類や濃度等によって好ましい範囲は異なるが、通常は40〜100℃の範囲から適宜選択される。
【0017】
本発明のアニオン交換樹脂は、[化1]で表わされる繰返し単位と、不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーから誘導される繰返し単位を含有するが、[化1]で示される構造単位は0.01モル%〜99.1モル%含まれることが好ましい。不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーから誘導される繰返し単位は、アニオン交換樹脂の水分値を40〜75%の値にするため、通常0.1〜55モル%、好ましくは0.3〜30モル%の範囲、更に好ましくは0.5〜20モル%の範囲で含まれるのが好ましい。また、アニオン交換樹脂としての性能を妨げない範囲で、化学式[化1]で表される繰返し単位、不飽和炭化水素基含有架橋モノマーから誘導される繰返し単位以外に付加重合性モノマーから誘導される繰返し単位が含まれる事も可能である。付加重合モノマーから誘導される繰返し単位は0〜25モル%が好ましい。
【0018】
架橋共重合体にアンモニウム基を導入する方法としては、公知の方法が挙げられる。例えば、溶媒中に架橋共重合体を懸濁し、NR1R2R3(式中、R1〜R3は前記化学式[化1]における定義と同じ)で表わされる置換アミンを反応させる方法が挙げられる。この導入反応の際に用いられる溶媒としては、例えば、水、アルコール、トルエン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、これらは、単独または混合溶媒として用いられる。また、反応に適した温度は、置換アミンの種類や溶媒の種類により大きく異なるが、通常は20〜100℃の範囲から適宜選択される。
【0019】
架橋共重合体にアンモニウム基を導入した後、対イオンX-を導入することによって、塩形を各種アニオン形へ変換する。斯かる変換は、公知の方法によって容易になし得る。
上記したように、本発明の強塩基性アニオン交換樹脂の形状は、ゲル型である。多孔質型の場合、架橋構造が発達し樹脂内部へのPSAの拡散を妨げるため、PSAの吸着除去には好ましくない。また、上記したようにアニオン交換樹脂の水分値は、OH形で40〜75%であるが、好ましくは62〜72%である。水分値が低すぎる場合、PSAの拡散が妨げられて吸着除去能力が低下する傾向があるので好ましくない。また、高すぎる場合、体積当たりのイオン交換容量が少なく、充分なPSA吸着能力を発揮するためには大量の樹脂が必要となるほか、対イオンが変化した際の体積変化が大きく、工業的な使用の際に不都合を生ずる傾向がある。
【0020】
本発明における強塩基性アニオン交換体の強度は、復水処理に使用する為に樹脂棟に充填した際、樹脂の形状がつぶれず、また使用中樹脂が破砕することなく安定に使用するためには、300g/粒以上の強度であることが好ましい。
本発明で、アニオン交換樹脂と共に用いるカチオン交換樹脂は、架橋度が8〜18%のゲル型の強酸性カチオン交換樹脂である。架橋度が特に13〜17%が好ましい。
【0021】
多孔質型のカチオン交換樹脂では、酸化分解された場合に分子量1万以上の高分子量PSAが溶出し、アニオン交換樹脂に吸着し反応性を阻害し結果として樹脂の入れ替えまで期間を短くする原因となる。一方、ゲル型カチオン交換樹脂では、酸化分解されたときに分子量1万以上のPSAが溶出しない。従って、ゲル型カチオン交換樹脂を用いる。
【0022】
本発明において使用されるゲル型カチオン交換樹脂は、公知の物が使用できる。例えば、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、エチルスチレン、クロルスチレン等の芳香族化合物ビニルモノマーとジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族ポリビニルモノマーを重合し、これに陽イオン交換基を導入する事により製造できる。
【0023】
以上記載したアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂を用いて、発電設備、特に沸騰水型、加圧水型等の原子力発電設備の復水処理を行う。復水の処理は、本発明のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混床で処理するのが好ましく、または混床で処理した後アニオン交換樹脂で更に処理することがより好ましい。
この両樹脂の混合比は樹脂の交換容量によっても異なるが、アニオン交換樹脂の総交換容量に対するカチオン交換樹脂の総交換容量比は、通常、0.5〜3の範囲である。復水処理は、いかなる温度でも実施できる。具体的には、一般的な復水脱塩装置の運転温度60℃以下の温度、或いは60〜120℃の高温のいずれかの温度の復水を処理するのが好ましい。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
「製造例1」
窒素ガス導入管、ジムロー冷却管、枝管付き等圧滴下ロート、攪拌羽根を備えた1000mlの分液ロート型4ツ口フラスコに金属マグネシウム52.5g、テトラヒドロフラン(THF)360mlを入れ、溶液を30℃に設定した。このフラスコに滴下ロートを用いてp- クロロスチレン251gのTHF溶液350mlを内温が40℃以上にならないように2時間かけて滴下し、グリニャール試薬を得た。
【0025】
上記の反応器の下に、窒素ガス導入管、ジムロー冷却管、枝管付き等圧滴下ロート、攪拌羽根を備えた2000mlの4ツ口フラスコを連結した。この中へ、1, 4−ジブロモブタン1060g、THF600ml、カップリング触媒Li2CuCl47. 5gを加え溶液を調製した。このフラスコの溶液中に、上記で調製したグリニャール試薬溶液を、室温で2時間かけて滴下した。終了後、溶液を水にあけ、分液し、水相を除去した。有機相を減圧下で目的物である4−ブロモブチルスチレンを得た。
【0026】
窒素ガス導入管、冷却管を備えた500mlの4ツ口フラスコに脱塩水200ml、2%ポリビニルアルコール水溶液50mlを加え、窒素を導入し、溶存酸素を除去した。一方、得られた4−ブロモブチルスチレン56. 0g、ジビニルベンゼン(DVB)1.60g(ジビニルベンゼン含有率80%)、及びベンゾイルパーオキシド(BPO)(含有率75%)0. 54gを溶解したモノマー溶液を調製した。モノマー溶液を上記フラスコに入れ、230rpmで撹拌し懸濁液とした。70℃に昇温し、18時間撹拌した。重合後、架橋共重合体を取り出し、樹脂を水洗後、メタノールで1回洗浄した。
【0027】
冷却管を備えた500mlの4ツ口フラスコに得られた架橋共重合体を30g入れ、1, 4−ジオキサン150ml、30%トリメチルアミン水溶液250mlを加え、50℃で5時間攪拌した。反応後ポリマーを取り出し、充分水洗したゲル型の強塩基性アニオン交換樹脂を得た。10倍量の4%水酸化ナトリウム水溶液を通液した。
【0028】
得られた陰イオン交換樹脂の物性値は以下の通りである。
平均粒子径:630μm
中性塩分解容量:3. 74meq/g
中性塩分解容量:0.84meq/ml
水分含有率:66.3%
「参考例1」
製造例1で得たアニオン交換樹脂と、市販品であるダイヤイオンSA10DL(商品名、三菱化学株式会社製トリメチルベンジルアンモニウム塩タイプのアニオン交換樹脂)を用いて、PSAの吸着試験を実施した。OH形樹脂10mLをメスシリンダーで計り取り、所定濃度のPSA水溶液(分子量2000、H形)30mLを入れた三角フラスコ中に入れ、25℃の恒温槽で30分放置した後、上澄み液の吸光度を225nmで測定して、PSA濃度を測定した。この値から、アニオン交換樹脂に吸着されたPSA量を次式によって算出した。
【0029】
【数1】
PSA吸着量(mmol/L)=(PSAの初濃度−上澄みのPSA濃度)÷0.01
吸着量は以下の表1に示すとおりであった。
【0030】
【表1】
【0031】
表中において、PSA濃度は、PSAの1繰返し単位を単位として表記した。
製造例1で得たアニオン交換樹脂は、ダイヤイオンSA10DLに比べイオン交換容量は少ないが、分子量2000のPSAの優れた吸着除去性能を示した。
「参考例2」
製造例1で得たアニオン交換樹脂と、市販品であるダイヤイオンPA312(商品名、三菱化学株式会社製トリメチルベンジルアンモニウム塩タイプのアニオン交換樹脂、多孔質型)を用いてPSAの吸着試験を実施した。温度を25℃にコントロールしたジャケット付カラム(直径12mm、長さ100mm)に樹脂を10mL充填し、分子量2000のPSA水溶液(50μmol/L、H形)を流速SV30で流通させた。カラム出口でPSA濃度を測定し、PSAがアニオン交換樹脂に吸着されず、漏れてくるまで流通を続けた。
【0032】
更に、その24時間後、同様の操作を行った。 これにより、1回目の流通、2回目の流通で樹脂に吸着されたPSA量を求めた。結果は表2の通りである。なお、吸着量を単位mmol/Lで示した。
【0033】
【表2】
【0034】
多孔質型のアニオン交換樹脂に比べて、製造例1のアニオン交換樹脂が優れた除去性能を有するのは明らかである。
「参考例3」
ゲル型強酸性カチオン交換樹脂であるダイヤイオンUBK114(商品名。三菱化学株式会社製。架橋度14%)、多孔質型強酸性カチオン交換樹脂であるダイヤイオンPK228(商品名。三菱化学株式会社製。架橋度14%)を用いて、カチオン交換樹脂から溶出するPSAの分子量分画を比較した。
【0035】
樹脂50mLを鉄イオン(負荷量 2g/L−樹脂当たり)溶液中で2時間処理した後、0.53%過酸化水素水溶液中で24時間処理した。処理した樹脂を、超純水50mL中に移し入れ、40℃で24時間放置し、水中に溶出した高分子の分子量をゲル濾過で確認した。
図1にカチオン交換樹脂から溶出したPSAの分子量分布を示すが、多孔質型のPK228では分子量10000以上の溶出物質があるのに対し、ゲル型のUBK114Hでは、溶出物のほとんどが分子量1000以下である。復水中の高分子物質の分子量をコントロールするには、ゲル型のカチオン交換樹脂の使用が適していることが明らかである。
「実施例1」
ゲル型強酸性カチオン交換樹脂(ダイヤイオンUBK114H)を、実施例3と同様の条件で酸化処理(鉄イオン溶液及び過酸化水素水溶液処理)を行った。
【0036】
直径2cm、長さ118cmのカラムに製造例1で得たアニオン交換樹脂を270ml充填し、その上部に酸化したカチオン交換樹脂100mlを充填し、カラム温度40℃に制御しSV5で脱イオン水を20日間循環通水し溶出物をアニオン交換樹脂に吸着させた。
次に、カラムからカチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂を取り出して均一に混合し、直径2cm、長さ30cmのカラムに混合した混床樹脂75mLを充填した。カラム温度を25℃に制御し、CaCl2濃度0.75mmol/L、Na2SO4濃度0.75mmol/Lの混合水溶液をSV30で流通し、カラム出口の電気伝導度を測定したところ、0.06μS/cmであった。
「比較例1」
ゲル型強酸性カチオン交換樹脂に代えて、多孔質型強酸性カチオン交換樹脂(ダイヤイオンPK228)を用いた以外は実施例4と同様に行い、カラム出口の電気伝導度を測定したところ、0.4μS/cmであった。
【0037】
実施例1のゲル型強酸性カチオン交換樹脂を用いた方が、電気伝導度は低く、多孔質型強酸性カチオン交換樹脂を用いた場合と比較して優れた脱塩性を示している。
【0038】
【発明の効果】
本発明の発電設備における復水処理方法により、カチオン交換樹脂の酸化分解の結果発生するPSAの分子量をコントロールし、さらに発生したPSAの除去性の優れたアニオン交換体を利用することによって、復水の清浄さを長期間保つことが可能である。このことにより、発電装置の寿命を短くするだけでなく、装置を安全に運転する上での信頼性を向上させる事が可能である。また、イオン交換樹脂の寿命を延ばすことから、樹脂やその入れ替えにかかるコストを下げ、更に廃棄物となるイオン交換樹脂の量を減らす事が可能である。これらから、本発明の工業的価値は顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 カチオン交換樹脂からの溶出物の分子量分布を示す図である。
Claims (9)
- 下記化学式[化1]で示される4級アンモニウム基を有する構造単位および不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーから誘導される構造単位を含有し、且つ、水分が40〜75%であるゲル型の強塩基性アニオン交換樹脂と、架橋度8〜18%のゲル型の強酸性カチオン交換樹脂とを使用することを特徴とする発電設備における復水処理方法。
- 強塩基性アニオン交換樹脂と強酸性カチオン交換樹脂とを混床として用いることを特徴とする請求項1記載の復水処理方法。
- 復水を混床にて処理した後、更にアニオン交換樹脂にて処理することを特徴とする請求項2記載の復水処理方法。
- 発電設備が沸騰水型原子力発電設備であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の復水処理方法。
- 発電設備が加圧水型原子力発電設備であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の復水処理方法。
- 強塩基性アニオン交換樹脂の水分が62〜72%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の復水処理方法。
- 強酸性カチオン交換樹脂の架橋度が13〜17%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の復水処理方法。
- 強塩基性アニオン交換樹脂の押しつぶし強度が、OH形で300g/粒以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の復水処理方法。
- 下記化学式で示される4級アンモニウム基を有する構造単位および不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーから誘導される構造単位を含有し、且つ、水分が40〜75%であるゲル型の強塩基性アニオン交換樹脂と、架橋度8〜18%のゲル型の強酸性カチオン交換樹脂とを混合してなることを特徴とする発電設備における復水処理用混床。
(式中、Aは炭素数3〜8の直鎖状アルキレン基または炭素数4〜9のアルコキシメチレン基を表し、R 1 は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、R 2 及びR 3 は、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、X - はアンモニウム基に配位した対イオンを表し、また、ベンゼン環はアルキル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。)
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