JP3981491B2 - 両面集光読取方法用放射線像変換パネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、輝尽性蛍光体を利用する両面集光方式の放射線像読取方法に用いられる放射線像変換パネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の放射線写真法に代わる方法として、輝尽性蛍光体を用いる放射線像記録再生方法が知られている。この方法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シート)を利用するもので、被写体を透過した、あるいは被検体から発せられた放射線を該パネルの輝尽性蛍光体に吸収させ、その後に輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線などの電磁波(励起光)で時系列的に励起することにより、該輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光)として放出させ、この蛍光を光電的に読み取って電気信号を得て、得られた電気信号に基づいて被写体あるいは被検体の放射線画像を可視像として再生するものである。読み取りを終えた該パネルは、残存する画像の消去が行われた後、次の撮影のために備えられる。すなわち、放射線像変換パネルは繰り返し使用される。
【0003】
この放射線像記録再生方法では、放射線写真フィルムと増感紙との組合せを用いる従来の放射線写真法の場合に比べて、はるかに少ない被曝線量で情報量の豊富な放射線画像を得ることができるという利点がある。さらに、従来の放射線写真法では一回の撮影ごとに放射線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線像記録再生方法では放射線像変換パネルを繰り返し使用するので、資源保護、経済効率の面からも有利である。
【0004】
放射線像記録再生方法に用いられる放射線像変換パネルは、基本構造として、支持体とその上に設けられた輝尽性蛍光体層とからなるものである。ただし、輝尽性蛍光体層が自己支持性である場合には必ずしも支持体を必要としない。また、輝尽性蛍光体層の上面(支持体に面していない側の面)には通常、保護膜が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
【0005】
輝尽性蛍光体層は、通常は輝尽性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなる。ただし、輝尽性蛍光体層としては、蒸着法や焼結法によって形成される結合剤を含まないで輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるものも知られている。また、輝尽性蛍光体の凝集体の間隙に高分子物質が含浸されている輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルも知られている。これらのいずれの蛍光体層でも、輝尽性蛍光体はX線などの放射線を吸収したのち励起光の照射を受けると輝尽発光を示す性質を有するものであるから、被写体を透過したあるいは被検体から発せられた放射線は、その放射線量に比例して放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層に吸収され、パネルには被写体あるいは被検体の放射線像が放射線エネルギーの蓄積像として形成される。この蓄積像は、上記励起光を照射することにより輝尽発光光として放出させることができ、この輝尽発光光を光電的に読み取って電気信号に変換することにより、放射線エネルギーの蓄積像を画像化することが可能となる。
【0006】
放射線像記録再生方法において放射線画像情報の読み取りは一般に、放射線像変換パネルの表(おもて)面側から励起光を照射し、蛍光体粒子から発せられる輝尽発光光をその励起光照射側に備えられた集光ガイドで集光し、光電変換して読み取ることにより行われている(片面集光方式)。しかしながら、輝尽発光光をできるだけ多く読み出したい場合、あるいは輝尽性蛍光体層内に形成された放射線エネルギー蓄積像のエネルギー強度が蛍光体層の深さ方向に変化していてそのエネルギー強度の変化(強度分布)を画像情報として得たい場合などには、パネルの表裏両側から輝尽発光光を集光して読み取る方式(両面集光方式)も利用されている。この両面集光方式については、例えば特開昭55−87970号公報に記載されている。
【0007】
両面集光方式の放射線像読取方法にあっても、この方法に用いられる放射線像変換パネルはできる限り高感度であって、かつ画質(鮮鋭度、解像度、粒状性など)の良好な画像を与えるものであることが望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記両面集光読取方法に用いられる放射線像変換パネルにおいては概して、パネル裏面から集光される輝尽発光の発光量がパネル表面から集光される発光量よりもかなり低いため、裏面より得られる放射線画像の画質が十分ではないという問題がある。これは主として、パネル表面(蛍光体層の上面)側からのみ照射される励起光が輝尽性蛍光体層の下面側まで十分に届いていないこと、および蛍光体層の下(パネル裏面)には通常透明支持体が設けられているために、パネル裏面から発光光が取り出されにくいことによるものと考えられる。従って、パネル裏面よりの発光効率を少しでも高めて、解像度などの画質を向上させることが要求されている。
【0009】
そこで本発明は、高画質の放射線画像を与える両面集光読取方法用の放射線像変換パネルを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、両面集光読取方法用の放射線像変換パネルにおける上記の問題について検討した結果、輝尽性蛍光体層全体に渡って光透過率を高くするよりも蛍光体層の深さ方向に光透過率を変える方が画質、特に低周波数領域での解像度が向上することを見い出し、本発明に到達したものである。特に、輝尽性蛍光体層の上面側よりも下面側で光透過率を高くすれば、下面側に届いた励起光を効率良く利用でき、そして下面からの発光効率を高められることにより、裏面よりの画質を顕著に改善できることを見い出した。
【0011】
本発明は、輝尽性蛍光体からなる蛍光体層を有する、両面集光方式の放射線像読取方法に用いられる放射線像変換パネルにおいて、該蛍光体層が光反射率の異なる二種類以上の輝尽性蛍光体を含み、かつ光反射率のより高い輝尽性蛍光体が該蛍光体層の上面側よりも下面側に多く存在するように配置させてあり、該輝尽性蛍光体の輝尽励起波長および輝尽発光波長における該蛍光体層の光透過率が蛍光体層の上面側よりも下面側で大きいことを特徴とする放射線像変換パネルにある。
【0012】
本発明において、蛍光体層の光透過率とは蛍光体層の部分透過率であって、その部分透過率が深さ方向に変化しているとは、蛍光体層を深さ方向にある幅で裁断した時に、少なくとも二つの部分蛍光体層の光透過率が互いに異なることを意味する。また、パネルの表(おもて)面とは、蛍光体層の上面(透明保護膜が設けられている場合には透明保護膜表面)であり、パネルの裏(うら)面とは蛍光体層の下面(透明支持体が設けられている場合には透明支持体裏面)を意味する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の放射線像変換パネルの好ましい態様を挙げる。
(1)蛍光体層が二層以上で構成され、かつ輝尽励起波長および輝尽発光波長における最上層の蛍光体層の光透過率よりも最下層の蛍光体層の光透過率が大きい放射線像変換パネル。
(2)輝尽励起波長および輝尽発光波長における最下層の蛍光体層の光透過率がともに2〜30%の範囲にある放射線像変換パネル。
(3)少なくとも透明支持体、二層の蛍光体層および透明保護膜がこの順に積層されてなる放射線像変換パネル。
(4)輝尽性蛍光体がユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体である放射線像変換パネル。
【0014】
次に、本発明の両面集光読取方法用の放射線像変換パネルを製造する方法について、多層構造の輝尽性蛍光体層からなる場合を例に挙げて詳細に述べる。
【0015】
透明支持体は、通常は透明なプラスチックフィルム(あるいはシート)からなる。そのプラスチック材料としては、公知のポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、アラミド樹脂などの材料から任意に選ぶことができる。勿論、これらの材料に限定されるものではないが、十分な強度を持ち、透明性の高いプラスチックフィルムを用いることが望ましい。このプラスチックフィルムの厚さは、通常10〜1000μmの範囲にある。なお、輝尽性蛍光体層が自己支持性である場合には必ずしも透明支持体を必要とはしない。また、支持体の蛍光体層が設けられる側の表面には、支持体と蛍光体層の結合を強化するため、あるいはパネルとしての感度もしくは画質(鮮鋭度、粒状性)を向上させるために、下塗層(接着性付与層)を設けてもよい。下塗層中には帯電防止剤、光散乱性物質などが分散含有されていてもよい。
【0016】
この支持体の上には複数の輝尽性蛍光体層が設けられる。本発明の特徴的な要件である輝尽性蛍光体層は、少なくともそのうちの二層の輝尽励起波長および輝尽発光波長における光透過率が互いに異なるものである。具体的には、少なくとも最下層の蛍光体層の光透過率が最上層の蛍光体層の光透過率よりも大きいものである。蛍光体層が輝尽性蛍光体粒子を分散状態で含有支持する結合剤からなる場合を例にとって説明する。
【0017】
輝尽性蛍光体としては、波長が400〜900nmの範囲の励起光の照射により、300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す輝尽性蛍光体が好ましい。そのような輝尽性蛍光体の例は、特開平2−193100号公報および特開平4−310900号公報に詳しく記載されている。特に好ましい輝尽性蛍光体は、ユーロピウムあるいはセリウムにより付活されているアルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体、そしてセリウム付活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体である。ただし、本発明に用いる輝尽性蛍光体はこれらの蛍光体に限られるものではなく、照射された放射線を蓄積してその後の任意な時期に励起光を照射された場合に輝尽発光を示す蛍光体であればいかなるものであってもよい。
【0018】
本発明において、輝尽励起波長および輝尽発光波長における光透過率の異なる輝尽性蛍光体層は、たとえばこれらの波長における光学特性の異なる輝尽性蛍光体を少なくとも二種類用意し、蛍光体層ごとに異なる輝尽性蛍光体を使用することにより形成することができる。ここで、輝尽励起波長および輝尽発光波長とは、使用する輝尽性蛍光体の化学組成によっても異なるが、一般には上記のような可視領域の波長である。光学特性、すなわち本発明においては光反射率(光透過率)の異なる輝尽性蛍光体は、たとえば蛍光体を製造する際にその焼成条件(焼成雰囲気など)を変えることにより得ることができる。これらの蛍光体をそれぞれ単独で用いて各層を形成してもよいし、あるいはこれらの蛍光体を適当な割合で混合して用いて各層を形成してもよい。これにより、少なくとも二層の蛍光体層において光透過率が互いに異なるようにする。好ましくは、最下層に光反射率の高い蛍光体を用い、最上層に光反射率のそれより低い蛍光体を用いて、最下層の光透過率が最上層の光透過率よりも大きくなるようにする。ただし、最下層の蛍光体層の輝尽励起波長における光透過率と輝尽発光波長における光透過率はいずれも2〜30%の範囲にあるのが望ましい。なお、蛍光体としては、光学特性のみならず平均粒子径や化学組成などの点でも互いに異なるものを用いてもよい。
【0019】
多層構造の輝尽性蛍光体層は、たとえば次のような方法により支持体上に形成することができる。
まず、輝尽性蛍光体粒子と結合剤とを溶剤に加え、これを十分に混合して、結合剤溶液中に蛍光体粒子が均一に分散した塗布液を二種類以上調製する。結合剤としては、たとえばゼラチン等の蛋白質、デキストラン等のポリサッカライド、またはアラビアゴムのような天然高分子物質;および、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン・塩化ビニルコポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、線状ポリエステル、熱可塑性エラストマーなどのような合成高分子物質を挙げることができる。これらの結合剤は架橋剤によって架橋されたものであってもよい。
【0020】
塗布液調製用の溶剤の例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール;メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル;そして、それらの混合物を挙げることができる。
【0021】
塗布液における結合剤と輝尽性蛍光体との混合比は、目的とする放射線像変換パネルの特性、蛍光体の種類などによって異なるが、一般には結合剤と蛍光体との混合比は、1:1乃至1:100(重量比)の範囲から選ばれ、そして特に1:8乃至1:40(重量比)の範囲から選ぶのが好ましい。なお、塗布液にはさらに、塗布液中における蛍光体粒子の分散性を向上させるための分散剤、形成後の蛍光体層中における結合剤と蛍光体粒子との間の結合力を向上させるための可塑剤、蛍光体層の変色を防止するための黄変防止剤、硬化剤、架橋剤など各種の添加剤が混合されていてもよい。
【0022】
このようにして調製された二種類以上の塗布液を次に、支持体の表面に均一に塗布して塗膜を形成した後、乾燥する。塗布操作は、通常の塗布手段、たとえばドクターブレード、ロールコータ、ナイフコータなどを用いる方法により行うことができる。塗布液ごとに塗布、乾燥を繰り返して順次蛍光体層を形成してもよいし、あるいは複数の塗布液を同時に塗布、乾燥して同時重層で形成してもよい。あるいはまた、別にガラス板、金属板、プラスチックシートなどのシート(仮支持体)上に各塗布液を塗布し乾燥して蛍光体シートをそれぞれ別個に形成した後、これを支持体上に押圧するか、あるいは接着剤を用いるなどして支持体上に各蛍光体層を接合する方法を利用してもよい。この時、下層となる蛍光体層については形成時と上下を反転させて支持体上に設けてもよく、これにより結合剤が複数の蛍光体層の上下両側で多く中側で相対的に少ない構成とすることができ、得られる放射線画像の画質をより一層高めることができる。このようにして支持体上への多層構造の蛍光体層の形成を完了する。
【0023】
なお、蛍光体層は上層と下層の二層であってもよいし、あるいは三層以上から構成されていてもよい。また、塗布液中の結合剤や溶剤が同じである場合には形成された各層の境界面が必ずしも明確であるとは限らない。各蛍光体層の層厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との混合比などによって異なるが、通常は20μm〜1mmの範囲であり、好ましくは50〜500μmの範囲である。
【0024】
本発明の放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層は、輝尽性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなるのものばかりでなく、結合剤を含まないで輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるもの、あるいは輝尽性蛍光体の凝集体の間隙に高分子物質が含浸されている蛍光体層などでもよい。
【0025】
輝尽性蛍光体層の支持体に接する側とは反対側の表面には、蛍光体層を物理的および化学的に保護するために透明保護膜を設けてもよい。透明保護膜としては、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート、有機溶媒可溶性フッ素系樹脂などのような透明な有機高分子物質を適当な溶媒に溶解して調製した溶液を蛍光体層の上に塗布することで形成されたもの、あるいはポリエチレンテレフタレートなどの有機高分子フィルムや透明なガラス板などの保護膜形成用シートを別に形成して蛍光体層の表面に適当な接着剤を用いて設けたもの、あるいは無機化合物を蒸着などによって蛍光体層上に成膜したものなどが用いられる。保護膜中には、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の光散乱性微粒子、パーフルオロオレフィン樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末等の滑り剤、およびポリイソシアネート等の架橋剤など各種の添加剤が分散含有されていてもよい。保護膜の膜厚は一般に約0.1〜20μmの範囲にある。
【0026】
上述のようにして本発明の両面集光読取方法用の放射線像変換パネルが得られるが、輝尽性蛍光体層は必ずしも多層構造である必要はなく、単層であって、たとえば光反射率のより高い輝尽性蛍光体を上面側よりも下面側に多く存在させることにより下面側の光透過率が上面側よりも大きい構造であってもよい。
また、本発明のパネルの構成は、公知の各種のバリエーションを含むものであってもよい。たとえば、得られる画像の鮮鋭度を向上させることを目的として、上記の少なくともいずれかの層を、励起光を吸収し輝尽発光光は吸収しないような着色剤によって着色してもよい(特公昭59−23400号公報参照)。
【0027】
【実施例】
[実施例1]
(1)輝尽性蛍光体の製造
別々に合成したBaFBr:Eu及びBaFI:Eu生粉(各々、Ba1モルに対してEu付活剤5×10-3モルと、K、Cs及びCa添加物各1×10-3モルを含む)を、BrとIの組成比が85:15となるように調合し、これに焼成時における焼結防止のためにアルミナ超微粒子1重量%を添加してミキサーで十分に混合した。得られた混合物3kgを石英製ボートに入れ、石英チューブ炉心管を有する雰囲気制御可能な焼成炉を用いて、微量酸素雰囲気で850℃にて2時間焼成した後、真空ポンプで排気しながら室温まで冷却した。焼成時の微量酸素雰囲気を適宜調整することにより、光反射率の異なる二種類の14面体型BaFBr0.85I0.15:Eu2+系蛍光体を製造した。さらに、生粉のサイズを変えることによって、平均粒子径(粒子径分布のピーク)が6μmと3μmのもの計四種類の蛍光体粒子を得た。
【0028】
(2)蛍光体シートAの作製
蛍光体:光反射率の低い蛍光体a1(平均粒子径:6μm)と
蛍光体a2(平均粒子径:3μm)の7:3重量比混合物 200g
結合剤:ポリウレタンエラストマー(パンデックスT-5265H[固形]、
大日本インキ化学工業(株)製) 6.4g
架橋剤:ポリイソシアネート(コロネートHX[固形分100%]、
日本ポリウレタン工業(株)製) 0.6g
黄変防止剤:エポキシ樹脂(エピコート#1001[固形]、
油化シェルエポキシ(株)製) 3g
【0029】
上記組成の材料をメチルエチルケトンに加え、プロペラミキサを用いて分散させて、粘度が30ps(25℃)の塗布液を調製した(結合剤/蛍光体重量比=1/20)。これをシリコン系離型剤が塗布されているポリエチレンテレフタレートシート(仮支持体、厚さ:180μm)上にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥した後、仮支持体から剥ぎ取って蛍光体シートA(厚さ:220μm、幅:300mm)を作製した。
【0030】
(3)蛍光体シートBの作製
上記(2)において蛍光体として、光反射率の高い蛍光体b1(平均粒子径:6μm)と蛍光体b2(平均粒子径:3μm)の7:3重量比混合物200gを用いたこと以外は上記と同様にして、蛍光体シートB(厚さ:220μm、幅:300mm)を作製した。
【0031】
(4)輝尽性蛍光体層の形成
ポリエチレンテレフタレートシート(厚さ:250μm、ヘイズ度(typical):20、ルミラーS-10、東レ(株)製)からなる透明支持体の片面に、不飽和ポリエステル樹脂溶液(バイロン300とバイロン200の7:3重量比混合物、東洋紡(株)製)を塗布し、乾燥して透明な接着剤層(層厚:15μm)を設けた。次いで、支持体上の接着剤層表面に、先に作製した蛍光体シートBをシート作製時と上下反転させて重ね合わせて、カレンダーロール(金属ロール、ロール径:200mm)により総荷重1.6t、上側ロール温度45℃、下側ロール温度45℃、送り速度0.3m/分の条件で加熱圧縮を行った。この加熱圧縮により、接着剤層上に圧縮された蛍光体シートBを付設した。
さらに、この圧縮シートB上に蛍光体シートAをシート作製時と上下一致させて重ね合わせて、カレンダーロールにより総荷重2.5t、上側ロール温度45℃、下側ロール温度45℃、送り速度0.3m/分の条件で加熱圧縮を行った。これにより、二層構造の輝尽性蛍光体層B、A(全層厚:320μm)を接着剤層を介して支持体に完全に融着させて形成した。
【0032】
(5)透明保護膜の形成
輝尽性蛍光体層の上に、透明なポリエチレンテレフタートフィルム(厚さ:6μm、片面にポリエステル系接着剤層(層厚:1.5μm)が備えられているもの)を接着剤層を下側にして重ね合わせ、90〜100℃の加熱ロールを用いて加熱圧着した。その後、フィルム表面をエンボスロールを用いて加熱加圧し、表面粗さ(Ra)を0.1〜0.4μmとした。
【0033】
フッ素系樹脂(フルオロオレフィン・ビニルエーテル共重合体、
ルミフロンLF-504X[30%キシレン溶液]、旭硝子(株)製) 92g
架橋剤:ポリイソシアネート(スミジュールN3500[固形分100%]、
住友バイエルウレタン(株)製) 5g
滑り剤:アルコール変成シリコーン(X-22-2809[66%キシレン
含有ペースト]、信越化学工業(株)製) 0.5g
光散乱性微粒子:メラミン・ホルムアルデヒドフィラー
(エポスターS6、(株)日本触媒製) 6.5g
カップリング剤:アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート
(プレンアクトAL-M、味の素(株)製) 0.1g
触媒:ジブチルチンジラウレート(KS-1260、共同薬品(株)製)0.35mg
【0034】
上記組成の材料を混合してフッ素系樹脂塗布液を調製した。輝尽性蛍光体層上に積層されているポリエチレンテレフタートフィルムの表面に、この塗布液をドクターブレードを用いて塗布した後、120℃で20分間熱処理して熱硬化させるとともに乾燥し、樹脂膜(厚さ:1.5μm)を形成して、フィルムと樹脂膜とからなる透明保護膜を設けた。
以上のようにして、透明支持体、輝尽性蛍光体層B、A、および透明保護膜から構成された本発明の放射線像変換パネルを製造した。
【0035】
[比較例1]
実施例1において(4)輝尽性蛍光体層の形成に際して、蛍光体シートBの代わりに蛍光体シートAを用いて二層構造の輝尽性蛍光体層A、A(全層厚:320μm)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、比較のための放射線像変換パネルを製造した。
【0036】
[比較例2]
実施例1において(4)輝尽性蛍光体層の形成に際して、蛍光体シートAの代わりに蛍光体シートBを用いて二層構造の輝尽性蛍光体層B、B(全層厚:320μm)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、比較のための放射線像変換パネルを製造した。
【0037】
[放射線像変換パネルの性能評価]
得られた各放射線像変換パネルについて画質特性試験を行い、その性能を評価した。また、各輝尽性蛍光体層の光透過率も測定した。
【0038】
(1)光透過率
上記の蛍光体シートA及びB形成用塗布液をそれぞれ別個に、シリコン系離型剤が塗布されているポリエチレンテレフタレートシート(仮支持体、厚さ:180μm)上にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥した後、仮支持体から剥ぎ取って、輝尽性蛍光体層AおよびB(層厚:300μm)を形成した。各蛍光体層について、上記BaFBr0.85I0.15:Eu2+系蛍光体の輝尽励起波長(650nm)および輝尽発光波長(410nm)の光をそれぞれ蛍光体層上面から入射させたときの透過率を、分光光度計(U−3210型、日立製作所(株)製)にて散乱成分の捕集を考慮して150φ積分球を使用して測定した。
【0039】
(2)画質特性試験
放射線像変換パネルの表面にMTFチャートを介して管電圧80kVpのX線を照射した後、波長660nmのレーザ光を照射して、パネル表面および裏面から放射された輝尽発光光をそれぞれ受光器(分光感度S−5の光電子増倍管)で受光した。この受光した光を電気信号に変換し、表裏の信号を合計して画像信号を得た。この画像信号を組合わせて演算処理した後、フィルムスキャナを用いて銀塩写真フィルムに画像を感光記録させた。
得られた写真画像を目視により観察したところ、下記の表2に示す結果が得られた。なお、鮮鋭度と粒状性の判定は、比較例1の放射線像変換パネルの使用により得られた写真画像の鮮鋭度と粒状性とを標準(0)とし、それよりも明確に優れたものを+2、若干優れたものを+1、若干劣るものを−1、そして明らかに劣るものを−2とした。
得られた結果をまとめて表1および表2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
表1および表2の結果から明らかなように、光透過率の相対的に小さい上層と透過率の相対的に大きい下層とから構成された本発明の放射線像変換パネル(実施例1)は、従来の放射線像変換パネル(比較例1)と比較して、鮮鋭度と粒状性が共に高かった。一方、比較のための上層、下層とも光透過率の高い放射線像変換パネル(比較例2)は、鮮鋭度と粒状性についてはともに、従来のパネルと同程度であった。
【0043】
【発明の効果】
本発明の両面集光読取方法用の放射線像変換パネルによれば、輝尽性蛍光体層をその深さ方向に光透過率が変化した構造とすることにより、特に蛍光体層の下面側の透過率を上面側の透過率よりも大きくすることにより、解像度など放射線画像の画質を改善することができる。
Claims (5)
- 輝尽性蛍光体からなる蛍光体層を有する、両面集光方式の放射線像読取方法に用いられる放射線像変換パネルにおいて、該蛍光体層が光反射率の異なる二種類以上の輝尽性蛍光体を含み、かつ光反射率のより高い輝尽性蛍光体が該蛍光体層の上面側よりも下面側に多く存在するように配置させてあり、該輝尽性蛍光体の輝尽励起波長および輝尽発光波長における該蛍光体層の光透過率が蛍光体層の上面側よりも下面側で大きいことを特徴とする放射線像変換パネル。
- 蛍光体層が二層以上で構成され、かつ輝尽励起波長および輝尽発光波長における最上層の蛍光体層の光透過率よりも最下層の蛍光体層の光透過率が大きい請求項1に記載の放射線像変換パネル。
- 輝尽励起波長および輝尽発光波長における最下層の蛍光体層の光透過率がいずれも2〜30%の範囲にある請求項2に記載の放射線像変換パネル。
- 少なくとも透明支持体、二層の蛍光体層および透明保護膜がこの順に積層されてなる請求項2もしくは3に記載の放射線像変換パネル。
- 輝尽性蛍光体がユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体である請求項1乃至4のうちのいずれかの項に記載の放射線像変換パネル。
Priority Applications (3)
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