JP3979832B2 - 液晶表示装置用接着性スペーサーおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置に用いる接着性スペーサー、その製造方法およびその構成材料に関する。さらに詳しくは、シード粒子の表面を接着性微粒子に由来する被覆層で被覆してなる液晶表示装置用接着性スペーサーとその製造方法、および、接着性微粒子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、テレビ、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、PHS(携帯情報端末)、カーナビゲーションシステム等の画像表示素子として、液晶表示板(LCD)が広く用いられている。なかでもTFT−LCDと呼ばれる液晶表示板は、高速応答や視野角拡大への対応が可能なため、ブラウン管(CRT)からの置き換えを目的に、15インチ以上の大画面TFT−LCDとする開発が検討されてきた。
しかし、特に大画面TFT−LCDを製造する際には、液晶パネルの製造工程時(基板搬送時、基板切断時など)および液晶パネルの輸送時等に、振動や衝撃が加わって液晶パネル内部のスペーサーが動き、1)配向膜の損傷に起因した液晶の配向乱れによる光抜けの増加、2)ギャップムラおよび色ムラの発生等の、液晶パネルの品質低下を生じさせる問題があった。そこで、スペーサーの移動防止を目的として、シード粒子表面に接着性を有する被覆層を設けた接着性スペーサーの開発および検討がなされてきた。
【0003】
このような接着性スペーサーとしては、これまでに、衝撃力、例えば、高速気流中衝撃法を用いた衝撃(摩擦)力(例えば、奈良機械製作所(株)製ハイブリダイゼーションシステムを用いた高速気流中衝撃法など)でシード粒子表面に接着性樹脂を被覆する方法(特開昭63−94224号公報、特開平1−154028号公報、特開平8−328022号公報、および、特開平9−235527号公報)等の乾式法で得られるものや、反応溶媒中、シード粒子の存在下でラジカル重合性単量体を重合したときに溶解できずに析出してくる生成重合体を利用して該シード粒子を被覆させる方法(特開平10−324706号公報)等の湿式法で得られるものが知られている。
【0004】
ところで、従来より、接着性スペーサーについては、液晶表示板における液晶の異常配向が問題視されているが、これを防止する1つの手段として、粒子表面の被覆層に長鎖アルキル基を有するようにすることが一般的に知られている。上記湿式での製造法においても、同様の効果を得るため、被覆層の原料となるラジカル重合性単量体に長鎖アルキル基を有する重合性単量体を含むようにしているが、所望の効果を発揮するためには、現状では、長鎖アルキル基を有する重合性単量体が50重量%以上必要である、つまり、得られる被覆層においても長鎖アルキル基を有する重合性単量体由来の構成成分が50重量%以上必要であるとされている。
【0005】
しかしながら、長鎖アルキル基を有する重合体は、通常、ガラス転移温度が50℃以下と低いため、長鎖アルキル基を有する重合性単量体由来の構成成分の含有率が上述のように50重量%以上である場合、被覆層は必要以上に高い粘着性を示し、接着性スペーサーどうしの融着を容易に引き起こしてしまい、2次凝集などが頻繁に生じる、といった問題がある。
同様に、液晶表示板における液晶の異常配向や光抜けの問題を低減する手段としては、シード粒子の存在下、長鎖アルキル基を有するラジカル重合性単量体を溶液重合により重合し、シード粒子表面にグラフト鎖を導入して被覆する方法(特開平8−328018号公報)が知られている。しかしながら、この方法では、シード粒子表面に重合の起点となる官能基を導入する工程や、グラフト鎖を延長させるために反応を繰り返す工程などの複数の工程が必要となり、操作が煩雑で生産性の面でも問題がある上、得られた粒子どうしの合着が生じるといった問題もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、コスト面に優れ、スペーサーどうしの融着の問題なども回避できる程度に、被覆層における長鎖アルキル基を有する重合性単量体由来の構成成分の含有率を低くしても、液晶表示装置における液晶の異常配向や光抜けを十分防止することができる液晶表示装置用接着性スペーサー、および、その製造方法と、その構成材料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。
その結果、液晶表示装置における液晶の異常配向や光抜けを防止し得る長鎖アルキル基の効果をいかに効率的に発揮させればよいか、つまり、長鎖アルキル基を有する重合性単量体を用いて被覆層に長鎖アルキル基を導入するにあたり、どのような形態で導入すれば従来よりも効率的に長鎖アルキル基の効果を発揮させることができるか、ということについて検討し、種々の推測および実験を繰り返した。
【0008】
従来、液晶の異常配向や光抜けを防止するために必要としていた長鎖アルキル基を有する重合性単量体の使用量では、上記異常配向や光抜けの防止の効果はあっても、同時に、その使用量の多さのため接着性スペーサーどうしの融着、ひいては2次凝集などの問題が容易に生じていたからである。
つまり、本発明者は、従来は、長鎖アルキル基はその効果が効率的に発揮できるような形態で導入されていないため、上記融着などといった問題を伴ってしまう程度の使用量とせざるを得ないのではないかと考え、長鎖アルキル基の被覆層への導入において、この点を解消できる導入形態を見出せば、それにより得られた接着性スペーサーは上記融着などの問題が無く、かつ、長鎖アルキル基の効果を効率的に発揮させることができるのではないか、と考えたのである。
【0009】
かかる知見に基づき、種々の検討および試行錯誤を繰り返した。通常、液晶の異常配向や光抜けを防止し得る長鎖アルキル基は、被覆層などの表面上に存在し、液晶に作用し得る必要があると考えられている。よって、本発明者は、表面上に長鎖アルキル基をより多く存在させるには、表面積を拡大する工夫をすれば良いのではないかと考えた。そこで、長鎖アルキル基を導入した接着性微粒子を合成した後、この接着性微粒子を多数集合させて被覆層を形成すれば、上記課題を一挙に解決することを確認し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる液晶表示装置用接着性スペーサーは、
シード粒子の表面を接着性微粒子に由来する接着層で被覆してなる液晶表示装置用の接着性スペーサーであって、
前記接着層は接着性微粒子が前記シード粒子に粒子状で付着してなるものであり、
前記接着性微粒子が下記一般式(1):
【0010】
【化5】
【0011】
(式中、R1は水素原子あるいはメチル基を表し、R2は炭素数14〜30の直鎖状または分枝状のアルキル基を表す。)
で表される重合性単量体由来の構成成分を0.1重量%以上かつ50重量%未満含む重合体粒子であることを特徴とする。
また、本発明にかかる接着性微粒子は、
下記一般式(1):
【0012】
【化6】
【0013】
(式中、R1は水素原子あるいはメチル基を表し、R2は炭素数14〜30の直鎖状または分枝状のアルキル基を表す。)
で表される重合性単量体由来の構成成分を0.1重量%以上かつ50重量%未満含む重合体粒子である接着性微粒子であって、かつ、シード粒子の表面に付着することにより前記シード粒子に接着性を付与し得ることを特徴とする。
また、本発明にかかる第1の液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法は、
シード粒子の表面が重合体粒子からなる接着性微粒子に由来する接着層で被覆された液晶表示装置用の接着性スペーサーを得る方法であって、
下記一般式(1):
【0014】
【化7】
【0015】
(式中、R1は水素原子あるいはメチル基を表し、R2は炭素数14〜30の直鎖状または分枝状のアルキル基を表す。)
で表される重合性単量体を0.1重量%以上かつ50重量%未満含むラジカル重合性単量体を溶媒中に溶解させ、重合安定化用樹脂の存在下で、前記ラジカル重合性単量体を重合させて前記重合体粒子を生成させる工程と、
前記シード粒子と前記生成させた重合体粒子とをヘテロ凝集させることにより前記シード粒子の表面を前記生成させた重合体粒子で被覆する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる液晶表示装置用接着性スペーサー、その製造方法、および、その構成材料に関する詳細を具体的に説明する。
〔液晶表示装置用接着性スペーサーおよび接着性微粒子〕
本発明にかかる液晶表示装置用接着性スペーサー(以下、本発明の接着性スペーサーと称することがある。)は、接着性スペーサーの核(母粒子)となるシード粒子を接着性微粒子(子粒子)に由来する接着層で被覆してなるものである。
ここで、接着性微粒子に由来する接着層とは、詳しくは、▲1▼シード粒子表面に複数(好ましくは、多数)の接着性微粒子が粒子状態で付着している場合では、当該接着性微粒子を上記接着層ということができ、また、▲2▼当該接着性微粒子をさらに加熱処理等により一旦適度に溶融させて得られる状態を上記接着層ということもできるとし、特に限定はされない。すなわち、本発明の接着性スペーサーにおいては、一旦シード粒子の表面に付着した接着性微粒子そのものであっても、その後何らかの処理を加えられたものであっても、上記接着層であるということができる。
【0020】
また、本発明の接着性スペーサーにおいては、上記被覆は、シード粒子表面の一部であっても、全部であってもよく、特に限定はされない。
上記接着性微粒子は、重合体の粒子、すなわち、重合体粒子であり、上述のようにシード粒子の表面を被覆することによってシード粒子に接着性を付与し得るものである。この接着性微粒子すなわち重合体粒子は、熱可塑性樹脂粒子であることが好ましく、さらに、液晶表示板用接着性スペーサーを液晶パネル基盤にスペーサー散布して約100〜200℃で加熱した際に流動性を示し、液晶表パネル基盤上に垂れることでスペーサー自身と液晶パネル基盤とを接着させる接着性を発揮するものであることが好ましい。
【0021】
上記重合体粒子は、ラジカル重合性単量体を含む重合性単量体成分を重合してなる粒子であることが好ましい。重合体の粒子であるためには、重合の際粒子状に合成される必要があるが、その方法、原理については、後述する本発明にかかる液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法の記載部分で、詳しく記載する。
本発明にかかる接着性微粒子(以下、本発明の接着性微粒子と称することがある。)は、下記一般式(1):
【0022】
【化9】
【0023】
(式中、R1は水素原子あるいはメチル基を表し、R2は炭素数12〜50の直鎖状または分枝状のアルキル基を表す。)
で表される重合性単量体由来の構成成分を0.1重量%以上かつ50重量%未満含む重合体粒子である接着性微粒子であって、かつ、シード粒子の表面に付着することにより前記シード粒子に接着性を付与し得ることを特徴とする。本発明の接着性スペーサーにおいては、接着性を有する被覆層は接着性微粒子(すなわち重合体粒子)に由来するものであるが、粒子状の重合体に由来するがゆえ、液晶の異常配向や光抜けを防止し得る長鎖アルキル基を被覆層の表面に効率的に存在させることができる。言い換えれば、上記被覆層は粒子状の重合体の集合体に由来するものであり、そうでない重合体に比べて相対的に表面積が大きく、単量体が有する長鎖アルキル基をより効率的に表面に存在させることができるのである。したがって、長鎖アルキル基を有する重合性単量体由来の構成成分の含有量が、上記のように従来では見られない少ない範囲であっても、十分その効果を発揮させることができ、長鎖アルキル基を有する重合性単量体由来の構成成分が多すぎることによる接着性スペーサーどうしの融着、2次凝集などの問題も避けることができる。
【0024】
上記一般式(1)において、R2の炭素数は、12〜50が好ましく、より好ましくは14〜30であり、さらにより好ましくは16〜28である。上記R2の炭素数が12未満であると、異常配向抑制の硬化が低くなり、多量の長鎖アルキル基を有するラジカル重合性単量体が必要となり、得られる重合体のガラス転移温度Tg(℃)が低くなりすぎるおそれがあり、Tgが50℃未満になった場合スペーサー粒子どうしの融着が生じることとなる。また、50を超える場合は、長鎖アルキル基が長すぎるため単量体としての反応性が低下するほか、一般的に市販されていないため入手が困難であり、自ら合成するとなると操作が煩雑になることや、疎水性が強くなりすぎて他のラジカル重合性単量体との共重合性が低下するなどのおそれがある。
【0025】
上述のように、上記接着性微粒子における、長鎖アルキル基を有する重合性単量体由来の構成成分の含有量は0.1重量%以上かつ50重量%未満であることを特徴とするが、より好ましくは40重量%未満、さらにより好ましくは30重量%未満である。さらに、長鎖アルキル基の長さ、つまり上記一般式(1)におけるR2の炭素数により、光抜け抑制の効果の程度が異なるため、R2の炭素数が14〜30である場合は1重量%以上かつ40重量%未満が好ましく、R2の炭素数が16〜28である場合は2重量%以上かつ30重量%未満が好ましい。
上記一般式(1)でいう、長鎖アルキル基を有するラジカル重合性単量体としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、パラステミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどを好ましく挙げることができる。上記長鎖アルキル基を有するラジカル重合性単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよく、他のラジカル重合性単量体と併用してもよい。
【0026】
上記接着性微粒子は上述のように重合体粒子であり、この重合体粒子の構成成分のうち、上記長鎖アルキル基を有するラジカル重合性単量体由来の構成成分以外の構成成分としては、特に限定はされないが、以下に示す他のラジカル重合性単量体由来の構成成分が挙げられる。また、重合体粒子、ひいては、接着性スペーサーの被覆層、に付与したい物性に関しても、所望のラジカル重合性単量体を適宜選択すればよい。
上記他のラジカル重合性単量体としては、具体的には、例えば、親水性を付与したい場合には、特に限定はされないが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体類;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール成分を有する単量体類;などを用いることが好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
同様に、疎水性を付与したい場合には、特に限定はされないが、(メタ)アクリル酸ブチル等のアルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタンフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロアミル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−(N−エチルパーフルオロオクタスルホアミド)エチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−8−メチルデシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(N−エチルパーフルオロオクタスルホアミド)エチルアクリレート、2−(N−エチルパーフルオロオクタスルホアミド)エチルメタクリレート等のフッ素原子含有(メタ)アクリレート類;スチレン、p−クロロスチレン等のスチレン誘導体;などを用いることが好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0028】
同様に、反応部位を与えるためには、特に限定はされないが、反応性の官能基としてエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基などを有するラジカル重合性単量体を用いることが好ましく、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド等を用いることが好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記他のラジカル重合性単量体由来の構成成分について、重合体粒子における含有割合は、上記長鎖アルキル基を有するラジカル重合性単量体由来の構成成分の含有割合を除いた分であれば好ましいが、接着性微粒子の熱特性を調整するために、ガラス転移温度を考慮した場合は、上記他のラジカル重合性単量体由来の構成成分の含有割合は、より好ましくは60〜97重量%、さらにより好ましくは70〜95重量%である。
【0029】
上記接着性微粒子すなわち重合体微粒子の構成成分においては、上述したラジカル重合性単量体由来の構成成分以外にも、さらに架橋性単量体由来の構成成分を含んでいてもよい。この架橋性単量体を用いることによって、得られる重合体粒子の分子量を上げることができ、また、生成する重合体粒子の粒子径を小さくすることができる。
上記架橋性単量体としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ビニル基を有する単量体として、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレートおよびその異性体、トリアリルイソシアヌレートおよびその誘導体などが挙げられる。また、上記ビニル基を有する単量体以外に、エポキシ基やシラノール基などを有する単量体なども挙げることができ、例えば、グリシジルメタクリレート等が挙げ挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記架橋性単量体由来の構成成分について、重合体粒子における含有割合は、0.01〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜20重量%、さらにより好ましくは0.5〜10重量%である。上記含有割合が、0.01重量%未満の場合は、架橋性単量体としての上述した効果がみられず、40重量%を超える場合は、反応系中で重合体粒子がさらにモノマーを吸収しにくくなって該粒子径が小さくなるため、重合体粒子を微粒子状で安定化する樹脂が不足することとなり、重合体粒子どうしが凝集、融合してしまうおそれがある。
上記接着性微粒子すなわち重合体粒子の平均粒子径は、0.01〜2μmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜1μm、最も好ましくは0.03〜0.5μm、特に好ましくは0.04〜0.3μmである。上記重合体粒子の平均粒子径が上記範囲内である場合は、シード粒子の粒子径や、シード粒子と重合体粒子との重量比、を制御することにより、シード粒子表面を重合体粒子で表面全体を完全に被覆することが可能となる。また、上記重合体粒子の平均粒子径が0.01μm未満であると、被覆は可能であるが、接着性スペーサーとして接着性が十分に発揮できないおそれがあり、2μmを超えると、シード粒子と重合体粒子との粒子径の差が小さくなり、表面全体を完全に被覆することができない場合がある。ただし、シード粒子の粒子径が重合体粒子に比べ十分大きい場合は、重合体粒子の粒子径が2μmを超える場合であっても、シード粒子の表面全体を完全に被覆することができることがある。
【0031】
本発明でいうシード粒子は、本発明の接着性スペーサーを液晶表示装置に用いた場合に、液晶層をはさむ両電極板の隙間距離を決める主なものであって、液晶層の厚みを均一かつ一定に保持するために必要であり、その平均粒子径は、1〜30μmであることが好ましく、より好ましくは1〜20μm、最も好ましくは1〜15μmである。シード粒子の平均粒子径が上記範囲を外れる場合は、液晶表示装置用の接着性スペーサーとしては通常用いられない領域である。
シード粒子の粒子径の変動係数(CV)は、10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下である。前記粒子径の変動係数が10%を超えると、液晶表示装置用接着性スペーサーとして用いた場合に、液晶層の厚みを均一かつ一定に保持することが困難となり、画像ムラを起こしやすくなるおそれがあるので好ましくない。
【0032】
シード粒子としては、特に限定されるわけではないが、種々のものがあり、例えば、有機架橋重合体粒子、無機系粒子、有機質無機質複合体粒子等を好ましく挙げることができる。これらの中でも、有機架橋重合体粒子および/または有機質無機質複合体粒子が、電極基板、配向膜またはカラーフィルターの損傷防止や両電極基板間の隙間距離(ギャップ)の均一性を得やすいという点で好ましく、有機質無機質複合体粒子が最も好ましい。
シード粒子の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、粉砕状、俵状、まゆ状、金平糖状等の任意の粒子形状でよく、特に限定されるわけではないが、両電極基板間の隙間距離を均一に一定とする上で球状が好ましい。これは、球状であると、すべてまたはほぼすべての方向について一定またはほぼ一定の粒形を有するからである。
【0033】
シード粒子は、染料および/または顔料を含むことで好ましく着色されていてもよい。
上記有機架橋重合体粒子としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ベンゾグアナミン、メラミンおよび尿素からなる群の中から選ばれた少なくとも1種のアミノ化合物とホルムアルデヒドとから縮合反応により得られるアミノ樹脂の硬化粒子(特開昭62−068811号公報参照);ジビニルベンゼンを単独で重合あるいは他のビニル単量体と共重合させて得られるジビニルベンゼン架橋樹脂粒子(特開平1−144429号公報参照)等を好ましく挙げることができる。
【0034】
上記無機系粒子としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ガラス、シリカ、アルミナ等の球状微粒子等を好ましく挙げることができる。
上記有機質無機質複合体粒子は、好ましくは、有機質部分と無機質部分とを含む複合粒子である。この有機質無機質複合体粒子において、前記無機質部分の割合は、特に限定されるわけではないが、例えば、前記有機質無機質複合体粒子の重量に対して、無機酸化物換算で、10〜90wt%の範囲であることが好ましく、より好ましくは25〜85wt%、さらに好ましくは30〜80wt%である。前記無機酸化物換算とは、好ましくは、有機質無機質複合体粒子を空気中などの酸化雰囲気中で高温(たとえば1000℃)で焼成した前後の重量を測定することにより求めた重量百分率で示される。前記有機質無機質複合体粒子の前記無機質部分の割合が、無機酸化物換算で10wt%を下回ると、前記有機質無機質複合体粒子は軟らかくなり、電極基板への散布個数が増えることになるので好ましくなく、また、90wt%を上回ると、硬すぎて配向膜の損傷やTFTの断線が生じやすくなるおそれがあるので好ましくない。
【0035】
上述のような有機質無機質複合体粒子としては、特に限定されるわけではないが、例えば、有機ポリマー骨格と、前記有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、前記ポリシロキサン骨格を構成するSiO2の量が10wt%以上である、有機質無機質複合体粒子A等を好ましく挙げることができる。有機ポリマー骨格としては、ビニル系ポリマーがギャップコントロールを制御できる高復元性を与えるため好ましい。ここで、前記有機質無機質複合体粒子Aが、G≧14・Y1.75(ここで、Gは破壊強度〔kg〕を示し;Yは粒子径〔mm〕を示す)を満足する破壊強度であると好ましく、10%圧縮弾性率が300〜2000kg/mm2、10%変形後の残留変位が0〜5%であるとさらに好ましい。
【0036】
前記有機質無機質複合体粒子Aの製造方法については、特に限定されるわけではないが、例えば、下記に示す縮合工程と重合工程と熱処理工程とを含む製造方法を好ましく挙げることができる。
前記縮合工程とは、ラジカル重合性基含有第1シリコン化合物を用いて加水分解・縮合する工程であることが好ましく、この縮合工程では、触媒としてアンモニア等の塩基性触媒を好ましく用いても良い。
ラジカル重合性基含有第1シリコン化合物は、次の一般式(2):
【0037】
【化10】
【0038】
(ここで、Raは水素原子またはメチル基を示し;Rbは、置換基を有していても良い炭素数1〜20の2価の有機基を示し;Rcは、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す。R1は、炭素数1〜5のアルキル基とフェニル基とからなる群から選ばれた少なくとも1種の1価の基を示す。lは1または2であり、pは0または1である。)
と、次の一般式(3):
【0039】
【化11】
【0040】
(ここで、Rdは水素原子またはメチル基を示し;Reは、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す。R2は、炭素数1〜5のアルキル基とフェニル基とからなる群から選ばれた少なくとも1種の1価の基を示す。mは1または2であり、qは0または1である。)
と、次の一般式(4):
【0041】
【化12】
【0042】
(ここで、Rfは水素原子またはメチル基を示し;Rgは、置換基を有していても良い炭素数1〜20の2価の有機基を示し;Rhは、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す。R3は、炭素数1〜5のアルキル基とフェニル基とからなる群から選ばれた少なくとも1種の1価の基を示す。nは1または2であり、rは0または1である。)
とからなる群から選ばれる少なくとも1つの一般式で表される化合物またはその誘導体であることが好ましい。
【0043】
前記重合工程は、前記縮合工程中および/または前記縮合工程後に、ラジカル重合性基をラジカル重合反応させて粒子を得る工程であることが好ましい。
前記熱処理工程は、前記重合工程で生成した重合体粒子を800℃以下、より好ましくは100〜600℃の温度で乾燥および焼成する工程であり、たとえば、10容量%以下の酸素濃度を有する雰囲気中や減圧下で行われることが好ましい。
上記の縮合工程、重合工程および熱処理工程から選ばれる少なくとも1つの工程中および/または後に、生成した前記シード粒子を着色する着色工程をさらに含んでいてもよく、詳しくは、前記シード粒子は染料および顔料からなる群から選ばれる少なくとも1つ等を含むことで着色されていてもよい。その色は、光が透過しにくいか、または、透過しない色が、接着性スペーサー自身の光抜けを防止でき画質のコントラストを向上できる点で好ましい。光が透過しにくいか、または、透過しない色としては、たとえば、黒、濃青、紺、紫、青、濃緑、緑、茶、赤等の色を好ましく挙げることができるが、特に好ましくは、黒、濃青、紺色である。なお、染料および/または顔料は、単にシード粒子に含まれるものでもよく、あるいは、染料および/または顔料とシード粒子を構成するマトリックスとが化学結合によって結び付けられた構造を有するものでもよいが、特にこれらに限定されない。
【0044】
前記染料は、着色しようとする色に応じて適宜選択して使用され、たとえば、染色方法によって分類された、分散染料、酸性染料、塩基性染料、反応染料、硫化染料等が挙げられる。これらの染料の具体例は、「化学便覧応用化学編 日本化学会編」(1986年丸善株式会社発行)の1399頁〜1427頁、「日本化薬染料便覧」(1973年日本化薬株式会社発行)に記載されている。
シード粒子を染色する方法としては、従来公知の方法がとられる。たとえば、上記の「化学便覧応用化学編 日本化学会編」や「日本化薬染料便覧」に記載されている方法等で行うことができる。
【0045】
前記顔料としては、特に限定はされないが、たとえば、カーボンブラック、鉄黒、クロムバーミリオン、モリブデン赤、べんがら、黄鉛、クロム緑、コバルト緑、群青、紺青などの無機顔料;フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系などの有機顔料が挙げられる。なお、前記顔料は、その平均粒子径が0.4μm以下でないと、シード粒子中に導入されない場合があるので、この場合は染料を使用する方が好ましい。前記シード粒子が着色されている場合、液晶表示板用スペーサーとして用いると、バックライトの光抜けを防止でき、液晶表示板の画質向上を達成することができる。
【0046】
上記縮合工程、重合工程および熱処理工程から選ばれた少なくとも1種の工程中および/または後に、生成した前記シード粒子を表面処理する表面処理工程をさらに含んでいても良い。
前記表面処理に用いる表面処理剤としては、特に限定されないが、下記一般式(5)〜(7)から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物が好ましい。
SiX4 (5)
R4SiX3 (6)
R5R6SiX2 (7)
(ここで、Xは塩素原子、水素原子、炭素数1〜5のアルコキシ基および炭素数2〜5のアシロキシ基から選ばれた少なくとも1種;R4およびR5は、いずれも、炭素数1〜22のアルキル基および炭素数6〜22のアリール基から選ばれる少なくとも1種であり、その基の中の1つ以上の水素原子が、アミノ基、メルカプト基、アルキレンオキシド基、エポキシ基、シアノ基、塩素原子およびフッ素原子から選ばれる少なくとも1種で置換されていても良い;R6は、炭素数1〜5のアルキル基とフェニル基とからなる群から選ばれる少なくとも1種の1価の基である。)
前記シラン化合物のうち、一般式(4)で示されるシラン化合物や、R4やR5がアミノ基を置換基として有するものである一般式(5)または(6)で示されるシラン化合物で表面処理されると、特に乾式散布性に優れるため好ましい。
【0047】
上記シード粒子としては、上述したように、有機質無機質複合体粒子であることが好ましいが、さらに、その粒子表面に、前記ラジカル重合性単量体と反応可能なビニル基および/またはシラノール基を有する有機質無機質複合体粒子であってもよい。
上記ビニル基を有機質無機質複合体粒子表面に導入するには、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレートおよびその異性体、トリアリルイソシアヌレートおよびその誘導体などを単量体成分として使用して有機質無機質複合体粒子を得ることが好ましい。これらは単独で導入されていても2種以上を併用されていてもよい。
【0048】
上記シラノール基を有機質無機質複合体粒子表面に導入するには、特に限定はされないが、具体的には、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルビス(トリメトキシ)メチルシラン、11−メタクリロキシウンデカメチレントリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルテトラメチレントリメトキシシラン、8−ビニルオクタメチレントリメトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、ビニルトリアセトキシシラン、p−トリメトキシシリルスチレン、p−トリエトキシシリルスチレン、p−トリメトキシシリル−α−メチルスチレン、p−トリエトキシシリル−α−メチルスチレン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β(N−ビニルベンジルアミノエチル−γ−アミノプロピル)トリメトキシシラン・塩酸塩等の、加水分解性シリル基を有する重合性ビニル単量体を単量体成分として使用して有機質無機質複合体粒子を得ることが好ましい。これらは単独で導入されていても2種以上を併用されていてもよい。
【0049】
上記反応可能なビニル基および/またはシラノール基については、これらのシード粒子表面への導入量は、特に限定はされず、適宜所望量となるように設定すればよい。
本発明にかかる液晶表示装置用接着性スペーサーについて、シード粒子表面の被覆層の厚さは、特に限定されるわけではないが、基本的には、上述した重合体粒子の平均粒子径と同様であると考えることができ、0.01〜2μmとなるようにすることが好ましく、より好ましくは0.02〜1μm、さらにより好ましくは0.03〜0.5μm、特に好ましくは0.02〜0.3μmである。上記厚さが0.01μm未満の場合は、接着性スペーサーとして接着性を示さないおそれがあり、2μmを超える場合は、接着層の溶融時に、この接着層が電極基板、配向膜およびカラーフィルターを覆う面積が大きくなり、液晶表示板の画質低下を招くおそれがある。
【0050】
本発明の接着性スペーサーについては、その平均粒子径は、シード粒子の粒子径に上記被覆層の厚みを加えたものと考えられる。
〔液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法〕
本発明にかかる第1の液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法(以下、本発明の第1の製造方法と称することがある。)、および、本発明にかかる第2の液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法(以下、本発明の第2の製造方法と称することがある。)(以下、第1の製造方法および第2の製造方法をまとめて本発明の製造方法と称することがある。)は、共に、シード粒子の表面が重合体粒子からなる接着性微粒子に由来する接着層で被覆された液晶表示装置用の接着性スペーサーを得る方法であって、下記一般式(1):
【0051】
【化13】
【0052】
(式中、R1は水素原子あるいはメチル基を表し、R2は炭素数12〜50の直鎖状または分枝状のアルキル基を表す。)
で表される重合性単量体を0.1重量%以上かつ50重量%未満含むラジカル重合性単量体を、溶媒中に溶解させ、重合安定化用樹脂の存在下で、前記ラジカル重合性単量体を重合させて前記重合体粒子を生成させる工程(第1工程)を含む製造方法である。
上記シード粒子や、接着性微粒子、重合体粒子については、その構成成分の種類や含有割合などについての詳細は、上記本発明の接着性スペーサーについて記載した内容と同様であることが好ましい。
【0053】
以下、この第1工程について説明する。
上記ラジカル重合性単量体の重合に際しては、酸素等による重合抑制を防ぐ為に、反応系を窒素等の不活性ガスで置換しておくことが好ましい。
上記ラジカル重合性単量体の上記溶媒に対する仕込み方については、特に限定はなく、最初(反応開始前)に全量仕込んでもよいし、最初に一部を仕込んでおいてから残りを連続フィード添加しても、断続的にパルス添加しても、両者を組み合わせて添加してもよい。ラジカル重合性単量体とともに架橋性単量体を使用する場合であっても、溶媒に対する仕込み方については、上述のラジカル重合性単量体の仕込み方と同様であることが好ましく、特に限定はされない。
【0054】
上記第1工程でいう溶媒(すなわち本発明の製造方法でいう溶媒)とは、前記ラジカル重合性単量体は溶解するが、その重合体すなわち前記ラジカル重合性単量体を重合してなる重合体(および重合体粒子)は溶解しない、という特性を有する反応溶媒である。
上記溶媒としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン等のケトン類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類;
ベンゼン、トルエン等の芳香族類;アセトにトリル、ジオキサン、ジオキソラン、THF等;などを好ましく挙げることができ、これらは単独で用いても2種以上を併用してもよく、また、これらと互いに相溶し合う他の有機溶媒と併用してもよいし、水との併用でもよい。
【0055】
上記ラジカル重合開始剤としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、過可硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酢酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤類、および、これら過酸化物系開始剤類に還元剤としての亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸、ロンガリット、メタ重亜硫酸ナトリウム等と組み合わせたレドックス系開始剤;
アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬(株)製、商品名:V−601)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)(和光純薬(株)製、商品名:V−501)、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕(和光純薬(株)製、商品名:VA−061)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナミジン)ジヒドロクロライド(和光純薬(株)製、商品名:V−50)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬(株)製、商品名:V−70)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(和光純薬(株)製、商品名:V−60)、1−〔(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ〕ホルムアミド(和光純薬(株)製、商品名:V−30)等のアゾ系化合物類;
などを好ましく挙げることができる。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0056】
上記ラジカル重合開始剤の添加方法については、特に限定はなく、最初(反応開始前)に全量仕込んでもよいし、最初に一部を仕込んでおいてから残りを連続フィード添加しても、断続的にパルス添加しても、両者を組み合わせて添加してもよい。
また、上記第1工程においては、ラジカル重合開始剤の存在下で重合を開始するが、熱、紫外線、放射線および電子線等を利用して重合を開始させることもできる。
上記第1工程でいう重合安定化用樹脂(すなわち本発明の製造方法でいう重合安定化用樹脂)とは、重合により生成した重合体、詳しくは前記ラジカル重合性単量体の重合により生成した重合体、を微粒子状態で安定化させる樹脂である。ここで、本発明において、微粒子状態で安定化させる、とは、実質的には、下記▲1▼および▲2▼で示す機能を有することであるとする。
【0057】
上記重合安定化用樹脂は、▲1▼重合により生成した重合体を微粒子状態に保つことのできる樹脂であり、ひいては、さらに重合の進んだ重合体を重合体粒子として生成させその粒子形状を保つことができる。詳しくは、前記樹脂は、重合により生成した重合体に結合または吸着するため、ラジカル重合性単量体の重合開始後に存在する重合体粒子の核となり得る低分子量重合体の段階からその表面に結合または吸着し、この低分子量重合体がさらに重合により成長していく間もその表面に結合または吸着する。このように、重合体の成長の初期段階からその表面に結合または吸着するので、得られる重合体を粒子状で保つことができ、すなわち、重合体粒子を生成することができると考えられる。
【0058】
また、上記重合安定化用樹脂は、▲2▼生成させた重合体粒子どうしの凝集、すなわち2次凝集を生じないようにすることのできる樹脂でもある。
上記重合安定化用樹脂としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、アクリル酸−スチレンブロック共重合体、ポリエチレングリコール−メタクリル酸メチル共重合体、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニルなどの各種ポリマーが好ましく挙げられる。
【0059】
これら各種ポリマーが、上記▲1▼および▲2▼の作用効果を奏する機構としては、特に限定はされないが、具体的には、ラジカル重合性単量体の重合により重合体が合成されると、溶媒中に溶解させている上記各種ポリマーが、この重合体表面に結合または付着することにより重合体を粒子状で2次凝集すること無く安定化させる、という機構が好ましく挙げられる。
また、上記重合安定化用樹脂としては、上記列挙した各種ポリマー以外にも、マクロモノマーやマクロイニシエーターを好ましく挙げることができる。
上記マクロモノマーとしては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、ポリスチレンマクロモノマー、スチレン−アクリロニトリル共重合体マクロモノマー、ポリブチルアクリレートマクロモノマー、ポリイソブチルメタクリレートマクロモノマー、メチルメタクリレート−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体マクロモノマー、2−エチルヘキシルメタクリレート−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体マクロモノマー、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレングリコールメチルエーテルマクロモノマーなどであって、これらポリマーの片方の末端(片末端)に、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ビニル基、メルカプト基、メタクリロイル基などの重合性官能基から選ばれるいずれか1つを有するもの、あるいは、エポキシ基、ヒドロキシル基(水酸基)、ジヒドロキシル基(水酸基)、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基などの反応性官能基から選ばれるいずれか1つを有するもの、などを好ましく挙げることができる。
【0060】
マクロモノマーとしては、上記列挙したなかでも、ポリマーの片末端に重合性官能基としてのビニル基およびメルカプト基のいずれかを有するマクロモノマー、および、片末端に反応性官能基としてのエポキシ基、水酸基、カルボキシル基およびアミノ酸からなる群より選ばれる1つを有するマクロモノマー、がより好ましい。
マクロモノマーとは、通常、重合反応可能な官能基を有する高分子量モノマーであり、他のモノマーと共重合することによりグラフトポリマーとなり得るものである。このマクロモノマーが、上記▲1▼および▲2▼の作用効果を奏する機構としては、特に限定はされないが、具体的には、ラジカル重合性単量体の重合により重合体が合成されると同時に、溶媒中に溶解させているマクロモノマーがこの重合体表面に自身に由来するグラフト鎖を形成し、このグラフト鎖が重合体を粒子状で2次凝集すること無く安定化させる、という機構が好ましく挙げられる。
【0061】
上記マクロイニシエーターとしては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール鎖、ポリジメチルシロキサン鎖、ポリメタクリル酸メチル鎖、ポリスチレン鎖、ポリブチルアクリレート鎖などであって、これらポリマー鎖が、アゾ基、パーオキサイド基、メルカプト基などの重合開始を促進し得る官能基(重合開始官能基)を有するもの、などを好ましく挙げることができる。
マクロイニシエーターとしては、上記列挙した中でも、重合開始官能基としてアゾ基およびパーオキサイド基のいずれかを有するマクロイニシエーターがより好ましい。
【0062】
マクロイニシエーターとは、通常、重合開始を促進する官能基を有する高分子量モノマーであり、1分子中に数個のラジカル重合開始官能基を有しており、熱等により分解して重合を開始させることができる。このマクロイニシエーターが、上記▲1▼および▲2▼の作用効果を奏する機構としては、特に限定はされないが、具体的には、原料となるラジカル重合性単量体の重合に重合開始剤として関与するとともに、ブロックポリマーとなり、得られる重合体の表面に、自身に由来するブロック共重合体鎖を形成することによって、このブロック共重合体鎖が重合体を粒子状で2次凝集すること無く安定化させる、という機構が好ましく挙げられる。
【0063】
上記マクロモノマーおよびマクロイニシエーターは、共にその数平均分子量は、500以上であることが好ましく、より好ましくは1000以上、さらにより好ましくは2000以上である。上記数平均分子量が、500未満であると、重合体を粒子状で安定化させることができず、重合が進行しにくく凝集が生じることとなる。
上記列挙した各種重合安定化用樹脂は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記列挙した各種重合安定化用樹脂のなかでも、特に、上記マクロモノマーおよびマクロイニシエーターを用いた場合は、それ以外の重合安定化用樹脂を用いた場合では見られない、重合体粒子の粒子径を小さくできること、重合体粒子にグラフト反応するため液晶パネル中での重合体の溶出が生じないこと、また、散布分散液中での安定性を効率良く付与できること等の優れた効果を発揮することができる。
【0064】
上記第1工程においては、上記重合安定化用樹脂の使用量は、使用するラジカル重合性単量体100重量部に対して、0.1〜200重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜100重量部、さらにより好ましくは1〜50重量部である。上記使用量範囲内であれば、上述した効果が発揮され得る。
上記第1工程においては、上記ラジカル重合性単量体を重合させる際、必要に応じて、分子量を調節する目的で、連鎖移動剤や調節剤などを好ましく用いることができる。上記連鎖移動剤や調節剤としては、特に限定されるものではないが、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、アセトフェノン等のケトン類;アセトアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類等を好ましく用いることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0065】
上記連鎖移動剤や調節剤については、その使用量は、上記ラジカル重合性単量体の総重量に対して20重量%以下となるように使用するのが好ましく、より好ましくは10重量%以下である。上記使用量が20重量%を超える場合は、生成する重合体粒子は分子量が低くなり、互いに融着しやすくなるとともに、スペーサー粒子どうし凝集の原因ともなるおそれがある。
上記第1工程においては、上記ラジカル重合性単量体を重合させる際の反応温度は、使用する溶媒の沸点以下で行うことが好ましい。
本発明の製造方法においては、上記第1工程の後、この第1工程で生成させた重合体粒子(接着性微粒子)を溶媒中に存在している状態から分離し、乾燥等の処理をして、単離する工程を含んでいてもよい。該工程は、後述する、シード粒子表面への接着性微粒子(重合体粒子)の付着や被覆を、乾式で行う場合などには必要な工程である。
【0066】
本発明の第1の製造方法においては、上記第1工程に加え、シード粒子と上記第1工程で生成させた重合体粒子とをヘテロ凝集させることにより、シード粒子表面を上記第1工程で生成させた重合体粒子で被覆する工程を含む。被覆はシード粒子表面の一部であっても全部であってもよい。
ヘテロ凝集とは、一般的には、粒子径および電荷の符号が異なる2種類の球状粒子を混合すると、両粒子間の凝集が優先して起こり、一方が他方によって取り囲まれた複合凝集体が形成されることをいい、通常、小さい方の粒子によって大きい方の粒子を取り囲むようにする場合が多いが、両粒子の粒子数比の範囲を広くとる場合、大きい方の粒子によって小さい方の粒子を取り囲むようにすることも可能である。
【0067】
本発明の第1の製造方法におけるヘテロ凝集を行う工程については、上記「粒子径および電荷の符号が異なる2種類の球状粒子」が、シード粒子と接着性微粒子であり、両粒子間の静電引力によるヘテロ凝集によって、シード粒子が接着性微粒子に取り囲まれるように被覆されることが好ましく、この場合、シード粒子および接着性微粒子は、粒子そのものであってもよいし、粒子表面などをイオン性の処理剤等で何らかの処理をしたものであってもよい。
詳しくは、例えば、水相をpH調整した場合、イオン性界面活性剤(a)を用いて分散させたシード粒子(A1)と、このイオン性界面活性剤(a)と反対の電荷を有するイオン性界面活性剤(b)で分散させた接着性微粒子(B1)あるいはこのイオン性界面活性剤と反対の電荷を有するイオン性の重合性単量体を必須とする単量体成分から合成されたもので好ましくはこのイオン性の重合性単量体由来の官能基・電荷を粒子表面に有する接着性微粒子(B2)の少なくとも一方とが混合した水相では、両粒子間の静電的相互作用により生じる静電引力によって両粒子間にヘテロ凝集が生じ、シード粒子の表面の少なくとも一部が接着性微粒子に取り囲まれるように被覆される。
【0068】
本発明の第1の製造方法において、ヘテロ凝集を行うにあたっては、接着性微粒子とシード粒子との平均粒子径の比(接着性微粒子/シード粒子)は、1/10000〜2/5を採用することが好ましく、より好ましくは1/1000〜3/10、さらに好ましくは1/100〜1/5である。前記平均粒子径の比が、上記範囲外となる場合は、接着性微粒子によってシード粒子を被覆するのが困難になるおそれがあるので好ましくない。
本発明の第1の製造方法において、ヘテロ凝集を行うにあたっては、接着性微粒子とシード粒子との混合比(接着性微粒子/シード粒子)(重量比)は、1/300〜1/1であることが好ましく、より好ましくは1/100〜1/2、さらに好ましくは1/50〜1/3である。上記混合比が、上記範囲外となる場合は、接着性微粒子によってシード粒子を被覆するのが困難になるおそれがある、あるいは、シード粒子の被覆にあずからない接着性微粒子が多くなり過ぎ、それらの除去が困難となるおそれがある。
【0069】
本発明の第1の製造方法において、接着性微粒子とシード粒子のゼータ電位は互いに異符号となるようにすることが好ましく、両粒子間のゼータ電位の差は、2〜300mVにすることが好ましく、より好ましくは10〜150mVである。ゼータ電位の差が300mVを超える場合は、系が安定でヘテロ凝集が起こらないため好ましくなく、2mV未満の場合は、ヘテロ凝集が生じても液晶表示板用接着性スペーサーが単分散性良く得られないため好ましくない。
本発明の第1の製造方法において、上記ゼータ電位の条件および数値範囲に関しては、これらを満たすように水相の(分散液の)pHを調整することで達成するのが好ましく、用いる接着性微粒子とシード粒子とは、ヘテロ凝集時に異符号の電荷を有していることが好ましい。また、シード粒子に関しては、シード粒子を水相中に分散させるために用いるイオン性異面活性剤について、一方、接着性微粒子に関しては、接着性微粒子を分散させるイオン性界面活性剤および/またはこの粒子表面に官能基を導入するためのイオン性の単量体や重合開始剤について、適宜最適なものを選択し、水相のpH調整後に各粒子ともに所望の電荷符号およびゼータ電位となるようにすることが好ましい。このイオン性の単量体や重合開始剤としては、接着性微粒子の合成に用いるイオン性の単量体や重合開始剤として前述したものが好ましい。
【0070】
本発明の第1の製造方法において、シード粒子(この分散液も含む)と接着性微粒子(この分散液も含む)との混合は、前者に後者を加えても、その逆でもあるいは同時でもよい。また、pH調整については、両者の混合前あるいは混合後のいずれで行ってもよい。
本発明の第1の製造方法において、さらに電解質を添加する場合、接着性微粒子をシード粒子により強固に付着させ被覆させることができる。
前記電解質としては、1価、2価、3価の金属の塩が好ましく用いられるが、より好ましくは1価の金属の塩であり、特に限定されるわけではないが、具体的には、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウム等を好ましく挙げることができる。また、前記電解質の添加量としては、特に限定されるわけではなく任意であるが、1mol/L以下が好ましく、より好ましくは1×10-5〜1×10-1mol/Lである。ただし、上記のような金属塩を用いた場合、液晶表示装置内ではイオン性の不純物として液晶の配向などに悪影響を与えるため、接着性スペーサーの洗浄過程で除去することが好ましい。
【0071】
本発明の第1の製造方法において、へテロ凝集を行うにあたっては、ヘテロ凝集中および/または凝集後、室温(約20℃)以上、(Tg+50℃)以下で加熱することが好ましい(ここで、Tgは、本発明でいう接着性微粒子である重合体粒子のガラス転移温度(Tg(℃))である)。この理由としては、シード粒子と接着性微粒子との親和力を高めるためであり、特に、上記Tg(℃)以上の加熱をした場合は、接着性微粒子はその少なくとも一部が溶融してシード粒子表面に強固に付着するため、本発明の接着性スペーサーを単離する際に、接着性微粒子の剥離を低減することができる。
【0072】
本発明の第1の製造方法においては、上記へテロ凝集を行う工程の後、得られたヘテロ凝集後の接着性スペーサーを分離、乾燥などして単離し、加熱等の処理をすることによって、接着性微粒子の少なくとも一部をシード粒子に融着させ、より強固に被覆させる工程を含んでいてもよい。
本発明の第2の製造方法においては、上記第1の工程に加え、シード粒子および上記第1工程で生成させた重合体粒子を共に含む粉末状の混合物に衝撃力を与えて、シード粒子表面を上記第1工程で生成させた重合体粒子で被覆する工程を含む。被覆はシード粒子表面の一部であっても全部であってもよい。
【0073】
本発明の第2の製造方法において、上記混合物に衝撃力を与える具体的な方法としては、特に限定されるわけではなく、例えば、高速気流中衝撃法などを好ましく挙げることができる。
高速気流中衝撃法とは、例えば、シード粒子と接着性微粒子との粉末を含む混合物を気相中に分散させ、衝撃力を主体とする機械的熱的エネルギーを混合物に与える方法であり、シード粒子表面の被覆を簡便かつ効率よく行うことができる。
高速気流中衝撃法を実施する装置としては、特に限定されるわけではないが、例えば、奈良機械製作所(株)製ハイブリダイゼーションシステムや、ホソカワミクロン(株)製メカノフュージョンシステム、川崎重工業(株)製クリプトロンシステム等を好ましく挙げることができる。
【0074】
本発明の第2の製造方法における、上記衝撃力を用いた工程では、接着性微粒子とシード粒子との混合比(接着性微粒子/シード粒子)(重量比)は、1/300〜1/1であることが好ましく、より好ましくは1/100〜1/2、さらに好ましくは1/50〜1/3である。上記混合比が、上記範囲外となる場合は、接着性微粒子によってシード粒子を被覆するのが困難になるおそれがある、あるいは、シード粒子の被覆にあずからない接着性微粒子が多くなり過ぎ、それらの除去が困難となるおそれがある。
本発明の第1および第2の製造方法においては、さらに、得られた接着性スペーサーの精製および分級を行うことが好ましい。つまり、溶媒中に含まれる目的の接着性スペーサー以外の不純物を除去する、すなわち、重合体粒子単独のものと生成した接着性スペーサーとを分離したり、接着性スペーサーの大きさをそろえたりすることが好ましい。本発明の製造方法においては、生成される接着性スペーサーとシード粒子表面の被覆にあずからない重合体微粒子などとの粒子径の差が大きいため、上記接着性スペーサーと未被覆の重合体粒子との粒子径は明確に区別できる。
【0075】
本発明の製造方法においては、上記精製を行うには、ろ紙等を用いた通常のろ過により接着性スペーサーのみを得る方法や、デカンテにより接着性スペーサー以外の上澄み液を捨てる方法などが簡便であるため好ましい。また、上記精製および分級を行うためには、電成ふるいを備えた分級装置を用いることが好ましい。
上記精製により除かれた重合体粒子は、不純物として廃棄してもよいが、再度、本発明の第1の製造方法でいうヘテロ凝集や本発明の第2の製造方法でいう衝撃力によりシード粒子に重合体粒子を付着、被覆させて接着性スペーサーを得る場合に使用することもできる。
【0076】
上記電成ふるいとは、メッキによって矩形の孔を有するスクリーンを作製したものである。電成ふるいの作成方法としては、高精度にクロスライン状に腐食させたガラス原板上に、真空蒸着、スパッタリング等の物理メッキ、あるいは電解メッキ、無電解メッキ等の化学メッキにより導電性被膜を形成した後、腐食部分の溝以外のメッキ層を除去し、これに電解メッキ等の方法でメッシュを形成し、ガラス原板から剥離する方法が挙げられる。このようにして作製されたメッシュはガラス原板から剥離後、必要に応じてさらに電解メッキを施してもかまわない。また、他の作成方法として、ガラス平板上に真空蒸着、スパッタリング等の物理メッキ、あるいは電解メッキ、無電解メッキ等の化学メッキにより導電性被膜を形成し、その被膜上にレジストを塗布した後、所定の形状のパターンを形成し、その後エッチングによりパターン以外の部分を除去し、ガラス原板から剥離後、電解メッキを施す方法も挙げられる。
【0077】
電成ふるいの材質としては、金、白金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル及びこれらをベースとする種々の合金が用いられるが、ふるいの耐久性、耐蝕性やメッキ作業の容易さからニッケルを主成分とするものが特に好ましく用いられる。
電成ふるいは、開孔径、単位あたりの開孔数の調整が容易であるばかりでなく、開孔径分布が非常に良好であるため、ふるいとして用いた場合、非常に精度良く分級することが可能となる。
電成ふるいは非常に薄いため簡単に傷ついたり、破れたりし、分級された粒子へ金属系不純物の混入のおそれがある。特に分級した接着性スペーサーを液晶表示等の電子デバイスに用いる場合、金属系不純物の混入は品質および信頼性の低下の原因となるため重大な問題である。この問題を回避するため、電成ふるいの片面あるいは両面に格子状あるいはリング状等のサポートを設けて強度を上げることが好ましい。
【0078】
電成ふるいの分級装置への取り付けに関しては、特に超音波振動を印加する場合など、電成ふるいと分級装置とが擦れて電成ふるいが破損し分級された粒子へ金属系不純物が混入するおそれがあるため、エラストマーからなる部材を介して取り付けることが好ましい。
電成ふるいを用いた分級においては、粒子の分散液を電成ふるいを備えた分級装置に通すことによって湿式法により分級を行うことが好ましい。媒体として不活性ガスや空気などを用いる乾式法と比較して、湿式法による場合の方が超音波の照射効率、分散の安定性が高く、また電成ふるいへの粒子の付着が少ない。特に液晶表示装置用接着性スペーサー等の粒子径の小さいものは、一般的に凝集力が強いため、乾式法では分散が不十分になる場合がある。上記湿式法において、粒子を分散させる液状媒体としては、用いる電成ふるいの材質、開孔径、線数および粒子の性状あるいは粒子径分布などによって適切に選択することができる。また、分級に際しては、分級装置内に超音波照射チップを挿入した場合、水等の液状媒体に超音波照射を行うことで、分級の効率を好ましく向上させることができる。
【0079】
本発明の製造方法により得られる液晶表示装置用接着性スペーサーは、テレビ、モニター、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、カーナビゲーションシステム、DVD、デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ、PHS(携帯情報端末)などの種々の器機に搭載される液晶表示板用の接着性スペーサーとして好ましく用いることでき、いずれにおいても上述した各種優れた効果を発揮することができる。また、被覆効率(粒子表面積に対する接着層の被覆面積の割合)が高いため、電極基板上に効率的に接着・固定することができ、スペーサー自身の移動の防止や、液晶表示装置のコントラスト性等の画質面での向上を達成することができる。
【0080】
【実施例】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と記すことがある。
−実施例1−
フラスコ内に、ステアリルメタクリレート50g、スチレン40g、メタクリル酸メチル10g、ポリビニルピロリドン(和光純薬社製、商品名:K−90)15g、メタノール400g、水10gを仕込んだ。その後、フラスコ内を65℃まで昇温し、窒素雰囲気下で30分放置してから、水10gに過酸化アンモニウム1gを溶解させた開始剤水溶液を加えて、24時間重合を行うことで、実施例1の接着性微粒子(以下、接着性微粒子(1)と称すことがある。)の分散液を得た。得られた接着性微粒子(1)の平均粒子径を動的光散乱法により測定したところ、0.45μmであった。
【0081】
また、有機質無機質複合体粒子(日本触媒社製、商品名:エポスターYW50、平均粒子径5.0μm)250g、アミノシランカップリング剤2.5g、メタノール1000gを混合し、この混合物について、エバポレーターを用いてメタノールを蒸発させ、その後、減圧乾燥器で120℃、2時間乾燥させた。乾燥後に得られた粒子をメタノールでよく洗浄して、粒子用面がカチオン性の実施例1のシード粒子(以下、シード粒子(1)と称すことがある。)を得た。
次に、接着性微粒子(1)とシード粒子(1)とをヘテロ凝集させた。具体的には、まず、水200gおよび酢酸6gからなる酢酸水溶液にシード粒子(1)50gを混合した後、超音波洗浄器を用いてシード粒子分散液とした。このときシード粒子分散液はpHが3以下となっていることをリトマス試験紙で確認した。このシード粒子分散液に対して、上記接着性微粒子(1)の分散液250gを常温で添加、混合した。混合後の平均粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径5.0μmであったシード粒子が、5.75μmに増大していた。これは、ヘテロ凝集により、シード粒子表面に接着性微粒子が付着して被覆層となり、シード粒子そのものよりも粒子径が大きくなったことを示している。
【0082】
次に、上記へテロ凝集後の混合液を、細孔径3μmのろ紙に通してヘテロ凝集している粒子(ヘテロ凝集粒子)のみをろ別した。ろ別後、ヘテロ凝集粒子をメタノールでよく洗浄し、40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、接着性微粒子がシード粒子である有機質無機質複合体粒子の表面に付着し、被覆している様子が確認された。
乾燥したヘテロ凝集粒子について、高速気流回転装置を用いて接着性微粒子の融着を進行させて、実施例1の接着性スペーサー(以下、接着性スペーサー(1)を得た。
【0083】
−比較例1−
フラスコ内に、スチレン90g、メタクリル酸メチル10g、水500gを仕込んだ。その後、フラスコ内を65℃まで昇温し、窒素雰囲気下で30分放置してから、水10gに過酸化アンモニウム1gを溶解させた開始剤水溶液を加えて、24時間重合を行うことで、比較例1の接着性微粒子(以下、比較接着性微粒子(1)と称すことがある。)の分散液を得た。得られた比較接着性微粒子(1)の平均粒子径を動的光散乱法により測定したところ、0.43μmであった。この比較接着性微粒子(1)の分散液中の、比較接着性微粒子(1)を遠心分離洗浄により単離し、続いて凍結乾燥を行い、粉体として比較接着性微粒子(1)を得た。
【0084】
この比較接着性微粒子(1)と実施例1でのシード粒子(1)とを乾式混合し、高速気流回転装置を用いてシード粒子(1)の表面に比較接着性微粒子(1)の被覆を行い、比較例1の接着性スペーサー(以下、比較接着性スペーサー(1)と称することがある。)を得た。
−比較例2−
フラスコ内に、スチレン90g、メタクリル酸メチル10g、水500gを仕込んだ。その後、フラスコ内を65℃まで昇温し、窒素雰囲気下で30分放置してから、水10gに過酸化アンモニウム1gを溶解させた開始剤水溶液を加えて、24時間重合を行うことで、比較例2の接着性微粒子(以下、比較接着性微粒子(2)と称すことがある。)の分散液を得た。得られた比較接着性微粒子(2)の平均粒子径を動的光散乱法により測定したところ、0.51μmであった。(比較接着性微粒子(2)と比較接着性微粒子(1)とは同様の方法で得られた粒子であるが、それらの平均粒子径の違いはロットの違いによる誤差である。)次に、この比較接着性微粒子(2)と、実施例1のシード粒子(1)とをヘテロ凝集させた。具体的には、まず、水200gおよび酢酸6gからなる酢酸水溶液にシード粒子(1)50gを混合した後、超音波洗浄器を用いてシード粒子分散液とした。このときシード粒子分散液はpHが3以下となっていることをリトマス試験紙で確認した。このシード粒子分散液に対して、上記比較接着性微粒子(2)の分散液250gを常温で添加、混合した。混合後の平均粒子径を、コールターカウンター(コールター社製、製品名:マルチタイザーII型)で測定したところ、平均粒子径5.0μmであったシード粒子が、5.86μmに増大していた。これは、ヘテロ凝集により、シード粒子表面に接着性微粒子が付着して被覆層となり、シード粒子そのものよりも粒子径が大きくなったことを示している。
【0085】
次に、上記へテロ凝集後の混合液を、細孔径3μmのろ紙に通してヘテロ凝集している粒子(ヘテロ凝集粒子)のみをろ別した。ろ別後、ヘテロ凝集粒子をメタノールでよく洗浄し、40℃で減圧乾燥を一晩行った後、さらにSEMで観察したところ、接着性微粒子がシード粒子である有機質無機質複合体粒子の表面に付着し、被覆している様子が確認された。
乾燥したヘテロ凝集粒子について、高速気流回転装置を用いて接着性微粒子の融着を進行させて、比較例2の接着性スペーサー(以下、比較接着性スペーサー(2)を得た。
このようにして得られた接着性スペーサー(1)および比較接着性スペーサー(1)、(2)について、以下の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
(シード粒子表面の被覆状態、異物粒子の観察および評価)
走査型電子顕微鏡(SEM)により、倍率3000倍での任意の10視野を観察し、総粒子数500個以上のスペーサー粒子を確認すると同時に、それらスペーサー粒子の周りにある、シード粒子の被覆にあずからない重合体粒子の粒子数を測定した。
【0086】
また、未被覆のシード粒子の数を測定するために、上記SEMによるスペーサー粒子の観察の際に、シード粒子表面の被覆率が20%未満のものを未被覆粒子としてその数を測定した。
(固着力試験)
テープ剥離法およびエアブロー法にて接着性スペーサーの固着力を評価した。どちらの方法においても、
「残存率(%)=(残存個数/散布個数)×100」
とし、散布個数に関しては500個以上のスペーサーを計測し、残存率を算出した。
【0087】
テープ剥離法:スペーサー粒子を散布したポリイミド塗布ガラス基板を、150℃で30分加熱した後、ビニルテープ(積水化学社製)による剥離試験を行った。テープ剥離前後のスペーサー粒子の残存個数をスペーサーカウンターで計測した。
エアブロー法:スペーサー粒子を散布したポリイミド塗布ガラス基板を、150℃で30分加熱した後、該ガラス基板から5mm上部にエアーガン(先端口径4mm)を設置して、空気圧1kgf/cm2で10秒間エアブローを行い、ブロー前後のスペーサー粒子の残存個数をスペーサーカウンターで計測した。
(光抜け抑制能)
ポリイミド樹脂で表面コートされている基板ガラス(30mm×40mm)を、ラビング機を用いてアンチパラレルにラビングし、合成した接着性スペーサーを用いて水平配向セルを作製した。用いた液晶はメルク社製の製品(製品名:ZLI 4792)であり、電圧は無印加状態、20℃で、偏光顕微鏡を用いて観察した。また、振動による液晶配向異常の程度を評価するために、液晶セルにミクロ形電磁泳動ふるい器で1分間振動を加えて、その後の光抜け変化を偏光顕微鏡で観察した。
【0088】
なお、光抜け抑制能は、偏光顕微鏡により観察されたスペーサーの画像面積と光抜け部分の画像面積とを比較し、スペーサーの画像面積に対する光抜け部分の画像面積の比率で示すこととし、以下の基準で評価した。
A:スペーサー周囲の光抜け無し。
B:若干光抜けが見られる。
C:1/3程度の光抜けが見られる。
D:1/2程度の光抜けが見られる。
E:1/1以上の光抜けが見られる。
【0089】
【表1】
【0090】
【発明の効果】
本発明によれば、コスト面に優れ、スペーサーどうしの融着の問題なども回避できる程度に、被覆層における長鎖アルキル基を有する重合性単量体由来の構成成分の含有率を低くしても、液晶表示装置における液晶の異常配向や光抜けを十分防止することができる液晶表示装置用接着性スペーサー、および、その製造方法と、その構成材料を提供することができる。
Claims (3)
- シード粒子の表面が重合体粒子からなる接着性微粒子に由来する接着層で被覆された液晶表示装置用の接着性スペーサーを得る方法であって、
下記一般式(1):
で表される重合性単量体を0.1重量%以上かつ50重量%未満含むラジカル重合性単量体を溶媒中に溶解させ、重合安定化用樹脂の存在下で、前記ラジカル重合性単量体を重合させて前記重合体粒子を生成させる工程と、
前記シード粒子と前記生成させた重合体粒子とをヘテロ凝集させることにより前記シード粒子の表面を前記生成させた重合体粒子で被覆する工程と、を含む、
ことを特徴とする、液晶表示装置用接着性スペーサーの製造方法。
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