JP3978738B2 - 塗料用樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は80℃以下の低温での硬化性に優れ、かつ貯蔵安定性に優れた塗料用樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、80℃以下の低温での硬化性に優れる一液タイプの塗料用樹脂は望まれており、以下のような技術が提案されてはいるが貯蔵安定性、硬化性、数多くの塗料に要求される性能をバランスよく具備しているものはなかった。
【0003】
すなわち、従来から実施されている分子側鎖に水酸基を有するアクリルポリオールとメラミン樹脂またはブロックイソシアネートの硬化系、あるいは潜在性触媒(硬化剤)を用いたエポキシ樹脂では、120℃で硬化するのが実力であり、それ以下の硬化温度では十分な架橋密度が得られず塗膜性能等が期待できない。それ以下の温度での硬化には多液化が必要であり、作業性に多くの問題を残していた。また、ポリイソシアネートを使用すれば硬化性は良好であるが、イソシアネートの毒性の問題を無視できない。
【0004】
比較的最近の技術としてアクリル樹脂側鎖にアルコキシシラン基、エポキシ基を配し、これにアルミニウムキレート化合物を添加したものがあるが(特公昭55−41712号公報、特公昭60−50223号公報、特公昭60−50225号公報、特公昭61−23816号公報、特公昭61−23817号公報、特開昭64−75502号公報、特開平4−139281号公報、特開平1−259071号公報、特開平1−287177号公報)、この系は側鎖にアルコキシシラン基を配することに無理があり、貯蔵安定性が悪く、また、本系は一般市場では80℃以下の低温硬化に際しては2液タイプとして適用されており、一液化した場合には80℃以下の低温での硬化性が不足している。
【0005】
さらに、アルコキシシラン基を有するために、顔料とのシーディング(凝集等)を起こしやすく、また、塗装した際塗膜表面だけが優先的に乾燥硬化したり(したがって、塗膜内部には溶剤がいつまでも残存し、期待される塗膜性能が得られない)、湿度が高いときに塗装した際には塗膜表面にちぢみが発生するという問題があった。また、アクリル樹脂側鎖に水酸基及びエポキシ基を有し、硬化触媒、加水分解性シリル化合物からなる一液型組成物があるが(特開平10−87942号公報)、一般的に使用されているエポキシ樹脂を配合しても、低温硬化性は改良されるが、貯蔵安定性が不足している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、良好な80℃以下の低温での硬化性を有する貯蔵安定性に優れる塗料用組成物、とりわけ一液タイプの塗料用脂組成物を提供することにあり、また、塗料用樹脂として要求される諸性能(密着性、外観、耐候性、耐薬品性、耐溶剤性等)にもバランスがとれた塗料用樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者が鋭意研究した結果、脂環式エポキシ樹脂を特定の樹脂組成物に配合することにより、優れた塗膜特性を有し、かつ貯蔵安定性に優れた塗料用樹脂組成物が得られることを見いだした。すなわち、本発明は側鎖にエポキシ基及び水酸基を有するアクリル樹脂(A)100重量部に対して、一分子中にグリシジル基と加水分解性アルコキシシラン基を有するオルガノアルコキシシラン化合物(B)0.05〜100重量部、アルミニウムキレート化合物(C)0.01〜10重量部及び下記の式1で示される化合物(D)5〜50重量部を含むことを特徴とする塗料用樹脂組成物である。
【0008】
【化2】
R1:CH2OCO、CH2OCHO(CH2)nCOOCH2 (n=1、2、3、4、5)
R2:H、低級アルキル基
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明における側鎖にエポキシ基及び水酸基を有するアクリル樹脂(A)は、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキサンメチルメタクリレート等のエポキシ基含有不飽和単量体と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノアクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート等の水酸基含有不飽和単量体とを、その他の共重合可能な単量体と共重合することにより製造することができる。上記の各単量体は単独、もしくは、2種類以上の混合物であってもよい。
【0010】
ここに、その他の共重合可能な単量体とは、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル類を指し、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル等がある。該単量体は単独であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
【0011】
また、さらに必要であれば、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等の加水分解性アルコキシシラン基を有する不飽和単量体、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等の加水分解性アルコキシシラン基を有する連鎖移動剤(重合度調節剤)を共重合することも可能である。これらの単量体も単独であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
【0012】
エポキシ基不飽和単量体は、十分な硬化性と貯蔵安定性、塗膜性能を得るために、アクリル樹脂を構成する成分として2〜50重量%共重合されるのが好ましい。2重量%未満では、十分な硬化性が得られない場合があり、50重量%を越えると、組成物の貯蔵安定性が悪化し、1液タイプの組成物としての形態を維持できなくなる場合がある。しかしながら、2液タイプとして使用する場合には、50重量%を越えることも可能であり、この方が硬化性が向上し好ましい。
【0013】
水酸基含有単量体は、前記エポキシ基含有不飽和単量体100重量部に対し、5〜200重量部使用されることが好ましい。5重量部未満では、期待する耐溶剤性が得られない場合があり、200重量部を越えると、組成物の粘度が高くなり、また、貯蔵安定性が低下する場合がある。
【0014】
アクリル樹脂(A)が、エポキシ基以外の官能基として水酸基をポリマー側鎖または末端に有することにより、硬化させた塗膜の耐溶剤性(溶剤ラビング性(溶剤で塗膜をこすったときの塗膜の溶剤に対する耐性)、ガソホール性(塗膜をガソリン/メチルアルコール=1/1(容量比)の溶液に浸漬したときの塗膜の溶剤に対する耐性)等)が飛躍的に向上する。したがって、本発明の組成物を使った塗料を使用すれば、タッチアップ(塗装欠陥部分の不具合を修正するため再塗装すること)時にリフティング(塗膜が溶剤に侵され膨潤し、ちぢむ現象)を起こさず、作業性が向上する。また、同様な理由でリコート(不具合部分の再塗装や、旧塗膜上への塗装)時にリフティングを起こさず、密着性、塗膜外観、耐候性等の塗膜諸性能が優れたものとなる。
【0015】
3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのような連鎖移動剤の使用は、組成物のハイソリッド化(塗装時の排出溶剤量低減、すなわち、低公害化、省資源化)、塗膜外観(光沢、レベリング性(塗膜の平滑性、鮮映性))の向上に有効な手段である。特に、プラスチック用塗料用のトップコートとして有効である。上記目的のためには、連鎖移動剤は前記エポキシ基含有不飽和単量体100重量部に対し、0.05〜50重量部使用されることが好ましい。0.05重量部未満では、目的とするハイソリッド化を達成することが困難であり、50重量部を越えると、アクリル樹脂(A)製造時に重合率を上げることが困難で未反応単量体が残りやすい。
【0016】
アクリル樹脂は通常のラジカル共重合により、溶剤溶液、水分散体として製造される。本発明の場合には、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル等の有機溶剤を用い、α,α´−アゾビスイソブチロニトリル、α,α´−アゾビスバレロニトリル等の有機アゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を重合開始剤として使用し、重合温度40〜150℃で、前記の各種単量体を溶液重合するのが好ましい。
【0017】
アクリル樹脂の好ましい分子量は用途により左右されるが、アクリル樹脂のGPCにより標準ポリスチレン換算として測定される重量平均分子量が5000〜200000であるのが好ましい。分子量が小さいものにはハイソリッド、高外観タイプとして自動車用プラスチック用途に適しており、分子量が大きいものは高品質の建材塗料用途に適している。しかし、分子量が小さすぎる場合には、硬化性が悪化し、分子量が大きすぎる場合には貯蔵安定性が悪化する傾向にある。
【0018】
アクリル樹脂(A)は、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル系マクロモノマー(E)を全共重合成分中の0.5〜10重量%共重合したグラフト共重合体であることが好ましい。これにより、塗料のレベリング性(乾燥後の塗膜の平滑性、光沢性、鮮映性、基材傷の隠蔽性)向上、表面乾き(皮張り;塗料を基材に塗布、乾燥、硬化する際に、塗膜表面だけが優先的に乾燥、硬化し、塗膜表面に皺が発生する現象を指す。先に示した公知例では、塗料を少し厚め(50ミクロン以上)に塗布しただけで、または湿度が高い状態(70%以上)で塗布した場合この現象が顕著となり、実用上はなはだ問題とされていた。)の防止にきわめて効果がある。
【0019】
ここで言うポリ(メタ)アクリル酸アルキル系マクロモノマー(E)とは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等の単独重合体もしくは共重合体、または、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル等の単独重合体もしくは共重合体のポリマー主鎖末端にアクリロイル基、または、メタクリロイル基が結合したものを指す。
【0020】
ポリ(メタ)アクリル酸アルキル系マクロモノマーは先に説明した方法で測定される重量平均分子量が2000〜100000であることが好ましい。分子量が2000未満では、レベリング性の向上、表面乾きの防止に十分な効果が得られない場合があり、分子量が100000を越えると、組成物粘度が高くなり、また、塗膜光沢が低下する傾向にある。
【0021】
ポリ(メタ)アクリル酸アルキル系マクロモノマー(E)を使用する場合は、共重合する全単量体に対して0.5〜10重量%使用することが好ましい。0.5重量%未満では、期待する効果が得られず、10重量%を越えると、塗膜に濁りが生ずる場合がある。また、10重量%を越えた場合には、例えばベースコート用として使用した場合、メタル泳ぎ(メタリック塗料を塗布し、その上にトップコートを塗布した際、顔料であるメタル(アルミ顔料)が動き、光沢の低下や、光の乱反射等塗膜外観がおかしくなる現象)、あるいは、着色顔料を使用した場合には、にじみ(ベースコートがトップコートの溶剤に侵され、ベースコートの色(顔料)がトップコートの方ににじみ出す現象)や、色別れ(同様の理由により、塗膜の色が設計した塗色と違ってくる現象)を起こしやすくなる。
【0022】
本発明の、一分子中にグリシジル基と加水分解性アルコキシシラン基を有するオルガノアルコキシシラン化合物(B)としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシランなどがあげられ、これらの化合物は単独、もしくは、2種類以上の混合物であってもよい。またこれらの化合物の部分縮合物であってもよい。
【0023】
オルガノアルコキシシラン化合物(B)は、アクリル樹脂(A)100重量部に対し、0.05〜100重量部配合され、このとき硬化性、貯蔵安定性、耐候性等諸性能に優れた塗料が得られる。0.05重量部未満では、硬化性が低下し、100重量部を越えると塗料の表面だけが早く乾燥、硬化し、塗膜外観が悪化する。
【0024】
本発明のアルミニウムキレート化合物(C)としては、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート等があり、これらは単独、もしくは、2種類以上の混合物であってもよい。該化合物は、本願の硬化性樹脂組成物が硬化するためのスターター的機能を果たすものである。
【0025】
アルミニウムキレート化合物(C)は、アクリル樹脂(B)100重量部に対し、0.01〜10重量部使用する。0.01重量部未満では、塗料の硬化性が悪化し、架橋が遅れ、塗膜の耐溶剤性、耐候性などが低下する。10重量部を越えると、アクリル樹脂に十分溶解することができなくなり、逆に硬化性が悪化したり、塗膜上にブツが発生し、塗膜外観が悪化する。
【0026】
本発明の塗料用樹脂組成物にはアルミニウムキレート化合物(C)に配位可能な有機化合物(F)を、アルミニウムキレート化合物(C)1重量部に対して0. 1〜20重量部添加することが好ましい。このような有機化合物(F)としては、アルミニウムキレートの触媒作用を貯蔵時に抑制し、塗料の貯蔵安定性を向上させるものであればよく、例えば、ケト・エノール互変異性体を用いることもできる。ケト・エノール互変異性体になりうる化合物として、具体的には、アセチルアセトンなどのβ−ジケン類、アセト酢酸メチルなどのアセト酢酸エステル類、マロン酸エチルなどのマロン酸エステル、サルチルアルデヒドなどのβ位に水酸基を有するアルデヒド類、サルチル酸メチルなどのβ位に水酸基を有するエステル類などが挙げられる。これらのなかでも、アセト酢酸エステル類、β−ジケトン類を使用することがより好ましい。
【0027】
本発明の式1で示される脂環式エポキシ基を含有する化合物(D)は、塗膜の硬化性など優れた塗膜特性と貯蔵安定性を両立しうるものである。通常のエポキシ基と比較して、脂環式エポキシ基のほうが室温においては、立体障害により反応性が低いため、貯蔵安定性に優れているため、硬化性と貯蔵安定性を両立しうる。脂環式エポキシ基含有樹脂として、具体的には3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’、4’エポキシシクロヘキサンカーボネート(油化シェルエポキシ社製のエピコート171、チバスペシャリティーケミカルズ社製アラルダイドCY−179、ユニオンカーバイドニホン社製ERL−4221)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート(ユニオンカバイドニホン社製ERL−4299)チバスペシャリティーケミカルズ社製アラルダイドCY−177、CY−175、などが挙げられる。
【0028】
脂環式エポキシ基含有化合物(D)は、塗料用樹脂組成物100重量部に対し、5〜50重量部配合される。5重量部未満では、十分な硬化性が得られず、50重量部を越えると、十分な塗膜硬度が得られず、耐候性等の試験でクラック(塗膜の割れ、下塗り、上塗り塗膜間での剥離)が発生しやすくなる。
【0029】
本願の組成物は、側鎖にエポキシ基及び水酸基を有するアクリル樹脂(A)と、オルガノアルコキシシラン化合物(B)、アルミニウムキレート化合物(C)及び脂環式エポキシ基含有化合物(D)が均一に混合されれば、どのような手段で製造しても目的を達成することができる。
【0030】
簡単には、アクリル樹脂(A)及び脂環式エポキシ基含有化合物(D)を撹拌混合する。さらに樹脂混合物を撹拌しながらアルミニウムキレート化合物(C)を少量ずつ仕込み、溶解する。次いで、オルガノアルコキシシラン化合物(B)を添加し、均一になるまで撹拌を続ければ製造できる。この製造工程中に必要であれば加熱することもかまわないが、常温でも十分に製造は可能であり、製造の安定性(製造中に硬化反応が進行しゲル物が生成しないために)、貯蔵安定性の観点からは、20〜50℃で製造するのが好ましい。
【0031】
さらに、組成物に親水性有機溶剤を含む希釈液を添加し、均一になるまで撹拌混合することにより、低温での硬化性をより高めることができる。
【0032】
別の有効な方法は、オルガノアルコキシシラン化合物(B)を以下のように製造した後、その他の原料と配合することにより、同様に低温での硬化性をより高めることができる。
【0033】
すなわち、撹拌装置の付いた容器に所定量のオルガノアルコキシシラン化合物(B)を計量し、撹拌しながら、親水性有機溶剤を含む希釈液を添加しオルガノアルコキシシラン化合物(B)の希釈液をあらかじめ作製しておく方法である。
【0034】
ここに、親水性有機溶剤とは、20℃の水に体積比で10%以上溶解する有機溶剤を指し、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル等のグリコールエーテル類等がある。これらの溶剤は単独、もしくは、2種類以上の混合物であってもよい。
【0035】
親水性有機溶剤を含む希釈液を配合することにより、組成物の硬化性、貯蔵安定性が向上し、また、本願の組成物を使用し作製された塗料の仕上がり外観(レベリング性、鮮映性、光沢等)が向上する。親水性有機溶剤を含む希釈液は塗料の表面乾きだけが促進されるのを防止するため、オルガノアルコキシシラン化合物(B)100重量部に対し、100重量部以下で使用されるのが好ましい。
【0036】
さらに、希釈液が親水性有機溶剤100重量部に対し、100重量%以下の水(組成物の貯蔵安定性を向上するため、好ましくは25℃でのPHが6.8以下のイオン交換水)を含むことにより、低温での硬化性がより向上する。
【0037】
本願の組成物は、組成物のままで、あるいは、塗料を作製し、すなわち、必要に応じ二酸化チタン、カーボンブラック、アルミペースト等の顔料や、良く知られている塗料添加剤(レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤(HALS)、消泡剤等)、希釈用の溶剤を配合した後、ベースコート(下塗り塗料)としてもトップコート(上塗り塗料)用としても使用できる。さらに、他の塗料、例えばアクリルウレタン樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、アルキッド樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料、アクリルシリコーン樹脂塗料等(参考文献 : 13197の化学商品、化学工業日報社(1997年発行))との併用も可能である。すなわち、一例を挙げれば、本願の組成物を使用し作製された塗料をベースコートとして塗装した後、アクリルウレタン樹脂塗料をトップコートとして使用することも可能である。
【0038】
塗装できる基材には、ABS、ポリスチレン、ポリカーボネート、ナイロン等のプラスチック、鉄、アルミニウム、トタン、ブリキ等の金属、および、これらが化成処理されたものおよびカチオンまたはアニオン電着塗装を施されたもの、モルタル、セメント、石綿セメント、石綿セメントパーライト、煉瓦、瓦、スレート等の建築材料等がある。
【0039】
塗装方法はスプレー塗装、刷毛塗り、ローラー塗り、ロールコーターによる塗装、カーテンコート法、アニオン電着塗装、カチオン電着塗装等、本願の組成物を使用し作製された塗料が使用される業界で通常行われている方法を適用することができる。
【0040】
塗装された物品は、広い業界において使用できる。すなわち、例を挙げれば自動車やバイク(小型のものから大型のものまで)のプラスチック部品や金属材料、家庭用電化製品のプラスチック部品や金属部材、外壁材(サイジングボード、カーテンウォール、アルミサッシ)、屋根瓦等がある。
【0041】
以下、実施例で詳細に説明する。
【0042】
なお、特に断りがなければ、部数は重量部を、組成比は重量%を示すものとする。
【0043】
【実施例】
実施例1
重合開始剤としてα,α´−アゾビスイソブチロニトリルを用い、重合温度91℃でトルエン/イソブタノール(=410/90)を溶媒として、メタクリル酸メチル(MMA)/メタクリル酸n−ブチル(BMA)/アクリル酸n−ブチル(BA)/メタクリル酸グリシジル(GMA)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)/AA−6(ポリメタクリル酸メチル(東亞合成(株)の製品)(=150/150/100/50/50/5)からなるアクリル共重合体(=固形分50%、重量平均分子量3.5万)を溶液重合する。分子量は通常のゲルクロマトグラフィー法(GPC)により測定する。また、水酸基価はモノマー組成より水酸化カリウム(KOH)換算の値を計算する。
【0044】
アクリル共重合体を撹拌装置の付いたステンレスビーカーに1000g仕込む。これにエポキシ樹脂アラルダイドCY179を100g、あらかじめ混合し、均一な溶液としておいたオルガノアルコキシシラン化合物の希釈液(=SH−6040/イソプロピルアルコール/イオン交換水(=180/18/2))200g及びアセチルアセトン30gを添加し均一になるまで撹拌混合する。さらにアルミキレートAW(アルミニウムキレート化合物(アルミニウムトリス(アセチルアセテート));川研ファインケミカル(株)の製品))10gを添加し、均一に溶解する(約10分間)まで撹拌し、実施例1の塗料用樹脂組成物を得た。
【0045】
この塗料は、鉛筆硬度2Hで、外観はブツなどがなく良好であった。また、密着性、耐溶剤性及び内部硬化性も良好であり、ゲル分率も93%と高く、耐候性も良好であり、塗料としてバランスのとれた低温硬化性塗料が得られた。
【0046】
実施例2〜9
実施例1と同様にして、表1記載の処方にて、実施例2〜9の塗料用樹脂組成物を得た。これらの塗料の特性は表3記載の通りであり、塗料としてバランスのとれた低温硬化性塗料が得られた。
【0047】
比較例1〜6
実施例1と同様にして、表2記載の処方にて、比較例1〜6の塗料用樹脂組成物を得た。これらの塗料の特性は表4記載の通りであり、塗料としてのバランスが悪く、性能が劣る塗料が得られた。
【0048】
なお、評価方法及び略号は以下のとおりである。
【0049】
評価方法
(1)塗膜硬度
鉛筆硬度で評価する。JIS K 5400 8.4に準拠して鉛筆引っかきテストにより評価した。鉛筆硬度が2H以上のものを合格とした。
【0050】
(2)塗膜外観
均一の厚さに塗装した塗膜を、目視で判定する。光沢が高く、均一な肌感が得られる場合は○(合格)、若干光沢が低く鮮映性が少し劣る場合は△(合格)、ブツやちぢみがあったり艶消しになったりする場合は×(不合格)と判定する。
【0051】
(3)密着性
1mm目で10×10個の碁盤目テスト(JIS K 5400準拠)を行い、ポリプロピレン基板との密着性を、剥離しない個数で評価した。剥離が0個のものを○(合格)、剥離が1〜5個のものを△(合格)、剥離が6個以上のものを×(不合格)と評価した。
【0052】
(4)耐溶剤性
組成物をイソプロパノール(IPA)で脱脂したABS板に塗布し、80℃で30分間加熱乾燥した。塗面をトルエン(TOL)を含浸させたフェルトで20回ラビングし、塗膜の溶剤による侵され具合を判断した。異常が起こらず耐溶剤性が良好であるものを○(合格)、塗膜の溶解はないが一部肌荒れするものを△(合格)、塗膜の一部または全体が溶剤に溶解するものを×(不合格)とした。
【0053】
(5)ゲル分率
組成物をポリプロピレン板に塗布し、80℃で30分間加熱乾燥した。塗膜をポリプロピレン板から剥がし、アセトン/メタノール(50/50vol%)を溶媒として、ソックスレー抽出器を使用し、溶媒不溶物分(ゲル分率)を測定した。ゲル分率が高いほど(数値が大きいほど)架橋性が優れている。70%以上で合格とした。
【0054】
(6)内部硬化性
組成物をIPA脱脂したABS板に20ミルのアプリケーターで塗布し、塗膜の乾燥、硬化状態を調べた。塗膜内部まで均一に硬化し表面状態も良好であるものを○(合格)、やや表面が早く硬化するが外観は良好であるものを△(合格)、表面だけが優先的に乾燥硬化し、塗膜表面に皺が発生するものを×(不合格)と評価した。
【0055】
(7)耐候性
促進耐候性試験方法の一つであるSWOM試験機で1500時間で光沢保持率(Gr)が70%以上を合格とした。
【0056】
(8)貯蔵安定性
100mlガラス瓶に塗料用樹脂組成物を入れ密閉し、室温で1ヶ月放置したのち、底に付着しているブツや増粘の状態を目視判定する。ブツが発生せず増粘がほとんどないものを○(合格)、ブツが発生せず若干の増粘が観察されるものを△(合格)、ブツの発生、増粘やゲル化などが起こっているものを×(不合格)と評価した。
【0057】
略号
TOL:トルエン、NBAL:ノルマルブチルアルコール、IPAL:イソプロピルアルコール、MMA:メチルメタクリレート、BMA:ブチルメタクリレート、BA:ブチルアクリレート、GMA:グリシジルメタクリレート、HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート、HEA:ヒドロキシエチルアクリレート、AA−6:マクロマーAA−6(東亞合成)、PW:純水。アラルダイドCY179、ERL−4299及びアラルダイドDY022は、エポキシ樹脂の商品名である。また、SH−6040はシリコーン樹脂、アルミキレートAWはアルミニウムキレート化合物の商品名である。
【0058】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0059】
【発明の効果】
本発明の塗料用樹脂組成物を用い通常の塗料作製方法で塗料化した後、種々基材に塗布し、常温乾燥することにより、あるいは、加熱乾燥することにより、密着性、耐候性、耐薬品性、耐溶剤性等多くの塗膜性能に優れた塗膜を得ることができる。また、得られた塗料は貯蔵安定性に優れている。
Claims (3)
- アクリル樹脂(A)が、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル系マクロモノマー(E)を0.5〜10重量%グラフト共重合したものであることを特徴とする請求項1記載の塗料用樹脂組成物。
- アルミニウムキレート化合物(C)1重量部に対して、0.1〜20重量部の該化合物(C)に配位可能な有機化合物(F)をさらに含有することを特徴とする請求項1または2記載の塗料用樹脂組成物。
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