JP3978648B2 - ポリアクリロニトリル系重合体微粒子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として艶消し効果に代表される意匠性の向上や、耐候性の付与を目的とした、塗料添加剤に使用するのに好適なポリアクリロニトリル系重合体微粒子及び該微粒子を含有する塗料組成物並びにそれから得られる塗膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
艶消しを含む広義の意匠性の向上を目的とする内外装用塗料組成物には、一般に数μm〜数100μmの有機または無機の微粒子を混合することが行なわれている。 これらの微粒子は塗料組成物に含まれる溶剤(一般塗料組成物では石油系、芳香族系、アルコール系、エステル系、ケトン系有機溶剤、水系塗料組成物では水、粉体塗料組成物では含まれない)には溶解(粉体塗料組成物では溶融)せず、かつ塗膜形成後にも表面に存在する必要があるため、有機微粒子では架橋性の単量体を共重合した懸濁重合やシード重合により製造されるのが一般的である。 無機微粒子では一般にシリカ微粒子、酸化鉄、酸化チタン等が用いられている。
【0003】
かかる微粒子の混合が艶消し等の意匠性向上を発現する理由は、ベースとなる塗料と該微粒子との屈折率差、色合いの差等々の要因にあるので、逆に微粒子の組成、平均粒子径、粒度分布、粒子形状、色合い等を変化させることで、理論的には広範な意匠性発現の可能性がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし現状の懸濁重合やシード重合により製造された有機微粒子は、屈折率がベースとなる塗料と大差ないこと、また粒子形状が真球であることが一般的であり、意匠性を発揮するのにはシリカ等の無機微粒子と比較し、塗料組成物への混合率を高くしなければならない。 一方シリカ等無機微粒子では、ベースとなる塗料が一般的には有機化合物であるため、塗膜成分との密着性が悪く、塗膜の耐候性や塗料密着性を悪化させる欠点を生じやすい。 このように、塗料との密着性はもとより、塗料組成物への少量の混合で意匠性の付与や耐候性を満足させる微粒子は未だ提供されていない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。
即ち、親油性触媒の場合にはノニオン系界面活性剤、ポリビニルアルコール、可溶性セルロース、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸から選ばれる1種または2種以上を組み合わせた分散剤を用いて、親水性触媒の場合には分散剤を用いないで、水系重合してなるアクリロニトリルを80重量%以上含有し、かつ平均粒子径が3〜200μm、球状度が30〜90、粒子内空隙率が0.1〜0.4であることを特徴とするポリアクリロニトリル系重合体微粒子である。
該重合体微粒子は、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸ジグリシジル、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコール(n=1〜9)ジメタクリレートからなる群より選ばれた1種以上の単量体を共重合せしめたものが推奨される。
さらに好ましくは石油系、芳香族系、アルコール系溶剤中での膨潤度が10体積%未満であるポリアクリロニトリル系重合体微粒子である。 また本発明は、かかる微粒子を塗料組成物中の固形分に対して1〜60重量%混合せしめてなる塗料組成物、及びかかる塗料組成物を塗布、焼付してなる意匠性及び/または耐候性の向上した塗膜をも包含する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明重合体微粒子の化学組成は、アクリロニトリルを80重量%以上含有することが必要である。 アクリロニトリルの共重合比が80重量%未満では、塗料組成物に一般的に用いられている分散媒である石油系、芳香族系、アルコール系、エステル系、ケトン系有機溶剤に膨潤または溶解してしまうため採用されない。
【0007】
共重合比が20重量%未満であればアクリロニトリルと共重合可能な各種単量体が共重合モノマーとして採用し得るが、中でもアクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸ジグリシジル、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコール(n=1〜9)ジメタクリレートからなる群より選ばれた1種以上の単量体を共重合するのが好ましい。 アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルで例示できるエステルとしては、〜メチル、〜エチル、〜n−プロピル、〜iso−プロピル、〜n−ブチル、〜sec−ブチル、〜tert−ブチル、〜シクロヘキシル、〜2−エチルヘキシル、〜ラウリル、〜ステアリル等が挙げられる。 これらのコモノマーの選択や重合方法との組み合わせにより、微粒子の屈折率や形態特性が調整できる。
【0008】
ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の平均粒子径は3〜200μm、球状度が30〜90、粒子内空隙率が0.1〜0.4である必要がある。 平均粒子径の表記方法には体積基準或いは個数基準が挙げられるが、本発明では体積を基準とし、真球粒子に換算した粒子径を用いる。 平均粒子径が3μm未満及び200μm超のものでは塗膜の艶消し効果や審美感などの意匠性が向上しないので採用されない。 平均粒子径が5μm以上及び25μm未満では塗膜の艶消し効果は非常に高い。 25μm以上200μm以下では審美感に富んだ塗膜を得ることができる。 200μmを超えると塗料組成物への添加剤用途よりも骨材として使用できる可能性があるが、本発明では採用されない。
【0009】
球状度とは、微粒子の形状を表す指標であり、電子顕微鏡写真に写ったランダムに選んだ任意の個数の微粒子について長径と短径を測定し、次の(式1)で計算されるものである。
球状度=Σ(短径)/Σ(長径)×100 (式1)
従って球状度100とは真球を表す。 球状度が30未満では微粒子の圧縮強度が不十分となり採用されない。 また球状度が90を超えるとほとんど真球状との差異がなくなることから意匠性向上効果も薄くなり本発明では採用されない。
【0010】
粒子内空隙率とは、粒子間空隙率と対で考えられる概念であって、粒子内空隙率を評価する環境において、1個と見なされる微粒子が表面に連通開孔した空孔を有する1次粒子か中実の1次粒子が凝集してできた2次粒子かについて、当該微粒子の充実程度・・・具体的には該微粒子物質の真の密度からの乖離の程度・・・を表す指標である。 そしてこのような微粒子の複数個が適宜の条件で沈降層あるいは充填層と言われる層を形成したときの、これら微粒子相互間の隙間、換言すれば前記層の全隙間から微粒子に内在する隙間を除いた部分が粒子間空隙率である。 粒子内空隙率の評価については、薬学雑誌88(11)1375〜1382(1968)に記載の方法を若干修正して採用した。
【0011】
即ち試料微粒子を20℃の脱イオン水に1日間静置して沈降平衡させた時の単位微粒子重量当り沈降容積Vs(m3/kg)を測定して(式2)により粒子内空隙率ε(−)と粒子沈降層中における粒子間空隙率ε’(−)との関係を、また前記粒子沈降層を通す脱イオン水のろ過実験により、粒子沈降層の上と下の圧力差ΔP(kg/m2)と粒子沈降層を通る水のろ過速度Q(m3/s)を測定し、(式3)により比表面積Sw(m2/kg)と粒子間空隙率ε’とを関係付ける。 次いで後述する方法で実測した微粒子平均粒子径の半径R(m)を、(式4)を用いて比表面積Sw、粒子内空隙率εと関係付ける。 以上により、三つの未知数(Sw,ε,ε’)に対して独立した式が三つあるので、粒子内空隙率εはこれを連立方程式として、0≦ε<1.0(ε’も同様)の条件下で解くことにより近似数値解として求められる。
【0012】
ρ2・Vs=1/{(1−ε)・(1−ε’)} (式2)
ρ2×Sw=√{ΔP・A・g・ε’3/(5・η・L・Q・(1−ε’)2)}(式3)
R=3/{ρ2・(1−ε)・Sw} (式4)
Vs:単位微粒子重量当り沈降容積Vs(m3/kg)の測定は、20℃の脱イオン水に乾燥して秤量(X(kg))した試料微粒子を分散させ、断面積A(m2)のカラムに移し、24時間静置後の粒子沈降層の高さL(m)から、Vs=A×L÷Xの計算式で算出する。
【0013】
ΔP:ろ過実験における粒子沈降層の上と下の圧力差(kg/m2)の測定は、上記沈降容積の測定により試料微粒子の粒子沈降層の形成されたカラム下部にマノメータを接続し、アスピレーターで水を吸引した時のマノメーター高さから算出する。
Q:ろ過実験における粒子沈降層を通る水のろ過速度Q(m3/s)の測定は、前述のアスピレーターでカラム下部から水を吸引する時の最初の2mlから7mlまでのろ液の流出時間、即ち5mlがろ過される時間と、試料微粒子による粒子沈降層の無い同一カラムにおいて脱イオン水だけ5mlろ過される時間の差から算出する。
R:球形と仮定した微粒子の半径R(m)には、レーザー回折式粒度測定装置によって実測した、体積基準で表したメディアン径を2で割った値を用いた。
【0014】
ρ2:微粒子を構成する物質の真の密度を表し、本発明のポリアクリロニトリル系微粒子では1180kg/m3を使用した。
η:媒体の粘度を表し、20℃における水の値1.005×10−7(kg/m・s)を使用した。
g:重力加速度を表し、9.8(m/s2)を使用した。
L:粒子沈降層の高さ(m)を表す。
A:粒子沈降層の断面積(m2)を表す。 これはカラムの断面積でもある。
【0015】
粒子内空隙率が0.1未満では、微粒子は凝集もしていない中実の1次粒子の領域と近くなり、乱反射効果が無くなることから塗膜の艶消し性が発揮されず発明が達成されない。 また粒子内空隙率が0.4を越える場合は微粒子の特に耐圧縮強度が弱くなり、結果塗膜強度も不十分となり本発明では採用されない。
【0016】
以上説明したポリアクリロニトリル系重合体微粒子の製造方法としては、以下の製法を例示することができる。 第一の方法として、反応槽に所定量の脱イオン水、分散剤を入れ、更に触媒を溶解したアクリロニトリルを含む単量体を入れて、攪拌をしながら液温度を40〜90℃に上昇させることで得ることができる。
【0017】
分散剤としては、ノニオン系界面活性剤、ポリビニルアルコールやメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の可溶性セルロース、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸を1種または2種以上を組み合わせて使用される。
【0018】
触媒としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルカプロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−エトキシバレロニトリル)、2,2’―アゾビス(2,4−ジメチル−4−n−ブトキシバレロニトリル)等のアゾ系触媒や、アセチルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオドカノエート、t−ブチルパーオキシラウレート等のパーオキシエステル類等の親油性触媒を挙げることができる。
【0019】
また、水相に溶存する単量体の重合禁止を目的として亜硝酸ナトリウム、硫酸銅、塩化鉄等の水溶性塩や水溶性重合禁止剤(例えば住友化学製スミライザーBHT等)を混合することは差し支えない。
【0020】
第2の方法として、反応槽に所定量の脱イオン水を入れ、攪拌をしながら液温度を40〜90℃に上昇させる。
更に攪拌、温度保持をしながらアクリロニトリルを含む単量体と触媒とを同時並行に連続添加することでも得ることができる。
【0021】
分散剤は、以下に述べる親水性触媒を用いる第2の方法であって、高含有率でアクリロニトリルを含む単量体組成によっては全く使用しなくても差し支えない。
【0022】
触媒は、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の酸化性触媒や酸性亜硫酸ナトリウム等と酸化性触媒とを混合したレドックス触媒、アゾビス吉草酸等のアゾビス系触媒等の親水性触媒を挙げる事ができる。
【0023】
一般にアクリロニトリルの共重合比の高い水系重合は、凝集しやすくかつ反応の制御が難しい事が知られているが、上述の各方法においては、アクリロニトリルの共重合比、アクリロニトリルと共重合する単量体の選択、反応槽への仕込み量に対するアクリロニトリルを含む単量体の割合、反応槽の攪拌の状態、触媒の選択、分散剤の選択、更に重合温度等の組合せを実験的に選択することで目的の平均粒子径、球状度、粒子内空隙率を持つ微粒子を得ることができる。
【0024】
上述の方法で製造したポリアクリロニトリル系重合体微粒子は、水に分散した状態であるが、固液分離、乾燥、分級の操作によって固体の粉体として取り出すことができる。 また水系塗料組成物等に混合して用いる場合には固液分離せずともそのまま用いることもできる。 さらに平均粒子径の調整にあたっては、機械式、気流式、湿式等の粉砕方法を援用してもよい。
【0025】
本願発明の微粒子は、概ね既存の塗料組成物に混合して使用されることによって、そのもてる作用効果・・・特に意匠性や耐候性・・・を発揮する。 しかしその作用効果を十分発揮するのには、該微粒子が塗料組成物の成分としてよく用いられている石油系、芳香族系、アルコール系溶剤に対し耐溶剤性、具体的には10体積%未満の膨潤度を有していることが望ましい。 これは、発明の微粒子が塗料組成物に混合されユーザーによって塗膜が形成されるまでの経過時間によっては膨潤の程度が異なる可能性があること、塗装されたときの脱溶剤の速度によっては異なった膨潤度で固定されること、あるいは塗料やその他の添加物との間の密着性が変わること等、発現する意匠性の安定性にかかわったり、膨潤の程度によって塗料組成物の粘度が変化し所定の膜厚が得られなかったり、あるいは塗料組成物がケーキングを起こしたりする等、ユーザーの作業性が悪化する可能性があるからである。 アクリロニトリルが80重量%以上という高含有率である本願発明の微粒子は、耐水性は十分であるので、水系塗料組成物においてはかかる問題は生じない。
【0026】
本発明のポリアクリロニトリル系重合体微粒子は、塗料組成物に該組成物中の固形分に対して1〜60重量%、好ましくは5〜50重量%混合せしめ、意匠性や耐候性に優れた塗膜を与える塗料組成物となる。 混合する量が1重量%未満では、塗膜に十分な効果が発現せず、60重量%を超えると組成物自体の放置安定性や塗膜の被塗装物との密着性等に問題を生じることがある。 該組成物は、次いで塗布、焼付ることで意匠性及び/または耐候性に優れた塗膜を与えることができる。 対象塗料組成物としては水系、溶剤系いずれでも使用することができる。 また本発明のポリアクリロニトリル系重合体微粒子は、200℃程度の加熱にも溶融する事がないので、粉体塗料の添加剤としても使用できる可能性を有している。 塗装対象材料としては冷延鋼板、アルミ板、亜鉛及び亜鉛系メッキ等の金属鋼板、ABS等の樹脂板、ベニヤ板、合板等の木材が挙げられ、本発明微粒子が高アクリロニトリル含有率であることに由来して特に塗膜の耐候性を向上させる効果を有することから屋根材、外壁建材等への用途に適している。
【0027】
【実施例】
以下、代表的な実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 また、以下の実施例に記載の部は、特にことわりのない限り重量部であり、%は重量パーセントである。 実施例中の各評価項目は次の方法により測定及び判定を行なったものである。
【0028】
〔平均粒子径(μm)〕
試料微粒子を20℃の脱イオン水に分散させ、レーザー回折式粒度測定装置(島津製作所製SALD2000)を用い、屈折率1.60−0.10i、体積基準で測定、計算したメディアン径を平均粒子径(μm)と定義した。
【0029】
〔球状度(―)〕
電子顕微鏡(SEM)写真に写った試料微粒子の、任意の20個について長径、短径を測定し、前述の(式1)により算出した。
【0030】
〔粒子内空隙率(−)〕
評価には直径16.5mm、長さ1mのガラス製カラムに20℃の脱イオン水を分散媒として沈降平衡せしめた試料微粒子について、薬学雑誌88(11)1375−1382(1968)に記載された方法を既述の如く修正して採用した。 それによって単位微粒子重量当り沈降容積Vs、粒子沈降層の上と下の圧力差ΔP、粒子沈降層を通る水のろ過速度Qを測定及び上述の方法で実測した平均粒子径2・Rから、(式2)〜(式4)により算出した。
【0031】
〔膨潤度(体積%)〕
常温において25mlメスシリンダーに溶剤を約20ml入れ、更に試料微粒子を3〜5g加え沈降させ、沈降直後即ち未膨潤状態での粒子体積を測定する。
常温で1週間放置した後再度体積を測定し、(式5)によって算出する。
膨潤度(体積%)={(1週間放置後の粒子体積)/(沈降直後の粒子体積)−1}
×100 (式5)
溶剤の種類として、アルコール系ではイソプロピルアルコール、石油系ではシクロヘキサノン、ソルベッソ150、芳香族系ではキシレンを使用した(ソルベッソ150はゴードー溶剤製、その他は試薬1級)。
【0032】
〔艶消し性〕
意匠性は、塗膜の「艶消し性」で評価する。 即ち関西ペイント製ラッカー塗料組成物(チンチングブラック)40部(不揮発分50%)に試料微粒子2部を混合し、亜鉛めっき鋼板上に200μmのアプリケーターで塗装し、70℃で60分焼き付ける。 次いで塗膜の形成された該鋼板の「艶消し性」を、光沢度計(堀場製IG−310)を用いた角度60度の光沢度で評価した。 数値が低いほど艶消し性があることになる。 評価基準としては、艶消し性に優れる光沢度10未満を◎、良好な10以上20未満を○、劣る20以上を×とする。
【0033】
〔塗膜耐候性〕
日本NSC製バインダー(ヨドゾールAA−76)を用い、5×12cm角のABS樹脂板に試料微粒子を静電塗装法により150g塗布し、70℃で30分焼き付ける。 次いで塗膜の形成された試験板を、紫外線フェードメーター(スガ試験機製FAL−AU型)を用いて温度63℃、相対湿度65%の環境下で800時間処理し、色の変化を色彩色差計(ミノルタ製74181007型)を用いて評価した。 色差変化(ΔE)が小さいほど耐候性が高いことになる。 評価基準としては、耐候性に優れるΔE2未満を◎、良好な2以上5未満を○、劣る5以上を×とする。
【0034】
<実施例1>
(1)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の合成
脱イオン水831部にポリビニルアルコール(クラレ製PVA217)7部、硫酸ナトリウム10部、硫酸銅・5水和物1部を溶解した水溶液をガラス製反応槽に仕込む。 次いで単量体としてアクリロニトリルを135部、スチレンを15部、触媒として2,2’―アゾビス(2−メチルバレロニトリル)1部を溶解したものを反応槽に添加し、攪拌しながら液温度を50℃に上昇させ5時間温度保持させることで本発明のポリアクリロニトリル系重合体微粒子の水分散体を得た。
(2)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の取り出し
ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の水分散体をNo.5Cの定性ろ紙を用いて固液分離する。 得られたろ過ケークは、多量の脱イオン水に分散し上述と同じ方法による固液分離を繰り返すことにより、未反応の単量体や分散剤を取り除く。 次いで70℃の熱風乾燥機にて恒量になるまで乾燥し、70メッシュ(目開き210μm)の標準篩で分級し、本発明のポリアクリロニトリル系重合体微粒子を得た。
【0035】
<実施例2>
(1)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の合成
脱イオン水815部にヒドロキシエチルセルロース3部、ポリアクリル酸ナトリウム20部、硫酸ナトリウム10部、硫酸銅・5水和物1部を溶解した水溶液をガラス製反応槽に仕込む。 次いで単量体としてアクリロニトリルを120部、メタアクリル酸メチルを24部、エチレングリコールジメタクリレートを6部、触媒としてラウロイルパーオキサイド1部を溶解したものを反応槽に添加し、攪拌しながら液温度を50℃に上昇させ5時間温度保持させることで本発明のポリアクリロニトリル系重合体微粒子の水分散体を得た。
(2)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の取り出し
実施例1と同様に行なった。
【0036】
<実施例3>
(1)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の合成
脱イオン水825部にヒドロキシエチルセルロース3部、ポリアクリル酸ナトリウム10部、硫酸ナトリウム10部、硫酸銅・5水和物1部を溶解した水溶液をガラス製反応槽に仕込む。 次いで単量体としてアクリロニトリルを135部、スチレンを10.5部、ジビニルベンゼンを4.5部、触媒としてラウロイルパーオキサイド1部を溶解したものを反応槽に添加し、攪拌しながら液温度を50℃に上昇させ5時間温度保持させることで本発明のポリアクリロニトリル系重合体微粒子の水分散体を得た。
(2)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の取り出し
実施例1と同様に行なった。
【0037】
<実施例4>
(1)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の合成
実施例3のアクリロニトリルを135部、スチレンを10.5部、ジビニルベンゼンを4.5部の代わりに、アクリロニトリルを142.5部、スチレンを7.5部とする以外は実施例3と同様の手段で合成した。
(2)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の取り出し
実施例1と同様に行なった。
【0038】
<実施例5>
(1)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の合成
脱イオン水600部をガラス製反応槽に仕込み、攪拌をしながら温度を60℃に上昇させる。 次いで攪拌下に該反応槽にアクリロニトリル200部、0.5%過硫酸ナトリウム水溶液100部、0.5%重亜硫酸ナトリウム水溶液100部を同時並行的に2時間かけて連続添加し、添加の終了後更に2時間温度保持することで本発明のポリアクリロニトリル系重合体微粒子の水分散体を得た。
(2)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の取り出し
実施例1と同様に行なった。
【0039】
<実施例6>
(1)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の合成
実施例5のアクリロニトリル200部の代わりにアクリロニトリル170部、酢酸ビニル24部、メタアクリル酸グリシジル6部とする以外は実施例5と同様の手段で合成した。
(2)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の取り出し
実施例1と同様に行なった。
【0040】
<実施例7>
(1)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の合成
脱イオン水825部にヒドロキシエチルセルロース3部、ポリアクリル酸ナトリウム10部、硫酸ナトリウム10部、硫酸銅・5水和物1部を溶解した水溶液をポリエチレン製容器に仕込む。 次いで単量体としてアクリロニトリルを142.5部、スチレンを7.5部、触媒としてラウロイルパーオキサイド1部を溶解したものを同容器に添加し、30分間液をバイブロディスク(冷化工業製:VD−H100−08型)を用いて循環させて単量体懸濁液とする。 次いで該懸濁液をガラス製反応槽に移し、攪拌しながら液温度を50℃に上昇させ5時間温度保持させることで本発明のポリアクリロニトリル系重合体微粒子の水分散体を得た。
(2)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の取り出し
実施例1と同様に行なった。
【0041】
<実施例8>
(1)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の合成
実施例5と同様に行なった。
(2)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の取り出し
実施例1と同様にして、乾燥微粒子を得る。 該微粒子は、更にジェットミル(セイシン企業製STJ−200型)で粉砕し、400メッシュ(目開き37μm)の標準篩で分級し、本発明のポリアクリロニトリル系重合体微粒子を得た。
【0042】
<比較例1>
(1)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の合成
実施例1のアクリロニトリル135部、スチレン15部の代わりにアクリロニトリル105部、メタアクリル酸メチル45部とする以外は実施例1と同様の手段で合成を試みたが、ひとかたまりの凝集物が得られるだけであった。
【0043】
<比較例2>
(1)ポリメタアクリル酸メチル系重合体微粒子の合成
実施例1のアクリロニトリル135部、スチレン15部の代わりにメタアクリル酸メチル135部、エチレングリコールジメタクリレート15部とする以外は実施例1と同様の手段で合成した。
(2)ポリメタアクリル酸メチル系重合体微粒子の取り出し
実施例1と同様に行なった。
【0044】
<比較例3>
(1)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の合成
実施例5のアクリロニトリル200部の代わりにアクリロニトリル140部、アクリル酸メチル60部とする以外は実施例5と同様の手段で合成した。
(2)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の取り出し
実施例1と同様に行なった。
【0045】
<比較例4>
(1)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の合成
脱イオン水778部にポリビニルアルコール(クラレ製PVA217)10部、硫酸ナトリウム10部、硫酸銅・5水和物1部を溶解した水溶液をガラス製反応槽に仕込む。 次いで単量体としてアクリロニトリルを160部、メタアクリル酸メチルを40部、触媒として2,2’―アゾビス(2−メチルバレロニトリル)2部を溶解したものを反応槽に添加し、攪拌しながら液温度を50℃に上昇させ5時間温度保持させることでポリアクリロニトリル系重合体微粒子の水分散体を得た。
(2)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の取り出し
実施例1と同様に行なった。
【0046】
<比較例5>
(1)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の合成
実施例5と同様に行なった。
(2)ポリアクリロニトリル系重合体微粒子の取り出し
実施例1と同様にして、乾燥微粒子を得る。 該微粒子は、更に竪型ミル(石川島播磨重工業製SH−75型)で粉砕し、400メッシュ(目開き37μm)の標準篩で分級し、ポリアクリロニトリル系重合体微粒子を得た。
【0047】
<比較例6>
市販されているシリカ微粒子(富士シリシア化学製サイロイド74)を入手し、球状度等を評価した。
【0048】
上記で作成した各種微粒子について、平均粒子径、球状度、粒子内空隙率、膨潤度、艶消し性、塗膜耐候性を評価して、その結果を表1、表2にまとめて示した。 また比較例6のシリカ微粒子は水に分散しなかったため、球状度、膨潤度、艶消し性、塗膜耐候性のみを評価して表2に合わせて示した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1、表2から本発明の実施例1〜8の微粒子は、艶消し性や塗膜耐候性に優れた機能を発現する塗膜を与えることが理解される。 特に塗膜耐候性は、一般に使用されている無機微粒子(比較例6)と比べ格段に優れていることが判る。
それに対し平均粒子径が推奨範囲から外れている比較例4、5の微粒子では艶消し性、即ち意匠性の発現が充分ではない。 またアクリロニトリルを含まない微粒子(比較例2)では、塗膜耐候性には優れるものの膨潤度が高く優れた塗料組成物を与えない。 さらにアクリロニトリルの共重合比が80重量%未満(比較例1,3)では、重合反応の制御ができなくて微粒子形態が得られなかったり、同じ理由で粒子内空隙率を低くできず粒子が非常に脆い欠点を有しており、発明の課題を達成しない。
【0052】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のポリアクリロニトリル系重合体微粒子は、塗料組成物添加剤として要求されていた高度の意匠性及び/または耐候性特性を発現するものである。 したがって本発明微粒子は、水系、有機溶剤系、粉体系を問わず塗料組成物に添加され、各種の金属鋼板、樹脂板、木材等の塗装に用いることができる。
Claims (5)
- 親油性触媒の場合にはノニオン系界面活性剤、ポリビニルアルコール、可溶性セルロース、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸から選ばれる1種または2種以上を組み合わせた分散剤を用いて、親水性触媒の場合には分散剤を用いないで、水系重合してなるアクリロニトリルを80重量%以上含有し、かつ平均粒子径が3〜200μm、球状度が30〜90、粒子内空隙率が0.1〜0.4であることを特徴とするポリアクリロニトリル系重合体微粒子。
- アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸ジグリシジル、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコール(n=1〜9)ジメタクリレートからなる群より選ばれた1種以上の単量体を共重合せしめたことを特徴とする請求項1記載のポリアクリロニトリル系重合体微粒子。
- 石油系、芳香族系、アルコール系溶剤中での膨潤度が10体積%未満であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアクリロニトリル系重合体微粒子。
- 請求項1から3のいずれかに記載のポリアクリロニトリル系重合体微粒子を、塗料組成物中の固形分に対して1〜60重量%混合せしめてなる塗料組成物。
- 請求項4に記載の塗料組成物を塗布、焼付してなる意匠性及び/または耐候性の向上した塗膜。
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