JP3977994B2 - プラズマ処理方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば液晶用トランジスタ素子を形成する際のドライエッチング工程やプラズマCVD工程などの薄膜回路形成工程に適用されるプラズマ処理方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶素子製造分野において、製造コストの削減や環境保護の観点から、工程の簡略化や環境負荷の少ない製造方法への変更が強く要請されており、特に液晶素子については液晶パネルの価格競争の激化とパネルの大型化傾向に伴い、従来の薬液によるエッチング工法から、積層膜を一括して高速にてドライエッチングする工法が強く望まれている。
【0003】
また、液晶素子製造分野においては、ガラス基板の耐熱温度以下での成膜が必要であり、従来からプラズマCVD工法が用いられてきた。
【0004】
しかしながら、ドライエッチングやプラズマCVDは真空中にプラズマを発生させ、エッチングガスを乖離させ、イオンやラジカルにより物理的、化学的な反応を組み合わせて加工するため、誘電体から成る被処理基板の場合には、基板上に多量な電荷を発生させることになる。
【0005】
薄膜回路はその構成上、金属膜と金属膜間を絶縁するための絶縁膜が薄膜形成されているので耐電圧には闘値を持つことになり、その闘値を越えるような電荷を被処理基板が帯びた場合には絶縁膜の破壊が発生し、薄膜回路を形成し得なくなる。
【0006】
以下、図5を参照して代表的なドライエッチング装置を例に説明する。図5において、1は真空容器、2は図示しない排気手段と真空容器1内の圧力を調整する手段に接続された排気口、3はガス導入手段、4はガラス等の誘電体からなる基板、5は基板4を載置する第1の電極、6は第1の電極5に対向配置され、電気的に接地された第2の電極、7は第1の電極5に接続されたインピーダンス整合器、8は高周波電源、9は第1の電極5に対して基板4を上昇及び下降させるための基板上下移動機構、10は基板上下移動機構9の駆動手段、12は基板4を真空容器1に対して搬入、搬出するための移載アーム、13は移載アーム12を内蔵した移載室である。
【0007】
以上のように構成されたドライエッチング装置について、以下その動作を説明する。基板4を第1の電極5上に載置し、排気口2より排気しながらガス導入手段3よりエッチングガスを真空容器1内に導入して真空容器1内を所定の圧力に調整し、高周波電源8より一定の高周波電力をインピーダンス整合器7を介して第1の電極5に印加すると、真空容器1内にプラズマが発生し、基板4表面の薄膜がエッチングされる。
【0008】
所定時間のエッチングが完了した時点で、第1の電極5に対する高周波電力の印加を停止し、エッチングガス導入を停止し、排気口2より残留エッチングガスを排気してプラズマ処理を終了する。
【0009】
次に、基板上下移動機構9の駆動手段10を駆動させて基板4を第1の電極5の表面から突き上げて上昇させ、移載室13の移載アーム12を真空容器1内の基板4の下に搬入する。その後、基板上下移動機構9を下降させて基板4を移載アーム12上に載置し、移載アーム12にて基板4を真空容器1の外部へ搬出させ、次工程に移動させる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記動作において、プラズマ処理中に基板4の表面の帯電位が増加しており、高周波電源8の動作を停止させてプラズマを消滅させた後も、基板4の表面への帯電は残留している。そのため、プラズマ処理終了後に基板4を第1の電極5の表面から突き上げ上昇させる瞬間に剥離帯電を起こし、基板4の表面に異常に高い表面電位を示す場合がある。この時の表面電位は、デバイス構造の差、真空容器1の内壁や第1の電極5や第2の電極6へのエッチング堆積物の堆積量の差に大きく依存するため、表面電位が劇的に高くなるという突発性を有していた。
【0011】
このような場合に基板4の表面において、金属薄膜パターンに上下を挟まれた絶縁膜の耐電圧闘値を越えることがあり、絶縁破壊を起こし、品質不良を発生させる原因となっていた。
【0012】
本発明は、上記従来の問題に鑑み、プラズマ処理終了後、被処理基板を電極表面から脱離移動させる瞬間に被処理基板の表面電位が異常に上昇してデバイス回路が破壊するのを防止できるプラズマ処理方法及び装置を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明のプラズマ処理方法は、誘電体からなる基板を真空容器内の第1の電極に載置し、真空容器内に反応ガスを導入しつつ、排気手段と圧力調整手段にて第1の電極とこれに対向する第2の電極との間の空間に制御された圧力空間を形成し、第1の電極と第2の電極の少なくとも一方に接続されたインピーダンス整合器と高周波電源により高周波電力を印加してプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法において、プラズマ処理終了後、第1の電極表面から基板を上昇脱離させる時に、インピーダンス整合器に接続された電極の直流電位が一定の闘値以下を保持するように基板の上昇脱離速度を制御することを特徴とする。
【0014】
上記発明によれば、第1の電極表面から基板を上昇脱離させる時に、インピーダンス整合器に接続された電極の直流電位が一定の闘値以下を保持するように基板の上昇脱離速度を制御しているので、第1の電極表面から基板を上昇脱離させる時の剥離帯電によって基板表面帯電量が増加するのを抑制し、基板表面帯電量を絶縁破壊を発生させる帯電量以下に抑制することができ、デバイス構造の変化や真空容器内壁等の堆積物量にかかわらず基板の品質を確保することができる。
【0015】
また、本発明のプラズマ処理装置は、真空容器と、排気手段と、真空容器内の圧力を調整する手段と、ガス導入手段と、基板を載置する第1の電極と、第1の電極に対向する第2の電極と、第1の電極と第2の電極の少なくとも一方に接続されたインピーダンス整合器と、高周波電源と、第1の電極表面に対して基板を上昇及び下降させる基板上下移動機構と、インピーダンス整合器に接続された電極の直流電位を測定する直流電位測定手段と、基板が第1の電極表面から上昇脱離するときの直流電位測定手段による測定値の大小に応じて基板上下移動機構の移動速度を変更する速度制御手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
上記発明によれば、基板が第1の電極表面から上昇脱離するときの直流電位測定手段による測定値の大小に応じて基板上下移動機構の移動速度を変更する速度制御手段を備えているので、第1の電極表面から基板を上昇脱離させる時の剥離帯電によって基板表面帯電量が増加するのを抑制し、基板表面帯電量を絶縁破壊を発生させる帯電量以下に抑制することができ、デバイス構造の変化や真空容器内壁等の堆積物量にかかわらず基板の品質を確保することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のプラズマ処理装置を、液晶アモルファスシリコンTFTトランジスタ素子形成用のドライエッチング装置に適用した参考例および実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0018】
(参考例)
本発明のプラズマ処理装置の参考例について、図1、図2を参照して説明する。
【0019】
図1において、1は真空容器、2は図示しない排気手段と真空容器1内の圧力を調整する手段に接続された排気口、3はガス導入手段、4はガラス等の誘電体からなる基板、5は基板4を載置する第1の電極、6は第1の電極5に対向配置され、電気的に接地された第2の電極、7は第1の電極5に接続された、LC回路から成るインピーダンス整合器、8は13.56MHzの周波数の高周波電力を出力する高周波電源、9は第1の電極5に対して基板4を上昇及び下降させるための基板上下移動機構、10は基板上下移動機構9の駆動手段、11は第1の電極5に接続された直流電位測定手段、12は基板4を真空容器1に対して搬入、搬出するための移載アーム、13は移載アーム12及びその駆動系を内蔵した移載室である。
【0020】
14は基板上下移動機構9の駆動手段10からの駆動検出信号に同調して、直流電位測定手段11からの電圧信号を選択する指令を出力する電圧信号選別器、15は電圧信号選別器14からの選択指令を受けたときに直流電位測定手段11からの電圧信号に対して、上限許容値に対する大小を比較して上限許容値を越えたときに異常信号を出力する異常検出手段、16は異常検出手段15からの異常信号を受けて装置及び運転者に異常発生を報知する警報機である。
【0021】
以上のように構成されたドライエッチング装置について、以下その動作を説明する。基板4は液晶アモルファスシリコンTFTトランジスタ素子を表面に形成するためのガラス基板であり、基板4の表面から上に向かって、金属積層膜からなるゲート電極パターン、次にシリコンナイトライド膜(SiNx )からなるゲート絶縁膜、次にトランジスタ回路動作時に電子が移動する層(チャンネル層)となる島状に形成されたアモルファスシリコン膜パターン、次に不純物を含んだシリコン膜層(ドーピング層)パターン、次に金属堆積層膜からなるソース、ドレイ電極パターンと順次形成される。この基板4の、特に金属薄膜からなるソース、ドレイン電極及びチャンネル層のパターンを一括してドライエッチングする工程を例に説明する。
【0022】
移載アーム12と基板上下移動機構9により基板4を第1の電極5の表面に載置し、排気口2より排気しながらガス導入手段3より塩素系の混合ガス(Cl2 /BCl3 )からなるエッチングガスを真空容器1内に導入する。真空容器1内を所定の圧力に調整し、高周波電源8より0.6W/cm2 程度の高周波電力をインピーダンス整合器7を介して第1の電極5に印加する。すると、真空容器1内にプラズマが発生し、基板4の表面の金属薄膜からなるソース、ドレイン電極及びチャンネル層のパターンがエッチングされる。
【0023】
所定時間のエッチングが完了した時点で、第1の電極5に対する高周波電力の印加を停止し、エッチングガス導入を停止し、排気口2より残留エッチングガスを排気してプラズマ処理を終了する。
【0024】
次に、基板上下移動機構9の駆動手段10を駆動させて基板4を第1の電極5の表面から突き上げて上昇させる。その瞬間に、プラズマにより金属薄膜パターンに蓄積された電荷量が剥離帯電により大きく変化する。この帯電量の変化は、空間電位の変化をもたらし、第1の電極5の直流電位を相対的に変化させる。
【0025】
図2にプラズマによる帯電量が多い基板4を第1の電極5から上昇させた時の基板上昇速度(破線で示す)と第1の電極5の直流電位(実線で示す)の変化の例を示す。
【0026】
基板4が第1の電極5から上昇する前半は、基板中央は未だ電極表面に接触しており、基板4の外周部は電極表面から分離しているため基板4の帯電量が激増する。これに連動して第1の電極5の直流電位測定手段11は1000V以上の大きな電圧値を示した。この基板4の上昇時に電圧信号選別器14が駆動手段10からの駆動検出信号を受け、直流電位測定手段11にて測定した直流電圧を異常検出手段15に伝達する。
【0027】
異常検出手段15には予め電圧の上限許容値を50V以下に設定しており、電圧信号に対して上限許容値に対する大小比較を電気的に行い、50V以上の異常電圧の発生時に装置の運転制御系に伝達して装置の稼働を自動的に停止させるとともに、運転者に警報機16にて報知する。
【0028】
異常電圧が発生しない時は、第1の電極5から基板4を上昇分離させた状態で、移載室13中の移載アーム12を真空容器1内の基板4と電極5の間の空間に挿入する。その後、基板上下移動機構9を下降させ、基板4を移載アーム12の上に載置し、移載アーム12を真空容器1から移載室13へ搬出させ、次の未処理基板と交換する。
【0029】
以上の装置構成及び動作により、プラズマ処理後に基板4を第1の電極5から上昇させる瞬間に発生する、ソース、ドレイン電極パターンと電極パターンの間の絶縁破壊異常をインラインで発見することが可能となる。
【0030】
(実施形態)
次に、本発明のプラズマ処理装置の実施形態について、図3、図4を参照して説明する。なお、上記参考例と同一の構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略し、相違点のみを説明する。
【0031】
図3において、基板上下移動機構9の駆動手段10のドライバー17に対して、直流電位測定手段11からの直流電圧信号の大小に応じて基板上下移動速度を変更する速度制御手段18を接続している。
【0032】
次に、以上のように構成されたドライエッチング装置の動作を説明する。上記第1の実施形態と同様に基板4を第1の電極5の表面に載置してプラズマ処理を行い、基板4に対するプラズマ処理を終了した後、駆動手段10にて基板上下移動機構9を駆動させて基板4を第1の電極5の表面から剥離して突き上げ、上昇させる。
【0033】
その瞬間に、電圧信号選別器14が駆動手段10からの駆動検出信号を受けて直流電位測定手段11からの電圧を速度制御手段18に伝達する。速度制御手段18は、基板上下移動機構9が駆動を開始した瞬間から常時第1の電極5の電位を取り込み、フィードバック制御により第1の電極5の電位が50Vを越えないように速度指示値をドライバー17に出力する。
【0034】
基板4が上昇上限位置に来た段階で、フィードバック系を解除し、上記実施形態と同様に移載アーム12にて移載室13に搬出させ、次の未処理基板と交換する。
【0035】
図4に、以上のように基板4を処理した時の第1の電極5の直流電位の変化の例を示す。図2に比べ基板上昇速度(破線で示す)を第1の電極5の電位の変化に応じて制御することによって基板4の電位(実線で示す)を50V以下に抑制することが可能となった。
【0036】
以上の装置構成及び動作により、プラズマ処理後の基板4の第1の電極5から上昇させる瞬間に発生する、ソース、ドレイン電極パターンとゲート電極パターンの間の絶縁破壊異常を低減することができる。
【0038】
【発明の効果】
本発明のプラズマ処理方法及び装置によれば、プラズマ処理終了後、第1の電極表面から基板を上昇脱離させる時に、インピーダンス整合器に接続された電極の直流電位が一定の闘値以下を保持するように基板の上昇脱離速度を制御するようにしているので、第1の電極表面から基板を上昇脱離させる時の剥離帯電によって基板表面帯電量が増加するのを抑制し、基板表面帯電量を絶縁破壊を発生させる帯電量以下に抑制することができ、デバイス構造の変化や真空容器内壁等の堆積物量にかかわらず基板の品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のプラズマ処理装置の参考例の概略構成図である。
【図2】 同参考例のプラズマ処理中及び基板上昇時の電極電位の変化を示す説明図である。
【図3】 本発明のプラズマ処理装置の実施形態の概略構成図である。
【図4】 同実施形態のプラズマ処理中及び基板上昇時の電極電位の変化を示す説明図である。
【図5】 従来例のプラズマ処理装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1 真空容器
2 排気口
3 ガス導入手段
4 基板
5 第1の電極
6 第2の電極
7 インピーダンス整合器
8 高周波電源
9 基板上下移動機構
10 駆動手段
11 直流電位測定手段
15 異常検出手段
17 ドライバー
18 速度制御手段
Claims (2)
- 誘電体からなる基板を真空容器内の第1の電極に載置し、真空容器内に反応ガスを導入しつつ、排気手段と圧力調整手段にて第1の電極とこれに対向する第2の電極との間の空間に制御された圧力空間を形成し、第1の電極と第2の電極の少なくとも一方に接続されたインピーダンス整合器と高周波電源により高周波電力を印加してプラズマを発生させ、基板を処理するプラズマ処理方法において、プラズマ処理終了後、第1の電極表面から基板を上昇脱離させる時に、インピーダンス整合器に接続された電極の直流電位が一定の闘値以下を保持するように基板の上昇脱離速度を制御することを特徴とするプラズマ処理方法。
- 真空容器と、排気手段と、真空容器内の圧力を調整する手段と、ガス導入手段と、基板を載置する第1の電極と、第1の電極に対向する第2の電極と、第1の電極と第2の電極の少なくとも一方に接続されたインピーダンス整合器と、高周波電源と、第1の電極表面に対して基板を上昇及び下降させる基板上下移動機構と、インピーダンス整合器に接続された電極の直流電位を測定する直流電位測定手段と、基板が第1の電極表面から上昇脱離するときの直流電位測定手段による測定値の大小に応じて基板上下移動機構の移動速度を変更する速度制御手段を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
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