JP3976542B2 - ラミネートフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐候性、成形性、柔軟性、耐衝撃性、防塵性、透明性、耐エタノール性、耐沸騰水性等に優れ、かつ引張り時や折り曲げ時(加工時)に白濁や透明度の変化が起こりにくいラミネートフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
メタクリル酸エステル系樹脂はプラスチックの中でも特に耐候性および透明性に優れているため、種々の分野で使用され、例えばシートまたはフィルム状に成形し、プラスチック、木材、金属など種々の材料にラミネートして基材の劣化防止、美観などの維持などのために広く用いられている。
【0003】
このようなメタクリル酸エステル系樹脂を成形したフィルムはフィルム成形性および耐衝撃性を向上させるために、通常、メタクリル酸エステル系樹脂にゴム成分を分散させたり、あるいはグラフト共重合体そのものを使用する方法が考案されている。特にグラフト共重合体としては、コアと呼ばれる内層部にシェルと呼ばれる外層部をグラフト重合して得られるコアシェル粒子型グラフト共重合体が有効であると一般的に言われており、グラフト部(シェル部)の柔軟化、グラフト部(シェル部)やグラフト共重合体以外の重合体の組成を段階的に変化させてグラジエント重合体とする方法が考案されている(特公昭47−13371号公報、特公昭50−9022号公報)。また、変形時の白濁や透明度変化を抑制する目的で、コアシェル粒子型グラフト共重合体のコア部(内層部)のガラス転移温度(Tg)を10℃以上にする技術も提案されている(特公昭59−36645号公報、特公昭59−36646号公報)。しかしながらこれらの方法では耐衝撃性の改善効果が不十分であり、基材にラミネートして、二次加工やエンボス加工を施す場合に、フィルム自身が割れたり、白く濁ったり、透明度が低下したりするという現象が認められた。このような現象は特に低温での引張り時や折り曲げ時(加工時)に特に顕著である。また、これらの問題を解決しようとして柔軟な成分を増量すると、成形性、透明性、防塵性、耐エタノール性を損なってしまうという問題があった。
【0004】
また、近年では、種々の制御重合により分子量、分子量分布および構造を制御したアクリル系ブロック共重合体がフィルム材料、あるいは熱可塑性樹脂の耐衝撃性改良剤として用いられている(特願平11−260428、特開平10−179746)。しかし、これらはアクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂に添加して用いた場合には、少量添加では耐衝撃性の改良効果が少なく、フィルムに割れ、白化を生じてしまい、多量に添加すると機械強度や表面硬度が低下してしまうという問題があった。同様に、アクリル系ブロック共重合体をラミネートフィルム材料として単独で用いても表面硬度が低すぎるという問題があった。表面硬度が低いと器物との接触や取り扱い等によって傷が付きやすく、表面にエンボス加工が施されている場合には、比較的傷が目立ちにくいが、内層建築等のように平滑な面に用いる場合には微少な傷であっても著しく商品価値を損ねることになる。
【0005】
本発明は、上記のような従来技術による耐衝撃性、耐白化性等の問題点を解消し、さらには、機械強度、表面硬度、柔軟性等のバランスにも優れ、建築物の内装材・外装材、電気製品、雑貨、その他各種の分野で好適に広く用いることができるラミネートフィルムを提供することを目的とする。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐候性、成形性、柔軟性、耐衝撃性、防塵性、透明性、耐エタノール性、耐沸騰水性等に優れ、かつ引張り時や折り曲げ時(加工時)に白濁や透明度の変化が起こりにくいラミネートフィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、メタクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体からなるラミネートフィルムが、耐候性、成形性、柔軟性、耐衝撃性、防塵性、透明性、耐エタノール性、耐沸騰水性等に優れ、かつ引張り時や折り曲げ時(加工時)に白濁や透明度の変化が起こりにくいことを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち本発明は、
メタアクリル系重合体ブロック(a)40〜75重量%及びアクリル系重合体ブロック(b)60〜25重量%からなるブロック共重合体(A)を成形してなるラミネートフィルム(請求項1)、
ブロック共重合体(A)が、メタアクリル系重合体ブロック(a)45〜70重量%及びアクリル系重合体ブロック(b)55〜30重量%からなることを特徴とする請求項1記載のラミネートフィルム(請求項2)、
メタアクリル系重合体ブロック(a)がメタアクリル酸メチル50〜100重量%およびこれと共重合可能な他のメタアクリル酸エステルおよび/または他のビニル系単量体0〜50重量%とからなり、アクリル系重合体ブロック(b)がアクリル酸ブチル50〜100重量%およびこれと共重合可能な他のアクリル酸エステルおよび/またはビニル系単量体0〜50重量%とからなる重合体ブロックからなる請求項1又は2記載のラミネートフィルム(請求項3)、
ブロック共重合体(A)が原子移動ラジカル重合により製造されたことを特徴とする請求項1、2又は3記載のラミネートフィルム(請求項4)、
メタアクリル系重合体ブロック(a)がメタアクリル酸メチルからなり、アクリル系重合体ブロック(b)がアクリル酸ブチルからなるからなる重合体ブロックである請求項1、2、3又は4記載のラミネートフィルム(請求項5)、
ブロック共重合体(A)がトリブロック共重合体であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のラミネートフィルム(請求項6)及び
請求項1、2、3、4、5又は6記載のブロック共重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)からなる熱可塑性樹脂組成物を成形してなるラミネートフィルム(請求項7)に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に使用しうるメタアクリル系重合体ブロックおよびアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体(A)は、a-b型のジブロック共重合体、a-b-a型のトリブロック共重合体、b-a-b型のトリブロック共重合体、(a-b)n型のマルチブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体である。これらの中でも、フィルムの成形性や成形したフィルムの耐衝撃性、柔軟性、防塵性の点から、a-b-a型のトリブロック共重合体、(a-b)n型のマルチブロック共重合体、または、これらの混合物が好ましく、a-b-a型のトリブロック共重合体がより好ましい。
【0010】
前記ブロック共重合体(A)の構造は、線状ブロック共重合体または分岐状(星状)ブロック共重合体であり、これらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、フィルムの成形性や加工特性、機械特性などの必要特性に応じて使い分けられる。
【0011】
ブロック共重合体(A)の数平均分子量は特に限定されないが、30000〜500000が好ましく、更に好ましくは、50000〜400000である。数平均分子量が小さいと粘度が低く、また、数平均分子量が大きいと粘度が高くなる傾向があるため、必要とする加工特性に応じて設定される。分子量はクロロホルムを移動相とし、ポリスチレンゲルカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算によって測定される。
【0012】
前記ブロック共重合体(A)のGPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)も特に限定がないが、1.8以下であることが好ましい。Mw/Mnが1.8を越えるとブロック共重合体の均一性が低下し、成形したフィルムの耐衝撃性、折り曲げ時や引張り時(加工時)の耐白化性等低下する傾向にある。
【0013】
ブロック共重合体(A)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%とからなる。
(a)を構成するメタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸-n-プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸-n-ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸-tert-ブチル、メタアクリル酸-n-ペンチル、メタアクリル酸-n-ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸-n-ヘプチル、メタアクリル酸-n-オクチル、メタアクリル酸-2-エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸-2-メトキシエチル、メタアクリル酸-3-メトキシブチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸-2-トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチルなどがあげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、入手しやすさの点で、メタアクリル酸メチルが好ましい。
【0014】
(a)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-t-ブチル、アクリル酸-n-ペンチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-n-ヘプチル、アクリル酸-n-オクチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸-2-メトキシエチル、アクリル酸-3-メトキシブチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2-パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸-2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、アクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチルなどのアクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレンなどの芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステルなどの不飽和ジカルボン酸化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル化合物;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系化合物などの各種ビニル系単量体があげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらのビニル系単量体は、フィルムの成形性や、成形したフィルムの二次加工性、必要とされる機械特性に応じて、好ましいものを選択することができる。
【0015】
(a)のガラス転移温度は、25℃以上であり、好ましくは40℃以上であり、さらに好ましくは50℃以上である。ガラス転移温度が25℃より低いと、フィルム成形性や耐熱性が低くなる傾向がある。
【0016】
前記ブロック共重合体(A)を構成するアクリル系重合体ブロック(b)は、アクリル酸エステル50〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%とからなることが好ましい。
【0017】
(b)を構成するアクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-t-ブチル、アクリル酸-n-ペンチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-n-ヘプチル、アクリル酸-n-オクチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸-2-メトキシエチル、アクリル酸-3-メトキシブチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸-2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸-2-トリフルオロメチルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2-パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸-2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、アクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロデシルエチル、アクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチルなどがあげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、成形したフィルムの柔軟性、耐白化性および入手しやすさの点で、アクリル酸-n-ブチルが好ましい。
【0018】
(b)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸-n-プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸-n-ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸-t-ブチル、メタアクリル酸-n-ペンチル、メタアクリル酸-n-ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸-n-ヘプチル、メタアクリル酸-n-オクチル、メタアクリル酸-2-エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸-2-メトキシエチル、メタアクリル酸-3-メトキシブチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタアクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸-2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸-2-トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸-2-パーフルオロヘキサデシルエチルなどのメタアクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレンなどの芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステルなどの不飽和ジカルボン酸化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル化合物;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系化合物などの各種ビニル系単量体があげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらのビニル系単量体は、ブロック(b)に要求されるガラス転移温度によって好ましいものを選択することができる。(b)のガラス転移温度は、好ましくは25℃以下であり、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは-20℃以下である。ガラス転移温度が25℃より高いと、成形したフィルムまたはシートの柔軟性、耐白化性が低下する傾向がある。
【0019】
ブロック共重合体(A)を製造する方法としては特に限定されないが、制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合や連鎖移動剤を用いるラジカル重合、近年開発されたリビングラジカル重合があげられ、リビングラジカル重合がブロック共重合体の分子量および構造の制御の点から好ましい。
【0020】
リビングラジカル重合は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合である。リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性を持ち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。リビングラジカル重合は近年様々なグループで積極的に研究がなされている。その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(J.Am.Chem.Soc.1994、116、7943)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(Macromolecules、1994、27、7228)、有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などがあげられる。本発明において、これらのうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、制御の容易さなどから原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0021】
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される。(例えば、Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614,Macromolecules 1995,28,7901,Science 1996,272,866、あるいはSawamotoら、Macromolecules 1995,28,1721)。これらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭いMw/Mn=1.1〜1.5程度の重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み比によって自由にコントロールすることができる。
【0022】
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、一官能性、二官能性、または、多官能性の化合物が使用できる。これらは目的に応じて使い分ければよいが、ジブロック共重合体を製造する場合は、一官能性化合物が好ましく、a-b-a型のトリブロック共重合体、b-a-b型のトリブロック共重合体を製造する場合は二官能性化合物を使用するのが好ましく、分岐状ブロック共重合体を製造する場合は多官能性化合物を使用するのが好ましい。
【0023】
一官能性化合物としては、たとえば、式:
C6H5-CH2X、
C6H5-C(H)(X)-CH3、
C6H5-C(X)(CH3)2、
R1-C(H)(X)-COOR2、
R1-C(CH3)(X)-COOR2、
R1-C(H)(X)-CO-R2、
R1-C(CH3)(X)-CO-R2、
R1-C6H4-SO2X
(式中、C6H4はフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表す。R1は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基を表す。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表す。R2は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。)で示される化合物などがあげられる。
【0024】
二官能性化合物としては、たとえば、式:
X-CH2-C6H4-CH2-X、
X-CH(CH3)-C6H4-CH(CH3)-X、
X-C(CH3)2-C6H4-C(CH3)2-X、
X-CH(COOR3)-(CH2)n-CH(COOR3)-X、
X-C(CH3)(COOR3)-(CH2)n-C(CH3)(COOR3)-X、
X-CH(COR3)-(CH2)n-CH(COR3)-X、
X-C(CH3)(COR3)-(CH2)n-C(CH3)(COR3)-X、
X-CH2-CO-CH2-X、
X-CH(CH3)-CO-CH(CH3)-X、
X-C(CH3)2-CO-C(CH3)2-X、
X-CH(C6H5)-CO-CH(C6H5)-X、
X-CH2-COO-(CH2)n-OCO-CH2-X、
X-CH(CH3)-COO-(CH2)n-OCO-CH(CH3)-X、
X-C(CH3)2-COO-(CH2)n-OCO-C(CH3)2-X、
X-CH2-CO-CO-CH2-X、
X-CH(CH3)-CO-CO-CH(CH3)-X、
X-C(CH3)2-CO-CO-C(CH3)2-X、
X-CH2-COO-C6H4-OCO-CH2-X、
X-CH(CH3)-COO-C6H4-OCO-CH(CH3)-X、
X-C(CH3)2-COO-C6H4-OCO-C(CH3)2-X、
X-SO2-C6H4-SO2-X
(式中、R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20アリール基、または炭素数7〜20アラルキル基を表す。C6H4はフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表す。C6H5はフェニル基を表す。nは0〜20の整数を表す。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表す。)で示される化合物などがあげられる。
【0025】
多官能性化合物としては、たとえば、式:
C6H3-(CH2-X)3、
C6H3-(CH(CH3)-X)3、
C6H3-(C(CH3)2-X)3、
C6H3-(OCO-CH2-X)3、
C6H3-(OCO-CH(CH3)-X)3、
C6H3-(OCO-C(CH3)2-X)3、
C6H3-(SO2-X)3
(式中、C6H3は三置換フェニル基(置換基の位置は1位〜6位のいずれでもよい)を表す。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表す。)で示される化合物などがあげられる。
【0026】
また、重合を開始するもの以外に官能基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を用いると、容易に末端に官能基が導入された重合体が得られる。このような官能基としては、アルケニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シリル基などがあげられる。
【0027】
これらの開始剤として用いられうる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物は、ハロゲンが結合している炭素がカルボニル基あるいはフェニル基などと結合しており、炭素-ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。使用する開始剤の量は、必要とするブロック共重合体の分子量に合わせて、単量体との比から決定すればよい。すなわち、開始剤1分子あたり、何分子の単量体を使用するかによって、ブロック共重合体の分子量を制御できる。
【0028】
前記原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケルの錯体があげられる。これらの中でも、コストや反応制御の点から銅の錯体がより好ましい。
【0029】
1価の銅化合物としては、たとえば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などがあげられる。銅化合物をもちいる場合、触媒活性を高めるために2,2′-ビピリジルおよびその誘導体、1,10-フェナントロリンおよびその誘導体、テトラメチルエチレントリアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2-アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどを配位子として添加してもよい。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh3)3)も触媒として好ましい。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加してもよい。さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh3)2)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh3)2)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu3)2)も、触媒として好ましい。使用する触媒、配位子および活性化剤の量は、特に限定されないが、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から適宜決定すればよい。
【0030】
前記原子移動ラジカル重合は、無溶媒(塊状重合)または各種の溶媒中で行うことができる。前記溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノールなどのアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒などがあげられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。前述したように、無溶媒で実施する場合は塊状重合となる。一方、溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする撹拌効率(すなわち、反応速度)の関係から適宜決定すればよい。
【0031】
また、前記重合は、室温〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは、50〜150℃の範囲である。
【0032】
前記重合により、ブロック共重合体を製造するには、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などがあげられる。これらの方法は目的に応じて使い分ければよいが、製造工程の簡便性の点から、単量体の逐次添加による方法が好ましい。
本発明に使用されるブロック共重合体(A)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、ブロック(a)が40〜75重量%、ブロック(b)が60〜25重量%であり、フィルムの成形性、防塵性、柔軟性、耐白化性等の点で、好ましくは、(a)が45〜70重量%、(b)が55〜30重量%ある。(a)の割合が40重量%より少ないとフィルムまたはシートの成形性、防塵性、表面硬度等が低下する傾向があり、(b)の割合が25重量%より少ないと成形したフイルムの柔軟性が低下し、フィルムが割れたり、引張り時や折り曲げ時(加工時)の耐白化性が低下する傾向がある。
【0033】
本発明に使用されるブロック共重合体(A)を構成するメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、フィルムの成形性や、成形したフィルムの二次加工性、必要とされる機械特性等、所望とされる物性に応じた組成比にすれば良い。発明の範囲はそれらに限定されないが、例えば、本発明のラミネートフィルムフィルムに透明性、高硬度、防塵性、耐エタノール性等が必要とされる場合には、メタアクリル系重合体ブロック(a)が70〜75重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が30〜25重量%のフィルムを用いれば良く、特に耐衝撃性、柔軟性が必要とされる場合にはメタアクリル系重合体ブロック(a)が40〜45重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が60〜55重量%のフィルムを用いれば良く 成形性、柔軟性、耐衝撃性、防塵性、透明性、硬度、耐エタノール性、耐沸騰水性等のバランスに優れ、かつ引張り時や折り曲げ時(加工時)に白化しにくいフィルムが必要とされる場合には、メタアクリル系重合体ブロック(a)が45〜70重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が55〜30重量%のフィルムを用いれば良い。前記、メタアクリル系重合体ブロック(a)が45〜70重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が55〜30重量%のフィルムは、建築物の内装材・外装材、電気製品、雑貨、その他各種の分野で広く用いられている塩化ビニルシートに替えて好適に使用することが可能である。
【0034】
本発明のラミネートフィルムは、ブロック共重合体(A)を必須の成分としてなることを特徴とするが、他の成分を含有してしていてもよい。他の成分が熱可塑性樹脂(B)である場合、たとえばポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状オレフィン共重合樹脂、芳香族アルケニル化合物およびシアン化ビニル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のビニル系単量体70〜100重量%とこれらのビニル系単量体と共重合可能なたとえばエチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどの他のビニル系単量体および/またはブタジエン、イソプレンなどのジエン系単量体など0〜30重量%とを重合して得られる単独重合体または共重合体、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂の混合物、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂の混合物、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂およびポリアリレート樹脂などをあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。本発明において、熱可塑性樹脂はこれらに限定されることがなく、種々の熱可塑性樹脂を広く用いることができる。これらのうち、本発明で使用するブロック共重合体(A)との相溶性、耐衝撃性、機械特性に優れる点で、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル系樹脂、およびポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる樹脂が好ましく、さらに、耐候性や透明性に優れるという点でポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂がより好ましい。
【0035】
アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、メタクリル酸エステル−スチレン−置換マレイミド共重合体、メタクリル酸エステル−置換マレイミド共重合体など挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、本発明で使用するブロック共重合体(A)との相溶性や、ブロック共重合体(A)と組み合わせた時の透明性等により選択すればよいが、耐候性、透明性、機械特性、入手性や重合容易性からポリメタクリル酸エステル、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体が好ましい。入手性や、重合容易性からポリメタクリル酸エステルとしては、ポリメタクリル酸メチルが好ましく、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体としては、炭素数1〜8のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合体が好ましい。
【0036】
前記メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合体の共重合形態はランダム共重合体、交互共重合体、枝部および幹部を含有する櫛形グラフト共重合体、内層部(コア部)および外層部(シェル部)を含有するコアシェル粒子型グラフト共重合体、およびアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルからなる内層部(コア部)の存在下にアクリル酸エステルを含むメタクリル酸エステルを多段階的に追加重合して得られる共重合体、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルからなる単量体混合物を多段階的にアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの組成を変化させながら追加重合して得られる共重合体(グラジエント共重合体)、中心部および中間層部および外層部を含有する三層粒子型グラフト共重合体、などがあげられる。これらは、単独又は2種以上組み合わせて用いられる。また、これらは組み合わせるブロック共重合体(A)の性質に応じて用いればよい。
【0037】
本発明のフィルムを構成する重合体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて、ブロック共重合体(A)またはそれと熱可塑性樹脂(B)の他に、他の重合体や安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、顔料、充填剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤などを配合しうる。具体的には、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、多硫化ゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、四フッ化エチレン−プロピレン−フッ化ビニリデンゴム、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム(CO)、エチレン−アクリルゴム、ノルボルネンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー(SBC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー(TPVC)、およびフッ素系熱可塑性エラストマー等の合成ゴム;トリフェニルホスファイト、ヒンダードフェノール、ジブチル錫マレエートなどの安定剤;パラフィン系オイル、ポリブテン系オイル、軽油、スピンドル油、マシン油、アマニ油、ゴマ油、ヒマシ油、ツバキ油、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート、トリクレジルホスフェートなどの可塑剤;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックスなどの滑剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、デカブロモビフェニル、デカブロモビフェニルエーテル、三酸化アンチモンなどの難燃剤;酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛などの顔料;ガラス繊維、金属繊維、チタン酸カリウィスカー、アスベスト、ウォラストナイト、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、ミルドファイバー、金属粉末などの充填剤などがあげられる。
【0038】
本発明のラミネートフィルムを重合体組成物で構成する場合、該重合体組成物を配合し製造する方法としては、特に限定されず、バンバリーミキサー、ロールミル、二軸押出機などの公知の装置を用い、機械的に混合しペレット状に賦形する方法などの既存の方法を用いることができる。混練時の温度は、使用するブロック共重合体(A)の溶融温度などに応じて調整するのがよく、例えば、130〜300℃で溶融混練することにより製造できる。
【0039】
フィルムの成形には、上記重合体組成物を、押出し成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、射出成形などの任意の成形加工法によって成形加工することができるが、製造工程性、コストなどの点から押出し成形法によりフィルムを成形するのが好ましい。押出し成形は、Tダイ、リングダイなどの所望の形状・寸法のダイから溶融押出しし、冷却することにより行なうことができる。なお、押出しと同時または押出し後に一軸または二軸方向に延伸することも可能である。
【0040】
本発明のフィルムは種々の基材にラミネートして使用することができる。フィルムをラミネートする基材としては、従来より知られる各種の熱可塑性樹脂製基材等が使用できる。特に壁紙の場合は、加工性や価格の観点から、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートが用いられることが多い。また、熱融着しない熱硬化性樹脂、木材、紙等の基材でも、接着剤を使用して貼り合わせることは可能である。
【0041】
また、本発明のフィルムを基材へラミネートした際のラミネート膜厚みは、特に制限されないが、1〜300μm程度であることが好ましい。1μm未満では耐衝撃性が不十分となる傾向があり、300μmより厚くなると経済性が悪くなる。
【0042】
また、基材へのラミネート方法は、特に限定されないが、公知の方法を使用することができる。具体的には、(1)本発明のラミネートフィルムを製造するための重合体組成物をTダイス付きの押出し機で溶融混練してフィルム化し、これを熱圧着する方法(この場合、フィルムは無延伸でも、一方向もしくは二方向に延伸してもよい)、(2)Tダイスから出たフィルムを直接熱圧着する方法、さらに(3)重合体組成物を溶融してバーコーダーやロールでコーティングする方法、(4)重合体組成物を溶融して基材を漬ける方法、重合体組成物を溶解してスピンコートする方法、などにより基材にラミネートすることも可能である。ラミネート方法は特に限定されるものではないが、作業効率の点から上記(1)および(2)の方法が好ましい。
【0043】
また、本発明のフィルムを基材にラミネートする際には、必要に応じて、本発明のフィルムと基材との間に他の公知の樹脂フィルムを中間層として設けることもできる。具体的なラミネート方法としては、上述の(1)、(2)の方法を使用する場合は、多層のTダイスを使用して本発明の樹脂フィルムと他の樹脂フィルムとの多層膜を製造し、それを熱圧着する方法がある。また、上述の(3)、(4)、(5)の方法を使用する場合は、他の樹脂をラミネートしたのちに本発明の熱可塑性樹脂をラミネートすることが可能である。
【0044】
【実施例】
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、 本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
また、以下の記載における略号は、それぞれ下記の物質を示す。
BA;アクリル酸ブチル MMA;メタクリル酸メチル。
【0046】
製造例1(MMA−BA系ブロック共重合体)
MMA−BA−MMA型ブロック共重合体(A)を得るために以下の操作を行った。5lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、臭化銅11.4g(79.3mモル)を量り取り、アセトニトリル(モレキュラーシーブスで乾燥後窒素バブリングしたもの)100mLを加えた。5分間70℃で加熱攪拌した後、再び室温に冷却し、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.7g(15.9mモル)、BA447.0g(500.0ml)を加えた。80℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン1.7ml(7.9mモル)を加えて重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mlを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりアクリル酸ブチルの転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。BAの転化率が90%を超えた時点で、MMA1333.2g(1424.3ml)、塩化銅7.8g(79.3mモル)、ジエチレントリアミン1.7ml(7.9mモル)、トルエン(モレキュラーシーブスで乾燥後窒素バブリングしたもの)1424.3mlを加えた。同様にして、MMAの転化率を決定した。BAとMMAの転化率が、目的とする組成比例えば、BA/MMAが40/60(重量%)の重合体を得る場合、BAの添加率が100%であれば、MMAの添加率が50%になるように、トルエン1500mlを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。反応中常に重合溶液は緑色であった。反応溶液を活性アルミナで濾過することにより銅錯体を除去した。得られた濾液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより、以下の比較例1及び実施例1〜4で使用したブロック共重合体を得た。
【0047】
製造例2(MMA−BA系ブロック共重合体)
MMA−BA−MMA型ブロック共重合体(A)を得るために以下の操作を行った。
5リットルのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換した後、臭化銅11.3g(78.5mモル)を量り取り、アセトニトリル(モレキュラーシーブスで乾燥後窒素バブリングしたもの)180mlを加えた。5分間70℃で加熱攪拌した後、再び室温に冷却し、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.7g(15.7mモル)、アクリル酸ブチル804.6g(900.0ml)を加えた。80℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン1.6ml(7.9mモル)を加えて重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mlを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりアクリル酸ブチルの転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。アクリル酸ブチルの転化率が95%の時点で、メタクリル酸メチル345.7g(369.3ml)、塩化銅7.8g(78.5mモル)、ジエチレントリアミン1.6ml(7.9mモル)、トルエン(モレキュラーシーブスで乾燥後窒素バブリングしたもの)1107.9mlを加えた。同様にして、メタクリル酸メチルの転化率を決定した。メタクリル酸メチルの転化率が85%、アクリル酸ブチルの転化率が98%の時点で、トルエン1500mlを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。 反応中常に重合溶液は緑色であった。
【0048】
反応溶液を活性アルミナで濾過することにより銅錯体を除去した。得られた濾液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより、以下の比較例2〜3で使用したブロック共重合体を得た。
(分子量・分子量分布)クロロホルムを移動相として、ポリスチレンゲルカラムを使用したGPC測定を行い、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
(BAとMMAの組成比(重量%))1H-NMRにより、ブロック共重合体中のポリアクリル酸ブチルとポリメタアクリル酸メチルの重量分率を確認した。
【0049】
製造例3(MMA-BA系フリーポリマーおよびMMA-BA系コアシェル型グラフト共重合体)
耐衝撃性を向上させるために、メタクリル酸エステル系樹脂にコアシェル型グラフト共重合体を分散させた重合体を、下記の操作によって得た。
【0050】
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、モノマー追加装置、還流冷却器を備えた8リットル重合器に蒸留水200重量部、乳化剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム1.0重量%を加えた後、アクリル酸ブチル85重量%及びメタクリル酸メチル15重量%と、架橋性単量体としてトリアリルイソシアヌレート0.1重量%を含む単量体混合物30重量部と、これにあらかじめ溶解させたキュメンハイドロパーオキサイド(0.1重量%対単量体混合物)を加えて重合器内に注入し、窒素気流中で攪拌を行いながら重合温度を40℃に設定する。その後少量の水に溶解したナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(0.1重量%対単量体混合物)の溶液を徐々に加えて重合を開始し、約4時間で添加率が95%以上となったので重合を完了した。このようにして得た架橋弾性体エマルジョンのゲル含量は96.4%、膨潤度は7.3で、エマルジョンの平均粒子径は1450Åであった。次に重合温度を80℃に昇温し、メタクリル酸メチル50重量%及びアクリル酸ブチル50重量%を含む単量体混合物20重量部と触媒としてキュメンハイドロパーオキサイド(0.3重量%対単量体混合物)を前記単量体混合物に溶解する。これと別にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(0.2重量%対単量体混合物)を少量の水に溶解し、事前に重合器内に添加しておく。その後、単量体追加ポンプにて窒素気流中、攪拌下に前記単量体混合物を約2時間で追加して重合を行った。さらに引き続き、メタクリル酸メチル80重量%及びアクリル酸ブチル20重量%と触媒としてキュメンハイドロパーオキサイド(0.3重量%対単量体混合物)を溶解した単量体混合物50重量部を同じく追加ポンプで約4時間で追加して重合をおこなった。このようにして得た重合終了液を塩化カルシウム溶液で塩析し、水洗、乾燥を行い、以下の比較例4で使用した重合体(B)の乾燥粉末を得た。
(架橋弾性体のゲル含有率)架橋弾性体を100メッシュ金網上に所定量採取し、メチルエチルケトンに48時間浸漬し、減圧乾燥してメチルエチルケトンを除去した後、恒量になった重量を読みとり、次式により算出した。
ゲル含有率=(ア)×100/(イ)
(ア):再乾燥後の重量 (イ):採取サンプルの重量(ガラス転移温度)「ポリマー・ハンドブック[PolymerHand Book(J.Brandrup,Interscience,1989]」に記載されている値(MMA;105℃,BA;−54℃)をフォックス(Fox)の式を用いて算出した。
【0051】
実施例及び比較例中の測定、評価は次の条件及び方法を用いて行った。また、実施例および比較例中にて使用した重合体は、製造例1〜3に記載した方法にて製造したものを用いた。
フィルム作製は製造例1〜3で得られた重合体に、安定剤としてイルガノックス1010(チバガイギー株式会社製)0.2重量部、チヌビン234(チバガイギー株式会社製)2.0部を配合し、設定温度230℃で5分間ロール混練した後、得られた混練物を、設定温度230℃で熱プレス成形することによって得た。
【0052】
(引張り特性)JIS K7133に記載の方法に準用して、n= 3で測定した値の平均値を採用した。
試験片は2(1/3)号形の形状にて、厚さが200〜300μmのフィルム厚のものを用いた。試験は0℃にて500mm/分の試験速度で行った。試験片は原則として、試験前に温度23ア2℃、相対湿度50ア5%において48時間以上状態調節し、さらに、0℃にて1時間状態調節したものを用いた。
(耐白化性)成形したフィルムを前記記載の引張り試験を行い、引張り試験後の破断部の白化を評価した。
【0053】
(硬度)フィルムの表面硬度をASTM−D2240記載の方法に準用して、23℃で、タイプDデュロメーター硬さ試験機を用いて測定した。測定は200〜300μm厚さの試験片を積み重ねて、1mm厚さにして行った。
【0054】
(透明性)日本電色工業株式会社製のヘイズメーターを用いて 、常法により、フィルムの全光線透過率(TT)、曇価(ヘイズ)を測定した。23℃で測定し、単位は%である。
【0055】
(耐エタノール性)フィルムをエタノール中に5時間浸積し、浸積後のフィルムの白化や膨れ、皺等を目視にて下記の基準により評価した。
○;フィルムが白濁または白化しておらず、膨れや皺がない。
×;フィルムが白濁または白化している。または、フィルムに膨れや皺等がある。
【0056】
(耐沸騰水性)フィルムを沸騰水中に1時間浸積した後、水中に5分間浸積した。試験後のフィルムの白化や膨れ、皺等を目視にて下記の基準により評価した。
○;フィルムが白濁または白化しておらず、膨れや皺がない。
×;フィルムが白濁または白化している。または、フィルムに膨れや皺等がある。
【0057】
(防塵性)フィルムの防塵性をフィルムのタック感(フィルムを指で押さえた際に、指にフィルムが引っ付くかどうか)にて下記の基準により評価した。
○;フィルムにタック感がない。
×;フィルムにタック感がある。
【0058】
【表1】
上記表1の実施例1〜4および比較例1〜4に示される結果から明らかなように、実施例に代表される本発明のフィルムは耐候性、成形性、柔軟性、耐衝撃性、防塵性、透明性、耐エタノール性、耐沸騰水性等に優れ、かつ引張り時や折り曲げ時(加工時)に白濁や透明度の変化が起こりにくく、好適にラミネートフィルムとして好適に使用することができる。
Claims (7)
- メタアクリル系重合体ブロック(a)40〜67重量%及びアクリル系重合体ブロック(b)60〜33重量%からなり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.8以下であるブロック共重合体(A)を成形してなる、熱可塑性樹脂製基材用、熱融着しない熱硬化性樹脂製基材用、木材製基材用、紙製基材用のラミネートフィルム。
- ブロック共重合体(A)が、メタアクリル系重合体ブロック(a)46〜67重量%及びアクリル系重合体ブロック(b)54〜33重量%からなることを特徴とする請求項1記載のラミネートフィルム。
- メタアクリル系重合体ブロック(a)がメタアクリル酸メチル50〜100重量%およびこれと共重合可能な他のメタアクリル酸エステルおよび/または他のビニル系単量体0〜50重量%とからなり、アクリル系重合体ブロック(b)がアクリル酸ブチル50〜100重量%およびこれと共重合可能な他のアクリル酸エステルおよび/またはビニル系単量体0〜50重量%とからなる重合体ブロックからなる請求項1又は2記載のラミネートフィルム。
- ブロック共重合体(A)が原子移動ラジカル重合により製造されたことを特徴とする請求項1、2又は3記載のラミネートフィルム。
- メタアクリル系重合体ブロック(a)がメタアクリル酸メチルからなり、アクリル系重合体ブロック(b)がアクリル酸ブチルからなるからなる重合体ブロックである請求項1、2、3又は4記載のラミネートフィルム。
- ブロック共重合体(A)がトリブロック共重合体であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のラミネートフィルム。
- メタアクリル系重合体ブロック(a)40〜67重量%及びアクリル系重合体ブロック(b)60〜33重量%からなり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.8以下であるブロック共重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)からなる熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、熱可塑性樹脂製基材用、熱融着しない熱硬化性樹脂製基材用、木材製基材用、紙製基材用のラミネートフィルム。
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