JP3975054B2 - 移動通信方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は基地局にマルチビーム放射パターンを形成し、そのビームごとに異なる移動局との通信に用いかつその用いるビームをアダプティブに変更する移動通信方法、その装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図13に従来の放射パターン形状を時間的に変化させて通信を行う移動通信システムを示す。ここで、基地局BS1,BS2,BS3が存在し、移動局MS1は基地局BS1、移動局MS2は基地局BS2と通信している場合である。基地局から移動局への信号伝送(下り伝送)時において、電波放射パターン形状を時間的に変化させて行うためにアダプティブアンテナを用いた場合である。基地局BS1のアンテナの送信パターンPB1は、通信状態にある移動局MS1へは最大レベルを向け、他移動局MS2には干渉を与えないようにヌルまたは低いレベルを向ける。基地局BS2のアンテナの送信パターンPB2も移動局MS2に対し同様な関係とする。一方、下り伝送において移動局MS1の受信パターンPM1は、各基地局BS1〜BS3からの電波のうち、通信状態にある基地局BS1の電波の到来方向に最大レベルを向け、その他の基地局BS2,BS3からの電波にはヌルまたは低いレベルを向ける。
【0003】
この場合、基地局の最適送信パターンと移動局の最適受信パターンを作るためには、基地局BS1(BS2)が周辺全ての通信状態にあるまたは通信に入ろうとする移動局MS1,MS2の受信レベル情報やSIR(信号対干渉比)を知る必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このため、基地局では膨大な量の情報を刻々と移動局から得る必要があり、制御が膨大なものになってしまい、本来の情報伝送の伝送容量が制限されたり、制御信号用に別チャネルが必要になるなどの欠点が生じ、アダプティブアンテナを導入したにもかかわらず、周波数有効利用が出来ないという状態となる。
この発明の目的は移動局から基地局への上り伝送情報は少なく、しかも適切な基地局送信パターンの形成を可能とし、基地局から移動局への高速な下り伝送が出来るアダプティブアンテナを用いた移動通信方法とその装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明の1実施形態によれば、基地局はマルチビーム放射パターンを形成し、その各ビームごとに、そのビーム識別信号を、伝送情報に含め、移動局は受信した各ビーム識別信号を、そのビーム受信時の信号品質の良いものの順に並べた信号品質表を周辺の各基地局ごとに作って送信し、各基地局は各移動局から受信した信号品質表に基づき、移動局ごとに通信に用いるビームを割当てその識別信号を移動局へ送信し、移動局は各基地局から割当ビームから通信に用いる基地局を決定し、その基地局とその割当ビームを用いて通信を行う。
【0006】
【発明の実施の形態】
図1を参照してこの発明の実施形態の概要を説明する。基地局BS1,BS2,BS3はそれぞれマルチビームアンテナによりマルチビーム放射パターンMBPを形成し、ビームごとに異なる通信を可能とする。この例では各マルチビーム放射パターン(以下単にマルチビームと記す)MBPはそれぞれビーム量が#1〜#NのN個のビームを形成している。移動局は近い基地局のその移動局の方向に向いているビームを用いてその基地局と通信をする。従って基地局での放射パターンの制御の自由度が限定されているため、基地局から移動局への下り伝送のために基地局で放射パターン制御に必要とする、移動局からの情報は非常に少なくて済む。従来は、所望移動局の正確な方向へパターン最大値を向け、その他干渉となる移動局にはヌルを向ける放射パターン制御操作が必要なため、その制御操作に非常に多くのパラメータを特定しなくてはならず、周辺全移動局から膨大な情報を基地局へ伝送する必要があった。しかし、このマルチビームのビームごとの通信によればN個ビーム中から、通信を行っている移動局の方向に最も近い方向のビームを選択するか、移動局の方向に近い方向の2ビームを用いて合成するのみで良い。さらに大きな干渉移動局がある場合にはその方向のビームの放射を停止するのみで良い。このことから、通信を行う、または行っている移動局のみの情報、または数台以下の干渉移動局の情報を得るだけで良く、大変少ない移動局の情報のみで基地局送信パターンの制御が出来る。
【0007】
この場合の放射パターン成形の様子を図2に示した。ここで、(a)は従来のピークとヌルを制御するもの、(b)はこの発明に用いるマルチビームアンテナでピークのみを制御する(切り替える)ものである。既に述べたように(a)では、所望移動局MSと干渉移動局I1 ,I2 ,I3 を識別し、移動局MSの方向にピークを、干渉移動局I1 ,I2 ,I3の各方向にヌルをそれぞれ向ける。一方、マルチビームの(b)では所望移動局MSの方向に向いたビームを選択するのみで、干渉移動局I1 ,I2 ,I3 の各方向は特定しないため、ビームを高い利得として、非常に鋭いビームを作るとともに、ビーム方向以外に余計な放射を行わないようにサイドローブを低く押さえる必要がある。このことは、将来予想されるマイクロ波などの高い周波数帯を用いた移動通信システムでは比較的容易に実現できる。以下に説明する。
【0008】
アンテナの大きさとビーム幅の関係は以下の式で表される。またこの結果を図3(a)に示す。
G=4π・Ae/λ2
ここで、Gはアンテナ利得、Aeはアンテナ実効開口面積、λは波長である。
また利得とビーム幅の関係は以下で表される。
G=4π/(θHP・φHP)≒41000/(θ゜HP・φ゜HP
ここで、θHP、φHPは垂直面内、水平面内の各ビーム半値角(ラジアン)であり、θ゜HP、φ゜HPは角度を単位としたものである。図3(a)の横軸の辺、その長さW、H(x)は開口アンテナで効率100%の場合図3(b)に示すように開口面積H×Wを表わすH,Wであり、アレイアンテナで素子利得0dBi、給電損失0dBの場合、図3(c)に示すようにアレイ面積H×Wを表わすH,Wである。
【0009】
図3(a)から明らかなように、アンテナの大きさが大きくなるとビーム幅が小さくなることがわかる。図3(a)はアンテナ効率を含まない値、つまりアンテナ効率を100%とした値である。ここで、ビーム幅が数十度(30〜120度)程度である場合、アンテナ効率が可成り悪いとしてもアンテナ一辺の長さは10波長程度で良く、現行移動通信システムの波長約30cmでは3×3mのアンテナで実現できる。この場合はビーム幅が広すぎるため、この発明で行うマルチビーム化を行っても、所望移動局方向のみならず広いエリアを照射してしまうため、セクタアンテナ的な効果に留まり、アダプティブアンテナ的な効果はあまり無い。一方、この発明において高い効果を得るにはマルチビームの1つのビームの幅が数度にする必要がある。そこで、ビーム幅を数度程度とした場合、アンテナ一辺の長さは数十波長程度となり現行移動通信システムでは大きなアンテナとなる。しかし、将来においてさらに高い周波数が移動通信方式に割当てられる可能性があり、10GHzのシステムとすると、ほぼ現行と同程度のアンテナの大きさで済む。この場合、ビーム幅が数度であることから利得が非常に高く、所望の移動局に強い放射を行えると共に、ほぼ全てのエネルギーをビームに集中させるため、ビーム方向以外は基本的に既にエネルギーが少なくなりサイドローブを低く押さえることが可能である。従って、将来予想されるマイクロ波などの高い周波数帯を用いた移動通信システムでは比較的容易に、かつアンテナを大型化せずに実現できる。
【0010】
従って、この実施形態では、基地局アンテナにビーム幅数度程度のマルチビームアンテナを用い、しかも移動局から基地局への上り伝送情報が少なくても適切な基地局ビームを得て、基地局から移動局への高速な下り情報伝送を可能とする。
さらに本発明は将来予想されるマイクロ波帯域を用いた移動通信システムではアンテナを現行システム程度の大きさに押させることが出来ることから、さらに高い効果がある。
【0011】
以下にこのマルチビームの適切な制御に必要とする移動局から基地局への上り伝送情報の具体例と、通信に用いる基地局のビームの決定法の例を述べる。つまりこの例は簡単な表の情報を移動局から基地局に送信することで複数移動局、複数基地局で構成される移動通信システム全体のパターン制御が可能であることを示す。またこの例では移動局に任意のパターン成形が可能な従来のアダプティブアンテナを用いた場合である。
図4に示すように基地局BS1,BS2,BS3にはそれぞれマルチビームアンテナが設けられ、それぞれビーム#1〜#Nを形成することができる。このビーム数は基地局によって異なっていてもよい。移動局MS1,MS2はそれぞれアダプティブアンテナを備えている。各基地局BS1〜BS3の各ビームから例えば図5に示すようにその送信された基地局番号BSi(i=1,2,…)と基地局の何番ビームであるかを示す情報、つまりビーム番号#j(j=1,2,…,N)がパイロット信号としてヘッダに付けた信号が伝送されている。各移動局MS1,MS2は例えば図6に示す信号品質テーブル(表)を作って移動局から送信する。この実施形態では受信レベルの高さを尺度として信号品質テーブルを作成した例であるので、レベルテーブルと呼ぶ。移動局はこのレベルテーブルを作成する場合、アダプティブ動作を解除し、アンテナ放射パターンをなるべく無指向性に近い放射パターンとする。移動局で作成するレベルテーブルは、各基地局BS1,BS2,…ごとにその各ビームの受信レベルの強さ順に並べてあり、所望の信号伝送の出来る限界点すなわちSL(スレッショルドレベルしきい値)の点が明示されている。図6の例では移動局MS1で作られたレベルテーブルである基地局番号BS1からのビーム番号#3,#2,#10,…の順に受信レベルが高く、かつ#XまでがSL以上であり同様に他の基地局BS2,BS3,…についても受信レベルの高い順にビーム番号を配列したレベルテーブルを作る。
【0012】
この例では全移動局は受信可能な全基地局、全ビームについて、このような表を作る。
各移動局ではそのレベルテーブル中の各基地局BSiごとの全ビームの平均受信レベルを求め、その平均受信レベルが高い上位m基地局分のレベルテーブルLTk(k=1,2,…)をその各m基地局へ送信する。ここで、mはパラメータであり、システム設計値により、または基地局、移動局の環境などから決める。このmの選定基準は、自移動局の電波で干渉が問題となると思われる基地局には全て送信するようにする。
【0013】
各基地局BSiは受信した各移動局MSkからのレベルテーブルLTkを以下のように処理する。つまり図7(a)に示すような基地局内のレベルテーブルと図7(b)に示すような干渉テーブルとを作成する。つまり基地局BSiのレベルテーブルは各移動局MS1,MS2,…から送られた自分の局のビーム番号が受信レベル順に並んだ各レベルテーブルの配列である。図7(a)中空白はビーム番号を記入していないだけで受信ビームがあるが、「−」はビームが受信できなかったことを示す。従って、基地局BS1のレベルテーブル中の移動局MS1からのものは、図6に示した中のMS1に対するものと同一となる。また例えばビーム#Xの干渉量Ivを次のように定義する。即ちビーム#Xは移動局MS1,MS4,MSn ,MSn+2 で受信されており、それぞれにおける#XとSL(スレッショルドレベル)との間のテーブルとの距離は、移動局MS1では#Xは4番目であり、SLは4番目であるからその間の距離Px1=4−4=0であり、移動局MS4では#Xは3番目、SLは5番目であるから、この間の距離Px4=5−3=2であり、同様に移動局MSn ではPxn=5−4=1、移動局MSn+2ではPxn+2=4−2=2である。これらの距離を全て足した値5(=Px1+Px4+Pxn+Pxn+2=0+2+1+2)がビーム#Xの干渉量Ivとする。
【0014】
基地局BS1における各ビーム#1〜#Nについてこの干渉量Ivを求めて図7(b)に示す干渉テーブルを作る。
次に移動局に対するビームの割当て法を示す。例えば、移動局MS1に対するビームを決めるには、図7(a)のレベルテーブル中の移動局MS1のレベルテーブルにおいてSL(スレッショルドレベル)以上のビームで、図7(b)の干渉テーブルから見た干渉量Ivが最も少ないビームを選択する。この例ではMS1からのレベルテーブル中の#3,#2,#1,#XのビームがSL(スレッショルドレベル)以上のビームであり、これら各ビームの干渉量は図7(b)の干渉テーブルより、#3=8、#2=3、#1=12、#X=5である。そこでこれらのうち、最も干渉量Ivの少ないビームは#2であるから、#2のビームを移動局MS1との通信に割当てる。この操作を全移動局について行う。そして、各移動局に割当ビーム番号とその干渉量Ivをビーム指定信号として送信する。
【0015】
移動局では各m個の基地局から受信した割当ビームとその干渉量Ivの情報から、通信を行う基地局を決定する。ここでは、各基地局が指定した割当ビームの干渉量Ivが最も少ない基地局と通信を行う。ただし、システム設計法によるがハンドオーバを行う場合、すなわちSL(スレッショルドレベル)付近で2基地局からの受信レベルが近づいている場合、同時に2つの基地局との通信を行うこともある。
このようにして通信するべき基地局とビームが決定される。そして、このビームについて移動局側のアダプティブアンテナが動作し、最適な移動局側のパターンが決定される。
【0016】
以上の動作の流れについて移動局側を図8に、基地局側を図9にそれぞれ示す。つまり各移動局においては基地局からの制御チャネルを受信し待機状態であり(S1)、通信が開始されるようになると(S2)、アンテナパターンを初期化、つまり無指向性状態とし(S3)、周辺の各基地局の各ビームを受信し(S4)、各基地局ごとのレベルテーブルを作成し(S5)、基地局ごとの全ビームの平均受信レベルを計算し(S6)、その平均レベルの上位m局のレベルテーブルを送信する(S7)。そのm個の各基地局から割当ビームとその干渉量、つまりビーム指定信号を受信すると(S8)、これらビーム指定信号中の干渉量が最も少ない基地局を決定し、その基地局の割当ビームを通信用とし(S9)、その基地局ビームに対する受信信号のSINR(信号対干渉比)が最大になるように適応アルゴリズムを動作させ(S10)、これに応じてアンテナパターンを成形し(S11)、通信を行う。通信が終了しなければ(S12)、ステップS4に戻り同様の処理を繰り返し行い移動局で成形したパターンが適性であったかの確認を行うと共に移動局の移動があっても常に好ましい基地局のビームの選択と移動局の受信パターンが決定・更新される。なお図に示していないが通信中に通信レベルが著しく低下したらステップS3に戻って、好ましい基地局とそのビームを決定するようにしてもよい。通信が終了したら(S12)、ステップS1に戻る。
【0017】
各基地局においては図9に示すように、通信要求のあった移動局からのレベルテーブルを受信すると、それを基地局レベルテーブル記憶部に記憶し(s1)、その記憶されている基地局レベルテーブルを用いて干渉テーブルを作成し(s2)、通信要求のあった移動局から受信したレベルテーブルと干渉テーブルを参照してその移動局に対する割当ビーム番号を決定し(s3)、要求のあった移動局に対し、その基地局番号と割当ビーム番号のビーム指示信号を送信する(s4)。
【0018】
基地局における装置の構成例を図10に示す。複数アンテナ素子21よりなるアレーアンテナが設けられ、各アンテナ素子21にそれぞれサーキュレータ22を介して低雑音増幅器、ダウンコンバータなどよりなる受信部23と、アップコンバータ、電力増幅器などよりなる送信部24とがそれぞれ接続されている。各受信部23の出力はAD変換器25によりデジタル信号に変換されて、N個の受信アダプティブパターン制御装置26に供給され、N個の受信アダプティブパターン制御装置26の出力はn個の信号処理制御化部27の何れかに切替部28を介して選択的に供給される。n個の信号処理制御復号部27よりの各チャネルの復号信号が出力端子29にそれぞれ出力される。
【0019】
一方、n個の各チャネルの入力端子31よりの送信されるべき信号はn個の信号処理制御符号化部32でそれぞれ符号化されかつ中間周波信号とされて、切替部33によりN個の送信アダプティブパターン制御装置34の何れかに選択的に供給され、N個の送信アダプティブパターン制御装置34の各出力はそれぞれDA変換器35にアナログ信号に変換されて、全ての送信部24へ供給される。
各アダプティブパターン制御装置26,34はそれぞれマルチビームのN個のビームの各1つと対応したビームパターンを成形する。信号処理制御復号化部27、信号処理制御符号化部32の数nは、その基地局が収容するチャネル数分であり、N以下の数である。
【0020】
この発明の実施形態によれば、n個の信号処理制御復号化部27で受信復号された周辺移動局からのレベルテーブルはレベルテーブル記憶部41に格納され、この記憶部41内に格納されている各移動局からのレベルテーブルを参照して干渉テーブル作成部42で干渉テーブルを作成し、更にビーム割当て部43で記憶部41内の通信要求のあった移動局のレベルテーブルと、干渉テーブルを参照して、ビーム割当てを行い、基地局番号とその割当ビーム番号よりなるビーム指定信号にその移動局番号を付けて出力部44より信号処理符号化部32へ供給して、その移動局へ送信する。記憶部41、干渉テーブル作成部42、ビーム割当部43、出力部44に対する各処理を制御部45により順次行わせる。
【0021】
次に移動局の装置構成例を図11に示す。基地局と同様に複数のアンテナ素子51、サーキュレータ52、受信部53、送信部54、AD変換器55、受信アダプティブパターン制御装置56、信号処理制御復号化部57、出力端子59、入力端子61、信号処理制御符号化部62、送信アダプティブパターン制御装置64、DA変換器65を備える。ただしアダプティブパターン制御装置56,64は各1個であり、かつ、アンテナパターンの主ビームを通信している移動局の方向に、ヌル又は低レベルを干渉移動局の方向にそれぞれ向ける適応制御を行う。また信号処理制御復号化部57、信号処理制御符号化部62はそれぞれ1個設けられるのみである。
【0022】
この発明の実施形態によれば、受信アダプティブパターン制御装置56の出力はレベル検出部71へも分岐供給され、各基地局の各ビームごとの受信レベルが検出される。例えば各基地局番号とビーム番号が記憶部72に記憶されてあり、レプリカ信号生成部73により各基地局番号と各ビーム番号の組合せを取出し、つまり図5に示した各パイロット信号を作り、これら受信アダプティブパターン制御装置56の出力における基地局からのパイロット信号に相当する信号、つまりレプリカ信号を作り、このレプリカ信号と受信アダプティブパターン制御装置56の出力信号との相関を、その信号形式と同期をとった状態で、レベル検出部71でとり、その相関出力を、その基地局番号とそのビーム番号のビーム受信レベルとする。
【0023】
この各基地局ごとにそのビーム番号の受信レベルを検出した値を高い順にビーム番号を並べたレベルテーブルを、レベルテーブル作成部74で作成する。各基地局の全ビームの平均受信レベルを平均レベル計算部75で計算され、その平均レベルの高いm個の基地局のレベルテーブルをその基地局番号と移動局識別信号を付けて出力部76から信号処理制御符号化部62へ供給して、対応基地局へ送信する。各基地局から受信された割当ビーム、つまりビーム指示信号は信号処理制御復号化部57から入力部77で取込まれ、各基地局の受信ビーム指示信号から通信する基地局とビームを通信基地局決定部78で決定する。これらレベル検出部71、レプリカ信号生成部73、レベルテーブル作成部74、平均レベル計算部75、出力部76、入力部77、通信基地局決定部78での各動作を制御部79により順次行わせる。制御部79はアダプティブパターン制御装置56,64をそれぞれ初期化して無指向性パターンを形成するようにしたり、通信に用いると決定した基地局とそのビームに対し主ビームのパターンを向けるための初期設定なども行う。基地局番号ビーム番号記憶部72とレプリカ信号生成部73の代りに各パイロット信号と対応するレプリカ信号を予め記憶部に記憶しておいてもよい。レベルテーブルの作成のためのレベル検出などは並列的に処理できるように構成してもよい。
【0024】
なおこれらレベル検出から、通信に用いる基地局とビームの決定は、例えば図12に示すように、CPU81によりメモリ82内のプログラムを実行することにより受信アダプティブパターン制御装置56の出力を取込部83から取込み記憶部84に記憶し、記憶部72から基地局番号とビーム番号を取出しレプリカ信号を生成して記憶部84の取込んだ受信信号との相関をとって各基地局の各ビームごとの受信レベルを検出し、その受信レベルから各基地局ごとのレベルテーブルを作成し、更に全ビーム平均受信レベルを計算してm個のレベルテーブルを出力部85を通じて送信し、受信したビーム指示信号を入力部86から取込み、通信基地局のビームを決定し、またアダプティブパターン制御装置56,64に対する初期設定を制御部87を通じて行うなど、いわゆるソフトウェア処理によって行ってもよい。基地局におけるレベルテーブルの受信より、ビーム割当てを行ってビーム指示信号の送出までも同様にソフトウェア処理により行ってもよい。
【0025】
以上述べたように、この発明では基地局から移動局への下り伝送系のみで独立した動作をするため、アダプティブ動作は送信と受信で違うものを適用することができる。特に基地局から移動局への下り伝送では、このアルゴリズムを用いて、逆(上り)では従来からあるアルゴリズムを用いることが出来る。
なお、この実施形態では、信号品質表を受信レベルにより作成したが、これをSN比、誤り率などの他の受信品質を決める他の尺度を用いて作成しても良い。また図8に示したように通信の開始前に動作するのみでなく、待機中も適宜この動作を繰り返すことも、移動局が周辺にどの程度存在するかなどの状態を基地局で知る上で便利である。
【0026】
上述において移動局はアダプティブパターン制御を行わず、無指向性パターンを用いてもよい。またアダプティブパターン制御を行う場合に、ステップS12の通信中にステップS4に戻ることなく、始めに決定した基地局ビームを用いたままで、受信レベルが所定値以下になったら、ステップS3以後の処理を行ってもよい。移動局で基地局ごと全ビームの平均受信レベルを計算し、上位m個のレベルテーブルを送信したが、このような平均受信レベルの計算を行うことなく、例えばSL(スレッショルドレベル)以上のビームが受信された基地局については全てそのレベルテーブルを送信してもよい。また基地局では割当たビーム番号の干渉量Ivもビーム指示信号に含めて移動局へ送信したが、干渉量Ivは送信することなく、割当てたビーム番号のみを送信し、移動局では、受信した各ビーム指定信号のビーム番号中で移動局での受信レベルが一番高いものを通信に使用するようにしてもよい、なおこの発明はFDMA,TDMA,CDMAの何れに対しても適用でき、かつ移動局の周辺基地局が例えば同一周波数又は同一拡散符号を用いる場合でもよい。
【0027】
【発明の効果】
以上述べたようにこの発明によれば、受信レベルなどの数値データをある精度をもって全ての移動局から基地局へ伝送するのではなく、例えば単純な順位をつけた表と数桁の数字を伝送するのみで、適切な基地局のビーム選択ができ、また必要に応じて移動局の受信パターンが決定でき、必要に応じてこれら更新されることもできる。従って、基地局アンテナに例えばビーム幅数度程度のマルチビームアンテナを用い、かつ少ない移動局から基地局へ(上り)の伝送情報で適切な基地局ビームを得て、高速な基地局から移動局へ(下り)の情報伝送が出来る移動通信システムが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基地局にマルチビームアンテナを用いた移動通信シスステムの例を示す図。
【図2】アダプティブ動作時の放射パターン成形の様子を示し(a)は従来のピークとヌルを制御するもの、(b)はマルチビームアンテナでピークのみを制御する(切り替える)ものである。
【図3】(a)はアンテナの大きさとビーム幅の関係を示す図、(b)は開口面アンテナの開口面の大きさを示す図、(c)はアレイアンテナのアレイ面の大きさを示す図である。
【図4】この発明の実施形態における移動通信システムの構成を示す図。
【図5】各基地局の各ビームで送信される信号形式の例を示す図。
【図6】各移動局が内部で作成するレベルテーブル(表)の例を示す図。
【図7】(a)は基地局で受信した各移動局のレベルテーブルの例を示す図、(b)は基地局内で作成する干渉テーブルの例を示す図である。
【図8】移動局の動作手順の例を示す流れ図。
【図9】基地局の動作手順の例を示す流れ図。
【図10】基地局の装置の機能構成例を示す図。
【図11】移動局の装置の機能構成例を示す図。
【図12】移動局装置の他の機能構成の一方を示す図。
【図13】従来の放射パターン形状を時間的に変化させて行う移動通信システムの構成を示す図。

Claims (7)

  1. 基地局の放射パターン形状を時間的に変化させて移動局と通信を行う移動通信方法において、
    基地局はマルチビーム放射パターンを形成し、
    基地局はそのマルチビーム放射パターンの各ビームより伝送する情報にそのビーム識別信号を含め、
    移動局は受信した各ビーム識別信号を、その各ビーム受信時の信号品質の良いものの順番に並べた信号品質表を作成し、その表を上記情報として周辺基地局へ伝送し、
    各基地局は受信した各移動局からの信号品質表を用いて、その基地局の各ビームの各移動局での受信レベルに基づき、移動局全体として生じる干渉の程度を各ビームごとに定量化した干渉テーブルを作り、各移動局についてその受信信号品質表と干渉テーブルに基づいて上記通信に用いるビームを割当て、割当てたビーム識別信号とその干渉の程度を移動局へ送信し、
    移動局は各基地局から受信された割当ビーム識別信号と干渉の程度に基づいて、上記通信すべき基地局とビームの決定を行うことを特徴とする移動通信方法。
  2. 基地局の放射パターン形状を時間的に変化させて移動局と通信を行う移動通信方法において、
    基地局はマルチビーム放射パターンを形成し、
    基地局はそのマルチビーム放射パターンの各ビームより伝送する情報にそのビーム識別信号を含め、
    移動局は受信した各ビーム識別信号を、その各ビーム受信時の信号品質の良いものから1番、2番、・・・と順番に並べ、かつ所望の信号伝送のできる限界信号品質以上の信号の最老番(以下、SL順番という)を明示した信号品質表を作成し、その表を上記情報として周辺基地局へ伝送し、
    各基地局は受信した各移動局からの信号品質表を用いて、各品質表ごとにSL順番とSL順番以前の順番のあるビームとの順番の差の値をそれぞれ求め、このそれぞれ求めた値の総和をあるビームの干渉量とし、更にこの干渉量を上記各ビームごとに求めて干渉テーブルを作り、各移動局についてその受信信号品質表と干渉テーブルに基づいてSL順番以前の順番のビームの中で最も干渉量が少ないビームを上記通信に用いるビームとして割当て、割当てたビーム識別信号とその干渉を移動局へ送信し、
    移動局は各基地局から受信された割当ビーム識別信号と干渉に基づいて、上記通信すべき基地局とビームの決定を行うことを特徴とする移動通信方法。
  3. 請求項1又は2記載の移動通信方法において、
    上記信号品質表の作成、通信、上記ビームの割当て、その識別信号の送信、上記通信すべき基地局とビーム決定を繰返すことを特徴とする移動通信方法。
  4. 請求項1乃至3記載の移動通信方法において、
    基地局は移動局との通信状態に基づいて、通信に用いるビームを切り替える、または他基地局との通信に切り替えることを特徴とする移動通信方法。
  5. 請求項1乃至の何れかに記載の移動通信方法において、
    移動局は受信状態および、または基地局からの情報を判断して放射パターン形状を制御することを特徴とする移動通信方法。
  6. マルチビーム放射パターンを形成する手段と、
    各移動局から受信されたマルチビームの各ビームごとの受信信号品質の順にビーム識別信号が並べられた信号品質表を記憶する手段と、
    上記各移動局からの信号品質表から、その基地局の各ビームの各移動局での受信レベルに基づき、移動局全体として生じる干渉の程度を各ビームごとに定量化した干渉テーブルを作成する手段と、
    各移動局ごとにその通信可能なビーム中の干渉が少ないビームを通信用に上記信号品質表及び干渉表を参照して割当てる手段と、
    その割当てたビームの識別信号をその移動局へ送信する手段とを具備する移動通信の基地局装置。
  7. マルチビーム放射パターンを形成する手段と、
    各移動局から受信されたマルチビームの各ビームごとの受信信号品質の順にビーム識別信号が並べられ、かつSL順番が明示された信号品質表を記憶する手段と、
    上記各移動局からの信号品質表から、各品質表ごとにSL順番とSL順番以前の順番のあるビームとの順番の差の値をそれぞれ求め、このそれぞれ求めた値の総和をあるビームの干渉量とし、更にこの干渉量を上記各ビームごと求めて干渉テーブルを作成する手段と、
    各移動局ごとにSL順番以前の順番のビームの中で最も干渉量が少ないビームを通信用に上記信号品質表及び干渉テーブルを参照して割当てる手段と、
    その割当てたビームの識別信号をその移動局へ送信する手段とを具備する移動通信の基地局装置。
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