通例、測位システムにおける超音波はセンチメートル範囲の高精度と結び付けて考えられているが、外乱に対しては精度の範囲はかなり低く、ロバスト性も低いことが多い。そのため、超音波単独で用いられることはめったになく、他の技術と併用される。複合型のシステムの中でもっとも多いのが、無線周波数と併用するものである。そのようなシステムはこれまでいくつか文献に記載されてきた。
Active Batシステム(非特許文献1)は、天井に配した複数の超音波受信機を用いる。各携帯型タグは433MHzの無線チャンネルでポーリングされたあと、飛行時間測定に用いられる超音波パルスを発する。当該システムは最小で3つの参照ノードへの距離を求める必要があり、そのあと求めた距離から数センチの精度で位置を計算する。Cricketシステム(非特許文献2)は同様の精度を持つが、超音波の送信方向は逆である。当該システムの個々の携帯型タグは、無線周波数トリガーパルスに基づいて到着時刻を測定する超音波受信機である。測定結果はそれから無線周波数によって戻され、測位に用いられる。Dolphinシステムでは、各ノードは超音波および無線周波数受信機と、超音波および無線周波数受信機の双方を備えている。当該システムは、構築コストを下げるため、分散型アルゴリズムも備えている。非特許文献3において、約15センチの精度が報告された。
これらのシステムはどれも、超音波と無線周波数を組み合わせ、無線周波数に比べて超音波の移動時間が遅いことから飛行時間を推定する方法に基づいている。このようなシステムでは、見通しがよくなければならない。これが、こうしたシステムの第一の短所である。さらに、超音波飛行時間システムには別の、しばしばより深刻な欠点がある。精度を得るために、2、3の波長内で飛行時間を求めなければならない(40kHzで波長は8.5mm)。信号対雑音比にもよるが、そのような推定を行うシステムは数kHzのバンド幅を必要とし、このため背景の雑音に対し非常に敏感になる。こうした理由により、非特許文献4は、鍵がじゃらじゃら鳴っても「暴走する」ことのない純粋な音響追跡装置は設計できないと指摘している。非特許文献5におけるリンク・バジェットの分析は、なぜそうなのかを示している。最上の設計の超音波システムならば、「暴走する」ほどひどくはないかもしれず、単に作動しなくなるだけだろう。うまく設計された複合型システムならば、それから、測位のためのもう一方の技術に頼るかもしれない。これはとりわけ慣性センサに当てはまるが、無線周波数にも当てはまるかもしれない。原理的には超音波の出力を増やすこともできるが、そうすると、超音波に対する人間の曝露許容レベルに抵触することになる。次節を参照されたい。
このように、超音波の飛行時間に基づいた上記のシステムは、極めて高い位置精度が要求され、かつ範囲が短く脱落が生じてもよい用途では優秀である。しかし、より広い範囲と高い信頼性が要求される用途、たとえばビル全体で測位が求められるときは、他の方法を試みなければならない。
多くの用途では、センチメートルの範囲の精度は実際には要求されず、むしろより長い距離とより高いロバスト性が要求されることがわかっている。超音波が可聴音と共有する特徴は、それに対して通常の部屋やオフィスが十分に絶縁されているということである。うまく設計された建物の閉ざされた部屋で話すときのように、超音波は部屋の外では探知されない。これは、無線周波数にはない超音波独自の特徴である。
このことから、部屋レベルの精度で屋内を測位するのに用いられる超音波システムが生み出された。この測位は、閉じ込め測位とも呼びうる。非特許文献5を分析すると、このような測位は、時間遅延推定を必要としないため、システムをはるかにロバストにすることがわかる。その代わり、通信を確立し、識別情報を含む短いメッセージを転送する必要がある。これは、kHzのバンド幅よりむしろ、数十Hzのバンド幅で行われる。したがって、現実の背景雑音レベルに対してはるかに高い許容範囲を持つ。また、壁や床や天井が反射する性質を持つため、見通しのよさは必要ない。
超音波部屋レベル精度屋内測位システムのこの第一世代は、携帯型の超音波送信機を用いた(US特許7,535,796、2009年5月19日、US特許7,362,656、2008年4月22日、US特許7,352,652、2008年4月1日、US特許7,336,563、2008年2月16日。これらはすべて、参照によりその全体が本願に含められる)。そのようなシステムは、たとえば資産や人員を追跡するのに有用であることがわかっている。しかし、それらのシステムにはいくつかの欠点があり、それがこれらのシステムの利用を制限している。そうした欠点のうち第一は、更新率が低いことである。このため、短い時間枠で室内のいくつかの物体の位置を探ろうとする場合、見失う物が出る可能性がかなり高い。
非特許文献6、7の超音波屋内測位システムと我々のUS特許との主な違いの一つは、超音波の方向が逆なので、人が超音波送信機を装着する必要がないということである。このため、人と高レベル超音波送信機との距離を数メートルに増やすことができる。超音波曝露限度の数値についてはっきりとした合意はないものの、我々が提案したシステムは、曝露に関して、よりALARA(As Low as Reasonably Achievable)(無理なく達成できる範囲でできる限り低く)原則に従っている。
空中の超音波の安全性についての国際的な合意はないように思われる(非特許文献8)。また、超音波曝露レベルについては、非特許文献9、10、11のように複数のガイドラインがある。後者は、合衆国労働省職業安全衛生局の非特許文献12の根拠となっている。
1984年の非特許文献9およびカナダの1991年の非特許文献10の勧告では、110dB SPLを、40kHzを中心とする1/3オクターブバンドでの仕事上の曝露の最大レベルとしている。それに加えて、非特許文献9は、仕事上の曝露が絶え間ないものであれば、曝露の最大レベルの増加を認めている。労働者の曝露が一日に一時間以下ならば、非特許文献9は119dB SPLまでの増加を認めている。この数値はカナダの限界値では認められておらず、自覚的な影響がほとんどすぐに生じるとしている。公衆の曝露に関しては、もっとも制限の厳しいガイドラインは非特許文献9で、限界値を100dB SPLまで下げている。
一方、もっともゆるいガイドラインはUSのガイドライン(非特許文献11)で、115dB SPLのレベルまで認めている。興味深いことに、近年、非特許文献11はまた、超音波が人体と結び付く可能性がないときは、30dBの増加を認めている。勧告(非特許文献9、10)は、労働者が耳保護器をしているときのみ、前の段落で述べたレベルを超えることを認めている。しかし、合衆国の145dBの限界値は一般には受け入れられていない。一例として、非特許文献13は曝露限界値についての概観で、同じ限界値を掲げる非特許文献11の1998年版についてコメントする中で、ACGIHは曝露許容限界値を有害になりかねないところまで押しやっていると述べている。
Walrus(非特許文献13)のように可聴周波数に近い周波数で作動するシステムは、さらに厳しい出力レベル限界値に該当することにも留意すべきである。ここでもまた、合衆国の限界値がもっともゆるく、最大レベルは、20kHzで105dB(非特許文献11)に対し、40kHzで115(おそらく+30)dBである。非特許文献9、10の仕事上の限界値は110dBから75dBに減らされ、非特許文献9の公衆の限界値は100dBよりむしろ70dBである。このため、最悪の場合でも、限界値は20kHzのときの方が40kHzのときの方より30から35dB低い。空中での減衰量の粗二乗周波数依存性がこれをある程度まで補う。しかし、上記範囲は、騒がしい環境では、保証された動作を行うにはあまりに制限されている。
本発明は、上記の欠点を克服するため、据置型超音波送信機を用いて、どのように超音波(US)を無線周波数(RF)と組み合わせるかという課題に応えるものである。本発明は、新しい種類の複合型システムを示す。本発明のシステムは、時間遅延推定に基づく複合型システムのように信頼性が低いことがなく、アクティブRFIDシステムとは対照的に、事実上100%の信頼性の部屋レベル精度を誇る。本発明のシステムはまた、RFシステム特有の高い更新率と高いキャパシティも持つ。本発明のさらに好ましい実施形態では、信号レベルとドップラー偏移を測定できる携帯型超音波受信機、たとえば本願発明者の以前の特許出願(「高キャパシティの超音波領域測位システム」、PCT出願WO/2009/062956、参照によりその全体が本願に含まれる)で開示したものが、方向の調整が可能な細い超音波ビームと併用されて、部屋レベルよりもはるかに優れた精度の信頼性の高い測位が行われる。
本発明は、他の超音波測位システムとは、少なくとも2つの点、ロバスト性と安全性で異なる。ロバスト性についていえば、ほとんどすべての超音波測位システムは、なんらかの時間遅延推定に基づいている。こうした時間遅延推定は雑音に非常に影響を受けやすく、経験によれば、これらのシステムは実生活環境では故障しやすい。したがって、本研究の目的は、時間遅延推定を用いずに最大の測位精度を達成することである。これは、測位を行うため、信号強度やドップラー偏移のような他のパラメータを最適なかたちで用いる必要があるということである。安全性についていえば、人々が超音波送信機を身につける多くのシステムでは、超音波曝露レベルが勧告された曝露限界値を超える可能性がある。そのため、本発明では、代わりに超音波受信機が身につけられ、送信機は人々から安全な距離だけ離されるようにしている。
同時係属出願であるPCT出願WO/2009/062956には、部屋レベルより優れた位置精度を実現するシステムが記載されている。記載されたシステムは、データを探知し振幅(受信信号強度指標、RSSI)とドップラー偏移を測定する携帯型超音波受信機を用いている。振幅とドップラー偏移は同じ小さなバンド幅で測定でき、したがってロバストな方法で測定できる。US受信機は追跡するものに取り付けられ、超音波チャンネルを通してIDデータを受け取り、超音波RSSIとドップラー偏移を求める。高キャパシティは、タグがこのデータを据置型受信機に送るのに用いるRFチャンネルのおかげである。本発明のいくつかの実施形態では、これらの特徴を新しい送信機と組み合わせ、ベッドレベルあるいは約1×1メートルの精度を実現している。
上記したように、これまで文献に記載されてきたシステムは、人間を不適切なdBレベルに曝露する可能性がある。本発明のシステムの好ましい実施形態では、携帯型ユニットは超音波受信機のみを備えており、人間が曝露されるdBレベルは、装着型送信機を備えたシステムより低い。超音波への曝露がもたらす影響が不確かなので、本発明のシステムはよりALARA(As Low as Reasonably Achievable)(無理なく達成できる範囲でできる限り低く)原則に従っている。いくつかの実施形態では、送信機から人への距離は最短でも1メートルなので、最大曝露レベルは、非特許文献5で分析されたような、送信機に対して110dB SPLである。これは、現在のガイドラインで示された仕事上の曝露限界値以下である。いくつかの実施形態では、送信機は典型的には、別個の領域、たとえば部屋の天井に備えられるため、より長い距離が確保される。もし最小距離が3mならば、最大曝露量は20log(1/3)あるいは約10dB低くなる、つまり100dB SPLとなる。これは非特許文献9の公衆曝露限界値である。これはすべての勧告の中でもっとも控えめな値であり、公衆が絶えず曝露されても問題ないと考えられている数値である。部屋が小さいほど出力レベルも減るので、たとえ3m未満の距離であっても、100dB SPL未満の曝露レベルを保証することができる。
本発明のシステムは、以下のようなロバスト性の特徴を備えていることが好ましい。いくつかの実施形態では、本発明の通信システムは、あらゆる種類の背景雑音および室内残響音の中でも動作することが好ましい。時間遅延推定に基づく測位システムは実生活環境では故障しやすい。いくつかの実施形態では、本発明のシステムは、時間遅延推定なしに、最大の測位精度を提供する。第二の特徴は安全性である。人々が超音波送信機を身につけるいくつかのシステムでは、超音波曝露レベルが勧告された曝露限界値を超える可能性がある。本発明のいくつかの実施形態では、受信機が身につけられるので、送信機は人々から安全な距離だけ離れている。
いくつかの好ましい実施形態では、本発明のシステムは、部屋のような別個の領域一ヵ所につき一個または複数個の据置型配列型超音波送信機を備えている。上記配列は一次元でも二次元でもよい。一次元配列は通例、水平面に置かれ、最小で2個の素子から構成されうる。そのような配列は、どの次元においても、ラムダ/D(ラジアン)によって与えられる適切な照射角度があることは周知である。ラムダは超音波の波長、Dは隙間(すなわち、配列の一端から他端までの範囲)である。本発明は、いかなる特定の配列型超音波送信機の使用にも限定されない。非限定的な例として、図1、4、5、6はそれぞれ異なるタイプの配列型超音波送信機を示す。図1は、4個の素子105を備えた、本発明の一次元配列100を示す。図4は、7個の素子405を備えた、本発明の二次元配列400を示す。図5は、12個の素子505を備えた、本発明の二次元配列500を示す。図6は、垂直面にホーン610(断面)を備え、3個の素子を備えた、一次元配列600を示す。これらの構成はすべて、素子の配列からのビームの方向を調整する必要がある。これは、本願の技術分野で知られているように、配列の個々の素子からの送信信号のあいだに相対的な遅れを設けることで行われる。これは、音響および電波探知配列システムにおいて標準的に行われていることである。
いくつかの好ましい実施形態では、配列型超音波送信機は、データを送信し、そのビームを配列面内方向に向けるよう構成されている。このように、約ラムダ/Dラジアン幅の複数の区域が形成される。図2は、配列型超音波送信機210が配置されている別個の領域205で実施されている本発明のシステム200の模式図である。一例として、図2の配列型超音波送信機210は、超音波を、点線で表示された5つの別個の区域220、221、222、223、224へ照射あるいは向ける。いくつかの実施形態では、配列型超音波送信機210は、まずそのデータを区域220へ、次いで区域211へという具合に送り、このパターンを絶えず繰り返す。他の実施形態では、配列型超音波送信機は、1つの区域につき1本のビームを送り、一時停止し、それから各区域ごとに送信を繰り返す。いくつかの実施形態では、送信されたデータは、1つの部屋識別コード(任意)と複数の区域識別コードとからなっている。いくつかの実施形態では、上記配列は、照射する部屋全体をスキャンし、各区域ごとに区域ID情報を変更する。
さらに図2を参照すると、いくつかの実施形態では、上記システムではさらに一個または複数個の携帯型タグ230と231とを備える。実施形態の一代表例では、携帯型タグ230と241とはベッド240と241上の患者(図示せず)と結び付けられている。いくつかの実施形態では、携帯型タグ(たとえば230と231)は、無線周波数信号を送信する無線周波数送信機と、第一配列型超音波送信機と通信するように構成されている超音波受信機とを備えている。さらに好ましい実施形態では、携帯型タグは独自の識別コードと結び付けられており、当該識別コードは、無線周波数送信機によって無線周波数信号の一部として送信可能である。実施形態の一代表例では、図1にあるような単一の一次元配列が、図2にあるようなさまざまな区域を照射するのに用いられる。携帯型タグ(たとえば、230と231)の超音波受信機は、区域識別コードを受信し、信号強度を測定する。もっとも単純な例では、携帯型タグは、照射された区域にあるときのみデータを受信する。このように、携帯型タグのある区域が決定されうる。他の例では、携帯型タグの超音波受信機は、他の区域が照射されているときにもデータを受信する。この場合、データが受信されているもっとも強い区域をRSSIを用いて決定し、このようにして、携帯型タグが位置している区域を決定する。いくつかの実施形態では、携帯型タグはさらに無線受信機を備える。無線受信機は携帯型タグをプログラムし、携帯型タグ上の光装置または他の信号装置を起動させ、必要に応じて携帯型タグを起動あるいは”目覚め”させ、あるいは中央処理装置(図示せず)と通信するのに用いられる。
いくつかの好ましい実施形態では、配列型超音波送信機210、携帯型タグ230および231は処理装置(図示せず)と通信する。たとえば、いくつかの実施形態では、処理装置は無線受信機と結び付いており、携帯型タグおよび/または配列型超音波送信機は無線周波数接続によって上記処理装置と通信する。上記処理装置は配列型超音波送信機および/または携帯型タグから受信したデータ(たとえば、一または複数の部屋識別コード、区域識別コード、携帯型タグ識別コード)を処理して、領域および/または区域内の携帯型タグの位置を測定する。上記処理装置は、ユーザに位置データへのアクセスを可能にするユーザインターフェイスを備えていることが好ましい。このユーザインターフェイスは、すべての領域の概観あるいはすべての領域のうちいくつかを選択したものを提供するグラフィック出力を用いるとともに/用いるかまたは、特定の人または物の位置への要求のかたちをとったユーザ入力を用いる。この要求に対して、上記処理装置はテキスト出力および/または音声出力で応えてもよい。上記処理装置は、より大きなシステムでは、会社の社内コンピュータネットワークのようなネットワークに接続され、ネットワークのユーザが人または物を追跡するために領域位置情報にアクセスできるようにしてもよい。このように、本発明のシステムは、たとえば複数のベッドがある病室でどのベッドに患者がいるかといったことを判断する際に適した精度を実現する(図2参照)。
図2の実施形態を拡張して、それぞれに1個の配列型超音波送信機を結び付けた複数の別個の領域を含むようにしてもよいことは理解されるだろう。同様に、配列型超音波送信機の異なる構成を用いて、複数の別個の領域に複数の区域、たとえば2、3、4、5、6、7、8、9、10または50から50、5から40、5から30、5から20、あるいは5から15の区域を作り出してもよい。
より好ましい実施形態では、本発明のシステムは、別個の領域ごとに2つまたはそれ以上の配列型超音波送信機を用いる。2個の配列型超音波送信機(たとえば、一次元配列型超音波送信機)を用いるシステムは、より高い精度を提供すると考えられる。いくつかの実施形態では、複数の配列型超音波送信機が、1つの別個の領域内の異なる位置にあって、複数の配列型超音波送信機によって送信されるビームが互いに角度をもって交差するようになっている。一例として、複数の配列型超音波送信機を、垂直に交わる壁にそれぞれ配置してもよい。いくつかの実施形態では、複数の配列型超音波送信機はそれぞれの区域についての情報を順々に送信し、最初に第一の送信機がその区域を対象とし、続いて第二の配列がその区域をスキャンしというようにしていく。このようにして、交差する区域が測定され、より高い精度が実現できる。いくつかの実施形態では、対象の精度は、たとえば1×1メートルにまで絞ることができる。そのような実施形態の一つを図3に示す。図3は、2個の一次元配列型超音波送信機310と311が位置している別個の領域305で採用された本発明のシステム300の模式図である。配列型超音波送信機310と311は、超音波を、点線で表示された複数の別個の区域へ照射あるいは向ける。いくつかの実施形態では、送信されたデータは、1つの部屋識別コード(任意)と複数の区域識別コードから成っている。いくつかの実施形態では、上記配列は、照射する部屋全体をスキャンし、各区域ごとに区域ID情報を変更する。このシステムはさらに、図2を参照しながら上記した諸要素、携帯型タグ330と331、処理装置、無線周波数信号受信機および送信機を備えている。
他の好ましい実施形態では、位置探知の精度を上げるのに、別の方法が用いられる。これらの実施形態では、1個の配列型超音波送信機が別個の領域の頂部、たとえば部屋の天井に置かれている。いくつかの実施形態では、配列型超音波送信機は二次元配列(たとえば図5に示したように)である。通常、x、y平面上の位置についての情報が求められ、床上の高さについての情報はさほど関心を引くものではない(z)ので、この配列は有利である。天井に設置した配列は、このようにして、上記した2個の一次元配列を用いる構成と同じ精度を実現する。
いくつかの実施形態では、携帯型タグの超音波受信機はドップラー偏移測定能力を持つ。これらの実施形態では、この能力を用いて、超音波ビームに沿った速度要素、受信機と超音波送信機とのあいだのベクトルに沿った要素を求めてもよい。1個の一次元配列は、この方向に沿った速度要素を与えるのみである。しかし、一次元配列を2個用いれば、たとえば上記したような垂直に交わる壁の構成において、2つの方向のベクトル要素を与えることができる。これだけのデータがあれば、速度とその方向、すなわち、図7の模式図に記したような2つの方向における完全速度ベクトルを決定するのに十分である。図7を参照すると、そのようなシステム700は、たとえば、2個の一次元配列型超音波送信機710と711、携帯型タグ720を、上記した他の要素(たとえば、処理装置、無線周波数受信機など)とともに備えている。複数の矢730は動きベクトルを表す。いくつかの実施形態では、たとえば天井に第三の送信機を追加することにより、完全三次元速度ベクトルを決定できる。天井に設けた配列が1つあるだけでは、ドップラー偏移の探知には都合がよくない。なぜならば、対象の主な動きはたいていx、y方向に生じる、つまり、天井に設けた配列からのビームと垂直であり、そのため、天井に設けた配列にはドップラー偏移はほとんど探知されないと予期されるからである。
競合する技術としては、加速度メーターに基づくものがあるが、しかしこの技術は、比較できるほどの結果を出すためには、タグの向きを固定するか、タグの向きが知られていることが必要である。携帯型タグにとって、向きを制御したり求めたりするのは難しいことが多い。実際には、携帯型タグの向きは常時変わりうる。原理的には、携帯型タグの向きは内蔵のコンパスを用いることで求められるが、金属構造物のそばでは精度が高いことはめったにないため、それらの精度は屋内ではあまりよくないことが多い。
いくつかの実施形態では、特に、部屋が大きいか、あるいは部屋の構造がとりわけ難しく、たとえばビームが家具または他の小部屋による分割によって部分的にさえぎられて反射した信号が直接届く信号よりも強い振幅で受信機に届く場合、より多くの配列型超音波送信機を、壁設置型であれ天井設置型であれ、本発明のシステムに加えてもよい。いくつかの実施形態では、追加の配列はむしろ冗長性のために加えられ、基地局での処理において、配列から届くデータの中で、もっとも他から逸脱しているデータを除外する方法が用いられる。
いくつかの実施形態では、超音波ビームの範囲を、天井または床における反射を避けるために、特に垂直面において制限することが望ましい。天井または床における反射はRSSIおよびドップラー測定を不明瞭にしてしまうかもしれない。いくつかの実施形態では、配置型超音波送信機を一次元から二次元に拡張して、垂直の次元にも素子を備えてもよい。このようにして、垂直方向にも複数の区域が形成されて、天井と床からの反射の問題を回避することができる。図4は、7つの素子を備えた適切な二次元配列型超音波送信機の図である。一般的に、水平軸にN個の素子を、垂直軸にM個の素子を並べて(たとえば、N=4、N=3である図5のように)、その他多くの構成が可能なことが理解される。他の実施形態では、垂直の次元に配置されたホーンを用いて、ビームが垂直面に拡散することを制限する(たとえば、図6に示すように)。
いくつかの実施形態では、RSSIに基づく測位の角精度のさらなる微調整を、角度の点で重なる複数のビームを送ることで行う。これらの実施形態では、それぞれわずかに異なる角度のビームの振幅を測定する。さらに好ましい実施形態では、補間法を用いて、ビームとビームの間隔よりも高い精度で上記角度を求める。この方法に対する制約は、ビームの数を増やすほど、希望する区域をカバーするのに時間がかかることである。補間法は、位置取得にかかる時間と位置精度とを交換するのを可能にする。
上記の明細書において言及されたすべての公報と特許は、参照によってここに含まれる。本願発明の記載された方法及びシステムのさまざまな修正及び変更は、本願発明の範囲と精神から逸れることなしに当業者には明らかであろう。本願発明は特定の好ましい実施形態とともに記載されたけれども、請求項で述べられる発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるものではないことを理解されたい。実際、本発明を実施するための記載された様態のさまざまな修正のうち、関連分野の当業者に明らかであるものも、以下の請求項の範囲に含まれるものとする。