以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す各実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及び装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は下記のものに限定されるわけではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。また、以下に示す実施の形態では自動車運搬船を例に挙げて説明するが、本発明の適用対象はこれらに限定されるわけではなく、自動車運搬船以外の船舶を適用対象とすることも可能である。
<位置管理システムの構成>
図1は、本実施の形態に係る位置管理システムの構成を示す模式図である。図1に示すように、位置管理システム100は、携帯型超音波送信機200と、超音波受信機300と、中継器400と、位置管理装置500とを含んでいる。また、位置管理装置500は、判定装置510と、表示装置520とを含んでいる。
携帯型超音波送信機200は、船舶内の人員(船員、作業員、乗客等)が携帯する。複数の超音波受信機300は、船舶内の複数箇所のそれぞれに設置され、周囲にある携帯型超音波送信機200が送信する超音波信号を受信する。複数の中継器400もまた、船舶内の複数箇所のそれぞれに設置される。超音波受信機300及び中継器400はそれぞれ無線通信機でもあり、互いに無線通信を行うことができる。また、中継器400は、超音波受信機としての機能も有する。中継器400及び位置管理装置500は有線ネットワーク600により接続されており、互いに通信を行うことができる。
図2は、携帯型超音波送信機200の構成を示すブロック図である。携帯型超音波送信機200は、圧電トランスデューサからなる超音波発信器201と、信号処理回路202と、マイクロコントローラからなる制御部203と、慣性センサ204と、バッテリ205とを有する。慣性センサ204は加速度を検出し、その出力信号を制御部203に与える。バッテリ205は、制御部203に駆動電力を供給する。制御部203は記憶領域を備えており、携帯型超音波送信機200に各別に割り当てられた識別情報(以下、「第1識別情報」という)を記憶する。かかる制御部203は、超音波発信器201に超音波信号を送信させるための電気信号を送信する。この電気信号には第1識別情報が含まれる。制御部203から送信された電気信号は信号処理回路202により処理されて、超音波発信器201に与えられる。超音波発信器201は、電気信号により駆動され、第1識別情報を含む超音波信号を送信する。
図3は、超音波受信機300の構成を示すブロック図である。超音波受信機300は、圧電トランスデューサからなる超音波センサ301と、信号処理回路302と、無線通信部303と、アンテナ304と、マイクロコントローラである制御部305とを有する。超音波センサ301は、超音波信号を検出し、電気信号に変換して出力する。信号処理回路302は、超音波センサ301から出力される電気信号を処理して制御部305に出力する。無線通信部303は、IEEE802.15.4(Zigbee)により規格化される無線通信を可能とする通信モジュールであり、無線通信用のアンテナ304を有している。制御部305は、無線通信部303による無線通信を制御する。また、制御部305は記憶領域を有しており、超音波受信機300に各別に割り当てられた識別情報(以下、「第2識別情報」という)を記憶する。この第2識別情報は、例えば無線通信部303のMACアドレスである。
超音波受信機300は、第1超音波受信機310、第2超音波受信機320、及び第3超音波受信機330の3種類に分類される。第1超音波受信機310は対塩害及び防水処理が施されたものであり、第2超音波受信機320は対塩害及び防水処理が施されていないものであり、第3超音波受信機330は防水処理が施されたものである。図4Aは、第1及び第3超音波受信機310、330の外観を示す斜視図であり、図4Bは、第2超音波受信機320の外観を示す斜視図である。具体的には、図4Bに示すように、第2超音波受信機320は上述した各構成要素がプラスチック製の筐体321で覆われた構造のものである。図4Aに示すように、第1超音波受信機310は第2超音波受信機320をステンレス鋼板製の箱のカバー311に収容したものであり、また、第3超音波受信機330は、第2超音波受信機320を鋼板製の箱のカバー331に収容したものである。カバー311,331は、水分及び塵埃の侵入を防止するように密閉構造となっており、且つ、超音波信号及び無線信号を透過する程度の厚さを有している。
図5は、中継器400の構成を示すブロック図である。中継器400は、無線通信部401と、アンテナ402と、有線通信部403と、圧電トランスデューサからなる超音波センサ404と、信号処理回路405と、マイクロコントローラである制御部406とを有する。無線通信部401は、上記の超音波受信機300と同一の無線通信規格による無線通信を可能とする通信モジュールであり、無線通信用のアンテナ402を有している。有線通信部403は、有線ネットワーク600を介して、当該有線ネットワーク600に接続された他の機器(具体的には、判定装置510)との間で通信を行うことができる。超音波センサ404及び信号処理回路405のそれぞれは、上述した超音波受信機300の超音波センサ301及び信号処理回路302と同様の構成であるので、説明を省略する。制御部406は、無線通信部401による無線通信及び有線通信部403による有線通信を制御する。また、制御部406は記憶領域を有しており、超音波受信機としての中継器400に各別に割り当てられた第2識別情報を記憶する。また、中継器400は、対塩害及び防水処理が施されておらず、第2超音波受信機320として機能する。
次に、位置管理装置500の構成について説明する。図6は、位置管理装置500の構成を示すブロック図である。位置管理装置500は、コンピュータによって実現される。図6に示すように、位置管理装置500は、判定装置510と、表示装置520と、入力装置530とを備えている。判定装置510は、CPU511、ROM512、RAM513、ハードディスク514、入出力インタフェース515、通信インタフェース516、及び映像出力インタフェース517を備えており、CPU511、ROM512、RAM513、ハードディスク514、入出力インタフェース515、通信インタフェース516、及び映像出力インタフェース517は、バスによって接続されている。
CPU511は、RAM513にロードされたコンピュータプログラムを実行する。そして、位置管理用のコンピュータプログラムである位置管理プログラム550をCPU511が実行することにより、コンピュータが位置管理装置500として機能する。
ROM512には、CPU511に実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。RAM513は、ハードディスク514に記録されている位置管理プログラム550の読み出しに用いられる。また、RAM513は、CPU511がコンピュータプログラムを実行するときに、CPU511の作業領域として利用される。
ハードディスク514は、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU514に実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。位置管理プログラム550も、このハードディスク514にインストールされている。また、ハードディスク514には、後述する受信機情報データベース(受信機情報DB)560、領域属性データベース(領域属性DB)570、及び機材情報データベース(機材情報DB)580が設けられている。
入出力インタフェース515には、キーボード及びマウスからなる入力装置530が接続されている。通信インタフェース516は、有線ネットワーク600を介して、当該有線ネットワーク600に接続された他の機器(具体的には、中継器400)との間で通信を行うことができる。映像出力インタフェース517は、LCDまたはCRT等で構成された表示装置520に接続されており、CPU511から与えられた映像データに応じた映像信号を表示装置520に出力するようになっている。表示装置520は、入力された映像信号にしたがって、情報を表示する。
<超音波受信機300,中継器400,位置管理装置500の配置>
超音波受信機300、中継器400、及び位置管理装置500のそれぞれは、船舶内に設置される。以下、これらの船舶内での配置について詳細に説明する。
位置管理システム100が設置される船舶は、階層状に複数のフロアが設けられたものであり、各フロアは階段によって接続されている。かかる船舶は、自動車運搬船であり、人員の居住室を有するフロア(以下、「居住フロア」という)と、操舵室を有するフロア(以下、「ナビゲーションフロア」という)と、運搬対象の自動車を保管するフロア(以下、「カーフロア」という)とを含んでいる。また、居住フロア及びナビゲーションフロアは、ドアを介して外部デッキと繋がっている。本実施の形態に係る位置管理システム100は、かかる船舶内における人員の位置を、船舶内を分割する複数の領域毎に管理する。本実施の形態における人員の管理対象の領域は、各フロア及び外部デッキである。
図7は居住フロア及び外部デッキを示す平面図である。図7に示すように、船舶10の居住フロア20は、人員が居住する複数の部屋21を含んでいる。各部屋21は通路22に面しており、部屋毎にドア23が設けられている。また、居住フロア20と外部デッキ30とはドア24a〜24jを介して繋がっている。居住フロア20及び外部デッキ30のそれぞれは領域であり、これらを繋ぐドア24a〜24jは領域の出入口である。
図7に示すように、ドア24a〜24fは、通路22の終端にそれぞれ設けられており、居住フロア20の通路22と外部デッキ30とを繋いでいる。ドア24aの居住フロア20側には第2超音波受信機320aが設けられ、ドア24aの外部デッキ30側には第1超音波受信機310aが設けられている。さらに詳細には、ドア24aの近傍の通路22の壁面、天井等に第2超音波受信機320aが設置され、ドア24aの近傍の外壁面等に第1超音波受信機310aが設置されている。同様に、ドア24b〜24fの居住フロア20側には第2超音波受信機320b〜320fが、ドア24b〜24fの外部デッキ30側には第1超音波受信機310b〜310fが設けられる。つまり、居住フロア20は壁、床及び天井によって閉塞され、且つ人員が居住する居住領域であり、かかる居住領域には対塩害及び防水処理が施されていない第2超音波受信機320が設置される。また、外部デッキ30は、外部に開放された開放領域であり、かかる開放領域には対塩害及び防水処理が施された第1超音波受信機310が設置される。
上述したように、ドア24a〜24fは、居住フロア20と外部デッキ30とを繋いでいる。このため、ドア24a〜24fは、領域としての居住フロア20と外部デッキ30とを繋ぐ出入口である。本実施の形態では、かかる出入口であるドア24a〜24fの居住フロア20側に第2超音波受信機320a〜320fが、ドア24a〜24fの外部デッキ30側に第1超音波受信機310a〜310fが設置されている。本実施の形態に係る位置管理装置500は、第1超音波受信機310a〜310f及び第2超音波受信機320a〜320fの超音波信号の受信の順序に基づいて、携帯型超音波送信機200が外部デッキ30から居住フロア20に移動したか、居住フロア20から外部デッキ30に移動したかを推定する。つまり、第2超音波受信機320a〜320fが先に超音波信号を受信し、第1超音波受信機310a〜310fが後に超音波信号を受信した場合、ドア24a〜24fを通じて居住フロア20側から外部デッキ30側へと携帯型超音波送信機200が移動したと推定できる。このため、この場合には、携帯型超音波送信機200が外部デッキ30に存在すると位置管理装置500が判定する。他方、第1超音波受信機310a〜310fが先に超音波信号を受信し、第2超音波受信機320a〜320fが後に超音波信号を受信した場合、ドア24a〜24fを通じて居住フロア20側から外部デッキ30側へと携帯型超音波送信機200が移動したと推定できる。このため、この場合には、携帯型超音波送信機200が外部デッキ30に存在すると位置管理装置500が判定する。
また、ドア24g〜24jのそれぞれは、居住フロア20の部屋と外部デッキ30とを繋いでいる。このうち、ドア24g,24hの外部デッキ30側には第1超音波受信機310g,310hがそれぞれ設けられている。ドア24i,24jは、それぞれドア24c,24dと位置が近いため、外部デッキ30側に設けられた第1超音波受信機310c,310dをドア24c,24dと共用する。
また、居住フロア20の特定の部屋21gは、立入制限区域とされる。例えば、部屋21gは、備品類の保管部屋、食料品を貯蔵する冷蔵室等である。この部屋21gには第2超音波受信機320gが設置される。また、この部屋21gに保管された備品には、携帯型超音波送信機200aが取り付けられている。
居住フロア20の通路22は、最も船尾側の部屋の付近に設けられたドア24kを介してさらに船尾側に延びており、船尾左舷側に設けられた階段50a及び煙突51に繋がっている。階段50a及び煙突51のそれぞれは壁によって仕切られた空間内に設けられており、これらの空間はそれぞれドア24m,24nによって通路22に接続されている。階段50aは居住フロア20とカーフロア40とを繋いでおり、ドア24mは居住フロア20の出入口である。通路22のドア24kの船尾側部分には第2超音波受信機320kが設けられている。また、ドア24m,24nそれぞれの通路22側部分(つまり、居住フロア20側部分)には第2超音波受信機320m,nが設けられている。
また、図7に示すように、外部デッキ30の船首左舷側及び右舷側のそれぞれには、階段50b及び50cが設けられており、船尾左舷側の階段50aよりもさらに船尾側には階段50dが、船尾右舷側には階段50eが設けられている。かかる階段50b〜50eのそれぞれは外部デッキ30と下層のカーフロアとを繋いでいる。階段50b〜50eのそれぞれは壁によって仕切られた空間内に設けられており、これらの空間はそれぞれドア24o〜24rによって外部デッキ30に接続されている。ドア24o〜24rの外部デッキ30側部分には、第1超音波受信機310o〜310rが設けられている。
居住フロア20の通路22の途中の数カ所には、中継器400a〜400cが設置されている。また、ドア24m,24nそれぞれの階段50a側及び煙突51側には中継器400d,400eが、ドア24o〜24rそれぞれの階段50b〜50e側には中継器400f〜400iが設けられている。中継器400aは、第1超音波受信機310a,310b及び第2超音波受信機320a,320bとの間で無線通信を行う。同様に、中継器400bは第1超音波受信機310c,310d,310g,310h及び第2超音波受信機320c,320dとの間で無線通信を行い、中継器400cは第1超音波受信機310e,310f及び第2超音波受信機320e,320f,320g,320kとの間で無線通信を行い、中継器400dは第2超音波受信機320mとの間で無線通信を行い、中継器400eは第2超音波受信機320nとの間で無線通信を行い、中継器400f〜400iのそれぞれは第1超音波受信機310o〜310rのそれぞれとの間で無線通信を行う。
上述したように、階段50aは、居住フロア20と下層のカーフロア40とを繋いでいる。このため、階段50aに設けられたドア24mは、領域としての居住フロア20への出入口である。本実施の形態では、かかる領域の出入口であるドア24mの通路22側(つまり、居住フロア20側)に第2超音波受信機320mが、ドア24mの階段50a側に第2超音波受信機としての機能を有する中継器400dが設置されている。本実施の形態に係る位置管理装置500は、上記のドア24a〜24fの場合と同様にして、第2超音波受信機320m及び中継器400dの超音波信号の受信の順序に基づいて、携帯型超音波送信機200が階段50aから居住フロア20に移動したか、居住フロア20から階段50aに移動したかを推定する。
また、階段50b〜50eは、外部デッキ30と下層のカーフロア40とを繋いでいる。このため、階段50b〜50eに設けられたドア24o〜24rは、領域としての外部デッキ30の出入口である。本実施の形態では、かかる領域の出入口であるドア24o〜24rの外部デッキ30側に第2超音波受信機320o〜320rが、ドア24o〜24rの階段50b〜50e側に第2超音波受信機としての機能を有する中継器400f〜400iが設置されている。本実施の形態に係る位置管理装置500は、上記のドア24mの場合と同様にして、第2超音波受信機320o〜320r及び中継器400f〜400iの超音波信号の受信の順序に基づいて、携帯型超音波送信機200が階段50b〜50eから外部デッキ30に移動したか、外部デッキ30から階段50b〜50eに移動したかを推定する。
図8は、1つのカーフロアを示す平面図である。船舶10のカーフロア40は、複数の自動車が保管されるフロアである。かかるカーフロア40は船舶10内の1つの領域であり、他の領域(居住フロア20、外部デッキ30、他のカーフロア40)と階段50a〜50eによって繋がっている。つまり、カーフロア40における階段50a〜50eの出入口(ドア41a〜41e)は、領域の出入口である。
カーフロア40には、船首左舷側に階段50bが、船首右舷側に階段50cが、船尾左舷側に階段50a,50dが、船尾右舷側に階段50eが設けられている。階段50a〜50eのそれぞれは壁によって仕切られた空間内に設けられており、これらの空間はそれぞれドア41a〜41eによってカーフロア40に接続されている。ドア41a〜41eのそれぞれのカーフロア40側部分には、第3超音波受信機330a〜330eが設けられている。即ち、カーフロア40は壁、床及び天井によって閉塞され、且つ人員が居住しない領域であり、かかる領域には防水処理が施された第3超音波受信機330が設置される。
ドア41a〜41eそれぞれの階段50a〜50e側部分には中継器400j〜400nが設けられている。中継器400j〜400nのそれぞれは第3超音波受信機330a〜330eのそれぞれとの間で無線通信を行う。
階段50a〜50eは、カーフロア40と、下層フロア(カーフロア45)及び上層フロア(居住フロア20又は外部デッキ30)とを繋いでいる。このため、階段50a〜50eに設けられたドア41a〜41eは、領域としてのカーフロア40への出入口である。本実施の形態では、かかる領域への出入口であるドア41a〜41eのカーフロア40側に第3超音波受信機330a〜330eが、ドア41a〜41eの階段50a〜50e側に第2超音波受信機としての機能を有する中継器400j〜400nが設置されている。本実施の形態に係る位置管理装置500は、上記のドア24o〜24rの場合と同様にして、第3超音波受信機330a〜330e及び中継器400j〜400nの超音波信号の受信の順序に基づいて、携帯型超音波送信機200が階段50a〜50eからカーフロア40に移動したか、カーフロア40から階段50a〜50eに移動したかを推定する。
図9は、他のカーフロアの船首部分を示す平面図である。この階層は、船首及び船尾部分のそれぞれに、アンカー操作、係留作業等の作業区画46が設けられている。この作業区画46は、外部に開放された領域であり、カーフロア45と壁によって仕切られている。カーフロア45と作業区画46とはドア45aによって繋がっており、このドア45aのカーフロア45側には第3超音波受信機330sが、ドア45aの作業区画46側には超音波受信機としての機能を有する中継器400sが設置されている。本実施の形態に係る位置管理装置500は、上記と同様にして、第3超音波受信機330s及び中継器400sの超音波信号の受信の順序に基づいて、携帯型超音波送信機200がカーフロア40から作業区画46に移動したか、作業区画46からカーフロア40に移動したかを推定する。
また、上記のカーフロア40と同様に、カーフロア45の階段50b,50cにはそれぞれドア47b及び47cが設けられており、ドア47b,47cのカーフロア45側に第3超音波受信機330t,330uが、ドア47b,47cの階段50b,50c側に第2超音波受信機としての機能を有する中継器400t,400uが設置されている。
図10は、ナビゲーションフロアを示す平面図である。ナビゲーションフロア60は、左右に突き出たウイングを有し、横方向中央部分が船尾側に延びた平面視においてT字状の操舵室(船橋)である。かかるナビゲーションフロア60には、左舷及び右舷両側のウイングに第2超音波受信機320v,320wが設置されている。つまり、ナビゲーションフロア60は壁、床及び天井によって閉塞され、且つ人員が居住する居住領域であり、かかる居住領域には対塩害及び防水処理が施されていない第2超音波受信機320が設置される。また、かかるナビゲーションフロア60には、中継器400x及び位置管理装置500が設置されている。
ナビゲーションフロア60の左舷及び右舷両側のウイングの船尾側には、ドア61v,61wが設けられており、これらのドア61v,61wの外側には外部デッキ30に通じる階段50v,50wが設けられている。これらのドア61v,61wの外側(つまり、外部デッキ30側)には、第1超音波受信機310v,310wが設置されている。本実施の形態に係る位置管理装置500は、上記と同様にして、第1超音波受信機310v,310w及び第2超音波受信機320v,320wの超音波信号の受信の順序に基づいて、携帯型超音波送信機200が外部デッキ30からナビゲーションフロア60に移動したか、ナビゲーションフロア60から外部デッキ30に移動したかを推定する。
ナビゲーションフロア60の左右中間部の船尾側の位置には、第2超音波受信機320yが設置されている。また、この左右中間部の船尾側の壁にはドア61yが設けられており、このドア61yの外側の屋外には居住フロア20に通じる階段50yが設けられている。ドア61yの外側(つまり、居住フロア20側)には、第1超音波受信機310yが設置されている。本実施の形態に係る位置管理装置500は、上記と同様にして、第1超音波受信機310y及び第2超音波受信機320yの超音波信号の受信の順序に基づいて、携帯型超音波送信機200が居住フロア20からナビゲーションフロア60に移動したか、ナビゲーションフロア60から居住フロア20に移動したかを推定する。
また、ナビゲーションフロア60には、船舶用情報表示装置700が設置されている。この船舶用情報表示装置700は、レーダーにより検出した周囲の他船、ブイ等の情報、GPS受信機からの位置情報、及び航路情報等を表示する。かかる船舶用情報表示装置700は、GPS受信機からの位置情報に基づいて自船の位置を取得し、この位置情報を表示し、時刻と共に記録することができる。
判定装置510が備えるハードディスク514には、上記のような超音波受信機300及び中継器400に関する情報を格納する受信機情報DB560及び領域毎に属性情報を格納する領域属性DB570が設けられている。図11は、受信機情報DB560の構造を示す模式図である。受信機情報DB560は、上記のような超音波受信機300及び超音波受信機としての機能を有する中継器400の第2識別情報のフィールドと、超音波受信機300及び中継器400が設置されている位置を示す位置情報のフィールドとを含む。例えば、ドア24aの居住フロア20側に設置された第2超音波受信機320aの第2識別情報は、ドア24aの居住フロア20側の位置を示す位置情報と対応付けて記憶され、ドア24aの外部デッキ30側に設置された第1超音波受信機310aの第2識別情報は、ドア24aの外部デッキ30側の位置を示す位置情報と対応付けて記憶される。位置情報は、領域情報と、出入口情報とを含むよう定義することができる。例えば、ドア24aの居住フロア20側の位置を示す位置情報は、居住フロア20を特定する領域情報(図11の例では「A1」)と、ドア24aを特定する出入口情報(図11の例では「D01」)とを含む。これにより、ドア24aの居住フロア20側という位置を特定できる。また、ドア24aの外部デッキ側の位置を示す位置情報は、外部デッキ0を特定する領域情報(図11の例では「A2」)と、ドア24aを特定する出入口情報(図11の例では「D01」)とを含む。これにより、ドア24aの外部デッキ30側という位置を特定できる。
また、受信機情報DB560は、立入制限区域であるか否かを示す立入制限情報のフィールドも含んでいる。立入制限区域に設置された超音波受信機300又は中継器400については、その第2識別情報に対応づけて、その設置位置が立入制限区域であることを示す情報「立入制限区域」が格納される。また、立入制限がされていない区域に設置された超音波受信機300又は中継器400については、その第2識別情報に対応づけて、その設置位置が立入制限区域でないことを示す情報「非立入制限区域」が格納される。例えば、立入制限区域である部屋21gに設置された第2超音波受信機320gの第2識別情報に対応付けて立入制限区域であることを示す情報「立入制限区域」が格納され、立入制限区域ではないドア24aの居住フロア20側の位置に設置された第2超音波受信機320aの第2識別情報に対応付けて立入制限区域でないことを示す情報「非立入制限区域」が格納される。
図12は、領域属性DB570の構造を示す模式図である。領域属性DB570は、領域毎にその属性を定義する属性情報を格納する。領域属性DB570は、領域情報のフィールドと、属性情報のフィールドとを含む。領域情報は、居住フロア20、外部デッキ30、カーフロア40等の各領域を特定する情報である。また、属性情報は、その領域が閉塞された屋内領域であるか、外部開放領域であるかを示す情報である。例えば、居住フロア20の領域情報「A1」と屋内領域を示す属性情報「屋内」とが互いに対応付けて格納され、外部デッキ30の領域情報「A2」と外部開放領域を示す属性情報「開放」とが互いに対応付けて格納される。
図13は、機材情報DB580の構造を示す模式図である。上述したように、持ち出しが禁止されている機材(以下、「持出禁止機材」という)には、携帯型超音波送信機200が取り付けられる。機材情報DB580は、このような持出禁止機材に取り付けられた携帯型超音波送信機200の第1識別情報を格納する。かかる機材情報DB580は、機材IDのフィールドと、機材の名称のフィールドと、その機材に取り付けられた携帯型超音波送信機200の第1識別情報のフィールドと、機材の保管位置の位置情報のフィールドと、保管位置の名称のフィールドとを含む。
<位置管理システムの動作>
次に、本実施の形態に係る位置管理システムの動作について説明する。船舶に乗船する人員は、携帯型超音波送信機200を携帯する。携帯型超音波送信機200の制御部203は、超音波信号を送信する通常動作モードと、超音波信号を送信しない休止モードとを切り替えて各部を制御する。通常動作モードは、超音波信号を所定時間毎に間欠送信するモードであり、休止モードは、通常動作モードにおいて慣性センサ204によって所定レベル以上の加速度が検出されないまま予め設定された休止期間を経過した場合に移行するモードであり、超音波信号の送信を休止するモードである。
携帯型超音波送信機200の動作について詳しく説明する。図14は、携帯型超音波送信機200の動作を示すフローチャートである。休止モードにおいて、制御部203は、慣性センサ204による出力信号に基づき、所定レベル以上の加速度が検出されたか否かを判定する(ステップS101)。所定レベル以上の加速度が検出されていない場合(ステップS101においてNO)、制御部203は、休止モードのままステップS101に処理を戻す。
他方、所定レベル以上の加速度が検出された場合(ステップS101においてYES)、制御部203は、休止モードから通常動作モードへ移行し(ステップS102)、自機に割り当てられた第1識別情報を読み出し(ステップS103)、第1識別情報を含む電気信号を生成し(ステップS104)、これを出力する。信号処理回路202は、この電気信号を処理し(ステップS105)、超音波発信器201に与える。これにより、超音波発信器201が第1識別情報を含む超音波信号を送信する(ステップS106)。
制御部203は、前回所定レベル以上の加速度が検出されてから休止期間が経過したか否かを判定し(ステップS107)、休止時間が経過していなければ(ステップS107においてNO)、前回超音波信号を送信してから所定の送信設定期間が経過したか否かを判定する(ステップ108)。送信設定期間が経過していない場合(ステップS108においてNO)、制御部203は慣性センサ204の検出結果を確認する(ステップS109)。慣性センサによって新たに所定レベル以上の加速度が検出されていれば、休止期間の計時をリセットし、所定レベル以上の加速度が検出されていなければ、休止期間の計時を継続する。その後、制御部203はステップS107へ処理を戻す。他方、送信設定期間が経過した場合(ステップS108においてYES)、制御部203は、ステップS103へ処理を戻し、再度超音波信号を送信する。前回所定レベル以上の加速度が検出されてから休止期間が経過した場合(ステップS107においてYES)、制御部203は、通常動作モードから休止モードに移行し(ステップS110)、処理を終了する。
上記のように携帯型超音波送信機200が動作することにより、人員が携帯型超音波送信機200を携帯して移動したり作業したりすると、携帯型超音波送信機200が通常動作モードで動作し、間欠的に超音波信号を送信する。
次に、超音波受信機300の動作について説明する。図15は、超音波受信機300の動作を示すフローチャートである。超音波受信機300の制御部305は、超音波センサ301によって超音波信号が受信されると(ステップS201)、この超音波信号から第1識別情報を抽出する(ステップS202)。
さらに制御部305は、自機に割り当てられた第2識別情報を読み出し(ステップS203)、第1及び第2識別情報を含む無線フレームである通知情報を作成し(ステップS204)、この通知情報を無線通信部303に送信させる(ステップS205)。以上で、超音波受信機300の動作が終了する。
このようにして超音波受信機300から送信された通知情報は、中継器400によって判定装置510へ転送される。
次に、中継器400が超音波信号を受信した場合の動作について説明する。図16は、中継器400の動作を示すフローチャートである。中継器400の制御部406は、超音波センサ404によって超音波信号が受信されると(ステップS211)、この超音波信号から第1識別情報を抽出する(ステップS212)。
さらに制御部406は、自機に割り当てられた第2識別情報を読み出し(ステップS213)、第1及び第2識別情報を含むイーサネットフレームである通知情報を作成し(ステップS214)、この通知情報を有線通信部403に送信させる(ステップS215)。以上で、中継器400の動作が終了する。このように、中継器400によって超音波信号が受信されると、中継器400が通知情報を有線ネットワーク600を通じて判定装置510へ直接送信する。
次に、位置管理装置500の動作について説明する。図17は、位置管理装置500の動作を示すフローチャートである。まず、判定装置510のCPU511は、通知情報を受信したか否かを判定する(ステップS301)。通知情報を受信した場合(ステップS301においてYES)、CPU511は、通知情報の受信時刻を記録し(ステップS302)、通知情報から第1及び第2識別情報を抽出し(ステップS303)、抽出された第2識別情報に対応する位置情報及び立入制限情報を受信機情報DB560から取得する(ステップS304)。
次にCPU511は、抽出された第1識別情報が、持出禁止機材に取り付けられた携帯型超音波送信機200の第1識別情報、即ち、機材情報DB580に登録された第1識別情報と一致するか否かを判定する(ステップS305)。持出禁止機材が持ち出された場合、この機材に取り付けられた携帯型超音波送信機200の慣性センサ204が加速度を検出し、携帯型超音波送信機200が休止モードから通常動作モードに移行して超音波信号を送信する。このため、抽出された第1識別情報が機材情報DB580に登録された第1識別情報と一致する場合、持出禁止機材が持ち出された可能性があると判断できる。抽出された第1識別情報が機材情報DB580に登録された第1識別情報と一致しない場合(ステップS305においてNO)、CPU511は、抽出された第1識別情報が、人員が携帯する携帯型超音波送信機200に対応するものであると判断し、処理をステップS306へ移す。
CPU511は、取得された今回の位置情報と、前回の位置情報とに基づいて、携帯型超音波送信機200が存在する領域を判定する(ステップS306)。以下、ステップS306の処理について説明する。まず、ドアを通じて人員が領域間を移動する場合の領域判定を説明する。図18Aは、人員が居住フロア20からドア24aを通じて外部デッキ30へ移動する場合の領域判定を説明する図である。人員が居住フロア20にいるときは、ドア24aが閉じられており、超音波信号は居住フロア20側に設けられた第2超音波受信機320a(位置情報(A1,D01))によって受信され、外部デッキ30側に設けられた第1超音波受信機310a(位置情報(A2,D01))によっては受信されない。したがって、第2超音波受信機320aが通知情報を送信することになり、判定装置510が、第2超音波受信機320aの位置情報(A1,D01)を取得する。その後、人員がドア24aを開けて外部デッキ30へ移動し、再びドア24aを閉じると、超音波信号は外部デッキ30側に設けられた第1超音波受信機310aによって受信され、居住フロア20側に設けられた第2超音波受信機320aによっては受信されなくなる。したがって、第1超音波受信機310aが通知情報を送信することになり、判定装置510が、第1超音波受信機310aの位置情報(A2,D01)を取得する。この場合、今回の位置情報は第1超音波受信機310aの位置情報(A2,D01)となり、前回の位置情報は第2超音波受信機320aの位置情報(A1,D01)となる。CPU511は、前回の位置情報と今回の位置情報とを比較して、携帯型超音波送信機200が居住フロア20から外部デッキ30へと移動したと推定し、携帯型超音波送信機200が現在存在する領域が外部デッキ30であると判定する。
次に、階段を通じて人員がフロア間を移動する場合の領域判定を説明する。ここでは、居住フロア20から階段50aを通じて下層のカーフロア40へ人員が移動する場合を考える。図18Bは、人員が居住フロア20の通路22からドア24mを通じて階段50aへ移動する場合の領域判定を説明する図である。人員が居住フロア20の通路22にいるときは、ドア24mが閉じられており、超音波信号は居住フロア20側に設けられた第2超音波受信機320m(位置情報(A1,D13))によって受信され、階段50a側に設けられた中継器400d(位置情報(S1,D13))によっては受信されない。したがって、第2超音波受信機320mが通知情報を送信することになり、判定装置510が、第2超音波受信機320mの位置情報(A1,D13)を取得する。その後、人員がドア24mを開けて階段50a側へ移動し、再びドア24mを閉じると、超音波信号は階段50a側に設けられた中継器400dによって受信され、居住フロア20側に設けられた第2超音波受信機320mによっては受信されなくなる。したがって、中継器400dが通知情報を送信することになり、判定装置510が、中継器400dの位置情報(S1,D13)を取得する。この場合、今回の位置情報は中継器400dの位置情報(S1,D13)となり、前回の位置情報は第2超音波受信機320mの位置情報(A1,D13)となる。CPU511は、前回の位置情報と今回の位置情報とを比較して、携帯型超音波送信機200が居住フロア20から階段50aへと移動したと推定する。この時点では、階段50aを使って人員がどこのフロアに移動するかは不明であるため、判定装置510は、携帯型超音波送信機200が現在存在する領域が居住フロア20であると判定する。
図18Cは、人員が階段50aからドア41aを通じてカーフロア40へ移動する場合の領域判定を説明する図である。人員が階段50aにいるときは、ドア41aが閉じられており、超音波信号は階段50a側に設けられた中継器400j(位置情報(S1,D21)によって受信され、カーフロア40側に設けられた第3超音波受信機330a(位置情報(A3,D21)によっては受信されない。したがって、中継器400jが通知情報を送信することになり、判定装置510が、中継器400jの位置情報(S1,D21)を取得する。その後、人員がドア41aを開けてカーフロア40側へ移動し、再びドア41aを閉じると、超音波信号はカーフロア40側に設けられた第3超音波受信機330aによって受信され、階段50a側に設けられた中継器400jによっては受信されなくなる。したがって、第3超音波受信機330aが通知情報を送信することになり、判定装置510が、第3超音波受信機330aの位置情報(A3,D21)を取得する。この場合、今回の位置情報は第3超音波受信機330aの位置情報(A3,D21)となり、前回の位置情報は中継器400jの位置情報(S1,D21)となる。CPU511は、前回の位置情報と今回の位置情報とを比較して、携帯型超音波送信機200が階段50aからカーフロア40へと移動したと推定し、携帯型超音波送信機200が現在存在する領域がカーフロア40であると判定する。
次に、同一の領域内を人員が移動した場合の領域判定について説明する。図18Dは、人員が居住フロア20の通路22を歩いて移動する場合の領域判定を説明する図である。人員が通路22の第2超音波受信機320aの近傍にいるときは、超音波信号はこの第2超音波受信機320aによって受信され、人員から離れた位置にある中継器400a(位置情報(A1,P01))によっては受信されない。したがって、第2超音波受信機320aが通知情報を送信することになり、判定装置510が、第2超音波受信機320aの位置情報(A1,D01)を取得する。その後、人員が通路22に沿って中継器400aの方へ移動すると、超音波信号は中継器400aによって受信され、第2超音波受信機320aによっては受信されなくなる。したがって、中継器400aが通知情報を送信することになり、判定装置510が、中継器400aの位置情報(A1,P01)を取得する。この場合、今回の位置情報は中継器400aの位置情報(A1,P01)となり、前回の位置情報は第2超音波受信機320aの位置情報(A1,D01)となる。CPU511は、前回の位置情報と今回の位置情報とを比較して、どちらも居住フロア20の領域情報(A1)を含んでいることから、携帯型超音波送信機200が居住フロア20内を移動したと推定し、携帯型超音波送信機200が現在存在する領域が居住フロア20であると判定する。
再び図17を参照する。上記のようにして携帯型超音波送信機200が存在する領域を判定した後、CPU511は、ステップS304で取得された立入制限情報に基づいて、携帯型超音波送信機200が立入制限区域に存在するか否かを判定する(ステップS307)。立入制限情報が「非立入制限区域」である場合、CPU511は携帯型超音波送信機200が立入制限区域に存在しないと判定し(ステップS307においてNO)、上記の処理の結果として、表示装置520に位置管理画面を表示させる(ステップS308)。
図19Aは、位置管理画面の一例を示す図である。この位置管理画面では、各領域に存在する携帯型超音波送信機200の第1識別情報が、領域毎に定められた表示枠の中に表示される。図19Aに示す例では、実際の船舶10の各領域の位置に対応して、各領域の表示枠の位置が定められる。例えば、最上層であるナビゲーションフロア60の表示枠71は最も上側の位置に表示され、ナビゲーションフロア60より一つ下の階層である居住フロア20の表示枠72は、ナビゲーションフロア60の表示枠71の一つ下側に表示される。また、居住フロア20と同一階層の外部デッキ30の表示枠73は、居住フロア20の表示枠72の横に表示される。居住フロア20及び外部デッキ30より一つ下の階層であるカーフロア40の表示枠74は、表示枠72及び73の一つ下側に表示される。カーフロア45と作業区画46とを有する階層については、カーフロア45の表示枠75と作業区画46の表示枠76とが横に並べて表示される。
各表示枠71〜76には、表示枠に対応する領域に存在する携帯型超音波送信機200の第1識別情報が表示される。図19Aに示す例では、ナビゲーションフロア60の表示枠71に、第1識別情報「ID0001」、「ID0002」、「ID0005」が表示されており、居住フロア20の表示枠72に、第1識別情報「ID0011」、「ID0013」、「ID0015」、「ID0016」、「ID0024」、「ID0101」が表示されている。これにより、オペレータは、第1識別情報「ID0001」、「ID0002」、「ID0005」の各携帯型超音波送信機200がナビゲーションフロア60に存在し、第1識別情報「ID0011」、「ID0013」、「ID0015」、「ID0016」、「ID0024」、「ID0101」の各携帯型超音波送信機200が居住フロア20に存在すると理解できる。上記のような人員管理画面を表示すると、CPU511は処理を終了する。
再び図17を参照する。ステップS304で取得された立入制限情報が「立入制限区域」である場合、CPU511は携帯型超音波送信機200が立入制限区域に存在すると判定し(ステップS307においてYES)、立入制限区域に人員が立ち入ったことを警告するための警告情報を付加した位置管理画面を表示装置520に表示させる(ステップS309)。
図19Bは、立入制限区域に人員が立ち入ったことを警告する警告情報を含む位置管理画面の一例を示す図である。図19Bに示す例では、第1識別情報「ID0013」の携帯型超音波送信機200が、居住フロア20内の立入制限区域である部屋21gに存在しているため、「ID0013」及び「立入制限区域に立ち入りました」の文字情報が警告情報77として表示され、表示枠72内の「ID0013」が四角の枠78で囲まれる。これにより、オペレータは第1識別情報「ID0013」の携帯型超音波送信機200を携帯する人員が立入制限区域に立ち入ったことを把握できる。上記のような人員管理画面を表示すると、CPU511は処理を終了する。
再び図17を参照する。ステップS301で通知情報を受信していない場合(ステップS301においてNO)、CPU511は、その時点で開放領域に存在している携帯型超音波送信機200について、最後に通知情報を受信してから予め設定された落水判断期間を経過したものがあるか否かを判定する(ステップS310)。この処理では、CPU511は領域属性DB570によって開放領域を特定し、その時点で開放領域に存在する携帯型超音波送信機200を特定する。CPU511は、特定された携帯型超音波送信機200のそれぞれについて、記録された通知情報の受信時刻から落水判断期間を経過したか否かを判定し、落水判断期間を経過した携帯型超音波送信機200を特定する。
最後に通知情報を受信してから落水判断期間を経過した携帯型超音波送信機200が存在しない場合(ステップS310においてNO)、CPU511は、ステップS301へ処理を戻す。他方、最後に通知情報を受信してから落水判断期間を経過した携帯型超音波送信機200が存在する場合(ステップS310においてYES)、CPU511は、落水事故が発生した可能性があることを警告するための警告情報を付加した位置管理画面を表示装置520に表示させる(ステップS311)。
図19Cは、落水事故が発生した可能性があることを警告する警告情報を含む位置管理画面の一例を示す図である。図19Cに示す例では、第1識別情報「ID0201」の携帯型超音波送信機200が、外部デッキ30において最後に検出され、この携帯型超音波送信機200についての通知情報が長時間受信されなかったため、落水事故が発生した可能性があると判断されたため、「ID0201」及び「外部デッキにおいて落水事故発生の可能性あり」の文字情報が警告情報79として表示され、表示枠73内の「ID0201」が四角の枠80で囲まれる。これにより、オペレータは第1識別情報「ID0201」の携帯型超音波送信機200を携帯する人員が、外部デッキから落水した可能性があることを把握できる。
再び図17を参照する。CPU511は、落水事故が発生した可能性があることを警告する警告情報を、船舶用情報表示装置700に送信する(ステップS312)。船舶用情報表示装置700は、警告情報を受信すると、落水警報機能を実行する。落水警報機能は、GPS受信機から位置情報を取得し、その位置情報を記録すると共に、救急通報を自動送信する機能である。以上でCPU511は処理を終了する。
CPU511は、ステップS303において抽出された第1識別情報が、持出禁止機材に取り付けられた携帯型超音波送信機200の第1識別情報、即ち、機材情報DB580に登録された第1識別情報と一致する場合(ステップS305においてYES)、ステップS304において取得された位置情報と、機材情報DB580に登録されている位置情報とを比較して、持出禁止機材が持ち出されたか否かを判定する(ステップS313)。2つの位置情報が一致する場合、CPU511は持出禁止機材が持ち出されていないと判定し(ステップS313においてYES)、処理を終了する。他方、2つの位置情報が一致しない場合、CPU511は持出禁止機材が持ち出されたと判定し(ステップS313においてNO)、持出禁止機材が持ち出されたことを警告するための警告情報を付加した位置管理画面を表示装置520に表示させる(ステップS314)。図19Dは、持出禁止機材が持ち出されたことを警告する警告情報を含む位置管理画面の一例を示す図である。この画面では、「機材が持ち出されました」の文字情報と、持出禁止機材に取り付けられた携帯型超音波送信機200の第1識別情報「ID0999」と、持出禁止機材の名称「交換部品」と、保管場所の名称「部品倉庫」と、現在の携帯型超音波送信機200の位置情報「A1,P01」とを含む警告情報81が表示される。また、表示枠72内の「ID0999」が四角の枠82で囲まれる。これにより、持出禁止機材が持ち出されたこと、当該機材の名称及び保管位置、当該機材に取り付けられた携帯型超音波送信機200の第1識別情報、及び当該機材の現在位置の各情報を把握できる。以上でCPU511は処理を終了する。
以上のような構成としたことにより、人員が携帯する携帯型超音波送信機200が超音波を送信し、それに基づいて人員の現在位置(現在人員がいる領域)を判定する。超音波は壁、窓、床、天井、ドア等の構造物を透過しないため、携帯型超音波送信機200がどの領域にあるのかが正確に判定でき、よって人員の位置を正確に管理できる。また、部屋単位ではなく、フロア、屋内領域及び外部開放領域等の領域単位で人員の位置を判定する構成としたため、各人員のプライバシーを守りつつ、人員の位置管理を行うことができる。
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態においては、領域の出入口の両側それぞれに超音波受信機300を設置し、各超音波受信機が通知情報を送信した順番、即ち、超音波信号を受信した順序に基づいて、領域に入ったか、領域から出たかを推定し、携帯型超音波送信機200が存在する領域を判定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。第1領域内に設置された超音波受信機300によって超音波信号が受信された場合には、携帯型超音波送信機200が第1領域に存在すると判定し、第2領域内に設置された超音波受信機300によって超音波信号が受信された場合には、携帯型超音波送信機200が第2領域に存在すると判定することもできる。
上述した実施の形態においては、通知情報を送信した超音波受信機300又は中継器400の領域内での位置を示す位置情報に基づいて、携帯型超音波送信機200が存在する領域を判定する構成について述べたが、これに限定されるものではない。かかる位置情報とは異なる情報を用いて携帯型超音波送信機200が存在する領域を判定する構成とすることもできる。例えば、位置情報に代えて領域情報を用いることができる。この領域情報は、超音波受信機300又は中継器400が設置された領域という位置を示すものである。具体的には、第2識別情報と、これが割り当てられた超音波受信機300又は中継器400が設置された領域を示す領域情報とをデータベースに対応付けて記憶しておき、判定装置が、通知情報に含まれる第2識別情報に対応する領域情報を特定し、特定された領域情報に基づいて、携帯型超音波送信機200が存在する領域を判定する構成とすることができる。また、超音波受信機300及び中継器400の位置関係に基づいて定められた判定ルールを用いて、携帯型超音波送信機200が存在する領域を判定する構成とすることもできる。具体的には、通知情報に含まれる第2識別情報を指定した判定条件と、その判定条件が成立する場合に携帯型超音波送信機200が存在する領域を決定する判定結果とを含む判定ルールを設定しておき、この判定ルールにしたがって領域判定を行うことができる。例えば、「2つの通知情報を続けて受信した場合に、先に受信した通知情報に第2識別情報「MAC1」が含まれており、後に受信した通知情報に第2識別情報「MAC2」が含まれている」という判定条件と、「携帯型超音波送信機200が居住フロア20に存在する」という判定結果とを含む判定ルールを設けておき、上記の判定条件が成立する場合に、「携帯型超音波送信機200が居住フロア20に存在する」と判定する構成とすることができる。
また、上述した実施の形態においては、携帯型超音波送信機200が立入禁止区域に存在すると判定された場合、落水事故が発生した可能性があると判定された場合、及び持出禁止機材の持出が推定された場合に警告情報を表示装置520が表示する構成について述べたが、これに限定されるものではない。ある携帯型超音波送信機200が1つの領域に存在すると判定された後、所定期間(例えば、1日)、当該携帯型超音波送信機200から超音波信号を受信しなかった場合には、人員に病気などの異常が生じたと推定し、警告情報を表示装置520に表示する構成とすることもできる。
また、上述した実施の形態においては、単一のコンピュータによって位置管理プログラム550のすべての処理が実行される構成について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、位置管理プログラム550と同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。
また、上述した実施の形態においては、人員が携帯する機器が携帯型超音波送信機200である場合について述べたが、これに限定されるものではなく、自機の識別情報を送信する機器であれば他の構成であってもよい。例えば、電波による無線信号によって自機の識別情報を送信する携帯型機器を用いるようにしてもよい。その場合、次のようなシステム構成を採用することができる。
図20は、携帯型機器及びその携帯型機器と通信を行う設置型機器の構成を説明する図である。携帯型機器800は、船舶内の人員70に携帯される機器であって、電波による無線信号を設置型機器900に対して送信する。また、設置型機器900は、船舶内の複数の箇所にそれぞれ設置され、超音波信号を携帯型機器800に対して送信する。これらの携帯型機器800及び設置型機器900はそれぞれ、上述した実施の形態における携帯型超音波送信機200及び超音波受信機300に対応する機器である。
なお、超音波受信機300の場合と異なり、1台の設置型機器900には、複数の異なる位置情報が割り当てられている。後述するように、これらの位置情報は、設置型機器900が超音波信号を送信する方向に応じて使い分けられる。
図20には、船舶内における特定の領域の上方に設置型機器900が設置されており、その領域内に携帯型機器800を携帯する人員70がいる場合が例示されている。この領域には、他の領域に繋がる出入口であるドア80が設けられている。以下では、人員70がこの領域内を移動し、ドア80を通じて当該領域の外へ出て行く場合における位置管理システムの動作について説明する。
設置型機器900は、位置情報を含む超音波信号を所定の時間間隔で繰り返し送信する。ここで、設置型機器900は、複数の異なる方向に、それぞれ異なる位置情報を含む超音波信号を送信する。そのため、その位置情報を確認することによって、どの方向に送信された超音波信号であるのかを判定することが可能になる。
携帯型機器800は、上記のとおり設置型機器900から送信された超音波信号を受信すると、その超音波信号に含まれる位置情報及び自機の識別情報(上記の実施の形態における「第1識別情報」に相当)を含む無線信号を生成し、これを設置型機器900に対して送信する。
設置型機器900は、上記のとおり携帯型機器800から送信された無線信号を受信すると、その無線信号に含まれる自機の位置情報及び携帯型機器800の識別情報、並びに自機に割り当てられている識別情報(上記の実施の形態における「第2識別情報」に相当)を含む無線フレームである通知情報を作成し、これを送信する。このようにして設置型機器900から送信された通知情報は、上記の実施の形態の場合と同様に、中継器400によって判定装置510へ転送される。
判定装置510は、設置型機器900から送信された通知情報に基づいて、携帯型機器800が存在する領域を判定する。例えば、同一の設置型機器900が同一の携帯型機器800から複数回無線信号を受信したことが通知情報から確認できる場合において、それらの無線信号に含まれている設置型機器900の位置情報が異なるとき、すなわち、設置型機器900から異なる方向に送信された複数の超音波信号のそれぞれに応じて携帯型機器800から無線信号が送信されているとき、判定装置510は、それらの無線信号の設置型機器900における受信順序に基づいて携帯型機器800が存在する領域を判定する。
より具体的に説明すると、図20に示すように、設置型機器900が、領域内部の方向に超音波信号Aを送信するとともに、出入口の方向に超音波信号Bを送信している場合において、その設置型機器900が、超音波信号Aに応じて携帯型機器800から送信された無線信号を受信した後に、超音波信号Bに応じて携帯型機器800から送信された無線信号を受信したとき、判定装置510は、人員70が出入口のドア80に向かって移動していると判定する。そして、その後所定時間(例えば5秒)経過しても、その設置型機器900が携帯型機器800から無線信号を受信しなかった場合、判定装置510は、人員70がドア80を通じて他の領域に移ったものと判定する。
他方、設置型機器900が、超音波信号Bに応じて携帯型機器800から送信された無線信号を受信した後に、超音波信号Aに応じて携帯型機器800から送信された無線信号を受信した場合は、その後にその設置型機器900が携帯型機器800から無線信号を受信しなかったときでも、判定装置510は、人員70が当該領域内に留まっているものと判定する。
このように、設置型機器900が異なる方向に対して超音波信号を送信し、その超音波信号に応じて携帯型機器800が無線信号を送信する構成とすることにより、携帯型機器800を携帯する人員70の移動方向を把握したり、一の領域から他の領域へ移動したことを推測したりすることが可能になる。また、この場合、携帯型機器800は常時無線信号を送信する必要はなく、設置型機器900から送信された超音波信号を受信した場合にのみ無線信号を送信すれば足りるため、省電力化を図ることができるというメリットも得られる。