JP3974765B2 - 弾性表面波素子、弾性表面波素子を用いた電気信号処理装置、及び電気信号処理装置を用いた環境評価装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性表面波素子、弾性表面波素子を用いた電気信号処理装置、及び電気信号処理装置を用いた環境評価装置に関する。より詳細には、本発明は、単結晶で形成されており、少なくとも球面の一部で形成されていて円環状に連続している円環状表面を有している基材を有しており、円環状表面に沿って伝搬する弾性表面波が励起される弾性表面波素子に関する。さらに本発明は、所定の電気信号が入力され、この電気信号を処理し、電気信号を出力する電気信号処理装置に関する。またさらに本発明は、環境の変化を感知する環境評価装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
基材上に弾性表面波を発生させるとともに、基材上に発生された弾性表面波を受信するものとして弾性表面波素子は従来から良く知られている。
【0003】
従来の弾性表面波素子では平坦な基材上に1対の櫛形電極が設けられている。基材が圧電性材料で形成されているか、又は櫛形電極と基板の間には圧電体が設けられており、一方の櫛形電極に高周波電圧を供給することにより電極の並んでいる方向に弾性表面波を励起させる。他方の櫛形電極はこの弾性表面波の伝搬方向に配置されていてこの弾性表面波を受信する。
【0004】
弾性表面波素子は、遅延線、発信機のための発振素子若しくは共振素子、周波数を選択するためのフィルタ、化学センサー、バイオセンサ、又はリモートタグ等に使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような弾性表面波素子の性能を高めるためには、1対の櫛形電極相互間を弾性表面波が伝搬する際の伝搬損失を出来る限り小さくすることが望まれている。
【0006】
しかしながら、通常の弾性表面波素子は1対の櫛形電極が設けられている圧電体の表面及び基材の表面が平坦であるので、一方の櫛形電極で励起された弾性表面波は他方の櫛形電極に向かい伝搬する間に上記表面上で伝搬方向と直交する方向にも拡散し弱くなる。このために弾性表面波の伝搬損失を小さくすることができない。また、弾性表面波の発信から受信までの時間変化を測定対象として観測して応用する場合に、伝搬距離が長くなることにより伝搬損失が大きくなると十分な強度の信号を得ることができない。これらの問題から、性能を高めることに限界がある。
【0007】
このような問題解決のために、球状の基材を用いることが考えられている。この基材の表面に弾性表面波を励起させると、弾性表面波は拡散せずに多数回基材を周回する。これを利用すれば、長い伝搬距離を獲得することができる。
【0008】
しかしながら、基材が圧電性材料で形成されていない場合は基材の表面に圧電性材料の膜を設ける必要がある。また、この膜の厚さなどによって弾性波の伝搬特性が変わるので、大量に安定した素子を作成することが困難である。さらに、基材を圧電性材料で形成する場合、良質な圧電性材料として水晶、LiNbO3、LiTaO3等の単結晶が適切であるが、これらの単結晶の表面上では弾性表面波の伝搬速度が異なるために一般には弾性表面波の周回が起きず、その実現が困難だった。
【0009】
本発明はこのような事情の下でなされ、本発明の目的は、結晶材料で形成された基材を用い、より性能の優れた弾性表面波素子、弾性表面波素子を用いた電気信号処理装置、及び電気信号処理装置を用いた環境評価装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係わる弾性表面波素子は、少なくとも球面の一部で形成されていて円環状に連続している円環状表面を有しており、単結晶で形成されている基材と、
前記円環状表面に沿って伝搬する弾性表面波を励起する弾性表面波励起手段と
を備えている。
【0011】
本発明の請求項2に係わる弾性表面波素子では、前記円環状表面は、前記基材を形成している単結晶の結晶方位で決まる所定の経路に沿って形成されている。
【0012】
本発明の請求項3に係わる弾性表面波素子では、前記基材は、圧電性材料で形成されている。
【0013】
本発明の請求項4に係わる弾性表面波素子では、前記基材を形成している単結晶の結晶系は、三方晶系である。
【0014】
本発明の請求項5に係わる弾性表面波素子では、前記基材を形成している単結晶は、水晶である。
【0015】
本発明の請求項6に係わる弾性表面波素子では、前記基材を形成している単結晶は、LiNbO3の単結晶およびLiTaO3の単結晶からなる群から選択される単結晶である。
【0016】
本発明の請求項7に係わる弾性表面波素子では、前記基材を形成している単結晶の結晶系は三方晶系であり、結晶方位で決まる前記所定の経路は、球面と、この球面の中心を通り、前記三方晶系の単結晶のZ軸と直交する平面との交線を含んでいる。
【0017】
本発明の請求項8に係わる弾性表面波素子では、前記基材を形成している単結晶の結晶系は三方晶系であり、結晶方位で決まる前記所定の経路は、球面と、この球面の中心を通り、前記三方晶系の単結晶のZ軸と平行な平面との交線を含んでいる。
【0018】
本発明の請求項9に係わる弾性表面波素子では、前記弾性表面波励起手段により励起される弾性表面波の波長が、基材の球面の半径の1/10以下である。
【0019】
本発明の請求項10に係わる弾性表面波素子では、前記弾性表面波励起手段は、前記円環状表面に沿って設けられ、高周波電源に接続される櫛形電極を含んでいる。
【0020】
本発明の請求項11に係わる弾性表面波素子では、前記櫛形電極は前記円環状表面から離間している。
【0021】
本発明の請求項12に係わる弾性表面波素子では、前記櫛形電極の重なり幅は、前記基材の球面の直径の半分以下でこの球面の半径の1/100以上である。
【0022】
本発明の請求項13に係わる弾性表面波素子では、前記弾性表面波励起手段は、前記円環状表面に設けられ、レーザ光を吸収し熱弾性効果により弾性表面波を励起するレーザ吸収部材を有している。
【0023】
本発明の請求項14に係わる電気信号処理装置は、
請求項1乃至12いずれか1項に記載の弾性表面波素子と、
所定の電気信号を前記弾性表面波励起手段に入力し、この結果弾性表面波励起手段は前記円環状表面に沿って伝搬する弾性表面波を励起する入力部と、
この円環状表面に沿って伝搬する弾性表面波を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された弾性表面波に応じた電気信号を出力する出力部と
を備えている。
【0024】
本発明の請求項15に係わる電気信号処理装置は、請求項10乃至12いずれか1項に記載の弾性表面波素子を備えている電気信号処理装置であって、
前記櫛形電極は、電気信号が入力されたときに前記円環状表面に沿って伝搬する弾性表面波を励起し、前記円環状表面に沿って伝搬する弾性表面波がこの櫛形電極に入射したときにこの弾性表面波に応じた電気信号を発生し、
この電気信号処理装置は、前記櫛形電極に所定の電気信号を入力するとともに、この櫛形電極により発生された電気信号を出力する入出力部をさらに備えている。
【0025】
本発明の請求項16に係わる環境評価装置は、
請求項14又は15に記載の電気信号処理装置と、
前記電気信号処理装置により出力された電気信号の周波数、この電気信号の強度、及び前記電気信号処理装置に電気信号が入力されてから前記電気信号処理装置により電気信号が出力されるまでの時間の内の少なくとも1つに基づいて前記基材の周りの環境又は前記基材が置かれていた環境を評価する処理部をさらに備えている。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1から図14を参照して、本発明の実施の形態に係わる弾性表面波素子、並びにこの弾性表面波素子を用いた本発明の実施の形態に係わる電気信号処理装置、及びこの弾性表面波素子を用いた本発明の実施の形態に係わる環境評価装置を説明する。先ず、本発明の第1の実施の形態の弾性表面波素子と、この弾性表面波素子を用いた本発明の実施の形態に係わる電気信号処理装置とを説明する。図1は弾性表面波素子と、これを用いた電気信号処理装置の構成を示す図である。弾性表面波素子は単結晶の水晶で形成されている球状の基材110を有している。本実施の形態では水晶の単結晶を用いているが、LiNbO3、LiTaO3等の三方晶系の単結晶を用いてもよい。
【0027】
基材110の表面には高周波電源123に接続されている1対の櫛形電極121,122が設けられている。櫛形電極121,122は弾性表面波励起手段として用いられている。基材110と櫛形電極121,122は弾性表面波素子を構成している。高周波電源123は所定の電気信号を出力する。櫛形電極121,122は、基材110の表面に積層されたクロムの層と、クロムの層の上に積層された金の層とを有しており、フォトリソグラフィーを用いて形成される櫛形パターンである。この櫛形パターンには高周波電源123に接続されている入力用電極120a,120bが設けられている。入力用電極120a,120bは入力部として用いられている。入力用電極120a,120bは、高周波電源123からの所定の電気信号を櫛形電極121,122に入力する。この結果、櫛形電極121,122は、以下に説明するように、基材110の円環状表面に沿って伝搬しこの電気信号に応じた弾性表面波を励起する。
【0028】
水晶の基材110は圧電性材料である。即ち、基材110の表面は圧電性材料で形成されている。高周波電源123により櫛形電極121,122に電圧が印加されると、基材110の表面が圧電効果により振動し、基材110の表面に所定のモードの弾性表面波が励起される。櫛形電極121,122を用いた弾性表面波励起手段は比較的高い効率でかつ特定の方向に弾性表面波を励起することができる。
【0029】
励起された弾性表面波は円環状に連続している基材110の円環状表面111に沿って伝搬する。弾性表面波は基材110の表面を周回する。円環状表面111には、円環状表面111に沿って伝搬する弾性表面波を検出する検出手段(図示せず)が設けられている。本実施の形態では検出手段として櫛形電極121,122とは別の櫛形電極を用いている。この検出用の櫛形電極は弾性表面波を再び電気信号に変換することにより弾性表面波を検出する。検出用の櫛形電極には、検出用の櫛形電極により検出された弾性表面波に応じた電気信号を出力する出力用電極が設けられている。出力用電極は出力部として用いられている。入力用電極120a,120bと検出用の櫛形電極と出力用電極とは電気信号処理装置を構成している。尚、基材110の表面には、この検出用の櫛形電極及び励起用の櫛形電極121,122、の他に、弾性表面波の伝搬を変化せるための所望のパターンが形成されていてもよい。
【0030】
本明細書では、単結晶の基材の表面近傍にエネルギーを集中させて伝搬する弾性波を弾性表面波と総称している。単結晶の基材からエネルギーを放出しながら伝播する漏洩弾性表面波や、SH(シェアーホリゾンタル)波や、ラテラル波と呼ばれる弾性波も含まれる。
【0031】
弾性表面波が球状の基材の円環状表面に沿って伝搬する現象は、等方性の材料で形成されている基材については知られていた。単結晶で形成された基材については、結晶方位に従って弾性表面波の伝搬速度が異なる。そして、単結晶で形成された球状の基材を周回する過程で伝搬不可能な結晶面を通過したり、エネルギーが拡散する結晶面を通過したりするために、弾性表面波が基材の表面を周回する際の効率が悪化し、周回する度に急激にエネルギーを消耗すると考えられていた。
【0032】
ところが、水晶、LiNbO3、LiTaO3等の三方晶系の単結晶の基材については、弾性表面波が伝搬する経路を適切に選べば同様の現象が起こることが発明者らにより実験で確認された。この経路は、後に示すように、結晶方位で決まる。この経路に沿って伝搬する弾性表面波は弾性波エネルギーの散逸や球表面における反射は小さいので、多数回の周回が実現できる。
【0033】
非圧電性材料で基材を形成する場合、基材と櫛形電極との間に圧電膜を形成する必要がある。LiNbO3、LiTaO3および本実施の形態の基材を形成している水晶は良好な圧電材料であるので、圧電膜を形成する必要がなく低コストである。また、圧電膜の形成プロセスの条件に伴って弾性表面波素子の特性が変わる危険性が無いので安定して同じ製品を生産できる。
【0034】
非圧電性材料の基材を用いた場合よりも、水晶、LiNbO3およびLiTaO3の基材を用いた場合の方が信号純度が高い。従って、非圧電性材料の場合に比べ遥かに性能を高めることができる。
【0035】
上記単結晶の中で、水晶は硬度がたかく、加工が容易で、材料として安価に入手できるために非常に有用である。LiNbO3およびLiTaO3についても電気機械結合係数が大きく、また弾性表面波の位相速度の温度依存性についての特徴から雑音の少ない良好な周回が実現できる。
【0036】
弾性表面波が拡散することなく球状の基材の表面を周回する条件は、近似的に以下のようにして求められた。以下の計算は等方性材料で基材を形成した場合について説明されているが、大部分の弾性表面波が周回する領域において、弾性表面波が伝搬する方向の弾性表面波位相速度が著しく変化しない場合に、理論的に近似的な推測を行うことができる。
【0037】
先ず、弾性表面波の発生源が点とみなせる場合について説明する。発生源は球状の基材の表面にある。これは、櫛形電極121,122の重なり幅が基材110の球面の半径の1/100未満であることに対応している(図1参照)。ここで、重なり幅は櫛形電極121の複数の電極片と、櫛形電極122の複数の電極片とが相互に対面する長さである。この重なり幅は櫛形電極121,122により励起される弾性表面波の幅に一般的には対応することは明らかである。
【0038】
弾性表面波は発生源を中心にして球面である表面上を同心円状に広がった後に発生源とは正反対の側の地点に向かい同心円状に集束する。そして、正反対の側の地点から球面上を同心円状に広がった後に発生源に集束する。即ち、発生源が点とみなせる場合は、指向性をもたずに拡散し、櫛形電極の配線取り付け部、櫛形電極の回路パターン、基材を支持するための支持部などで弾性表面波が散乱される。
【0039】
次に、弾性表面波の発生源が円弧とみなせる場合について説明する。これは、櫛形電極121,122の重なり幅が基材110の球面の半径の1/100以上であることに対応している。但し、付随の電気回路パターンなどを含めた櫛形電極の全幅は、基材110の周囲長の半分以下である必要があるので、櫛形電極121,122の重なり幅は基材110の球面の直径の半分以下である。図2には、球状の基材の中心を原点Oとする座標系が示されている。XYZ座標軸と基材の半径rの球面の交点をそれぞれ点A、B,Cとする。また、OB間にあり、Y軸上の点を点E、点E通りZ軸に平行な直線と上記球面との交点を点F、点E通りX軸に平行な直線と上記球面との交点を点Dとする。円弧DF上の点Pから発生した弾性表面波が円弧CG上の点Qに達するとする。ここで、点Gは円弧AB上の点である。角度φ0,θ0,φ1,θ1を図2中に示したように取ると、点P,Qの座標はそれぞれ
(rcosφ0cosθo,rsinφ0,rcosφ0sinθo)及び
(rcosφ1cosθ1,rcosθ1sinφ1,rsinθ1)
となるため、
PQ2=2r2[1−cosφ0cosθocosφ1cosθ1−sinφ0cosφ1cosθ1−cosφ0sinφ0sinθ1]…(1)
である。従って、角POQ=θとおくと余弦定理より
cosθ=cosφ0cosθocosφ1cosθ1+sinφ0cosφ1cosθ1+cosφ0sinφ0sinθ1 …(2)
の関係が成り立つ。
【0040】
点Pで発生した弾性表面波の点Qにおける粒子変位の半径方向成分は、
【数1】
である(Viktorov,Rayleigh and Lamb Waves)。式(3)はレイリー波やラム波について求められたものであるが弾性表面波一般にも適用できる。なおここで、Cは定数、CRはレイリー波速度、tは時間である。mは
m=円周の長さ/弾性表面波の波長
であり、波数パラメータと呼ぶ。
【0041】
角度θは式(2)から求められる。点Eから見こむ角度が2θAの円弧状音源による点Qの音場は、式(3)をθoについて−θAからθAまで積分することにより得られる。音場分布は点Qの迎角θ1を変化させて計算することで求められる。
【0042】
図3には点PがXZ面上にあるφ0=0の場合について式(3)を使用して求めた弾性表面波が球面上を伝搬する4つの状態が示されている。
【0043】
図3(A)、図3(B)及び図3(C)は、波数パラメータm=600の場合の音場(粒子変位の絶対値の角度θ1依存性)を調べた結果である。図の各々において、最も下のプロットは球面上の弾性表面波の伝搬を表す角度(伝搬角)φ1が0°の場合の音場であり、上に向かって15°づつ増加した場合の音場が順にプロットしてある。
【0044】
図3(A)は、開口半角θA=30°の場合である。この場合には、図3(A)から明らかなように、弾性表面波の伝搬状態は集束ビーム形状である。即ち、伝搬角φ1が増加するにつれて音場の幅が減少しφ1=90°で最小になった後は再び幅が増加し対極点180°で音源上と同じ分布が再現される。以降は180°毎に上記同じ変化が繰り返され、何周回っても同じ変化が繰り返される。これは回折による波の拡散が全く無い球面に独特な現象である。この場合、開口半角θA=30°よりも音場が広がることがなく、θ1<θAの帯状部分に弾性表面波のエネルギーが閉じ込められている。この場合には球面のθ1>θAの部分に他の物体を接触させても音場に擾乱は生じない。
【0045】
図3(C)は、開口半角θA=1°の場合である。この場合には、図3(C)から明らかなように、弾性表面波の伝搬状態は点音源の場合と類似した発散ビーム形状である。即ち、伝搬角φ1が増加するにつれて音場の幅も増加しφ1=90°で最大になった後は再び幅が減少し対極点180°で音源上と同じ分布が再現される。この場合は、図3(A)を参照しながら上述した集束ビームの場合とは異なり、θ1<θAの帯状部分に弾性表面波のエネルギーが閉じ込められることが無く、φ1=90°では球の表面全体に広がってしまう。この場合には、球面のφ1=90°かつθ1>θAの部分に他の物体を接触させると音場に擾乱が生じる。
【0046】
図3(B)は、開口半角θA=3.5°の場合である。この場合には、図3(B)から明らかなように、弾性表面波の伝搬状態は伝搬角φ1が増加しても音場の幅は殆ど変化しないコリメートビーム形状である。即ち、θ1=θAの帯状部分に弾性表面波のエネルギーが閉じ込められている。これは無限媒体中のベッセルビームと同様な特性である。そしてコリメートビームが得られる開口半角θAをコリメート角θcolと呼ぶ。
【0047】
図3(A)、図3(B)及び図3(C)から明らかなように、開口半角θAがコリメート角θcolに略等しい時、最も幅の狭い帯状部分に弾性表面波のエネルギーが閉じ込められている
さらに、波数パラメータmを変化させて上述したのと同様の数値解析を行った結果、波数パラメータmによりコリメート角θcolが変化することが分かった。図3(D)は、波数パラメータmが300の場合に弾性表面波の伝搬状態がコリメートビーム形状になるのは、開口半角θAが略4.5°であることを示しており、この場合のコリメート角θcolは約4.5°になる。
【0048】
以下には、波数パラメータmが変化した場合のコリメート角θcolの値を示す。
【0049】
なおこれは、数値計算による近似値である。このように、コリメート角θcolは波数パラメータmから式(3)を用いて求められる。
【0050】
再び図1を参照して本実施の形態の弾性表面波素子を説明する。櫛形電極121,122から弾性表面波が出力されると、上述のように円環状表面111に沿って伝搬する。説明の便宜上、円環状表面111の幅を櫛形電極121,122の重なり幅と等しく取る。櫛形電極121,122の重なり幅は、コリメート角θcolにより規定される弾性表面波の発生源の幅以上である。より好ましくは重なり幅はコリメート角θcolにより規定される幅に等しい。弾性表面波は、上記数値計算の結果から円環状表面111の幅を超えて拡散することなく、円環状表面111に沿って伝搬する。このように、弾性表面波が、コリメート角θcolにより規定される幅と等しい幅かこの幅に近い幅をもつように弾性表面波を励起することで、過度のエネルギーの集中や散乱が円環状表面111で起きない利点がある。この伝搬の様子は図3(A)及び図3(B)に対応する。コリメート角θcolを決定する波数パラメータmの代表的な値は、100〜800である。
【0051】
上記数値計算では、弾性表面波の波長及び位相速度は弾性表面波が伝搬する球面の全ての場所で一定であるとして説明した。しかしながら、結晶である水晶で形成された球では、波長及び位相速度は結晶方位に従って一般に異なる。但し、振動数は一定である。よって、波数パラメータmも球面上で一定ではないが、近似的に一定であるとする。この一定の波数パラメータmを求めるために、弾性表面波励起手段により弾性表面波が励起される基材の部分を伝搬している弾性表面波の波長を用いる。即ち、櫛形電極121,122が設けられた基材110の部分の波長を用いる。
【0052】
弾性表面波が伝搬する円環状表面111は、上述したように基材110を形成しいている単結晶の結晶方位で決まる所定の経路に沿って形成されている。この経路は三方晶系に属する水晶については発明者らの実験によって確認されている。この経路は水晶のZ軸に関係している。水晶の結晶軸は図4に示されている。
【0053】
図5はこの経路を示す図である。説明の便宜上、Z軸は球状の基材110の中心を通るものとする。結晶方位で決まる所定の経路は4つの経路a,b1,b2,b3を含んでいる。経路aは基材110の表面である球面と、この球面の中心を通り、Z軸と直交する平面との交線である。経路b1,b2,b3はそれぞれ基材110の表面である球面と、この球面の中心を通り、Z軸と平行な3つの平面との交線である。経路b1を含む平面は経路b2,b3を含む平面とそれぞれ60°,−60°の角度をなしている。Z軸を球状の基材110の地軸と考えると、経路aは赤道であり、経路b1,b2,b3は60°間隔で並んでいる6つの経線で構成される。
【0054】
本実施の形態では、弾性表面波は図1に示されているように経路aに沿って伝搬する。即ち、円環状表面111は経路aに沿って形成されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。経路a,b1,b2,b3の内の少なくとも2つの経路に沿って弾性表面波を伝搬させてもよい。例えば経路aと経路b1に沿って伝搬させる場合、経路a,b1上に弾性表面波励起手段をそれぞれ設ける。また、経路aと経路b1が交差する基材110の部分に弾性表面波を散乱する散乱体又は弾性表面波を反射する反射体を設け、経路aを伝搬する弾性表面波を経路b1に分岐してもよい。経路a上の弾性表面波の乱れが無視できる程度の散乱体又は反射体を設ければ、経路a上で励起され、経路aを周回する弾性表面波を経路aの外で検出できる。
【0055】
櫛形電極121,122をより詳細に説明する。図6は櫛形電極121,122の平面図である。櫛形電極121は弾性表面波が伝搬する向きに配列している複数の電極片l1,l2,l3,…を有している。櫛形電極122は電極片l1,l2,l3,…と互い違いに配列している複数の電極片r1,r2,r3,…を有している。隣り合う電極(例えば電極片r1と電極片l1、又は電極片l1と電極片r2)の間隔は全て等しい。電極片l1,l2,l3,…と電極片r1,r2,r3,…とは経路aに対して垂直に延びている。即ち、Z軸を基材110の地軸とすれば、これらの電極片は経線に沿って延びている。これらの電極片は周期的に並んでいる。即ち、電極片l1,r1を経路aに沿って移動すれば、電極片l2,r2、電極片l3,r3、…にそれぞれ重なる。
【0056】
電極周期Pは一定である。ところで、弾性表面波励起手段により励起される弾性表面波の波長は、基材の球面の半径の1/10以下であることが好ましい。このとき、この波長は電極周期Pにほぼ等しくなる。但し、上述したように、弾性表面波励起手段により励起される弾性表面波の波長、即ち櫛形電極121,122が設けられた基材110の部分の弾性表面波の波長は、基材110のその他の部分の波長と異なる場合がある。
【0057】
櫛形電極121,122が配置されている基材110の位置は、図1のように経路a上にある。櫛形電極121,122は、これから出力された弾性表面波が経路aに沿って伝搬するように向けられている。経路aはX線回折方法などを用いて明らかにされたZ軸に基づいて求められる。
【0058】
電極周期Pは以下のようにして決められる。以下、15.1MHzの弾性表面波のみを励起して周回させる場合について説明する。電極周期Pは、水晶の表面の弾性表面波の代表的な位相速度値3160m/sを周波数で割って求める。
【0059】
3160(m/s)/15.1(MHz)=209.3μm
予定する周波数に正確に且つ高精度に出力特性が実現できるように電極周期Pを決めるには、先ず、結晶方位のX軸あるいはY軸を求める。次に、櫛形電極121,122の設置予定位置の理論的なZ軸周回方向の位相速度を求め、その速度を周波数で割った値を電極周期Pとする。
【0060】
重なり幅Wは、上述したように、基材110の球面の直径の半分以下でこの球面の半径の1/100以上である。
【0061】
次に、櫛形電極の変形例を説明する。図7は本変形例の櫛形電極125,126の平面図を変形した図である。図7では水晶の基材110のZ軸を地軸としたとき、全ての緯線が同じ長さにされている。即ち、地軸に対して垂直に基材110を見ると、基材110は正方形に見える。
【0062】
櫛形電極125は経路aに沿って配列している複数の電極片S1,s1,S2,s2,S3,s3,…を有している。これらの電極片は経線方向に延びている。電極片S1,s1、電極片S2,s2、電極片S3,s3…はそれぞれ組みになっている。これらの電極片は周期的に並んでいる。電極片S1と電極片S2の間隔、電極片S2と電極片S3の間隔、…は全て等しい。電極片S1と電極片s1の間隔、電極片S2と電極片s2の間隔、電極片S3と電極片s3の間隔、…は全て等しい。電極片S1,s1を経路aに沿って移動すれば、電極片S2,s2、電極片S3,s3…にそれぞれ重なる。
【0063】
櫛形電極126は経路aに沿って配列している複数の電極片T0,T1,T2,T3,…を有している。これらの電極片は経線方向に延びている。電極片T1は電極片s1と電極片S2の間に、電極片T2は電極片s2と電極片S3の間に、それぞれ配置されている。T3以降の電極片Ti(i=3,4,5…)も電極片T1,T2と同様に電極片siと電極片Si+1の間に配置されている。電極片T0は、電極片T0と電極片T1との間に電極片S1,s1が位置するように配置されている。電極片T0,T1,T2,T3,…の内の隣り合う電極片の間隔は全て等しい。電極片T0を経路aに沿って移動すれば、電極片T1,T2,T3,…にそれぞれ重なる。
【0064】
電極片S1,s1,T1、電極片S2,s2,T3、電極片S3,s3,T3…はそれぞれ組みになっている。上記説明からこれらの電極片の組みは周期的に並んでいることは明らかである。櫛形電極125,126の寸法を説明する。電極周期Pは図7に示されているように、
電極周期P=(電極片S1と電極片S2の間隔)+(経路aに沿った方向の電極片S1の幅)
で表される。電極周期Pを用いて櫛形電極125,126の寸法は、
経路aに沿った方向の電極片S1の幅=P/4
経路aに沿った方向の電極片T1の幅=P/8
電極片T1と電極片S2の間隔=3P/16
となるように設定されている。
【0065】
櫛形電極125,126を上記のように形成すると、経路aに沿って一方向(図7の矢印の方向)に弾性表面波を出力することができる。
【0066】
本実施の形態の櫛形電極121,122及び櫛形電極125,126には様々な修正と変形とが可能である。例えば、電極片は基材110の経線に沿って延びているが、経線に沿って湾曲していてもよい。図8のような各部が縦方向と横方向に直線的に延びる穴を有する板状のフォトマスクを基材110の球面に対向させて露光するフォトプロセスにより櫛形電極を形成する場合、電極片は経線に沿って湾曲する。このようなフォトマスクは容易に設計することができる。
【0067】
また、隣り合う電極片の間隔(例えば、電極片S1と電極片s1の間隔、電極片s1と電極片T1の間隔等)又は、電極片の組みの間隔(電極片T1と電極片S2の間隔)、又は電極周期を一定にしなくともよい。上述したように、結晶である水晶で形成された球では、波長及び位相速度は結晶方位に従って一般に異なる。電極片が位置する基材110の部分の波長に応じてそれぞれの電極片の間隔や電極周期等を設定すれば、所望の周波数をもつ弾性表面波を効率よく励起できる。特に、電極片の数が比較的多く、かつ弾性表面波が基材110を1周するために必要な位相変化が2π(rad)の整数倍になるように櫛形電極が形成されている場合、このような弾性表面波素子を用いた電気信号処理装置は、特定の周波数において強い出力をもつ共振器として使用できる。
【0068】
ところで、従来、基材が平板状であり、広帯域用の弾性表面波素子では、電極片の組みが周期的に並んでいる弾性表面波素子が知られている。このような弾性表面波素子を球状の基材110に応用すれば、広い波長域にわたって弾性表面波が励起される。波長と関係しているコリメート角θcolが櫛形電極の重なり幅以上であるような波長をもつ弾性表面波だけが拡散せずに基材110を周回できる。
【0069】
また、本実施の形態の弾性表面波素子を用いた電気信号処理装置では、入力用電極120a,120bに高周波電源123が接続されている。しかしながら、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、高周波電源123の代わりに、高周波の電波を受信するアンテナを入力用電極120a,120bに接続してもよい。
【0070】
アンテナに接続された電気信号処理装置を周波数フィルタとして使用する例を説明する。アンテナに高周波の電波が受信されると、高周波電源123が接続されていた場合と同様に、櫛形電極121,122に電界が発生し、弾性表面波が励起される。櫛形電極121,122は、電界が発生したとき、特定の周波数をもつ弾性表面波のみが励起されるように形成されている。櫛形電極の形状によって特徴づけられた周波数成分のみが励起される。この弾性表面波に応じた電気信号が出力用電極から出力される。
【0071】
次に、本発明の第2の実施の形態の弾性表面波素子と、この弾性表面波素子を用いた本発明の実施の形態に係わる電気信号処理装置と、この電気信号処理装置を用いた本発明の実施の形態に係わる環境評価装置とを説明する。図9は弾性表面波素子と、弾性表面波素子を用いた電気信号処理装置の構成を示す図である。弾性表面波素子は単結晶の水晶で形成されている球状の基材210を有している。基材210は石英ガラスで形成されている基台221に保持されている。基台221には基材210の球面の一部に適合する凹部222が設けられている。凹部222は基材210を透視して示されている。基材210は凹部222に嵌合している。本実施の形態では、基材210の半径及び凹部222の曲率半径はともに5mmである。
【0072】
凹部222にはハッチングで示されている櫛形電極223が形成されている。櫛形電極223は弾性表面波励起手段として用いられている。基材210と櫛形電極223は弾性表面波素子を構成している。櫛形電極223は基台221の表面に積層された厚さ500Åのクロムの層と、クロムの層の上に積層された厚さ1500Åの金の層とを有している。これらの層は熱蒸着により形成され、その後フォトリソグラフィーにより櫛形のパターンが形成されるようにパターニングされている。櫛形電極223はその他の形成方法により形成されてもよい。例えば、導電性の箔を櫛形に切り抜きこれを凹部222に貼り付けてもよい。また、印刷、スパッタリング、ゾルゲル法等を用いてもよい。
【0073】
櫛形電極223はこれに電気信号が入力されたときに、後に述べるように、円環状表面に沿って伝搬しこの電気信号に応じた弾性表面波を励起する。このように弾性表面波を励起するとともに、櫛形電極223は、円環状表面に沿って伝搬する弾性表面波がこの櫛形電極に入射したときにこの弾性表面波に応じた電気信号を発生する。
【0074】
櫛形電極223にはインピーダンスマッチング回路224を介してサーキュレータ225、発信器226、アンプ227、ディジタルオシロスコープ228が接続されている。インピーダンスマッチング回路224は櫛形電極223に設けられた入出力用電極220a,220bに接続されている。入出力用電極220a,220bは、櫛形電極223に所定の電気信号を入力するとともに、櫛形電極223により発生された電気信号を出力する。入出力用電極220a,220bは入出力部として用いられている。櫛形電極223に入力される電気信号は発信器226により発生され、櫛形電極223により発生された電気信号はディジタルオシロスコープ228に入力される。基材210と櫛形電極223と入出力用電極220a,220bとは電気信号処理装置を構成している。本実施の形態では、電気信号処理装置は、周波数が15.1MHzの狭帯域周波数フィルタを形成する。
【0075】
水晶の基材210のZ軸は水平にされている。基材210は、経路aに沿って櫛形電極223の電極片が並ぶように凹部222に対して位置決めされている。第1の実施の形態で説明したように、経路aはZ軸を地軸としたときの赤道である。
【0076】
櫛形電極223の電極周期は以下のようにして設定される。以下、基材210を等方性の材料で形成されていると見なす。水晶の結晶のYカット面のX軸伝搬のレイリー波の位相速度は3160m/sである。上述したように周波数が15.1MHzになるように電極周期を設定する。波数パラメータは150になるようにする。ことから弾性表面波の波長は3160m/s÷15.1MHz=209.3μmである。従って、電極周期を0.209mmに設定する。
【0077】
弾性表面波が拡散しないような重なり幅は以下のようにして設定される。基材210の周囲長は31.415mmである。150である波数パラメータに対応するコリメート角θcolは、第1の実施の形態の数値計算から7.0°である。コリメート角の定義から重なり幅は、
従って、重なり幅を1.22mmに設定する。
【0078】
水晶の基材210の表面には5000Åの樹脂薄膜が形成されている。櫛形電極223に電圧を印加すると、櫛形電極223は電界を発生する。この電界は、樹脂薄膜を通過し、凹部222に対向している基材210の表面に印加される。これに対して、基台に凹部が設けられておらず、平板状の基台に櫛形電極が形成され、これらが基材210に対向している場合は、電界は基材210の表面の比較的狭い領域にしか印加されない。
【0079】
尚、樹脂薄膜は基材210の周りの環境の変化に応じて物性が変化する材料で形成されていてもよい。また、特定の物質と反応して物性が変化する材料で形成されていてもよい。
【0080】
基材210の表面に電界が印加されると、水晶の圧電効果により基材210の表面上の円環状表面211に沿って伝搬する弾性表面波が励起される。円環状表面211は経路aに沿って延びている。櫛形電極223の近傍での円環状表面211の幅は櫛形電極223の重なり幅とほぼ等しい。
【0081】
基材210の表面に形成された樹脂薄膜と櫛形電極223との間には粒径10μmの樹脂粒子が分散している。これにより、櫛形電極223が円環状表面211から離間しているので、励起された弾性表面波は櫛形電極223等により反射されたり散乱されたりしない。櫛形電極223と円環状表面211との間隔は電極周期の1/4以下が望ましい。本実施の形態では、この間隔は約10μmであり、電極周期は0.209mmである。
【0082】
所定の条件が揃った場合、樹脂薄膜を導波管として弾性波が励起される場合がある。このようなモードの弾性波も本実施の形態の弾性表面波に含まれる。
【0083】
上記のように設定された電極周期と重なり幅をもつ櫛形電極223に、信号振幅20V、時間幅2ナノ秒のインパルス信号を1ミリ秒置きに入力して、その出力信号の観測を20MHzのローパスフィルターを通して測定した波形を図10に示す。雑音信号が非常に小さく、10回まで周回することが確認できた。
【0084】
また、この周波数フィルタとして用いられている電気信号処理装置の入出力用電極220a,220bに15MHzと10MHzの周波数が混合した電気信号を入力した。入出力用電極220a,220bから出力された電気信号をディジタルオシロスコープ228で捉え、電気信号の周波数分析を行ったところ、15MHzの周波数成分のみが観測され、10MHzの周波数成分は除去されることが確認された。
【0085】
次に、本発明の実施の形態に係わる環境評価装置を説明する。環境評価装置は入出力用電極220a,220bを有する上述の電気信号処理装置を備えている。ここでは、基材210の周りの環境を評価しようとしている。環境評価装置は、この電気信号処理装置により出力された電気信号の周波数、この電気信号の強度、及び電気信号処理装置に電気信号が入力されてから電気信号処理装置により電気信号が出力されるまでの時間の内の少なくとも1つに基づいて基材210の周りの環境を評価する処理部をさらに備えている。環境を評価する、とは温度や湿度などのこの環境の状態を決定する物理量を得ることである。この処理部は入出力用電極220a,220bに接続されている。
【0086】
ところで、ここで用いられている電気信号処理装置に図10を用いて説明したインパルス信号と同じ信号を入力すると、基材210の周りの温度の変化に応じて、このインパルス信号を入力してから基材210を4周目した信号が電気信号処理装置から出力されるまでの時間(遅延時間)が変化することが確認されている。
【0087】
環境評価装置の説明に戻る。処理部は予め遅延時間と温度の対応関係を記憶しているメモリを有している。上記インパルス信号が入出力用電極220a,220bに入力されると、処理部は遅延時間を検出し、メモリに記憶された対応関係を用いて温度を得る。このようにして処理部は遅延時間に基づいて温度を評価する。
【0088】
また、ここで用いられている電気信号処理装置に所定の電気信号を入力し、基材210を加湿したところ、急激に電気信号の出力が低下することが確認された。これは基材210の表面に結露が生じ、弾性表面波の伝搬が妨げられたことに起因している。湿度と電気信号の出力の対応関係を記憶するメモリを有する処理部を用意すれば、湿度を評価できる。
【0089】
また、環境変化検地装置は周波数を利用しても基材210の周りの環境を評価できる。
【0090】
次に、環境評価装置の別の実施の形態を説明する。環境評価装置は本第2の実施の形態の弾性表面波素子を有する電気信号処理装置を用いている。ここでは、基材210が置かれていた環境を評価しようとしている。基材210は基台221に着脱可能に保持される。基材210の表面には特定の化学物質と反応して硬度を増す反応膜が形成されている。このような反応膜については多くの研究がなされている。先ず、基材210を評価したい化学物質にさらさせる環境に置く。このとき、反応が起こり、化学物質の濃度等に応じて反応膜の硬度が増す。この後、基材210を基台221に保持させ、弾性表面波の周波数や速度を処理部に入力する。反応膜の硬度に応じて弾性表面波の周波数や速度は決まる。処理部はこれを利用して化学物質の濃度等の性質を評価することができる。即ち、基材210が置かれていた環境を評価できる。
【0091】
生体内の生体物質、例えば消化器系の生体物質の評価に用いる場合には、多数の基材210を経口投与する。これらの基材210は排泄物から取り出される。ここで、基材210が置かれていた環境は生体内である。このとき、経口投与した基材210の全てを回収する必要はない。回収された基材210を用いて上述したのと同様にして生体物質の性質を評価することができる。このような評価には多数の基材210が必要であるが、基材210は殆ど加工を要しないために非常に安価であるので、このような評価にかかるコストは比較的低い。これに対して、第1の実施の形態のように基材110に櫛形電極121,122が形成されているものをこのような評価に用いる場合には、このような評価にかかるコストは比較的高くなる。
【0092】
尚、櫛形電極は、第1の実施の形態の弾性表面波素子のように、基台221ではなく、基材210に設けられていてもよい。
【0093】
次に、本発明の第3の実施の形態の弾性表面波素子を説明する。本実施の形態の構成の大部分は、基本的に第2の実施の形態の構成の大部分と同じである。本実施の形態において、第2の実施の形態の図9を参照して説明した構成部材と実質的に同一の構成部材は、第2の実施の形態の対応する構成部材を指示していた参照符号と同じ参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0094】
本実施の形態の構成が第2の実施の形態の構成と異なる点は、基材210に樹脂薄膜が設けられていないことである。図11は基台221の斜視図である。基台221には、樹脂粒子の代わりに、櫛形電極223と基材210を離間させるためのスペーサ331,332が設けられている。スペーサ331,332は櫛形電極223の櫛形が形成されている部分の両側に配置されており、弾性表面波の伝搬に影響を与えないように設けられている。
【0095】
図12は基台221を図11のL12−L12断面線で切断した断面図であり、スペーサ331,332に基材210が保持されている。L12−L12断面線は2つのスペーサ331,332を貫き、櫛形電極223が弾性表面波を出力する方向に対して直交する方向に延びている。この間隔は第2の実施の形態と同様に櫛形電極223の電極周期の1/4以下が望ましい。本実施の形態では、この間隔は10μmである。
【0096】
円環状表面211の両側に2つのスペーサ331,332がそれぞれ接している基材210の2つの部分があり、これらの部分は円環状表面211から離れている。これにより、弾性表面波は散乱したり反射されたりせずに円環状表面211を伝搬できる。
【0097】
本実施の形態では、櫛形電極223の櫛形が形成されている部分の両側に2つのスペーサが設けられているが、本発明はこれに限定されない。例えば両側に2つずつ設けられていてもよい。あるいは、微小な樹脂の粒子を基材210と櫛形電極223の間に分散させても比較的よいスペーサになり得る。
【0098】
次に、本発明の第4の実施の形態の弾性表面波素子を説明する。本実施の形態の構成の大部分は、基本的に第3の実施の形態の構成と同じである。本実施の形態において、第3の実施の形態の図11及び図12を参照して説明した構成部材と実質的に同一の構成部材は、第3の実施の形態の対応する構成部材を指示していた参照符号と同じ参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0099】
本実施の形態では、第3の実施の形態の基台221の代わりに、基台421を用いている。図13は基台421の斜視図である。基台421の上面には縦方向に延びている角柱状の電極片u1,v1,u2,v2,u3,v3,u4がこの順に横方向に並んでいる。これらの電極片は櫛形電極を形成している。これらの電極片の上面にわたって、基材210の球面の一部沿った形状をもつ凹面が形成されている。電極片u1,v1,u2,v2,u3,v3,u4内の隣り合う電極片はそれぞれ別の電極に接続される。即ち、電極片u1,u2,u3,u4は電極435に、電極片v1,v2,v3は電極436にそれぞれ接続されている。電極435,436は所定の回路を介してインピーダンスマッチング回路224に接続されている。電極片u1,v1,u2,v2,u3,v3,u4と電極435,436は弾性表面波励起手段として用いられている。
【0100】
基台421の上面には基材210を保持するための4つの保持部材431,432,433,434が設けられている。保持部材431,432,433,434に基材210が保持されるとき、基材210は、円環状表面211が電極片u1,v1,u2,v2,u3,v3,u4の上面にわたって対向し、円環状表面211が、櫛形電極により弾性表面波が出力される方向に延びるように位置決めされる。電極片u1,v1,u2,v2,u3,v3,u4の上面と基材210の表面との間隔は、これらが対向する全ての部分にわたって一定である。この間隔は第3の実施の形態の櫛形電極223と基材210の表面との間隔と同じである。保持部材431,432,433,434は円環状表面211の両側に位置する。
【0101】
このように弾性表面波素子を構成しても、第3の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0102】
次に、本発明の第5の実施の形態の弾性表面波素子を説明する。図14(A)は、弾性表面波の励起と検出に使用される装置の全体を概略的に示す平面図である。図14(B)は基材10の拡大された側面図である。
【0103】
本実施の形態では球状の基材10はLiNbO3の単結晶で形成されているが、その他の単結晶、例えば三方晶系に属する水晶、LiTaO3等の単結晶であってもよい。第1の実施の形態の水晶で形成された基材110と同様に、LiNbO3の基材10の円環状表面10bは、図5に示すように、Z軸を地軸として赤道上の経路a、と経線上の経路b1,b2,b3とに沿って形成され得る。経路a,b1,b2,b3の内の少なくとも2つの経路に沿って弾性表面波を伝搬させてもよい。本実施の形態では、円環状表面10bは経路aに沿って形成されている。
【0104】
経路aと基材10の表面沿い直交する方向の所定の範囲wには弾性表面波を発生させるようレーザ照射手段14からレーザ光が照射される。所定の範囲wは円環状表面10bを規定している。
【0105】
レーザ照射手段14は、YAGパルスレーザー光源14aから出射されたレーザービームLをスプリッタ14bにより2つに分割し、分割された一方のレーザービームL1を、遅延素子14cを介して第1の副回動反射鏡14dに導き、第1の副回動反射鏡14dからさらに主回動反射鏡14eに導き、主回動反射鏡14eから基材10の外周面の所定の範囲wに照射している。分割された他方のレーザービームL2は反射鏡14f及びブラグセル(Bragg cell)14gを介して第2の副回動反射鏡14hに導かれ、第2の副回動反射鏡14hからさらに主回動反射鏡14eに導かれ、主回動反射鏡14eから基材10の表面の所定の範囲wに照射されている。
【0106】
2つのレーザービームL1,L2は、所定の範囲wにおいて熱弾性効果を伴う干渉縞を発生させるよう第1の副回動反射鏡14d,第2の副回動反射鏡14h,そして主回動反射鏡14eにより位置決めされる。
【0107】
円環状表面10bを含む基材10の表面にはレーザ吸収部材として用いられている金の膜が施されている。レーザ吸収部材は弾性表面波励起手段を形成している。レーザービームL1,L2が基材の表面の所定の範囲wで重なると干渉縞が発生する。このとき、金の膜にレーザービームL1,L2が吸収される。この結果、熱弾性効果により所定の範囲wにおいて弾性表面波が励起される。励起された弾性表面波は円環状表面10bに沿って経路aに沿った矢印Yで示す方向に拡散せずに周回する。
【0108】
本実施の形態ではレーザ吸収部材を用いているが、基材がレーザ光を吸収する材料で形成され、基材の表面でレーザ光が吸収され弾性表面波が励起される場合は、レーザ吸収部材を用いなくともよい。
【0109】
このように、レーザ光の干渉縞を利用して弾性表面波を発生する方法は、走査干渉縞(SIF)法(H.Nishino,Y.Tsukahara,Y.Nagata,T.Koda and K.Yamanaka;Appl.Phys.Lett.32,1993,2036:K.Yamanaka,O.Kolosov,H.Nishino,Y.Tsukahara,Y.Nagata, and T.Toda;J.Appl.Phys.74,1993,6511)として知られている。
【0110】
本実施の形態の弾性表面波素子はレーザ光の干渉縞を利用しているので、第1の実施の形態のように円環状表面に弾性表面波を散乱や反射させるもの、例えば櫛形電極が接触しない。干渉縞を用いて励起される弾性表面波の波長は干渉縞の間隔に応じている。干渉縞の間隔は容易に変えることができるので、比較的容易に所望の波長をもつ弾性表面波を励起できる。これに対して、櫛形電極を用いた弾性表面波素子では特定の波長の代わりに別の波長をもつ弾性表面波を励起するためには別の櫛形電極を用意する必要がある。
【0111】
図14(A)の装置はさらに、球状の基材10の円環状表面10b中に発生し円環状表面10b中を上述した如く伝搬する弾性表面波を非接触で検出するための検出手段16を備えている。検出手段16は、Arレーザー光源16aと、Arレーザー光源16aから出射されたレーザービームRを球状の基材10の円環状表面10b中で2つのレーザービームL1,L2が照射される位置から離れた位置へと導く種々の光学部材16bと、上記離れた位置で反射されたレーザービームR´をArレーザー光検出器(APD)16eに導く光学部材16c及びナイフエッジ16dを備えている。
【0112】
図14(A)に示されている装置の動作を説明する。3mmの直径の2本のYAGレーザービームL1,L2が基材10の表面の所定の範囲w(図14(B))に対し略直角に向けられており、一方のYAGレーザービームL1に対し他方のYAGレーザービームL2はブラグセル14gを使用して30MHzだけ周波数が偏移されている。異なった周波数を伴った2本のレーザービームL1,L2の干渉により、基材10の表面の所定の範囲w(図14(B))において2本のレーザービームL1,L2が照射された部分に走査干渉縞が形成される。第1の副回動反射鏡14d,第2の副回動反射鏡14h,さらに主回動反射鏡14eのような機械的な調整手段により、干渉縞の平均間隔が弾性表面波の波長に等しくされるとともに、干渉縞の走査速度は弾性表面波の平均位相速度に等しくされ、干渉縞と弾性表面波との位相の整合が行われる。レーザービームL1,L2は、干渉縞と弾性表面波との間の長い相互作用時間を達成するために、100ns程度の特別に設計された長いパルスを有している。長い相互作用時間は、バルク超音波(BAW)を抑制(K.Yamanaka:Jpn.Appl.Phys.36,1997,2939)する一方で、SAWの選択的な発生と増幅のためには必須であると考えられる。
【0113】
弾性表面波は干渉縞に対して直角な、基材10の経路a(図14(B))に沿い、所定の範囲wの円環状表面10b(図14(B))中を繰り返し伝搬する。次に弾性表面波は、干渉縞から所定の距離だけ離れた位置で集光されたArレーザーを用いた光学的ナイフエッジ法による検出手段16によりに検出される。
【0114】
本実施の形態の弾性表面波素子はレーザ光の干渉縞を利用しているので、第1の実施の形態のように円環状表面に弾性表面波を散乱や反射させるもの、例えば櫛形電極が接触しない。干渉縞を用いて励起される弾性表面波の波長は干渉縞の間隔に応じている。干渉縞の間隔は容易に変えることができるので、比較的容易に所望の波長をもつ弾性表面波を励起できる。これに対して、櫛形電極を用いた弾性表面波素子では特定の波長の代わりに別の波長をもつ弾性表面波を励起するためには別の櫛形電極を用意する必要がある。
【0115】
尚、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。
【0116】
【発明の効果】
以上詳述したことから明らかなように、結晶材料で形成された基材を用い、より性能の優れた弾性表面波素子、弾性表面波素子を用いた電気信号処理装置、及び電気信号処理装置を用いた環境評価装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における弾性表面波素子と、この弾性表面波素子を用いた本発明の実施の形態における電気信号処理装置との構成を示す図である。
【図2】弾性表面波の振幅を計算するために用いた座標系を示す図である。
【図3】(A)、(B)、(C)及び(D)は、図2の座標系を使用して作成された式により計算された波数パラメータm(円周の長さと弾性表面波の波長の比)と開口半角(振動手段を設ける幅の1/2)を変えて得られた弾性表面波が球状の基材の表面を伝搬する4つの状態を概略的に示す図である。
【図4】水晶の結晶軸を示す図である。
【図5】弾性表面波が伝搬する経路を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における弾性表面波素子の櫛形電極の平面図である。
【図7】図6の櫛形電極の変形例の平面図を変形した図である。
【図8】櫛形電極のフォトマスクの穴の平面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における弾性表面波素子と、この弾性表面波素子を用いた電気信号処理装置の構成を示す図である。
【図10】図9の弾性表面波素子で測定された弾性表面波の波形を示す図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態における弾性表面波素子の基台の斜視図である。
【図12】図11のL12−L12断面線で切断した基台の断面図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態における弾性表面波素子の基台の斜視図である。
【図14】(A)は弾性表面波の励起と検出に使用される装置の全体を概略的に示す平面図であり、(B)は基材の拡大された側面図である。
【符号の説明】
10 基材
10b 円環状表面
14 レーザ照射手段
14a YAGパルスレーザー光源
14b スプリッタ
14c 遅延素子
14d 第1の副回動反射鏡
14e 主回動反射鏡
14f 反射鏡
14g ブラグセル
14h 第2の副回動反射鏡
16 検出手段
16a レーザ光源
16b 光学部材
16e レーザ光検出器
16c 光学部材
16d ナイフエッジ
111 円環状表面
120a,120b 入力用電極(入力部)
121,122 櫛形電極
123 高周波電源
125,126 櫛形電極
211 円環状表面
220a,220b 入出力用電極(入出力部)
221 基台
222 凹部
223 櫛形電極
224 インピーダンスマッチング回路
225 サーキュレータ
226 発信器
227 アンプ
228 ディジタルオシロスコープ
331,332 スペーサ
421 基台
431,432 保持部材
435,436 電極
Claims (16)
- 少なくとも球面の一部で形成されていて円環状に連続している円環状表面を有しており、単結晶で形成されている基材と、
前記円環状表面に沿って伝搬する弾性表面波を励起する弾性表面波励起手段と
を備えていることを特徴とする弾性表面波素子。 - 前記円環状表面は、前記基材を形成している単結晶の結晶方位で決まる所定の経路に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波素子。
- 前記基材は、圧電性材料で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性表面波素子。
- 前記基材を形成している単結晶の結晶系は、三方晶系であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の弾性表面波素子。
- 前記基材を形成している単結晶は、水晶であることを特徴とする請求項4に記載の弾性表面波素子。
- 前記基材を形成している単結晶は、LiNbO3の単結晶およびLiTaO3の単結晶からなる群から選択される単結晶であることを特徴とする請求項4に記載の弾性表面波素子。
- 前記基材を形成している単結晶の結晶系は三方晶系であり、結晶方位で決まる前記所定の経路は、球面と、この球面の中心を通り、前記三方晶系の単結晶のZ軸と直交する平面との交線を含んでいることを特徴とする請求項4乃至6いずれか1項に記載の弾性表面波素子。
- 前記基材を形成している単結晶の結晶系は三方晶系であり、結晶方位で決まる前記所定の経路は、球面と、この球面の中心を通り、前記三方晶系の単結晶のZ軸と平行な平面との交線を含んでいることを特徴とする請求項4乃至7いずれか1項に記載の弾性表面波素子。
- 前記弾性表面波励起手段により励起される弾性表面波の波長が、基材の球面の半径の1/10以下であることを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項に記載の弾性表面波素子。
- 前記弾性表面波励起手段は、前記円環状表面に沿って設けられ、高周波電源に接続される櫛形電極を含んでいることを特徴とする請求項1乃至9いずれか1項に記載の弾性表面波素子。
- 前記櫛形電極は前記円環状表面から離間していることを特徴とする請求項9に記載の弾性表面波素子。
- 前記櫛形電極の重なり幅は、前記基材の球面の直径の半分以下でこの球面の半径の1/100以上であることを特徴とする請求項10又は11に記載の弾性表面波素子。
- 前記弾性表面波励起手段は、前記円環状表面に設けられ、レーザ光を吸収し熱弾性効果により弾性表面波を励起するレーザ吸収部材を有していることを特徴とする請求項1乃至9いずれか1項に記載の弾性表面波素子。
- 請求項1乃至12いずれか1項に記載の弾性表面波素子と、
所定の電気信号を前記弾性表面波励起手段に入力し、この結果弾性表面波励起手段は前記円環状表面に沿って伝搬する弾性表面波を励起する入力部と、
この円環状表面に沿って伝搬する弾性表面波を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された弾性表面波に応じた電気信号を出力する出力部と
を備えていることを特徴とする電気信号処理装置。 - 請求項10乃至12いずれか1項に記載の弾性表面波素子を備えている電気信号処理装置であって、
前記櫛形電極は、電気信号が入力されたときに前記円環状表面に沿って伝搬する弾性表面波を励起し、前記円環状表面に沿って伝搬する弾性表面波がこの櫛形電極に入射したときにこの弾性表面波に応じた電気信号を発生し、
この電気信号処理装置は、前記櫛形電極に所定の電気信号を入力するとともに、この櫛形電極により発生された電気信号を出力する入出力部をさらに備えていることを特徴とする電気信号処理装置。 - 請求項14又は15に記載の電気信号処理装置と、
前記電気信号処理装置により出力された電気信号の周波数、この電気信号の強度、及び前記電気信号処理装置に電気信号が入力されてから前記電気信号処理装置により電気信号が出力されるまでの時間の内の少なくとも1つに基づいて前記基材の周りの環境又は前記基材が置かれていた環境を評価する処理部をさらに備えていることを特徴とする環境評価装置。
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