JP3974060B2 - インクジェット用印刷媒体及びその作成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、概して、インクジェット印刷に関し、より詳細には、その上に印刷されたインクジェット画像の湿気堅牢度及び退色堅牢度性能を向上させる印刷媒体コーティングを有する印刷媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
光及び周囲空気退色を含む、画像の退色は、インクジェット印刷において克服すべき重大な問題として認識されつつある。初期の関心事は、例えば、耐水性及び耐スミア性(こすり汚れ耐性)に関するものであった。これらの初期の関心事は大部分が克服されており、そして時間の経過による画像の退色、特にカラー画像の退色が、重大な問題となってきた。
【0003】
1つの従来技術の解決法は、インクに画像退色添加物を含有させることに関するものである。しかし、これはインクを複雑化し且つその結果は非常に有望なものではなかった。添加物の包含は、しばしば、インクの信頼性を低下させるのである。
【0004】
別の従来技術の解決法は、媒体コーティングの中に、典型的には、シリカ(二酸化ケイ素)又はシリカ基剤の添加物を含有させることに関するものである。その欠点は、これによって多孔質の媒体表面上に均一且つ均質な添加物の層が形成されないということである。結果として、印刷された画像の着色剤分子が種々の化学的環境に曝されることになる。
【0005】
さらに従来技術の別の解決法は、一般に比較的良好な画像耐久性を示す膨潤性コーティングを媒体上に用いることである。このアプローチの主な欠点は、本来の乾燥時間と湿り堅牢度が劣ることである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、インクもしくは印刷媒体の何れにも不利な影響を及ぼさずに画像の退色を低減させる必要性は存在するのである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本明細書に開示した実施態様によれば、印刷媒体のための化学的に変性されたシリカコーティングはシリカを有機シランで処理することによって調合される。その変性された(シリカコーティングを有する)印刷媒体には、その後、在来型のインクジェットインクを用いて、インクジェットプリンタで通常の方法により印刷することができる。先ずシリカを処理し、次いで、処理済みシリカを印刷媒体上にコーティングする。
【0008】
印刷適用の為のシリカ基剤の組成物で被覆された印刷基体上に印刷されたインクジェット画像の湿気堅牢度及び退色堅牢度性能を向上させる方法は、
【0009】
(a) 一定量のシリカを準備し、
【0010】
(b) そのシリカを乾燥窒素流通下、無水溶媒中において、式SiR[式中:(i)少なくとも1つのRはハロゲン及びアルコキシから成る群から選択され、(ii)少なくとも1つの他のRはアミノプロピル、シアノプロピル及びオクタデシルから成る群から選択される活性基であり、そして(iii)残りのRはどれも低級アルコールである]を有する有機シランで処理することにより変性し、そして
【0011】
(c) 変性されたシリカで基体をコーティングすること、からなる。
【0013】
さらに他の実施態様においては、上記方法で作成された印刷媒体も含まれる
【0014】
1つ以上のシラン反応物を使って変性シリカを調合してもよい。あるいは、2つ以上の別々に変性された材料を所望の比率で混合してもよい。
【0015】
開示した実施態様の、表面に変性シリカを有する印刷媒体及び方法は、両方とも、シリカの化学的な変性によって画像退色に向かうシリカ表面の触媒活性をどれも排除するという点において従来技術における諸問題を解決するものである。これは、コーティングの画像退色と湿気堅牢度特性を改善するものである。換言すれば、画像の着色剤分子に、より好都合な化学的環境が提供されるのである。シラン変性用物質は、ファンデルワールス力によりインク中の染料分子と相互作用し、それによって画像の湿気堅牢度を改善する。幾つかの場合、結合していない変性用物質の末端は、染料(着色剤)分子に結合する官能基(幾つかの場合の着色剤分子のそれとは反対の電荷)を備えており、それによって染料分子との付加的な相互作用をもたらし、画像の湿気及び水堅牢度がさらに改善される結果となる。
【0016】
それはシリカの表面シラノール基の化学的な変性である故に、均一に分布した結合層が形成され、そしてそれは元のシリカの微小孔を塞がず、元の孔構造は大部分が保持される。元の表面は、結合した層によって保護される。結合部分の有機官能基は、染料分子と相互作用して、湿気に曝された時にそれらが動くのを妨げる。
【0017】
【発明の実施の形態】
ここに開示された種々の実施態様に従い、(コーティングの前又は後で)シリカを1つ以上の有機シランと反応させることによりシリカを変性し、そして基体上にコーティングするか又は基体上にコーティングされたシリカを化学的に変性する。シリカの変性反応は、既知の化学反応に基づく。これらの処理は、(1)K.K.Unger,”Porous Silica”,Journal ofChromatography Library,Vol.16,第91−95頁(1979)、及び(2)High Performance Liquid Chromatography,Advances and Perspectives−Vol.2,Csaba Howarth,ed.,第134−139頁(1980)を含む、多くの文献に開示されている。
【0018】
変性反応に用いられる有機シラン反応剤の一般式は、SiRであり、ここで、少なくとも1つのR基は、ハロゲン、好ましくは、Cl、又はアルコキシ、好ましくは、C〜C、そして最も好ましくは、Cでなければならず、ハロ又はアルコキシのR基は、シリカ表面上のシラノール基と反応する基である。3つの(又はそれ以下の)残りのR基のうち、少なくとも1つのR基は、以下により詳しく記述する、活性基でなければならず、そして残りの全てのR基は、小さいアルキル基、好ましくは、C〜C、そして最も好ましくは、Cである。変性されたシリカ表面に必要とされる諸性質を付与するのは活性R基である。
【0019】
活性R基の例としては、限定するものではないが、次のものが挙げられる。
【0020】
(1) C22までの直鎖又は分枝鎖アルキル基、直鎖の場合、式
−CH−(CH−CHによって表される。ここで、nは20までの整数である。
【0021】
(2) (a)シアノ、(b)アミノ、(c)カルボキシ、(d)スルホン酸塩、(e)ハロゲン、(f)エポキシ、(g)フルフリル、(h)ピリジル、及び(i)イミダゾリン誘導体で置換されたCまでのアルキル基。
【0022】
(3) 8炭素原子までのシクロアルキル、シクロアルケニル、及びエポキシシクロアルキル基、及びそれらのアルキル誘導体。
【0023】
(4) フェニル及びフェノキシ基並びにそれらのアルキル誘導体。
【0024】
(5) (a)アミノ、(b)カルボキシ、(c)スルホン酸塩、及び(d)ハロゲンで置換した(4)の同等物。
【0025】
(6) 第四級アミン基。及び
【0026】
(7) モノ−エチレンイミン及びポリ−エチレンイミン基。
【0027】
(1)の例には、エチル、プロピル、及びブチルが含まれる。(2)の例には、(a)シアノエチル、シアノプロピル、及びシアノブチル、(b)アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチル、及びアミノエチルアミノプロピル及びアミノエチルアミノブチルのような組合せ、(f)5,6−エポキシヘキシル、(g)フルフリルメチル、(h)エチルピリジン、及び(i)4,5−ジヒドロイミダゾール3−プロピルが含まれる。(3)の例には、シクロヘキサニル、シクロヘキセニル、シクロヘキセニルエチル、シクロペンタジエニル、及び3,4−エポシシシクロヘキシルエチルが含まれる。(4)の例には、3−フェノキシプロピル及びフェノキシフェニルが含まれる。(5)の例には、(a)N−フェニルアミノプロピル及びm−アミノフェノキシプロピル、(b)カルボキシフェニル、(c)フェニルスルホネート−エチル、及び(d)クロロフェニルが含まれる。(6)の例には、N−プロピルN,N,N−トリメチルアンモニウム−クロリド及び(2)N−プロピルN,N,N−トリブチルアンモニウム−クロリドが含まれる。
【0028】
シリカの変性は、次の一般な説明に従って実施することができる。最初に、高温の真空中でシリカを乾燥させて、吸着湿気を取り除く。次にその乾燥シリカを室温まで冷却する。
【0029】
シリカを変性する反応が行われる溶媒は、適切な乾燥剤で乾燥する。使用できる一般的な溶媒は、トルエン、ジクロロメタン、イソプロパノール、及びメタノールを含む。
【0030】
次に、シリカを脱水溶媒に混合する。例えば、音波処理又は高エネルギー混合によって溶媒中に分散させてよい。使用される溶媒の量は、シラン反応剤の濃度(添加時)が一般に全溶媒の約10%を越えないように選択されなければならない。
【0031】
シリカ/溶媒の混合物を収容している容器は、乾燥窒素を流して、そして次に、そのシラン反応剤を反応容器中に導入する。添加される反応剤の量は、シリカの表面積とシリカの表面シラノール濃度によって決定される。反応条件を選択する際、その反応性を考慮しなければならない。例えば、アルコキシシランは、ハロシラン同等物より反応性が低い。従って、反応時間と温度は、使用する反応剤を検討した後に調整することができる。このような条件の決定は、十分に当業者の能力内である。典型的には、乾燥窒素下で約6時間以上の環流を要する。高温でよりむしろ室温で実施される場合は、より長い反応時間が必要となるであろう。本質的に、そしてよく知られているように、アルコキシ又はハロゲン基は、SiOH基と反応してSi−O−C結合を形成する。
【0032】
反応完了後、その生成物成分を濾過しそして余剰溶媒で洗浄し、その後、乾燥させることができる。この一般的手順は、本明細書での教示に従って用いられるコーティング組成物の調合に実施することができる。この反応は、また、余剰の反応剤を使用せずに実施してもよく、それ故に洗浄によって余剰の反応剤を取り除く必要がなくなる。メタノールは好ましい溶媒である。このメタノールは、次のコーティング段階で一般に用いられる水と混和性であることから、その少量が生成物に残留してもよい。
【0033】
一例として、変性シリカの調合に際し、約40グラムの被変性シリカを約110℃の真空中で一晩乾燥させて吸着湿気を除去する。次いで、その乾燥したシリカを室温まで冷却させる。次に、約500mlのメタノールを硫酸カルシウムで乾燥する。その後、乾燥したシリカを乾燥したメタノールに混合し、そして音波処理によってシリカをメタノール中に分散させる。乾燥窒素を低速で反応容器中に通して周囲湿気を排除する。次に、シラン反応剤を反応容器中へ注入し、その反応混合物を周囲温度で攪拌するか又は環流してもよい。
【0034】
反応に使用されるシラン反応剤の量は、シリカの表面積、シリカの表面シラノール濃度、及び反応剤の官能性によって決まるものである。二官能性のシラン反応剤(即ち、2つのアルコキシ又はハロゲン基を含んでいる)の完全な反応に要するシラン反応剤の量(グラム単位)は、前の段落における例に基づき、
40g×Sm/g×Mg/mol×8micro mol/m×10/2
で与えられる。ここで、40gのシリカが変性され、S=シリカの表面積(m/g単位)、M=シラン反応剤の分子量(g/mol単位)、そしてシリカの表面シラノール濃度は8micro・mol/mである。2という係数は、1つの二官能性反応剤分子が2つのシラノール基と反応するという前提に由来するものである。生成物を濾過する。もし過剰の反応剤が使用される場合は、それを無水メタノールで洗浄して除去する。何れの場合も、当該生成物はその後で乾燥させる。
【0035】
次に、ここに開示した変性シリカを選択した基体上にコーティングする。基体上へのコーティング組成物の塗布は、エアナイフコータ、ブレードコータ、ゲートロールコータ、ドクターブレード、マイヤーロッド、ローラ、リバースローラ、グラビアコータ、ブラシ塗布機、噴霧機、等を含む、当業者に周知の多数の方法のどれかを利用して実行することができる。
【0036】
【実施例】
実施例1
高性能液体クロマトグラフィーに使用される米国マサチューセッツ州所在のWaters社から入手可能な市販の変性シリカシリーズ(この場合、活性基は、アミノプロピル、シアノプロピル、又はオクタデシルである)を、対応する未変性同等物を含めて、写真基体上へ手塗りコーティングした。バインダーとしてポリビニルアルコールを使用した。シアン、イエロー、マゼンタ、及びこれらの原色を適切に混ぜて作った赤、緑、青色の線を初期幅40ミルでプリントした。乾燥させた後、そのプリントサンプルを温度35℃で相対湿度80%に4日間平衡状態に保った。線幅を測定した。下表は、高い温度と湿度への露出の結果としての線幅の増大量を示すものである。この増大量は湿気堅牢度の尺度であり、増大量が高いほど、湿りにじみ性能が劣る。変性シリカは、未変性同等物よりはるかに良好に機能したことが観察される。
【0037】
【表1】
Figure 0003974060
【0038】
実施例2
ニューヨーク州Degussa Huls,Water−ford,からインクジェット用として市販されているシリカ(Sipernat 310)を下に示す反応剤で変性した。
【0039】
【化1】
Figure 0003974060
【0040】
無水窒素下の無水メタノール中で反応を6時間実施した。反応には余剰反応剤を使用し、そのような未反応反応剤を無水メタノールで抽出した。生成物を乾燥させそして元素分析によりそれは9%の炭素含量を有することが示され、反応が実際に成功のうちに完了したことが確認された。バインダーとしてポリビニルアルコールを使用して生成物を写真基体上にコーティングした。その画像退色(光堅牢度及び空気堅牢度)を未変性同等物と比較した。試験用のマゼンタ染料系インク(マゼンタは、一般に、画像退色が最も劣るものである)に関して、変性シリカは、加速試験の結果、28年という光堅牢度を示し、同じ試験で、未変性同等物は、11年の光堅牢度を示した。同様に、空気退色に関する加速試験において、変性シリカは、未変性のものに比較して2乃至3倍の改善を示した。

Claims (4)

  1. 印刷基体上に、変性シリカとバインダーを含むコーティングを有するインクジェット印刷のための印刷媒体であって、前記変性シリカが、予め乾燥させたシリカと、式SiR[式中、(i)少なくとも1つのRはハロゲン及びアルコキシから成る群から選択され、(ii)他の少なくとも1つのRはアミノプロピル、シアノプロピル及びオクタデシルから成る群から選択される活性基であり、そして(iii)残りのRはどれも低級アルキル基]を有する有機シランとの、乾燥窒素流通下、無水溶媒中における反応生成物からなる印刷媒体。
  2. 前記ハロゲンは塩素を含み、そして前記アルコキシはC〜Cのアルコキシから成る請求項1に記載の印刷媒体。
  3. 前記アルコキシはCアルコキシであり、前記低級アルキル基はCアルキル基であることを特徴とする請求項2に記載の印刷媒体。
  4. 請求項1に記載の印刷媒体を作成する方法であって、前記方法は、
    (a) 予め乾燥させた一定量のシリカを準備し、
    (b) そのシリカを、乾燥窒素流通下、無水溶媒中において、式SiR[式中、(i)少なくとも1つのRはハロゲンとアルコキシから成る群から選択され、(ii)他の少なくとも1つのRはアミノプロピル、シアノプロピル及びオクタデシルから成る群から選択される活性基であり、そして(iii)残りのRはどれも低級アルコールである]を有する有機シランと反応させることによって前記シリカを変性し、そして
    (c) 前記の変性されたシリカ及びバインダーで前記基体をコーティングすることから成る方法。
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