JP3973355B2 - 遊離砥粒研磨スラリー組成物 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、遊離砥粒研磨スラリー組成物に係り、特に、MRヘッド等の磁気ヘッド、ハードディスク基板、金属材料等の精密機器や精密電子部品の研磨加工、中でも、水によって腐食され易い物品を研磨加工する際に用いられる遊離砥粒研磨スラリー組成物に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、遊離砥粒研磨スラリー組成物としては、粒子表面が高い親水性を示すダイヤモンドやアルミナ等の研磨材粒子(砥粒)を用いて、それが、容易に分散せしめられ得る水を分散媒として、分散せしめてなる研磨スラリー組成物が、広く用いられてきている。しかしながら、そのような水系分散媒からなる研磨スラリー組成物を用いて、水に対して弱い金属材料等の物品を研磨する場合にあっては、そのような被研磨加工物品に腐食や錆、更にはスクラッチ等の表面欠陥が発生し易くなるといった問題が、惹起せしめられていた。
【0003】
このため、上記の如き問題を解消すべく、分散媒に水を含まない非水系の研磨スラリー組成物が、強く要請されているのであるが、非水系であるために、親水性を有する研磨材粒子(砥粒)を、かかる媒体中に、均一に分散することが困難となり、凝集した研磨材粒子によって、却って被研磨加工物品の研磨面にスクラッチ等の損傷が発生し易くなるといった問題が、新たに惹起されることとなったのである。
【0004】
そこで、更に、そのような問題に対して、研磨材粒子を非水系媒体中に均一に分散せしめるべく、これまでに各種の手法が提案されている。例えば、特開平11−140431号公報においては、ノニオン系界面活性剤を、親水性研磨材粒子の疎水化処理剤として、非水系媒体中に添加せしめることによって、研磨材粒子の分散性の改善を図っているのであり、また、特開2000−87011号公報においては、含硫有機モリブデン化合物等の極圧剤(潤滑剤)を加えて、スクラッチ等の表面欠陥を抑える方法が、提案されているのである。しかしながら、前者にあっては、研磨材粒子を均一に分散させることが可能となるものの、添加の前から存在する研磨材の凝集粒を単一粒子に分散せしめることは出来ないと共に、比較的大きくて強固な凝集体は分散され得ず、沈降してしまうのであり、また、後者にあっては、極圧剤を介在させた研磨に過ぎないものであって、表面欠陥の発生を本質的に解消するものではないのであり、加えて極圧剤の使用によるコストの上昇の問題も内在しており、そこには、未だに改善の余地が存しているのである。
【0005】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、非水系分散媒を用い、かかる分散媒中に添加された研磨材を、効果的に、均一に且つ単一粒子にまで遊離、分散せしめるようにしたことによって、スクラッチ等の表面欠陥の発生が有利に抑制乃至は防止された、高品位な研磨面を実現すると共に、優れた研磨速度を実現し得る遊離砥粒研磨スラリー組成物を提供することにある。
【0006】
【解決手段】
そして、本発明者らは、上述せる如き課題を解決すべく鋭意検討した結果、非水系分散媒に対して、所定の界面活性剤の2種を組み合わせて添加せしめることによって、親水性を有する研磨材粒子を、均一に且つ単一粒子にまで効果的に分散することが可能となる事実を見出したのである。
【0007】
従って、本発明は、そのような知見に基づいて完成されたものであって、非水系分散媒として炭化水素油を用い、この炭化水素油に、脂肪酸、含窒素系界面活性剤及び高分子カルボン酸系界面活性剤を添加、含有せしめると共に、更に、研磨材を添加して、均一に且つ単一粒子にまで遊離、分散せしめてなることを特徴とする遊離砥粒研磨スラリー組成物を、その要旨とするものである。
【0008】
すなわち、このような本発明に従う遊離砥粒研磨スラリー組成物にあっては、炭化水素油からなる非水系の分散媒に対して、脂肪酸を潤滑剤として添加すると共に、更に、分散剤として、含窒素系界面活性剤と高分子カルボン酸系界面活性剤とが組み合わされて、添加、含有せしめられていることによって、それら2種の界面活性剤の相乗的な活性化作用にて、研磨材を添加する前に研磨材が凝集していても、それを、均一に且つ単一粒子に分散せしめ得ることとなるのであり、以て、被研磨加工物品の研磨面にスクラッチ等の損傷が付与されたり、研磨面の表面粗度を悪化するようなことが、有利に防止乃至は解消され得るのであり、それによって、研磨加工後の被研磨加工物品には、表面欠陥が問題となる程に惹起されることのない、高品位の研磨面が実現され得ることとなるのである。しかも、上述の如き優れた研磨材の分散状態が得られることによって、従来に比して、高い研磨速度を実現することが可能となるのである。
【0009】
なお、かかる本発明に従う遊離砥粒研磨スラリー組成物の望ましい態様の一つによれば、前記炭化水素油は、パラフィン系炭化水素油であることが好ましく、このようなパラフィン系炭化水素油を採用することによって、優れた熱安定性や耐久性、経済性が実現され得ることとなる。
【0010】
また、本発明における別の好ましい態様の一つによれば、前記研磨材として、ダイヤモンド砥粒が採用され、これによって、研磨速度等の特性の向上を図ることが出来る。
【0011】
さらに、本発明に従う遊離砥粒研磨スラリー組成物の他の好ましい態様の一つによれば、前記脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸のうちの少なくとも何れか一つが、好適に採用され、これによって、被研磨加工物品の研磨表面に強い油膜が形成され、スクラッチ等の損傷の発生が効果的に防止され得るようになり、以て、優れた研磨性能を得ることが出来る。
【0012】
また、本発明の更に別の好ましい態様によれば、前記含窒素系界面活性剤としては、オキシエチレン脂肪酸アミン及び脂肪酸アルカノールアミドのうちの少なくとも何れか一つが用いられる一方、前記高分子カルボン酸系界面活性剤としては、ポリエーテル不飽和モノマー・不飽和多塩基カルボン酸系共重合物が、有利に採用され得ることとなる。
【0013】
加えて、本発明に従う遊離砥粒研磨スラリー組成物の別の好ましい態様によれば、前記脂肪酸は、有利には、0.01〜3重量%の割合において、添加せしめられるのであり、或いはまた、前記窒素系界面活性剤の含有量としては、0.01〜3重量%が好適に採用される一方、前記高分子カルボン酸系界面活性剤の含有量としては、0.01〜3重量%が有利に採用されるのである。
【0014】
【発明の実施の形態】
ところで、かかる本発明に従う遊離砥粒研磨スラリー組成物において、それを構成する非水系の分散媒としては、各種の粘度が得られること、熱安定性が良いこと、劣化し難いこと、安価であること等の理由から、炭化水素油が用いられることとなる。そして、そのような炭化水素油は、非極性媒体であるために、含水率が著しく低く、被研磨加工物品に、腐食や錆等の表面欠陥を惹起するようなことが皆無ならしめられ得るのである。
【0015】
尤も、そのような炭化水素油には、パラフィン系、オレフィン系、芳香族系等の各種の鉱油や合成油があり、必要に応じて選択することが可能であるが、その中でも、鉱油及び合成油を問わず、特に、パラフィン系炭化水素油が、好ましく、これによって、所望とする粘度を容易に選択することが出来ると共に、より一層優れた熱安定性や耐久性、経済性等が効果的に実現され得ることとなる。なお、かかるパラフィン系炭化水素油としては、ノルマルパラフィン系炭化水素油、イソパラフィン系炭化水素油の何れであってもよい。
【0016】
また、本発明に従う遊離砥粒研磨スラリー組成物にあっては、上記した炭化水素油に対して、更に、脂肪酸が添加されている。かかる脂肪酸は、被研磨加工物品を研磨するための潤滑剤として、従来から用いられているものである。より詳細には、脂肪酸は、潤滑剤の中でも特に油性剤として、被研磨加工物品の金属表面に吸着,配列し、破れ難い油膜(金属石鹸膜)を形成するものであるところから、研磨面の摩擦が低減され、以て、スクラッチ等の表面欠陥の発生を効果的に防止乃至は解消することが可能となり、研磨性能の向上が有利に実現され得ることとなるのである。
【0017】
なお、かかる脂肪酸としては、一般に、分散媒としての炭化水素油、例えば、パラフィン系炭化水素油等に溶解することが可能な脂肪酸であれば、何れのものをも採用することが出来る。例えば、飽和脂肪酸であるカプリン酸(炭素数:10)、ラウリン酸(炭素数:12)や、不飽和脂肪酸のオレイン酸(炭素数:18)、リノール酸(炭素数:18)、リノレン酸(炭素数:18)等が、好適に採用され得るのであり、また、その中でも、特に、常温で液状であり、且つ適度な潤滑性を有するオレイン酸が、扱い易く、好ましい。
【0018】
また、そのような脂肪酸の含有量(添加割合)としては、研磨スラリー組成物全体に対して、一般に0.01〜3重量%の範囲であることが望ましく、その範囲内でも、特に、0.05〜2重量%の範囲であることが、更に望ましい。なお、かかる脂肪酸の添加割合が、0.01%より少ない場合には、研磨面に形成される潤滑膜(油膜)が充分なものとならず、破断され易くなるのであり、一方、3重量%を超える場合には、コストの上昇を招くばかりでなく、それに見合うだけの効果が得られないのである。
【0019】
そして、本発明に従う遊離砥粒研磨スラリー組成物にあっては、上記の炭化水素油に脂肪酸を添加した非水系分散媒中に、更に、含窒素系界面活性剤と高分子カルボン酸系界面活性剤とが共に添加、含有せしめられているところに、大きな特徴が存しているのである。
【0020】
すなわち、このような本発明において、非水系分散媒たる炭化水素油中に研磨材粒子(砥粒)を分散させるための分散剤の一つとしての含窒素系界面活性剤は、未だそのメカニズムは解明されてはいないが、凝集している研磨材粒子を単一粒子に分散する作用を有しており、一方、高分子カルボン酸系界面活性剤は、非水系分散媒(油剤)中で、そのような単一粒子に分散せしめられた研磨材粒子が沈降することを防止し、安定した均一な分散(遊離)状態を確保する作用を有しているのである。そして、そのような異なる作用を有する二つの界面活性剤が組み合わされることによって、従来にはない、研磨材粒子の均一且つ単一な分散が有利に実現され得ることとなったのであり、以て、凝集した研磨材粒子によって惹起せしめられるスクラッチ等の問題が有利に解消され得るのである。
【0021】
なお、かかる本発明において、分散媒たる炭化水素油に添加される含窒素系界面活性剤としては、前記せる如き作用を有するものであれば、何等限定されるものではなく、従来から公知の各種の含窒素系界面活性剤を適宜に採用することが出来る。その中でも、例えば、ヒドロキシエチレンデシルアミン、ヒドロキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン等のオキシエチレン脂肪酸アミン(オキシエチレンアルキルアミン);オレイン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドやそれらのモノエタノールアミド、ジエタノールアミド、イソプロパノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド等が、有利に用いられ得るのである。また、そのような含窒素系界面活性剤の含有量としては、研磨スラリー組成物全体に対して、0.01〜3重量%の範囲であることが望ましく、その中でも、0.05〜2重量%の範囲であることが、更に好ましい。けだし、かかる含有量が、0.01重量%より少ない場合には、分散剤(凝集解膠剤)としての効果が乏しく、研磨材粒子の凝集物が未だ存することとなるのであり、また、3重量%を超える場合にあっては、コストの上昇を招くばかりでなく、それに見合うだけの効果が得られないからである。
【0022】
また、上記の含窒素系界面活性剤に組み合わされて、粒子の安定した分散形態を維持する高分子カルボン酸系界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、従来から公知の各種の高分子カルボン酸系界面活性剤を採用することが出来るのであり、例えば、ポリオキシプロピレンモノアリルモノステアリルエーテル等のポリエーテル不飽和モノマーと無水マレイン酸等の多塩基カルボン酸とを含み、また必要に応じてスチレン等の他の不飽和モノマーとの共重合物等の高分子多塩基カルボン酸共重合物や、高分子多塩基脂肪酸共重合物等を挙げることが出来る。なお、そのような高分子カルボン酸系界面活性剤の含有量(添加割合)としては、研磨スラリー組成物全体に対して、0.01〜3重量%の範囲であることが望ましく、その中でも、0.05〜2重量%の範囲であることが、更に好ましい。この高分子カルボン酸系界面活性剤の含有量が、0.01重量%よりも少なくなると、分散剤としての効果が乏しく、前記含窒素系界面活性剤によって分散せしめられた研磨材粒子が沈降する等して、均一な分散状態が得られなくなる等といった問題が惹起される恐れがあり、また、3重量%を超える場合にあっては、コストの上昇を招くばかりでなく、それに見合うだけの効果が得られなくなる。
【0023】
ところで、本発明の目的とする、優れた研磨面を実現し得る遊離砥粒研磨スラリー組成物は、上記せる各種の添加剤(界面活性剤、潤滑剤)が添加せしめられた非水系分散媒に、更に、所定の研磨材を添加、含有せしめて、得られるものであるが、そこで用いられる研磨材粒子としては、一般に研磨加工に用いられているものであれば、何れのものでもよく、よく知られているダイヤモンドを始めとし、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化珪素、酸化鉄等の各種砥粒を挙げることが出来る。中でも、硬質研磨材であるダイヤモンドが、研磨速度の向上を目的とする上で、好適に採用され得ることは、言うまでもない。
【0024】
また、そのような研磨材粒子として用いられるダイヤモンド砥粒は、単結晶、多結晶等の結晶形や粒子径の大小に拘わらず、同様な効果を発揮するところから、特にそのサイズが限定されるものではなく、被研磨加工物品の所望とされる面粗さに応じて、適宜選択することが出来るのであるが、好ましくは、0.02〜1μmの平均粒子径のものが、採用される。けだし、かかる粒子径は、研磨材の分級・乾燥過程で強固な凝集体を生成する平均粒子径の小さい範囲で、特に優れた研磨効果を発揮するからである。
【0025】
さらに、本発明従う遊離砥粒研磨スラリー組成物には、必要に応じて、上述せる如き界面活性剤とは異なる特性を有する界面活性剤や、洗浄剤、防錆剤、防腐剤、増粘剤等、従来から研磨スラリー組成物に添加せしめられる公知の各種の添加剤も、上述せる如き効果を阻害しないものであれば、適宜に選択して、適量にて添加することも可能である。
【0026】
ここにおいて、本発明の目的とする遊離砥粒研磨スラリー組成物を製造するに際しては、以下の如き方法に従って、製造することが出来る。なお、本発明に従う遊離砥粒研磨スラリー組成物の調製方法は、以下に例示の方法に限定されるものでは決してなく、含有せしめられる研磨材や添加剤等に応じて、種々の態様にて実施され得るものであることは、言うまでもないところである。
【0027】
先ず、比較的少量の炭化水素油に対して、所定量の含窒素系界面活性剤が溶解せしめられる。次いで、そのようにして調製された溶液に対して、適当な研磨材粒子が所定の割合にて加えられて、混合せしめられるのである。ところで、そのように添加された研磨材粒子には、凝集しているものが、多少なりとも存在しているところから、得られた混合液に対して、超音波分散機や高剪断攪拌機、ボールミル等の分散装置を用いて、分散操作が施され、該混合液中の研磨材粒子が単一粒子となるように分散(解砕)せしめられ、以て、所望とする遊離砥粒研磨スラリー組成物よりも研磨材の配合割合が高められた研磨スラリーが、準備されるのである。
【0028】
一方、上述した研磨剤配合の研磨スラリーとは別に、ベースオイル(分散媒)である炭化水素油に対して、脂肪酸、高分子カルボン酸系界面活性剤、更に必要に応じて、その他各種の添加剤が、それぞれ適量において添加されて、溶解せしめられることにより、添加剤含有オイルが準備される。
【0029】
そして、そのようにして調製された添加剤含有オイルに、上記の研磨スラリーを加え、更に、超音波分散機等の分散装置を用いて、均一に再分散せしめることによって、目的とする遊離砥粒研磨スラリー組成物が得られるのである。
【0030】
なお、本発明に従う遊離砥粒研磨スラリー組成物を用いて、被研磨加工物品に研磨加工を実施する場合にも、従来から公知の各種の研磨手法が適宜に選択されて、用いられることとなる。また、研磨が施される研磨加工物品にあっても、何等限定されるものではなく、アルチック(Al2O3−TiC)材や、センダスト(Fe−Al−Si)、パーマロイ(Fe−Ni)等を例示することが出来る。
【0031】
【実施例】
以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0032】
−遊離砥粒研磨スラリー組成物の調製−
下記表1及び表2の配合割合となるように、以下に示す方法で、本発明に従う遊離砥粒研磨スラリー組成物である実施例1〜11、及び、比較例1〜5の研磨組成物の調製を行なった。
【0033】
先ず、ベースオイルであるイソパラフィン系炭化水素油(動粘度:2.5mm2/s)又はノルマルパラフィン系炭化水素油(動粘度:1.8mm2/s)、或いはそれらを組み合わせてなるパラフィン系炭化水素油の全量の4%に相当する分を準備し、そこに、含窒素系界面活性剤であるヒドロキシエチレンデシルアミンを溶解せしめた。次いで、その含窒素系界面活性剤が含有されたベースオイルに、研磨材としてのダイヤモンド砥粒(平均粒子径:0.125μm、多結晶形)を加え、超音波を用いて、単一粒子に分散させて、ダイヤモンド・スラリーを調製した。
【0034】
また一方、上記の如くして準備されたパラフィン系炭化水素油の残りの量(96%に相当する)のベースオイルに対して、脂肪酸としてオレイン酸、及び、高分子系界面活性剤としてポリオキシプロピレンモノアリルモノステアリルエーテル無水マレイン酸スチレン共重合物を添加、溶解せしめることにより、添加剤含有オイルを調製した。
【0035】
次いで、そのようにして調製された添加剤含有オイルに、上記で調製されたダイヤモンド・スラリーを混合し、更に超音波を用いて、再度、均一に分散させて、実施例1〜11及び比較例1〜5の研磨スラリー組成物を得た。なお、比較例1〜4については、下記表2から明らかなように、上記の添加剤のうちの一種のみがそれぞれ、添加されており、また、比較例5については、ヒドロキシエチレンデシルアミンに代えて、従来からノニオン系界面活性剤して用いられているソルビタンモノオレートのみが添加剤として添加されている。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
そして、上述の如くして調製された実施例1及び比較例1〜5の研磨スラリー組成物を、200倍の顕微鏡下にて観察することにより、研磨スラリー組成物中のダイヤモンド粒子の分散状態を確認し、その結果を下記表3に示した。なお、かかる表3において、単一粒子分散とは、ダイヤモンド粒子が単一粒子に分散しているか否かを表すものであって、分散せしめられているダイヤモンド粒子が、単一粒子に分散しているものに対しては○印を付す一方、凝集したダイヤモンド粒子が分散しているものに対しては×印を付した。また、分散性とは、ダイヤモンド粒子が沈降することなく、均一に分散しているか否かを表すものであって、均一分散しているものには○印を付す一方、均一分散せず、ダイヤモンド粒子が凝集しているものや沈降しているものに対しては、×印を付した。
【0039】
−研磨試験1−
上記で得られた実施例1及び比較例1〜5の研磨スラリー組成物を、それぞれ、研磨機(エンギス株式会社製:12インチ片面研磨機EJ−300)に設けられた研磨材供給容器に導入した後、該研磨機を用いて、被研磨ワークを研磨せしめた。なお、かかる研磨加工に際しての研磨条件として、定盤には錫/アンチモン定盤を用い、定盤回転数(回転速度)を50rpmに設定し、また、加工圧力:1.1kg/cm2、加工時間:15min、研磨スラリー組成物供給速度(供給量):0.16ml/min(0.08ml/30sec)を採用した。また、被研磨ワークとしては、研磨ワークの評価に応じて、各2個のアルチック材[研磨速度評価用]、各6個のSUS材[スクラッチ評価用]を用いた。
【0040】
そして、上記した15分の研磨加工の後に、アルチック材の厚みをダイヤルゲージで、それぞれ測定することによって、平均研磨速度(研磨量)[μm/min]を求めた。そして、そのようにして求められた研磨速度(研磨量)を、それぞれ、ベースオイルのみからなる比較例1の研磨スラリー組成物にて研磨せしめられた被研磨ワークの研磨速度(研磨量)にて除算することによって、比較例1に対する相対値を算出して、下記表3に示した。
【0041】
また、研磨加工の施された、各6個のSUS材の研磨面(2mm×20mm)の全面を、顕微鏡(倍率:100倍)にて観察することにより、スクラッチの数を計数・累計し、その得られた値を6で除算することによって、SUS材1個当たりの平均スクラッチ数を求め、その結果を下記表3に併せて示した。
【0042】
【表3】
【0043】
かかる表3から明らかなように、含窒素系界面活性剤が添加せしめられた実施例1及び比較例3にあっては、ダイヤモンドが単一粒子として分散せしめられており、また、高分子カルボン酸系界面活性剤が添加せしめられた実施例1及び比較例4にあっては、ダイヤモンド粒子が沈降することなく、均一に分散されている。そして、それらの分散剤、つまり、含窒素系界面活性剤及び高分子カルボン酸系界面活性剤が、共に含有された実施例1が、著しく優れた研磨速度を実現していることが、分かる。
【0044】
また、実施例1の研磨スラリー組成物を用いて研磨加工の施されたSUS材にあっては、比較例1〜5に比して、スクラッチの数も明らかに少なくなっており、より高品位な研磨面が実現されているのである。
【0045】
−研磨試験2−
上記の研磨試験1と同様にして、実施例2〜11の研磨スラリー組成物をそれぞれ用いて、研磨加工を実施した。但し、研磨機としては、岡本工作機械株式会社製:15インチ片面研磨機SPL−15を用い、定盤:錫/アンチモン、定盤回転数(回転速度):60rpm、また、加工圧力:2.8kg/cm2、加工時間:15min、研磨スラリー組成物供給速度(供給量):1滴/3〜4秒を採用した。また、被研磨ワークには、研磨ワークの評価に応じて、各4個のアルチック材[研磨速度評価用]、各6個のSUS材[スクラッチ評価用]を用いた。
【0046】
そして、上記の研磨加工の後に、マイクロメータを用いて、アルチック材の厚みを、それぞれ測定することにより、平均研磨速度(研磨量)[μm/min]を求めた。そして、そのようにして求められた研磨速度(研磨量)を、それぞれ、実施例2又は実施例5、或いは実施例10の研磨スラリー組成物にて研磨せしめられた被研磨ワークの研磨速度(研磨量)にて除算することによって、相対値を算出し、下記表4に示した。
【0047】
また一方、研磨加工の施された、各6個のSUS材の研磨面(2mm×20mm)の全面を、顕微鏡(倍率:100倍)にて観察することにより、スクラッチの数を計数・累計し、その得られた値を6で除算することによって、SUS材1個当たりの平均スクラッチ数を求め、その結果を下記表4に併せて示した。
【0048】
【表4】
【0049】
かかる表4から明らかなように、実施例2〜4では、脂肪酸や高分子界面活性剤等の添加剤の含有量を適度に調整することによって、研磨速度の向上が見られるのであり、また、ベースオイルの動粘度を適宜に選択、調整することによっても、研磨速度が向上することが、分かるのである。
【0050】
また、実施例5〜8からは、高分子カルボン酸系界面活性剤の含有量が、大きくなるに従って、研磨速度が減少すると共に、スクラッチの発生が抑制される傾向にあることが、分かるのである。一方、実施例9〜11から、脂肪酸の含有量が増加するに従って、研磨速度が減少すると共に、スクラッチも増加する傾向にあることが、分かる。
【0051】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明に従う遊離砥粒研磨スラリー組成物にあっては、非水系分散媒である炭化水素油に、脂肪酸、含窒素系界面活性剤高分子カルボン酸系界面活性剤が添加、含有せしめられているところから、研磨材粒子が、効果的に、均一に且つ単一粒子に遊離、分散せしめられ得ることとなり、以て、優れた研磨速度が実現されると共に、スクラッチ等の表面欠陥の発生が有利に防止乃至は抑制され、より一層優れた研磨面を実現することが出来るのである。
Claims (9)
- 非水系分散媒として炭化水素油を用い、この炭化水素油に、脂肪酸、含窒素系界面活性剤及び高分子カルボン酸系界面活性剤を添加、含有せしめると共に、更に、研磨材を添加して、均一に且つ単一粒子にまで遊離、分散せしめてなることを特徴とする遊離砥粒研磨スラリー組成物。
- 前記炭化水素油が、パラフィン系炭化水素油である請求項1に記載の遊離砥粒研磨スラリー組成物。
- 前記研磨材が、ダイヤモンド砥粒である請求項1又は請求項2に記載の遊離砥粒研磨スラリー組成物。
- 前記脂肪酸が、カプリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸のうちの少なくとも何れか一つである請求項1乃至請求項3の何れかに記載の遊離砥粒研磨スラリー組成物。
- 前記含窒素系界面活性剤が、オキシエチレン脂肪酸アミン及び脂肪酸アルカノールアミドのうちの少なくとも何れか一つである請求項1乃至請求項4の何れかに記載の遊離砥粒研磨スラリー組成物。
- 前記高分子カルボン酸系界面活性剤が、ポリエーテル不飽和モノマー・不飽和多塩基カルボン酸系共重合物である請求項1乃至請求項5の何れかに記載の遊離砥粒研磨スラリー組成物。
- 前記脂肪酸の含有量が、0.01〜3重量%である請求項1乃至請求項6の何れかに記載の遊離砥粒研磨スラリー組成物。
- 前記窒素系界面活性剤の含有量が、0.01〜3重量%である請求項1乃至請求項7の何れかに記載の遊離砥粒研磨スラリー組成物。
- 前記高分子カルボン酸系界面活性剤の含有量が、0.01〜3重量%である請求項1乃至請求項8の何れかに記載の遊離砥粒研磨スラリー組成物。
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