JP3972533B2 - バルク交換スプリング磁石およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータ,磁界センサ,回転センサ,加速度センサ,トルクセンサ等に用いるのに適したバルク交換スプリング磁石およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
永久磁石相と軟磁性相とを同時に有する交換スプリング磁石は、新たな磁石材料として注目を集めている。この交換スプリング磁石は、主に、永久磁石相をNd−Fe−Bとし、軟磁性相をFeまたはFe−Bとした組成系を有するものに関して多く研究開発が進められている。
【0003】
このような交換スプリング磁石は、微細な結晶粒径を維持する必要があるため、フルデンス磁石を実現することが困難であった。すなわち、従来の焼結温度は1000℃以上であり、このような高温での焼結では結晶粒が粗大化してしまい、磁石特性の劣化が著しい。従って、現在のところ、交換スプリング磁石粉末を樹脂やゴムに混ぜ込んで成形固化するといった、所謂、ボンド磁石としての適用が検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、これらのボンド磁石の密度は、当然のことながら、原料粉末の理論密度よりかなり低い値となるため、磁石の強さを示す単位体積当りの最大エネルギー積は、原料粉末がフルデンス化された場合から予想される特性には遥かに及ばないものとなっているという課題があった。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、このような従来の課題にかんがみてなされたものであって、磁石特性を損なわずに、バルク化した、すなわち、原料粉末の真密度の95%程度以上に達したバルク交換スプリング磁石を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、成形固化されたバルク磁石において、原料粉末粒子間にB元素が凝集した構造を持つものとすることにより達成される。
【0007】
すなわち、本発明に係わるバルク交換スプリング磁石は、請求項1に記載しているように、永久磁石相と軟磁性相を有し、希土類元素のうちの1種または2種以上の合計が2〜11.5at%、Bが1〜27at%、V,Nb,Cr,Cu,Zn,Tiのうちの1種または2種以上の合計が0.5〜3.0at%、残部が実質的に遷移金属である交換スプリング磁石粉末を成形固化したバルク磁石よりなり、原料粉末粒子間にB元素が凝集した構造を持ち、且つバルク磁石の断面において原料粉末粒子間のBが凝集した部分の厚さが50nm以上であると共に、上記永久磁石相及び軟磁性相が結晶粒より構成されている構造を持つものとしたことを特徴としている。
【0011】
本発明に係わるバルク交換スプリング磁石の製造方法は、請求項2に記載しているように、請求項1に記載のバルク交換スプリング磁石を製造するに際して、溶解・凝固して得られた合金インゴットを液体急冷法によって急冷薄帯とし、この急冷薄帯を粉砕して原料粉末とし、この原料粉末を型に充填して圧縮下で加熱して上記永久磁石相及び軟磁性相を結晶化するするようにしたことを特徴としている。
【0012】
そして、本発明に係わるバルク交換スプリング磁石の製造方法においては、請求項3に記載しているように、液体急冷法によって急冷薄帯を製造するに際し、ロール周速度を10〜60m/sとするようになすことができる。
【0013】
同じく、本発明に係わるバルク交換スプリング磁石の製造方法においては、請求項4に記載しているように、急冷薄帯を粉砕して得た原料粉末の粒径が20μm〜500μmであるようになすことができる。
【0014】
同じく、本発明に係わるバルク交換スプリング磁石の製造方法においては、請求項5に記載しているように、粉末の圧縮下での加熱において放電プラズマ焼結を用い圧縮圧力が3ton/cm2以上、昇温速度が10〜40K/min、保持温度が600〜800℃、保持時間が1〜10minとするようになすことができる。
【0015】
【発明の作用】
本発明に係わるバルク交換スプリング磁石およびその製造方法は、上述した課題を解決するための手段を有するものであって、上記した磁石構造を持つものとすることにより、原料粉末粒子間に存在するB元素が粒子間の緻密化を促進し、加えて、原料粉末粒子間の粒成長を抑制する作用・効果があるため、従来考えられていた焼結条件に対して低温および/または短時間で緻密化が可能となり、その結果、粉末の理論密度に近いバルク交換スプリング磁石の良好な磁石特性を実現しうるものとなる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明に係わるバルク交換スプリング磁石は、永久磁石相と軟磁性相とを同時に有する交換スプリング磁石粉末を成形固化したバルク磁石よりなり、原料粉末粒子間にB元素が凝集した構造を持つものである。そして、このような構造は、B元素を含有した急冷材等のアモルファスに近い状態を持つ原料粉末を型に充填し、これを圧縮下で加熱することにより、原料粉末内にはハード相とソフト相とが混在し、原料粉末の間にB元素が凝集したものとなり、磁石特性を損なわずに原料粉末の理論密度付近にまで達するバルク交換スプリング磁石が実現される。
【0017】
この時の原料粉末粒子間のB元素の凝集部の厚さは緻密化にとって重要であり、50nm以上であるものとすることが必要となる。そして、50nmよりも小さいと密度化が促進されにくいために焼結体の密度が向上しない傾向となる。
【0018】
磁石の組成としては、永久磁石相と軟磁性相とを同時に有し、また、原料粉末粒子間にB元素が凝集する構造を実現しうる組成であれば制約はないが、希土類元素のうちの1種または2種以上の合計が2〜11.5at%、Bが1〜27at%、残部が実質的に遷移金属で構成される場合に、本発明の構造が得られることが実験的に明らかにされている。
【0019】
また、少量の元素添加によりさらにB元素の凝集が助長されて磁石特性が向上することとなる。そして、この場合の最適な添加元素および添加量としては、V,Nb,Cr,Cu,Zn,Tiのうちから選ばれる1種または2種以上の合計が0.5〜3.0at%であるといえる。
【0020】
原料粉末の作製に当っては、アモルファスに近い状態を実現するために、液体急冷法,メカニカルアロイ法,アトマイズ法などが適用可能であるが、特に液体急冷法を用いた場合は、アモルファス化が容易かつ十分になされるため交換スプリング磁石においては望ましいプロセスの一つであると考えられる。
【0021】
また、液体急冷法においては急冷の際のロール周速度の影響が大きく、所要のアモルファス含有量を確保するために10m/s以上が望ましいものとなる。そして、ロール周速度が大きくても磁石特性は確保されるが、量産工程を想定した場合に、ロール周速度が60m/s超過では、装置の安全性,保守性の点で現実的ではないと考えられる。
【0022】
原料粉末の粒径は、緻密化が容昜となる粒度分布を持つ必要がある。そのため、20μm〜500μmの粒度分布を有する粉末を採用することが好ましい。そして、極端に小さい粒径の粉末では、原料粉末の表面積を増大させることとなって酸化の影響が大きくなり、磁石特性が劣化するとともに、粉塵爆発などの事故を防ぐ意味においても好ましいとは言えない。反対に極端に大きな粒径では充填密度があがらず、高密度のバルク磁石が実現できない傾向となる。
【0023】
バルク化のプロセスとしては、型に充填された原料粉末を圧縮下で加熱することが有効である。これを実現するためには、ホットプレスや放電プラズマ焼結などの適用が可能であるが、特に、放電プラズマ焼結は昇温速度の制御が容易であり、正確な温度プロファイルを実現しやすいので、好ましいと考える。また、加熱の際の原料粉末の酸化を防止するため、ロータリポンプや拡散ポンプなどによる減圧下、並びに、ArやN2ガスなどで十分に置換された酸素濃度の低い雰囲気下で行なうのが良いことは言うまでもない。さらにまた、型材に関しての制限はない。
【0024】
圧縮下での加熱処理の際のプロセス条件としては、緻密化を促進し、原料粉末の真密度の95%程度以上を容易に得るため、圧縮圧力は3ton/cm2以上とするのが好ましい。
【0025】
また、昇温速度は10〜40K/minが適当である。これは、昇温速度の低下に伴い原料粉末間のB元素の凝集部を減少させる傾向が認められ、その結果、緻密化が阻害される。そしてまた、昇温速度が早くなりすぎた場合は、試料内の温度分布が顕著となり、均一なバルク体が得られなくなる。
【0026】
さらに、良好な磁気特性を得るため、保持温度および保持時間には適切な範囲が存在する。これらの条件は実験的に検討の結果、保持温度が600〜800℃で、保持時間が1〜10分が適切である。この理由は、保持温度の上昇および保持時間の増加により、永久磁石相と軟磁性相の結晶粒成長が促進されてこれに伴う磁石特性の劣化が生じ、反対に、保持温度の低下および保持時間の減少は焼結体の密度低下を生じるからである。
【0027】
このような種々の適切な条件が存在するものの、原料粉末の粒子間に存在するB元素の凝集部の存在により、従来の焼結プロセスに比べ低温且つ短時間のプロセスによって、交換スプリング磁石の磁気特性を損なうことなく、原料粉末の真密度近くまで密度を向上させることが可能となる。
【0028】
【発明の効果】
本発明によるバルク交換スプリング磁石では、請求項1に記載のように、永久磁石相と軟磁性相を有し、希土類元素のうちの1種または2種以上の合計が2〜11.5at%、Bが1〜27at%、、V,Nb,Cr,Cu,Zn,Tiのうちの1種又は2種以上の合計が0.5〜3.0at%、残部が実質的に遷移金属である交換スプリング磁石粉末を成形固化したバルク磁石より成り、原料粉末粒子間にB元素が凝集した構造を持ち、且つバルク磁石の断面において原料粉末粒子間のBが凝集した部分の厚さが50nm以上であると共に、上記永久磁石相及び軟磁性相が結晶粒より構成されているものとしたから、原料粉末の真密度付近にまで達する著しく緻密化された組織が得られ、磁石特性がさらに向上した従来の焼結体磁石では得ることができなかった良好なる磁石特性をそなえたものとなり、モータ,磁界センサ,回転センサ,加速度センサ,トルクセンサ等に用いるのに適した磁石特性に優れたバルク交換スプリング磁石を提供することが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0032】
本発明によるバルク交換スプリング磁石の製造方法では、請求項2に記載しているように、溶解・凝固して得られた合金インゴットを液体急冷法によって急冷薄帯とし、この急冷薄帯を粉砕して原料粉末とし、この原料粉末を型に充填して圧縮下で加熱して上記永久磁石相及び軟磁性相を結晶化するようにしたから、磁石特性に著しく優れたバルク交換スプリング磁石を製造することが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0033】
そして、請求項3に記載しているように、液体急冷法によって急冷薄帯を製造するに際し、ロール周速度を10〜60m/sとするようになすことによって、所要のアモルファス含有量が確保された原料粉末を量産手法的に得ることが可能であってバルク交換スプリング磁石の製造性を良好なものとすることが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0034】
そしてまた、請求項4に記載しているように、急冷薄帯を粉砕して得た原料粉末の粒径が20μm〜500μmであるようになすことによって、緻密化が容昜となる粒度分布をもつ原料粉末とすることができ、磁石特性に著しく優れたバルク交換スプリング磁石を製造することが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0035】
さらにまた、請求項6に記載しているように、粉末の圧縮下での加熱において放電プラズマ焼結を用い圧縮圧力が3ton/cm2以上、昇温速度が10〜40K/min、保持温度が600〜800℃、保持時間が1〜10minであるようになすことによって、緻密化が十分に促進され、原料粉末の真密度の95%程度以上を容易に得ることが可能であって、磁石特性の著しく優れたバルク交換スプリング磁石を製造することが可能であるという著大なる効果がもたらされる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこのような実施例のみに限定されないことはいうまでもない。
【0037】
(実施例1)
希土類元素の含有量による影響を調べるために、各原料組成において、液体急冷法と放電プラズマ焼結を用いて、バルク交換スプリング磁石を作製した。このとき、液体急冷時のロール周速度は30m/sであり、また、放電プラマス焼結は圧縮圧力:5ton/cm2、昇温速度:20K/min、保持温度:650℃、保持時間:5minである。
【0038】
図1は、B含有量が7at%の一定とし、希土類元素であるNd含有量を変化させた場合の磁気特性の変化を示すものである。なお、残部はFeである。
【0039】
この結果、Nd含有量が0.5〜15at%の全ての範囲において原料粉末粒子間のB凝集部が観察され、緻密化を促進していることが認められた。また、Nd2Fe14B相を主体とした永久磁石相が全ての組成において生成されていることが認められた。
【0040】
しかしながら、磁石の強さを示す最大エネルギー積BHmは、図1に示すように、Nd含有量が0.5〜1at%で急激に上昇し、その後僅かに上昇する傾向を示し、10at%超過では減少する傾向を示していた。これは、Nd含有量が1at%未満では永久磁石相の量が減少することによる保磁力の低下が影響しているものと考えられる。また、Nd含有量が12at%超過では軟磁性相であるFeまたはFe−B相が実質的に存在しなくなり、BHmは低下するものと考えられる。
【0041】
代表的な組成(Nd9Fe76Co8V1B6)におけるSEM観察写真を図5に示す。この結果、原料粉末粒子間にはおよそ0.2〜0.3μmの層が認められ、緻密な組織構造であることがわかる。そして、EPMA面分析により、これらの部分にはB元素が凝集している様子が確認された。
【0042】
(実施例2)
B含有量による影響を調べるために、各原料組成において、液体急冷法と放電プラズマ焼結を用いて、バルク交換スプリング磁石を作製した。このとき、液体急冷時のロール周速度は50m/sであり、また、放電プラズマ焼結は圧縮圧力:6ton/cm2、昇温速度:22K/min、保持温度:700℃、保持時間:4minである。
【0043】
図2は、希土類元素であるNdが9at%の一定とし、B含有量を変化させた場合の磁気特性の変化を示すものである。なお、残部はFeである。
【0044】
この結果、B含有量が0.5〜30at%の全ての範囲において原料粉末粒子間のB凝集部が観察され、緻密化を促進していることが認められたが、磁石の強さを示す最大エネルギー積BHmは、図2に示すように、B含有量が0.5〜1at%で急激に上昇し、その後僅かに上昇する傾向を示し、22at%超過では減少する傾向を示していた。これは、B含有量が1at%未満ではB凝集部の厚さの低下が影響しているものと考えられる。また、B含有量が27at%超過では軟磁性相であるFeまたはFe−B相が増大して軟磁性相の結晶粒成長が発生するために永久磁石相との交換結合が弱められてしまうことによるものと考えられる。
【0045】
また、B含有量の増加とともにB元素凝集部の厚さは増加する傾向を示し、B含有量が1at%でB元素凝集部の厚さがおよそ50nmとなっていることがTEM観察の結果明らかとなった。そして、これよりもB含有量が少ない組成(例えば、Nd9Fe90.5B0.5)においては、B元素凝集部の厚さは10nmまで低下し、同時に、焼結体の密度の低下が認められた。
【0046】
(実施例3)
他の添加元素による影響を調べるために、各種の組成において、液体急冷法と放電プラズマ焼結を用いて、バルク交換スプリング磁石を作製した。このとき、液体急冷時のロール周速度は20m/sであり、また、放電プラマス焼結は圧縮圧力:5ton/cm2、昇温速度:30K/min、保持温度:750℃、保持時間:3minである。
【0047】
表1にその結果をまとめるが、この表1中では、希土類元素を示すR=Nd,R´=Nd−Dy(元素比 Nd:Dy=9:1),R´´=Nd−Pr(元素比 Nd:Pr=9.5:0.5),R´´´=Nd−Sm(元素比 Nd:Sm=9.9:0.1),R´´´´=Nd−Dy−Ce(元素比 Nd:Dy:Ce=9.4:0.5:0.1)である。
【0048】
表1において、No.4〜14は、希土類元素及びB元素を含有するNo.1〜3に比較して、さらにV,Nb,Cr,Cu,Zn,Tiのうちの1種以上の元素を添加したことにより、磁石特性がより一層向上している。
【0049】
【表1】
【0050】
(実施例4)
液体急冷法を用いて原料粉末を製造する場合のロ−ル周速度と磁石特性との関係を調査した結果を図3に示す。この場合の試料はNd9Fe76Co8V1B6組成であり、昇温速度:15K/min,保持温度:680℃、保持時間:5minでホットプレスすることによって成形固化している。
【0051】
図3に示すように、ロール周速度が10m/sより小さい場合はBHmが低下している。これは、ロール周速度が10m/sよりも小さい場合はアモルファス含有量が少なく、永久磁石相結晶と軟磁性相結晶の結晶成長が磁石特性を低下させていることを示している。また、60m/s超過においては磁石特性は確保されるものの、量産工程を想定した場合に、装置の安全性,保守性の点で現実的ではない。
【0052】
(実施例5)
原料粉末の粒径と磁石特性との関係について調査した結果を図4に示す。ここで示した原料粉末の粒径はその値以下の粒径を持った粉末であることを意味している(すなわち、粒径100μmとは、100μm以下の粒径を持った粉末の集合であり、粒径500μmとは、500μm以下の粒径を持った粉末の集合である)。この場合の試料は、組成がNd11Fe71Co8V1Nb1.5B7.5であり、ボールミルを使用したメカニカルアロイ法を用いて粉末を作製した。そして、ボールミルの粉砕時間を変更することにより種々の粒径の粉末を得た。
【0053】
次いで、得られた粉末は全て放電プラズマ焼結を用いて焼結した。そして、この際の製造条件は、タングステンカーバイドの金型を用い、圧縮圧力:3ton/cm2、昇温速度:35K/min、保持温度:800℃、保持時間:7minとして成形固化した。
【0054】
図4に示すように、原料粉末の粒径が15μm未満では酸化の影響を反映して磁石特性は僅かに減少し、生産性を合わせて考慮すると20μm以上が好ましいことが認められた。また、500μmを超えた粉末では充填率があがらず、磁石特性が低下していることが分かる。
【0055】
(実施例6)
圧縮下での熱処理における昇温速度と磁石特性との関係について調査した結果を図6に示す。この場合の試料は、組成がNd5Fe66Ni8V1Cr1B19であり、ロール周速度が40m/sの液体急冷法による薄帯を100μm以下に粉砕して粉末としたものである。その後、放電プラズマ焼結を用い、その際の製造条件は、タングステンカーバイドの金型を使用し、圧縮圧力:5ton/cm2、昇温速度:25K/min、保持温度:690℃、保持時間:5minとして成形固化した。
【0056】
図6に示すように、昇温速度が10K/minを下回るとB元素凝集部の厚さが50nm未満となり、緻密化が妨げられてBHmが低下することが認められた。また、昇温速度が60K/minを上回る場合は、急激な温度上昇のために試料の各部で温度差が生じて均一な焼結体が得られないためBHmが低下しているものとなっていた。
【0057】
(実施例7)
圧縮下での熱処理における保持温度と保持時間は、永久磁石相と軟磁性相の結晶粒成長に影響を与える。すなわち、交換結合を示す結晶粒径には上限が有り、これが保持温度と保持時間の上限を決定する。反対に、保持温度と保持時間の下限は、焼結体を緻密化させるための最低限のエネルギーから決定される。この関係を図7に示すが、この場合の試料は、組成がNd8Fe80Ni5V0.5Cu1B5.5であり、ロール周速度が50m/sの液体急冷法による薄帯を200μm以下に粉砕して粉末としたものである。その後、放電プラズマ焼結を用い、その際の製造条件は、タングステンカーバイドの金型を使用し、圧縮圧力:5ton/cm2、昇温速度:20K/minとして成形固化した。
【0058】
図7に示すように、保持温度が600〜800℃において、また、保持時間が1〜10分において良好な値を示していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】希土類元素の含有量による磁石特性(最大エネルギー積BHmax)への影響を調べた結果を例示するグラフである。
【図2】B含有量による磁石特性(最大エネルギー積BHmax)への影響を調べた結果を例示するグラフである。
【図3】液体急冷法を用いて原料粉末を製造する場合のロール周速度による磁石特性(最大エネルギー積BHmax)への影響を調べた結果を例示するグラフである。
【図4】原料粉末の粒径による磁石特性(最大エネルギー積BHmax)への影響を調べた結果を例示するグラフである。
【図5】代表的な組成(Nd9Fe76Co8V1B6)におけるバルク交換スプリング磁石のSEM観察写真である。
【図6】圧縮下での熱処理における昇温速度による磁石特性(最大エネルギー積BHmax)への影響を調べた結果を例示するグラフである。
【図7】圧縮下での熱処理における保持温度および保持時間による磁石特性(最大エネルギー積BHmax)への影響を調べた結果を例示するグラフである。
Claims (5)
- 永久磁石相と軟磁性相を有し、希土類元素のうちの1種又は2種以上の合計が2〜11.5at%、Bが1〜27at%、V,Nb,Cr,Cu,Zn,Tiのうちの1種又は2種以上の合計が0.5〜3.0at%、残部が実質的に遷移金属である交換スプリング磁石粉末を成形固化したバルク磁石より成り、
原料粉末粒子間にB元素が凝集した構造を持ち、且つバルク磁石の断面において原料粉末粒子間のBが凝集した部分の厚さが50nm以上であると共に、上記永久磁石相及び軟磁性相が結晶粒より構成されていることを特徴とするバルク交換スプリング磁石。 - 溶解・凝固して得られた合金インゴットを液体急冷法によって急冷薄帯とし、この急冷薄帯を粉砕して原料粉末とし、この原料粉末を型に充填して圧縮下で加熱して上記永久磁石相及び軟磁性相を結晶化することを特徴とする請求項1に記載のバルク交換スプリング磁石の製造方法。
- 液体急冷法によって急冷薄帯を製造するに際し、ロール周速度を10〜60m/sとすることを特徴とする請求項2に記載のバルク交換スプリング磁石の製造方法。
- 急冷薄帯を粉砕して得た原料粉末の粒径が20μm〜500μmであることを特徴とする請求項2又は3に記載のバルク交換スプリング磁石の製造方法。
- 粉末の圧縮下での加熱において放電プラズマ焼結を用い圧縮圧力が3ton/cm2以上、昇温速度が10〜40K/min、保持温度が600〜800℃、保持時間が1〜10minとすることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つの項に記載のバルク交換スプリング磁石の製造方法。
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