JP3971700B2 - アンテナ及びリーダー/ライター装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は基板にループパターンを形成してなるアンテナ、およびこれを用いた非接触ICカードのリーダー/ライター装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、データ処理の効率化やデータ管理の利便性やセキュリティの確保を図る上でICチップを搭載したICカードが普及しつつある。ICカードには、カードの外部接続端子とホスト装置側の端子と接続してデータの送受信を行う接触型と、ICカードとリーダー/ライター装置とに各々備えたコイルアンテナ間で無線方式でデータの送受信を行う非接触型とがある。非接触型のICカードは、独自の電源を持たず、IC回路の起動電力をICカードとリーダー/ライター装置との間で電磁誘導により生ずる誘導起電力によって供給するように構成されているものである。
【0003】
図8に、非接触型のリーダー/ライター装置の概略構成を示す。1はリーダー/ライター装置であり、ICカード5との間で電磁誘導によりデータを送受信するアンテナ装置3と、アンテナ装置3を通じてデータの送信/受信を行うデータ送信部6およびデータ受信部7と、ホスト装置8側の命令に応じてデータ送信部6又はデータ受信部7の動作を制御する制御部9とを備えている。
なお、アンテナ装置3のアンテナには、ワイヤをコイル状に巻回して形成したもの、樹脂基板等の基板に導体パターンをコイル状に形成したものが使用されている。
【0004】
ICカードとリーダー/ライター装置との通信距離を長くするためにはアンテナに大きな電流を流す必要があり、したがって直流抵抗値の小さなアンテナが有効である。アンテナの直流抵抗値を小さくする方法としては、アンテナに使用する導体パターン幅を太くすること、基板に同形状の導体パターンを多層に積層して形成し、層間で導体パターンを電気的に接続する等の方法がある。図9は、基板12に導体パターン14を積層して形成したアンテナ10の例を示す。導体パターン14は各層で同形のループ状に形成され、スルーホール16を介して層間で電気的に接続されている。18は給電部に接続される端子部である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図9に示すアンテナ10は、導体パターン14の幅を広く形成すること、導体パターン14を複数層に積層することによって導体部の直流抵抗成分を低減させることが可能となっている。
しかしながら、層間で導体パターン14を電気的に接続するためのスルーホール16を設けたことによって、スルーホール16が高周波領域で等価的に寄生容量として作用し、信号の応答特性を劣化させること、また、スルーホール16の近傍でうず電流が生じやすくなり、うず電流がアンテナから放射される電界強度を抑制するように作用すること、導体パターン14の電気的導通の確実性を向上させるためスルーホール16を多数個設けるとインピーダンスの増加につながり、インダクタンスとして作用しなくなるおそれがあるといった課題がある。
【0006】
そこで、本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、基板にループ状に形成した導体パターンの直流抵抗成分を低減させ、通信特性を向上させたアンテナおよびこれを用いた非接触ICカードのリーダー/ライター装置を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は次の構成を備える。
すなわち、平面形状が1ターンのループ状となる導体パターンが、少なくとも2層、電気的に絶縁されて基板に積層して設けられたアンテナであって、前記導体パターンの内周縁に沿って、前記基板を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔の内周側面に導通パターンが形成され、該導通パターンを介して、前記基板に形成された導体パターンが層間で電気的に接続されていることを特徴とする。導体パターンは同一の1ターンのループパターンに形成される。導通パターンは貫通孔の内周側面の少なくとも一部に設けられ、これによって導体パターンが層間で電気的に接続される。なお、導体パターンは、平面形状で円形に形成されることに限定されるものではなく、四角形、八角形、十二角形等の多角形状に形成される場合を含む意である。
【0008】
また、前記導体パターンの外周縁に沿ってスリット状の貫通孔が設けられ、該導体パターンの外周縁に沿って設けられた貫通孔の内周側面に、前記導体パターンを層間で電気的に接続する導通パターンが形成されていることを特徴とする。
また、前記基板が前記導体パターンに合わせて平面形状がループ状に形成され、前記基板の外周側面に前記導体パターンを層間で電気的に接続する導通パターンが形成されていることを特徴とする。
また、前記導通パターンが、前記導体パターン周方向の全長にわたって設けられていることにより、導体パターンの電気的接続が確実になされ、アンテナの直流抵抗成分を効果的に低減させることができる。
また、前記導体パターンが基板の両表面に設けられていること、前記導体パターンが基板の内層に設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、非接触型ICカードとの間でデータの送受信を行うアンテナを備えたアンテナ装置と、該アンテナ装置を通じてデータの送信/受信を行うデータ送信部及びデータ受信部と、ホスト装置の命令に応じてデータ送信部又はデータ受信部の動作を制御する制御部とを備えたリーダー/ライター装置であって、前記アンテナ装置が、前記アンテナを備えていることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付図面と共に詳細に説明する。
図1は本発明に係るアンテナ10の一実施形態の構成を示す。本実施形態のアンテナ10は基板に1ターンのループ状に導体パターン14を形成したものであり、基板12の両面に同形のループ状に導体パターン14を設けるとともに、導体パターン14の内周縁に沿って基板12に円形に貫通孔20を貫通させて設け、貫通孔20の内周側面で導体パターン14が設けられている周方向の全長にわたって基板12の両面に形成されている導体パターン14を電気的に導通させる導通パターン22を設けたことを特徴とする。
【0011】
図1では、導通パターン22が所定の厚さに形成され、導通パターン22の端面が導体パターン14に接続していることを示す。
図2は、図1のA−A’線断面図である。基板12の中央部に貫通孔20が形成され、貫通孔20の内周側面に形成された導通パターン22によって基板12の両面に形成された導体パターン14が電気的に接続されている。なお、13は基板12の表面に被覆された銅箔である。銅箔13は、本実施形態のアンテナ10の製造工程上、基板12の表面に所定のパターンで導体パターン14を形成するために用いられている。
【0012】
図3は、図1、2に示すアンテナ10の製造方法を示す。図3(a)は、基板12の両面に銅箔13を被着した両面銅張り基板である。図3(b)はこの両面銅張り基板に、ドリル加工等により貫通孔20を形成した状態を示す。貫通孔20はループ状に形成する導体パターン14の内周縁の位置に合わせて、円形に両面銅張り基板を孔あけ加工して形成する。なお、導体パターン14は平面形状で円形に形成する場合に限らず、八角形、十二角形等の多角形状に形成することも可能であり、これらの場合には貫通孔20は多角形状に形成する。
図3(c)は、導体パターン14と導通パターン22を形成するため、図3(b)の状態でまず無電解銅めっきを施して、貫通孔20の内周面と銅箔13の表面に無電解銅めっき層24を形成し、さらに無電解銅めっき層24をめっき給電層とする電解銅めっきを施して、貫通孔20の内周面と基板12の表面に電解銅めっき層26を形成した状態を示す。
【0013】
図3(d)は、基板12の表面に所定のパターンに導体パターン14を形成するため、感光性レジストにより基板12の表面および貫通孔20の内面を被覆した後、感光性レジストを露光および現像して、基板12の表面および貫通孔20の内周面を被覆している導体層のうち、導体パターン14および導通パターン22として残す部位のみを被覆するレジストパターン28を形成した状態である。レジストパターン28は図1に示す端子部18を形成する部分については被覆し、導通パターン22の終端部間23については露出するように設けられる。
【0014】
図3(e)はレジストパターン28をマスクとしてエッチングすることにより、基板12の表面に露出する導体層が除去された状態を示し、図3(f)は、レジストパターン28を溶解して除去することによって、基板12の両面に導体パターン14が形成され、貫通孔20の内周側面に被着する導通パターン22により、基板12の両面の導体パターン14が電気的に接続された状態を示す。
図3(f)は、基板12の両表面にループパターンが形成された図2に示すアンテナである。貫通孔20の内周側面の導体層は無電解銅めっき層24と電解銅めっき層26とからなり、基板12の両表面の導体層は、銅箔13、無電解銅めっき層24、電解銅めっき層26とからなる。
【0015】
本実施形態のアンテナ10は、基板12の両面に幅広にループパターンが形成されていること、基板12の両面に形成された導体パターン14が導体パターン14の内周面の全長にわたって導通パターン22によって電気的に導通されていることから、基板12の両面の導体パターン14相互の電気的導通が良好になされ、アンテナの直流抵抗成分を好適に低減させることが可能になる。また、ループパターンに沿って導通パターン22が設けられていることから、導体パターン14をスルーホールによって接続した際にうず電流が生じるといった問題が解消され、アンテナの電気的特性を良好にすることができるという利点がある。
【0016】
図4は、基板12の両面に同一形状に形成した導体パターン14a、14bを積層して形成したアンテナの例である。14aが内層の導体パターンであり、14bが外層の導体パターンである。内層の導体パターン14aは両面銅張り基板に貫通孔を形成した後、銅箔13を所定のループパターンにエッチングして形成することができ、外層の導体パターン14bは内層の導体パターン14aを形成した後、絶縁フィルムをラミネートして絶縁層30を形成した後、図3における方法と同様に、無電解銅めっきおよび電解銅めっきを施し、貫通孔20の内周壁面と基板12の両表面に導体層を形成し、所定のループパターンに導体層をエッチングすることによって、内層の導体パターン14aと外層の導体パターン14bを導通パターン22によってすべて導通した状態のアンテナとすることができる。
【0017】
図5は基板12にループ状に導体パターン14を形成したアンテナ10の他の実施形態を示す。
本実施形態のアンテナ10は導体パターン14の内周縁と外周縁に沿って各々基板12を厚さ方向に貫通する貫通孔20a、20bを設け、貫通孔20aの内周側面と貫通孔20bの内周側面のそれぞれに、基板12の両面に形成された導体パターン14を電気的に接続する導通パターン22a、22bを設けたことを特徴とする。
【0018】
導体パターン14の内周側に設ける貫通孔20aは上述した実施形態でのアンテナ10と同様に、導体パターン14の内周縁に沿って円形に基板12を抜き落として形成し、導体パターン14の外周側に設ける貫通孔20bは導体パターン14の外周縁に沿ってスリット状に基板12を抜き落として形成する。導体パターン14の外周側部分を抜き落とすと導体パターン14を支持している部位が不安定になるから、実施形態では貫通孔20bの周方向の中途に複数のリブ32を設けて、リブ32によって導体パターン14を吊持するようにしている。
【0019】
貫通孔20a、20bの内周側面に設ける導通パターン22a、22bは前述した第1の実施形態の場合と同様に基板12の周側面を被覆するように設け、これによって基板12の両面に形成された導体パターン14が電気的に接続されるようにしている。
本実施形態のアンテナ10では、導体パターン14の外周側に設けた貫通孔20bの周側面にも導通パターン22bを設けたことによって基板12の両面に形成された導体パターン14の電気的導通がさらに確実になされ、ループパターンの直流抵抗成分をさらに低減させることができている。
【0020】
なお、導体パターン14の外周側に設けた貫通孔20bについては、導体パターン14に接する内面と同様に、導体パターン14と対向する内面部分にも導通パターン22cを設け、さらにリブ32の内面にも導通パターン22dを設けることによって、基板12の両面に設けた導体パターン14の電気的導通をさらに確実にするとともに、導通パターン22cをアンテナのループパターンとしても寄与できるようにしている。これによって、ループパターンの直流抵抗成分をさらに低減させることが可能となっている。
【0021】
図6は、図5に示す基板12からループ状に形成された導体パターン14に対応する部位を切り離して、単独のリング状のアンテナ10に形成した例である。図5に示すリブ32を導体パターン14の外周側の周側面の位置で切り離し、端子部18の基部位置で切断することによって、図6に示すアンテナ10を形成することができる。なお、図6に示すアンテナ10では、リブ32を切り離した部位については、導通パターン22bは被着していない。
【0022】
図7は、図6のA−A’線断面図を示す。基板12の両面に導体パターン14が形成されていること、導体パターン14の内側の貫通孔20の内周側面に導通パターン22aが形成されていること、導体パターン14の外周側面に導通パターン22bが形成されていることを示す。導通パターン22a、22bは基板12の両面に形成されている導体パターン14、14を電気的に接続する。これによって、前述したアンテナ10と同様に、基板12の両面に形成された導体パターン14の電気的導通が確実になされ、ループパターンの直流抵抗成分を低減させることができる。
【0023】
上述した各実施形態のアンテナ10において、貫通孔20の内周側面に形成した導通パターン22、導体パターン14の内周側および外周側に設けた導通パターン22a、22b等は、たとえば電気めっきによって形成することができ、厚さは30μm程度に設ければよい。
一般に導体を流れる高周波電流は導体の表面に集中して流れる(表皮効果)。表皮の厚さδは周波数と導体によって異なる。たとえば、周波数を10MHz、導体を銅(導電率5.8×107(S/m)、比透磁率0.999991)とすると、表皮の厚さδ=20.9μmとなる。すなわち、この場合は20μm程度の厚さの表皮に電流が集中することになる。
【0024】
したがって、導通パターン22、22a、22bの厚さを30μm程度とすることによって十分な特性を備えたアンテナとして提供することが可能となる。なお、上記各実施形態のアンテナ10では一般的な配線基板の製造に用いられている、銅箔13の厚さが18μmの両面銅張り基板を使用している。したがって、導体パターン14についても10MHz程度の周波数の信号通信に十分な厚さの導体層として形成されている。
【0025】
なお、基板12にループ状に導体パターン14を形成する方法として、前述した実施形態においては、いわゆるサブトラクティブ法による製造方法を示したが、アンテナ10の製造方法はこの方法に限定されるものではなく、たとえば、アディティブ法といった配線基板の製造工程において一般的に使用されている方法を利用することもできる。
本発明に係るアンテナは、基板に所定のパターンで配線パターンを形成する配線基板の製造方法とまったく同様の方法によって導体パターン14を形成するものであり、いろいろな製造技術が開発されている配線基板の製造方法をそのまま利用することが可能である。
【0026】
上述した方法によって製作したアンテナ10は図8に示すと同様に、リーダー/ライター装置のアンテナ装置3に組み込むことによって、非接触方式のICカードのデータの送受信に好適に利用できるリーダー/ライター装置として提供することが可能となる。
また、本実施形態のアンテナ10はICカードのリーダー/ライター装置に限らずデータ等の送受信に利用するアンテナとして好適に利用することが可能である。
【0027】
【発明の効果】
本発明に係るアンテナは、導体パターンの内周縁に沿って開口させて設けた貫通孔の内周側面に導通パターンを被着して形成したことによって導体パターンが層間で確実にかつ容易に電気的に接続され、ループパターンの直流抵抗成分を低減させることができるとともに、導通パターンを介して導体パターンを電気的に接続することにより、うず電流等の発生を防止して、通信特性のすぐれたアンテナとして提供することができる。また、これらのアンテナは配線基板の製造方法を適用して製造することができ、高精度にかつ容易に製造することができる。また、これらのアンテナを搭載したリーダー/ライター装置は、非接触型のICカードのリーダー/ライター装置として好適に使用することができる等の著効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアンテナの一実施形態の構成を示す平面図である。
【図2】図1に示すアンテナのA−A’線断面図である。
【図3】アンテナの製造方法を示す説明図である。
【図4】導体パターンを積層した構成を有するアンテナの断面図である。
【図5】アンテナの他の実施形態の構成を示す平面図である。
【図6】アンテナのさらに他の実施形態の構成を示す平面図である。
【図7】図6のA−A’線断面図である。
【図8】リーダー/ライター装置のブロック図である。
【図9】スルーホールにより導体パターンを電気的に接続したアンテナの構成を示す平面図である。
【符号の説明】
3 アンテナ装置
5 ICカード
6 データ送信部
7 データ受信部
10 アンテナ
12 基板
13 銅箔
14 導体パターン
16 スルーホール
18 端子部
20 貫通孔
22、22a、22b、22c、22d 導通パターン
24 無電解銅めっき層
26 電解銅めっき層
28 レジストパターン
30 絶縁層
32 リブ

Claims (7)

  1. 平面形状が1ターンのループ状となる導体パターンが、少なくとも2層、電気的に絶縁されて基板に積層して設けられたアンテナであって
    前記導体パターンの内周縁に沿って、前記基板を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられ、
    該貫通孔の内周側面に導通パターンが形成され、該導通パターンを介して、前記基板に形成された導体パターンが層間で電気的に接続されていることを特徴とするアンテナ。
  2. 前記導体パターンの外周縁に沿ってスリット状の貫通孔が設けられ、該導体パターンの外周縁に沿って設けられた貫通孔の内周側面に、前記導体パターンを層間で電気的に接続する導通パターンが形成されていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ。
  3. 前記基板が前記導体パターンに合わせて平面形状がループ状に形成され、前記基板の外周側面に前記導体パターンを層間で電気的に接続する導通パターンが形成されていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ。
  4. 前記導通パターンが、前記導体パターン周方向の全長にわたって設けられていることを特徴とする請求項1、2または3記載のアンテナ。
  5. 導体パターンが基板の両表面に設けられていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載のアンテナ。
  6. 導体パターンが基板の内層に設けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のアンテナ。
  7. 非接触型ICカードとの間でデータの送受信を行うアンテナを備えたアンテナ装置と、
    該アンテナ装置を通じてデータの送信/受信を行うデータ送信部及びデータ受信部と、
    ホスト装置の命令に応じてデータ送信部又はデータ受信部の動作を制御する制御部とを備えたリーダー/ライター装置であって、
    前記アンテナ装置が、請求項1〜6のいずれか一項記載のアンテナを備えていることを特徴とするリーダー/ライター装置
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