JP3970383B2 - スイッチ回路及びそれを用いた超音波診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、消費電力を抑制しつつ内部インピーダンスを小さくすることができるスイッチ回路、及びこのスイッチ回路を送波パルス発生器から印加される送波パルスを遮断し、探触子からの受波信号のみを通過させる送受分離回路として用いた超音波信診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の超音波診断装置は、図4に示すように、例えば短冊状に形成された複数の振動子素子11,12,13,…,1nが吸音材の上に隣接して配列され超音波を送受波する探触子2と、この探触子2内の各振動子素子11,12,13,…,1nに所定の遅延時間を与えて超音波打ち出しの駆動パルスを印加する送波パルス発生器3と、上記探触子2の振動子素子11,12,13,…,1nを選択し切り換える切換スイッチ4と、上記送波パルス発生器3から上記探触子2へ印加される送波パルスと該探触子2からの受信信号とを切り換える送受分離回路5a〜5eと、この送受分離回路5a〜5eを介して出力される探触子2からの受波信号を時間と共に利得を変化させて増幅する受信増幅器6a〜6eと、この各受信増幅器6a〜6eからの出力信号に所定の遅延時間を与える複数の遅延回路7a〜7eを有しこれらの遅延回路7a〜7eで位相が揃えられた受波信号を加算する加算器8を備えた整相回路9と、この整相回路9で整相された信号を検波する検波器10と、この検波器10からの出力信号を画像として表示する表示装置11とを備えて成っていた。
【0003】
ここで、上記送受分離回路5a〜5eとして用いられるスイッチ回路は、例えば図5,図6及び図7で示す第一〜第三の従来例のような構成となっていた。まず、第一の従来例としてのスイッチ回路12は、図5に示すように、二つのダイオードD1,D2と、一つの抵抗Rとを有し、上記探触子2及び送波パルス発生器3と入力インピーダンスRinを有する上記受信増幅器6との間に配置されていた。このスイッチ回路12に上記送波パルス発生器3で発生された高電圧の送波信号が印加すると、上記ダイオードD1,D2は導通するため、上記受信増幅器6に対しては送波信号の振幅が制限され、高電圧の送波信号は印加されない。一方、探触子2からの受波信号は、微小電圧であるためダイオードD1,D2は導通せず、抵抗Rを介して受信増幅器6に印加される。
【0004】
次に、第二の従来例としてのスイッチ回路12’は、図6に示すように、四つのダイオードD1〜D4で構成されるダイオードブリッジを具備し、電圧源により該ダイオードブリッジに対して電圧Vが印加されているものである。このスイッチ回路12’に送波パルス発生器3で発生された高電圧の送波信号を印加すると、上記ダイオードブリッジにより該送波信号の振幅が制限され、受信増幅器6に対しては高電圧の送波信号は印加されない。一方、探触子2からの受波信号は微小電圧であるため、ダイオードブリッジのダイオードD1〜D4は導通状態のままとなっている。よって、受波信号はスイッチ回路12’を通過して受波増幅器6に対して印加される。
【0005】
次に、第三の従来例としてのスイッチ回路12”は、図7に示すように、二つのダイオードD1,D2に対して電圧を印加する構成のものである。このスイッチ回路12”に受波信号が入力されない状態では、ダイオードD1,D2に抵抗Rと電圧Vとによって決まる定常電流が流れている。そして、高電圧の送波信号が入力され、点Aの電位が+Vより大きくなるか或いは−Vより小さくなると、ダイオードD1,D2には逆バイアス電位が印加される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来の超音波診断装置における送受分離回路5a〜5eとして用いられるスイッチ回路は、以下に示すような問題があった。超音波診断装置において受信増幅器6a〜6eの入力インピーダンスを低くすることは、切換スイッチ4のオフアイソレーションや探触子2のケーブルに接続された信号線のクロストークを低減させる効果があるため必要であるが、この効果を得ると共に挿入損失を抑制するためには、受信増幅器6a〜6eと送受分離回路5a〜5eの双方のインピーダンスを低くする必要がある。しかし、第一の従来例としてのスイッチ回路12は、入力インピーダンスが高いため、上記効果を得ることが不可能であった。
【0007】
一方、第二の従来例としてのスイッチ回路12’では、ダイオードD1,D2の動作電流を大きくすることにより、そのインピーダンスを小さくすることができる。しかし、振動子素子11,12,13,…,1nが多い探触子2を用いた超音波診断装置でダイオードD1,D2の動作電流を大きくすることは、装置の消費電力を大きくすることになり、電源の大型化,過大な発熱等の問題が発生する。更に、ダイオードD1,D2からの雑音が増加し、装置のS/Nを劣化させる虞もあった。なお、上記問題を解決するために、ダイオードD1,D2としてPINダイオードを用いることが考えられる。このPINダイオードは、小さい動作電流にもかかわらず、その動作抵抗が非常に小さいことが知られており、装置の消費電力が大きくなることを抑制する効果が期待できるからである。しかし、このPINダイオードのような高周波での動作抵抗の小さいダイオードは、一般に逆回復時間が長く、ダイオードD1,D2の逆回復時間が送波パルス発生器3で発生された駆動パルスのパルス幅より長いと、導通していたダイオードD1,D2が逆バイアスされても直ちに非導通とはならず、スイッチ回路としての動作が妨げられる虞があった。
【0008】
また、第三の従来例としてのスイッチ回路12”は、ダイオードD1,D2に定常電流が流れていると、スイッチング速度が遅くなり、図7に示す点Bの電位が+V或いは−Vでクランプされる虞があった。よって、第二の従来例においてダイオードD1,D2をPINダイオードとした場合と同様、導通していたダイオードD1,D2が逆バイアスされても直ちに非導通とはならず、スイッチ回路としての動作が妨げられる虞があった。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、消費電力を抑制しつつ内部インピーダンスを小さくすることができるスイッチ回路及びそれを用いた超音波診断装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によるスイッチ回路は、バイアス電流を制御することにより導通、非導通が制御される第一のダイオードを有し、入力信号を開閉するスイッチ回路において、上記バイアス電流をバイパスする経路に設けられた第二のダイオードと、上記第一のダイオード及び上記第二のダイオードに流れる電流を制御する回路とを具備したものである。
【0011】
また、関連発明としての超音波診断装置は、複数の振動子素子が配列され超音波を送受波する探触子と、この探触子内の各振動子素子に所定の遅延時間を与えて超音波打ち出しの駆動パルスを印加する送波パルス発生器と、この送波パルス発生器から上記探触子へ印加される送波パルスと該探触子からの受波信号とを切り換える送受分離回路と、この送受分離回路を介して出力される探触子からの受波信号を増幅する受信増幅器と、この受信増幅器からの受波信号に所定の遅延時間を与える遅延回路を有しこれらの遅延回路で位相が揃えられた受波信号を加算して出力する整相回路と、この整相回路で整相された信号を検波する検波器と、この検波器からの出力信号を画像として表示する表示装置とを備えて成る超音波診断装置において、上記送受分離回路として、バイアス電流を制御することにより導通、非導通が制御される第一のダイオードと、上記バイアス電流をバイパスする経路に設けられた第二のダイオードと、上記第一のダイオード及び上記第二のダイオードに流れる電流を制御する回路とを具備したスイッチ回路を備えた。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明によるスイッチ回路の実施形態を示す回路図である。このスイッチ回路は、例えば図4に示す超音波診断装置において送波パルス発生器3から探触子2へ印加される送波パルスと該探触子2からの受波信号との切り換えを行なう送受分離回路5a〜5eとして用いるもので、第一のダイオードD1,D2を有し、更に第二のダイオードD1’,D2’と、トランジスタQ1,Q1’及びQ2,Q2’と、定電流源Iとを具備したものである。これにより、スイッチ回路14が構成されている。なお、符号Cはコンデンサを示し、符号R1〜R4は同一の抵抗値の抵抗を示し、符号r1〜r4は同一の抵抗値の抵抗を示し、符号Tはトランスを示している。また、符号3は例えば超音波診断装置の送波パルス発生器、符号6は内部インピーダンスRinを有する受信増幅器、符号13は電圧制御部、符号16は入力端子を示している。
【0013】
上記第一のダイオードD1,D2は、バイアス電流を制御することにより導通、非導通が制御されるもので、入力信号を開閉するものである。この第一のダイオードD1,D2は、第三の従来例のスイッチ回路12”で用いられたダイオードD1,D2と同様なもので、電圧V1によってバイアス電流が制御されるものである。
【0014】
ここで、本発明においては、上記バイアス電流をバイパスする経路に設けられた第二のダイオードD1’,D2’と、上記第一のダイオードD1,D2のバイアス電流と上記第二のダイオードD1’,D2’の電流を制御する差動増幅回路(Q1,Q2,Q1’,Q2’,I)とが具備されている。そして、上記差動増幅回路には、電圧制御部13が接続されている。
【0015】
上記第二のダイオードD1’,D2’は、第一のダイオードD1,D2が非導通とされた時に導通状態とされるものである。この第二のダイオードD1’,D2’には差動増幅回路が接続されており、この差動増幅回路は、トランジスタQ1,Q2,Q1’,Q2’と定電流源Iとから成っている。尚、該トランジスタQ1とQ1’及びQ2とQ2’は、それぞれ特性の近似したものである。以下、上記差動増幅回路について図2を参照して説明する。
【0016】
図2は、本発明によるスイッチ回路14の差動増幅回路部分をスイッチS,S’として説明するための説明図である。まず、スイッチSを閉じスイッチS’を開いた状態にすると、ダイオードD1,D2に電圧Vが印加され、該ダイオードD1,D2は導通状態とされるため、入力した入力信号は受信増幅器6に送り出される。また、スイッチSを開きスイッチS’を閉じた状態にすると、ダイオードD1,D2には電圧Vは印加されず、ダイオードD1’,D2’に電圧Vが印加される。このため、入力した入力信号は受信増幅器6には送り出されない。このように、上記スイッチSが開いている時にはスイッチS’が閉じ、スイッチSが閉じている時にはスイッチS’が開くようにしたものが、図1のトランジスタQ1,Q2,Q1’,Q2’及び定電流源Iで構成された差動増幅回路である。
【0017】
次に、上記のように構成された図1に示すスイッチ回路14の動作について説明する。まず、入力端子16からの入力信号をONするには、電圧制御部13により電圧V1の大きさを調整し、ダイオードD1,D2に電流Ic1が流れるようにする。この電流Ic1は、ダイオードD1,D2を通った後、抵抗R2,R3、抵抗r2,r3及び定電流源Iを通って接地される。よって、ダイオードD1,D2には電圧が印加され、該ダイオードD1,D2が導通され、入力信号がONされる。次に、入力端子16からの入力信号をOFFするには、電圧制御部13により電圧V1の大きさを調整し、ダイオードD1’,D2’に電流Ic1’が流れるようにする。この電流Ic1’は、ダイオードD1,D2を迂回する形で流れ、ダイオードD1’,D2’を通った後、抵抗R1,R4、抵抗r1,r4及び定電流源Iを通って接地される。よって、ダイオードD1,D2には電圧が印加されず、該ダイオードD1,D2が非導通とされ、入力信号はOFFされる。
【0018】
以上述べたとおり、本発明によるスイッチ回路14は、トランジスタQ1とQ1’及びQ2とQ2’の特性が近似していることから、図3で示すように、Ic1≒Ic1’となり、スイッチの切換による図1に示すA点とB点の電位の変動が抑制され、この電位の変動によるノイズの発生を抑制することができる。よって、スイッチ回路のS/Nを向上することができる。
【0019】
図4は図1に示すスイッチ回路の関連発明としての超音波診断装置の実施の形態を示すブロック図である。この超音波診断装置は、超音波を利用して被検体の診断部位について断層像を得るもので、例えば電子リニア走査型とされており、短冊状に形成された複数の振動子素子11,12,13,…,1nが配列され超音波を送受波する探触子2と、この探触子2内の各振動子素子11,12,13,…,1nに所定の遅延時間を与えて超音波打ち出しの駆動パルスを印加する送波パルス発生器3と、上記探触子2の振動子素子11,12,13,…,1nを選択し切り換える切換スイッチ4と、上記送波パルス発生器3から上記探触子2へ印加される送波パルスと該探触子2からの受波信号とを切り換える送受分離回路5a〜5eと、この送受分離回路5a〜5eを介して出力される探触子2からの受波信号を時間と共に利得を変化させて増幅する受信増幅器6a〜6eと、この各受信増幅器6a〜6eからの出力信号に所定の遅延時間を与える複数の遅延回路7a〜7eを有しこれらの遅延回路7a〜7eで位相が揃えられた受波信号を加算する加算器8を備えた整相回路9と、この整相回路9で整相された信号を検波する検波器10と、この検波器10からの出力信号を画像として表示する表示装置11とを備えて成る。
【0020】
なお、切換スイッチ4は例えば五つに分けられた振動子素子群を一端方から順次選択してそれぞれ次段の送受分離回路5a〜5eに接続するようになっており、上記五つの振動子素子群を順次切り換えて並進させるようになっている。従って、送受分離回路は5個(5a〜5e)設けられている。また、上記各構成要素の動作は、制御部15からの制御信号で制御されるようになっている。
【0021】
ここで、本発明においては、上記送受分離回路5a〜5eとしては、図1に示す回路構成とされ、消費電力を抑制しつつ内部インピーダンスを小さくすることができるスイッチ回路14が用いられている。このような構成により、本発明の超音波診断装置においては、装置の信頼性を向上することができる。
【0022】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成されたので、バイアス電流をバイパスする経路に設けられた第二のダイオードと、上記第一のダイオードのバイアス電流と上記第二のダイオードの電流を制御する差動増幅回路とを具備することにより、消費電力を抑制しつつ内部インピーダンスを小さくすることができる。
【0023】
また、本発明による超音波診断装置は以上のように構成されたので、送波パルス発生器からの探触子へ印加される送波パルスと該探触子からの受波信号とを切り換える送受分離回路として、前記のスイッチ回路を用いることにより、装置の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるスイッチ回路の実施の形態を示す回路図である。
【図2】本発明によるスイッチ回路の差動増幅回路部分をスイッチS,S’として説明するための説明図である。
【図3】上記差動増幅回路を構成するトランジスタの電圧−電流特性を示すグラフである。
【図4】図1に示すスイッチ回路の関連発明としての超音波診断装置の実施の形態及び従来の技術を説明するためのブロック図である。
【図5】第一の従来例によるスイッチ回路を示す回路図である。
【図6】第二の従来例によるスイッチ回路を示す回路図である。
【図7】第三の従来例によるスイッチ回路を示す回路図である。
【符号の説明】
11〜1n 振動子素子
2 探触子
3 送波パルス発生器
4 切換スイッチ
5a〜5e 送受分離回路
6a〜6e 受信増幅器
7a〜7e 遅延回路
8 加算器
9 整相回路
10 検波器
11 表示装置
D1,D2 第一のダイオード
D1’,D2’ 第二のダイオード
Q1,Q1’,Q2,Q2’ トランジスタ
I 定電流源
Claims (2)
- バイアス電流を制御することにより導通、非導通が制御される第一のダイオードを有し、入力信号を開閉するスイッチ回路において、上記バイアス電流をバイパスする経路に設けられた第二のダイオードと、上記第一のダイオード及び上記第二のダイオードに流れる電流を制御する回路とを具備したことを特徴とするスイッチ回路。
- 複数の振動子素子が配列され超音波を送受波する探触子と、この探触子内の各振動子素子に所定の遅延時間を与えて超音波打ち出しの駆動パルスを印加する送波パルス発生器と、この送波パルス発生器から上記探触子へ印加される送波パルスと該探触子からの受波信号とを切り換える送受分離回路と、この送受分離回路を介して出力される探触子からの受波信号を増幅する受信増幅器と、この受信増幅器からの受波信号に所定の遅延時間を与える遅延回路を有しこれらの遅延回路で位相が揃えられた受波信号を加算して出力する整相回路と、この整相回路で整相された信号を検波する検波器と、この検波器からの出力信号を画像として表示する表示装置とを備えて成る超音波診断装置において、
上記送受分離回路として、バイアス電流を制御することにより導通、非導通が制御される第一のダイオードと、上記バイアス電流をバイパスする経路に設けられた第二のダイオードと、上記第一のダイオード及び上記第二のダイオードに流れる電流を制御する回路とを具備したスイッチ回路を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
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